説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】 耐衝撃性及び寸法安定性、剛性に優れ、かつ、外観、流動性、および塗装膜密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関し、特に、自動車外装部品用製造材料として極めて有用な熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】成分(A):ポリアミド樹脂、成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物及び/又はエチレン−α−オレフィン系共重合体、成分(C):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物に、不飽和酸及び/又はその誘導体を付加させた変性水素化ブロック共重合体、成分(D):板状及び/又は針状の無機フィラー、並びに、成分(F):エチレン−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物 を含有してなる熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に耐衝撃性及び寸法安定性、剛性に優れ、かつ、外観、流動性、および塗装膜密着性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関するものであり、電機、電子、自動車をはじめとする広範囲の分野に利用できるものである。特に、自動車外装部品用製造材料として極めて有用な熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、成形性、耐薬品性、引っ張り強さ、曲げ強さ等の機械的性質、耐摩耗性等に優れているので、電気・電子部品、機械部品、自動車部品等広範な分野で使用されている。しかし、得られる成形品の寸法安定性(線膨張係数)に難があり、例えば、ポリアミド樹脂組成物から得られる成形品を金属部品と組み合わせて使用する場合、樹脂製成形品の線膨張係数が金属部品のものより大きすぎて、高温使用環境下では寸法差や噛み合い不良といった不具合を生じるという欠点があった。
【0003】
さらに、プラスチック成形品表面に塗料を塗装し、このプラスチック成形品を高温環境下で使用する場合には、塗料とプラスチック材料の熱膨張率が異なるために、成形品表面の塗装膜が剥離したり、塗装面に微細な亀裂が生じたりして、外観や意匠性が悪化するという問題があった。
【0004】
一方、フェンダー、ドアパネル、ボンネット、ルーフパネル等の自動車外装部品において、軽量化やデザインの自由度、モジュールアッセンブリー化が可能な点から、従来は金属製であったところでプラスチック化が進んでいる。これらの用途では、従来のプラスチック部品と比較して、耐衝撃性、寸法安定性(線膨張係数)、剛性、流動性、外観等で高いレベルの材料が要求される。
【0005】
ポリアミド樹脂の寸法安定性や剛性を改良するためには、ポリアミド樹脂に無機フィラーを配合する手法があるが、耐衝撃性が著しく低下し、外観も悪化するため、その用途が著しく限定されていた。
【0006】
このような問題の改善策として、例えばポリアミド樹脂の耐衝撃性を向上させるためにゴム状重合体を添加することが広く行われている。また、ポリアミド樹脂とゴム状重合体との相溶性を高めるために、不飽和カルボン酸又はその誘導体でゴム状重合体を変性することが公知の技術として知られている。
【0007】
例えば、ポリアミド樹脂と変性水素化ブロック共重合体からなる組成物が開示されており、無機フィラーを任意成分として配合できることが記載されている(特許文献1)。また、ポリアミド樹脂、無機充填剤、変性スチレン・オレフィン系共重合体からなる金属メッキ性又は塗装密着性に優れたポリアミド樹脂組成物の記載がある(特許文献2)。しかし上記のような従来技術では、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスは十分とは言えず、例えば耐衝撃性を向上させるためにゴム状重合体の配合量を増やすと、寸法安定性や剛性が大きく低下するため、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスを向上させる必要があった。
【0008】
また、(A)ポリアミド樹脂、(B)ビニル芳香族化合物重合体ブロックaとオレフィン化合物重合体ブロックbとの水素化ブロック共重合体、(C)前記水素化ブロック共重合体にカルボン酸又はその誘導体基が付加した変性ブロック共重合体より成り、耐衝撃性に優れ、かつ弾性率、耐熱性、ウェルド部強度等の物性バランスが良好で、成形性及び成形品外観の改良されたポリアミド樹脂組成物(特許文献3)や、(A)特定の末端基のポリアミド樹脂、(B)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との水素化ブロック共重合体、(C)ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物との水素化ブロック共重合体にカルボン酸基又はその誘導体基が結合されている変性ブロック共重合体、(D)エチレン−α−オレフィン系共重合体、(E)末端のみに酸無水基を有するオレフィン系ポリマーからなる低温衝撃性の改良されたポリアミド樹脂組成物(特許文献4)の記載があり、これらの組成物に無機フィラーを任意成分として配合できることが記載されている。
【0009】
しかしながら、これらの発明は、前記特定成分の組み合わせ範囲内での配合効果を開示するに止まり、実施例等において無機フィラーを配合した具体例もなく、従って耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスを高度に均衡させつつ外観の良好なものを得るには、ある特定の無機フィラーを配合する必要があるという点については何らの言及も示唆もない。
【0010】
さらに、ポリアミド樹脂、官能化(酸変性)されたトリブロックコポリマー、官能化されていないエチレン−プロピレンコポリマー、及び繊維質の充填材からなる耐衝撃性ポリアミド組成物が開示されている(特許文献5)。しかし、この発明では、繊維質の充填材を用いているため、得られる成形品の外観が悪化するという問題がある。また、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスを高度に均衡させつつ、外観の良好なものを得るには、ある特定の無機フィラーを配合する必要があるという点については何ら言及されておらず、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスに優れ、かつ外観に優れた熱可塑性樹脂組成物の提供が強く求められていた。
【0011】
さらに、特許文献6にはポリアミド樹脂(A)には、エチレン−アクリル酸共重合体およびエチレン−ビニルアルコール共重合体を代表とする、オレフィン類と不飽和基および極性基を併せ持つ化合物との共重合体(B)、および導電性物質(C)を配合してなる組成物が開示されており、該組成物は、機械的特性、流動性、および導電性などの電気的特性に優れると記載されている。
【0012】
これに対して本発明者らは、成形時の離型性を向上させ、離型不良痕の成形品表面への残留を抑制し、良好な外観の成形品を得るために更に検討を重ねた。
【0013】
【特許文献1】特公昭63−44784号公報
【特許文献2】特公平8−11782号公報
【特許文献3】特公平7−26019号公報
【特許文献4】特許第3330398号公報
【特許文献5】特公平7−49522号公報
【特許文献6】特開2003−64254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、従来技術の有する前記問題点を解決して、良好な耐薬品性、耐熱性を示し、特に、金属部品と組み合わせて使用しても不具合を生じないように線膨張係数を低くして寸法安定性を改善し、かつ耐衝撃性、剛性、外観に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。さらに導電塗装などによる塗装膜の密着性の優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、次の樹脂組成物は、寸法安定性、剛性、耐衝撃性、外観ともに優れていることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明の第一は、
成分(A):ポリアミド樹脂、
成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物及び/又はエチレン−α−オレフィン系共重合体、
成分(C):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物に、不飽和酸及び/又はその誘導体をブロック重合体の水素添加物100重量部に対し、0.3〜2.5重量部付加させた変性水素化ブロック共重合体、
成分(D):平均粒子径が8μm以下の、板状及び/又は針状の無機フィラー、並びに、
成分(F):エチレン−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物
を含有してなる組成物において、上記各成分を、成分(A)と成分(B)、(C)の重量比(A)/((B)+(C))が90/10〜60/40であり、成分(B)と成分(C)の重量比(B)/(C)が10/90〜90/10であり、かつ、
成分(D)の量が成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して5〜60重量部、成分(F)の量が成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計100重量部に対して、0.5〜20重量部の比率で配合したものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に存する。
【0017】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、特定の導電性フィラーを含有していても良い。すなわち本発明の第二は、
成分(A):ポリアミド樹脂、
成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物及び/又はエチレン−α−オレフィン系共重合体、
成分(C):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物に、不飽和酸及び/又はその誘導体をブロック重合体の水素添加物100重量部に対し、0.3〜2.5重量部付加させた変性水素化ブロック共重合体、
成分(D):平均粒子径が8μm以下の、板状及び/又は針状の無機フィラー、
成分(E):導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル 並びに、
成分(F):エチレン−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物
を含有してなる組成物において、上記各成分を、成分(A)と成分(B)、(C)の重量比(A)/((B)+(C))が90/10〜60/40であり、成分(B)と成分(C)の重量比(B)/(C)が10/90〜90/10であり、かつ、
成分(D)の量が成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して5〜60重量部、成分(E)の量が成分(A)100重量部に対して1〜15重量部、成分(F)の量が成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の合計100重量部に対して、0.5〜20重量部の比率で配合したものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物に存する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスに優れ、かつ外観に優れているので、電気・電子部品、機械部品、自動車部品等広範な分野で使用でき、特に自動車外装部品用材料として有用である。また、本発明の第二については、塗装膜密着性と併せて導電性にも優れているので、大型成形品における静電塗装の適用が有効になる。
【0019】
特に、成分(F):エチレン−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物を含有させることにより、組成物の溶融流動性や離型性を損なうことなく、該組成物からなる成形品表面の塗装膜密着性が著しく向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
<ポリアミド樹脂>
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(A)のポリアミド樹脂は、主鎖に−CONH−結合を有し、加熱溶融できる脂肪族ポリアミド樹脂である。その代表的なものとしては、ナイロン−4、ナイロン−6、ナイロン−6・6、ナイロン−4・6、ナイロン−12、ナイロン−6・10、その他公知のジアミン、ジカルボン酸等の単量体成分を含むポリアミド樹脂が挙げられる。好ましいポリアミド樹脂は、ナイロン−6およびナイロン−6・6である。
【0021】
ポリアミド樹脂は、温度23℃、98重量%濃硫酸中濃度1重量%で測定した相対粘度が2.1〜3.5の範囲のものが好ましい。相対粘度が2.1未満であると剛性、寸法安定性、耐衝撃性、外観が低下する可能性があり、3.5を超えると成形性が低下する傾向があり、外観が悪化する場合がある。また、末端基の濃度としては、末端カルボキシル基含量が100μeq/g以下のものが好ましく、末端カルボキシル基含量と末端アミノ基含量の比(末端カルボキシル基含量/末端アミノ基含量)が0.8〜4の範囲のものが好ましい。この比が0.8未満では流動性が低下したり、外観が不充分となるおそれがあり、4を超えると耐衝撃性や剛性が不充分となる場合がある。
<ブロック共重合体の水素添加物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(B)及び成分(C)のブロック共重合体の水素添加物とは、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物で、主にブロックb中の脂肪族不飽和結合数が水素化により減少したブロック共重合体である。
【0022】
また、成分(B)及び成分(C)のブロック共重合体の水素添加物は同じであっても、異なっていてもよく、成分(B)のブロック共重合体の水素添加物は、官能基で変性されていないものである。ブロックa及びブロックbの配列は、線状構造のもの、又は分岐構造(ラジアルテレブロック)のものを含む。また、これらの構造のうちで一部にビニル芳香族化合物と共役ジエン系化合物とのランダム共重合部分に由来するランダム鎖を含んでいてもよい。これら構造のうちでも線状構造のものが好ましく、a−b−a型のトリブロック構造のものが、耐衝撃性の点で特に好ましく、a−b型のジブロック構造のものを含んでいてもよい。
【0023】
成分(B)及び成分(C)のビニル芳香族化合物重合体ブロックaを構成する単量体、ビニル芳香族化合物は、好ましくはスチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等であり、更に好ましくは、スチレンである。また、共役ジエン系化合物重合体ブロックbを構成する単量体、共役ジエン系化合物は、好ましくは1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンである。
【0024】
これらブロック共重合体の水素添加物における、ビニル芳香族化合物に由来する繰り返し単位の占める割合は、10〜70重量%の範囲が好ましく、10〜40重量%の範囲がより好ましい。該ブロック共重合体の水素添加物が有する不飽和結合をみるに、共役ジエン系化合物に由来する脂肪族性不飽和結合のうち、水素添加されずに残存している割合は、20%以下が好ましく、10%以下がより好ましい。また、ビニル芳香族化合物に由来する芳香族性不飽和結合の約25%以下が水素添加されていてもよい。
【0025】
このようなブロック共重合体の水素添加物としては、共役ジエン系化合物重合体ブロックbを構成する単量体、共役ジエン系化合物が、1,3−ブタジエンの場合は、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)と称され、また2−メチル−1,3−ブタジエンの場合は、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体(SEPS)と称され、種々のa−b−a型のトリブロック構造のものが市販されていて、容易に入手可能である。
【0026】
これら成分(B)及び成分(C)において、ブロック共重合体の水素添加物の数平均分子量は、180,000以下のものが好ましく、120,000のものがより好ましい。分子量が180,000を超えると、成形加工性が低下する傾向があり、外観が悪化するおそれがある。
<エチレン−α−オレフィン系共重合体>
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(B)のエチレン−α−オレフィン系共重合体は、エチレン及びα−オレフィンを必須成分とするゴム状共重合体であり、官能基で変性されていないものをさす。エチレンとα−オレフィンとの共重合の割合(重量比)は、通常90:10〜20:80であり、好ましくは75:25〜40:60の範囲のものである。
【0027】
共重合に用いられるα−オレフィンは、炭素数3〜20個を有する不飽和炭化水素化合物であり、具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1等が挙げられ、好ましくは炭素数3〜10の直鎖状のα−オレフィンであり、特に好ましいのはプロピレン、1−ブテン、1−オクテンである。
【0028】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(B)のエチレン−α−オレフィン系共重合体としては、エチレンと上記α−オレフィンの他にジエン化合物を共重合した重合体中に不飽和基を導入したものを用いることができる。用いられるジエン化合物の種類は、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類であり、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。
【0029】
これらエチレン−α−オレフィン系共重合体としては、メルトフローレート(MFR)(ASTM−D1238、温度230℃、荷重2.16kg)は、0.05〜150g/10分の範囲が好ましく、0.1〜50g/10分の範囲がより好ましい。MFRの値が0.05より低いと成形加工性が低下する傾向があり、150以上では耐衝撃性が不充分となるおそれがある。
<変性水素化ブロック共重合体>
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(C)の変性水素化ブロック共重合体を得るためのグラフト変性剤、不飽和酸及び/又はその誘導体のうち、不飽和酸としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ナジック酸等のα,β−不飽和カルボン酸が挙げられる。また、その誘導体としては、上記各種不飽和酸の酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等があり、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル等が挙げられる。
【0030】
これらの中では、不飽和ジカルボン酸又はその酸無水物が好ましく、特にマレイン酸、イタコン酸又はこれらの酸無水物が好適である。これらの不飽和酸又はその誘導体は、1種又は2種以上で使用される。
【0031】
成分(C)において、変性ブロック共重合体に付加した不飽和酸及び/又はその誘導体の付加量は、ブロック共重合体の水素添加物100重量部に対し、0.3〜2.5重量部である。付加量が0.3重量部未満では、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が劣り、2.5重量部を超えると寸法安定性や流動性が低下するので好ましくない。
【0032】
前述の成分(C)のブロック共重合体の水素添加物に、上記のグラフト変性剤、不飽和酸及び/又はその誘導体を付加させて、効率的に変性水素化ブロック共重合体を得るには、ラジカル発生剤を使用することが好ましい。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物等を挙げることができる。
【0033】
具体的には、有機過酸化物としては、(イ)ハイドロパーオキサイド類:例えば、t−ブチル−ハイドロパーオキサイド、キュメン−ハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチル−ハイドロパーオキサイド、p−メンタン−ハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等;(ロ)ジ−アルキルパーオキサイド類:例えば、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチル−パーオキサイド、t−ブチル−キュミル−パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−キュミルパーオキサイド等;(ハ)パーオキシケタール類:例えば、2,2−ビス−t−ブチルパーオキシ−ブタン、2,2−ビス−t−ブチル−パーオキシ−オクタン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−シクロヘキサン、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等;(ニ)パーオキシエステル類:例えば、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ−ベンゾイルパーオキシ−ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等;(ホ)ジアシルパーオキサイド類:例えば、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等がある。
【0034】
また、アゾ化合物としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−〔(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2'−アゾビス(2−メチルプロパン)等がある。
【0035】
その他のラジカル発生剤としてジクミルを挙げることができる。
【0036】
これらのラジカル発生剤のうちでも特に好ましいのは、10時間での半減期温度が120℃以上のラジカル発生剤である。10時間での半減期温度が120℃未満のものでは、寸法安定性や耐衝撃性の点で好ましくない。
<無機フィラー>
本発明において、無機フィラーの形状は、以下のように球状、板状、針状、および繊維状に明確に区別される。
【0037】
球状とは、真球状だけでなくある程度楕円状のものも含み、アスペクト比が1に近いものをさす。板状とは、板状の形状を呈してアスペクト比(板状粉の板状面における最長の長さ/板状粉の厚み)が2〜100の範囲のものをさす。針状とは、長さが100μm以下でアスペクト比が2〜20の範囲のものをさし、繊維状とは、長さが100μmを超えるものをさす。これらは、電子顕微鏡写真により容易に区別することができる。
【0038】
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(D)の無機フィラーは、平均粒子径が8μm以下の板状及び/又は針状のものであり、ガラス繊維、炭素繊維といった繊維状のもの、及びシリカ、ガラスビーズ、カーボンブラックといった球状のもの以外のものをさす。無機フィラーの形状が繊維状である場合は、最終的に得られる成形品の外観が悪化し、球状の場合は寸法安定性、剛性に劣るので、好ましくない。
【0039】
具体的には、例えば板状フィラーとしては、タルク等の珪酸マグネシウム、クレー、マイカ、黒鉛、セリサイト、モンモリロナイト、板状炭酸カルシウム、板状アルミナ、ガラスフレーク等が挙げられ、針状フィラーとしては、ウォラストナイト等の珪酸カルシウム、モスハイジ、ゾノトライト、チタン酸カルシウム、硼酸アルミニウム、針状炭酸カルシウム、針状酸化チタン、テトラポット型酸化亜鉛等が挙げられる。
【0040】
これら無機フィラーの中で、耐衝撃性、寸法安定性、剛性、外観のバランスの点で好ましいのは珪酸マグネシウムおよび珪酸カルシウムであり、特に好ましいのはタルクおよびウォラストナイトである。無機フィラー(D)は、1種類を単独使用することも、2種類以上を併用することもできる。
【0041】
なお、本発明でいう平均粒子径とは、X線透過による液相沈隆方式で測定されたD50をいい、板状フィラーの場合は板の幅、長さおよび厚みのうち、幅と長さの平均値を平均粒子系とし、また針状フィラーの場合は針の直径を表す。かかる測定を行う装置の具体例としては、Sedigraph粒子径分析器(Micromeritics Instruement社製、モデル5100)等を挙げることができる。
【0042】
すなわち、本発明の樹脂組成物を用いて最終的に得られる成形品の寸法安定性、剛性を向上させ、良好な外観のものを得るためには、上記のようにして測定した平均粒子径が、8μm以下であることが必要であり、5μm以下のものが好ましく、さらに好ましくは平均粒子径が5μm以下の珪酸マグネシウム及び/又は珪酸カルシウムであり、特に好ましくは平均粒子径が4μm以下の珪酸マグネシウム及び/又は珪酸カルシウムである。
【0043】
本発明で好ましく用いられる珪酸マグネシウムとは、滑石を微粉砕した不定形板状結晶で、化学組成は含水珪酸マグネシウムであり、通常SiOを58〜66重量%、MgOを28〜35重量%、HOを約5重量%含んでおりタルクと呼ばれる。その他少量成分として、Fe を0.03〜1.2重量%、Al23 を0.05〜1.5重量%、CaOを0.05〜1.2重量%、K2 Oを0.2重量%以下、Na2 Oを0.2重量%以下等含有しており、比重は約2.7である。アスペクト比は、通常5〜20である。
【0044】
次に、本発明で好ましく用いられる珪酸カルシウムとは、針状結晶をもつ天然白色鉱物であり、化学式CaSiO3 で表され、通常SiO2 を50重量%、CaOを47重量%、その他少量成分として、Fe23 、Al23 等を含有しており、比重は2.9である。かかる珪酸カルシウム無水塩を主成分とする無機フィラーは、通常ウォラストナイトと称される。市販品では、例えば川鉄鉱業社からPH330、PH450として、ナイコ社からナイグロス4、ナイグロス5として市販されているもの等であり、平均アスペクト比が3〜20のものが好ましい。
【0045】
上記の無機フィラーは、無処理のままであってもよいが、樹脂成分との親和性又は界面結合力を高める目的で、無機表面処理剤、高級脂肪酸又はそのエステル塩等の誘導体、カップリング剤等で処理したものが好ましい。表面処理する際に、非イオン・陽イオン・陰イオン型等の各種の界面活性剤や、各種の樹脂等の分散剤による処理を併せて行ったものが、機械的強度及び混練性の向上の観点からさらに好ましい。
<導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル>
本発明においては、上記成分(A)、(B)、(C)、(D)及び後述する成分(F)からなる熱可塑性樹脂組成物に、導電性を付与するために、さらに成分(E)として導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリルを含有させることができる。これらの導電剤は、導電性と耐衝撃性のバランスの点で、好ましく用いられる。
【0046】
導電性カーボンブラックは、ASTM D2414に準拠して測定されるジブチルフタレー卜(DBP)吸油量が、200ml/100g以上のものが導電性の点で好ましく、300ml/100g以上のものがより好ましい。この様な物性を備えた導電性カーボンブラックとしては、ペイント等に着色目的で加える顔料用カーボンブラックとは違って、微細な粒子が連なった形態のものである。好ましい導電性カーボンブラックとしては、アセチレンガスを熱分解して得られるアセチレンブラック、原油を原料としファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック等が挙げられる。
【0047】
中空炭素フィブリルは、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが実質的に同心に配置されている、本質的に円柱状のフィブリルである。さらに、上記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、上記中空領域の直径が2〜20nmの範囲のものが好ましい。このような中空炭素フィブリルは、特表昭62−500943号公報や、米国特許第4,663,230号明細書等に詳細に記載されている。その製法は、後者の米国特許明細書に詳細に記載されているように、例えば、アルミナを支持体とする鉄、コバルト、ニッケル含有粒子等の遷移金属含有粒子を、一酸化炭素、炭化水素等の炭素含有ガスと、850〜1200℃の高温で接触させ、熱分解によって生じた炭素を、遷移金属を起点として、繊維状に成長させる方法が挙げられる。また、この種の中空炭素フィブリルは、ハイペリオン・カタルシス社が、グラファイト・フィブリルという商品名で販売しており、容易に入手することができる。
<エチレン−ビニルアルコール共重合体>
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(F)のエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、(F1)と称することがある)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物であって、該共重合体に含まれる酢酸ビニル残基のケン化度が97モル%以上のものを意味する。(F1)中のエチレン残基の含有率は、10〜98モル%の範囲が好ましく、20〜70モル%の範囲がより好ましい。エチレン残基含有率が98モル%を超えると、該共重合体(F1)を含む樹脂組成物から得られる成形品の塗装膜密着性が低下する場合があり、10モル%未満では、得られる樹脂組成物の熱安定性が不充分となるおそれがあり、また柔軟性が低下する可能性がある。
<エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(F)のエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物(以下、(F2)と称することがある)は、エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニル残基のケン化度が97モル%未満のものを意味する。ケン化度の下限値は、特に制限はないが、通常40モル%以上である。ケン化度が40モル%より低いと、得られる樹脂組成物の溶融時の熱安定性が低下する傾向がある。(F2)はのケン化度は、80モル%以上が好ましい。
【0048】
このような組成を有する(F2)は、これを含む樹脂組成物の溶融流動性および強度の観点から、JIS−K6730に準じて測定したMFRが0.5〜300g/10分が好ましく、0.8〜250g/10分のものがより好ましい。
【0049】
成分(F1)のエチレン−ビニルアルコール共重合体、および成分(F2)のエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物(以下、成分(F)と総称する)は、いずれも必要に応じて、他の単量体(化合物)が少量共重合していてもよい。共重合可能な単量体としては、プロピレン、イソブテン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセンなどのα−オレフィン;不飽和カルボン酸、その塩、部分アルキルエステル、完全アルキルエステル、および酸無水物;アクリロニトリル;アクリルアミド;不飽和スルホン酸またはその塩などが挙げられる。成分(F)分子におけるこれら任意の単量体残基の割合は、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下程度である。
<導電性改良助剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、さらに導電性改良助剤(成分(F))を含有していても良い。導電性改良助剤(成分(F))と、具体的にはニグロシン(成分(F1))、半芳香族ポリアミド樹脂(成分(F2))、ノボラックフェノール樹脂、ハロゲン化リチウムなどが挙げられる。中でも剛性、耐衝撃性のバランスの点から、ニグロシン(F1)、および半芳香族ポリアミド樹脂(F2)がより好ましい。
【0050】
ここで導電性改良助剤(F)の一例であるニグロシン(F1)とは、COLOR INDEXにC.I.SOLVENT BLACK5およびC.I.SOLVENT BLACK7として記載されているような、トリフェナジンオキサジン、フェナジンアジン系化合物の黒色アジン系縮合混合物である。市販はされているニグロシンの例としては、ヌビアンブラックEP−3、ヌビアンブラックPA−9800、ヌビアンブラックPA0800(いずれも、オリエント化学工業社製)が挙げられる。この中でもヌビアンブラックEP−3が、導電性改良効果がとりわけ大きいので好ましい。
【0051】
導電性改良助剤(F)としてのニグロシン(F1)の含有量は、成分(A)100重量部に対して0.05〜30重量部の範囲で選ぶのが好ましい。ニグロシン(F1)の配合量が0.05重量部より少ないと導電性改良効果が小さく、配合量が30重量部より多いと、最終樹脂組成物の熱安定性や耐熱性の低下、さらに溶融流動性の低下や離型性の低下などの原因となるおそれがある。ニグロシン(F1)のより好ましい配合量は、0.1〜20重量部である。
【0052】
また、導電性改良助剤(F)としての半芳香族ポリアミド樹脂(F2)としては、脂肪族2塩基酸類と芳香族ジアミン類、または芳香族2塩基酸類と脂肪族ジアミン類を原料として、これらの重縮合によって得られるポリアミド樹脂をいう。具体的には、原料の脂肪族2塩基酸類としては、アジピン酸、グルタール酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカジオン酸、ヘキサデカジオン酸、ヘキサデセンジオン酸、エイコサンジオン酸、エイコサジエンジオン酸、ジグリコール酸、2,2,4−トリメチルアジピン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。芳香族ジアミン類としては、メタキシレンジアミン、パラキシレンジアミンが挙げられる。芳香族2塩基酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸が挙げられる。脂肪族ジアミン類としては、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4(又は2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス−(4,4'アミノシクロヘキシル)メタンが挙げられる。
【0053】
これらの半芳香族ポリアミド樹脂のうち、テレフタル酸および/またはイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンを主成分とするポリアミド樹脂、すなわち、ポリアミド6T、ポリアミド6I、または6I/6T共重合ポリアミドなど、またメタキシレンジアミンおよび/またはパラキシレンジアミンとアジピン酸を主成分とするポリアミド樹脂が、導電性助長効果に併せて成形品の外観改良効果も大きいことから特に好ましい。
【0054】
導電性改良助剤(F)としての半芳香族ポリアミド樹脂(F2)の配合量は、成分(A)100重量部に対して1〜30重量部の範囲で選ぶのが好ましい。半芳香族ポリアミド樹脂(F2)の配合量が1重量部より少ないと導電性改良効果が小さく、配合量が50重量部より多いと、最終樹脂組成物の耐熱性の低下、溶融流動性の低下、成形時の離型性低下などの原因となる場合がある。半芳香族ポリアミド樹脂(F2)のより好ましい配合量は、1〜20重量部である。
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、成分(A):ポリアミド樹脂、成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物、及び/又は、エチレン−α−オレフィン系共重合体、成分(C):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物に、不飽和酸及び/又はその誘導体をブロック重合体100重量部に対し、0.3〜2.5重量部付加させた変性水素化ブロック共重合体、並びに、成分(D):平均粒子径が8μm以下の板状、及び/又は、針状の無機フィラーは、各々、上記各成分を、成分(A)と成分(B)、(C)の重量比(A)/((B)+(C))が90/10〜60/40であり、成分(B)と成分(C)の重量比(B)/(C)が10/90〜90/10であり、かつ、成分(D)の量が成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して5〜60重量部の比率で、組成物中に含有される。
【0055】
成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部中で、(A)が90重量部を超え、(B)+(C)が10重量部未満の場合、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が劣り、逆に、(A)が60重量部未満で(B)+(C)が40重量部を超えると熱可塑性樹脂組成物の外観や流動性が低下し、寸法安定性も低下する。
【0056】
成分(B)と(C)の合計100重量部中で、(B)が10重量部未満では寸法安定性に劣り、(C)が10重量部未満では耐衝撃性に劣る。従って、成分(B)と(C)は重量比10/90〜90/10の範囲内で併用されることが必須であり、より好ましくは成分(B)と(C)は重量比50/50〜90/10の範囲である。
【0057】
次に成分(D)については、成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して5重量部未満では、熱可塑性樹脂組成物の寸法安定性や剛性(曲げ弾性率)に劣り、成分(D)が60重量部を超えると流動性や外観、耐衝撃性が低下するので好ましくない。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられる成分(F):エチレン−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物 の含有量は、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)の合計量100重量部に対して0.5〜20重量部である。成分(F)の配合量が0.5重量部より少ないと、本発明に係るポリアミド樹脂組成物から得られる成形品の塗装装密着性の改善効果が少なく、20重量部より多いと、ポリアミド樹脂(A)や、変性水素化ブロック共重合体(C)との反応が進み、最終樹脂組成物の溶融時流動性が低下し、また溶融時の熱安定性も悪化する。成分(F)の好ましい配合量は1〜15重量部であり、より好ましいのは2〜10重量部である。
【0059】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物が成分(E):導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル を含む場合には、成分(F)の含有量は、成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の合計100重量部に対して、0.5〜20重量部である。
【0060】
次に、導電性を付与するためにさらに成分(E):導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリルを配合する場合、成分(A)100重量部に対する成分(E)の含有量は1〜15重量部である。成分(E)の含有量が、1重量部未満では熱可塑性樹脂組成物の導電性の改善効果が低く、15重量部を超えると流動性や耐衝撃性が低下するので好ましくない。
【0061】
導電性をさらに向上させるためには、導電性改良助剤(G)として、ニグロシンまたは半芳香族ポリアミドなどを配合したものが好ましい。なお、導電性改良助剤(G)として記載したこれらの成分は、組成物中に含有させることにより、得られる成形品の外観を向上させる効果も有する。
【0062】
成分(E)を含有させて、導電性を付与した熱可塑性樹脂組成物の場合には、成分(F):エチレン−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物 の含有量は、成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)成分の合計量100重量部に対して、0.5〜20重量部である。成分(F)の配合量が0.5重量部より少ないと、密着性の改善効果が少なく、20重量部より多いと、流動性が低下し、溶融時の熱安定性も悪化する。成分(E)を含有する組成物の場合も、成分(F)の好ましい配合量は1〜15重量部であり、より好ましいのは2〜10重量部である。
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造は、溶融混合法が好ましく、溶融混合の代表的な方法として、熱可塑性樹脂について一般に実用化されている溶融混練機を使用する方法が挙げられる。溶融混練機としては、例えば、一軸又は多軸混練押出機、ロール、バンバリーミキサー等が挙げられる。
【0064】
混練押出機を使用する方法によるときは、好ましくは、成分(A)、(B)及び(C)を予め混合して、混練押出機の上流部分に一括投入し、溶融状態で反応させ、続けて混練押出機の中流部分で成分(D)を投入して溶融反応物と混合させ、さらに、必要に応じて下流部分から導電剤の成分(E)を投入して溶融物と混合し、熱可塑性樹脂組成物のペレットとする方法がある。
【0065】
あるいは、成分(A)、(B)及び(C)を予め混合して、混練押出機に一括投入し、溶融状態で反応させ、ペレットを得る。次に、成分(D)を、このペレットと混練押出機に投入し、成分(A)〜(C)の溶融反応物と混合させ、必要に応じて下流部分から成分(E)を投入して溶融反応物と混合し、熱可塑性樹脂組成物のペレットとする方法が挙げられる。
【0066】
また、別の方法として、成分(A)の一部又は全量の溶融反応物と成分(E)とを予め混合してマスターバッチを作成し、このマスターバッチと成分(A)〜(C)とを混合して混練押出機に投入し、溶融状態で反応させ、続けて混練押出機の中流部分で成分(D)を投入して溶融反応物と混合させ熱可塑性樹脂組成物のペレットとする方法や、このマスターバッチと成分(A)〜(C)とを混合して混練押出機に投入し溶融状態で反応させてペレットを得て、次に、ペレット化したものと成分(D)を混練押出機に投入し、成分(A)〜(C)の溶融反応物と混合させ熱可塑性樹脂組成物のペレットとする方法が挙げられる。
【0067】
このような、予め成分(A)、成分(B)及び成分(C)を溶融反応させ、その溶融反応物に成分(D)を配合し溶融混合することにより、特に優れた耐衝撃性、寸法安定性(線膨張係数)、剛性、及び外観に優れた樹脂組成物が得られるので好ましい。
【0068】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、上記の成分以外に他の各種樹脂添加剤を含有させることができる。各種樹脂添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、耐候性改良剤、造核剤、発泡剤、難燃剤、耐衝撃改良剤、滑剤、可塑剤、流動性改良剤、染料、顔料、有機充填剤、補強剤、分散剤等が挙げられる。なお、液晶ポリマーを含有させると、剛性、耐熱性、寸法精度等の向上に有効である。
【0069】
本発明の熱可塑性樹脂組成物から成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち射出成形法、中空成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法等を採用することができる。
【0070】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、電気機器部品、電子機器部品、自動車部品等の製造用原料として広範囲な分野に利用でき、特に自動車外装部品製造用原料として有用である。
【実施例】
【0071】
以下に、本発明を実施例によって、詳しく説明するが、本発明はこれらの範囲内に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例において配合量は重量部を意味する。
【0072】
実施例及び比較例の各樹脂組成物を得るに当たり、次に示す原料を準備した。
1.成分(A):ポリアミド樹脂
ナイロン−6: 三菱エンジニアリングプラスチックス社製、製品名−ノバミッド1010J、23℃98%濃硫酸中濃度1重量%で測定したときの相対粘度が2.5、末端カルボキシル基含量/末端アミノ基含量比2.6(以下、PA6−1と略す)
2.成分(B):ブロック共重合体の水素添加物、エチレン−α−オレフィン系共重合体
スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS): クレイトンポリマー社製、製品名−クレイトンG1652、スチレン含量29重量%、数平均分子量49,000(以下、SEBSと略す)
エチレン−ブテン共重合体: 三井石油化学工業社製、製品名−タフマーA−4085、ASTM−D1238、温度=230℃、荷重=2.16kgの条件下で測定したMFR6.7g/10分(以下、EBRと略す)
3.成分(C):変性水素化ブロック共重合体
[変性水素化ブロック共重合体の調製]
SEBSを100重量部、無水マレイン酸を2.5重量部、ラジカル発生剤を0.5重量部を瓶量して、ヘンシェルミキサーにて均一に混合した後、二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX−30XCT、スクリュウ径30mm、L/D=42、バレル数12)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数300rpmにて溶融反応させ、変性水素化ブロック共重合体C−1を得た。なお、無水マレイン酸としては、三菱化学(株)製の無水マレイン酸を使用し、ラジカル発生剤としては、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(化薬アクゾ社製、製品名−パーカドックス14、10時間での半減期温度121℃)を使用した。
【0073】
このようにして得られた変性水素化ブロック共重合体を加熱減圧乾燥した後、ナトリウムメチラートによる滴定で無水マレイン酸の付加量を求めた結果、無水マレイン酸の付加量は1.2wt%であった。
4.成分(D):無機フィラー
珪酸マグネシウム(タルク): 松村産業社製、製品名−ハイフィラー#5000PJ、平均粒子径1.8μm、平均アスペクト比6の板状結晶品(以下、D−1と略す)
珪酸カルシウム(ウォラストナイト): 川鉄鉱業社製、製品名−PH450、平均粒子径3.8μm、長さ19μm、平均アスペクト比7の針状結晶品(以下、D−2と略す)
比較例用珪酸カルシウム(ウォラストナイト): 川鉄鉱業社製、製品名−KH15、平均粒子径9.6μm、長さ83μm、平均アスペクト比10の針状結晶品(以下、D−3と略す)
比較例用ガラス繊維: 旭ファイバーグラス社製、製品名−JA FT516、径10μm、長さ3mmの繊維状品(以下、D−4と略す)
5.成分(E):導電性カーボンブラック、中空炭素フィブリル
導電性カーボンブラック: ライオン社製、製品名−ケッチェンブラックEC600JD、BET法表面積1270m2 /g、DBP吸油量495ml/100g(以下、CBと略す)
6.成分(F):エチレン・ビニルアルコール樹脂
(F−1)EVOH G156A:エチレン・ビニルアルコール樹脂(クラレ社製、商品名:エバールG156A、エチレンの共重合比率が47モル%)であって、密度が1.12、MFR(JIS―K6730、温度=190℃、荷重=2.16kg) が6g/10分のものである。
(F−2)EVOH C109:エチレン・ビニルアルコール樹脂(クラレ社製、商品名:エバールC109、エチレンの共重合比率が35モル%)であって、密度が1.17g/cm、MFR((F−1)と同じ条件測定)が8g/10分のものである。
(F−3)EVOH H6960:エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(東ソー社製、商品名:メルセンH6960)であって、密度が0.99g/cm、MFR((F―1)と同じ条件で測定)が40g/10分、融点が113℃、酢酸ビニル含量が4.2重量%、ケン化度が90%のものである。
7.成分(G):導電性改良助剤
(G−1)ニグロシンEP−3:ニグロシン(黒色のアジン系染料、オリエント化学社製、商品名:ヌビアンブラックEP−3)である。
(G−2)X21F07:半芳香族ポリアミド樹脂(6I/6Tの共重合ポリアミド樹脂、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、商品名:ノバミッドX21F07)である。
8.その他
(H−1)YD5013: ビスフェノール型エポキシ化合物(東都化成社製、商品名:エポトートYD5013)である。
(H−2)AC5120:エチレン・アクリル酸共重合体(ハネウェル社製、商品名:ACワックス5120、アクリル酸含量が9.2重量%)である。
[試験片の作製]
熱可塑性樹脂組成物を、射出成形機(東芝IS150)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度80℃の条件で射出成形して、ASTM試験片、100mmφ×3mmtの円盤状成形品および塗装膜密着性評価用に100×100mm×3mmtの正方形成形品を作製した。
[評価方法]
(1)流動性(MFR)
JIS K7210に準拠し、温度280℃、荷重5kgの条件でMFR(単位:g/10分)を測定した。
(2)曲げ弾性率
ASTM D790に準拠して曲げ弾性率(単位:MPa)を測定した。
(3)耐衝撃性(面衝撃)
100mmφ円盤シート(厚さ3mmt)について、ハイレート衝撃試験機(島津製作所製)を用いて、ポンチ径1/2インチ、サポート径3インチ、打ち抜き速度1m/sにて打ち抜き衝撃試験を行った。破壊エネルギー(単位:J)が大きい程、耐衝撃性に優れている。
(4)寸法安定性(線膨張係数)
ASTM D696に準拠して線膨張係数(単位:K-1)を測定した。ただし、測定温度範囲は23〜80℃とした。
(5)外観
円盤状成形品の表面外観を目視にて観察し、離型不良痕やシルバーストリークなどの外観不良がないかを評価し、それらの外観不良がある場合には×、ない場合には○として評価した。
(6)体積抵抗率
ASTM2号ダンベル試験片(厚さ3mm)の平行部分を長さ50mmとなるように両端を切断し、切断により生じた両端面に銀ペーストを全面塗布し、室温で乾燥した後に、テスターで該両端面間の抵抗値(RL:単位Ω)を測定し、体積抵抗率R(単位:Ωcm)を、次式より算出した。
【0074】
R=RL×AL/L
(式中、ALは、試験片の断面積(単位:cm2 )を、Lは、試験片の長さ(単位:cm)を意味する。)
(7)塗装膜密着性(%)
大きさが100mm×100mmで、厚さが3mmの正方形の板状試験片を準備し、まず、試験片の表面にアクリル・ウレタン系塗料(オリジン電気社製、OP−Z−NY)を塗布し、80℃の温度で60分間焼き付けた。ついで、焼き付けた後の塗装膜面に、一辺が1mm幅で碁盤目状のスリットを100マス刻設した。塗装膜面にセロハンテープを張り付け、このセロハンテープを剥がした際に塗装膜面が共に剥がれるか否かを目視観察した。塗装膜面がセロハンテープによって剥がされず、試験片の表面に残ったマスの残存率(%)で表した。この値が大きいほど、塗装膜密着性に優れている。
[実施例、比較例の組成物の製造方法]
[実施例1〜5]
まず、成分(A)、(B)、(C)を、タンブラーミキサーにて混合し、二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX−30XCT、L/D=42、バレル数12)を用いて、当該混合物をバレル1より投入して、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数400rpmの条件にて、溶融混練して、ペレットを得た。
【0075】
次いでこの溶融混練物に成分(D)配合し、タンブラミキサーにて混合、同条件で
溶融混練して成分(A)、(B)、(C)、(D)からなるペレットを得た。
【0076】
次いで、この成分(A)、(B)、(C)、(D)からなるペレットに成分(F)のペレットをタンブラーミキサーに混合し、このドライブレンド物を用いて、成形及び評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
成分(A)、(B)、(C)を溶融混練する際に、成分(E)をバレル5よりサイドフィードした以外は実施例1と同じ方法にて製造した。結果を表1に示す。
[実施例6、7]
成分(A)、(B)、(C)をタンブラーミキサーにて混合する際に、成分(G)も同時に配合した以外は、実施6と同じ方法にて製造した。結果を表1に示す。
[比較例1]
成分(F)を配合しなかった以外は、実施例1と同じ方法にて製造した。結果を表1に示す。
[比較例2]
成分(D)を配合する時に、同時に成分(H)を配合し、成分(F)を配合しなかった以外は実施例1と同じ方法にて製造した。結果を表1に示す。
[比較例3、4]
成分(D)を配合する時に、同時に成分(H)を配合し、成分(F)を配合しなかった以外は実施例6と同じ方法にて製造した。結果を表1に示す。
【0077】
【表1】

[実施例、比較例の品質評価結果]
上記手法により求められた組成物の評価結果は以下の通りであった。
[実施例1〜5と比較例1、2]
実施例1〜5は成分(F)を配合しなかった比較例1に比べ、剛性、耐衝撃性、寸法安定性、外観を保持したまま、更に塗装膜密着性にも優れている事が分かる。
[実施例6と比較例3、比較例4]
実施例6は、成分(F)の代わりに、成分(H)を配合した比較例3、4に比べ、外観に優れている事が分かる。
【0078】
特に(H−1)を配合した比較例3に対しては、流動性、耐衝撃性、導電性にも優れており、また、(H−2)を配合した比較例3に対しては、剛性、寸法安定性、耐衝撃性、塗装膜密着性にも優れている事が分かる。
[実施例6と実施例7、8]
実施例5の組成物に成分(G)を配合した実施例6、7は導電性も更に改良されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性と寸法安定性、剛性のバランスに優れ、かつ外観に優れているので、電気・電子部品、機械部品、自動車部品等広範な分野で使用でき、特に自動車外装部品用材料として有用である。また、導電性および塗装膜密着性に優れているので、大型成形品における静電塗装の適用が有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):ポリアミド樹脂、
成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物及び/又はエチレン−α−オレフィン系共重合体、
成分(C):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物に、不飽和酸及び/又はその誘導体をブロック重合体の水素添加物100重量部に対し、0.3〜2.5重量部付加させた変性水素化ブロック共重合体、
成分(D):平均粒子径が8μm以下の、板状及び/又は針状の無機フィラー、並びに、
成分(F):エチレン−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物
を含有してなる組成物において、上記各成分を、成分(A)と成分(B)、(C)の重量比(A)/((B)+(C))が90/10〜60/40であり、成分(B)と成分(C)の重量比(B)/(C)が10/90〜90/10であり、かつ、
成分(D)の量が成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して5〜60重量部、成分(F)の量が成分(A)、(B)、(C)および(D)の合計100重量部に対して、0.5〜20重量部の比率で配合したものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
成分(B)及び成分(C)のブロック共重合体の水素添加物は、いずれも、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとが、a−b−a型のトリブロック構造を有する、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
成分(C)が、ラジカル発生剤の存在下で不飽和酸及び/又はその誘導体を付加させた変性水素化ブロック共重合体である、請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
成分(A)が、温度23℃、98重量%濃硫酸中、濃度1重量%で測定した相対粘度が2.1〜3.5であり、かつ、末端カルボキシル基含量と末端アミノ基含量の比(末端カルボキシル基含量/末端アミノ基含量)が0.8〜4のポリアミド樹脂である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
成分(D)の平均粒子径が5μm以下である、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
成分(D)が、珪酸マグネシウム及び/又は珪酸カルシウムである、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
成分(D)の平均粒子径が3.5μm以下である、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
予め成分(A)、(B)及び(C)を溶融反応させ、その溶融反応物に成分(D)を配合し混練させてなる成分(A)、(B)、(C)および(D)からなる溶融混練物に、成分(F)をドライブレンドしてなる、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、成分(G1):ニグロシン を、成分(A)100重量部に対して0.05〜30重量部配合してなる、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、成分(G2):半芳香族ポリアミド樹脂を、成分(A)100重量部に対して1〜30重量部配合してなる、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
成分(A):ポリアミド樹脂、
成分(B):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物及び/又はエチレン−α−オレフィン系共重合体、
成分(C):ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとのブロック共重合体の水素添加物に、不飽和酸及び/又はその誘導体をブロック重合体の水素添加物100重量部に対し、0.3〜2.5重量部付加させた変性水素化ブロック共重合体、
成分(D):平均粒子径が8μm以下の、板状及び/又は針状の無機フィラー、
成分(E):導電性カーボンブラック及び/又は中空炭素フィブリル 並びに、
成分(F):エチレン−ビニルアルコール共重合体及び/又はエチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物
を含有してなる組成物において、上記各成分を、成分(A)と成分(B)、(C)の重量比(A)/((B)+(C))が90/10〜60/40であり、成分(B)と成分(C)の重量比(B)/(C)が10/90〜90/10であり、かつ、
成分(D)の量が成分(A)、(B)、(C)の合計100重量部に対して5〜60重量部、成分(E)の量が成分(A)100重量部に対して1〜15重量部、成分(F)の量が成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)の合計100重量部に対して、0.5〜20重量部の比率で配合したものであることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
成分(B)及び成分(C)のブロック共重合体の水素添加物は、いずれも、ビニル芳香族化合物重合体ブロックaと共役ジエン系化合物重合体ブロックbとが、a−b−a型のトリブロック構造を有する、請求項11記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
成分(C)が、ラジカル発生剤の存在下で不飽和酸及び/又はその誘導体を付加させた変性水素化ブロック共重合体である、請求項11または12記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
成分(A)が、温度23℃、98重量%濃硫酸中濃度1重量%で測定した相対粘度が2.1〜3.5であり、かつ、末端カルボキシル基含量と末端アミノ基含量の比(末端カルボキシル基含量/末端アミノ基含量)が0.8〜4のポリアミド樹脂である、請求項11ないし13のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項15】
成分(D)の平均粒子径が5μm以下である、請求項11ないし14のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項16】
成分(D)が、珪酸マグネシウム及び/又は珪酸カルシウムである、請求項11ないし15のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項17】
成分(D)の平均粒子径が3.5μm以下である、請求項11ないし16のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項18】
成分(E)が、ジブチルフタレート吸油量が200ml/100g以上の導電性カーボンブラックである、請求項11ないし16のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項19】
予め成分(A)および成分(E)を溶融混練し、これに(B)及び(C)を加えて溶融反応させて得られる溶融反応物に、成分(D)を配合し混練させてなる、請求項11ないし18のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項20】
予め成分(A)、(B)及び(C)を加えて溶融反応させ、該溶融反応物に成分(D)および成分(E)を配合し混練させて得られた溶融混練物に、成分(F)をドライブレンドしてなる、請求項11ないし18のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。(←OK?)
【請求項21】
さらに、成分(G1):ニグロシン を、成分(A)100重量部に対して0.05〜30重量部配合してなる、請求項11ないし20のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項22】
さらに、成分(G2):半芳香族ポリアミド樹脂を、成分(A)100重量部に対して1〜30重量部配合してなる、請求項11ないし21のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−28223(P2006−28223A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204865(P2004−204865)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(594137579)三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社 (609)
【Fターム(参考)】