説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】耐熱性、流動性及び耐衝撃性に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリカーボネート系樹脂(A)50〜85質量%、ポリ乳酸系重合体(B)10〜29質量%及びメチルメタクリレート単位を有するアクリル系重合体(C)5〜30質量%を含有する熱可塑性樹脂組成物。好ましくは、この熱可塑性樹脂組成物100質量部にゴム質重合体単位及びビニル系単量体単位グラフト部を有するグラフト共重合体(D)を1〜50質量部含有する熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性、耐衝撃性及び流動性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。この組成物は建材、自動車、玩具、文房具等の雑貨、更には自動車部品、OA機器、家電機器等の耐衝撃性が必要とされる成形品に広く利用できる。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂を始めとする熱可塑性樹脂は、機械的性質、化学的性質が優れている樹脂であるため、種々の分野に用いられており、家電、特にOA機器分野に使用されるケースが多い。このような分野において、薄肉化や小型化のニーズに対応すべく、使用材料には耐衝撃性、耐熱性及び流動性が求められている。
【0003】
従来、耐衝撃性及び耐熱性に優れたポリカーボネート樹脂に流動性を向上させる手段として、他樹脂とのアロイ化が検討されているが、ポリカーボネート樹脂本来の前記特性を損なうケースが多い。
また、最近では環境に優しい生分解性樹脂としてポリ乳酸系重合体を使用した技術が検討され、ポリ乳酸系重合体にアクリル系樹脂やポリカーボネート樹脂等の樹脂を混合した生分解性プラスチック製品が知られている(特許文献1)。しかしながら、成形外観やガス発生抑制に関する記載しかなく、耐衝撃性、耐熱性、流動性については論じられていない。
【特許文献1】特開平11−279380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は耐衝撃性、耐熱性及び流動性に優れた熱可塑性樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ポリカーボネート系樹脂(A)50〜85質量%、ポリ乳酸系重合体(B)10〜29質量%及びメチルメタクリレート単位を有するアクリル系重合体(C)5〜30質量%を含有する熱可塑性樹脂組成物にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、耐衝撃性、耐熱性及び流動性に優れた熱可塑性樹脂を提供することが可能であり、生分解性樹脂を使用した材料で種々の用途に利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ポリカーボネート系樹脂(A)は一般の市販品が使用でき、粘度平均分子量で15000〜30000が好ましい。例えば、出光興産(株)のタフロン「FN1700A」、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)のユーピロン「S2000F」「S3000F」等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のポリカーボネート系樹脂(A)の含有量は50〜85質量%である。85質量%以下で流動性の改善効果が大きく、また50質量%以上で耐熱性と強度が維持できる。
【0008】
本発明において、ポリ乳酸系重合体(B)としてはポリ乳酸、乳酸と他の単量体との共重合体である乳酸コポリマー又はこれらの混合物及びポリ乳酸に他の脂肪族ポリエステルをブレンドしたものが用いられる。
ポリ乳酸系重合体(B)は、融点が通常は60〜200℃、質量平均分子量が5万〜50万、好ましくは10万〜30万程度である。
ポリ乳酸系重合体(B)は流動性改質のために熱可塑性樹脂組成物中に10〜29質量%含有され、好ましくは15〜25質量%含有される。10質量%以上で流動性向上効果が得られ、また29質量%以下でポリカーボネート樹脂の特長である耐熱性を損なわない。
ポリ乳酸系重合体(B)としては市販品又は公知文献記載の方法で合成したものを使用することができ、市販品としては、例えば、三井化学(株)製レイシア「H-100」、「H-400」、「H-100J」等が挙げられる。
【0009】
また、公知文献記載の方法で合成したポリ乳酸としては、例えば、特開平7−33861号公報、特開昭59−96123号公報、高分子討論会予稿集44巻、3198−3199頁に記載されているように、乳酸からの直接脱水縮合又は乳酸環状二量体ラクチドの開環重合によって合成したもの等が挙げられる。
直接脱水縮合を行う場合、L−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸又はこれらの混合物の乳酸を用いることができる。また、開環重合を行う場合においては、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド、メソ−ラクチド又はこれらの混合物のラクチドを用いることができる。
ラクチドの合成、精製及び重合操作については、例えば、米国特許4057537号公報、欧州公開特許第261572号公報、Polymer Bulletin,14,491−495(1985)、及びMakromol Chem.,187,1611−1628(1986)等に記載されている方法が使用できる。
ポリ乳酸におけるL−乳酸単位及びD−乳酸単位の構成モル比(L/D)は、100/0〜0/100のいずれであってもよい。L/Dは、好ましくは100/0〜60/40であり、より好ましくは100/0〜80/20である。
【0010】
乳酸コポリマーは乳酸モノマー又はラクチドとこれらと共重合可能な他の成分とを共重合したものである。このような他の成分としては、2個以上のエステル結合形成性の官能基を持つジカルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノールにエチレンオキシド等を付加反応させた芳香族多価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、グリセリン、ソルビタン、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール等の脂肪族多価アルコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のエーテルグリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、その他特開平6−184417号公報に記載されているもの等が挙げられる。
ラクトンとしては、例えば、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
乳酸コポリマーの生分解性はコポリマー中の乳酸単位の含有量により影響される。このため、乳酸コポリマー中の乳酸単位の含有量は、用いる共重合成分にもよるが、通常50モル%以上であり、好ましくは70モル%以上である。乳酸単位の含有量や共重合成分の種類によって得られる製品の機械特性や生分解性を調節することが可能である。
【0011】
本発明において、アクリル系重合体(C)はポリ乳酸系重合体(B)添加による耐熱性の低下を抑制する助剤として熱可塑性樹脂組成物中に5〜30質量%添加される。アクリル系重合体(C)の量が5質量%以上で耐熱性向上効果が得られ、また30質量%以下で強度維持が可能である。
アクリル系重合体(C)は、構成成分としてメチルメタクリレート単位を有する。アクリル系重合体(C)中のメチルメタクリレート単位の含有量としては好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上である。
アクリル系重合体(C)の質量平均分子量は6万〜30万であることが好ましい。
メチルメタクリレートと共重合可能な他の単量体としては、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;スチレン等の芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;その他、シクロヘキシルマレイミド、フェニルマレイミド、マレイン酸無水物、グルタル酸無水物等が挙げられる。
【0012】
アクリル系重合体(C)の製造方法としては公知の懸濁重合、塊状重合、乳化重合法等の各種方法が挙げられる。
また、アクリル系重合体(C)として市販品も使用でき、例えば、三菱レイヨン(株)製アクリペット「VH」、「MF」、「MD」、「UT-100」等が挙げられる。
【0013】
本発明においては、耐衝撃性、成形性等の向上のために、ゴム質重合体単位及びビニル系単量体単位グラフト部(以下「グラフト部」という)を有するグラフト共重合体(D)が、ポリカーボネート系樹脂(A)、ポリ乳酸系重合体(B)及びアクリル系重合体(C)の合計量100質量部に対して1〜50質量部含有されることが好ましい。
【0014】
本発明において、ゴム質重合体単位に用いられるゴム質重合体としては、ポリブタジエン系ゴム(以下「PBd系ゴム」という)、スチレン−ブタジエン系ゴム(以下「St/Bdゴム」という)等のジエン系ゴム(以下「Dゴム」という)、ポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴム(以下「MAゴム」という)等のアクリル系ゴム(以下「Aゴム」という)、ブタジエン系/アクリル系共重合ゴム(以下「Bd/A共重合ゴム」という)又はブタジエン系/アクリル系複合ゴム(以下「Bd/A複合ゴム」という)、ポリオルガノシロキサン系ゴム(以下「Sゴム」という)、SゴムとMAゴムとを含有するポリオルガノシロキサン系/アクリル系複合ゴム(以下「S/A複合ゴム」という)が挙げられる。
これらゴム質重合体の製造方法としては乳化重合法が最適である。
【0015】
グラフト部を構成するビニル系単量体単位に用いる「ビニル系単量体」の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物並びにエポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びイソボロニル基等の官能基を有する単量体が挙げられる。官能基を有する単量体としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらビニル系単量体は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。また、エポキシ基を有する単量体を含有させることが熱可塑性樹脂組成物の耐熱性向上の点で好ましい。
これらの官能基を含有するビニル系単量体単位の含有量は、耐衝撃性の点から、グラフト共重合体(D)中に50質量%以下であることが好ましい。また、顔料着色性や耐熱性の点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。
【0016】
本発明において、グラフト部はビニル系単量体単位がゴム質重合体にグラフト重合により結合されたものである。グラフト重合法は公知の方法を適用することが出来る。
また、グラフト部は1段又は多段重合法により製造することができる。重合段数は本発明の熱可塑性樹脂組成物中でのグラフト共重合体(D)の分散性、界面強度、耐衝撃性等を考慮して任意に設定することができるが、グラフト部を多段重合化することにより、耐衝撃性を向上させることができる。また、グラフト部がグリシジルメタクリレートのような反応性単量体単位を含む場合は、多段重合によりグリシジルメタクリレートの反応性を保持しながら分散性等を良好に保つのに有効である。但し、必要以上に多段化することは製造工程が増加し生産性が低下することから、5段以下が好ましく、3段以下がより好ましい。
【0017】
グラフト部を製造するための重合方法としては、一般的な滴下重合を用いることができる。ゴム質重合体としてAゴムを水系分散重合で製造した場合には、Aゴムの存在下に、グラフト部を構成する単量体成分を一括で仕込み、その後触媒を添加して重合する方法が好ましい。この方法により、粉体回収時に凝集粒子が融着しにくくなる。また、多段重合の場合、2段目以降は単量体成分を一括で添加しても、滴下法で添加してもよい。
【0018】
本発明において、グラフト共重合体(D)の製造方法としては乳化重合法が最適である。乳化重合で得られたラテックスからグラフト共重合体(D)を粉体として回収する手段としては噴霧回収、又は酸、塩等の凝析剤による湿式凝固等が挙げられる。これらの方法によって粉体又は顆粒として回収することができる。凝析剤として金属塩化合物、例えば酢酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等のアルカリ土類金属塩化合物を用いることが好ましい。アルカリ土類金属塩化合物を用いると、グラフト共重合体(D)用原料としてヒドロキシル基、エポキシ基、カルボキシル基等の官能基を有するビニル系単量体を使用した場合に、これらの官能基を失活させることなくグラフト共重合体(D)の分散性等の性能を十分に保つことができる。
更に、凝析剤にアルカリ土類金属塩化合物を使用すると、水分や熱によるポリカーボネート樹脂の分解等に起因する劣化が抑制され、本発明の熱可塑性樹脂組成物を使用した成形品の耐湿熱性及びリサイクル性が向上する。
【0019】
以下に、グラフト共重合体(D)の具体例として、(1)S/A複合ゴムグラフト共重合体、(2)MAゴムグラフト共重合体及び(3)PBd系ゴムグラフト共重合体について説明する。
【0020】
(1)S/A複合ゴムグラフト共重合体
Sゴム及びMAゴムを含有するS/A複合ゴムは、ゴム質重合体中にSゴム成分が1〜99質量%、MAゴム成分が99〜1質量%含有されることが好ましい。
【0021】
S/A複合ゴムの製造方法としては、乳化重合によってまずSゴムのラテックスを調製し、次にMAゴムの原料となる単量体を上記ラテックス粒子に含浸させてから重合するのが好ましい。
【0022】
Sゴムは、オルガノシロキサン及び架橋剤(C1)を用いて乳化重合により調製することができる。その際、更にグラフト交叉剤(G1)を併用することもできる。
Sゴムの原料であるオルガノシロキサンとしては、3員環以上の各種の環状体が挙げられる。例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。中でも、3〜6員環のオルガノシロキサンが好ましい。これらは単独で又は2種以上を混合して用いられる。オルガノシロキサンの使用量は、Sゴムの原料単量体中、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
【0023】
架橋剤(C1)としては、3官能性又は4官能性のシラン系架橋剤、例えば、トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン等が挙げられる。特に、4官能性の架橋剤が好ましく、この中でもテトラエトキシシランが特に好ましい。架橋剤(C1)の使用量は、Sゴムの原料単量体中、好ましくは0.1〜30質量%である。
【0024】
グラフト交叉剤(G1)としては、次式で表される化合物等が挙げられる。
CH2=C(R2)−COO−(CH2)p−SiR1n(OR3−n (G1−1)
CH2=C(R2)−C64−SiR1n(OR3−n (G1−2)
CH2=CH−SiR1n(OR3−n (G1−3)
HS−(CH2)p−SiR1n(OR3−n (G1−4)
式中、R1は、メチル基、エチル基、プロピル基、又はフェニル基であり、R2は水素原子又はメチル基であり、Rはメチル基又はエチル基であり、nは0、1又は2であり、pは1〜6の整数を示す。
【0025】
上式(G1−1)の(メタ)アクリロイルオキシシロキサンは、グラフト効率が高いため有効なグラフト鎖を形成することが可能であり、耐衝撃性発現の点で有利である。中でも、メタクリロイルオキシシロキサンが特に好ましい。
メタクリロイルオキシシロキサンの具体例としては、β−メタクリロイルオキシエチルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルエトキシジエチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルジエトキシメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシブチルジエトキシメチルシラン等が挙げられる。
【0026】
上式(G1−2)の化合物としてはビニルシロキサンが挙げられ、具体例としてはテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンが挙げられる。
上式(G1−3)の化合物としてはp−ビニルフェニルジメトキシメチルシランが挙げられる。
上式(G1−4)の化合物としては、γ−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、γ−メルカプトプロピルメトキシジメチルシラン、γ−メルカプトプロピルジエトキシメチルシラン等が挙げられる。
【0027】
グラフト交叉剤(G1)の使用量は、Sゴムの原料単量体中、好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。
【0028】
Sゴムラテックスの製造は、例えば、米国特許第2,891,920号公報、米国特許第3,294,725号公報等に記載された方法を用いることができる。
本発明においては、例えば、オルガノシロキサン、架橋剤(C1)及び所望によりグラフト交叉剤(G1)の混合溶液を、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸等のスルホン酸系乳化剤の存在下で、例えばホモジナイザー等を用いて水と剪断混合したものを重合することが好ましい。アルキルベンゼンスルホン酸はオルガノシロキサンの乳化剤として作用すると同時に重合開始剤ともなるので好適である。この際、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルスルホン酸金属塩等を併用することが、グラフト重合時のの重合安定性の点で好ましい。
【0029】
MAゴムは「アルキル(メタ)アクリレート」並びに架橋剤(C2)及び/又はグラフト交叉剤(G2)を用いて合成することができる。
架橋剤(C2)の使用量はMAゴムの原料単量体中好ましくは0.1〜30質量%である。また、グラフト交叉剤(G2)の使用量はMAゴムの原料単量体中好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは0.5〜5質量%である。
「アルキル(メタ)アクリレート」としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの中で特にn−ブチルアクリレートが好ましい。
【0030】
架橋剤(C2)としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、多官能メタクリル基変性シリコーン等が挙げられる。
【0031】
グラフト交叉剤(G2)としては、例えば、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。アリルメタクリレートは架橋剤として用いることもできる。これら架橋剤及びグラフト交叉剤は単独で又は2種以上併用して用いられる。これら架橋剤及びグラフト交叉剤の合計使用量は、MAゴムの原料単量体中、好ましくは0.1〜20質量%である。
【0032】
MAゴムは、例えば以下の方法で製造することによりSゴムとの複合ゴム(S/A複合ゴム)として得ることができる。
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ水溶液の添加により中和されたSゴムラテックス中に、前記の「アルキル(メタ)アクリレート」、架橋剤(C2)及びグラフト交叉剤(G2)を添加してSゴム粒子に含浸させた後、通常のラジカル重合開始剤により重合する。重合後、SゴムとMAゴムとの複合ゴムのラテックスが得られる。
【0033】
S/A複合ゴムは、トルエンにより90℃で4時間抽出して測定したゲル含量が80質量%以上であることが好ましい。
本発明においては、S/A複合ゴムとして、Sゴムの主骨格がジメチルシロキサンの繰り返し単位を有し、MAゴムの主骨格がn−ブチルアクリレートの繰り返し単位を有する複合ゴムが好ましい。
【0034】
上記S/A複合ゴムの存在下に、グラフト部の製造に用いられる「ビニル系単量体」をグラフト重合させることにより、S/A複合ゴムとグラフト部から成るS/A複合ゴムグラフト共重合体を得ることができる。
S/A複合ゴムグラフト共重合体の好ましい質量平均粒子径は50〜500nmである。また、ゴム質重合体/グラフト部の質量比は50〜90/10〜50が物性発現性の点で好ましい。
【0035】
(2)MAゴムグラフト共重合体
MAゴムは耐衝撃性発現の点でガラス転移温度(以下「Tg」という)0℃以下の重合体であることが好ましい。従って、MAゴムの原料単量体としては前述したMAゴムの製造で用いられる「アルキル(メタ)アクリレート」の中で、特にn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート等が好ましい。また、室温付近において固体であるステアリルメタクリレート等を用いる場合は、これを溶解する単量体と混合して使用することが好ましい。
MAゴムは、単独重合体、共重合体、及び2種以上のMAゴムからなる複合ゴムのいずれでもよい。
【0036】
上記MAゴムで、共重合体の場合の共重合成分として用いられる「他の単量体」としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のジエン系単量体;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル;メチルメタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ビニル系単量体;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート等の多官能性単量体等が挙げられる。これらの単量体は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの中で、強度発現性の点から1,3−ブタジエンを含有することが好ましい。
【0037】
複合ゴムの好適な例としては、分岐側鎖をもつアルコール又は炭素数が13以上のアルキル基を有するアルコールの(メタ)アクリル酸エステル、又はヒドロキシル基、メトキシ基若しくはエトキシ基を含有する(メタ)アクリル酸エステルの少なくとも1種からなる単量体単位を含むアクリルゴム(AR1)成分と、n−ブチルアクリレート単位を含むアクリルゴム(AR2)成分とを主成分とする複合ゴムであって、アクリルゴム(AR1)成分のTg(Tg1)が、アクリルゴム(AR2)成分のTg(Tg2)よりも低いものが挙げられる。このような複合ゴムは、単純な共重合タイプのゴムに比べて、より高い低温耐衝撃性を付与することが可能である。
【0038】
アクリルゴム(AR1)成分の原料単量体である(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に、2−エチルヘキシルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、トリデシルメタクリレート、トリデシルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ステアリルアクリレートが好ましい。
【0039】
また、複合ゴムは、通常はアクリルゴム(AR1)成分5〜95質量%とアクリルゴム(AR2)成分95〜5質量%とを含み、好ましくはアクリルゴム(AR1)成分10〜90質量%とアクリルゴム(AR2)成分90〜10質量%とを含み、更に好ましくはアクリルゴム(AR1)成分10〜80質量%とアクリルゴム(AR2)成分90〜20質量%とを含む。
【0040】
MAゴムの原料単量体は、通常は、分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する単量体を含み、その使用量は原料単量体100質量%に対して2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましい。
分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する単量体は架橋剤又はグラフト交叉剤として機能する。
架橋剤及びグラフト交叉剤としては、前記S/A複合ゴムグラフト共重合体のMAゴムの製造で使用される架橋剤(C2)及びグラフト交叉剤(G2)と同様のものが使用できる。
これら架橋剤及びグラフト交叉剤は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
また、MAゴムとして複合ゴムを用いる場合、アクリルゴム(AR1)成分及びアクリルゴム(AR2)成分に対する架橋剤又はグラフト交叉剤の使用量は、夫々の原料単量体に対する使用量を基準として、(AR1)成分よりも(AR2)成分に使用する量の方が多いことが好ましい。
【0041】
MAゴムは10℃以下にTgを2つ以上有してもよい。Tgがこのような条件を満たす場合、得られるMAゴムグラフト共重合体はより高い耐衝撃性を発現する。
【0042】
MAゴムのTgは動的機械的特性解析装置(以下「DMA」という)によるTanδの転移点として測定される。一般に、重合体は固有のTgを持ち、単独重合体又はランダム共重合体では一つの転移点が観測されるが、複数の(共)重合体の混合物又は複合化された重合体では、夫々に固有の転移点が観測される。例えば、2つの(共)重合体からなる場合、測定により2つの転移点が観測される。即ち、DMAにより測定されるTanδ曲線では2つのピークが観測される。(共)重合体組成比に偏りがある場合や転移温度が近い場合には、夫々のピークが接近する場合があり、ショルダー部分を持つピークとして観測される場合があるが、単独重合体の場合に見られる単純な1ピークの曲線とは異なるので判別可能である。
【0043】
MAゴムを製造する際には、乳化剤又は分散安定剤として、アニオン性、非イオン性、カチオン性等の公知の各種界面活性剤を使用できる。また必要に応じて、2種以上の界面活性剤を混合して用いることもできる。
【0044】
上記MAゴムの存在下に、グラフト部の製造に用いられる「ビニル系単量体」をグラフト重合させることにより、MAゴムとグラフト部から成るMAゴムグラフト共重合体を得ることができる。
上記「ビニル系単量体」はS/A複合ゴムグラフト共重合体の場合と同様のものが使用でき、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0045】
「ビニル系単量体」には、耐衝撃性、耐熱性の点から、MAゴムを得るために使用される単量体と同様の分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有するビニル系単量体が含まれることが好ましい。この単量体の使用量はグラフト部の原料単量体中に20質量%以下であることが好ましい。
MAゴムグラフト共重合体の質量平均粒子径は100〜1000nmであることが好ましい。
【0046】
MAゴムグラフト共重合体におけるMAゴムの比率は80〜99質量%であることが好ましく、80〜95質量%であることがより好ましく、80〜90質量%であることが特に好ましい。
また、グラフト部の比率は1〜20質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましく、10〜20質量%であることが特に好ましい。
グラフト部が1質量%以上であればMAゴムグラフト共重合体の熱可塑性樹脂組成物中での分散性が良好となり、熱可塑性樹脂組成物の加工性が向上する。一方、グラフト部が20質量%以下であればMAゴムグラフト共重合体の衝撃強度発現性が向上する。
【0047】
(3)PBd系ゴムグラフト共重合体
PBd系ゴムを含有するラテックスとしては、耐衝撃性の点で、1,3−ブタジエン及び1,3−ブタジエンと共重合しうる1種以上のビニル系単量体とを乳化重合して得られるものが挙げられる。この場合、1,3−ブタジエンの含有量は単量体全量に対して65質量%以上、好ましくは70質量%以上である。
1,3−ブタジエンと共重合しうるビニル系単量体としては、MAゴムグラフト共重合体の製造に使用される「他の単量体」と同様のものが使用される。これらビニル系単量体は1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0048】
本発明において、PBd系ゴムは必要とする粒子径を得るためにシード重合法や酸や塩を用いて肥大化する方法等により製造することができる。肥大化する場合、酸基含有共重合体を肥大化剤として用いる方法が好ましい。
【0049】
酸基含有共重合体としては、アルキルアクリレートとこれと共重合可能な少なくとも1種以上の不飽和酸単量体とを含む混合物を少なくとも1種の乳化剤の存在下に重合して得られる共重合体であって、pH4以上のラテックスの状態で存在するものが好ましい。
酸基含有共重合体中のアルキルアクリレート単位の含有量は70〜99質量%が好ましい。また、樹脂組成物の衝撃強度の点で不飽和酸単量体単位は1〜30質量%が好ましい。
【0050】
アルキルアクリレートのアルキル基の炭素数は1〜12が好ましい。例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート等を使用できる。
【0051】
不飽和酸単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、桂皮酸、無水マレイン酸及びブテントリカルボン酸等を使用できる。
また、酸基含有共重合体用の単量体混合物中にスチレン、メタクリル酸メチル、アクリロニトリル、ブタジエン等から選ばれる1種又は2種以上を含有してもよい。
【0052】
酸基含有共重合体の重合用乳化剤としては必要とする肥大化性能に応じてアニオン性、カチオン性、ノニオン性の乳化剤のいずれかを選択することができるが、アニオン性界面活性剤が好ましい。また、リン酸エステル塩、アルキルスルホコハク酸塩以外のアニオン性界面活性剤が好ましい。
【0053】
本発明において、上記で得られた酸基含有共重合体ラテックスをPBd系ゴムラテックスに少量添加することにより、PBd系ゴムの肥大化が可能となる。
酸基含有共重合体の添加量は、PBd系ゴム100質量部(固形分として)に対して、十分な肥大化を実現するために固形分として0.01質量部以上が好ましく、他の特性が損なわれることを避けるために固形分として10質量部以下が好ましい。
PBd系ゴム重合体の肥大化後の粒子径は目的に応じて設定できるが、通常50〜300nmである。
【0054】
PBd系ゴムグラフト共重合体中のPBd系ゴムの含有量は30〜99重量%が好ましく、70〜95%がより好ましい。PBd系ゴムの含有量が30重量%以上であることが得られる樹脂組成物の耐衝撃性の点で好ましい。一方、PBd系ゴムの含有量が99重量%以下であることが粉体回収時のポリマー同士の融着防止、高回収率、樹脂組成物への分散のし易さの点で好ましい。
【0055】
PBd系ゴムグラフト共重合体は、ラテックス状態のPBd系ゴムに、グラフト部の製造に用いられる「ビニル系単量体」をグラフト重合して得られる。この際、必要に応じてMAゴムの製造で使用される架橋剤(C2)等を併用することもできる。尚、これら単量体は単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0056】
更に、上記グラフト共重合体の製造には、必要に応じて過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ化合物;上記化合物と亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩、第一金属塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、デキストローズ等を組み合わせたレドックス系開始剤等を重合開始剤として使用することができる。
【0057】
グラフト重合の方法としては乳化重合法を用いることができる。重合温度は、重合開始剤の種類にもよるが、40〜80℃程度で行うことができる。乳化剤としては公知の乳化剤を用いることができる。
また、重合方法は多段グラフト重合法が好ましい。即ち、ラテックスを反応系内に予め仕込んでおき、グラフト重合用モノマーを分割添加又は連続添加する重合方式が好ましい。このような重合方式を採用することで所望の構造を有するグラフト共重合体を比較的容易に得ることができる。
【0058】
本発明において、PBd系ゴムグラフト共重合体を構成するグラフト重合層の数は、特に限定されるものではなく、1層以上であればよく、2層又は3層以上であってもよい。
例えば、グラフト重合を3段グラフト重合で行って3層構造のグラフト重合層とする場合、グラフト重合1段目はメタクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系単量体を重合することで、耐衝撃性を向上させると共に、熱可塑性樹脂組成物との相溶性を向上させることができる。グラフト重合2段目は芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合することでPBd系ゴムグラフト共重合体の流動性を向上させることができる。グラフト重合3段目はメタクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系単量体を重合することで得られる熱可塑性樹脂組成物の表面の艶を向上させる効果がある。
メタクリル酸アルキルエステル以外のビニル系単量体としては、前記1,3−ブタジエンと共重合しうるビニル系単量体を使用することができる。これらの単量体は単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0059】
3段グラフト重合の場合、より具体的には、グラフト重合1段目で使用される第1単量体はメタクリル酸アルキルエステルを含み、グラフト重合全体で使用される単量体混合物に対して30〜80質量%であることが好ましい。
グラフト重合2段目で使用される第2単量体は芳香族ビニルを含み、グラフト重合全体で使用される単量体混合物の10〜50質量%であることが好ましい。
更に、グラフト重合3段目で使用される第3単量体はメタクリル酸アルキルエステルを含み、グラフト重合全体で使用される単量体混合物の5〜10質量%であることが好ましい。
【0060】
本発明におけるPBd系ゴムグラフト共重合体の粒子径は質量平均粒子径として50〜800nmであることが好ましく、100〜500nmが更に好ましい。
【0061】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は公知の各種混合方法を使用して製造できる。通常は、溶融混合法が好ましい。また、必要に応じて少量の溶剤を使用してもよい。混合装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等が挙げられる。これら装置は回分的又は連続的に運転することができる。配合成分の混合順序は特に限定されない。
【0062】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に難燃性能が必要な場合は難燃剤を添加できる。特に、ハロゲン系難燃剤、リン酸系難燃剤、シリコーン系難燃剤が、所期の目的とする耐衝撃性等を損なうことなく高い難燃性を発現することができるので、好ましい。
難燃剤の具体例としては、リン酸エステル化合物、亜リン酸エステル化合物、縮合リン酸エステル化合物等のリン酸系化合物;水酸化アルミニウム;三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等の酸化アンチモン系化合物;含ハロゲンリン酸エステル化合物;含ハロゲン縮合リン酸エステル化合物;塩素化パラフィン;臭素化芳香族トリアジン、臭素化フェニルアルキルエーテル等の臭素化芳香族化合物等のハロゲン含有化合物;スルフォン又は硫酸塩系化合物;エポキシ系反応型難燃剤等が挙げられる。
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を使用する際、必要とする物性を損なわない範囲で、熱可塑性樹脂組成物のコンパウンド化時、混練時、成形時等の所望の段階で公知の各種安定剤や充填剤等を添加できる。
【0064】
金属系安定剤としては、例えば、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、ケイ酸鉛等の鉛系安定剤;カリウム、マグネシウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉛等の金属と2−エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、ベヘン酸等の脂肪酸から誘導される金属石けん系安定剤;アルキル基、エステル基等と脂肪酸塩、マレイン酸塩、含硫化物等とから誘導されるジブチル(若しくはジオクチル)錫マレエート又はメルカプチド等の有機スズ系安定剤;Ba−Zn系、Ca−Zn系、Ba−Ca−Sn系、Ca−Mg−Sn系、Ca−Zn−Sn系、Pb−Sn系、Pb−Ba−Ca系等の複合金属石けん系安定剤;バリウム、亜鉛等の金属と2−エチルヘキサン酸、イソデカン酸、トリアルキル酢酸等の分岐脂肪酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸、ナフテン酸等の環状脂肪酸、石炭酸、安息香酸、サリチル酸、それらの置換誘導体等の芳香族酸といった有機酸から誘導される金属塩系安定剤が挙げられる。また、これら安定剤を石油系炭化水素、アルコール、グリセリン誘導体等の有機溶剤に溶解し、更に亜リン酸エステル、エポキシ化合物、発色防止剤、透明性改良剤、光安定剤、酸化防止剤、プレートアウト防止剤、滑剤等の安定化助剤を配合してなる金属塩液状安定剤等が挙げられる。
【0065】
上記以外の安定剤としては、エポキシ樹脂、エポキシ化大豆油、エポキシ化植物油、エポキシ化脂肪酸アルキルエステル等のエポキシ化合物;リンがアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシル基等で置換され、且つプロピレングリコール等の2価アルコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA等の芳香族化合物を有する有機亜リン酸エステル;2,4−ジ−t−ブチル−3−ヒドロキシトルエン(BHT)や硫黄やメチレン基等で二量体化したビスフェノール等のヒンダードフェノール、サリチル酸エステル、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン又はニッケル錯塩の光安定剤;カーボンブラック、ルチル型酸化チタン等の紫外線遮蔽剤;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール等の多価アルコール、β−アミノクロトン酸エステル、2−フェニルインドール、ジフェニルチオ尿素、ジシアンジアミド等の含窒素化合物;ジアルキルチオジプロピオン酸エステル等の含硫黄化合物;アセト酢酸エステル、デヒドロ酢酸、β−ジケトン等のケト化合物;有機珪素化合物;ほう酸エステル等が挙げられる。これら安定剤は単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0066】
充填剤としては、例えば、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム、膠質炭酸カルシウム等の炭酸塩;酸化チタン、クレー、タルク、マイカ、シリカ、カーボンブラック、グラファイト、ガラスビーズ、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維等の無機質系の充填剤;ポリアミド等の有機繊維、シリコーン等の有機質系の充填剤;木粉等の天然有機物が挙げられる。特に、ガラス繊維やカーボン繊維等の繊維状補強材は非常に有用である。
【0067】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、その他、衝撃強度改質剤、加工助剤、可塑剤、滑剤、耐熱向上剤、離型剤、結晶核剤、流動性改良剤、着色剤、帯電防止剤、導電性付与剤、界面活性剤、防曇剤、発泡剤、抗菌剤等を添加することができる。
【0068】
衝撃強度改質剤としては、例えば、ABS樹脂、アクリロニトリル−エチレン−スチレン樹脂(AES樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム系グラフト共重合体、熱可塑性エラストマー等本発明におけるグラフト共重合体(D)以外の耐衝撃改質剤が挙げられる。
加工助剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等が挙げられる。
【0069】
可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレート、トリオクチルトリメリテート、トリイソオクチルトリメリテート等の芳香族多塩基酸のアルキルエステル;ジブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジシオノニルアジぺート、ジブチルアゼレート、ジオクチルアゼレート、ジイソノニルアゼレート等の脂肪酸多塩基酸のアルキルエステル;トリクレジルフォスフェート等のリン酸エステル;アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、分子量600〜8,000程度のフタル酸等の多価カルボン酸とエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等の多価アルコールとの重縮合体の末端を、一価アルコール又は一価カルボン酸で封止した化合物等のポリエステル系可塑剤;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化トール油脂肪酸−2−エチルヘキシル等のエポキシ系可塑剤;塩素化パラフィン等が挙げられる。
【0070】
滑剤としては、例えば、流動パラフィン、低分子量ポリエチレン等の炭化水素、ハロゲン化炭化水素、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸等の脂肪酸、脂肪酸アミド、グリセリド等の脂肪酸の多価アルコールエステル、脂肪酸の脂肪アルコールエステル(エステルワックス)、金属石けん、脂肪アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリグリセロール、脂肪酸と多価アルコールの部分エステル、脂肪酸とポリグリコール、ポリグリセロールの部分エステル等のエステル、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体等が挙げられる。
耐熱向上剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、イミド系共重合体、AS樹脂等が挙げられる。
【0071】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で他の高分子材料、例えばポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、メタクリル−スチレン樹脂(MS樹脂)等のスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、他の熱可塑性樹脂を添加することができる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。また、実施例及び比較例において「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を意味する。各種評価は以下の方法により実施した。
【0073】
(1)質量平均粒子径
ラテックス中の重合体粒子の質量平均粒子径は大塚電子(株)社製DLS−700型を用いた動的光散乱法により求めた。
【0074】
(2)ペレットの製造
φ30mm、L/D=35の同方向二軸押出機(日本製鋼所(株)製TEX−30α)を用いて熱可塑性樹脂組成物を溶融混練し、ペレットを得た。
【0075】
(3)アイゾット衝撃強度
前記ペレットを用いて、射出成形法により横12.7mm×縦127mm×厚3.2mmの棒状試験片を製造して、JIS・K−7113により23℃で測定した。
【0076】
(4)荷重たわみ温度
アイゾット衝撃強度用試験片と同様の試験片を用いてJIS・K−7191に準じて荷重0.45MPaの条件で測定した。
【0077】
(5)メルトフローレート(MFR)
前記ペレットのMFRをASTM D1238に準じて荷重3.8kgf、230℃の条件で測定した。
【0078】
(製造例1) S/A複合ゴムグラフト共重合体(M−1)の製造
テトラエトキシシラン2部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン0.5部及びオクタメチルシクロテトラシロキサン97.5部を混合し、シロキサン混合物100部を得た。ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸をそれぞれ0.67部溶解させた蒸留水200部に、シロキサン混合物100部を加え、ホモミキサーにて10,000rpmで予備攪拌した後、ホモジナイザーにより200kg/cm2の圧力で乳化、分散させ、オルガノシロキサンラテックスを得た。これをコンデンサー及び攪拌翼を備えたセパラブルフラスコに移し、攪拌しながら80℃で5時間重合した後、20℃で放置し、48時間後に水酸化ナトリウム水溶液でこのラテックスのpHを7.0にして、ポリオルガノシロキサンを含有するSゴムのラテックスを得た。得られたSゴムの重合率は89.1%であり、Sゴムの質量平均粒子径は190nmであった。
【0079】
前記ラテックスを、攪拌機を備えたセパラブルフラスコに入れ、蒸留水175部を加えてラテックス固形分を10部とし、窒素置換してから50℃に昇温し、n−ブチルアクリレート78.4部、アリルメタクリレート1.6部及びt−ブチルハイドロパーオキサイド0.3部の混合物を仕込み、30分間攪拌し、この混合物をSゴムに浸透させた。次いで、硫酸第1鉄0.002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.006部、ロンガリット0.3部及び蒸留水10部の混合物を仕込み、ラジカル重合を開始させ、その後内温70℃で2時間保持し、重合を完了してS/A複合ゴムのラテックスを得た。このラテックスを一部採取し、S/A複合ゴムの質量平均粒子径を測定したところ220nmであった。
【0080】
前記ゴムラテックス中に、メチルメタクリレート10部及びt−ブチルハイドロパーオキサイド0.024部の混合物を60℃にて15分間にわたり滴下し、その後、60℃で2時間保持し、S/A複合ゴムへのグラフト重合を完了した。メチルメタクリレートの重合率は97.1%であった。S/A複合ゴムグラフト共重合体の質量平均粒子径は230nmであった。次いで、S/A複合ゴムグラフト共重合体を含有するラテックスを40℃で濃度5%の塩化カルシウム水溶液に、ラテックスと水溶液の比率が1:2となるように添加し、その後、90℃まで昇温してラテックスを凝固させ、水により洗浄を繰り返した後、固形分を分離して80℃で24時間乾燥し、S/A複合ゴムグラフト共重合体(M−1)の粉体を得た。
【0081】
(製造例2) S/A複合ゴムグラフト共重合体(M−2)の製造
製造例1と同様のS/A複合ゴムを用い、グラフト重合用単量体としてメチルメタクリレート10部の代わりにグリシジルメタクリレート3部及びメチルメタクリレート7部の単量体混合物を使用し、それ以外は製造例1と同様にしてS/A複合ゴムグラフト共重合体を含有するラテックスを得た。S/A複合ゴムグラフト共重合体の質量平均粒子径は240nmであった。このラテックスを製造例1と同様に凝固、分離、洗浄処理してS/A複合ゴムグラフト共重合体(M−2)の粉体を得た。
【0082】
(製造例3) Aゴムグラフト共重合体(M−3)の製造
2−エチルヘキシルアクリレート99.5部及びアリルメタクリレート0.5部を混合し、単量体混合物100部を得た。アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム(花王(株)製、商品名「ペレックスSS−L」)(固形分で1部)を溶解した蒸留水195部に上記単量体混合物100部を加え、ホモミキサーにて10,000rpmで予備撹拌した後、ホモジナイザーにより30MPaの圧力で乳化、分散させ、ラテックスを得た。このラテックスを製造例1と同様のセパラブルフラスコに移し、窒素置換及び混合撹拌しながら加熱し、50℃になった時にt−ブチルハイドロパーオキサイド0.5部を添加した。この後50℃に昇温し、硫酸第1鉄0.002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.006部、ロンガリット0.26部及び蒸留水5部の混合液を投入後、5時間放置し、重合を完結しアクリルゴム(AR1)のラテックスを得た。
アクリルゴム(AR1)の重合率は99.9%であった。得られたラテックスに更にペレックスSS−Lを固形分として1.7部追加した。
【0083】
このラテックス(固形分で20部)を、撹拌機を備えたセパラブルフラスコに入れ、蒸留水69.5部を追加し、系内の蒸留水量を195部とした。次いで、これに、アクリルゴム(AR2)の原料となるn−ブチルアクリレート69部、アリルメタクリレート1.38部及びt−ブチルハイドロパーオキシド0.32部の混合液を仕込み、10分間撹拌させ、この混合液をアクリルゴム(AR1)粒子に浸透させた。更に、10分間攪拌した後、窒素置換を行い、系内を50℃に昇温させ、硫酸第1鉄0.002部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.006部、ロンガリット0.26部及び蒸留水5部の混合液を仕込み、ラジカル重合を開始させた。重合開始後、内温70℃で2時間保持し重合を完了してアクリルゴム(AR1)成分及びアクリルゴム(AR2)成分からなるA複合ゴムのラテックスを得た。
【0084】
このA複合ゴムのラテックスに、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.06部及びメチルメタクリレート11部の混合液を70℃にて15分間にわたり滴下し、その後70℃で4時間保持し、A複合ゴムへのグラフト重合を完了した。メチルメタクリレートの重合率は99.4%であった。得られたAゴムグラフト共重合体の質量平均粒子径は200nmであった。このラテックスを酢酸カルシウム1.5%濃度の熱水200部中に滴下し、Aゴムグラフト共重合体を凝固、分離、洗浄した後75℃で16時間乾燥し、粉末状のAゴムグラフト共重合体(M−3)を得た。
【0085】
(製造例4) B/A共重合ゴムグラフト共重合体(M−4)の製造
(1)B/A共重合ゴムラテックスの製造
1,3−ブタジエン10部、ブチルアクリレート90部、牛脂脂肪酸カリウム0.93部、M−ラウロイルザルコシンナトリウム0.39部、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド0.22部及び蒸留水200部の単量体混合物を70Lオートクレーブに仕込んだ。オートクレーブを昇温して混合物が43℃となった時点で、硫酸第一鉄0.0024部、デキストローズ0.16部、ピロリン酸ナトリウム0.24部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.0009部及び蒸留水5.25部のレドックス系開始剤をオートクレーブ内に添加し、重合を開始させた。重合開始後、60℃まで昇温させ、重合を継続した。重合開始から5時間反応させた後に、牛脂脂肪酸カリウム0.39部及びM−ラウロイルザルコシンナトリウム0.16部を追加投入し、B/A共重合ゴムラテックスを得た。B/A共重合ゴムの質量平均粒子径は91nmであった。
【0086】
(2)肥大化剤(1)ラテックスの製造
n−ブチルアクリレート81.5部、メタクリル酸18.5部、オレイン酸ナトリウム1.75部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム3.57部、過硫酸カリウム0.3部及び蒸留水200部の肥大化剤用単量体混合物を63℃で4時間重合させ、重合転化率98%、pH5.0の肥大化剤(1)ラテックスを得た。
【0087】
(3)グラフト共重合体の製造
フラスコ内に、B/A共重合ゴムラテックス(固形分75部)及び肥大化剤(1)ラテックス(固形分2.0部)を添加し、室温にて30分攪拌した。その後、アルケニルコハク酸カリウム2.0部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部をフラスコ内に仕込み、内温を70℃に保持して、メチルメタクリレート23.8部、n−ブチルアクリレート1.2部及びクメンハイドロキシパーオキサイド0.1部の混合物を70分かけて滴下した。この後、1.5時間保持し、グラフト重合を完了させてB/A共重合ゴムグラフト共重合体のラテックスを得た。得られたグラフト共重合体の質量平均粒子径は350nmであった。このラテックスにブチル化ハイドロキシトルエン0.5部を添加した後、濃度18.8%の酢酸カルシウム水溶液を添加して凝析させ、90℃で熱処理固化した。その後凝固物を温水で洗浄し、更に乾燥してB/A共重合ゴムグラフト共重合体(M−4)を得た。
【0088】
(製造例5) PBd系ゴムグラフト共重合体(M−5)の製造
(1)PBd系ゴムラテックスの製造
単量体混合物として1,3−ブタジエン100部、t−ドデシルメルカプタン0.4部、ロジン酸カリウム0.75部、オレイン酸カリウム0.75部、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド0.24部及び蒸留水70部の単量体混合物を用いた。また、レドックス開始剤として硫酸第一鉄0.003部、デキストローズ0.3部、ピロリン酸ナトリウム0.3部及び蒸留水5部の混合物を用いた。それ以外の条件は製造例4と同様にして重合を開始し、8時間反応させて、PBd系ゴムのラテックスを得た。得られたPBd系ゴムの質量平均粒子径は90nmであった。
【0089】
(2)肥大化剤(2)ラテックスの製造
肥大化剤用単量体混合物として、n−ブチルアクリレート85部、メタクリル酸15部、オレイン酸ナトリウム2.0部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム1.0部、過硫酸カリウム0.3部及び蒸留水200部の混合物を使用した。それ以外の条件は製造例4と同様にして、重合転化率98%、pH5.0の肥大化剤(2)ラテックスを得た。
【0090】
(3)グラフト共重合体の製造
フラスコ内に、PBd系ゴムのラテックス(固形分75部)及び肥大化剤(2)ラテックス(固形分2.0部)を添加し、室温にて30分攪拌した。その後、オレイン酸カリウム1.5部及びナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.6部をフラスコ内に仕込んだ。次いで、内温を70℃に保持して、メチルメタクリレート9.0部、n−ブチルアクリレート1.0部及びクメンハイドロキシパーオキサイド0.02部の混合物を1時間かけて滴下した後、1時間保持し、第1段目グラフト重合を実施した。これに、スチレン12.5部及びクメンハイドロキシパーオキサイド0.025部の混合物を1時間かけて滴下した後、3時間保持し、第2段目グラフト重合を実施した。更にこれに、メチルメタクリレート2.5部及びクメンハイドロキシパーオキサイド0.003部の混合物を0.5時間かけて滴下した後、1時間保持して第3段目グラフト重合を終了し、PBd系ゴムグラフト共重合体ラテックスを得た。グラフト共重合体の質量平均粒子径は280nmであった。このラテックスにブチル化ハイドロキシトルエン0.5部を添加した後、濃度0.2%の硫酸水溶液を添加して凝析させ、90℃で熱処理固化した。その後凝固物を温水で洗浄し、更に乾燥してPBd系ゴムグラフト共重合体(M−5)を得た。
【0091】
[実施例1〜8及び比較例1〜6]
ポリカーボネート系樹脂(A)としてタフロンFN1700A(出光興産(株)製)、ポリ乳酸系重合体(B)としてレイシアH−100(三井化学(株)製)、アクリル系重合体(C)としてアクリペットVH(三菱レイヨン(株)製、メチルメタクリレート−メチルアクリレート共重合体、質量平均分子量6万(GPC測定))及びグラフト共重合体(D)として製造例1〜5で製造したグラフト共重合体(M−1)〜(M−5)を用い、表1に示す割合で混合した。この混合物を同方向二軸押出機(日本製鋼所(株)製TEX−30α)に供給してバレル温度210℃及びスクリュー回転数200rpmにて溶融混練してペレット状に賦型した後、これを用いて評価用試験片を作製し、各評価に供した。得られた結果を表1及び表2に示す。
【0092】
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート系樹脂(A)50〜85質量%、ポリ乳酸系重合体(B)10〜29質量%及びメチルメタクリレート単位を有するアクリル系重合体(C)5〜30質量%を含有する熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物100質量部に対してゴム質重合体単位及びビニル系単量体単位グラフト部を有するグラフト共重合体(D)を1〜50質量部含有する熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2007−231149(P2007−231149A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54364(P2006−54364)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】