説明

熱収縮性フィルム

【課題】熱収縮性に加え、粘着性を有し、ブロッキングしにくい熱収縮性フィルムを提供する。
【解決手段】下記要件(a1)と(a2)と(a3)の全てを充足するポリエチレン系樹脂(A)を含有する層1と、下記要件(b1)と(b2)と(b3)の全てを充足するポリエチレン系樹脂(B)を含有する層2を有する熱収縮性フィルムである。
(a1):NLCBが炭素原子1000個あたり0.01以上であり、かつNC5が炭素原子1000個あたり0.1未満
(a2):Eaが40kJ/mol以上
(a3):密度が920kg/m以上
(b1):NLCBが炭素原子1000個あたり0.01以上であり、かつNC5が炭素原子1000個あたり0.1未満
(b2):Eaが40kJ/mol以上
(b3):密度が900〜915kg/m

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性フィルムに関するものである。さらに詳しくは、熱収縮性に加え、粘着性を有し、ブロッキングしにくい熱収縮性フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱収縮性フィルムは、被包装体である複数の製品を結束固定する包装材や、PETボトルのラベル等に、様々な分野で、様々な商品に利用されている。一般に、熱収縮性フィルムの特性には、フィルムの融点よりも低い温度または融点付近の温度で加熱することによってフィルムが熱収縮すること、熱収縮させる際の加熱温度条件の幅が広いこと、熱収縮フィルムの機械的強度が高いこと、フィルムが均一に収縮し、被包装体を熱収縮包装した後の熱収縮性フィルムの外観が良いこと等が要求されている。例えば、特許文献1には、熱収縮性、機械的強度および熱収縮後の外観を改良することを目的として、エチレン−α−オレフィン共重合体を用いる熱収縮性フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−99680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱収縮性フィルムが用いられる用途の中には、熱収縮性に加え、収縮後のフィルムが被包装体表面に密着し、少々の外力ではフィルムがずれたり、シワになったりしない様、粘着性を要する場合がある。かかる状況のもと、本発明の目的は、熱収縮性に加え、粘着性を有し、ブロッキングしにくい熱収縮性フィルムを提供することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、下記要件(a1)と(a2)と(a3)の全てを充足するポリエチレン系樹脂(A)を含有する層1と、下記要件(b1)と(b2)と(b3)の全てを充足するポリエチレン系樹脂(B)を含有する層2を有する熱収縮性フィルムである。
(a1):13C−NMRにより測定される炭素原子数6以上の分岐数(NLCB)が炭素原子1000個あたり0.01以上であり、かつ炭素原子数5の分岐数(NC5)が炭素原子1000個あたり0.1未満であること
(a2):流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であること
(a3):密度が920kg/m以上であること
(b1):13C−NMRにより測定される炭素原子数6以上の分岐数(NLCB)が炭素原子1000個あたり0.01以上であり、かつ炭素原子数5の分岐数(NC5)が炭素原子1000個あたり0.1未満であること
(b2):流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であること
(b3):密度が900〜915kg/mであること
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱収縮性フィルムは、熱収縮性に加え、粘着性を有し、ブロッキングしにくいものである
【発明を実施するための形態】
【0007】
ポリエチレン系樹脂(A)およびポリエチレン系樹脂(B)は、エチレンに基づく単量体単位を主単位として有する重合体であり、高圧ラジカル重合法で製造される高圧法低密度ポリエチレン、配位重合法等で製造されるエチレン−α−オレフィン共重合体などがあげられる。ポリエチレン系樹脂(A)および/またはポリエチレン系樹脂(B)は、エチレン−α−オレフィン共重合体であることが好ましい。エチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素原子数3〜20のα−オレフィンとを共重合して得られるエチレン−α−オレフィン共重合体であり、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有する共重合体である。炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン等があげられ、好ましくは1−ヘキセン、1−オクテンである。また、上記の炭素原子数3〜20のα−オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0008】
エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体等があげられ、好ましくはエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−ブテン−1−オクテン共重合体である。
【0009】
ポリエチレン系樹脂(A)およびポリエチレン系樹脂(B)は、13C−NMRにより測定される炭素原子数6以上の分岐数(以下、「NLCB」と記載することがある。)が、炭素原子1000個あたり0.01以上であり、かつ炭素原子数5の分岐数(以下、「NC5」と記載することがある。)が、炭素原子1000個あたり0.1未満である。NLCBが0.01以上であると、熱収縮性が良好である。NLCBは、好ましくは炭素原子1000個あたり0.1以上である。また、NLCB、NC5が前記の値を充足すると機械強度が高くなる。機械強度を高める観点から、NLCBは、好ましくは炭素原子1000個あたり1以下であり、より好ましくは0.7以下である。NC5は、好ましくは炭素原子1000個あたり0.05未満であり、より好ましくは0.01未満であり、ゼロであることが最も好ましい。
【0010】
ポリエチレン系樹脂(A)およびポリエチレン系樹脂(B)のNLCB、NC5は、気相重合、スラリー重合などの製造方法の選択や、重合触媒の選択、重合温度、重合圧、コモノマーの種類や添加量などの重合条件によって調整することができる。
【0011】
LCBは、次の方法で求めることができる。窓関数にエクスポネンシャルを適用した13C−NMRスペクトルから、5〜50ppmに観測されるすべてのピーク面積の総和を1000として、38.09〜38.27ppmに付近にピークトップを有するピークのピーク面積をAとする。このAは、炭素原子数4以上の分岐メチン炭素の数に相当する値である。炭素原子数5以下の分岐メチン炭素と炭素原子数6以上の分岐メチン炭素のピークを分離するために、窓関数にガウシャンを適用し、ガウシャンを適用した13C−NMRスペクトルにおいて、38.21〜38.27ppmに観測されるピークのピーク面積をB、38.21〜38.09ppmに観測されるピークのピーク面積をCとする。そして以下の式より、NLCBを求めた。
LCB=A×B/(B+C)
C5は、次の方法で求めることができる。窓関数にエクスポネンシャルを適用した13C−NMRスペクトルにおいて、5〜50ppmに観測されるすべてのピークの総和を1000として、32.5〜32.7ppmに付近にピークトップを有するピークのピーク面積を求めた。該ピーク面積は、炭素原子数5の分岐メチレン炭素の数(下記構造式中のC**)に相当する値である。
・・・・CH2-CH-CH2-・・・・
└CH2-CH2-C**H2−CH2-CH3
なお、上記炭素原子数5以上の分岐が結合したメチン炭素に由来するピークの位置は、測定装置および測定条件によりずれることがあるため、通常、測定装置および測定条件毎に、標品の測定を行って決定する。また、スペクトル解析には、窓関数として、負の指数関数を用いることが好ましい。
【0012】
熱収縮性の観点から、ポリエチレン系樹脂(A)およびポリエチレン系樹脂(B)の流動の活性化エネルギー(Ea)は、40kJ/mol以上であり、好ましくは50kJ/mol以上であり、より好ましくは55kJ/mol以上であり、さらに好ましくは60kJ/mol以上である。また、機械強度の観点から、Eaは、好ましくは100kJ/mol以下であり、より好ましくは90kJ/mol以下である。
【0013】
流動の活性化エネルギー(Ea)は、温度−時間重ね合わせ原理に基づいて、190℃での溶融複素粘度(単位:Pa・秒)の角周波数(単位:rad/秒)依存性を示すマスターカーブを作成する際のシフトファクター(aT)からアレニウス型方程式により算出される数値であって、以下に示す方法で求められる値である。すなわち、130℃、150℃、170℃および190℃夫々の温度(T、単位:℃)におけるエチレン−α−オレフィン共重合体の溶融複素粘度−角周波数曲線(溶融複素粘度の単位はPa・秒、角周波数の単位はrad/秒である。)を、温度−時間重ね合わせ原理に基づいて、各温度(T)での溶融複素粘度−角周波数曲線毎に、190℃でのエチレン系共重合体の溶融複素粘度−角周波数曲線に重ね合わせた際に得られる各温度(T)でのシフトファクター(aT)を求め、夫々の温度(T)と、各温度(T)でのシフトファクター(aT)とから、最小自乗法により[ln(aT)]と[1/(T+273.16)]との一次近似式(下記(I)式)を算出する。次に、該一次式の傾きmと下記式(II)とからEaを求める。
ln(aT) = m(1/(T+273.16))+n (I)
Ea = |0.008314×m| (II)
T :シフトファクター
Ea:流動の活性化エネルギー(単位:kJ/mol)
T :温度(単位:℃)
上記計算は、市販の計算ソフトウェアを用いてもよく、該計算ソフトウェアとしては、Rheometrics社製 Rhios V.4.4.4などがあげられる。
なお、シフトファクター(aT)は、夫々の温度(T)における溶融複素粘度−角周波数の両対数曲線を、log(Y)=−log(X)軸方向に移動させて(但し、Y軸を溶融複素粘度、X軸を角周波数とする。)、190℃での溶融複素粘度−角周波数曲線に重ね合わせた際の移動量であり、該重ね合わせでは、夫々の温度(T)における溶融複素粘度−角周波数の両対数曲線は、各曲線ごとに、角周波数をaT倍に、溶融複素粘度を1/aT倍に移動させる。また、130℃、150℃、170℃および190℃の4点の値から(I)式を最小自乗法で求めるときの相関係数は、通常、0.99以上である。
【0014】
溶融複素粘度−角周波数曲線の測定は、粘弾性測定装置(例えば、Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800など。)を用い、通常、ジオメトリー:パラレルプレート、プレート直径:25mm、プレート間隔:1.5〜2mm、ストレイン:5%、角周波数:0.1〜100rad/秒の条件で行われる。なお、測定は窒素雰囲気下で行われ、また、測定試料には予め酸化防止剤を適量(例えば1000ppm。)を配合することが好ましい。
【0015】
ポリエチレン系樹脂(A)の密度は、ブロッキングの観点から920kg/m3以上である。熱収縮性が良好であるという観点から、好ましくは935kg/m3以下であり、より好ましくは930kg/m3以下である。なお、密度は、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った試料を用いて、JIS K7112−1980に規定された水中置換法に従って測定される。
【0016】
ポリエチレン系樹脂(A)のメルトフローレート(MFR)は、通常、0.01〜50g/10分であり、熱収縮性を高める観点から、好ましくは5g/10分以下であり、より好ましくは3g/10分以下である。本発明のポリエチレン系樹脂(A)およびポリエチレン系樹脂(B)のMFRは、JIS K7210−1995に規定された方法により、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定される。
【0017】
フィルム加工性の観点から、ポリエチレン系樹脂(A)の分子量分布(Mw/Mn)は5以上であることが好ましく、より好ましくは6以上であり、さらに好ましくは8以上である。またフィルムの機械強度の観点から、ポリエチレン系樹脂(A)の分子量分布は25以下であることが好ましく、より好ましくは20以下である。なお、該分子量分布(Mw/Mn)とは、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ測定によってポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)とを求め、MwをMnで除した値(Mw/Mn)である。
【0018】
ポリエチレン系樹脂(A)は、下記式(II)で定義されるg*が0.70〜0.95であることが好ましい。
g*=[η]/([η]GPC×gSCB*) (II)
[式中、[η]は、ポリエチレン系樹脂の極限粘度(単位:dl/g)を表し、下記式(II−I)によって定義される。[η]GPCは下記式(II−II)によって定義される。gSCB*は、下記式(II−III)によって定義される。
[η]=23.3×log(ηrel) (II−I)
(式中、ηrelは、ポリエチレン系樹脂の相対粘度を表す。)
[η]GPC=0.00046×Mv0.725 (II−II)
(式中、Mvは、ポリエチレン系樹脂の粘度平均分子量を表す。)
SCB*=(1−A)1.725 (II−III)
(式中、Aは、ポリエチレン系樹脂中の短鎖分岐の含量を測定し、下記式(II−V)によって定義される。
A=((12×n+2n+1)×y)/((1000−2y−2)×14+(y+2)×15+y×13) (II−V)
式中、nは短鎖分岐の分岐炭素原子数を表し(例えばα−オレフィンとしてブテンを用いた場合はn=2、ヘキセンを用いた場合はn=4)、yはNMRないしは赤外分光より求められる炭素原子1000個あたりの短鎖分岐数を表す。)]
なお、g*については、以下の文献を参考にした:Developments in Polymer Characterisation-4,. J. V.. Dawkins,. Ed.,. Applied Science, London,. 1983, Chapter. I,. 「Characterization. of. Long Chain Branching in Polymers,」Th. G. Scholte著
【0019】
[η]GPCは、分子量分布がポリエチレン系樹脂と同一の分子量分布であって、かつ分子鎖が直鎖状であると仮定した重合体の極限粘度(単位:dl/g)を表す。
SCB*は、ポリエチレン系樹脂に短鎖分岐を導入することによって生じるg*への寄与を表す。
式(II−II)は、L. H. Tung著 Journal of Polymer Science, 36, 130 (1959) 287-294頁に記載の式を用いた。
【0020】
ポリエチレン系樹脂の相対粘度(ηrel)は、次の方法で測定することができる。熱劣化防止剤としてブチルヒドロキシトルエン(BHT)を0.5重量%含むテトラリン100mlに、ポリエチレン系樹脂100mgを135℃で溶解してサンプル溶液を調製し、ウベローデ型粘度計を用いて前記サンプル溶液と熱劣化防止剤としてBHTを0.5重量%のみを含むテトラリンからなるブランク溶液との降下時間から算出する。
【0021】
ポリエチレン系樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、下式(II−IV)

で定義され、a=0.725とした。
【0022】
g*は、長鎖分岐に起因する、溶液中での分子の収縮度を表す指標であり、分子鎖あたりの長鎖分岐を含有する量が多ければ分子鎖の収縮は大きくなり、g*は小さくなる。ポリエチレン系樹脂のg*は、熱収縮性が良好であるという観点から、より好ましくは0.90以下であり、さらに好ましくは0.85以下である。機械強度が向上するという観点から、ポリエチレン系樹脂(A)のg*は、より好ましくは0.75以上である。
【0023】
特にポリエチレン系樹脂(A)として好ましく用いられるものとしては、特開2008−106264号に記載されたポリエチレン系樹脂が挙げられる。
【0024】
ポリエチレン系樹脂(B)の密度は、被包装体表面との密着性を良好にするため、915kg/m3以下であり、好ましくは913kg/m3以下である。
【0025】
ポリエチレン系樹脂(B)のメルトフローレート(MFR)は、加工性、機械強度、熱収縮性の観点から通常0.1〜10g/10分であり、好ましくは4g/10分以下であり、さらに好ましくは2g/10分以下である。
【0026】
本発明の熱収縮性フィルムは、前記ポリエチレン系樹脂(A)を含有する層1と、前記ポリエチレン系樹脂(B)を含有する層2を有する多層フィルムである。本発明の熱収縮性フィルムは、前記層1と前記層2の間に、ポリエチレン系樹脂(A)およびポリエチレン系樹脂(B)とは異なる樹脂を含む層を有していてもよい。その場合は、層1および層2はそれぞれ熱収縮性フィルムの表層となるように配置する。
【0027】
本発明の熱収縮性フィルムの厚みは、通常20〜200μmであり、好ましくは25〜150μmであり、より好ましくは30〜120μm である。フィルム全体の厚み(100%)に対する層1の厚みの割合としては共押出成形性、フィルムのハンドリング性を高める観点から、50%以上であることが好ましい。
【0028】
本発明の熱収縮性フィルムにおいて、層1、および層2に、必要に応じて、酸化防止剤、帯電防止剤、他の樹脂などを配合してもよく、これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記の酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物や3価のリン原子を含むリン系エステル化合物等が挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物としては、2,6−ジアルキルフェノール誘導体や2−アルキルフェノール誘導体等が挙げられる。3価のリン原子を含むリン系エステル化合物としては、フォスファイト系化合物、フォスフォナイト系化合物等が挙げられる。これら酸化防止剤は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。特に色相安定化の観点から、ヒンダードフェノール系化合物とリン系エステル化合物を併用して用いることが好ましい。また酸化防止剤は、前記熱収縮性フィルムの重量を100%とするとき、0.01〜1重量%含まれることが好ましく、0.03〜0.5重量%含有されることがより好ましい
【0030】
前記の滑剤としては、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル等が挙げられる。脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸等が挙げられる。脂肪酸アミドとしては、リシノールアミド、ベヘンアミド等が挙げられる。脂肪酸エステルとしては、ソルビタンエステル、n−ブチルステアレート、高級脂肪酸のグリセリンエステル等が挙げられる。
【0031】
前記のアンチブロッキング剤としては、合成シリカ、天然シリカ、シリコン樹脂、ポリメチルメタアクリレート等が挙げられる。合成シリカとしては、乾式シリカ、湿式シリカ等が挙げられる。天然シリカとしては、珪藻土等が挙げられる。
【0032】
前記の帯電防止剤としては、例えば、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、炭素原子数8〜22の脂肪酸のアルキルジアルカノールアミド、ポリエチレングリコールエステル、アルキルジエタノールアミン等が挙げられる。
【0033】
前記の顔料としては、例えば、白色顔料、カーボンブラック等が挙げられる。
【0034】
ポリエチレン系樹脂(A)およびポリエチレン系樹脂(B)以外の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エラストマー、要件(a1)および要件(a2)をいずれも充足しないポリエチレン系樹脂等が挙げられる。
【0035】
各層を構成する成分が複数ある場合は、それらの成分は、混合および/または溶融混練した後、後述の製造方法でフィルムとされる。混合方法としては、例えば、タンブラーブレンダー、ヘンシェルミキサーなどで混合する方法があげられる。また、溶融混練方法としては、例えば、単軸押出機や多軸押出機などで溶融混練する方法、ニーダーやバンバリーミキサーなどで溶融混練する方法などがあげられる。
【0036】
本発明の熱収縮性フィルムの製造方法としては例えば、インフレーション成形法、Tダイキャスト成形法、押出ラミネート成形法、ドライラミネート成形法、ウェットラミネート成形法、サンドラミネート成形法などがあげられ、これらは組み合わせ用いてもよい。中でもインフレーションフィルム成形法で製造する方が好ましい。
【0037】
フィルムの製造方法としてインフレーション成形法やTダイキャスト成形法などの押出成形を行う場合、押出成形温度は、通常、110〜250℃である。フィルムと被包装体の密着性を高める観点から、好ましくは130℃以上であり、より好ましくは140℃以上である。また、フィルムの熱収縮性を高める観点から、好ましくは240℃以下であり、より好ましくは220℃以下であり、さらに好ましくは190℃以下である。
【0038】
本発明の熱収縮性フィルムは、無延伸フィルムでもよく、また、得られたフィルムに、さらに後工程で1軸延伸や2軸延伸などの延伸加工が施された延伸フィルムでもよい。好ましくは、多大な設備を必要としない無延伸フィルムである。
【0039】
本発明の熱収縮性フィルムの使用方法は、例えば、複数の缶、ボトル、書籍等の被包装体を本発明の熱収縮性フィルムで覆い、ヒートシールまたは溶断シールによって、袋状または円筒状にした後、加熱用トンネルを通して熱収縮性フィルムを熱収縮させ、被包装体を結束させて包装する方法や、1つの缶、ボトル等の被包装体に対して本発明の熱収縮性フィルムを同様の工程で処理して包装する方法が挙げられる。本発明の熱収縮性フィルムの用途は、被包装体に貼付するラベルや被包装体の保護用の包装材等が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
実施例および比較例の物性は、次の方法に従って測定した。
【0041】
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K 7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃(PE条件)の条件で測定した。
【0042】
(2)密度(単位:kg/m3
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、測定試料片は、JIS K6760−1995に記載の低密度ポリエチレンの方法に従いアニーリングを行い測定に用いた。
【0043】
(3)分子量分布(Mw/Mn、単位:−)
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件(1)〜(9)により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
測定条件
(1)装置:Waters社製 150CV ALC/GPC
(2)分離カラム:昭和電工社製Shodex GPC AT−806MS
(3)温度 :140℃
(4)溶媒 :o−ジクロロベンゼン
(5)溶出溶媒流速:1.0ml/分
(6)試料濃度:1mg/ml
(7)測定注入量:400μl
(8)分子量標準物質:標準ポリスチレン(東ソー社製;分子量=6000000〜500)
(9)検出器:示差屈折
【0044】
(4)流動の活性化エネルギー(Ea、単位:kJ/mol)
粘弾性測定装置(Rheometrics社製Rheometrics Mechanical Spectrometer RMS−800)を用いて、130℃、150℃、170℃および190℃のそれぞれの温度において、下記測定条件で溶融複素粘度−角周波数曲線を測定し、次に、得られた溶融複素粘度−角周波数曲線から、Rheometrics社製計算ソフトウェア Rhios V.4.4.4を用いて、活性化エネルギー(Ea)を求めた。
<測定条件>
ジオメトリー:パラレルプレート
プレート直径:25mm
プレート間隔:1.5〜2mm
ストレイン:5%
角周波数:0.1〜100rad/秒
測定雰囲気:窒素下
【0045】
(5)融点(Tm、単位:℃)
熱プレスにより作成した厚さ約0.5mmのシートから、約10mgの試片を切り出したものを測定用サンプルとし、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製 DSC−7)を用いて測定した。測定では、測定用サンプルを、150℃で5分間保持した後、1℃/分で40℃まで降温し、次に40℃で5分間保持した後、10℃/分の速度で150℃まで昇温した。40℃から150℃まで10℃/分の速度で昇温した際に得られる融解曲線の融解ピークから融点を求めた。
【0046】
(6)g*
g*=[η]/([η]GPC×gSCB*) (II)
前記式(II)によってg*を求めた。
[η]は以下の方法で求めた。まず、ポリエチレン系樹脂の相対粘度(ηrel)を、熱劣化防止剤としてブチルヒドロキシトルエン(BHT)を0.5重量%含むテトラリン100mlに、ポリエチレン系樹脂100mgを135℃で溶解してサンプル溶液を調製し、ウベローデ型粘度計を用いて前記サンプル溶液と熱劣化防止剤としてBHTを0.5重量%のみを含むテトラリンからなるブランク溶液との降下時間から算出した。算出した相対粘度(ηrel)を、式(II−I)に代入し、[η]を求めた。
[η]GPCは、以下の方法で求めた。前記の(3)分子量分布の測定結果より、粘度平均分子量(Mv)を算出した。算出したMvを式(II−II)に代入し、[η]GPCを求めた。
SCB*は、式(II−V)により求めたAを式(II−III)に代入して求めた。なお、ポリエチレン系樹脂中の短鎖分岐の分岐短鎖数nと、炭素原子1000個あたりの短鎖分岐数yの測定ならびに計算は、文献(Die Makromoleculare Chemie, 177, 449 (1976) McRae, M. A., Madams, W. F. )記載の方法に従い、α−オレフィン由来の特性吸収を利用して実施した。赤外吸収スペクトルは、赤外分光光度計(日本分光工業社製 FT−IR7300)を用いて測定した。
【0047】
(7)各種分岐数の算出方法
炭素核磁気共鳴法によって、次の測定条件により、炭素核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定し、下記算出法より求めた。
<測定条件>
装置:Bruker社製 AVANCE600
測定プローブ:10mmクライオプローブ
測定溶媒:1,2−ジクロロベンゼン/1,2−ジクロロベンゼン−d4
=75/25(容積比)の混合液
測定温度:130℃
測定方法:プロトンデカップリング法
パルス幅:45度
パルス繰り返し時間:4秒
測定基準:テトラメチルシラン
窓関数 :エクスポネンシャルまたはガウシャン
積算回数:2500回
<分岐度の算出方法>
炭素原子数5の算出方法 (NC5、単位:1/1000C)
窓関数にエクスポネンシャルを適用した13C−NMRスペクトルにおいて、5〜50ppmに観測されるすべてのピークの総和を1000として、32.5〜32.7ppmに付近にピークトップを有するピークのピーク面積を求めた。
炭素原子数6以上の分岐数(NLCB、単位:1/1000C)
窓関数にエクスポネンシャルを適用した13C−NMRスペクトルにおいて、5〜50ppmに観測されるすべてのピークの総和を1000として、38.09〜38.27ppmに付近にピークトップを有するピークのピーク面積をAとする。このAは炭素原子数4以上の分岐メチン炭素に相当する値である。炭素原子数5以下の分岐メチン炭素と炭素原子数6以上の分岐メチン炭素のピークを分離するために、窓関数にガウシャンを適用し、ガウシャンを適用した13C−NMRスペクトルにおいて、38.21〜38.27ppmに観測されるピークをB、38.21〜38.09ppmに観測されるピークをCとする。そして以下の式より、NLCBを求めた。
LCB=A×B/(B+C)
【0048】
[フィルムの物性]
【0049】
(8)引裂強度(単位:kN/m )
ASTM D1922に規定された方法に従って測定した。
【0050】
(9)ダート衝撃強度(単位:kJ/m)
ASTM D1709に規定された方法(A法)に従って測定した。この値が高いほど耐衝撃性が良好であることを示す。
【0051】
(10)熱収縮性
縦9cm、横9cmのフィルム試験片を、縦10.5cm、横10.5cmで100メッシュの2枚のステンレス製金網に挟み、フィルム試験片を固定した後、所定温度に調整した油浴中に5秒間浸漬し、熱処理を行った。MD方向、TD方向のそれぞれについて、処理前後のフィルム試験片の寸法を測定し、下記式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%) = [{(熱処理前の寸法)−(熱処理後の寸法)}/(熱処理前の寸法)]×100
【0052】
(11)ブロッキング(単位:N/m2)
225mm×100mmのフィルムを用いて、フィルム同士を重ね合わせ、100mm×100mmの範囲を40kg/cm2の荷重下、40℃で1週間、状態調整を行った。その後、23℃・湿度50%の雰囲気下に30分以上放置し、島津製作所ブロッキングテスターを用いて、20g/分の剥離速度で、試料の剥離に要する強度を測定した。数値が小さい方がブロッキングしにくいことを示す。
【0053】
(12)粘着強度(単位:N/25mm巾)
初期の粘着強度を以下の手順以下の手順(i)〜(iv)によって、所定温度(40℃または60℃)でエージング後の粘着強度を手順(v)〜(viii)によって測定した。粘着強度が0.03以上であれば、粘着性を有するといえる。
(i)粘着フィルムをアクリル板に貼り付ける。
(ii)これを、重さ5Kgのゴム被覆ローラーで圧着する。
(iii)23℃で30分間放置する。
(iv)23℃の雰囲気中、剥離巾25mm、ピール角度180°、剥離速度300mm/分の条件下でアクリル板から粘着フィルムを剥離させるに要する力(剥離力)を測定し、これを初期の粘着強度(N/25mm巾)とした。
(v)粘着フィルムをアクリル板に貼り付ける。
(vi)これを、重さ5Kgのゴム被覆ローラーで圧着する。
(vii)所定温度で1時間放置した後、23℃で約30分間放置する。
(viii)23℃の雰囲気中、剥離巾25mm、ピール角度180°、剥離速度300mm/分の条件下でアクリル板から粘着フィルムを剥離させるに要する力(剥離力)を測定し、これをエージング後の粘着強度(N/25mm巾)とした。
【0054】
[実施例1]
(1)助触媒担体の調製
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;50%体積平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m2/g)2.8kgとトルエン24kgとを入れて、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン0.9kgとトルエン1.4kgとの混合溶液を反応器の温度を5℃に保ちながら30分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に95℃に昇温し、95℃で3時間撹拌し、ろ過した。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで6回、洗浄を行った。その後、トルエン7.1kgを加えスラリーとし、一晩静置した。
【0055】
上記で得られたスラリーに、ジエチル亜鉛のヘキサン溶液(ジエチル亜鉛濃度:50重量%)3.46kgとヘキサン2.05kgとを投入し、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、3,4,5−トリフルオロフェノール1.55kgとトルエン2.88kgとの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら60分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で1時間撹拌した。その後、5℃に冷却し、H2O0.221kgを反応器の温度を5℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、5℃で1.5時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で2時間撹拌し、更に80℃に昇温し、80℃で2時間撹拌した。撹拌後、室温にて、残量16Lまで上澄み液を抜き出し、トルエン11.6kgを投入し、次に、95℃に昇温し、4時間撹拌した。撹拌後、室温にて、上澄み液を抜き出し、固体生成物を得た。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで4回、ヘキサン24リットルで3回、洗浄を行った。その後、乾燥することにより、固体成分(以下、助触媒担体(a)と称する。)を得た。
【0056】
(2)予備重合触媒成分の調製
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン80リットルを投入した後、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド144mmolを投入し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に上記助触媒担体(a)0.5kgを投入し、オートクレーブを31℃まで降温して系内が安定した後、エチレンを0.1kg、水素を0.1リットル(常温常圧体積)仕込み、続いてトリイソブチルアルミニウム207mmolを投入して重合を開始した。エチレンと水素をそれぞれ0.6kg/Hrと0.5リットル(常温常圧体積)で連続供給しながら30分経過した後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素をそれぞれ3.6kg/Hrと10.9リットル(常温常圧体積)/時間で連続供給することによって合計6時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素などをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、助触媒担体(a)1g当り37gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分を得た。該ポリエチレンの[η]は1.51dl/gであった。
【0057】
(3)エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体の製造
上記の予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ブテンと1−ヘキセンとの共重合を実施した。重合条件は、温度84℃、全圧2MPa、エチレンに対する水素のモル比は1.04%、エチレンに対する1−ブテンのモル比は2.16%、エチレンに対する1−ヘキセンのモル比は0.73%で、重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。さらに、流動床の総パウダー重量を80kgに維持し、平均重合時間4時間となるように、上記予備重合触媒成分と、トリイソブチルアルミニウムとを一定の割合で連続的に供給した。重合により、22.9kg/時間の重合効率でエチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体(以下、PE−1と称する。)のパウダーを得た。
【0058】
(4)エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体パウダーの造粒
上記で得たPE−1のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)により、フィード速度50kg/時間、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度4.2mm、サクション圧力0.2MPa、樹脂温度200〜230℃条件で造粒することにより、PE−1のペレットを得た。PE−1のペレットの評価結果を表1に示す。
【0059】
(5)予備重合触媒成分(2)の調製
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン80リットルを投入した後、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド144mmolを投入し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に上記助触媒担体(a)0.5kgを投入し、オートクレーブを31℃まで降温して系内が安定した後、エチレンを0.1kg、水素を0.1リットル(常温常圧体積)仕込み、続いてトリイソブチルアルミニウム207mmolを投入して重合を開始した。エチレンと水素をそれぞれ0.6kg/Hrと0.5リットル(常温常圧体積)で連続供給しながら30分経過した後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素をそれぞれ3.6kg/時間と10.9リットル(常温常圧体積)/時間で連続供給することによって合計6時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素などをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、助触媒担体(a)1g当り37gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分(2)を得た。
【0060】
(6)エチレン−1−ヘキセン共重合体の製造
上記の予備重合触媒成分(2)を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンとの共重合を実施した。重合条件は、温度80℃、全圧2MPa、エチレンに対する水素のモル比は1.48%、エチレンに対する1−ヘキセンのモル比は1.70%で、重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。さらに、流動床の総パウダー重量を80kgに維持し、平均重合時間4hrとなるように、上記予備重合触媒成分と、トリイソブチルアルミニウムとを一定の割合で連続的に供給した。重合により、20.3kg/時間の重合効率でエチレン−1−ヘキセン共重合体(以下、PE−2と称する。)のパウダーを得た。
【0061】
(7)エチレン−1−ヘキセン共重合体パウダーの造粒
上記で得たPE−2のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)により、フィード速度50kg/時間、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度4.2mm、サクション圧力0.2MPa、樹脂温度200〜230℃条件で造粒することにより、PE−2のペレットを得た。PE−2のペレットの評価結果を表1に示す。
【0062】
(8)フィルム成形
上記のPE−1のペレットを96重量部と、市販の酸化防止剤マスターバッチ(住友化学株式会社製、「CMB−735」;以下、AO−MBと記す。)を4重量部とをタンブラーミキサーを用いて均一にペレット混合し、得られた混合物をスクリュー径50mmφの押出機3台からなる3層共押出インフレーション成形機(ダイ系100mm、リップ開度2.0mm)の外層用押出機、および中間層用押出機に導入し、上記のPE−2のペレットを96重量部と、AO−MBを4重量部とをタンブラーミキサーを用いて均一にペレット混合し、得られた混合物を内層用の押出機に導入し、成形温度として押出機、ダイ設定温度を190℃とし、中間層、内層、および外層の押出量をそれぞれ12kg/時間、ブローアップレイシオを3.5の条件で厚み50μmの共押出インフレーション成形を行った。得られた多層フィルムの物性評価結果を表2に示した。外層と内層が基材層であり、内層が粘着層である。
【0063】
[実施例2]
【0064】
(1)予備重合触媒成分(3)の調製
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン70リットルを投入した後、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド30.7mmolを投入し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を5時間行った。次にオートクレーブを30℃まで降温して系内が安定した後、エチレンをオートクレーブ内のガス相圧力で0.03MPa分仕込み、上記助触媒担体(a)0.7kgを投入し、続いてトリイソブチルアルミニウム123mmolを投入して重合を開始した。エチレンを0.7kg/時間で連続供給しながら30分経過した後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素をそれぞれ2.8kg/時間と8.5リットル(常温常圧体積)/Hrで連続供給することによって合計5.5時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素ガスなどをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、上記助触媒担体(a)1g当り20.5gのポリエチレンが予備重合された予備重合触媒成分(3)を得た。
【0065】
(2)エチレン−1−ヘキセン共重合体の製造
上記で得た予備重合触媒成分(3)を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンの共重合を実施し、重合体パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を87℃、重合圧力を2MPa、エチレンに対する水素モル比を0.63%、エチレンと1−ヘキセンとの合計に対する1−ヘキセンモル比をそれぞれ0.78%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。また、上記予備重合触媒成分とトリイソブチルアルミニウムを連続的に供給し、流動床の総パウダー重量80kgを一定に維持した。平均重合時間4時間であった。得られた重合体パウダーを押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)を用いて、フィード速度50kg/時間、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200〜230℃の条件で造粒することによりエチレン−1−ヘキセン−1共重合体(以下PE−3)を得た。得られた共重合体の物性評価の結果を表1に示した。
【0066】
(3)エチレン−1−ヘキセン共重合体パウダーの造粒
上記で得たPE−3のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)により、フィード速度50kg/時間、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度4.2mm、サクション圧力0.2MPa、樹脂温度200〜230℃条件で造粒することにより、PE−3のペレットを得た。PE−3のペレットの評価結果を表1に示す。
【0067】
(4)フィルム成形
インフレーション成形において、中間層用押出機に導入する樹脂を上記のPE−3のペレットを96重量部と、AO−MBを4重量部とをタンブラーミキサーを用いて均一にペレット混合したものとした以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。外層と中間層が基材層であり、内層が粘着層である。
【0068】
[比較例1]
インフレーション成形において、内層用押出機に導入する樹脂を市販のエチレン−1−ヘキセン共重合体(住友化学株式会社製、「スミカセンHiα FW201−0」(密度=912kg/m3、メルトフローレート=2.0g/10分);以下、LL−1と記す。LL−1の物性を表1に示す。)のペレットを100重量部とした以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
【0069】
[比較例2]
インフレーション成形において、内層用押出機に導入する樹脂を市販のエチレン−1−ヘキセン共重合体(住友化学株式会社製、「スミカセンHiα CW5001」(密度=908kg/m3、メルトフローレート=13g/10分);以下、LL−2と記す。LL−2の物性を表1に示す。)のペレットを100重量部とした以外は実施例1と同様に行った。得られたフィルムの評価結果を表2に示す。
【0070】
[比較例3]
(1)フィルム成形
PE−1のペレット100重量部を、スクリュー径55mmφの単軸押出機、リップ径75mmφでリップギャプ2.0mmのインフレーション成形機(SHIモダンマシナリー(株)製)に導入し、成形温度(押出機およびダイ設定温度)160℃、押出量25kg/hr、ブローアップ比約3.5の条件でインフレーション成形を行い、厚み50μmの単層フィルムを得た。得られた単層フィルムの物性評価結果を表3に示した。
【0071】
[比較例4]
(1)予備重合触媒成分(4)の調製
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、ブタン80リットルを投入した後、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド144mmolを投入し、オートクレーブを50℃まで昇温して撹拌を2時間行った。次に上記助触媒担体(a)0.5kgを投入し、オートクレーブを31℃まで降温して系内が安定した後、エチレンを0.1kg、水素を0.1リットル(常温常圧体積)仕込み、続いてトリイソブチルアルミニウム207mmolを投入して重合を開始した。エチレンと水素をそれぞれ0.6kg/時間と0.5リットル(常温常圧体積)で連続供給しながら30分経過した後、50℃へ昇温するとともに、エチレンと水素をそれぞれ3.6kg/時間と10.9リットル(常温常圧体積)/時間で連続供給することによって合計6時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素などをパージして残った固体を室温にて真空乾燥し、助触媒担体(a)1g当り37gのポリエチレンを含有する予備重合触媒成分(4)を得た。該ポリエチレンの[η]は1.51dl/gであった。
【0072】
(2)エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体の製造
上記の予備重合触媒成分(4)を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ブテンと1−ヘキセンとの共重合を実施した。重合条件は、温度84℃、全圧2MPa、エチレンに対する水素のモル比は1.4%、エチレンに対する1−ブテンのモル比は2.3%、エチレンに対する1−ヘキセンのモル比は1.0%で、重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、水素を連続的に供給した。さらに、流動床の総パウダー重量を80kgに維持し、平均重合時間4時間となるように、上記予備重合触媒成分と、トリイソブチルアルミニウムとを一定の割合で連続的に供給した。重合により、22.9kg/時間の重合効率でエチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体(以下、PE−4と称する。)のパウダーを得た。
【0073】
(3)エチレン−1−ブテン−1−ヘキセン共重合体パウダーの造粒
上記で得たPE−4のパウダーを、押出機(神戸製鋼所社製 LCM50)により、フィード速度50kg/時間、スクリュー回転数450rpm、ゲート開度4.2mm、サクション圧力0.2MPa、樹脂温度200〜230℃条件で造粒することにより、PE−4のペレットを得た。PE−4のペレットの評価結果を表1に示す。
【0074】
(4)フィルム成形
インフレーション成形において、PE−4のペレットを100重量部とした以外は比較例3と同様に行った。得られたフィルムの評価結果を表3に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a1)と(a2)と(a3)の全てを充足するポリエチレン系樹脂(A)を含有する層1と、下記要件(b1)と(b2)と(b3)の全てを充足するポリエチレン系樹脂(B)を含有する層2を有する熱収縮性フィルム
(a1):13C−NMRにより測定される炭素原子数6以上の分岐数(NLCB)が炭素原子1000個あたり0.01以上であり、かつ炭素原子数5の分岐数(NC5)が炭素原子1000個あたり0.1未満であること
(a2):流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であること
(a3):密度が920kg/m以上であること
(b1):13C−NMRにより測定される炭素原子数6以上の分岐数(NLCB)が炭素原子1000個あたり0.01以上であり、かつ炭素原子数5の分岐数(NC5)が炭素原子1000個あたり0.1未満であること
(b2):流動の活性化エネルギー(Ea)が40kJ/mol以上であること
(b3):密度が900〜915kg/mであること
【請求項2】
前記ポリエチレン系樹脂(A)が、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、下記要件(a4)を充足するエチレン−α−オレフィン共重合体である請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
(a4):分子量分布(Mw/Mn)が5〜25であること
【請求項3】
前記ポリエチレン系樹脂(B)が、エチレンに基づく単量体単位と炭素原子数3〜20のα−オレフィンに基づく単量体単位とを有し、下記要件(b4)を充足するエチレン−α−オレフィン共重合体である請求項1または2に記載の熱収縮性フィルム。
(b4):分子量分布(Mw/Mn)が5〜25であること

【公開番号】特開2012−51119(P2012−51119A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193380(P2010−193380)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】