説明

熱可塑性エラストマーをベースにした混合物

【課題】熱可塑性エラストマーをベースにした混合物と、この混合物から作られた物品、例えばフィルム、ホイル、ロッドおよびチューブ。
【解決手段】99〜10%のポリアミドブロックがラウリルラクタム残基を主成分とするポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマー(A)と、1〜90%の(1)ポリアミド12以外のポリアミド、(2)ラウリルラクタム残基が主成分でないコポリアミド、(3)ポリアミドブロックがラウリルラクタム残基を主成分としないポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマーの中から選択される少なくとも一種のポリマー(B)との混合物(合計100重量%)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマーは熱可塑性エラストマーであり、ポリエーテル ブロック アミド(PEBA)ともよばれ、ポリアミドエラストマーともよばれる。
本発明は主成分がラウリルラクタム残基であるポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマーと、PA−12ポリアミド以外のポリアミドか、主成分がラウリルラクタム残基でないポリアミドブロックとポリエーテルブロックとの別のコポリマーとのブレンドに関するものである。「残基」とは重縮合後のモノマー構造を意味する。本発明のコポリマーはイオン官能基を含まない。
本発明コポリマーは多くの物品、特に運動靴の製造で用いられる。
【背景技術】
【0002】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーは多くの特許に開示されている。下記文献に開示のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーはポリアミドブロックがPA−6(ナイロン−6またはポリカプロラクタム)からなり、ポリエーテルブロックが数平均分子量Mnが680〜4040のPTMG(ポリテトラメチレングリコールまたはポリオキシテトラメチレングリコールまたはポリテトラヒドロフラン)からなる。
【特許文献1】米国特許第4,820,796号明細書
【0003】
しかし、このコポリマーは透明度が不十分である。
下記文献に記載のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーはポリアミドブロックがPA−6(ナイロン−6またはポリカプロラクタム)からなり、ポリエーテルブロックが数平均分子量Mnが1000〜2000のPTMG(ポリテトラメチレングリコールまたはポリオキシテトラメチレングリコールまたはポリテトラヒドロフラン)からなる。
【特許文献2】米国特許第5,280,087号明細書
【0004】
このコポリマーも透明度が不十分である。
下記文献にはコポリアミドからなるブロックを有するポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーが開示されている。
【特許文献3】特開平05-078477A号公報(1993年3月30日公開)
【0005】
しかし、ポリエーテルブロックは30〜99重量%のPEG(ポリエチレングリコールまたはポリオキシエチレングリコール)を含むPTMGとPEGとのブレンドで、PTMGの数平均分子量Mnは1000〜2000、PEGの数平均分子量Mnは1000〜2020である。このコポリマーは樹脂の帯電防止性に用いられる。また、蒸気浸透性が優れていると記載されている。
【0006】
下記文献にも透明なポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーが開示されている。
【特許文献4】国際特許第04 037898号公報
【0007】
このコポリマーの特徴はポリエーテルブロックは数平均分子量Mnが200〜4000g/molのPTMGで主として構成され、ポリアミドブロックは直鎖(非環状、非分岐鎖)の脂肪族の半結晶の主モノマーと、非晶質ポリエーテルブロックとの非混和性を維持した状態で主モノマーの結晶化度を下げるのに十分な量の少なくとも一種のコモノマーとで構成され、さらに、Dショアー硬度が20〜70である点にある。「透明」とは厚さが少なくとも2mmの試験片での不透明度(opacite)が12%以下である状態と定義されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、ポリアミドブロックの主成分がラウリルラクタム残基であるポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマーの特性は、PA−12ポリアミド以外のポリアミドか、ポリアミドブロックの主成分がラウリルラクタム残基ではない別のポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマーを上記コポリマーと混合することによって改良でき、特に光学特性が改良されるということを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の対象は下記のコポリマー(A)とポリマー(B)とを含み、コポリマー(A)およびポリマー(B)がイオン官能基を含まないブレンド(合計100重量%)にある:
99〜10%の、ポリアミドブロックがラウリルラクタム残基を主成分とするポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマー(A)、
1〜90%の、下記(1)〜(3)の中から選択される少なくとも一種のポリマー(B):
(1)PA−12ポリアミド以外のポリアミド、
(2)ラウリルラクタム残基が主成分でないコポリアミド、
(3)ポリアミドブロックがラウリルラクタム残基を主成分としないポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマー。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明ブレンドの一実施例では(B)は透明である。
本発明ブレンドの一実施例では(B)はPA−11である。
本発明ブレンドの一実施例では(B)は11−アミノウンデカン酸残基を主成分とするコポリアミドの中から選択される。
本発明ブレンドの一実施例では(B)はポリアミドブロックがPA−11か、11−アミノウンデカン酸を主成分とするコポリアミドであるポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマーの中から選択される。
本発明ブレンドの一実施例では95〜60%の(A)に対して(B)の比率は5〜40%である。
本発明ブレンドの一実施例では90〜65%の(A)に対して(B)の比率は10〜35%である。
本発明の別の対象は上記ブレンドで製造した物品にある。この物品は例えばフィルム、シート、プレート、ロッド、チューブである。
【0011】
ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー(A)は反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合で得られる、例としては下記(1)〜(3)がある:
(1)ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ジカルボン酸鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックとの共重縮合、
(2)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオールとよばれる脂肪族ジヒドロキシル化したα,ω-ポリオキシアルキレンブロックをシアノエチル化および水素添加して得られるジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック共重縮合、
(3)ジカルボン酸鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール共重縮合(この場合に得られる生成物を特にポリエーテルエステルアミドという)。本発明のコポリマーはこのタイプであるのが有利である。
【0012】
ジカルボン鎖末端を有するポリアミドブロックは例えば連鎖制限剤のジカルボン酸の存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えば連鎖制限剤のジアミン酸の存在下でのポリアミド先駆体の縮合で得られる。ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーはランダムに分散する単位を含んでいてもよい。このポリマーはポリエーテルとポリアミドブロック先駆体との同時反応で製造される。
【0013】
例えば、ポリエーテルジオールと、ポリアミド先駆体と、連鎖制限剤の二酸とを反応させることができる。基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られる。さらに、各成分がランダムに反応し、ポリマー鎖中に分散した成分を含むことがある。また、ポリエーテルジアミン、ポリアミド先駆体および連鎖制限剤の二酸を反応させることもできる。この場合には基本的に種々の長さのポリエーテルブロックとポリアミドブロックとを有するポリマーが得られ、さらに各成分がランダムに反応してポリマー鎖中に分散した成分を含むこともある。
【0014】
ポリアミドブロック(A)の主成分はラウリルラクタム残基である。すなわち、少なくとも50.5重量%、好ましくは少なくとも55重量%、さらに好ましくは60重量%のラウリルラクタム残基を含む。ポリアミドブロック(A)をラウリルラクタム残基のみで構成することもできる。この比率はポリアミドブロックを形成するモノマーの残基に対して表し、連鎖制限剤は含まない。ポリアミドブロックの他の成分はカプロラクタムまたはエナントラクタムのような別のラクタムまたは7−アミノヘプタン酸および11−アミノウンデカン酸のような脂肪族α,ω−アミノカルボン酸にすることができる。ポリアミドブロックの他の成分を二酸(ジアシッド)とジアミンとの等モル混合物にすることもできる。ポリアミドブロックの他の成分を別のラクタムまたは12個の炭素原子を含まない脂肪族α,ω−アミノカルボン酸および二酸とジアミンとの等モル混合物にすることもできる。
【0015】
脂肪族ジアミンの例としてはヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンが挙げられる。脂環式二酸の例としては1,4−シクロヘキシルジカルボン酸を挙げることができる。脂肪族二酸の例としてはブタン二酸(acid butane-dioique)、アジピン酸、アゼライン酸、コルク酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー化した脂肪酸(このダイマー化した脂肪酸の二量体含有量は少なくとも98%で、好ましくは水素化されているのが好ましく、ユニケマ社(Unichema)から商標名プリポル(PRIPOL)、ヘンケル社(Henkel)から商標名EMPOLで市販されている)、α、ω−ポリオキシアルキレン二酸を挙げることができる。
【0016】
芳香族二酸の例としてはテレフタル(T)酸およびイソフタル(I)酸を挙げることができる。
脂環式ジアミンはビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)−メタン(BMACM)2,2−ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)およびパラ−アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)の異性体でもよい。一般に使用されている他のジアミンにはイソホロンジアミン(IPDA)、2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)およびピペラジンがある。
【0017】
ポリエーテルブロックはポリアミドとポリエーテルブロックとのコポリマーの5〜49.5重量%、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは10〜25重量%である。ポリエーテルブロックはアルキレンオキシド単位から成り、この単位は例えばエチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位、トリメチレンエーテル単位またはテトラヒドロフラン単位(ポリテトラメチレングリコール結合になる)にすることができる。すなわち、PEG(すなわちエチレンオキシド単位から成る)ブロック、PPG(すなわちプロピレンオキシド単位から成る)ブロック、PTMG(すなわちテトラメチレングリコール単位から成る)ブロック(ポリテトラヒドロフランブロックともよばれる)が使用される。ランダムまたはブロックコポリエーテルを挙げることもできる。このポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー中のポリエーテルブロックの量はコポリマーの10〜70重量%、好ましくは35〜60重量%であるのが有利である。
【0018】
ポリエーテルジオールブロックをそのまま用い、カルボキシ末端基を有するポリアミドブロックと共重縮合するか、アミノ化してポリエーテルジアミンに変換し、カルボキシ末端基を有するポリアミドブロックと縮合する。また、ポリエーテルジオールブロックをポリアミド先駆体および連鎖制限剤である二酸と混合してランダムに分散した単位を有するポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するポリマーにすることもできる。
【0019】
ポリアミドブロックの数平均分子量Mnは500〜10000、好ましくは500〜4000である。ポリエーテルブロックの数平均分子量Mnは100〜6000、好ましくは200〜3000である。
予め調製したポリアミドブロックとポリエーテルブロックとの共重縮合で得られる場合でも、1段階法の反応で得られる場合でも、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーは例えば初期濃度0.8g/100ml、25℃のメタクレゾール中で測定した固有粘度が0.8〜2.5である。ポリトリメチレンエーテルブロックを有するこの種コポリマーは下記文献に記載されている。コポリマー(A)の調製は下記文献に記載されている。
【特許文献5】米国特許第6590065号明細書
【0020】
リジッドなポリアミドブロックはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーの主成分(重量%)であり、ソフトなポリエーテルブロックはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーで少数成分(重量%)である。
【0021】
ポリマー(B)は下記の中から選択される:
(1)PA−12ポリアミド以外のポリアミド、
(2)ラウリルラクタム残基が主成分でないコポリアミド、
(3)ポリアミドブロックがラウリルラクタム残基を主成分としないポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマー、
リジッドなポリアミドブロックがポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーの主成分(重量%)であり、ソフトなポリエーテルブロックはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーの少数成分(重量%)である。
上記ポリマーの中から最も透明なポリマーを選択するのが有利である。
【0022】
PA−12ポリアミド以外のポリアミドの例としてはPA−6、PA−6,6、PA−6,9、PA−6,10、PA−6,12、PA−6,18およびPA−11が挙げられる。
ラウリルラクタム残基が主成分でないコポリアミドの例としてはPA−6、PA−6/6,6、PA−6/11、PA−6/11/6,6およびアミノウンデカン酸残基を主成分とするコポリアミド(PA−11)が挙げられる。
【0023】
ポリアミドブロックがラウリルラクタム残基を主成分としないポリアミドブロックとポリエーテルブロックとのコポリマーの例は、ポリアミドブロックがPA−12ポリアミド以外のポリアミドか、ラウリルラクタム残基が主成分でないコポリアミドである(A)のようなコポリマーである。このようなポリアミドブロックまたはポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー(B)のコポリアミドブロックの例としては上述したPA−12ポリアミド以外のポリアミドおよびラウリルラクタム残基が主成分でないコポリアミドが挙げられる。ポリエーテルブロックはポリアミドとポリエーテルブロックとのコポリマーの5〜49.5重量%、好ましくは10〜30重量%、さらに好ましくは10〜25重量%である。
【0024】
(A)および(B)の比率は95〜60%の(A)に対して(B)の比率が5〜40%であるのが有利である。90〜65%の(A)に対して(B)の比率が10〜35%であるのが好ましい。(A)と(B)の混合は熱可塑性樹脂で用いられる通常の装置で溶融状態で行う。本発明のブレンドはポリアミドの通常の添加剤を含むことができる。
【実施例】
【0025】
コポリマー(A)として、Mn=5000のPA−12ブロックとMn=650のPTMGブロックとを有するコポリマーを用いた。このコポリマーの固有粘度は1.33〜1.48で、Dショアー硬度は70であった。
コポリマー(B)として、Mn=5000のPA−11ブロックとMn=650のPTMGブロックとを有するコポリマーを用いた。このコポリマーの固有粘度は1.33〜1.48で、Dショアー硬度は70であった。
100×100×2mm3のシートの光透過率および不透明度を測定した。
不透明度(%で表す)は黒色支持体に載せた材料の反射率の白色支持体に載せた材料の反射率に対する比である。結果は[表1]に示してある。
【0026】
【表1】

【0027】
本発明のコポリマーの透明度は厚さが2〜4mmのシートで測定した。
透過率および不透明度は[図1]および[図2]に示してある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】は透過率を示すグラフ。
【図2】は不透明度を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記コポリマー(A)とポリマー(B)の混合物であって、コポリマー(A)およびポリマー(B)がイオン官能基を含まないことを特徴とするブレンド(合計100重量%):
ラウリルラクタム残基を主成分とするポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー(A) 99〜10%、
下記(1)〜(3)の中から選択される少なくとも一種のポリマー(B) 1〜90%:
(1)PA−12ポリアミド以外のポリアミド、
(2)主成分がラウリルラクタム残基でないコポリアミド、
(3)主成分がラウリルラクタム残基でないポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマー。
【請求項2】
ポリマー(B)が透明である請求項1に記載のブレンド。
【請求項3】
ポリマー(B)がPA−11である請求項1または2に記載のブレンド。
【請求項4】
ポリマー(B)が主成分が11−アミノウンデカン酸残基であるコポリアミドの中から選択される請求項1または2に記載のブレンド。
【請求項5】
ポリマー(B)がポリアミドブロックがPA−11であるポリアミドブロックとポリエーテルブロックとを有するコポリマーまたは11−アミノウンデカン酸を主成分とするコポリアミドの中から選択される請求項1または2に記載のブレンド。
【請求項6】
95〜60%のコポリマー(A)に対してポリマー(B)の比率が5〜40%である請求項1〜5のいずれか一項に記載のブレンド。
【請求項7】
90〜65%のコポリマー(A)に対してポリマー(B)の比率が10〜35%である請求項6に記載のブレンド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のブレンドを用いて製造した物品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−535994(P2008−535994A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−505926(P2008−505926)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【国際出願番号】PCT/FR2006/000803
【国際公開番号】WO2006/108959
【国際公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】