説明

熱可塑性樹脂組成物およびその成形体

【課題】 オレフィン系重合体の耐衝撃性を損なうことなく、塗装性が改善された成形体を得ることができる熱可塑性樹脂組成物、および、耐衝撃性に優れ、塗装性が改善された成形体を提供する。
【解決手段】 ラジカル重合性単量体(a)を、重合性不飽和基を有するマクロモノマー(b)の存在下で重合させて得られる重合体組成物(A)と、オレフィン系重合体(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系重合体を含有する熱可塑性樹脂組成物、および表面塗装性が改善された、オレフィン系重合体を含有する成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系樹脂やオレフィン系エラストマーなどのオレフィン系重合体は、成形加工性、柔軟性などに優れており、それらの特性を活かして、単独で、または他の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂、柔軟化剤などを配合して、成形材料として広く使用されている。
オレフィン系重合体の中でもプロピレン系重合体は、例えば、自動車のバンパー、コンソールパネルなどに多く使用されている。また、近年、環境問題などの点からリサイクル性のある材料が重要視されるようになってきており、熱可塑性でありリサイクル性が高いプロピレン系重合体の需要は拡大している。
【0003】
しかしながら、プロピレン系重合体は、極性基を持たないので、塗装性、印刷性、着色時の発色性などが低く、その結果、成形加工時や加工後の後処理時に施される色や模様などにおいて選択の幅が狭く、自由に選べないという問題があった。
一方、塗装性、印刷性に優れた樹脂としてメタクリル樹脂等の(メタ)アクリル酸エステル重合体が知られている。しかしながら、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、一般に柔軟性に乏しく、耐衝撃性が低いために、これらの性質の改良が求められている。
【0004】
そこで、プロピレン系重合体および(メタ)アクリル酸エステル重合体の欠点を互いに補うために、プロピレン系重合体と(メタ)アクリル酸エステル重合体とを単純にブレンドすることが考えられる。
しかしながら、これらを単純にブレンドしても、両者の相溶性が充分でないために、ブレンドして成形した成形品は層状剥離を生じて機械的性質が大幅に低下する。
【0005】
また、プロピレン系重合体および(メタ)アクリル酸エステル重合体の欠点を互いに補うことを目的とした樹脂や樹脂組成物が提案されている。例えば、プロピレン重合体にメタクリル酸エステル単量体を含浸させた後、ラジカル重合によりグラフト重合して得た改質ポリプロピレン樹脂が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この改質ポリプロピレン樹脂は、グラフト効率が低く、ホモ(メタ)アクリル酸エステルが副生するため、相分離を起こし機械的性質が低下するという問題がある。
【0006】
また、オレフィン系樹脂からなる成形体の表面を塗装する際に、あらかじめ成形体表面にプライマーを塗布したり、成形体表面をプラズマ処理したりして、塗装性を向上させることが一般に知られている。
しかしながら、製造工程が多くなるため手間がかかる、原料コスト、製造コストが高くなるなどの問題が挙げられる。
【0007】
このような問題を解決するために、オレフィン系樹脂に、芳香族変性テルペン樹脂を含有させるオレフィン系樹脂の改質方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この方法で改質されたオレフィン系樹脂からなる成形体は、バンパーに用いられるウレタン塗料との密着性は不充分であった。
【特許文献1】特開平7−133398号公報
【特許文献2】特開平7−11066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明の目的は、オレフィン系重合体が有する耐衝撃性を損なうことなく、塗装性が改善された成形体を得ることができる熱可塑性樹脂組成物、および、耐衝撃性を有し、塗装性が改善された成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ラジカル重合性単量体(a)を、重合性不飽和基を有するマクロモノマー(b)の存在下で重合させて得られる重合体組成物(A)と、オレフィン系重合体(B)とを含有するものである。
また、本発明の成形体は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形したものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物によれば、オレフィン系重合体が有する耐衝撃性を損なうことなく、塗装性が改善された成形体を得ることができる。
また、本発明の成形体は、オレフィン系重合体の耐衝撃性を損なわず、塗装性が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明において、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを意味する。
【0012】
[ラジカル重合性単量体(a)]
本発明におけるラジカル重合性単量体(a)は、得られる重合体組成物(A)に、オレフィン系重合体(B)中への高い分散性を付与するとともに、得られる成形体の塗料に対する密着性の点において重要な役割を果たす。
【0013】
ラジカル重合性単量体(a)としては、得られる重合体組成物(A)のオレフィン系重合体(B)への分散性の点、得られる成形体の塗料に対する密着性の点から、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましく、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸トリシクロデカニル、メタクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸トリシクロデカニル、アクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシルが好ましい。中でも、オレフィン系重合体(B)への分散性の点で、アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシルが特に好ましい。
これらは、1種を単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0014】
[マクロモノマー(b)]
本発明における、重合性不飽和基を有するマクロモノマー(b)は、得られる成形体の塗料に対する密着性の点において重要な役割を果たす。例えば、マクロモノマー(b)を使用することによって、同じ単量体組成を有するランダム共重合体や異種ポリマーの単純ブレンド体を使用する場合と比較し、著しい密着性の向上を図ることができる。ここで、マクロモノマーとは、重合可能な官能基を持った高分子であり、別名マクロマーとも呼ばれるものである。
【0015】
本発明におけるマクロモノマー(b)としては、例えば、ラジカル重合性単量体(c)からなる単量体単位を含み、かつ下記式(1)で表される重合性不飽和基を有するものが挙げられる。
(R1 )(R2 )C=C(R3 )(R4 ) ・・・(1)
(式(1)中、R1 〜R4 は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、水酸基、シアノ基、カルボキシル基、およびエステル結合を有する基からなる群から選ばれた基であり、R1 〜R4 の少なくとも1つがアルキレン基を介して単量体単位と結合する。)
【0016】
例えば、R4 がアルキレン基を介して単量体単位と結合する重合性不飽和基の場合、重合反応性の点から、R1 およびR2 が水素原子、R3 が水素原子、炭素数1から10の脂肪族炭化水素基、フェニル基、置換フェニル基、シアノ基、カルボキシル基またはエステル結合を有する炭素数1から20の炭化水素基であるものが好ましく、R1 およびR2 が水素原子、R3 がエステル結合を有する炭素数1から20の炭化水素基であるものがさらに好ましい。アルキレン基の具体例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられるが、重合反応性の点からメチレンが好ましい。
【0017】
また、マクロモノマー(b)は、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことが、塗料に対する密着性の点で好ましい。
マクロモノマー(b)の分子量は、特に限定されないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の強度の点より、その数平均分子量が1000以上、固形分濃度の点から、100000以下が好ましく、3000以上50000以下の範囲がより好ましい。
【0018】
マクロモノマー(b)は、公知の方法で製造することが可能である。その製造方法は、特に限定されないが、塗膜性能、製造工程の経済性の点から、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(例えば米国特許4680352号)、αブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(例えばWO88/04304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(例えば特開昭60−133007号公報、米国特許5147952号)、熱分解による方法(例えば特開平11−240854号公報)が好ましい。
本発明においては、マクロモノマー(b)は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
[ラジカル重合性単量体(c)]
マクロモノマー(b)に含まれる単量体単位を構成するラジカル重合性単量体(c)としては、塗料に対する密着性の点から、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体が好ましく、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有ラジカル重合性単量体;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルとエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、γ−ブチロラクトンまたはε−カプロラクトン等との付加物;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の二量体または三量体;(メタ)アクリル酸グリセロール等の水酸基を複数有する単量体等を用いることができる。
これらは、1種を単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
[重合体組成物(A)]
本発明における重合体組成物(A)は、前記ラジカル重合性単量体(a)を、マクロモノマー(b)存在下で重合させて得られるものである。
このようにして得られる重合体組成物(A)には、通常、ラジカル重合性単量体(a)からなる重合体、ラジカル重合性単量体(a)とマクロモノマー(b)とからなる重合体、マクロモノマー(b)のみからなる重合体、未反応のマクロモノマー(b)が含まれるが、本発明においては、発明の趣旨を損なわない限り、これらを含めて重合体組成物(A)という。
【0021】
重合体組成物(A)中における、ラジカル重合性単量体(a)からなる重合体、ラジカル重合性単量体(a)とマクロモノマー(b)とからなる重合体、マクロモノマー(b)のみからなる重合体、未反応のマクロモノマー(b)、各々の含有量は、特に限定されない。基材に対する密着性、機械強度の点から、未反応および重合されたマクロモノマー(b)の合計含有量は、重合体組成物(A)(100質量%)中、1質量%以上70質量%以下であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
重合体組成物(A)の数平均分子量は、特に限定されないが、得られる熱可塑性樹脂組成物の強度の点より、その数平均分子量が3000以上、固形分濃度の点から、500000以下が好ましく、5000以上300000以下の範囲がより好ましい。
【0023】
[重合体組成物(A)の製造]
重合体組成物(A)の製造方法としては、一般的に知られる重合法、例えばバルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等を採用することができる。
その他、重合体の分子量を調節するために、メルカプタン類、水素、末端不飽和(メタ)アクリル酸オリゴマー類、αメチルスチレンダイマー、テルペノイド類等の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0024】
ラジカル重合開始剤の存在下で重合を行う場合、ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物あるいはアゾ化合物を使用することができる。有機過酸化物の具体例としては、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。これらの中でも、ベンゾイルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)が好ましい。これらラジカル重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
ラジカル重合開始剤は、ラジカル重合性単量体(a)の合計量100質量部に対して0.0001質量部以上10質量部以下の範囲内で用いることが好ましい。
重合温度については特に制限はなく、例えば、−100℃から250℃、好ましくは0℃から200℃の範囲である。
【0026】
[オレフィン系重合体(B)]
本発明におけるポリオレフィン系重合体(B)とは、オレフィン系単量体のラジカル重合、イオン重合等で得られるオレフィン系単独重合体または共重合体;優位量のオレフィン系単量体と劣化量のビニル系単量体との共重合体;オレフィン系単量体とジエン系単量体との共重合体等を主成分とするものである。
【0027】
ポリオレフィン系重合体(B)の具体例としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超々低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレンと炭素数5〜12のα−オレフィンとからなる共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、プロピレン−非共役ジエン共重合体、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルトリメトキシシラン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体およびその水素添加物等を挙げることができる。これらは、単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも汎用性、機械強度の観点から、プロピレン単量体単位を含有するオレフィン系重合体が好ましい。
【0028】
[熱可塑性樹脂組成物]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、重合体組成物(A)とオレフィン系重合体(B)とを含有するものである。
オレフィン系重合体(B)に対する重合体組成物(A)の添加量は、オレフィン系重合体(B)100質量部に対して、好ましくは0.1〜150質量部、より好ましくは1〜100質量部である。重合体組成物(A)の添加量が少ないと、得られる成形体と、塗料との密着性が得られない傾向にある。
【0029】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス等の公知の添加剤、他の熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂などを添加することができる。
さらに、本発明の組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維等の無機フィラーを配合してもよい。
オレフィン系重合体(B)に、重合体組成物(A)を含有させる方法としては、混合が挙げられる。混合方法としては、一軸押出し機、二軸押出し機等を用いた混合が挙げられるが、特に制限されるものではない。
【0030】
[成形体]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、各種の成形方法により成形し、成形体とすることができる。成形方法としては、射出成形、圧縮成形、中空成形、押出成形、回転成形など、公知の成形法が挙げられる。
【0031】
本発明の成形体は、プライマー塗布や特殊な表面処理を行うことなく、その表面に塗装を行うことができる。
塗装方法としては、スプレーによる吹き付け、ローラーによる塗布等、公知の塗装方法が挙げられる。
【0032】
塗料としては、アクリル系塗料、エポキシ系塗料、ポリエステル系塗料、ウレタン塗料、メラミン系塗料、アルキッド系塗料等が挙げられる。好ましくは、アクリル系塗料、ウレタン系塗料である。
これら塗料の形態としては、有機溶剤系塗料、水溶液系塗料、エマルジョン系塗料等が挙げられ、いずれの塗料を用いてもよい。
【0033】
以上説明した、本発明の熱可塑性樹脂組成物にあっては、重合体組成物(A)をオレフィン系重合体(B)に加えているので、オレフィン系重合体(B)が有する耐衝撃性を損なうことなく、オレフィン系重合体(B)の塗装性を改善できる。また、この熱可塑性樹脂組成物を成形した成形品は、プライマー塗布や特殊な表面処理を行うことなく、その表面に塗装を行うことができる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例によって制限されるものではない。
実施例、比較例において、製造、評価は以下の方法により行った。
【0035】
(マクロモノマーの数平均分子量及び分子量分布)
ポリメタクリル酸メチルをスタンダードに用い、東ソー(株)GPCシステム(HLC−8020、AS−8020)を用いて下記条件にて測定した。
(条件)
カラム:TSKgel GMHXL(7.8mmID×30cm)2本直列。
ガードカラム:TSKguardcolumn HXL−H(7.5mmID×7.5cm)。
溶離液:塩化リチウム0.01M入り、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)。
流速:1.0ml/min.
測定温度:40℃。
検出器:RI(示差屈折計)。
【0036】
(溶融混合条件)
二軸押出し機温度:200℃、スクリュー回転数:200rpm。
(成形条件)
成形温度:200℃、金型温度:50℃。
【0037】
(密着性試験;JIS K 5400)
基材(成形体)上の塗膜をゴバン目(1mm間隔、100マス)にカットし、塗膜のセロハン粘着テープによる剥離テストを行い、付着率(基材に残ったマスの数)により密着性を評価した。
(衝撃試験;DIN 53453)
ダインスタット衝撃試験(東洋精機製)を用い、縦2cm、横1.2cm、厚さ0.3cmの成形体について5回試験の平均値を算出した。
【0038】
(製造例1)
COBF[ビス(ボロンジフルオロジメチルグリオキシメイト)Co(II)]の製造:
文献(Inorg.Chem.,Vol.25,4108(1986))に従い、以下のようにCOBFの合成を行った。
撹拌機、冷却管、窒素吹き込み口を備えた1リットルのフラスコに、ジエチルエーテル600ml、ジメチルグリオキシム7.6g(0.064モル)、酢酸コバルト(II)四水和物8.0g(0.032モル)、三フッ化ホウ素のジエチルエーテル錯体40mlを順次仕込み、窒素を吹き込みながら、室温で8時間撹拌した。生成した沈殿物を濾別し、ジエチルエーテルとメタノールで数回洗浄後、室温で10時間真空乾燥したものをCOBFとして用いた。
【0039】
(製造例2)
ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルマクロモノマーの製造(1):
攪拌機、冷却管、窒素吹き込み口を備えた2リットルのフラスコに、メタノール750質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル250質量部を加え、窒素バブリングすることにより窒素置換した。ついで製造例1で得たCOBFをメタクリル酸2−ヒドロキシエチルに対し2ppmの濃度で溶解させ、2,2−アゾビスイソブチロニトリル2.5質量部を加えた後、昇温を行い、内温70℃にて6時間保持し重合を完結させた。重合溶液からエバポレーターにより溶媒を除去し白色固体を得た。この白色固体を減圧乾燥し、精製したポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルマクロモノマーを得た。得られたポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルマクロモノマーの数平均分子量は10760、分子量分布は1.8であった(R1 、R2 は水素原子、R3 は CO2CH2CH2OH基、R4 はメタクリル酸2−ヒドロキシエチル単量体単位と結合)。
【0040】
(製造例3)
ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルマクロモノマーの製造(2):
攪拌機、冷却管、窒素吹き込み口を備えた2リットルのフラスコに、メタノール750質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル250質量部を加え、窒素バブリングすることにより窒素置換した。ついで製造例1で得たCOBFをメタクリル酸2−ヒドロキシエチルに対し8ppmの濃度で溶解させ、2,2−アゾビスイソブチロニトリル2.5質量部を加えた後、昇温を行い、内温70℃にて6時間保持し重合を完結させた。重合溶液からエバポレーターにより溶媒を除去し白色固体を得た。この白色固体を減圧乾燥し、精製したポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルマクロモノマーを得た。得られたポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルマクロモノマーの数平均分子量は5400、分子量分布は2.6であった(R1 、R2 は水素原子、R3 は CO2CH2CH2OH基、R4 はメタクリル酸2−ヒドロキシエチル単量体単位と結合)。
【0041】
(製造例4)
重合体組成物(A−1)の合成:
撹拌機、冷却管、窒素吹き込み口を備えた3リットルのフラスコに、アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル900質量部とジメチルスルホキシド1000質量部を加え、窒素バブリングすることにより窒素置換した。ついで製造例2で得たポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルマクロモノマー100質量部を溶解させ、2,2−アゾビスイソブチロニトリル10質量部を加えた後、昇温を行い、内温70℃にて6時間保持し重合を完結させた。重合溶液からエバポレーターにより溶媒を除去し白色固体を得た。この白色固体を減圧乾燥し、精製した共重合体(重合体組成物(A−1)、ポリアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル/ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルマクロモノマー=90/10(質量比))を得た。
【0042】
(製造例5)
重合体組成物(A−2)の合成:
ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルマクロモノマーを、製造例3で得たものに変更した以外は、製造例4と同様に共重合体(重合体組成物(A−2)、ポリアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル/ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルマクロモノマー=90/10(質量比))を得た。
【0043】
(製造例6)
重合体組成物(A−3)の合成:
ジメチルスルホキシドの添加量を2000質量部に変更した以外は、製造例4と同様に共重合体(重合体組成物(A−3)、ポリアクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル/ポリメタクリル酸2−ヒドロキシエチルマクロモノマー=90/10(質量比))を得た。
【0044】
(製造例7)
ランダム共重合体組成物の合成:
撹拌機、冷却管、窒素吹き込み口を備えた3リットルのフラスコに、アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル720質量部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル80質量部、トルエン1200質量部を加え、窒素バブリングすることにより窒素置換した。ついでn−オクチルメルカプタン8質量部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル4質量部を加えた後、昇温を行い、内温70℃にて6時間保持し重合を完結させた。重合溶液からエバポレーターにより溶媒を除去し白色固体を得た。この白色固体を減圧乾燥し、精製した共重合体(アクリル酸4−t−ブチルシクロヘキシル単位/メタクリル酸2−ヒドロキシエチル単位=90/10(質量比))を得た。
【0045】
(実施例1)
重合体組成物(A−1)10質量部、ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム(株)製ノバテックTX1810A)60質量部、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS:旭化成製タフテックH1221)30質量部をブレンドし、溶融混合してオレフィン系樹脂組成物を得た。このオレフィン系樹脂組成物から、射出成形機を用い厚さ3mm、縦・横50mmの平板(成形体)を作製し、この上にウレタン系塗料としてオリジン電気(株)製プラネットPZシルバー(以下、「PZシルバー」という)を乾燥膜厚30μmとなるようにスプレー塗装した。15分間室温放置し、次いで90℃で40分加熱乾燥してウレタン塗料塗装板を得た。
平板表面の塗装性の評価結果およびオレフィン系樹脂組成物成形体のダインスタット試験結果を表1に示す。
【0046】
(実施例2)
重合体組成物(A−1)を重合体組成物(A−2)に変更した以外は、実施例1と同様にオレフィン系樹脂組成物の平板を作製し、ウレタン塗料塗装板を得た。
平板表面の塗装性の評価結果およびオレフィン系樹脂組成物成形体のダインスタット試験結果を表1に示す。
【0047】
(実施例3)
重合体組成物(A−1)を重合体組成物(A−3)に変更した以外は、実施例1と同様にオレフィン系樹脂組成物の平板を作製し、ウレタン塗料塗装板を得た。
平板表面の塗装性の評価結果およびオレフィン系樹脂組成物成形体のダインスタット試験結果を表1に示す。
【0048】
(実施例4)
重合体組成物(A−3)を20質量部に変更した以外は、実施例3と同様にオレフィン系樹脂組成物の平板を作製し、ウレタン塗料塗装板を得た。
平板表面の塗装性の評価結果およびオレフィン系樹脂組成物成形体のダインスタット試験結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム(株)製ノバテックTX1810A)から、射出成形機を用い厚さ3mm、縦・横50mmの平板を作製し、この上にウレタン系塗料としてPZシルバーを乾燥膜厚30μmとなるようにスプレー塗装した。15分間室温放置し、次いで90℃で40分加熱乾燥してウレタン塗料塗装板を得た。
平板表面の塗装性の評価結果およびオレフィン系樹脂組成物成形体のダインスタット試験結果を表1に示す。
【0050】
(比較例2)
ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム(株)製ノバテックTX1810A)60質量部、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS:旭化成製タフテックH1221)30質量部をブレンドし、溶融混合してオレフィン系樹脂組成物を得た。このオレフィン系樹脂組成物から、射出成形機を用い厚さ3mm、縦・横50mmの平板を作製し、この上にウレタン系塗料としてPZシルバーを乾燥膜厚30μmとなるようにスプレー塗装した。15分間室温放置し、次いで90℃で40分加熱乾燥してウレタン塗料塗装板を得た。
平板表面の塗装性の評価結果およびオレフィン系樹脂組成物成形体のダインスタット試験結果を表1に示す。
【0051】
(比較例3)
製造例7で得られたランダム共重合体組成物20質量部、ポリプロピレン樹脂(日本ポリケム(株)製ノバテックTX1810A)60質量部、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレン(SEBS:旭化成製タフテックH1221)30質量部をブレンドし、溶融混合してオレフィン系樹脂組成物を得た。このオレフィン系樹脂組成物から、射出成形機を用い厚さ3mm、縦・横50mmの平板を作製し、この上にウレタン系塗料としてPZシルバーを乾燥膜厚30μmとなるようにスプレー塗装した。15分間室温放置し、次いで90℃で40分加熱乾燥してウレタン塗料塗装板を得た。
平板表面の塗装性の評価結果およびオレフィン系樹脂組成物成形体のダインスタット試験結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形した成形品は、オレフィン系重合体を含んでいながら、プライマー塗布や特殊な表面処理を行うことなく、その表面に塗装を行うことができので、製造工程を減らし、原料コスト、製造コストを抑えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性単量体(a)を、重合性不飽和基を有するマクロモノマー(b)の存在下で重合させて得られる重合体組成物(A)と、
オレフィン系重合体(B)とを含有する熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物を成形した成形体。