説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】 ポリフェニレンエーテル樹脂とポリプロピレン樹脂を主成分とし、外観、機械的強度、耐溶剤性が良好で、特に耐熱老化性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 ポリフェニレンエーテル樹脂(A)5〜95重量%、ポリプロピレン樹脂(B)95〜5重量%からなる樹脂成分100重量部に対し、相溶性改良剤(C)を1〜50重量部配合した熱可塑性樹脂組成物であって、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の銅含有率が0.2ppm以下で、固有粘度が0.3〜0.6dl/gであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、さらに詳しくは、電気・電子・OA機器分野、自動車分野、その他各種分野で利用でき、外観、機械的強度、耐溶剤性が良好で、特に耐熱老化性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテル樹脂は、機械的強度、耐熱性、電気特性、寸法安定性等に優れているので、電気・電子部品、OA機器用部品、自動車用部品等の各種用途に多く用いられている。しかしながら、非晶性樹脂であるため、耐溶剤性に劣るという欠点が有り、オイルや溶剤が付着したり接触したりする用途には用い難いのが現状である。一方、ポリプロピレン樹脂は、安価、軽量であり、流動性、耐溶剤性に優れており、バンパー等の自動車関係の部品、シート、フィルム等の種々の用途に、非常に幅広く使われている。しかしながら、機械的強度や耐熱性の面では、ポリフェニレンエーテル樹脂に比べると劣っている。また、電気・電子部品、OA機器用部品、自動車用部品等の各種用途においては、デザインの多様化、小型化、軽量化、薄肉化がすすみ、さらに、樹脂製部品の使用される環境温度が高くなり、樹脂材料にも外観、流動性、機械的強度、耐溶剤性、耐熱老化性といった要求が年々厳しくなってきている。
【0003】
そこで、両者の長所を活かしたポリマーブレンド、すなわちポリフェニレンエーテル樹脂の持つ強度、耐熱性と、ポリプロピレン樹脂の持つ耐溶剤性や流動性を併せ持った組成物が提案されている。例えば、特許文献1及び特許文献2等には、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリオレフィン樹脂からなる樹脂組成物に、特定の水素添加ブロック共重合体を加えることにより、耐溶剤性や成形性に優れた樹脂組成物が得られるとの開示がなされている。また、特許文献3及び特許文献4等にはポリフェニレンエーテル、ポリオレフィン及び特定の水素添加ブロック共重合体からなる相溶性、剛性、耐熱性、耐溶剤性に優れた樹脂組成物が開示されている。さらに、特許文献5には、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、特定の官能性化合物、特定のジアミン化合物からなる耐熱性、剛性、耐衝撃性、ウエルド強度等の物性バランスに優れた樹脂組成物の製造方法が開示されている。しかしながら、上記の特許文献1〜特許文献5に開示されているいずれの樹脂組成物も、長期間にわたって高温雰囲気中で使用される場合に問題となる耐熱老化性、特に破断伸びの低下が大きく、満足できるものではなかった。特許文献6には、性質が異なる二種の特定のポリプロピレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル、共役ジエン化合物が特定のビニル結合を有するブロック共重合体の選択水添物を含む組成物が、層剥離を改良し、且つ、熱履歴後の靱性低下を改良することが記載されている。特許文献6記載の熱可塑性樹脂組成物は、確かに耐油性、耐薬品性、耐熱性、耐衝撃性、剛性点では優れているが、高温中で比較的短時間の処理により破断伸びが大きく低下し、耐久性に欠け、耐熱材料として満足できるものではなかった。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4863997号明細書
【特許文献2】特開平4−183748号公報
【特許文献3】特開平5−70679号公報
【特許文献4】特開平6−136202号公報
【特許文献5】特開2003−221451号公報
【特許文献6】特開平9−12800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記のようなポリフェニレンエーテル樹脂とポリプロピレン樹脂を主成分とした樹脂組成物の長所を生かしながら、長時間にわたり高温雰囲気中で処理しても破断伸び等の機械的強度の低下が小さく、耐熱老化性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ポリフェニレンエーテル樹脂中の不純物である銅の含有量を低減することにより、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリプロピレン樹脂を主成分とした熱可塑性樹脂組成物が優れた機械的強度を有し、特に長時間にわたり高温雰囲気中で処理しても、破断伸び等の機械的強度の低下が小さく、耐熱老化性に優れていることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明の要旨は、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)5〜95重量%、ポリプロピレン樹脂(B)95〜5重量%からなる樹脂成分100重量部に対し、相溶性改良剤(C)を1〜50重量部配合した熱可塑性樹脂組成物であって、該ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の銅含有率が0.2ppm以下で、固有粘度が0.3〜0.6dl/gであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に存する。
【発明の効果】
【0007】
ポリフェニレンエーテル中の銅含有量を低減した本発明の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品は、外観、機械的強度、耐溶剤性が良好で、特に耐熱老化性に優れており、高温雰囲気中で長時間使用しても破断伸び等の機械的強度の低下が小さい。本発明組成物は電気・電子・OA機器分野、自動車分野、その他広範囲な分野の成形品材料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂(A)は、下記一般式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、2つのR1 は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭化水素オキシ基を表し、2つのR2 は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。ただし、2つのR1 が共に水素原子になることはない)で表される構造単位を主鎖に持つ重合体であって、ホモポリマーでもコポリマーでも良いが、銅含有率が0.2ppm以下で、固有粘度が0.3〜0.6dl/gであることが必要である。
ホモポリマーとしては、具体的には、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル等の2,6−ジアルキレンエーテルの重合体が挙げられ、コポリマーとしては、各種2,6−ジアルキルフェノール/2,3,6−トリアルキルフェノール共重合体が挙げられる。上記の内、特に、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好ましい。
【0011】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられるポリフェニレンエーテル樹脂(A)の製法は、特に限定されるものではなく、例えば米国特許3,306,874号明細書に示されるように、モノマー、例えば2,6キシレノールを、第一銅塩とアミンの化合物等の触媒の存在下で酸化重合させることにより容易に製造できる。具体的な製法は後記の製造例に示す。
【0012】
本発明で使用されるポリフェニレンエーテル樹脂(A)は、銅含有率が0.2ppm以下であることが必要である。銅含有率は、好ましくは0.1ppm以下である。ポリフェニレンエーテル樹脂(A)中の銅含有率が0.2ppmを越えるポリフェニレンエーテル樹脂を使用した、ポリフェニレンエーテル樹脂とポリプロピレン樹脂を主成分とした樹脂組成物は、高温雰囲気中で使用された場合の各種機械的物性の低下が大きくなり、好ましくない。
本発明に使用される銅の含有率が0.2ppm以下のポリフェニレンエーテル樹脂を得る方法は特に限定されるものではない。しかして、銅成分は酸化重合反応に使用した触媒に由来するので、酸化重合反応終了後、触媒に使用した銅塩を、好ましくは0.2ppm以下となるように除去しておくことが有効である。除去方法は特に限定されるものではないが、例えば、酸化重合反応により得られたポリフェニレンエーテル溶液に銅とキレート化合物を形成するエチレンジアミン4酢酸塩の水溶液を添加し,十分接触させた後、水層を分離することにより効率よく銅塩を除去することが出来る。必要に応じ,所定の銅含有率となるまで、更にこの操作を繰り返す。或いは、酸化反応溶液からポリフェニレンエーテルを分離する際、ポリマー含有相と銅塩含有相の分離を良好にするような物質を添加する方法や、これらを組み合わせた方法を採用して銅含有率を低減することが好ましい。酸化反応終了後、特に銅含有率を低減させることなく,反応液にメタノールなどの非溶媒を添加してポリフェニレンエーテルを分離し、メタノールや水等で洗浄しただけではポリフェニレンエーテル中の銅含有率を0.2ppm以下に低減することは出来ない。
【0013】
また、本発明で使用されるポリフェニレンエーテル樹脂(A)は、極限粘度が0.3〜0.6dl/gのものである。なお、本発明において極限粘度は、後述の実施例に記載したように、クロロホルムを溶媒とし、30℃で測定した値から求めたものである。ポリフェニレンエーテル樹脂の極限粘度が0.3dl/g未満では熱可塑性樹脂組成物の機械的強度が低下し、0.6dl/gを越えると流動性が不足し、さらには成形品の外観不良が発生することがある。
極限粘度が0.3〜0.6dl/gのポリフェニレンエーテル樹脂を得る方法も特に限定されるものではなく、公知の方法に従って酸化重合反応の反応条件、例えば、重合温度、重合時間、触媒量などを制御することにより所望の極限粘度のポリフェニレンエーテルを得ることが出来る。また、本発明では、極限粘度の異なる2種以上のポリフェニレンエーテル樹脂を併用し、併用した樹脂の極限粘度が上記範囲となるように調整してもよい。
【0014】
本発明では、必要に応じてポリフェニレンエーテル樹脂(A)の50重量%以下をポリスチレンやゴム強化ポリスチレンに置き換えてもよい。ポリスチレンやゴム強化ポリスチレンが50重量%を越えると荷重撓み温度が低下し過ぎるので好ましくない。
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられるポリプロピレン樹脂(B)は、プロピレンを主成分として重合してなる結晶性樹脂であり、具体的にはプロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とし、これとエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。共重合体としてはランダム共重合体でもブロック共重合体でもよいが、ポリプロピレン重合体中にプロピレン−α−オレフィン共重合体が分散した形態を取るブロック共重合体が好ましい。単独重合体又は共重合体である結晶性ポリプロピレン樹脂としては、好ましくは、プロピレン単独重合体やプロピレン−エチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0016】
単独重合体又は共重合体である結晶性ポリプロピレン樹脂におけるプロピレン重合体部分の密度は特に限定されるものでは無いが、JIS K−7112による測定で、約0.9g/cm3程度のものが通常使用される。通常、密度の小さいポリプロピレンを使用する際には水蒸気バリヤー性が不満足となる。
【0017】
本発明組成物には、ポリプロピレンの結晶性を向上させる目的で核剤を配合してよい。かかる核剤として代表的なものとしては、芳香族カルボン酸の金属塩、ソルビトール系誘導体、有機リン酸塩、芳香族アミド化合物等の有機系核剤や、タルク等の無機核剤を挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0018】
結晶性ポリプロピレン樹脂の密度の測定方法としては、単独重合体の結晶性ポリプロピレン樹脂である場合は、結晶性ポリプロピレン樹脂を圧縮成形あるいは射出成形等により、所定のテストピースを成形し、該テストピースを用いて、JIS−K−7112水中置換法に従って求めることができる。共重合体の結晶性ポリプロピレン樹脂である場合は、重合時にプロピレン単独重合体を抜き出し、上記方法によって求める方法、あるいは、共重合体をヘキサン等の溶媒を用いて、共重合部分を抽出し、残ったプロピレン単独重合体部分の密度を上記方法によって求める方法が挙げられる。また、樹脂組成物におけるプロピレン単独重合体部分の密度を測定するには、樹脂組成物をクロロホルム等のポリフェニレンエーテルの良溶媒を用いて抽出し、残った結晶性プロピレン樹脂から、上記方法によって求めることができる。
【0019】
単独重合体又は共重合体である結晶性ポリプロピレン樹脂のメルトフローレートは、JIS K−7210に基づき、230℃、2.16kg荷重での測定で、好ましくは0.5〜100g/10分であり、より好ましくは1.0〜50g/10分である。メルトフローレートが0.5g/10分未満であると成形性が不足し、100g/10分を越えると機械的強度が不満足である。
【0020】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いられる相溶性改良剤(C)は、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)との相溶性を改良するものであれば、特に限定されるものではない。好ましい相溶性改良剤(C)としては、相溶性の改良と共に耐衝撃性改良効果もあるポリスチレン−ポリプロピレングラフト共重合体、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物から選ばれる1種以上の共重合体であり、特に好ましい相溶性改良剤は、耐衝撃性改良剤としての効果も大きいビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物である。
【0021】
ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物中のブロック共重合体とは、ビニル芳香族化合物に由来する連鎖単位Aと共役ジエンに由来する連鎖単位Bとを各々少なくとも一個有するブロック共重合体であり、単位Aおよび単位Bの配列は、線状構造、或いは分枝構造等をなすものを含む。また、これらの構造のうち、一部にビニル芳香族化合物と共役ジエンとのランダム共重合体部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。本発明の相溶性改良剤としては、これらのうちで線状構造をなすものが好ましく、トリブロック構造をなすものがより好ましい。
【0022】
また、該ブロック共重合体の水素添加物とは、共役ジエンに由来する単位Bの脂肪族不飽和基が水素添加により減少したブロック共重合体であり、水素添加率は80%以上であること、すなわち、水素添加されずに残存している不飽和結合の割合は、水添前の20%以下であることが好ましく、10%以下がより好ましい。また、水素添加していないブロック共重合体と併用してもよい。該ブロック共重合体の水素添加物におけるビニル芳香族化合物としては、好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられ、好ましくは、スチレンである。また、共役ジエンとしては、好ましくは、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエンである。ブロック共重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等があり、これらは複数種併用してもよい。水素添加ブロック共重合体に占める芳香族ビニル化合物単位は、例えばスチレンの場合、15〜75重量%であるものが好ましい。
【0023】
本発明組成物中の、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の割合は両者の合計を100とした場合、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)/ポリプロピレン樹脂(B)の重量比が5/95〜95/5、より好ましくは10/90〜70/30であり、特に好ましくは20/80〜60/40である。ポリフェニレンエーテル樹脂(A)が5重量%未満では耐熱性、剛性が不満足であり、ポリプロピレン樹脂が5重量%未満では、耐溶剤性、流動性が不満足である。
【0024】
また、本発明では、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の相溶性を改良すると同時に、耐衝撃性改良の効果もある相溶性改良剤(C)の配合率は、ポリフェニレンエーテル樹脂(A)とポリプロピレン樹脂(B)の合計100重量部に対し、1〜50重量部、好ましくは3〜40重量部である。相溶性改良剤(C)の配合量が1重量部未満では相溶性と耐衝撃性の改良効果が小さく、50重量部を越えると耐熱性や剛性が不満足となる。
【0025】
本発明組成物は,上記(A)〜(C)を必須成分とするが、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を配合することが出来る。必要に応じて添加し得る他の成分としては、例えば、熱可塑性樹脂への使用が周知の、酸化防止剤、耐候性改良剤、増核剤、可塑剤、流動性改良剤等が挙げられる。また、有機充填剤、補強剤、無機充填剤、例えば、ガラス繊維、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、シリカ、クレー等の添加は剛性、耐熱性、寸法特性等の向上に特に有効である。実用のために、各種着色剤、およびそれらの分散剤なども周知のものが使用できる。
また、本発明では、難燃性を付与するために難燃剤を添加することも好ましい。本発明組成物に使用される難燃剤としては、各種公知のものを用いることができ、特に限定されるものでは無く、その配合量は目的とする難燃レベルを得るために必要とされる量である。好ましくは、リン系、ハロゲン系、無機系の難燃剤、難燃助剤、及びこれらを併用して用い、通常樹脂成分100重量部に対して、総量で1〜50重量部程度が配合される。
【0026】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造する方法は特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。例えば、各種混練機、例えば、一軸および多軸混練機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラム等で上記成分を混練した後、冷却固化する方法や、適当な溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素およびその誘導体に上記成分を添加し、溶解する成分同志あるいは、溶解する成分と不溶解成分とを懸濁状態で混ぜる溶液混合法等が用いられる。工業的コストからは、溶融混練法が好ましいが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂組成物の成形において一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、シート成形、熱成形、回転成形、積層成形等の成形方法が適用できる。
【実施例】
【0028】
本発明を実施するための最良の形態を以下の実施例によって、より具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の例における評価法、ポリフェニレンエーテルの製造法は次の通りである。
<ポリフェニレンエーテルの評価法>
【0029】
(1)極限粘度: ポリフェニレンエーテル0.5gを溶液として100ml以上(濃度0.5g/dl以下)となる様にクロロホルムで溶解し、30℃においてウベローデ型の粘度計を用いて、異なる濃度における比粘度を測定し、比粘度と濃度との比を、濃度を0に外挿することにより極限粘度を算出した。
(2)銅含有率: ポリフェニレンエーテルを硝酸で分解した後に残渣中の銅を原子吸光分析により定量し、ポリフェニレンエーテル中の銅含有率を算出した。
【0030】
〔ポリフェニレンエーテル(A)の製造例〕
反応器底部に酸素含有ガス導入のためのスパージャー、攪拌タービン翼及びバッフル、反応器上部のベントガスラインに凝縮液分離のためのデカンターを底部に付属させた還流冷却器を備えた10リットルのジャケット付きオートクレーブ反応器に、1.4172gの酸化第一銅、8.5243gの47%臭化水素水溶液、16.5277gのN,N−ジ−n−ブチルアミン、41.9196gのN,N−ジメチル−n−ブチルアミン、3.4139gのN,N’−ジ−t−ブチルエチレンジアミン、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド1.00g及び2770.3gのトルエンを入れ、初期仕込み液を作成した。次いで、反応器気相部に窒素を導入し、反応器気相部の絶対圧力を0.108MPaに制御した。
【0031】
続いて、酸素を窒素で希釈して作った、絶対圧力が0.108MPaでその酸素濃度が70%のガスを、スパージャーより導入し、以後重合中も含めて反応器気相部に窒素を導入しながら、窒素と上記ガスとにより、反応器気相部の絶対圧力が0.108MPaに維持される様に、コントロールバルブを制御した。上記ガスの導入速度は3.45Nl/minでおこなった。上記ガスの導入を開始してから直ちに、1100gの2,6−ジメチルフェノールを1056.9gのトルエンに溶かした溶液を、プランジャーポンプを用いて30分で全量を投入し終わる速度で、添加を開始した。重合温度は40℃を保つようにジャケットに熱媒体を通して調節した。ガス導入開始後約140分で、酸素含有ガスに代えて窒素を導入すると共に、反応器にエチレンジアミン4酢酸ナトリウム(EDTA4ナトリウム)5%の水溶液500gを反応液に添加し攪拌した。その後反応溶液の温度が70℃になる様に熱媒体でコントロールしながら、攪拌を2時間継続した。
【0032】
攪拌を停止した後、静置分離した水溶液を系外に排出し、更に純水250gを反応液に添加して10分間攪拌し、10分間静置した後に分離した水層を系外に排出した。その後、得られた反応液にほぼ等容のメタノールを添加してポリフェニレンエーテルを沈殿させた。沈殿をろ取し、更に適量のメタノールで洗浄した後、140℃程度で1時間強乾燥させ、粉末状ポリフェニレンエーテル(A)を得た。
【0033】
得られたポリフェニレンエーテル(A)(以下、PPE(A)と略記することがある)の評価結果は次の通りであった。
極限粘度: 0.48dl/g
銅含有率: 0.1ppm未満
【0034】
〔ポリフェニレンエーテル(B)の製造例〕
上記ポリフェニレンエーテル(A)の製造方法と同様に製造したが、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド0.3gを使用すること、及びガス導入開始後約155分で酸素含有ガスに代えて窒素の導入を開始したことのみを変更して、粉末状のポリフェニレンエーテル(B)を得た。
【0035】
得られたポリフェニレンエーテル(B)(以下、PPE(B)と略記することがある)の評価結果をは次の通りであった。
極限粘度: 0.48dl/g
銅含有率: 0.5ppm
<ポリフェニレンエーテル以外の原材料>
【0036】
(i)ポリプロピレン樹脂:日本ポリケム(株)製、「ノバテックBC5D」、MFR=3g/10min.、ポリプロピレン重合体部分の密度0.9g/cm3、(以下、PPと略記することがある。)
(ii)ゴム強化ポリスチレン:エー・アンド・エム・スチレン(株)製、商品名「HT478」(以下、HIPSと略記することがある。)
(iii)ビニル芳香族化合物ー共役ジエンブロック共重合体の水素添加物:クラレ(株)製、商品名「セプトン2104」、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の水素添加物、スチレン含量65重量%、(以下、SEPSと略記することがある。)
【0037】
(iv)フェノール系抗酸化剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チバ・スペシャルテイ・ケミカルズ社製、商品名「IRGANOX1010」(以下、安定剤1と略記することがある)。
(v)亜リン酸エステル系安定剤:4,4’−テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジイルビスホスフォナイト、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「IRGAFAS P−EPQ」(以下、安定剤2と略記することがある)。
【0038】
〔熱可塑性樹脂組成物の評価法〕
(イ)引張試験:ASTM−D638に準じた。試験温度23℃。
(ロ)曲げ弾性率試験:ASTM−D790に準じた。試験温度23℃。
(ハ)ノッチ付アイゾット衝撃試験:ASTM−D256に準じた。試験温度23℃。
(ニ)荷重撓み温度試験:ASTM−D648に準じ、0.45MPa負荷で実施した。
(ホ)耐熱老化性試験:高温雰囲気中で使用する場合の物性変化を評価するため、80℃のギアーオーブン中で50時間(以下、処理条件1と略記する)、及び500時間(以下、処理条件2と略記する)熱処理した試験片を用い、上記(イ)〜(ニ)にて引張試験、曲げ弾性率試験、ノッチ付アイゾット衝撃試験、荷重撓み温度試験を実施した。
【0039】
〔実施例1〜3、比較例1〜3〕
表1に示す割合にて秤量した各成分をタンブラーミキサーにて均一に混合し、二軸押出機(スクリュウ径30mm、L/D=42)のホッパーに投入し、シリンダー温度250℃、スクリュー回転数400rpmの条件にて、溶融混合させてペレット化した。
得られたペレットを、80℃で2時間乾燥後、東芝機械製IS80B型射出成形機により金型温度60℃、シリンダー設定温度250〜270℃、射出圧力85MPa、成形サイクル40秒の条件で、以下の評価試験に使用する試験片を成形した。各試験片を用い、上記評価法により、熱可塑性樹脂組成物の評価を行い、その結果を表1に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から明らかな様に、実施例1〜実施例3に示した本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高温雰囲気で長時間使用しても機械的強度の低下が少なく、銅含有率が0.5ppmのポリフェニレンエーテルを使用した比較例の組成物に比し、特に破断伸びの低下が小さく、耐熱老化性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル樹脂(A)5〜95重量%及びポリプロピレン樹脂(B)95〜5重量%からなる樹脂成分100重量部に対し、相溶性改良剤(C)を1〜50重量部配合した熱可塑性樹脂組成物であって、該ポリフェニレンエーテル樹脂(A)の銅含有率が0.2ppm以下で、固有粘度が0.3〜0.6dl/gであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
相溶性改良剤(C)がポリスチレン−ポリプロピレングラフト共重合体、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン化合物重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物から選ばれる少なくとも1種の共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−143957(P2006−143957A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338768(P2004−338768)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】