説明

熱可塑性エラストマー組成物

【課題】引裂き強度、引裂き強度、耐摩耗性、成形品の表面外観特性に優れた熱可塑性エラストマー組成物を提供する。
【解決手段】上記課題は、(A)ゴム質重合体20〜80重量%の存在下に(B)芳香族ビニル単量体または芳香族ビニル単量体およびこれと共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体成分80〜20重量%を重合して得られ、グラフト率が5〜300%、かつ、未グラフト成分の極限粘度〔η〕が0.05〜3.0dl/gである(C)ゴム強化熱可塑性樹脂、および、(D)スチレン系エラストマーと1,2−ポリブタジエンとを主成分とする熱可塑性エラストマー組成物であって、上記組成物中に分散しているゴム粒子の平均粒子径が0.06〜2.00μm、上記組成物中の(C)および(D)の境界部の平均厚さが0.01〜0.20μmである、熱可塑性エラストマー組成物によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム強化熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーを主成分とする、引裂き強度、引張り強度、耐摩耗性に優れ、成形品の表面外観も良好な熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂加工機(射出成形機、押出成形機、ブロー成形機、真空成形機)を用いて、外観の良好な成形品が成形でき、その性能が架橋ゴムと同等である材料の需要が、電気、工業、履物、スポーツ部品分野で高まっている。従来、そのような材料として利用できる熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系もしくはポリエステル系エラストマーが検討されているが、前二者は成形品外観、耐摩耗性が劣り、引裂き強度、引張り強度が不足し、後二者は高価格でかつ硬質材であることから、需要に応えられる材料ではない。しかし、それらの中でも、スチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる熱可塑性エラストマーは、加硫しなくても高いゴム弾性を示し、通常の熱可塑性樹脂の成形機で加工が可能なため、比較的使用されている(例えば、特許文献1参照)
しかしながら、成形品表面が荒く、ウェルドが目立つなどの成形品外観が劣る問題を有している。一方、架橋ゴムは、引裂き強度、引張り強度に優れるが、樹脂加工機による成形が不可能であり、生産性が悪く、需要に応えられない問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−88841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の課題を背景になされたもので、ゴム強化熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマーを主成分とする、引裂き強度、引張り強度、耐摩耗性に優れ、かつ成形品の表面外観も良好な熱可塑性エラストマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(A)ゴム質重合体20〜80重量%の存在下に、(B)芳香族ビニル単量体、または芳香族ビニル単量体およびこれと共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体成分80〜20重量%〔ただし、(A)+(B)=100重量%〕を重合して得られ、グラフト率が5〜300%、かつ、未グラフト成分の極限粘度〔η〕(30℃、メチルエチルケトン中で測定)が0.05〜3.0dl/gである(C)ゴム強化熱可塑性樹脂、ならびに、
(D)スチレン系エラストマーおよび1,2−ポリブタジエン、
を主成分とする熱可塑性エラストマー組成物であって
(a)上記組成物中に分散しているゴム粒子の平均粒子径が0.06〜2.00μm、
(b)上記組成物中の(C)成分および(D)成分の境界部の平均厚さが0.01〜0.20μmであることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、耐摩耗性に優れ、かつ、成形加工性、引裂き強度、引張り強度、成形品表面外観に優れているため、非架橋分野から架橋分野にわたる広い用途範囲に適用でき、工業用品、家電、OA用品、履物底材(紳士、婦人シューズ底、カジュアルシューズ底、スポーツシューズ底)、自動車用品、緩衝材料、住宅建築材料、土木建築材料、コンベアーベルト、包装材などに好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の(A)ゴム質重合体には、ジエン系ゴム質重合体および非ジエン系ゴム質重合体が含まれる。ジエン系ゴム質重合体として、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体(好ましいスチレン含量は、5〜60重量%)、スチレン−イソプレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体などが挙げられる。また、非ジエン系ゴム質重合体としては、例えばエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体などのエチレン−α−オレフィン系ゴム質重合体;スチレン−ブタジエン(ブロック)共重合体の水素添加物、スチレン−イソプレン(ブロック)共重合体の水素添加物、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体の水素添加物、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体の水素添加物、その他のブタジエン系(共)重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエンランダム共重合体の水素添加物などのジエン系重合体の水素添加物;シリコーン系ゴム、アクリル系ゴムなどが挙げられる。
【0008】
これらの中で、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン系(共)重合体の水素添加物、シリコーンゴム、アクリルゴムが好ましく、さらに好ましくは、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体である。これらのゴム質重合体は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0009】
本発明の(C)ゴム強化熱可塑性樹脂中の(A)ゴム質重合体の平均ゴム粒径は、好ましくは0.05〜2μm、さらに好ましくは0.10〜1.5μm、特に好ましくは0.10〜1.0μmである。
【0010】
(A)ゴム質重合体中のトルエン不溶分は、特に限定されないが、0〜95重量%の範囲のものが一般に使用される。ここで、トルエン不溶分(ゲル含有量)とは、(A)ゴム質重合体を、硫酸により凝固させたサンプルを以下の方法により測定した値のことである。すなわち、凝固乾燥した(A)ゴム質重合体〔(A)g〕を100mlのトルエンに浸漬させ、室温で48時間放置後、100メッシュ金網を用いてろ過し、ろ液の一部〔(C)ml〕を正確に採取して蒸発乾固させ、得られた残存固形分〔トルエン可溶分:B(g)〕を秤量し、下記式によってトルエン不溶分とした値である。
トルエン不溶分(重量%)={〔A−B×(100/C)〕/A}×100
このトルエン不溶分の調整は、分子量調節剤の種類、量を選ぶことによって容易に実施することができる。そのほか、トルエン不溶分の調整は、架橋剤の添加、重合時の重合開始剤量、重合開始温度などの選定があり、これらを組み合わせて目的とする(A)ゴム質重合体を得ることができる。さらに、上記平均ゴム粒径や、トルエン不溶分の異なるゴム質重合体を、任意の割合で混合して用いることもできる。
【0011】
(C)成分中の(A)ゴム質重合体の含有量は、20〜80重量%、好ましくは30〜75重量%、さらに好ましくは40〜70重量%である。(A)ゴム質重合体の含有量が20重量%未満では、混練性に劣り、かつ、引張り強度と耐摩耗性が低下し、一方、80重量%を超える場合は、(D)成分との相溶性が低下し、成形加工性および成形品外観が低下する。
【0012】
本発明の(C)ゴム強化熱可塑性樹脂は、(A)ゴム質重合体の存在下に、(B)芳香族ビニル単量体、または芳香族ビニル単量体およびこれと共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体成分を重合して得られる。本発明の(B)単量体成分に用いられる芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノメチルスチレン、ビニルピリジン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、フルオロスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、単独であるいは2種以上混合して用いられる。(C)成分中の芳香族ビニル単量体の使用量は、(B)単量体成分中に、好ましくは20〜100重量%、さらに好ましくは30〜100重量%、特に好ましくは40〜100重量%であり、20重量%未満では、充分な成形性が得られない。
【0013】
(B)単量体成分中の、必要に応じて用いられる、芳香族ビニル単量体と共重合可能な他のビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミノアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル;無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和酸;マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−(p−メチルフェニル)マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどのα,β−不飽和ジカルボン酸のイミド化合物;グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有不飽和化合物;アクリルアミド、メタクリルアミドなどの不飽和カルボン酸アミド;アクリルアミン、メタクリル酸アミノメチル、メタクリル酸アミノエーテル、メタクリル酸アミノプロピル、アミノスチレンなどのアミノ基含有不飽和化合物;3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシスチレンなどの水酸基含有不飽和化合物;ビニルオキサゾリンなどのオキサゾリン基含有不飽和化合物などが挙げられる。これらの中で、アクリロニトリル、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸が好ましい。上記芳香族ビニル単量体と共重合可能な他のビニル系単量体は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。
【0014】
(C)成分中の、芳香族ビニル単量体と共重合可能な他のビニル系単量体の含有量は、(B)単量体成分中に、好ましくは80〜0重量%、さらに好ましくは70〜0重量%、特に好ましくは60〜0重量%である。また、(C)成分中の、(B)単量体成分の含有量は80〜20重量%、好ましくは70〜25重量%、さらに好ましくは60〜30重量%である。
【0015】
本発明の(C)ゴム強化熱可塑性樹脂は、(A)ゴム質重合体の存在下に、(B)単量体成分を乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合などでラジカルグラフト重合を行い、製造することができる。(A)成分の量が多い方が、耐摩耗性が良好である。重合方法として、好ましくは、乳化重合である。この際、乳化重合には、重合開始剤、連鎖移動剤(分子量調節剤)、乳化剤、水などが用いられる。なお、(C)ゴム強化熱可塑性樹脂を製造するのに用いる(A)ゴム質重合体および(B)単量体成分は、(A)ゴム質重合体全量の存在下に、(B)単量体成分を一括添加して重合してもよく、分割もしくは連続添加して重合してもよい。また、これらを組み合わせた添加方法で、重合してもよい。さらに、(A)ゴム質重合体の全量または一部を、重合途中で添加して重合してもよい。
【0016】
重合開始剤としては、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどで代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方などで代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系、あるいは過硫酸塩、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイドなどの過酸化物が使用される。好ましくは、油溶性開始剤であり、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイドなどで代表される有機ハイドロパーオキサイド類と含糖ピロリン酸処方、スルホキシレート処方などで代表される還元剤との組み合わせによるレドックス系がよい。また、重合開始剤は、1種単独で使用することも、あるいは2種以上を混合して用いることもできる。さらに、上記油溶性開始剤と水溶性開始剤とを組み合わせてもよい。組み合わせる場合の水溶性開始剤の添加比率は、全添加量の好ましくは50重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。さらに、重合開始剤は、重合系に一括または連続的に添加することができる。重合開始剤の使用量は、(B)単量体成分に対し、通常、0.1〜1.5重量%、好ましくは0.2〜0.7重量%である。
【0017】
また、連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラエチルチウラムスルフィド、四塩化炭素、臭化エチレンおよびペンタフェニルエタンなどの炭化水素類、またはアクロレイン、メタクロレイン、アリルアルコール、2−エチルヘキシルチオグリコレート、α−メチルスチレンのダイマーなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤の添加方法は、一括添加、分割添加、または連続添加、あるいはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。連鎖移動剤の使用量は、(B)単量体成分に対し、通常、0.01〜2.0重量%程度である。
【0018】
乳化剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、および両性界面活性剤が挙げられる。このうち、アニオン性界面活性剤としては、例えば高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸スルホン酸塩、リン酸塩、脂肪酸塩などが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型などが用いられる。さらに、両性界面活性剤としては、アニオン部分としてカルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩を、カチオン部分としてアミン塩、第4級アンモニウム塩などを持つものなどが挙げられる。これらの乳化剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。乳化剤の添加方法としては、一括添加、分割添加、連続添加、あるいはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。乳化剤の使用量は、(B)単量体成分に対し、通常、0.1〜5.0重量%程度である。
【0019】
なお、本発明で用いられる(C)ゴム強化熱可塑性樹脂は、重合温度10〜95℃、好ましくは30〜95℃の条件下で乳化重合して製造することが望ましい。また、重合終了後、酸化防止剤を添加する場合もある。本発明で用いられる(C)ゴム強化熱可塑性樹脂は、重合して製造したのち、凝固・回収などの回収工程を経て、乾燥後、粉体とする。凝固工程で使用される凝固剤としては、硫酸、酢酸、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウムなどが水溶液にして用いられる。好ましくは、硫酸、硫酸マグネシウム、塩化カルシウムである。また、凝固せずに、スプレードライヤーによる噴霧乾燥を行なってもよい。
【0020】
本発明の(C)ゴム強化熱可塑性樹脂のグラフト率は、5〜300%、好ましくは5〜250%、さらに好ましくは5〜150%である。グラフト率が5%未満では、(D)成分との相溶性が劣るため、成形加工性および耐摩耗性が劣り、成形品表面外観が低下する。一方、300%を超えると、成形加工性、耐摩耗性および成形品表面外観が低下する。上記グラフト率は、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤などの種類や量、さらに、重合時間、重合温度などを変えることにより、容易に制御することができる。また、(B)単量体成分の添加方法によってもグラフト率を変えることができる。この添加方法としては、例えば、一括添加、分割添加、連続添加、あるいはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。
【0021】
本発明の(C)ゴム強化熱可塑性樹脂の分子量に関しては、マトリックス成分(未グラフト成分)であるアセトン可溶分の極限粘度〔η〕(30℃、メチルエチルケトン中で測定)は、0.05〜3.0dl/g、好ましくは0.1〜1.0dl/g、さらに好ましくは0.15〜0.8dl/g、特に好ましくは0.2〜0.8dl/gである。極限粘度〔η〕が0.05dl/g未満では、成形加工性、耐摩耗性および引裂き強度が低下する。一方、3.0dl/gを超えると、成形加工性、引裂き強度および成形品表面外観が低下する。上記極限粘度〔η〕も、グラフト率と同様に、重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤、溶剤などの種類や量、さらに、重合時間、重合温度などを変えることにより、容易に制御することができる。また、(B)単量体成分の添加方法によっても極限粘度〔η〕を変えることができる。この添加方法としては、例えば、一括添加、分割添加、連続添加、あるいはこれらを組み合わせた方法が挙げられる。
【0022】
本発明の(C)ゴム強化熱可塑性樹脂の使用量は、(C)成分と(D)成分の合計100重量部中に、好ましくは1〜80重量部、さらに好ましくは5〜62重量部である。(C)成分の使用量が1重量部未満の場合、耐摩耗性は改良されない。一方、80重量部を超えると、混練性に劣り、引裂き強度、引張り強度が低下する。
【0023】
本発明の(D)熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマーおよび1,2−ポリブタジエンの組合せが使用される。
【0024】
本発明で使用されるスチレン系エラストマーは、具体的には、芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体で、少なくとも一つの芳香族ビニル単量体の重合体ブロックと、少なくとも一つの共役ジエン化合物の重合体ブロックとを含むものであり、直鎖型であっても、ラジアル型であってもよい。また、共役ジエンブロックが少量の芳香族ビニル単量体とのランダム共重合体であってもよいし、芳香族ビニル単量体含量が漸増する、いわゆるテーパー型ブロックであってもよい。
【0025】
ブロック共重合体の構造については特に制限はなく、(A−B)n型、(A−B)n−A型、または(A−B)n−C型のいずれでも使用できる。式中、Aは芳香族ビニル単量体の重合体ブロック、Bは共役ジエン系の重合体ブロック、Cはカップリング剤残基、nは1以上の整数を示す。なお、上記ブロック共重合体において、共役ジエン部分が水素添加されたブロック共重合体を使用することも、もちろん可能である。
【0026】
本発明に使用するスチレン系エラストマーである、芳香族ビニル単量体−共役ジエンブロック共重合体の芳香族ビニル単量体の例としては、上記(B)単量体の芳香族ビニル単量体の例と同様のものが挙げられる。好ましくはスチレンである。これらの芳香族ビニル単量体は、単独であるいは2種以上混合して使用される。また、上記ブロック共重合体に使用される共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、直鎖および側鎖共役ヘキサジエンなどが挙げられる。これらのうち、好ましいものは、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエンである。
【0027】
上記ブロック共重合体の重量平均分子量は、好ましくは10,000〜800,000、さらに好ましくは20,000〜500,000である。また、ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体の含有量は、5〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは20〜50重量%である。上記ブロック共重合体は、1種だけでなく、異なる構造、異なる芳香族ビニル単量体含有量のものを組み合わせて用いても差し支えない。
【0028】
本発明で使用される1,2−ポリブタジエンは、1,2−ビニル結合量が70%以上、好ましくは80%以上、結晶化度が5〜50%、好ましくは10〜35%、および極限粘度〔η〕(30℃、トルエン中で測定)が0.5dl/g以上、好ましくは0.6dl/g以上である。また、異なる1,2−ビニル結合量、結晶化度、極限粘度〔η〕を有する1,2−ポリブタジエンを組み合わせて用いても差し支えない。
【0029】
本発明において、(D)成分の熱可塑性エラストマーとして、スチレン系エラストマーおよび1,2−ポリブタジエンの組合せが使用されることにより、表面の外観の優れた成形品が得られる。
【0030】
本発明の(D)成分の使用量は、(C)成分と(D)成分の合計100重量部中に、好ましくは99〜20重量部、さらに好ましくは95〜38重量部である。(D)成分の使用量が99重量部を超えると、耐摩耗性は改良されない。一方、20重量部未満の場合、混練性に劣り、引裂き強度、引張り強度が低下する。
【0031】
次に、本発明の熱可塑性エラストマー組成物のモルフォロジーについて述べる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、グラフト共重合体である(C)ゴム強化熱可塑性樹脂および(D)熱可塑性エラストマーを主成分とする。本発明の熱可塑性エラストマー組成物を、凍結し、切り出して、四酸化オスミウム(OsO4)で染色し、試料として、透過型電子顕微鏡(以下「TEM」という)で撮影した写真を観察したところ、本発明の組成物の構造としては、組成物中に黒色のゴム粒子が分散しており、ゴム粒子の内部と外部には、白色のグラフト部(樹脂部分)が存在する。本発明における境界部とは、上記ゴム粒子の外部グラフト部と(D)成分との相溶化部分のことであり、外部グラフト部のみではないことが分かった
【0032】
本発明の組成物中に分散しているゴム粒子の平均粒子径とは、TEMで撮影した写真から測定した値をいう。TEMで写真を撮影する場合、試料をミクロトームで切り出すため、ゴム粒子が変形することから、写真に写っているゴム粒子の短径の平均を平均粒子径とした。本発明の組成物中に分散しているゴム粒子の平均粒子径は、0.06〜2.00μm、好ましくは0.06〜1.00μm、さらに好ましくは0.06〜0.70μm、特に好ましくは0.07〜0.30μmである。0.06μ未満であると、ゴム粒子の均一分散性が劣るため、引張り強度と耐摩耗性が低下する。一方、2.00μmを超えると、引張り強度が劣る。上記組成物中に分散しているゴム粒子の平均粒子径は、使用する(A)ゴム質重合体の平均粒子径で決定される。従って、目的とする物性が発現する平均粒子径にするためには、上記範囲内の平均粒子径である(A)成分を使用する必要がある。
【0033】
また、本発明の組成物中の(C)成分と(D)成分との境界部の平均厚さは、0.01〜0.20μm、好ましくは0.015〜0.15μm、さらに好ましくは0.015〜0.10μmである。0.01μm未満の場合は、(C)成分と(D)成分の相溶性が劣るため、引張り強度が劣る。一方、0.20μmを超えると、マトリックス部分が多くなるため、やはり、引張り強度が劣る。上記組成物中の(C)と(D)成分との境界部の平均厚さは、(C)成分のグラフト率、(B)成分の組成、(A)/(B)成分の比率により調整することができる。
【0034】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、必要に応じ、公知の熱可塑性樹脂あるいは添加剤を配合することができる。例えば、熱可塑性樹脂として、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などである。
【0035】
また、添加剤としては、ガラス繊維、表面化学処理ガラス繊維、カーボン繊維、グラファイト、金属繊維、酸化チタンなどのような繊維状充填剤、ガラスバルーン、フライアッシュバルーン、シリカバルーンのような中空充填剤、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、種々の表面処理炭酸カルシウムほか、タルク、水酸化マグネシウム、マイカ、クレー、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン、アルミナ、天然ケイ素、合成ケイ素、カオリン、ケイソウ土、アスベスト、カーボンブラックなどの無機充填剤、プロセス油、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系軟化剤、コールタール、コールタールピッチなどのコールタール類、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤、トール油、サブ油、ミツロウ、カルナウバロウ、ラノリンなどのロウ類、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラノリン酸バリウム、ラノリン酸亜鉛などの脂肪酸および脂肪酸塩、石油樹脂などの合成高分子物質、液状チオコールジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンなどのシリコーンオイル、フタル酸エステル系、アジピン酸エステル系、セバシン酸エステル系、リン酸エステル系などの可塑剤が挙げられる。
【0036】
粘着付与剤としては、クマロンインデン樹脂、テルペン・フェノール樹脂、キシレン・ホルマリン樹脂などが挙げられる。着色剤としては、無機および有機顔料など、発泡剤としては、例えば重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、カルシウムアミド、p−トルエンスルホニルアミドなど、発泡助剤としては、例えばサリチル酸、フタル酸、尿素などが挙げられる。そのほか、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、抗菌剤、防カビ剤、木粉などのセルロース系物質などを適宜加えて混合することができる。これらは、必要に応じて、本発明の熱可塑性エラストマー組成物100重量部に対して、それぞれ300重量部以下の範囲で添加される。
【0037】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を調製する方法としては、特に制限はなく、通常の混練機械、例えばロール、ニーダー、バンバリーミキサー、スクリュー押出機、フィーダールーダー押出機、連続ミキサーなどを用い、混合・溶融混練することができる。なお、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、タンブラー、ヘンシェルミキサーを用い混合することもできる。この混合・溶融混練は、非開放型の混練装置中で行うことが好ましく、また、窒素などの不活性ガス中で行うことが好ましい。混練温度は、通常、100〜180℃、好ましくは100〜150℃であり、混練時間は、通常、5〜20分間、好ましくは5〜10分間である。
【0038】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、優れた加工性を有することから、(発泡)押し出し成形、ブロー成形、射出成形、カレンダー加工、真空成形もしくは圧空成形、インフレーション成形など、各種加工方法を用いて良好な成形品を得ることができる。
【実施例】
【0039】
以下、参考例、実施例および比較例を挙げ、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、参考例、実施例および比較例中の部および%は、特に断らないかぎり重量部および重量%である。また、参考例、実施例および比較例中、各種測定項目は、下記に従った。
【0040】
平均粒径
大塚電子(株)製、レーザー粒径解析システムLPA−3100を用いて、平均粒径を測定した。
ゲル含有量(トルエン不溶分)
上記本文中に記載
【0041】
グラフト率
グラフト共重合体(ゴム強化熱可塑性樹脂)の一定量(x)を、アセトン中に投入し、振とう機で2時間振とうし、遊離の共重合体を溶解させ、遠心分離機を用いてこの溶液を23,000rpmで30分間、遠心分離し、不溶分を得た。次に、真空乾燥機を用いて120℃で1時間乾燥し、乾燥した不溶分(y)を得た。下記式により、グラフト率を算出した。
グラフト率(%)={〔(y)−(x)×グラフト共重合体のゴム分率〕/〔(x)×グラフト共重合体のゴム分率〕}×100
【0042】
極限粘度
上記グラフト率測定時の、遠心分離後のアセトン可溶分をメチルエチルケトンに完全に溶解させ、濃度の異なる5種類のサンプルを調製し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で各濃度サンプルの還元粘度を測定した結果から、極限粘度〔η〕を求めた。
ムーニー粘度
JIS K6300に準拠し、測定温度100℃、予熱1分、測定4分の条件で測定した。
【0043】
重量平均分子量(Mw)
ウォーターズ社製、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC−244)、カラムとして東ソー(株)製、TSK−gel−GMH×1(2)、溶媒としてテトラヒドロフラン、流速0.8ml/分、温度23℃で測定し、ポリスチレン基準で較正した。
1,2−ポリブタジエンの結晶化度
比重換算により、結晶化度を算出した。
スチレン系エラストマー中の結合スチレン量
屈折率から、結合スチレン量を求めた。
【0044】
試料の成形条件
成形は、ISFA170FA〔東芝機械(株)製〕を用いて、シリンダー温度160℃、金型温度35℃、射出圧力60kg/cm2で行った。
混練性
下記基準で評価した。
○;ローター空回りや過度の発熱がなく、容易に混練できる。
×;ローター空回りや、過度の発熱のため、混練が非常に困難である。
分散性
樹脂用プレス機により、試料を薄板状に熱プレスし、ゴム成分の分散状態を確認した。分散状態は、下記基準で評価した。
○;分散不良なし、 ×;分散不良あり
【0045】
耐摩耗性JIS K6264 DIN摩耗試験に準拠して行った。
引裂き強度JIS K6301に準拠して行った。単位はkgf/cmである。
引張り強度JIS K6301に準拠して行った。単位はkgf/cm2である。
【0046】
成形品表面外観〕
成形品表面のフローマーク、肌荒れ、ブラッシュイング、シルバーストリーク、ブルーミングなどを、下記の評価基準に従って目視評価した。
◎;優秀、 ○;優良 、△;可、 ×;凸凹があり、不可
【0047】
ゴム粒子平均粒子径(μm)
組成物を液体窒素で凍結させたのち、ミクロトームで切り出し、四酸化オスミウム(OsO4 )で染色し試料とした。試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、写真撮影した。OsO4 染色では、二重結合を有するゴム部分が黒く染色され、スチレン、アクリロニトリルなどの単量体成分を重合して得られる樹脂成分が染色されず白く見える。樹脂部分は、ゴム粒子の内部と外部に存在する。ゴム粒子の平均粒子径とは、TEM撮影写真上のゴム粒子の短径の平均である。実際には、20個以上のゴム粒子の(C)および(D)の境界部を除いた部分の短径を測定して平均値を求めた。すなわち、ゴム粒子の外部の(C)成分のグラフト部を除いた部分をゴム粒子径として、平均粒子径を測定した。
【0048】
境界部の平均厚さ
上記TEM撮影写真を用いて、ゴム粒子を取り巻く未染色部分として写っている、(C)および(D)の境界部の厚さを測定した。20個以上のゴム粒子の(C)および(D)の境界部の厚さを測定し、平均値を求めた。
【0049】
参考例1
ゴム質重合体(A)の調製
容量100リットルの攪拌機付き反応器に、1,3−ブタジエン100部、水60部、ロジン酸カリウム2.4部、リン酸カリウム0.5部、水酸化カリウム0.1部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタンを0.3部、過硫酸カリウム0.3部を加えて、60〜70℃で30時間バッチ重合した。重合添加率は、95%であった。この重合系に、重合停止剤としてN,N−ジエチルヒドロキシルアミンを0.2部加え、反応を停止させた。その後、減圧で1,3−ブタジエンを除去し、ブタジエンゴムラテックスを得た(固形分56.2%)。得られたブタジエンゴムのゲル含有量は75%、平均粒径は0.27μmであった。同様に、単量体成分の種類・配合処方、連鎖移動剤の使用量、重合温度、重合時間などを変えて、スチレン−ブタジエン共重合体を得た。ゴム質重合体(A)の平均粒径およびトルエン不溶分を表1〜2に示す。
【0050】
参考例2
ゴム強化熱可塑性樹脂(C−1)〜(C−12)の調製
滴下ビン、コンデンサ、窒素導入口および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに、参考例1で得られたゴム質重合体(A)を固形分換算で60部、乳化剤としてロジン酸カリウム0.5部、および水100部を混合し、スチレン9部、アクリロニトリル3部、分子量調節剤としてt−ブチルメルカプタン0.5部、重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.2部を加えた。70℃まで昇温後、クメンハイドロパーオキサイド0.2部、ピロリン酸ナトリウム0.2部、ブドウ糖0.25部、硫酸第一鉄0.01部を加え、重合を行なった。1時間後、残りのスチレン21部、アクリロニトリル7部、t−ドデシルメルカプタン0.3部、水40部、クメンハイドロパーオキサイド0.15部の混合物を4時間にわたって滴下を行なった。滴下終了後、クメンハイドロパーオキサイド0.1部、ピロリン酸ナトリウム0.1部、ブドウ糖0.13部、硫酸第一鉄0.005部、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.02部を添加し、さらに1時間重合反応を行なった。重合添加率は97.5%であった。得られた重合体を硫酸で凝固させ、水酸化ナトリウムで中和し、この凝固物を良く水洗したのち、乾燥させ、粉末状のゴム強化熱可塑性樹脂(C−1)を得た。同様の方法により、表1〜2に示すように、単量体成分の種類・配合処方、連鎖移動剤の使用量、重合温度、重合時間などを変えて、ゴム強化熱可塑性樹脂(C−2)および(C−12)を得た。得られたゴム強化熱可塑性樹脂(C−1)〜(C−12)のグラフト率および極限粘度〔η〕を表1〜2に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
参考例3
(D)熱可塑性エラストマーの調製
(D)成分として、下記のものを調製した。
ブタジエンゴム(BR);ラボ試作品〔ムーニー粘度(ML1+4,100℃);40〕
スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB1);JSR株式会社製、商品名=TR2000(結合スチレン量;40%)
スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB2);JSR株式会社製、商品名=TR2825(結合スチレン量;23%)
スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB3);JSR株式会社製、商品名=TR2601(結合スチレン量;30%)
スチレン−ブタジエン共重合体(SB4);JSR株式会社製、商品名=SL554(結合スチレン量;24%)
スチレン−イソプレンブロック共重合体(SIS);JSR株式会社製、商品名=SIS5002(結合スチレン量;26%)
【0054】
1,2−ポリブタジエン(RB830);JSR株式会社製、商品名=RB830(結晶化度;28%)
1,2−ポリブタジエン(RB835);JSR株式会社製、商品名=RB835(結晶化度;32%)
【0055】
実施例1〜3、参照例1〜5および比較例1〜8
(C)成分および(D)成分を、表3〜4に示す配合処方で混練し、ペレット化して、本発明の熱可塑性エラストマー組成物を得た。組成物中に分散しているゴム粒子の平均粒子径の調整は、使用する(A)成分の平均粒子径で決定されることから、目的とする平均粒子径を有する(A)成分を用いた。また、組成物中の(C)成分と(D)成分との境界部の平均厚さの調整は、(C)成分のグラフト率、(B)成分の組成、(A)/(B)成分の比率を変更することにより行った。得られた組成物を用い、上記測定項目に従って、各種の評価を実施した。結果を表3〜4に示す。
【0056】

【表3】

【0057】
【表4】

【0058】
表3より明らかなように、本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、いずれも混練性、分散性などの成形加工性、耐摩耗性、引裂き強度、引張り強度、成形品表面外観に優れていた。また、本発明の熱可塑性エラストマー組成物中の(C)成分は、成形品中で均一分散していた。
【0059】
一方、表4から明らかなように、比較例1では、(C)成分中の(A)成分が20%未満であるため、混練性が劣り、耐摩耗性、引張り強度が低下した。比較例2では、(C)成分中の(A)成分が80%を超えるため、分散性、成形品表面外観が低下した。また分散性が劣ることから、その他の物性も著しく低下した。比較例3では、(C)成分中の(A)成分が20%未満であり、かつ、(C)および(D)の境界部の平均厚さが0.20μmを超えるため、混練性、分散性などの成形加工性、成形品表面外観が低下した。また分散性が劣ることから、その他の物性も著しく低下した。
【0060】
比較例4では、組成物中に分散しているゴム粒子の平均粒子径が2.00μmを超え、かつ、(C)成分のグラフト率が5%未満であるため、ずべての物性に関して著しく低下した。比較例6では、(C)成分のグラフト率が300%を超えることから、成形加工性、耐摩耗性、成形品表面外観が低下した。比較例7では、(C)成分の極限粘度〔η〕が0.05dl/g未満であるため、加工性、引裂き強度、成形品加工性が低下した。比較例8では、(C)成分の極限粘度〔η〕が3.00dl/gを超えるため、分散性、加工性、引裂き強度、成形品加工性が低下した。また、比較例8の熱可塑性エラストマー組成物中の(C)成分は、均一分散しておらず、ゴム粒子の平均粒子径、および境界部の平均厚さを測定することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上述のように、耐摩耗性に優れ、かつ、成形加工性、引裂き強度、引張り強度、成形品表面外観に優れているため、非架橋分野から架橋分野にわたる広い用途範囲に適用でき、工業用品、家電、OA用品、履物底材(紳士、婦人シューズ底、カジュアルシューズ底、スポーツシューズ底)、自動車用品、緩衝材料、住宅建築材料、土木建築材料、コンベアーベルト、包装材などに好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ゴム質重合体20〜80重量%の存在下に、(B)芳香族ビニル単量体、または芳香族ビニル単量体およびこれと共重合可能な他のビニル単量体からなる単量体成分80〜20重量%〔ただし、(A)+(B)=100重量%〕を重合して得られ、グラフト率が5〜300%、かつ、未グラフト成分の極限粘度〔η〕(30℃、メチルエチルケトン中で測定)が0.05〜3.0dl/gである(C)ゴム強化熱可塑性樹脂、ならびに
(D)スチレン系エラストマーおよび1,2−ポリブタジエン、
を主成分とする熱可塑性エラストマー組成物であって
(a)上記組成物中に分散しているゴム粒子の平均粒子径が0.06〜2.00μm、
(b)上記組成物中の上記(C)成分および上記(D)成分の境界部の平均厚さが0.01〜0.20μmであることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物。



【公開番号】特開2009−197241(P2009−197241A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−108993(P2009−108993)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【分割の表示】特願平11−295612の分割
【原出願日】平成11年10月18日(1999.10.18)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】