説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】 引張強度、耐受傷性および柔軟性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】 下記(A)、(B)および(C)を含有し、(A)の含有量が10〜70重量%であり、(B)の含有量が5〜50重量%であり、(C)の含有量が1〜40重量%(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100重量%とする)である熱可塑性樹脂組成物。
(A)熱可塑性樹脂
(B)エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、分子量分布(Mw/Mn)が1〜4である非晶性α−オレフィン系共重合体
(C)グラフト変性ポリオレフィン

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引張強度、耐受傷性および柔軟性に優れる熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂、変性樹脂および無機充填剤を混合した熱可塑性樹脂組成物は、難燃性および力学物性に優れるため、例えば難燃性が要求される家電および自動車の部品に用いられる。特開平7−331088号公報には、熱可塑性樹脂、変性樹脂およびノンハロゲン系難燃性化合物を溶融混練してなる、耐ブリード性、難燃性、耐寒性および耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−331088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記発明の熱可塑性樹脂組成物においては柔軟性が十分とはいえず、柔軟性が要求される難燃性電線被覆材や軟質制振シート等の用途への適用が困難であった。
かかる現状において、本発明の解決しようとする課題、即ち本発明の目的は、引張強度、耐受傷性および柔軟性に優れる熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち本発明は、下記(A)、(B)および(C)を含有し、(A)の含有量が10〜70重量%であり、(B)の含有量が5〜50重量%であり、(C)の含有量が1〜40重量%(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100重量%とする)である熱可塑性樹脂組成物にかかるものである。
(A)熱可塑性樹脂
(B)エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、分子量分布(Mw/Mn)が1〜4である非晶性α−オレフィン系共重合体
(C)グラフト変性ポリオレフィン
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、引張強度、耐受傷性および柔軟性に優れる熱可塑性樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の(A)は熱可塑性樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸グリシジル共重合体樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エチレン−環状オレフィン共重合体樹脂が挙げられる。好ましくは、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂等のポリオレフィン系樹脂であり、より好ましくは炭素原子数2以上の脂肪族オレフィンに由来する単量体単位を主たる単位とするポリオレフィン系樹脂であり、更に好ましくは炭素原子数3以上の脂肪族オレフィンに由来する単量体単位を主たる単位とするポリオレフィン系樹脂である。本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、特に好ましくはポリプロピレン系樹脂である。
【0008】
ポリプロピレン系樹脂の一般的な製造方法としては、例えば、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分とからなるチーグラー・ナッタ型触媒、または、少なくとも1個のシクロペンタジエニル骨格を有する周期表第4族〜第6族の遷移金属化合物と助触媒成分とからなるメタロセン触媒を重合用触媒として用い、スラリー重合法、気相重合法、バルク重合法、溶液重合法またはこれらを組合せた重合法で、一段重合法または多段重合法によって、プロピレンを重合してプロピレン単独重合体を製造する方法や、プロピレンと、炭素原子数2〜12のオレフィンからなる群から選ばれる少なくとも1種のオレフィン(プロピレンを除く)を共重合して共重合体を製造する方法が挙げられる。また、ポリプロピレン系樹脂として、市販品を用いてもよい。
【0009】
ポリオレフィン系樹脂の結晶性としては、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、融点として好ましくは80〜176℃であり、より好ましくは120〜176℃であり、結晶融解熱量として好ましくは30〜120J/gであり、より好ましくは60〜120J/gである。
【0010】
ポリオレフィン系樹脂の数平均分子量として好ましくは、10,000〜1,000,000である。なお、数平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)によって測定される。
【0011】
本発明の(B)は、エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンを共重合することによって得られる非晶性α−オレフィン系共重合体である。炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等の直鎖状オレフィン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状オレフィン等の鎖状オレフィンが挙げられる。
【0012】
該オレフィンの2種以上の具体的な組み合わせとしては、本発明の熱可塑性樹脂組成物の引張強度、耐受傷性および柔軟性のバランスの観点から、好ましくは該オレフィンの炭素原子数の合計が6以上である組み合わせである。該オレフィンの2種以上の具体的な組み合わせとしては、例えば、エチレンと1−ブテン、エチレンと1−ヘキセン、エチレンと1−オクテン、エチレンと4−メチル−1−ペンテン、エチレンとプロピレンと1−ブテン、エチレンとプロピレンと1−ヘキセン、エチレンと1−ブテンと1−ヘキセン、プロピレンと1−ブテン、プロピレンと1−ヘキセン、プロピレンと1−オクテン、プロピレンと4−メチル−1−ペンテン、プロピレンと1−ブテンと1−ヘキセン、1−ブテンと1−ヘキセン、1−ブテンと1−オクテン、1−ヘキセンと1−オクテン等の組み合わせが挙げられる。
【0013】
本発明の(B)は、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィン以外の単量体を更に共重合して得られる共重合体でもよく、該単量体としては、例えば、環状オレフィン、ビニル芳香族化合物、ポリエン化合物を挙げることができ、好ましくは環状オレフィンである。
【0014】
環状オレフィンとしては、例えば、ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネン、5−エチリデンノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロノルボルネン、5,5−ジクロロノルボルネン、5−フルオロノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン、5−クロロメチルノルボルネン、5−メトキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノノルボルネン、5−シアノノルボルネン、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、シクロへプテン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0015】
ビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−tert−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0016】
ポリエン化合物としては、共役ポリエン化合物および非共役ポリエン化合物を挙げることができる。共役ポリエン化合物としては、例えば、直鎖状脂肪族共役ポリエン化合物や分岐状脂肪族共役ポリエン化合物等の脂肪族共役ポリエン化合物、脂環式共役ポリエン化合物等が挙げられ、非共役ポリエン化合物としては、例えば、脂肪族非共役ポリエン化合物、脂環式非共役ポリエン化合物、芳香族非共役ポリエン化合物等が挙げられる。これらは、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基等を有していてもよい。
【0017】
脂肪族共役ポリエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−プロピル−1,3−ブタジエン、2−イソプロピル−1,3−ブタジエン、2−ヘキシル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジエチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、2−メチル−1,3−オクタジエン、2−メチル−1,3−デカジエン、2,3−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−オクタジエン、2,3−ジメチル−1,3−デカジエン等が挙げられる。
【0018】
脂環式共役ポリエン化合物としては、例えば、2−メチル−1,3−シクロペンタジエン、2−メチル−1,3−シクロヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−シクロペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−シクロヘキサジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−フルオロ−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ペンタジエン、2−クロロ−1,3−シクロペンタジエン、2−クロロ−1,3−シクロヘキサジエン等が挙げられる。
【0019】
脂肪族非共役ポリエン化合物としては、例えば、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,13−テトラデカジエン、1,5,9−デカトリエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−エチル−1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、3,4−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘプタジエン、5−エチル−1,4−ヘプタジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、5−エチル−1,5−ヘプタジエン、3−メチル−1,6−ヘプタジエン、4−メチル−1,6−ヘプタジエン、4,4−ジメチル−1,6−ヘプタジエン、4−エチル−1,6−ヘプタジエン、4−メチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,4−オクタジエン、4−エチル−1,4−オクタジエン、5−エチル−1,4−オクタジエン、5−メチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,5−オクタジエン、5−エチル−1,5−オクタジエン、6−エチル−1,5−オクタジエン、6−メチル−1,6−オクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、6−エチル−1,6−オクタジエン、6−プロピル−1,6−オクタジエン、6−ブチル−1,6−オクタジエン、4−メチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,4−ノナジエン、4−エチル−1,4−ノナジエン、5−エチル−1,4−ノナジエン、5−メチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,5−ノナジエン、5−エチル−1,5−ノナジエン、6−エチル−1,5−ノナジエン、6−メチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,6−ノナジエン、6−エチル−1,6−ノナジエン、7−エチル−1,6−ノナジエン、7−メチル−1,7−ノナジエン、8−メチル−1,7−ノナジエン、7−エチル−1,7−ノナジエン、5−メチル−1,4−デカジエン、5−エチル−1,4−デカジエン、5−メチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,5−デカジエン、5−エチル−1,5−デカジエン、6−エチル−1,5−デカジエン、6−メチル−1,6−デカジエン、6−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,6−デカジエン、7−エチル−1,6−デカジエン、7−メチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,7−デカジエン、7−エチル−1,7−デカジエン、8−エチル−1,7−デカジエン、8−メチル−1,8−デカジエン、9−メチル−1,8−デカジエン、8−エチル−1,8−デカジエン、6−メチル−1,6−ウンデカジエン、9−メチル−1,8−ウンデカジエン、6,10−ジメチル−1,5,9−ウンデカトリエン、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、13−エチル−9−メチル−1,9,12−ペンタデカトリエン、5,9,13−トリメチル−1,4,8,12−テトラデカジエン、8,14,16−トリメチル−1,7,14−ヘキサデカトリエン、4−エチリデン−12−メチル−1,11−ペンタデカジエン等が挙げられる。
【0020】
脂環式非共役ポリエン化合物としては、例えば、ビニルシクロヘキセン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、シクロオクタジエン、2,5−ノルボルナジエン、2−メチル−2,5−ノルボルナジエン、2−エチル−2,5−ノルボルナジエン、2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネン、1,4−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロペンタン、1,5−ジビニルシクロオクタン、1−アリル−4−ビニルシクロヘキサン、1,4−ジアリルシクロヘキサン、1−アリル−5−ビニルシクロオクタン、1,5−ジアリルシクロオクタン、1−アリル−4−イソプロペニルシクロヘキサン、1−イソプロペニル−4−ビニルシクロヘキサン、1−イソプロペニル−3−ビニルシクロペンタン、メチルテトラヒドロインデン等が挙げられる。
【0021】
芳香族非共役ポリエン化合物としては、例えば、ジビニルベンゼン、ビニルイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。
【0022】
本発明の(B)の非晶性としては、本発明の熱可塑性樹脂組成物の柔軟性を高める観点から、好ましくは示差走査熱量測定(DSC)によって結晶融解ピークが実質的に観測されないことである。結晶融解ピークが実質的に観測されないとは、−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークが観測されないことをいう。より好ましくは、−100〜200℃の温度範囲に、結晶融解熱量が1J/g以上の結晶融解ピークおよび結晶化熱量が1J/g以上の結晶化ピークのいずれもが観測されないことである。
【0023】
本発明の(B)がエチレンに由来する単量体単位を含有する場合、熱可塑性樹脂組成物の引張強度、耐受傷性および柔軟性のバランスの観点から、下記の関係式を満たすことが好ましい。
[y/(x+y)]≧0.5
より好ましくは、
[y/(x+y)]≧0.6であり、
更に好ましくは、
[y/(x+y)]≧0.8である。
なお、上記関係式において、xは非晶性α−オレフィン系共重合体中のエチレンに由来する単量体単位の含有量(モル%)であり、yは非晶性α−オレフィン系共重合体中の炭素原子数4〜20のα−オレフィンに由来する単量体単位の含有量(モル%)である。
【0024】
本発明の(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の熱可塑性樹脂組成物のべたつきを少なくする観点から1〜4であり、より好ましくは1〜3である。なお、分子量分布はゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)によって測定される。
【0025】
本発明の(B)の極限粘度は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の引張強度および耐受傷性を高める観点から、好ましくは0.1dl/g以上であり、より好ましくは0.3dl/g以上であり、更に好ましくは0.5dl/g以上であり、特に好ましくは0.7dl/g以上である。また、極限粘度は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形加工時における加工性を高める観点から、好ましくは10dl/g以下であり、より好ましくは7dl/g以下であり、更に好ましくは5dl/g以下であり、特に好ましくは4dl/g以下である。なお、極限粘度は、135℃テトラリン中でウベローデ粘度計を用いて測定される。
【0026】
本発明の(B)は、公知のチーグラー・ナッタ型触媒または公知のシングルサイト触媒(メタロセン系等)を用いて製造することができるが、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、公知のシングルサイト触媒(メタロセン系等)が好ましく、かかるシングルサイト触媒としては、例えば、特開昭58−19309号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報等に記載のメタロセン系触媒、特開平10−316710号公報、特開平11−100394号公報、特開平11−80228号公報、特開平11−80227号公報、特表平10−513489号公報、特開平10−338706号公報、特開平11−71420号公報等に記載の非メタロセン系の錯体触媒が挙げられる。これらの中でも、入手容易性の観点から、好ましくはメタロセン触媒であり、より好ましくはシクロペンタジエン形アニオン骨格を少なくとも1個有し、C1対掌構造を有する周期表第3族〜第12族の遷移金属錯体である。また、メタロセン触媒を用いた製造方法としては、例えば欧州特許公開第1211287号明細書の方法が挙げられる。
【0027】
本発明の(C)は、ポリオレフィン系樹脂を極性基含有化合物でグラフト変性させたグラフト変性ポリオレフィンである。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂としては、(A)で例示したポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、(B)で例示した非晶性α−オレフィン系共重合体、エチレン−α−オレフィン系共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン系共重合体ゴムおよびオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。なかでも、本発明の熱可塑性樹脂組成物の柔軟性を高める観点から、好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、非晶性α−オレフィン系共重合体およびエチレン−α−オレフィン系共重合体ゴムであり、より好ましくは非晶性α−オレフィン系共重合体である。
【0029】
ポリオレフィン系樹脂の結晶性は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の柔軟性を高める観点から、融点として好ましくは176℃以下であり、より好ましくは165℃以下であり、結晶融解熱量として好ましくは120J/g以下であり、より好ましくは60J/g以下である。
【0030】
ポリオレフィンの数平均分子量として好ましくは、10,000〜1,000,000である。なお、数平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)によって測定される。
【0031】
極性基含有化合物としては、下記(I)および(II)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましい。
(I)同一分子内に、(i)少なくとも1種の炭素−炭素不飽和結合および(ii)少なくとも1種の極性基を有する化合物
(II)同一分子内に、(iii)一般式(OR)で表される官能基(Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基またはカルボニルジオキシ基を表す)および(iv)少なくとも2個の互いに同じまたは異なる炭素−酸素二重結合含有官能基を有する化合物
(i)の炭素−炭素不飽和結合とは、炭素−炭素二重結合または炭素−炭素三重結合である。(ii)の極性基としては、炭素−酸素二重結合含有官能基(カルボキシル基、またはカルボキシル基から誘導される官能基、即ちカルボキシル基の水素原子または水酸基が置換された各種官能基、例えば、エステル結合、アミド結合等)、シアノ基、エポキシ基、アミノ基、水酸基等が挙げられる。
【0032】
(I)としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸誘導体、不飽和エポキシ化合物、不飽和アルコール、不飽和アミン、不飽和イソシアン酸エステルが挙げられる。
【0033】
不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、アクリル酸、ブテン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、ペンテン酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、α−エチルアクリル酸、β−メチルクロトン酸、4−ペンテン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、3−メチル−2−ペンテン酸、α−エチルクロトン酸、2,2−ジメチル−3−ブテン酸、2−ヘプテン酸、2−オクテン酸、4−デセン酸、9−ウンデセン酸、10−ウンデセン酸、4−ドデセン酸、5−ドデセン酸、4−テトラデセン酸、9−テトラデセン酸、9−ヘキサデセン酸、2−オクタデセン酸、9−オクタデセン酸、アイコセン酸、ドコセン酸、エルカ酸、テトラコセン酸、ミコリペン酸、2,4−ヘキサジエン酸、ジアリル酢酸、ゲラニウム酸、2,4−デカジエン酸、2,4−ドデカジエン酸、9,12−ヘキサデカジエン酸、9,12−オクタデカジエン酸、ヘキサデカトリエン酸、アイコサジエン酸、アイコサトリエン酸、アイコサテトラエン酸、リシノール酸、エレオステアリン酸、オレイン酸、アイコサペンタエン酸、エルシン酸、ドコサジエン酸、ドコサトリエン酸、ドコサテトラエン酸、ドコサペンタエン酸、テトラコセン酸、ヘキサコセン酸、ヘキサコジエン酸、オクタコセン酸、トラアコンテン酸等が挙げられる。
【0034】
不飽和カルボン酸誘導体としては、例えば、上記の不飽和カルボン酸のエステル、酸アミド、無水物が挙げられ、具体的には、無水マレイン酸、マレイミド、マレイン酸ヒドラジド、無水メチルナジック酸、無水ジクロロマレイン酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸とジアミンの反応物、例えば下記式

(ただし、Mはアルキレン基、アリーレン基を表す)で表される構造を有するもの等が挙げられる。
【0035】
不飽和エポキシ化合物としては、例えば、大豆油、キリ油、ヒマシ油、アマニ油、麻実油、綿実油、ゴマ油、菜種油、落花生油、椿油、オリーブ油、ヤシ油、イワシ油等の天然油脂類、エポキシ化天然油脂類、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0036】
不飽和アルコールとしては、例えば、アリルアルコール、クロチルアルコール、メチルビニルカルビノール、アリルカルビノール、メチルプロピペニルカルビノール、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ペンテン−1−オール、10−ウンデセン−1−オール、プロパルギルアルコール、1,4−ペンタジエン−3−オール、1,4−ヘキサジエン−3−オール、3,5−ヘキサジエン−2−オール、2,4−ヘキサジエン−1−オール、一般式Cn2n-5OH、Cn2n-7OH、Cn2n-9OH(ただし、nはそれぞれ正の整数を表す)で表される不飽和アルコール、3−ブテン−1,2−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキセン−2,5−ジオール、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、2,6−オクタジエン−4,5−ジオール等が挙げられる。
【0037】
不飽和アミンとしては、例えば上記の不飽和アルコールの水酸基が、アミノ基に置き換わったもの等が挙げられる。
【0038】
不飽和イソシアン酸エステルとしては、例えばイソシアン酸アリルが挙げられる。また、ブタジエン、イソプレン等の低分子量重合体(例えば数平均平均分子量が500から10,000程度のもの)または高分子量体(例えば数平均平均分子量が10,000以上のもの)に無水マレイン酸、フェノール類を付加したもの、または、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基等を導入したものであってもよい。
【0039】
不飽和カルボン酸として好ましくは、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸である。不飽和カルボン酸誘導体として、好ましくは無水マレイン酸、無水イタコン酸である。不飽和エポキシ化合物として、好ましくはグリシジル(メタ)アクリレートである。不飽和アルコールとして、好ましくは2−ヒドロキシエチルメタクリレートである。
【0040】
(II)としては、例えば一般式(Q1O)mQ(COOQ2n(CONQ34kによって表される飽和脂肪族ポリカルボン酸およびその誘導体を挙げることができる。ここで、Qは炭素原子数2〜20の線状、分岐状または環状の飽和炭化水素であり、Q1は水素、アルキル基、アリール基、アシル基、またはカルボニルジオキシ基であり、Q2は水素、または炭素原子数1〜20のアルキル基またはアリール基であり、Q3およびQ4は水素、または炭素原子数1〜10のアルキル基またはアリール基であり、mは1であり、nは0以上の整数であり、n+kは2以上の整数であり、kは0以上の整数であり、(Q1O)はカルボニル基のα位またはβ位に位置し、少なくとも二つのカルボニル基の間には、2〜6個の炭素原子が存在するものである。Qとして好ましくは、炭素原子数2〜10の線状、分岐状または環状の飽和炭化水素である。Q1として好ましくは水素である。Q2として好ましくは、水素または炭素原子数1〜10アルキル基またはアリール基である。Q3およびQ4として好ましくは、水素、炭素原子数1〜6のアルキル基またはアリール基である。より好ましくは、水素または炭素原子数1〜4のアルキル基またはアリール基である。n+kとして好ましくは、2または3である。
【0041】
(II)としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸等を挙げることができる。これらの化合物の詳細は、特公平6−68071号公報に開示されている。
【0042】
ポリオレフィン系樹脂に極性基含有化合物をグラフト変性させる方法としては、混練押出機を使用して溶融状態で反応させる溶融押し出し法や、ポリオレフィン系樹脂と極性基含有化合物を良溶媒に溶解させ、反応させる溶液法等、公知の方法で変性すればよい。これらの方法では、グラフト反応に際して有機過酸化物等を開始剤として用いるか、または紫外線や放射線の照射を行えばよい。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)、(B)および(C)を含有し、(A)の含有量が10〜70重量%であり、(B)の含有量が5〜50重量%であり、(C)の含有量が1〜40重量%(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100重量%とする)である。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の(A)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性および引張強度を高める観点から、好ましくは15重量%以上であり、より好ましくは20重量%以上であり、更に好ましくは25重量%以上である。また、熱可塑性樹脂組成物中の(A)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の柔軟性を高める観点から、好ましくは60重量%以下であり、より好ましくは55重量%以下であり、更に好ましくは50重量%以下である。
【0045】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の(B)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の柔軟性を高める観点から、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは25重量%以上であり、更に好ましくは20重量%以上である。また、樹脂組成物中の(B)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性および引張強度を高める観点から、好ましくは45重量%以下であり、より好ましくは40重量%以下であり、更に好ましくは35重量%以下である。
【0046】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の(C)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐受傷性および引張強度を高める観点から、好ましくは3重量%以上であり、より好ましくは5重量%以上であり、更に好ましくは10重量%以上である。また、樹脂組成物中の(C)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を高める観点から、好ましくは35重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下であり、更に好ましくは25重量%以下である。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐受傷性や制振性、難燃性を高める観点から、(A)、(B)および(C)の合計を100重量部としたとき、(D)無機充填剤を5〜500重量部含有することが好ましい。(D)の含有量は、より好ましくは10〜400重量部であり、更に好ましくは20〜300重量部である。
【0048】
無機充填剤としては、例えば、ガラスフレーク、ガラス繊維、硫酸バリウム、鉛丹、金属繊維、カオリン、クレイ、シリカ、ガラスバルーン、ガラスビーズ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、チタン酸カリウムウィスカー、硫酸バリウム、シラスバルーン、アエロジル、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。無機充填剤は、本発明の熱可塑性樹脂組成物の難燃性を高める観点から、好ましくは水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムに代表される金属水酸化物である。無機充填剤は、その1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、無機充填剤の表面を改質したものであってもよい。
【0049】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、該共重合体以外の公知の樹脂やエラストマーと組合せて用いてもよい。
【0050】
エラストマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、液状ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンランダム共重合体ゴム、スチレン−ブタジエンブロック共重合体ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム、水添スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体ゴム、水添スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体ゴム、ポリアクリロニトリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、部分水添アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソブチレン−イソプレン共重合体ゴム、ハロゲン化イソブチレン−イソプレン共重合体ゴムが挙げられる。
【0051】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、公知の方法によって、イオウ架橋、過酸化物架橋、金属イオン架橋、シラン架橋、樹脂架橋、電子線架橋等の架橋をさせることができる。架橋剤としては、例えば、硫黄、フェノール樹脂、金属酸化物、金属水酸化物、金属塩化物、p−キノンジオキシムまたはビスマレイミド系の架橋剤が挙げられる。架橋剤は、架橋速度を調節するために、架橋促進剤と組合せて用いることができる。架橋促進剤としては、例えば鉛丹およびジベンゾチアゾイルサルファイド等の酸化剤が挙げられる。架橋剤は、金属酸化物やステアリン酸等の分散剤と組合せて用いることができる。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム等が挙げられ、好ましくは酸化亜鉛および酸化マグネシウムである。熱可塑性組成物を架橋剤の存在下で動的架橋させてもよい。
【0052】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法は特に限定されない。製造方法としては各成分を、例えば、ラバーミル、ブラベンダーミキサー、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、一軸および二軸押出機等の通常の混練装置で混練する方法が挙げられる。混練装置は、密閉式および開放式のいずれの形式であってもよいが、好ましくは不活性ガスによって置換し得る密閉式装置である。混練温度は通常120〜250℃であり、好ましくは140〜240℃である。混練時間は、用いられる成分の種類や量、混練装置の種類に依存するが、加圧ニーダーやバンバリーミキサー等の混練装置を使用する場合、通常約3〜10分程度である。混練工程においては、各成分を一括して混練する方法を採用してもよいし、各成分の一部を混練した後、残部を添加して混練を継続する多段分割混練法を採用してもよい。
【0053】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、例えば、ロジン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、合成石油樹脂、クマロン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、スチレン系樹脂およびイソプレン系樹脂等の他の樹脂と組合せて用いることができる。
【0054】
ロジン系樹脂としては、例えば、天然ロジン、重合ロジン、部分水添ロジン、完全水添ロジン、これらロジンのエステル化物(例えば、グリセリンエステル、ペンタエリスリトールエステル、エチレングリコールエステルおよびメチルエステル)、ロジン誘導体(例えば、不均化ロジン、フマル化ロジンおよびライム化ロジン)が挙げられる。
【0055】
ポリテルペン系樹脂としては、例えば、α−ピネン、β−ピネンおよびジペンテン等の環状テルペンの単独重合体、環状テルペンの共重合体、環状テルペンと、フェノールおよびビスフェノール等のフェノール系化合物との共重合体(例えば、α−ピネン−フェノール樹脂、ジペンテン−フェノール樹脂およびテルペン−ビスフェノール樹脂等のテルペン−フェノール系樹脂)、環状テルペンと芳香族モノマーとの共重合体である芳香族変性テルペン樹脂が挙げられる。
【0056】
合成石油樹脂としては、例えば、ナフサ分解油のC5留分、C6〜C11留分およびその他オレフィン系留分の単独重合体や共重合体、これらの単独重合体や共重合体の水添物である脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環式系石油樹脂、脂肪族−脂環式共重合樹脂等が挙げられる。合成石油樹脂として、更に、ナフサ分解油と上記のテルペンとの共重合体や、該共重合体の水添物である共重合系石油樹脂が挙げられる。
【0057】
ナフサ分解油のC5留分として好ましくは、イソプレン、シクロペンタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン等のメチルブテン類、1−ペンテン、2−ペンテン等のペンテン類、ジシクロペンタジエンである。C6〜C11留分として好ましくは、インデン、スチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン等のメチルスチレン類、メチルインデン、エチルインデン、ビニルキシレン、プロペニルベンゼンである。その他オレフィン系留分として好ましくは、ブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ブタジエン、オクタジエンである。
【0058】
フェノール系樹脂としては、例えば、アルキルフェノール樹脂、アルキルフェノールとアセチレンとの縮合によるアルキルフェノール−アセチレン樹脂、これら樹脂の変性物等が挙げられる。ここでフェノール系樹脂としては、フェノールを酸触媒でメチロール化したノボラック型樹脂や、アルカリ触媒でメチロール化したレゾール型樹脂のいずれであってもよい。
【0059】
キシレン系樹脂としては、例えば、m−キシレンとホルムアルデヒドとからなるキシレン−ホルムアルデヒド樹脂や、これに第3成分を添加して反応させた変性樹脂等が挙げられる。
【0060】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレンの低分子量重合体、α−メチルスチレンとビニルトルエンとの共重合樹脂、スチレンとアクリロニトリルとインデンとの共重合樹脂等が挙げられる。
【0061】
イソプレン系樹脂としては、例えば、イソプレンの二量化物であるC10脂環式化合物とC10鎖状化合物とを共重合して得られる樹脂等が挙げられる。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、内部剥離剤、着色剤、分散剤、アンチブロッキング剤、滑剤、防曇剤等の添加剤、炭素繊維、アラミド繊維等の有機充填剤、ナフテン油およびパラフィン系鉱物油等の鉱物油系軟化剤と組合せて用いてもよい。
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、難燃剤と組合せて用いてもよい。難燃剤として、例えば、アンチモン系難燃剤、ホウ酸亜鉛、グアニジン系難燃剤、ジルコニウム系難燃剤等の無機化合物、ポリリン酸アンモニウム、エチレンビストリス(2−シアノエチル)ホスフォニウムクロリド、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィンオキシド等のリン酸エステルやリン化合物、塩素化パラフィン、塩素化ポリオレフィン、パークロロシクロペンタデカン等の塩素系難燃剤、ヘキサブロモベンゼン、エチレンビスジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、テトラブロモビスフェノールA誘導体、テトラブロモビスフェノールS、テトラブロモジペンタエリスリトール等の臭素系難燃剤等が挙げられる。これらの難燃剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0064】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、発泡剤と組合せて得られる発泡体であってもよい。発泡剤としては、例えば、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機発泡剤、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、アゾカルボナミド、アゾイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゼンスルフォニルヒドラジン、p,p’−オキシビス(ベンゼンスルフォニルヒドラジド)、トルエンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド誘導体等のスルフォニルヒドラジド等が挙げられる。発泡剤は、サリチル酸、尿素、尿素誘導体等の発泡助剤と組合せて用いてもよい。
【0065】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、極性基含有重合体等の高周波加工助材と組合せて用いてもよい。高周波加工助材としては、例えば、エチレンと少なくとも1種類のコモノマーとの共重合体が挙げられる。コモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等のジカルボン酸、上記ジカルボン酸のモノエステル、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリル酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和カルボン酸のビニルエステル、これらの酸やエステルのアイオノマーが挙げられる。
【0066】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、粘着付与剤と組合せて用いてもよい。粘着付与剤としては、例えば、ロジンやダンマル等の天然ロジン樹脂、変性ロジンやその誘導体、テルペン系樹脂やその変性体、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族炭化水素系樹脂、アルキルフェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの中で好ましくは、テルペンフェノールやα−ポリテルペン等のテルペン類である。テルペン類として、「YSレジンTO−105」や「クリアロン」(以上、ヤスハラケミカル社製の商品名)、「アルコン」、「エステルガム」および「ペンセル」(以上、荒川化学工業社製の商品名)が挙げられる。なかでも水添石油樹脂や水添テルペン樹脂を添加することによって、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐受傷性を更に改良することができ、(A)、(B)、(C)および該水添樹脂の合計を100重量%としたとき、好ましい水添樹脂の添加量は3〜10重量%である。
【0067】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、押出成形法、異型押出成形法、多色押出成形法、被覆(芯入)押出成形法、射出成形法、圧縮成形法、発泡成形法、中空成形法、粉末成形法、カレンダー成形法、ブロー成形法、インフレーション法等の公知の成形方法によって各種の成形品とすることが可能である。
【0068】
粉末成形法としては、例えば、スラッシュ成形法、流動浸漬法、静電塗装法、粉末溶射法、粉末回転成形法が挙げられる。
【0069】
カレンダー成形法としては、例えば、厚み精度の高い平滑なシートを連続生産し得るシーティング加工法、ピンホールがなく厚み精度の高いシートを連続生産し得るダブリング加工法、布とシートとを貼合せて複合体を連続生産し得るトッピング加工法、接着性向上を目的として、熱可塑性エラストマー組成物を布にすり込むフリクション加工法、ロール表面の彫刻模様をシート表面に連続して型付けし得るプロファイリング加工法が挙げられる。
【0070】
上記の成形法による成形体された一次加工としては、例えば、パイプおよび継手等の成形体や、フィルム、シート、ホース、チューブ等の製品が挙げられる。これらの成形体は、例えば、塗装や蒸着等の公知の表面処理を施すことができる。
【0071】
上記の一次加工品は更に、曲げ、切断、裁断、切削、打抜、絞り、彫刻、プレス加工、ホットスタンピング、高周波加工、超音波加工、ラミネート、縫製/巻縫/手編、真空成形、圧空成形、接着、溶接、植毛、ライニング加工、スリット加工、印刷、表面コーティング等の工程を経て最終製品にすることができる。
【0072】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、その優れた特徴を利用して、例えば、車両部品、電気・電子機器部品、電線、建築材料、農業・水産・園芸用品、化学産業用品、土木資材、産業・工業資材、家具、文房具、日用・雑貨用品、衣服、容器・包装用品、玩具、レジャー用品、医療用品等の用途に用いることができる。
【0073】
車両部品としては、例えば、インパネ、ドア、ピラー、エアーバッグカバー等の自動車内装表皮、オーバーフェンダー、クラウディングパネル、ルーフレール、サイドモール等の自動車外装部品、ホース、チューブ、ガスケット、パッキング、ウェザーストリップ、各種シールスポンジ、ウォッシャー液ドレンチューブ、燃料タンク用クッション材、自転車部品が挙げられる。
【0074】
電気・電子機器部品としては、例えば、電気・機械部品、電子部品、弱電部品、家電部材、冷蔵庫用品、照明器具、電気用カバーが挙げられる。
上記の電線として、プラスチックケーブル、絶縁電線、電線保護材が挙げられる。
【0075】
建築材料としては、例えば、リブ、巾木、パネル、ターポリン等の壁・天井材用途、波板、樋および屋根下地材等の屋根材用途、敷居材やタイル等の床部材用途や、目地、目地棒、防水シート等の防水用途、ダクト、ケーブルダクト、プレハブ部材、浄化槽等の設備・装置部品用途、建築用エッジ、建築用ガスケット、カーペット抑え、アングル、、ルーバー等の構造・造作材用途、ジョイナー、養生シート等の工業資材用途が挙げられる。
【0076】
農業・水産・園芸用品としては、例えば農業用ハウス用途が挙げられる。
【0077】
産業・工業用資材として、例えば、機械カバー、機械部品、パッキング、ガスケット、フランジ、レザー帆布、ボルト、ナット、バルブ、金属保護用フィルム、凹凸付ホースが挙げられる。
【0078】
家具としては、例えば、キャビネット、スツール、ソファー、マット、カーテン、テーブルクロスが挙げられる。
【0079】
文房具としては、例えば、カードケース、筆記具ケース、アクセサリー、キーケース、キャッシュカードケース、ステッカー、ラベル、ブックカバー、ノートカバー、バインダー、手帳、表紙、ファイル、カード、定期類、下敷き、ホルダー、マガジントレー、アルバム、テンプレート、筆記具軸が挙げられる。
【0080】
日用・雑貨用品としては、例えば、風呂蓋、すのこ、バケツ、洋服カバー、布団ケース、洋傘、傘カバー、すだれ、裁縫用具、棚板、棚受け、額縁、エプロン、トレー、テープ、紐、ベルト類、鞄が挙げられる。
【0081】
衣服としては、例えば、レインコート、合羽、雨具シート、子供レザーコート、靴、シューズカバー、履き物、手袋、スキーウエア、帽子、帽子用副資材が挙げられる。
【0082】
容器・包装用品としては、例えば、食品容器、衣料包装品、梱包・包装資材、化粧品瓶、化粧品容器、薬品瓶、食品瓶、理化学瓶、洗剤瓶、コンテナ、キャップ、フードパック、積層フィルム、工業用シュリンクフィルム、業務用ラップフィルムが挙げられる。
【0083】
医療用品としては、例えば、輸液バッグ、連続携行式腹膜透析バッグ、血液バッグが挙げられる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例、および比較例によって本発明を更に詳細に説明する。
[1]物性測定
本発明の物性測定は、以下の方法で行った。
(1)共重合体の単量体単位含有量
(1−1)結晶性熱可塑性樹脂の単量体単位含有量
核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、1H−NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。メチン単位とメチレン単位由来の水素のスペクトル強度とメチル単位由来の水素のスペクトル強度との比からエチレン単量体単位、プロピレン単量体単位の組成比を算出した。
(1−2)非晶性α−オレフィン系共重合体の単量体単位含有量
核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、1H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。具体的には、13C−NMRスペクトルにおいて、プロピレン単量体単位由来のメチル炭素のスペクトル強度と1−ブテン単量体単位由来のメチル炭素のスペクトル強度との比からプロピレン単量体単位と1−ブテン単量体単位の組成比を算出し、次に、1H−NMRスペクトルにおいて、メチン単位とメチレン単位由来の水素のスペクトル強度とメチル単位由来の水素のスペクトル強度との比からエチレン単量体単位、プロピレン単量体単位および1−ブテン単量体単位の組成比を算出した。
(2)極限粘度[η]
135℃において、ウベローデ粘度計を用いて行った。テトラリン単位体積あたりの非晶性α−オレフィン系重合体の濃度cが、0.6、1.0、1.5mg/mlである非晶性α−オレフィン系重合体のテトラリン溶液を調整し、135℃における極限粘度を測定した。それぞれの濃度で3回繰り返し測定し、得られた3回の値の平均値をその濃度での比粘度(ηsp)とし、ηsp/cのcをゼロ外挿した値を極限粘度[η]として求めた。
(3)分子量分布
ゲルパーミエイションクロマトグラフ(GPC)法によって、下記の条件で測定を行った。
装置:Waters社製 150C ALC/GPC
カラム:昭和電工社製Shodex Packed ColumnA−80M 2本
温度:140℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン
溶出溶媒流速:1.0ml/分
試料濃度:1mg/ml
測定注入量:400μl
分子量標準物質:標準ポリスチレン
検出器:示差屈折
(4)結晶融解ピークおよび結晶化ピーク
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製DSC220C:入力補償DSC)を用い以下の条件で測定した。
(i)試料約5mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、昇温完了後、5分間保持した。
(ii)次いで、200℃から10℃/分の降温速度で−100℃まで降温し、降温完了後、5分間、保持した。この(ii)で観察されるピークが結晶化ピークであり、ピーク面積が1J/g以上の結晶化ピークの有無を確認した。
(iii)次いで、−100℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温した。この(iii)で観察されるピークが結晶の融解ピークであり、ピーク面積が1J/g以上の融解ピークの有無を確認した。
(5)メルトフローレート(MFR)
JIS−K−7210に従い、荷重21.18N、温度230℃の条件で測定を行った。
(6)硬度
JIS−K−6758に従いプレス成形によって厚さ2mmのシートを作成した。該シートのショアーD硬度を、ASTM−D−2240に従い測定した。
(7)引張試験
JIS−K−6251に準拠して、厚さ2mmのプレスシートから作製したダンベル状3号型試験片を、引張速度200mm/分の条件にて、引張強度(TB)および切断時伸び(EB)を測定した。
(8)耐受傷性試験
以下の手順で試験した。
(i)厚さ2mmのプレスシートの表面を、新東科学社製の商品名がトライボギアなる表面性測定機を用い、荷重2Nまたは5Nをかけた引掻針で、速度150mm/分の条件にて引掻いて傷を付けた。
(ii)(i)の操作から24時間経過後の残留傷深さを、東京精密社製の商品名がサーフコムなる接触式の表面粗さ計で測定した。
【0085】
[2]材料
(1)結晶性ポリプロピレン系樹脂
PP−1 結晶性プロピレン−エチレン共重合体(MFR=2.5g/10分、エチレン単量体単位含有量=0.5重量%)(以下、樹脂A−1と称する)
PP−2 結晶性プロピレン−エチレン共重合体(MFR=1.5g/10分、エチレン単量体単位含有量=5重量%)(以下、樹脂A−2と称する)
PP−3 ブロックポリプロピレン 住友ノーブレンAD571(住友化学社製、以下、樹脂A−3と称する)
【0086】
(2)非晶性エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体
攪拌機を備えた100LのSUS製重合器中で、分子量調節剤として水素を用い、エチレン、プロピレンおよび1−ブテンを以下の方法で連続的に共重合させて、本発明の成分(B)に相当するエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体を得た。
重合器の下部から、重合溶媒としてヘキサンを239L/時間の供給速度で、エチレンを3.27kg/時間の供給速度で、プロピレンを0.70kg/時間の供給速度で、1−ブテンを6.23kg/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
重合器の上部から、重合器中の反応混合物が100Lの量を保持するように、反応混合物を連続的に抜き出し、重合器の下部から、重合用触媒の成分として、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを0.017g/時間の供給速度で、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.967g/時間の供給速度で、トリイソブチルアルミニウムを1.984g/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
共重合反応は、重合器の外部に取り付けられたジャケットに冷却水を循環させることによって、42℃で行った。
重合器の上部から連続的に抜き出された反応混合物に少量のエタノールを添加して重合反応を停止させた後、脱モノマーおよび水洗浄をし、次いで、大量の水中でスチームによって溶媒を除去することによって、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体を得、これを80℃で1昼夜減圧乾燥した。該共重合体の生成速度は3.06kg/時間であった。
得られたエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体(以下、重合体B−1と称する)の物性評価結果を表1に示す。
【0087】
(3)非晶性エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体
攪拌機を備えた100LのSUS製重合器中で、分子量調節剤として水素を用い、エチレン、プロピレンおよび1−ブテンを以下の方法で連続的に共重合させて、本発明の成分(B)に相当するエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体を得た。
重合器の下部からヘキサンを33.9リットル/時間、エチレンを1.03kg/時間、プロピレンを13.26kg/時間、1−ブテンを8.02kg/時間の速度で連続的に供給した。一方、重合器上部から重合器中の重合液が100リットルとなるように連続的に重合液を抜き出した。重合用触媒の成分としてジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびトリイソブチルアルミニウムをそれぞれ0.0201g/時間、0.1670g/時間および6.1783g/時間の速度で重合器下部から重合器中に連続的に供給した。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷却水を循環させることで54℃に制御して行った。重合器から抜き出した重合液に少量のエタノールを添加して重合反応を停止させ、脱モノマーおよび水洗浄後、大量の水中でスチームによって溶媒を除去して共重合体を取り出し、80℃で昼夜減圧乾燥した。以上の操作によって、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合が2.45kg/時間の速度で得られた。
得られたエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体(以下、重合体B−2と称する)の物性評価結果を表1に示す。
【0088】
(4)非晶性プロピレン−1−ブテン共重合体
攪拌機を備えた100LのSUS製重合器中で、分子量調節剤として水素を用い、プロピレンおよび1−ブテンを以下の方法で連続的に共重合させて、本発明の成分(B)に相当するプロピレン−1−ブテン共重合体を得た。
重合器の下部から、重合用溶媒としてのヘキサンを100L/時間の供給速度で、プロピレンを24.00kg/時間の供給速度で、1−ブテンを1.81kg/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
重合器の上部から、重合器中の反応混合物が100Lの量を保持するように、反応混合物を連続的に抜き出した。
重合器の下部から、重合用触媒の成分として、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを0.005g/時間の供給速度で、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.298g/時間の供給速度で、トリイソブチルアルミニウムを2.315g/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
共重合反応は、重合器の外部に取り付けられたジャケットに冷却水を循環させることによって、45℃で行った。
重合器の上部から連続的に抜き出された反応混合物にエタノールを添加して重合反応を停止させた後、脱モノマーおよび水洗浄し、次いで、大量の水中でスチームによって溶媒を除去することによって、プロピレン−1−ブテン共重合体を得、これを80℃で1昼夜減圧乾燥した。該共重合体の生成速度は7.10kg/時間であった。
得られたプロピレン−1−ブテン共重合体(以下、重合体B−3と称する)の物性評価結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【0090】
(5)グラフト変性ポリオレフィン1
重合体B−1 100重量部、無水マレイン酸2.0重量部、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン0.15重量部、ジセチルパーオキシジカルボネート0.50重量部を、ラボプラストミル(東洋精機製作所社製)R−100なる混練機を用い、スクリュー回転数100rpmにて、230℃で5分間混練し、グラフト変性ポリオレフィンを得た。該ポリオレフィンのMFRは13g/10分、無水マレイン酸結合量は0.4重量%であった(以下、重合体C−1と称する)。
(6)グラフト変性ポリオレフィン2
重合体B−1に替えて重合体B−2を使用したほかは、(5)と同様の方法によって、グラフト変性ポリオレフィンを得た。グラフト変性ポリオレフィンのMFRは43g/10分、無水マレイン酸結合量は0.4重量%であった(以下、重合体C−2と称する)。
[実施例1〜4]および[比較例1]
樹脂A、重合体B、重合体C、無機充填剤D、および必要に応じ水添テルペン樹脂を表2に示した配合量と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 イルガノックス1010)0.1重量部と、芳香族フォスファイト系酸化防止剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製 イルガフォス168)0.1重量部とを、ラボプラストミル(東洋精機製作所社製)R−100なる混練機を用い、スクリュー回転数100rpmにて、200℃で5分間混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた該樹脂組成物の物性測定結果を表2に示す。
【0091】
【表2】

無機充填剤D キスマ5B(協和化学社製 水酸化マグネシウム)
水添テルペン樹脂 クリアロンP135(ヤスハラケミカル社製 水添テルペン樹脂)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)、(B)および(C)を含有し、(A)の含有量が10〜70重量%であり、(B)の含有量が5〜50重量%であり、(C)の含有量が1〜40重量%(ただし、(A)、(B)および(C)の合計を100重量%とする)である熱可塑性樹脂組成物。
(A)熱可塑性樹脂
(B)エチレン、プロピレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンからなる群から選ばれる少なくとも2種のオレフィンに由来する単量体単位を含有し、分子量分布(Mw/Mn)が1〜4である非晶性α−オレフィン系共重合体
(C)グラフト変性ポリオレフィン
【請求項2】
該非晶性α−オレフィン系共重合体(B)が、下記の要件(1)、(2)および(3)を満たす請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(1)示差走査熱量測定によって融解ピークが実質的に観測されないこと。
(2)極限粘度が0.1〜10dl/gであること。
(3)該オレフィンの炭素原子数の合計が6以上であり、下記の関係式を満たすこと。
[y/(x+y)]≧0.5
(上記関係式において、xは(B)に含有されるエチレンに由来する単量体単位の含有量(モル%)を表し、yは(B)に含有される炭素原子数4〜20のα−オレフィンに由来する単量体単位の含有量(モル%)を表す。ただし、該非晶性α−オレフィン系共重合体(B)全体を100モル%とする。)
【請求項3】
グラフト変性ポリオレフィン(C)が、該非晶性α−オレフィン系共重合体(B)を、(I)および(II)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物によってグラフト変性されたポリオレフィンである請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
(I)同一分子内に、(i)少なくとも1種の炭素−炭素不飽和結合および(ii)少なくとも1種の極性基を有する化合物
(II)同一分子内に、(iii)一般式(OR)で表される官能基(Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基またはカルボニルジオキシ基を表す)および(iv)少なくとも2個の互いに同じまたは異なる炭素−酸素二重結合含有官能基を有する化合物
【請求項4】
(A)、(B)および(C)の合計100重量部に対して、下記(D)の含有量が5〜500重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
(D)無機充填剤
【請求項5】
無機充填剤が金属水酸化物である請求項4に記載の熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2006−328136(P2006−328136A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−150672(P2005−150672)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】