説明

熱可塑性ポリウレタン

【課題】 ジイソシアネート化合物残基単位及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位よりなり、耐湿熱性、耐熱性、加工性、靱性に優れており、様々な分野・用途での有用性が期待される新規な熱可塑性ポリウレタンを提供する。
【解決手段】 ジイソシアネート化合物残基単位、好ましく2〜30重量%とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位、好ましくは98〜70重量%からなる熱可塑性ポリウレタン、及び、ジイソシアネート化合物とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体とを加熱混合する熱可塑性ポリウレタンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンに関するものであり、さらに詳細には、ジイソシアネート化合物残基単位及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位からなり、耐湿熱性、耐熱性、加工性、靭性等に優れる新規な熱可塑性ポリウレタンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタンは高強度で耐摩耗性に優れることから、ホース、チューブ、自動車部品、スポーツ用品などの各種用途に広く利用されている。そして、熱可塑性ポリウレタンには、ソフトセグメントの構造の違いから、一般的にはポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン等が知られている。
【0003】
ソフトセグメントにポリテトラメチレングリコール等を用いたポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンは、耐湿熱性に優れると言う特長を有している。
【0004】
また、ソフトセグメントに脂肪族ポリエステル等を用いたポリエステル系熱可塑性ポリウレタンは、強度、耐熱性に優れるという特長を有している。
【0005】
しかしながら、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタンは、120℃を越える高温下では熱劣化が生じやすいという課題を有している。また、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタンは、耐湿熱性に劣るため高温高湿下で放置しておくと著しい強度劣化を伴うと言う課題を有している。
【0006】
そこで、耐湿熱性を向上させるために、ソフトセグメントにポリテトラメチレンカーボネートを利用した熱可塑性ポリウレタンが提案されている(例えば特許文献1参照。)。また、耐熱性を向上させるために、主鎖が炭素−炭素結合のみからなるソフトセグメントを用いた熱可塑性ポリウレタンが提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−206965号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平6−136088号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に提案された熱可塑性ポリウレタンは、耐湿熱性は向上するものの高価であり、汎用的に使用することができないという課題を有していた。また、特許文献2に提案された熱可塑性ポリウレタンは、耐熱性を向上させる一定の効果は有るもののイソシアネート化合物との混合性が悪く、生産性に劣ると言う課題を有していた。
【0009】
そこで、これら課題を解決した新規な熱可塑性ポリウレタンの登場が期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ソフトセグメントにケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位を使用した熱可塑性ポリウレタンが、耐湿熱性、耐熱性、イソシアネート化合物との混合性、加工性、靭性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、ジイソシアネート化合物残基単位及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位からなることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン及びその製造方法に関するものである。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、ジイソシアネート化合物残基単位及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位からなる熱可塑性ポリウレタンであり、該ジイソシアネート化合物残基単位とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位の結合は、ウレタン結合であり、該ウレタン結合は熱可塑性ポリウレタンを構成するものである。
【0014】
本発明の熱可塑性ポリウレタンを構成するジイソシアネート化合物残基単位としては、特に制限は無くジイソシアネート化合物のイソシアネート基と活性水素化合物が反応し生成するウレタン結合を構成する公知のジイソシアネート化合物残基単位でよく、例えばジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物がウレタン結合を構成した残基単位を挙げることができる。また、これらジイソシアネート化合物残基単位は、単独又は2種以上の併用であってもよい。そして、その中でも特に耐熱性に優れた熱可塑性ポリウレタンを構成することが可能となることから、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート残基単位、トルエンジイソシアネート残基単位、ヘキサメチレンジイソシアネート残基単位、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート残基単位、イソホロンジイソシアネート残基単位であることが好ましく、更にジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート残基単位であることが好ましい。
【0015】
本発明の熱可塑性ポリウレタンを構成するケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位としては、特に制限は無くケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体のビニルアルコール単位とイソシアネート化合物のイソシアネート基が反応し生成するウレタン結合を構成するケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位でよく、例えば高圧法により製造されたエチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル単位を加水分解し、ビニルアルコール単位にケン化したケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体の残基単位を挙げることができる。そして、このようなケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体は、市販品として入手することも可能であり、例えば(商品名)メルセンH 6410M(東ソー株式会社製)、(商品名)メルセンH 6210M(東ソー株式会社製)、(商品名)メルセンH H6960(東ソー株式会社製)、(商品名)メルセンH 3051R(東ソー株式会社製)等を市販品とし入手し、ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位とすることも可能である。
【0016】
また、高圧法により製造されたエチレン−酢酸ビニル共重合体を加水分解する方法としては、例えばアルカリ又は酸を触媒として加水分解反応を行う方法を挙げることができ、具体的には良溶媒にエチレン−酢酸ビニル共重合体を溶解させて均一系で反応を行う均一ケン化法、メタノール、エタノールのような貧溶媒中でペレット又は粉体のまま不均一系で反応を行う不均一ケン化法等を挙げることができる。
【0017】
そして、本発明の熱可塑性ポリウレタンを構成するケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位としては、特に質感、成形加工性に優れる熱可塑性ポリウレタンとなることから、酢酸ビニル単位が1〜30モル%、特に2〜20モル%のケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位であることが好ましい。
【0018】
本発明の熱可塑性ポリウレタンを構成するジイソシアネート化合物残基単位とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位の割合は、熱可塑性ポリウレタンを構成することが可能であれば任意であり、その中でも特に成形加工性に優れる熱可塑性ポリウレタンとなることからジイソシアネート化合物残基単位2〜30重量%及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位98〜70重量%からなることが好ましい。
【0019】
また、本発明の熱可塑性ポリウレタンは、耐熱性に優れたものとなることから更にジオール化合物残基単位を含んでなるものであることが好ましく、このようなジオール化合物残基単位としては、例えば1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ブテンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカメチレンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシレンジオール、ジヒドロキシエチルテトラハイドロフタレート等のジオール化合物残基単位を挙げることができる。これらジオール化合物残基単位は1種または2種以上を併用してもよい。そして、特に耐熱性に優れた熱可塑性ポリウレタンとなることから1,2−エタンジオール残基単位、1,2−プロパンジオール残基単位、1,4−ブタンジオール残基単位、ブテンジオール残基単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオール残基単位、1,6−ヘキサンジオール残基単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール残基単位が好ましく、更に1,4−ブタンジオール残基単位が好ましい。
【0020】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、耐湿熱性、加工性、靭性に優れると共に特に耐熱性に優れるものとなることから、軟化温度が80℃以上であるものが好ましい。この際の軟化温度は、粘弾性スペクトロメーターにて、−100〜200℃の範囲で弾性率を測定し、弾性率が1MPaになった温度を軟化温度して測定したものである。
【0021】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、ジイソシアネート化合物残基単位及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位からなるものであれば如何なる製造方法により製造されたものであってもよく、例えばジイソシアネート化合物及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を反応し、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基とケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体のビニルアルコール単位とからウレタン結合を導入することにより製造することが可能である。その際、ジイソシアネート化合物及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を反応するには、例えば加熱混合、さらには加熱溶融混合等の方法を行うことが可能である。
【0022】
そして、該イソシアネート化合物としては、上記した例えばジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等を挙げることができ、その中でも特に耐熱性に優れた熱可塑性ポリウレタンを得ることが可能となることから、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートであることが好ましく、更にジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートであることが好ましい。
【0023】
また、該ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体としては、上記した例えば高圧法により製造されたエチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニル単位を加水分解し、ビニルアルコール単位にケン化したケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を挙げることができ、市販品としては、例えば(商品名)メルセンH 6410M(東ソー株式会社製)、(商品名)メルセンH 6210M(東ソー株式会社製)、(商品名)メルセンH H6960(東ソー株式会社製)、(商品名)メルセンH 3051R(東ソー株式会社製)等を市販品とし入手することもできる。そして、該ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体は、得られる熱可塑性ポリウレタンが特に靱性、加工性に優れるものとなることからビニルアルコール単位0.1〜10モル%、特に0.5〜5モル%を含むものであることが好ましい。また、分子量が、300〜100000であるものが好ましく、特に500〜50000であるものが好ましい。
【0024】
本発明の熱可塑性ポリウレタンを製造する際には、ジオール化合物を併用することも可能であり、該ジオール化合物としては、上記した例えば1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ブテンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカメチレンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシレンジオール、ジヒドロキシエチルテトラハイドロフタレート等が挙げられ、特に耐熱性に優れた熱可塑性ポリウレタンが得られることから、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ブテンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。
【0025】
本発明の熱可塑性ポリウレタンを製造する際には、ウレタン化反応触媒を用いることも可能であり、該ウレタン化反応触媒としては公知のものを用いることができ、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等のアミン系触媒;テトラメチル錫、テトラオクチル錫、ジメチルジオクチル錫、トリエチル錫塩化物、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート等の錫系触媒等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。その中でも触媒活性が高いことからジブチル錫ジラウレートが好適に使用される。その際の触媒量は、使用する触媒の活性により任意であるが、ウレタン化反応を完結させるのに必要な量が好適に使用される。ジブチル錫ジラウレートを例にすると生産性、成形加工性に優れる熱可塑性ポリウレタンが得られることから1ppm以上1000ppm以下の量が好適に使用される。
【0026】
そして、ジイソシアネート化合物及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体、必要に応じてジオール化合物、ウレタン化反応触媒を加熱混合、特に加熱溶融混合する際には、例えばバンバリーミキサー(ファレル社製)、加圧ニーダー((株)森山製作所製)、インターナルミキサー(栗本鉄工所製)、インテンシブミキサー(日本ロール製造(株)製)等の機械加圧式混練機;ロール成形機、単軸押出し機、二軸押出し機等の押出し成形機;等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される成形機が使用できる。その際の温度は50〜190℃が好ましく、特に好ましくは80〜150℃である。
【0027】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、着色を抑制できることから酸化防止剤を含むことが好ましい。該酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤等が挙げられ、これらの酸化防止剤は、より大きな効果を発現するために2種以上を併用して用いることもできる。そして、これらの酸化防止剤の中でも、特に着色を抑制した熱可塑性ポリウレタンとなることから、フェノール系酸化防止剤である2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)が好ましい。また、該酸化防止剤の配合量としては、熱可塑性ポリウレタンに対して0.1〜2000ppm、特に1〜1000ppm、さらに10〜500ppmであることが好ましい。
【0028】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、本発明の効果を損なわない範囲で各種ポリマー、各種添加剤を含有して用いてもよい。
【0029】
その際の各種ポリマーとしては、例えばポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体、さらにこれらポリオレフィン樹脂の塩素化物等を挙げることができる。さらに詳しくは、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等が挙げられる。エチレン系共重合体としては、例えばエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、具体的にはエチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。ポリプロピレン系共重合体としては、例えばポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。
【0030】
また、各種添加剤としては、例えば染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、可塑剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、ワックス、結晶核剤、可塑剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填材、有機充填材等を挙げることができる。
【0031】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、例えばコンベヤベルト、樹脂コンベヤベルト、急傾斜コンベヤ、円筒コンベヤベルト等の搬送用コンベヤベルト類;Vベルト、歯付きベルト等の動力伝達ベルト類;編み上げホース、布巻きホース、高圧ホース、サクションホース、ダクトホース、スプレーホース、送排水用ホース、耐圧補強ホース、静電気防止ホース等のホース類;自動車用、鉄道用、産業機械用、建築土木用等の防振ゴム;防舷材、印刷用ロール、製紙用ロール、紡績用ロール、製鉄用ロール、染色化繊用ロール等の工業用ロール;事務機用ロール、OA機器用ロール、自動化機器用ロール等の各種機器用ロール;もみすり機等の農業機械用ロール;金属をはじめとする各種素材のライニング;化粧シート、静電防止シート、ルーフィング用シート等のシート;携帯電話のケース、電化製品等のリモコンケース等のパッキン積層体;太陽電池、シーリング材、防水材、オイルシール、メカニカルシール、成形パッキン、グランドパッキン等の運動用シール;Oリング、ガスケット等の固定用シール;シリンジ用ガスケット、マスク、サック、手袋、水枕、キャップ容器、レインウェア、エアバック、ダイヤフラム、ラバーダム、ガスのう膜、オイルフェンス、フレキシブルコンテナ、ゴルフボール,サッカーボール等のボール類、スポーツ床、フェンス用緩衝ゴム、舗装用ブロック、自動車用ブーツ、ウェザーストリップ、建築用ガスケット、免震ゴム、手すり、滑り止め、スペーサー、合わせガラス、止水板、伸縮可とう継ぎ手、糸ゴム、電線、コード、ワイパーブレード、制振ゴム、ゴムスイッチ、玩具、靴、足ゴム、チューブ、電化製品のパッキン、工業部品等、ゴルフクラブ,テニスラケット,スキーポール等のグリップ部分、シーラント、シート、電気部品、電子部品、半導電フィルム,帯電防止フィルム,医薬フィルム、食品包装用フィルム、産業資材包装用フィルム、保護フィルム、農業フィルム等の多層フィルム、タイヤ、精密機器,精密加工機類の振動吸収材、スポーツ用品、日用雑貨、座席シート等に使用できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、ジイソシアネート化合物残基単位及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位よりなり、耐湿熱性、耐熱性、加工性、靱性に優れるものである。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。尚、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
【0034】
(試薬等)
実施例、比較例の中で用いた試薬等は、以下の略号を用いて表す。
【0035】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体>
EVA−1;ウルトラセン(登録商標)8A56A(酢酸ビニル含量20重量%、分子量=2400)、東ソー株式会社製。
【0036】
EVA−2;ウルトラセン(登録商標)760(酢酸ビニル含量42重量%、MFR=70g/10分)、東ソー株式会社製。
【0037】
<ジイソシアネート化合物>
MDI;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート。
【0038】
TDI:トルエンジイソシアネート
<ジオール化合物>
BD:1,4−ブタンジオール。
【0039】
<酸化防止剤>
AO−60(ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート));アデカスタブ(登録商標)AO−60、旭電化工業株式会社製。
【0040】
(物性試験法)
<靭性>
厚さ1mm、巾5mm、長さ50mmの試験片を半分に折って、試験片が破断しなければ○、破断したら×とした。
【0041】
<耐熱性>
厚さ1mm、巾5mm、長さ25mmの試験片を粘弾性スペクトロメーター(レオスペクトロメーターDVE−V4、レオロジー社製)を用いて−100〜200℃の範囲で弾性率を測定した。昇温と共に弾性率が低下し、弾性率が1MPaになった温度を軟化温度とし耐熱性の指標とした。
【0042】
合成例1
2リットルの撹拌翼付きオートクレーブに、メタノールを1000ml、エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA−1を300g、ナトリウムメトキシドを13.4g入れ、60℃に加温して8時間ケン化反応を行った。反応後内容物をろ過し、メタノールで洗浄した後、水洗してケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を得た。得られたケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体をEVAOH−1とする。
EVAOH−1は、ビニルアルコール単位2.67mol%、酢酸ビニル単位5.52mol%であった。
【0043】
合成例2
2リットルの撹拌翼付きオートクレーブに、メタノールを1000ml、エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA−1を300g、ナトリウムメトキシドを13.4g入れ、60℃に加温して4時間ケン化反応を行った。反応後内容物をろ過し、メタノールで洗浄した後、水洗してケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を得た。得られたケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体をEVAOH−2とする。
EVAOH−2は、ビニルアルコール単位1.59mol%、酢酸ビニル単位6.61mol%であった。
【0044】
合成例3
2リットルの撹拌翼付きオートクレーブに、メタノールを1000ml、エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA−1を300g、ナトリウムメトキシドを13.4g入れ、70℃に加温して0.5時間ケン化反応を行った。反応後内容物をろ過し、メタノールで洗浄した後、水洗してケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を得た。得られたケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体をEVAOH−3とする。
EVAOH−3は、ビニルアルコール単位3.23mol%、酢酸ビニル単位4.97mol%であった。
【0045】
合成例4
2リットルの撹拌翼付きオートクレーブに、メタノールを1000ml、エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA−2を300g、ナトリウムメトキシドを13.4g入れ、50℃に加温して1.0時間ケン化反応を行った。反応後内容物をろ過し、メタノールで洗浄した後、水洗してケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を得た。得られたケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体をEVAOH−4とする。
EVAOH−4は、ビニルアルコール単位3.67mol%、酢酸ビニル単位14.73mol%であった。
【0046】
実施例1
ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVAOH−1を100重量部に対し、ジイソシアネート化合物としてMDI5.27重量部の比率で内容量30ccのミキサー(東洋精機製作所製、(商品名)ラボプラストミル)に充填し、100℃で30分間加熱混合を行い熱可塑性ポリウレタンの製造を行った。その際のイソシアネート化合物との混合性に問題はなかった。
【0047】
得られた熱可塑性ポリウレタンを圧縮成形機(神藤金属工業所製)を用いて圧縮成形し、厚さ1mmの試験片を成形した。圧縮成形は、190℃で300秒間加熱した後、30℃で300秒間冷却して行った。得られた熱可塑性ポリウレタンの靭性、及び耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0048】
得られた熱可塑性ポリウレタンは、優れた靭性と耐熱性を示した。
【0049】
実施例2
ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVAOH−2を100重量部に対し、ジイソシアネート化合物としてMDI3.09重量部の比率で内容量30ccのミキサー(東洋精機製作所製、(商品名)ラボプラストミル)に充填し、100℃で30分間加熱混合を行い熱可塑性ポリウレタンの製造を行った。その際のイソシアネート化合物との混合性に問題はなかった。
【0050】
得られた熱可塑性ポリウレタンを圧縮成形機(神藤金属工業所製)を用いて圧縮成形し、厚さ1mmの試験片を成形した。圧縮成形は、190℃で300秒間加熱した後、30℃で300秒間冷却して行った。得られた熱可塑性ポリウレタンの靭性、及び耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0051】
得られた熱可塑性ポリウレタンは、優れた靭性と耐熱性を示した。
【0052】
実施例3
ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVAOH−1を100重量部に対し、ジオール化合物としてBD0.93重量部、ジイソシアネート化合物としてMDI5.27重量部の比率で内容量30ccのミキサー(東洋精機製作所製、(商品名)ラボプラストミル)に充填し、100℃で30分間加熱混合を行い熱可塑性ポリウレタンの製造を行った。その際のイソシアネート化合物との混合性に問題はなかった。
【0053】
得られた熱可塑性ポリウレタンを圧縮成形機(神藤金属工業所製)を用いて圧縮成形し、厚さ1mmの試験片を成形した。圧縮成形は、190℃で300秒間加熱した後、30℃で300秒間冷却して行った。得られた熱可塑性ポリウレタンの靭性、及び耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0054】
得られた熱可塑性ポリウレタンは、優れた靭性と耐熱性を示した。
【0055】
実施例4
ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVAOH−1を100重量部に対し、ジオール化合物としてBD1.92重量部、ジイソシアネート化合物としてMDI10.54重量部、AO−60を0.1重量部の比率で内容量30ccのミキサー(東洋精機製作所製、(商品名)ラボプラストミル)に充填し、100℃で30分間加熱混合を行い熱可塑性ポリウレタンの製造を行った。その際のイソシアネート化合物との混合性に問題はなかった。
【0056】
得られた熱可塑性ポリウレタンを圧縮成形機(神藤金属工業所製)を用いて圧縮成形し、厚さ1mmの試験片を成形した。圧縮成形は、190℃で300秒間加熱した後、30℃で300秒間冷却して行った。得られた熱可塑性ポリウレタンの靭性、及び耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
得られた熱可塑性ポリウレタンは、優れた靭性と耐熱性を示した。
【0058】
実施例5〜6
ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体、ジオール化合物、ジイソシアネート化合物、AO−60を表1に示す比率で内容量30ccのミキサー(東洋精機製作所製、(商品名)ラボプラストミル)に充填し、100℃で30分間加熱混合を行い熱可塑性ポリウレタンの製造を行った。その際のイソシアネート化合物との混合性に問題はなかった。
【0059】
得られた熱可塑性ポリウレタンを実施例4と同様に靭性、及び耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0060】
得られた熱可塑性ポリウレタンは、優れた靭性と耐熱性を示した。
【0061】
実施例7
ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVAOH−1を100重量部に対し、ジイソシアネート化合物としてTDI3.68重量部の比率で内容量30ccのミキサー(東洋精機製作所製、(商品名)ラボプラストミル)に充填し、100℃で30分間加熱混合を行い熱可塑性ポリウレタンの製造を行った。その際のイソシアネート化合物との混合性に問題はなかった。
【0062】
得られた熱可塑性ポリウレタンを圧縮成形機(神藤金属工業所製)を用いて圧縮成形し、厚さ1mmの試験片を成形した。圧縮成形は、190℃で300秒間加熱した後、30℃で300秒間冷却して行った。得られた熱可塑性ポリウレタンの靭性、及び耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0063】
得られた熱可塑性ポリウレタンは、優れた靭性と耐熱性を示した。
【0064】
比較例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVA−1を圧縮成形機(神藤金属工業所製)を用いて圧縮成形し、厚さ1mmの試験片を成形した。圧縮成形は、190℃で300秒間加熱した後、30℃で300秒間冷却して行った。得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体の靭性、及び耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0065】
エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA−1は、靭性、耐熱性に劣るものであった。
【0066】
比較例2
ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVAOH−1を圧縮成形機(神藤金属工業所製)を用いて圧縮成形し、厚さ1mmの試験片を成形した。圧縮成形は、190℃で300秒間加熱した後、30℃で300秒間冷却して行った。得られたケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体の靭性、及び耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体EVAOH−1は、靭性、耐熱性に劣るものであった。
【0068】
比較例3
エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVA−2を圧縮成形機(神藤金属工業所製)を用いて圧縮成形し、厚さ1mmの試験片を成形した。圧縮成形は、190℃で300秒間加熱した後、30℃で300秒間冷却して行った。得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体の靭性、及び耐熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0069】
エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA−2は、耐熱性に劣るものであった。
【0070】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の熱可塑性ポリウレタンは、ジイソシアネート化合物残基単位及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位よりなることから、耐湿熱性、耐熱性、加工性、靱性に優れており、様々な分野・用途での有用性が期待されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジイソシアネート化合物残基単位及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位からなることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン。
【請求項2】
ジイソシアネート化合物残基単位2〜30重量%及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位98〜70重量%からなることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項3】
ジイソシアネート化合物残基単位が、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート残基単位であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項4】
ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位が、酢酸ビニル単位2〜20モル%を含むケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体残基単位であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項5】
更にジオール化合物残基単位を含んでなることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項6】
ジオール化合物残基単位が1,4−ブタンジオール残基単位であることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【請求項7】
ジイソシアネート化合物及びケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体を加熱混合することを特徴とする熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【請求項8】
ケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体が、ビニルアルコール単位0.1〜10モル%を含むケン化エチレン−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性ポリウレタンの製造方法。

【公開番号】特開2012−36267(P2012−36267A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176186(P2010−176186)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】