説明

熱可塑性樹脂組成物

【課題】環境・資源保全について少しでも改良し、同時に大型成形品に適した特性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネートと、(B)スチレン系樹脂よりなる熱可塑性樹脂組成物において、その構成重量比率が90/10〜10/90の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物に関する。更に詳しくはバイオマス資源であるイソソルビドを含むカーボネート重合体とスチレン系樹脂からなる熱可塑性樹脂組成物であって、成形時の流動性、衝撃強度、ウエルド部の強度及び耐熱性に優れた熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネート樹脂は優れた衝撃強度等の機械特性を有するエンジニアリングプラスチックとして、またABS樹脂をはじめとするスチレン系樹脂は機械特性のバランス、成形加工性に優れる熱可塑性樹脂として、それぞれ自動車、OA分野などの種々の用途に幅広く使用されている。しかしながら、芳香族ポリカーボネート樹脂には成形加工性の面や耐薬品性にも劣るという欠点を有する。一方、ABS樹脂、ASA樹脂をはじめとするスチレン系樹脂は耐熱性の面に問題があり高温雰囲気下での使用に制限があるという問題点がある。
【0003】
かかる問題点を解決し、両者の優れた特性を併せ持つ材料として芳香族ポリカーボネート樹脂とABS樹脂をはじめとするスチレン系樹脂とのアロイが数多く開発され、特にテレビキャビネットや、プリンター・コピー機ハウジング、自動車ダッシュボードなどの大型成形品の用途に幅広く使用されている。(特公昭38−15225号公報、特公昭39−71号公報、特公昭42−11496号公報)。特に成形時の流動性が改良され、成形収縮率も低く、耐熱性も80℃位を保持でき、機械的強度も良好である。また、両樹脂とも芳香族基を有している為、相溶性もあり、真珠光沢等の色むらが発生せず、着色が容易であるなどの利点がある。
【0004】
ところで、芳香族ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂をはじめとするスチレン系樹脂は一般的に石油資源から誘導される原料を用いて製造される。しかしながら、近年、石油資源の枯渇が危惧されており、植物などのバイオマス資源から得られる原料を用いたプラスチック成形品の提供が求められている。また、二酸化炭素排出量の増加、蓄積による地球温暖化が、気候変動などをもたらすことが危惧されていることからも、使用後の廃棄処分をしてもカーボンニュートラルな、植物由来モノマーを原料としたプラスチックからのプラスチック成形品資材部品の開発が求められており、特に大型成形品の分野においてはその要求は強い。
【0005】
従来、植物由来モノマーとしてイソソルビドを使用し、炭酸ジフェニルとのエステル交換により、ポリカーボネートを得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、得られたポリカーボネートは、褐色であり、満足できるものではない。また、イソソルビドと他のジヒドロキシ化合物との共重合ポリカーボネートとして、ビスフェノールAを共重合したポリカーボネートが提案されており(例えば、特許文献2参照)、更に、イソソルビドと脂肪族ジオールとを共重合することにより、イソソルビドからなるホモポリカーボネートの剛直性を改善する試みがなされている(例えば、特許文献3参照)。 これらは機械的強度、特に耐衝撃性において、大型成形品用途に適用するには不十分であった。
【0006】
一方、脂環式ジヒドロキシ化合物である1,4−シクロヘキサンジメタノールを重合したポリカーボネートとしては、多数提案されているが(例えば、特許文献4、5)これらのポリカーボネートの分子量は高々4000程度と低いものであり、このため、ガラス転移温度が低いものが多い。
【0007】
このようにイソソルビドを用いたカーボネート重合体の提案はなされているが、まだ、大型成形品に適用するには耐熱性、機械的強度、流動性などの総合的バランスの取れた樹脂とはいえない状況である。また、これらの文献にて開示されているのは、ガラス転移温度、さらには基本的な機械的特性のみで、上述の大型成形品向けに重要な流動性、耐衝撃性などの特性について充分開示されていない。
【特許文献1】GB1079686号公報
【特許文献2】特開昭56−55425号公報
【特許文献3】WO 2004/111106 公報
【特許文献4】特開平6−145336号公報
【特許文献5】特公昭63−12896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、大型成形品用途に現在広く使用されているポリカーボネート樹脂、ABS樹脂をはじめとするスチレン系樹脂、およびそれらのアロイは、より良い未来社会の構築においても環境・石油資源保全という観点から問題を有している上に、該用途向け特性の上で何らかの問題を抱えている。ついては環境・資源保全について少しでも改良し、同時に大型成形品に適した特性を有する熱可塑性樹脂組成物を提供する目的でなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、表面硬度が高く、耐候変色性が少なく、また自消性であるなど、前記テレビキャビネットや自動車ダッシュボードなどの成形品においてに副次的に重要な特性を、植物由来のモノマーであるイソソルビドからなるカーボネート(共)重合体が有していることを見出し、この特性を利用しながら機械的強度、成形性、耐熱性のバランスを取ることが、ABS樹脂をはじめとするスチレン系樹脂とアロイ化することで本発明を完成するに至った。さらに、脂環式ジヒドロキシ化合物を共重合したカーボネート共重合体は、ガラス転移温度と耐衝撃性のバランスが良好で広範囲の配合においても良好な特性を有していることを見出したものである。
【0010】
すなわち、本発明の要旨は下記の[1]〜[5]に存する。
[1] (A)下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネートと、(B)スチレン系樹脂よりなる熱可塑性樹脂組成物において、その構成重量比率が90/10〜10/90の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【0011】
【化2】

【0012】
[2] 前記(A)ポリカーボネートのガラス転移温度が90℃以上であることを特徴とする[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3] 前記(A)ポリカーボネートが、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位をさらに含むことを特徴とする[1]又は[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4] 前記(A)ポリカーボネートが、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート共重合体であって、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の比率(モル%)が85:15〜65:35の範囲である[3]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5] 前記(B)スチレン系樹脂が、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、耐衝撃性ポリスチレン、及びアクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体からなる群より少なくとも1種類以上を選ばれることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的強度、衝撃強度、耐熱性、流動性、表面硬度、耐候変色性等に優れるイソソルビドからなるカーボネート(共)重合体とABS樹脂をはじめとするスチレン系樹脂からなる樹脂組成物であり、カーボネート(共)重合体は植物などのバイオマス資源由来のものであり、より良い未来社会の構築においても環境・石油資源保全という観点から環境・資源保全について少しでも改良が可能となる。また、自動車分野、OA機器分野及び電子電気機器分野等の各種工業用途に極めて有用であり、特に自動車分野の外装材用途、内装材用途、及び電子機器筐体のように比較的大型成形品が必要となる用途に最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。
【0015】
(A)ポリカーボネート
本発明のカーボネート重合体は、下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むことを特徴とするものであるが、当該ジヒドロキシ化合物の一部を他種類のジヒドロキシ化合物、例えば脂肪族、芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位、またはポリアルキレングリコールなどの共重合構成単位に置き換えた共重合体であってもよい。
【0016】
【化3】

【0017】
本発明において、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0018】
これらのジヒドロキシ化合物のうち、資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、光学特性、成形性の面から最も好ましい。
【0019】
なお、イソソルビドは酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生する。例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネートを製造すると、得られるポリカーボネートに着色が発生したり、物性を著しく劣化させる原因となる。また、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないこともある。また、蟻酸の発生を防止するような安定剤を添加してあるような場合、安定剤の種類によっては、得られるポリカーボネートに着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりする。安定剤としては還元剤や制酸剤が用いられ、このうち還元剤としては、ナトリウムボロハイドライド、リチウムボロハイドライドなどが挙げられ、制酸剤としては水酸化ナトリウム等のアルカリが挙げられるが、このようなアルカリ金属塩の添加は、アルカリ金属が重合触媒ともなるので、過剰に添加し過ぎると重合反応を制御できなくなることもある。
酸化分解物を含まないイソソルビドを得るために、必要に応じてイソソルビドを蒸留しても良い。また、イソソルビドの酸化や、分解を防止するために安定剤が配合されている場合も、必要に応じて、イソソルビドを蒸留しても良い。この場合、イソソルビドの蒸留は単蒸留であっても、連続蒸留であっても良く、特に限定されない。雰囲気はアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気にした後、減圧下で蒸留を実施する。
このようなイソソルビドの蒸留を行うことにより、本発明では蟻酸含有量が20ppm未満、更に10ppm以下、特に5ppm以下であるような高純度のイソソルビドを用いることが好ましい。
【0020】
一方、本発明に用いるに適した共重合構成単位のジヒドロキシ化合物としては、直鎖脂肪族、環式脂肪族、芳香族系ジヒドロキシ化合物のいずれでも良い。直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物として、例えば1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,6−(2−エチル)ヘキサンジオール、1,6−(2,2,4−トリメチル)ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、水素化ジリノレイルグリコール,水素化ジオレイルグリコールなどを挙げることができる。
【0021】
また、本発明に使用できる環式脂肪族(脂環式)ジヒドロキシ化合物としては、例えば1,2-シクロヘキ サンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジオールなどのヘキサンジオール類、1,2-シクロ ヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノールなどのノルボルナンジメタノール類、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール類などが挙げられる。これらのうち、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0022】
芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。
【0023】
また、共重合構成単位のポリアルキレングリコールとしては炭素数2〜4のアルコシル基を1分子あたり2〜40個含有するものが好ましく、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどを挙げることができる。
【0024】
これらの共重合構成単位であるヒドロキシ化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物あるいはポリアルキレングリコールを共重合成分として使用すると、ガラス転移温度の低下が激しく、自動車、電気電子部品としての用途に制約が生じ好ましくない。芳香族ジヒドロキシ化合物を共重合成分として使用すると、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と反応性が激しく異なり、透明性などが悪化する。一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物単独のポリカーボネート樹脂は、高分子量のものを得るのが困難である。一方、環式脂肪族(脂環式と表記することがある)ジヒドロキシ化合物を共重合成分として使用する場合は、以下に示すように一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物との反応性のバランスが良好であり、且つ高分子量化も比較的容易であり、ガラス転移温度の低下も直鎖脂肪族ジヒドロキシ化合物よりも程度が小さく、表面硬度、機械的強度も十分高いという点で望ましい。
【0025】
上記のように本発明において好ましいポリカーボネートである、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位とを共重合したポリカーボネートはいまだ報告されておらず、その詳細を以下に述べるが、他のジヒドロキシ化合物との共重合体についても基本的には類似であり、また上記特許文献などを参考に製造等も可能である。
【0026】
一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との含有割合については、任意の割合で選択できる。しかし、示差走査熱量測定(DSC)を行ったとき、単一のガラス転移温度を与えるが、本発明のカーボネート共重合体は、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物の種類や配合比を調整することで、そのガラス転移温度を、用途に応じて、45℃程度から155℃程度まで任意のガラス転移温度を持つ重合体として得ることができる。
【0027】
したがって、本発明の樹脂組成物向けには、ガラス転移温度を90℃以上にすることにより、耐熱性(使用可能温度)で80℃以上が確保できることから、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位との比率を適切に選択する必要がある。当該比率は100:0〜45:55(モル%)、特に95:5〜50:50(モル%)、さらには90:10〜65:35(モル%)であることが好ましい。上記範囲よりも一般式(1)で表わされるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多く脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少ないと着色しやすくなり、逆に一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が少なく脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位が多いと分子量が上がりにくく、またガラス転移温度が低下する傾向がある。
【0028】
また、本発明のポリカーボネートの重合度は、溶媒としてフェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンの重量比1:1の混合溶液を用い、ポリカーボネートの濃度を1.00g/dlに精密に調整し、温度30.0℃±0.1℃で測定した還元粘度(以下、単に「ポリカーボネートの還元粘度」と称す。)として、0.40dl/g以上、特に0.40dl/g以上で2.0dl/g以下であるような重合度であることが好ましい。このポリカーボネートの還元粘度が極端に低いものでは土木建築資材等に成形した時の機械的強度が弱い。また、ポリカーボネートの還元粘度が大きくなると、成形する際の流動性が低下し、サイクル特性を低下させ、成形品のひずみが大きくなり熱により変形し易い傾向がある。従って、本発明のポリカーボネートの還元粘度は0.40dl/g以上2.0dl/g以下、特に0.45dl/g以上1.5dl/g以下の範囲内であることが好ましい。
【0029】
本発明のポリカーボネートは、一般に用いられる重合方法で製造することができ、その重合方法は、ホスゲンを用いた溶液重合法、炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法のいずれの方法でも良いが、重合触媒の存在下に、ジヒドロキシ化合物を、より環境への毒性の低い炭酸ジエステルと反応させる溶融重合法が好ましい。
【0030】
この溶融重合法で用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(2)で表されるものが挙げられる。
【0031】
【化4】

【0032】
(一般式(2)において、A及びA’は、置換基を有していても良い炭素数1〜18の脂肪族基又は置換基を有していても良い芳香族基であり、A及びA’は同一であっても異なっていても良い。)
【0033】
上記一般式(2)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネートに代表される置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、特に好ましくはジフェニルカーボネート及び置換ジフェニルカーボネートが挙げられる。これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0034】
炭酸ジエステルは、ジヒドロキシ化合物に対して、0.96〜1.10のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは、0.98〜1.04のモル比率である。このモル比が0.96より小さくなると、製造されたポリカーボネートの末端OH基が増加して、ポリマーの熱安定性が悪化し、また、モル比が1.10より大きくなると、同一条件下ではエステル交換反応の速度が低下し、所望とする分子量のポリカーボネート共重合体の製造が困難となるばかりか、製造されたポリカーボネートの残存炭酸ジエステル量が増加し、この残存炭酸ジエステルが、成形時、または成形品の臭気の原因となり好ましくない。
【0035】
また、溶融重合における重合触媒(エステル交換触媒)としては、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物が使用される。アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と共に補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
【0036】
重合触媒として用いられるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられる。
【0037】
また、アルカリ土類金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられる。
【0038】
これらのアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物は1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0039】
またアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物と併用される塩基性ホウ素化合物の具体例としては、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
【0040】
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0041】
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0042】
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
【0043】
これらの塩基性化合物も1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0044】
上記重合触媒の使用量は、アルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いる場合、一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物と脂環式ジヒドロキシ化合物との合計1モルに対して、金属換算量として、通常、0.1〜100μモルの範囲内で用い、好ましくは0.5〜50μモルの範囲内であり、さらに好ましくは1〜25μモルの範囲内である。重合触媒の使用量が少なすぎると、所望の分子量のポリカーボネートを製造するのに必要な重合活性が得られず、一方、重合触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネートの色相が悪化し、副生成物が発生したりして流動性の低下やゲルの発生が多くなり、目標とする品質のポリカーボネートの製造が困難になる。
【0045】
このような本発明のポリカーボネートの製造に当たり、前記一般式(I)で表されるジヒドロキシ化合物などのジヒドロキシ化合物は、固体として供給しても良いし、加熱して溶融状態として供給しても良いし、水溶液として供給しても良い。これらの原料ジヒドロキシ化合物を溶融状態や、水溶液で供給すると、工業的に製造する際、計量や搬送がしやすいという利点がある。
【0046】
本発明において、一般式(I)で表されるジヒドロキシ化合物あるいは共重合成分を重合触媒の存在下で炭酸ジエステルと反応させる方法は、通常、2段階以上の多段工程で実施される。具体的には、第1段目の反応は140〜220℃、好ましくは150〜200℃の温度で0.1〜10時間、好ましくは0.5〜3時間実施される。第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げながら反応温度を上げていき、同時に発生するフェノールを反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力が200Pa以下で、210〜280℃の温度範囲のもとで重縮合反応を行う。
【0047】
この重縮合反応における減圧において、温度と反応系内の圧力のバランスを制御することが重要である。特に、温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合度が低下することがある。例えば、ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いる場合は、全ジヒドロキシ化合物に対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールがモノマーのまま留出しやすくなるので、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させ、最終的に200Pa以下の圧力で、200から250℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネートが得られるため、好ましい。
【0048】
また、全ジヒドロキシ化合物に対し、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%より少なくなった場合、特に、モル比が30モル%以下となった場合は、1,4−シクロヘキサンジメタノールのモル比が50モル%以上の場合と比べて、急激な粘度上昇が起こるので、例えば、反応系内の圧力が13kPa程度の減圧下までは、温度を1時間あたり40℃以下の昇温速度で上昇させながら反応させ、さらに、6.67kPa程度までの圧力下で、温度を1時間あたり40℃以上の昇温速度、好ましくは1時間あたり50℃以上の昇温速度で上昇させながら反応させ、最終的に200Pa以下の減圧下、220から290℃の温度で重縮合反応を行うと、十分に重合度が上昇したポリカーボネートが得られるため、好ましい。
【0049】
反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
【0050】
本発明のポリカーボネートを溶融重合法で製造する際に、着色を防止する目的で、リン酸化合物や亜リン酸化合物を重合時に添加することができる。
【0051】
リン酸化合物としては、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等のリン酸トリアルキルの1種又は2種以上が好適に用いられる。これらは、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。リン化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりする。
【0052】
亜リン酸化合物を添加する場合は、下記に示す熱安定剤を任意に選択して使用できる。特に、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトの1種又は2種以上が好適に使用できる。これらの亜リン酸化合物は、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下添加することが好ましい。亜リン酸化合物の添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
【0053】
リン酸化合物と亜リン酸化合物は併用して添加することができるが、その場合の添加量はリン酸化合物と亜リン酸化合物の総量で、先に記載した、全ヒドロキシ化合物成分に対して、0.0001モル%以上0.005モル%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0003モル%以上0.003モル%以下である。この添加量が上記下限より少ないと、着色防止効果が小さく、上記上限より多いと、ヘイズが高くなる原因となったり、逆に着色を促進させたり、耐熱性を低下させたりすることもある。
【0054】
また、このようにして製造された本発明のポリカーボネートには、成形時等における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。
【0055】
かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。 これらの熱安定剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。
【0056】
かかる熱安定剤は、溶融重合時に添加した添加量に加えて更に追加で配合することができる。即ち、適当量の亜リン酸化合物やリン酸化合物を配合して、ポリカーボネートを得た後に、後に記載する配合方法で、さらに亜リン酸化合物を配合すると、重合時のヘイズの上昇、着色、及び耐熱性の低下を回避して、さらに多くの熱安定剤を配合でき、色相の悪化の防止が可能となる。
【0057】
これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.0001〜1重量部が好ましく、0.0005〜0.5重量部がより好ましく、0.001〜0.2重量部が更に好ましい。
【0058】
また、本発明のポリカーボネートには、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することもできる。
【0059】
かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0060】
これら酸化防止剤の配合量は、ポリカーボネートを100重量部とした場合、0.0001〜0.5重量部が好ましい。
【0061】
(B)スチレン系樹脂
本発明の熱可塑性樹脂組成物に用いるスチレン系樹脂(B成分)とは、スチレン系単量体と必要に応じてこれらと共重合可能な他のビニル単量体およびゴム質重合体より選ばれる1種以上を重合して得られる重合体である。
【0062】
前記スチレン系樹脂成分に用いられるスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、フルオロスチレン、トリブロムスチレン等のスチレン誘導体が挙げられ、特にスチレンが好ましい。さらにこれらは単独または2種以上用いることができる。
【0063】
前記スチレン系単量体と共重合可能な他のビニル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート等のアクリル酸のアリールエステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、アミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート等のアクリル酸のアルキルエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート等のメタクリル酸アリールエステル、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有メタクリル酸エステル、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド系単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、イタコン酸等のα,β−不飽和カルボン酸及びその無水物があげられる。
【0064】
前記スチレン系単量体と共重合可能なゴム質重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン・ブタジエンのランダム共重合体およびブロック共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステル及びブタジエンの共重合体、ブタジエン・イソプレン共重合体等のジエン系共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体およびブロック共重合体、エチレン・ブテンのランダム共重合体およびブロック共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体、エチレン・メタクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体等のエチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のエチレンと脂肪族ビニルとの共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキサジエン共重合体等のエチレンとプロピレンと非共役ジエンとのターポリマー、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴム、及びポリオルガノシロキサンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とが分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴム(以下IPN型ゴム)等が挙げられる。
【0065】
かかるスチレン系樹脂としては、例えばポリスチレン、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、水添スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(水添SBS)、水添スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SEPS)、衝撃性ポリスチレン(HIPS)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(MBS樹脂)、メチルメタクリレート・アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(MABS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(AES樹脂)及びスチレン・IPN型ゴム共重合体等の樹脂、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0066】
尚、かかるスチレン系熱可塑性樹脂はその製造時にメタロセン触媒等の触媒使用により、シンジオタクチックポリスチレン等の高い立体規則性を有するものであってもよい。更に場合によっては、アニオンリビング重合、ラジカルリビング重合等の方法により得られる、分子量分布の狭い重合体及び共重合体、ブロック共重合体、及び立体規則性の高い重合体、共重合体を使用することも可能である。これらは1種または2種以上を混合して使用することも可能である。
【0067】
これらの中でもポリスチレン(以下、「PS」と略する。)、耐衝撃性ポリスチレン(以下、「HIPS樹脂」と略する。)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(以下、「AS樹脂」と略する。)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(以下、「ABS樹脂」と略する。)、アクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体(以下、「ASA樹脂」または「AAS樹脂」と略する。)、アクリロニトリル・エチレンプロピレン系ゴム・スチレン共重合体(以下、「AES樹脂」と略する。)、及びメチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン共重合体(以下、「MBS樹脂」と略する。)からなる群より選択される1種または2種以上を混合して使用することが好ましく、なかでもABS樹脂、ASA樹脂、AES樹脂が好ましい。更にこれらの中でも総合的なバランスでABS樹脂が好ましく、ASA樹脂は溶融時の熱安定性や耐薬品性に優れる特性を有する。また、配合量が少なければ、コスト面からHIPS樹脂が好ましい。本発明の樹脂組成物は、ポリカーボネート単独での欠点を十分に補える点で大型成形品向けにより好適な樹脂である。
【0068】
本発明で使用するABS樹脂とは、ジエン系ゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体とシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体の混合物である。このABS樹脂を形成するジエン系ゴム成分としては、例えばポリブタジエン、ポリイソプレン及びスチレン−ブタジエン共重合体等のガラス転移点が10℃以下のゴムが用いられ、その割合はABS樹脂成分100重量%中5〜80重量%であるのが好ましく、特に好ましくは10〜50重量%である。ジエン系ゴム成分にグラフトされるシアン化ビニル化合物としては、前記記載のものをあげることができ、特にアクリロニトリルが好ましく使用できる。またジエン系ゴム成分にグラフトされる芳香族ビニル化合物としては、同様に前記記載のものを使用できるが、特にスチレン及びα−メチルスチレンが好ましく使用できる。かかるジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の割合は、ABS樹脂成分100重量%中95〜20重量%が好ましく、特に好ましくは50〜90重量%である。更にかかるシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%であることが好ましい。更に上記のジエン系ゴム成分にグラフトされる成分の一部についてメチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、無水マレイン酸、N置換マレイミド等を混合使用することもでき、これらの含有割合はABS樹脂成分中15重量%以下であるものが好ましい。更に反応で使用する開始剤、連載移動剤、乳化剤等は必要に応じて、従来公知の各種のものが使用可能である。
【0069】
本発明で使用するASA樹脂とは、アクリルゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体、または該熱可塑性グラフト共重合体と、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体との混合物をいう。本発明でいうアクリルゴムとは、炭素数が2〜10のアルキルアクリレート単位を含有するものであり、更に必要に応じてその他の共重合可能な成分として、スチレン、メチルメタクリレート、ブタジエンを含有してもよい。炭素数が2〜10のアルキルアクリレートとして好ましくは2−エチルヘキシルアクリレート、n−ブチルアクリレートが挙げられ、かかるアルキルアクリレートはアクリレートゴム100重量%中50重量%以上含まれるものが好ましい。更にかかるアクリレートゴムは少なくとも部分的に架橋されており、かかる架橋剤としては、エチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、アリルメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート等を挙げることができ、かかる架橋剤はアクリレートゴムに対して0.01〜3重量%使用されることが好ましい。またシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物の割合はかかる合計量100重量%に対して、シアン化ビニル化合物が5〜50重量%、芳香族ビニル化合物が95〜50重量%であり、特にシアン化ビニル化合物が15〜35重量%、芳香族ビニル化合物が85〜65重量%のものが好ましい。
【0070】
本発明で使用するAES樹脂とは、エチレン−プロピレンゴム成分またはエチレン−プロピレン−ジエンゴム成分にシアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物をグラフト重合した熱可塑性グラフト共重合体、または該熱可塑性グラフト共重合体と、シアン化ビニル化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体との混合物である。
【0071】
なお、本発明のABS、ASA、AES樹脂においては、ゴム粒子径は0.1〜5.0μmが好ましく、より好ましくは0.2〜3.0μmである。かかるゴム粒子径の分布は単一の分布であるもの及び2山以上の複数の山を有するもののいずれもが使用可能であり、更にそのモルフォロジーにおいてもゴム粒子が単一の相をなすものであっても、ゴム粒子の周りにオクルード相を含有することによりサラミ構造を有するものであってもよいが、好ましくは単一相をなすゴム粒子の割合が多いものである。
【0072】
またABS、ASA、AES樹脂がジエン系ゴム成分にグラフトされないシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物を含有することは従来からよく知られているところであり、本発明のABS、ASA、AES樹脂においてもかかる重合の際に発生するフリーの重合体成分を含有するものであってもよい。かかるフリーのシアン化ビニル化合物及び芳香族ビニル化合物からなる共重合体の分子量は、GPC測定により算出された重量平均分子量(Mw)で10,000〜500,000、好ましくは50,000〜200,000であるものである。なお、ここで示す重量平均分子量は、標準ポリスチレン樹脂による較正曲線を使用したGPC測定により算出されたものである。
【0073】
本発明におけるABS、ASA、AES樹脂は塊状重合、懸濁重合、乳化重合のいずれの方法で製造されたものでもよく、また共重合の方法も一段で共重合しても、多段で共重合してもよい。また、かかる製造法により得られたABS樹脂に芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル成分とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体をブレンドしたものも好ましく使用できる。かかる芳香族ビニル化合物とシアン化ビニル成分とを別途共重合して得られるビニル化合物重合体の重量平均分子量(Mw)は10,000〜500,000であり、好ましくは50,000〜200,000であるものである。
【0074】
本発明にて使用するHIPS樹脂とは、ゴム質重合体をポリスチレン中に混合したものである。混合方法としては、単純な機械的ブレンド方法でもかまわないが、良好な相溶性を得るためには、ゴム質重合体の存在下にスチレン系単量体等をグラフト共重合させる、いわゆるグラフト共重合処方によって得られたものがいっそう好ましい。また、該方法で得られたゴム変性ポリスチレン樹脂(グラフト重合体)に、別途方法によって得られるポリスチレンを混合する、いわゆるグラフト−ブレンド法によって得られたものを用いることも望ましい。重合方法としては、乳化重合、溶液重合、懸濁重合等が適用できる。
【0075】
前記ゴム質重合体として、具体的には、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の共役ジエン系ゴム、エチレン−プロピレン系共重合体等の非共役ジエン系ゴムが挙げられるが、なかでもポリブタジエンが好ましい。
【0076】
前記スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ブロモスチレン等があるが、これらのなかでもスチレン及び/又はα−メチルスチレンを用いることが最適である。スチレン系単量体以外の単量体としては、アクリロニトリル、メチルメタクリレート等のビニル単量体が挙げられる。
【0077】
HIPS樹脂中のゴム含有率としては、1〜40重量%が望ましく、さらに好ましくは3〜30重量%である。また、スチレン系単量体以外の単量体成分を含む場合であっても、HIPS樹脂中のゴム及びスチレン系単量体成分含有率としては、90重量%以上が望ましく、さらに好ましくは95重量%以上である。
【0078】
HIPS樹脂の分子量を反映するMFRとしては200℃、荷重5kgで0.5〜15g/10分が好ましく、さらに好ましくは1.0〜10g/10分である。
【0079】
本発明で使用する水添スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(以下、「水添SBS」という)、水添スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(以下、「水添SEBS」という)及び水添スチレン・イソプレン・スチレン(以下、「SEPS」という)に代表される水添ブロック共重合体としては、スチレン系単量体の重合体からなるブロックと、ポリブタジエン及びポリイソプレン等の共役ジエン単量体の重合体からなるブロックとからなるブロック共重合体の不飽和結合を水添(水素化)して得られるものが挙げられる。尚、ブロックコポリマーの形態としては、ジブロック、トリブロック、多ブロックのいずれの形態を取ることも可能である。更にブロックの形状としては、線状、放射状、分岐状等のいずれの形態も基本的には取り得るが、線状であるものがより好ましい。
【0080】
ここでスチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレンを挙げることができ、特にスチレン系単量体の80重量%以上がスチレンであるものが好ましい。共役ジエン単量体成分としては、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン等を挙げることができ、特にブタジエン及びイソプレンが好ましく、更に両者の共重合体も使用できる。更に本発明で使用することができる水添ブロック共重合体は、共役ジエン単量体の重合体ブロックにおける炭素−炭素不飽和結合の50%以上、より好ましくは80%以上水添されたものである。
【0081】
かかる水素添加する前のブロック共重合体については、ブチルリチウム、スチリルリチウムなどのアルキルリチウムを触媒として、共役ジエン及びスチレンの単量体をそれぞれ順次重合する方法、あるいは単量体ごとに別々に重合反応を行い、得られた重合体を2官能性カップリング剤などで結合する方法等により得ることができる。
【0082】
更に得られたブロック重合体を水素添加する方法としては、ニッケル、パラジウム、白金、ルテニウム等の金属をカーボン、アルミナまたは珪藻土等の微小表面積を有する材料に担持させたもの、ラネーニッケル、漆原ニッケル等の不均一系触媒、または遷移金属化合物と、アルミニウム、アルカリ土類金属、アルカリ金属等のアルキル化物との組み合わせによるチーグラー触媒等の均一系触媒を用い、20〜200℃の条件下、1〜200kgf/cm2の水素ガスと0.1〜100時間接触させる方法を挙げることができる。
【0083】
本発明の水添ブロック共重合体中におけるスチレン系重合体ブロックの量は10〜50重量%であり、特に15〜35重量%であるものが好ましい。またかかるスチレン系重合体ブロックの分子量は数平均分子量で4,000〜80,000のものであり、好ましくは8,000〜60,000である。また水添ブロック共重合体の分子量は数平均分子量で30,000〜500,000の範囲である。
【0084】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の(A)ポリカーボネートと(B)スチレン系樹脂の構成比率(重量)は90/10〜10/90の範囲であり、好ましくは85/15〜20/80であり、さらに好ましくは85/15〜40/60である。成分(A)の含有量が10%より少ないと、本発明の重要な目標である資源・環境保全に対する効果が少ない。また成分(A)の含有量が90%より多いと流動性の改善効果が十分でない。
【0085】
本発明のポリカーボネートは芳香族基を含有していなくてもスチレン系重合体との相溶性は良好で、ピーリングや真珠光沢等の相溶性不良を連想するような欠陥の発生はほとんど認められないが、更に改善するためには、相溶化剤を配合してもよく、例えば相溶化剤として、エポキシ化合物、エポキシ変性スチレン系エラストマーやスチレン−無水マレイン酸共重合体を挙げることができる。
【0086】
エポキシ化合物は、単官能性、二官能性、三官能性または多官能性の何れでも、また、これらの2種類以上の混合物でもよい。特に、二官能性、三官能性、多官能性のエポキシ化合物、すなわち、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する化合物が好ましい。また、エポキシ化合物は、アルコール、フェノール系化合物またはカルボン酸とエピクロロヒドリンとの反応から得られるグリシジル化合物、脂環式エポキシ化合物などの何れでもよい。
【0087】
エポキシ化合物の具体例としては、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ブチルフェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル;安息香酸グリシジルエステル、ソルビン酸グリシジルエステル等の脂肪酸グリシジルエステル;アジピン酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、オルトフタル酸ジグリシジルエステル等のジグリシジルエステル;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等の脂環式ジエポキシ化合物、N−グリシジルフタルイミド等のグリシジルイミド化合物などが挙げられる。中でも、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応から得られるグリシジルエーテル化合物、特にビスフェノールAジグリシジルエーテルが好ましい。特に、エポキシ当量100〜200g/eq当量のビスフェノールAグリシジルエーテルが好ましい。
【0088】
エポキシ化合物の配合量は、成分(A)100重量部に対して、0.1〜3重量部であり、好ましくは0.15〜2重量部である。0.1重量部より少ないと、相溶性の改善効果が認められず、3重量部より多いと、溶融成形時の流動性が低下する。
【0089】
エポキシ変性スチレン系エラストマーとは、前記水添スチレン系ブロック共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートをグラフト共重合したもので、例えばエポキシ変性スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(ESBS)がダイセル化学工業社より商品名エホ゜フレント゛A1010として販売されているものを利用可能である。
【0090】
スチレン−無水マレイン酸共重合体としては、重量平均分子量15万〜40万で、無水マレイン酸の含有率は、通常1〜40重量%、好ましくは2〜30重量%、更に好ましくは3〜20重量%である。これらの共重合の形態は、通常のコポリマーのほか、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーであってもよい。このような共重合体の一例として、ノバ・ケミカル・ジャパン社から販売されている商品名ダイラークが挙げられる。
【0091】
また本発明の熱可塑性樹脂には、溶融成形時の金型からの離型性をより向上させるために、本発明の目的を損なわない範囲で離型剤を配合する事ことも可能である。かかる離型剤としては、オレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、パラフィンワックス等が挙げられる。かかる離型剤の配合量は、A成分のポリカーボネート100重量部に対し、0.01〜2重量部が好ましい。
【0092】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、光安定剤を配合することができる。かかる化合物としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。かかる安定剤の配合量は、A成分であるカーボネート(共)重合体100重量部に対して0.01〜2重量部が好ましい。
【0093】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、帯電防止剤を配合することができる。かかる帯電防止剤としては、例えばポリエーテルエステルアミド、グリセリンモノステアレート、ドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩、無水マレイン酸モノグリセライド、無水マレイン酸ジグリセライド等が挙げられる。
【0094】
本発明に使用する熱可塑性樹脂組成物は、上記成分を同時に、または任意の順序でタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機等の混合機により混合して製造することができる。更に、本発明の目的を損なわない範囲で、樹脂組成物に通常用いられる核剤、難燃剤、無機充填剤、衝撃改良剤、発泡剤、染顔料等が含まれても差し支えない。
【0095】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、難燃剤等を配合してもよい。添加する難燃剤としては、臭素系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、および赤リン系難燃剤が挙げられる。
【0096】
まず、臭素系難燃剤としては、臭素化ビスフェノール、臭素化ポリスチレン、臭素化ビスフェノールAのカーボネートオリゴマー、臭素化ビスフェノールAとビスフェノールAとのコポリマー及び共重合オリゴマーに代表されるハロゲン系難燃剤が挙げられ、さらにリン酸エステル系難燃剤の中でも、モノホスフェート化合物としてはトリフェニルホスフェート、縮合リン酸エステルとしてはレゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)が、難燃性が良好でありかつ成形時の流動性が良好である等の理由により好ましく使用できる。
【0097】
また、使用する赤リン系難燃剤は、一般の赤リンの他に、赤リン表面を熱硬化樹脂及び/または無機材料を用いてマイクロカプセル化されている赤リンを使用することができる。更に、かかるマイクロカプセル化されている赤リンの使用は、安全性、作業性を良好とするためマスターペレット化したものが好ましく使用される。かかるマイクロカプセル化に使用される無機材料としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化チタン、水酸化スズ、水酸化セリウム等があげられ、熱硬化樹脂としてはフェノール・ホルマリン系、尿素・ホルマリン系、メラミン・ホルマリン系樹脂等が挙げられる。更にかかる無機材料で被覆されたものの上に、熱硬化性樹脂を用いた被覆を形成し、二重に被覆処理した赤リン等も好ましく使用できる。また、使用する赤リンは無電解メッキしたものも使用可能であり、無電解メッキ被膜としては、ニッケル、コバルト、銅、鉄、マンガン、亜鉛またはこれらの合金から選ばれた金属メッキ被膜を使用することができる。更に無電界メッキされた赤リンに更に上記に記載の無機材料及び熱硬化性樹脂で被覆された赤リンを使用することもできる。かかる無機材料、熱硬化性樹脂及び無電界メッキ等のマイクロカプセル化に使用する成分の量としては赤リン系難燃剤100重量%中20重量%以下であることが望ましく、より好ましくは5〜15重量%である。20重量%を越えると、ホスフィンの抑制、安全性の確保等の効果よりも難燃性の低下、機械的特性の低下等の悪影響が大きくなるため好ましくない。赤リン系難燃剤の平均粒径としては、1〜100μm、好ましくは1〜40μmが使用される。かかるマイクロカプセル化した赤リン系難燃剤の市販品としては、ノーバエクセル140、ノーバエクセルF−5(燐化学工業(株)製:商品名)、ヒシガードTP−10(日本化学工業(株)製:商品名)、ホスタフラムRP614(クラリアント・ジャパン(株)製:商品名)等が挙げられる。更にかかるマイクロカプセル化した赤リンを更に熱可塑性樹脂でマスターペレット化した赤リン系難燃剤を使用することは、良好な難燃性、機械的特性を達成し、製造時の安全性も高められるため好ましく使用できる。本発明においては、芳香族ポリカーボネート樹脂を主とする熱可塑性樹脂でマスターペレット化されたものをより好ましく使用することができる。
【0098】
また難燃助剤として、例えば三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム等、ドリップ防止剤として例えばフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン等の添加剤を添加可能である。
【0099】
本発明において使用される無機充填剤としては繊維状、板状、粒状物などの一般的に樹脂組成物において使用されるものであり、またこれらの混合物が挙げられる。具体的にはガラス繊維、玄武岩繊維、セラミックスウイスカー、ワラストナイト、カーボン繊維等の繊維状物;ガラスフレーク、マイカ、タルクなどの板状物;シリカ、アルミナ、ガラスビーズ、カーボンブラック、炭酸カルシュウム等の粒状物など周知のものが挙げられる。これらの選定の基準は製品の必要とされる特性によるが、機械的強度や剛性については繊維状物、特にガラス繊維が選定され、成形品の異方性および反りの低減が重要な際は板状物、特にマイカが選ばれる。また、粒状物は成型時の流動性も加味された全体的なバランスのもとで最適なものが選ばれる。
【0100】
ガラス繊維は、一般に樹脂強化用に使用されるものならば特に限定されない。例えば、長繊維タイプ(ロービング)や短繊維タイプ(チョップドストランド)などから選択して用いることができ、繊維断面は円形でも、異形断面でもかまわず、また繊維径(異形断面は、その断面積を円で換算したときの直径で表す)のは6〜25μm が一般的である。また、ガラス繊維は集束剤(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル等)、カップリング剤(例えば、シラン化合物、ボロン化合物等)、その他の表面処理剤等で処理されていてもよい。
【0101】
上記(C)無機充填材の配合量は、(A) ポリカーボネートと(B)スチレン系樹脂の合計量100重量部に対して0〜100重量部であり、好ましくは0.01〜80重量部である。100重量部より多いと、機械的性質が低下するが、無機充填剤の配合量は、機械的強度の改善が目標となる場合は、5重量部以上が好ましく選定される。
【0102】
その他衝撃改質剤として、例えばアクリル−ブタジエン系衝撃改質剤、ポリオルガノシロキサン成分とポリ(メタ)アルキルアクリレート成分と分離できないように相互に絡み合った構造を有している複合ゴムに、アルキル(メタ)アクリレート及び任意に共重合可能なビニル重合体がグラフトした重合体を挙げることができる。前者の具体例としては呉羽化学(株)製HIA15(商品名)、後者の具体例としては三菱レイヨン(株)製メタブレンS2001(商品名)を挙げることができる。尚、かかる衝撃改質剤には通常単量体成分が基体ゴム成分に共重合されることなく重合した成分が混在するが、かかる成分の分子量は通常標準ポリスチレン換算のGPC測定で算出される重量平均分子量において50,000〜500,000のものである。
【0103】
本発明で得られた熱可塑性樹脂組成物は、通常の射出成形、押出成形、吹込成形、圧縮成形など既知の成形法に適用することが可能であり、特に大型成形品を得るためには射出成形法に適したものである。射出成形の樹脂温度としては230〜270℃、さらには大型成形品に際しては、射出成形機内で滞留時間が長くなるので、スチレン系樹脂の熱安定性に配慮する必要があり、好ましくは235〜260℃である。
【実施例】
【0104】
以下実施例を挙げ、本発明を詳述するが、本発明は実施例に限定されるものではない。以下において、ポリカーボネートの物性ないし特性の評価は次の方法により行った。 (1)還元粘度
ウベローデ型粘度計を用い、溶媒としてフェノールと1,1,2,2,−テトラクロロエタンの重量比1:1の混合溶液を用い、濃度を1.00g/dlに精密に調整し、温度30.0℃±0.1℃で測定した。この数値が高いほど分子量が大きい。
【0105】
(2)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(メトラー社製「DSC822」)に試料約10mgを用いて、10℃/minの昇温速度で加熱して測定し、JIS K 7121(1987)に準拠して、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた折線との交点の温度である、補外ガラス転移開始温度Tgを求めた。
【0106】
なお、以下の(3)〜(5)の評価項目とその方法により、本発明における樹脂組成物の評価をおこなった。
(3)流動性:6mm径半円の流路のアルキメデス型スパイラル長を射出成形機(東芝機械社製IS150)によりシリンダー温度250℃、金型温度40℃、射出圧力98.1MPaで測定した。30cm以上が大型成形品用に一応の目安である。
【0107】
(4)熱変形温度:射出成形機(住友重機械(株)製:型式SG−75 MIII)にて、シリンダー温度250℃、金型温度80℃にて得たISO試験片を用いて熱変形温度をISO 75に準じて測定した。荷重は0.45MPaで測定した。自動車、電気電子、OA用途における大型成形品用途には80℃以上が目標である。
【0108】
(5)耐衝撃強度 、ウエルド強度比率
カスタム・サイエンティフィック(Custom Scientific)社製ミニマックス射出成形機「CS−183MMX」を用いて、温度240〜300℃で、長さ31.5mm、幅6.2mm、厚さ3.2mmの棒状試験片を射出成形にて得た。
本棒状試験片に深さ1.2mmのノッチをノッチングマシンで付け、アイゾット衝撃強度測定用試験片とした。 この衝撃強度用試験片について、カスタム・サイエンティフィック社製ミニマックスアイゾット衝撃試験機「CS−183TI型」を用いて、23℃におけるノッチ付きのアイゾット衝撃強度を測定した。自動車、電気電子、OA用途における大型成形品用途には100J/m以上が目標である。
【0109】
一方、前記棒状試験片形状の両端にゲートを設置したウエルド強度測定用試験片(ウエルドが試験片の真ん中に生じる)を上記条件と同様に射出成形して得た。前記棒状試験片とウエルド強度測定用試験片に対して、10mm/minの引張スピードで引張試験を行ない、引張強度を測定し、ウエルドの有と無の引張強度比率(ウエルド強度比率という)を測定した。ウエルド強度比率が80%以上あれば実用上十分な強度があると判断される。
なお、実施例で使用した(B)スチレン系樹脂は以下のものである。
・ABS樹脂:テクノポリマー社製 商品名テクノABS130
(220℃,10kgのMVRが18g/10分)
・HIPS樹脂:PSジャパン社製 商品名PSJポリスチレンHT60
(200℃,5kgのMVRが6.2g/10分)
・ASA樹脂:テクノポリマー社製 商品名テクノASA
また、下記の製造例1〜5で用いたイソソルビドの蟻酸含有量は5ppmであった。蟻酸の定量の方法は、以下のような方法によって定量した。
【0110】
(6)蟻酸の定量
イソソルビド約0.5gを50mlメスフラスコに採取して純水で定容した。溶液中のギ酸濃度をイオンクロマトグラフで測定した。イオンクロマトグラフでの測定は、上記溶液を100μlサンプルループに注入し、標準試料とリテンションタイムの一致するピークをギ酸として、ピーク面積から絶対検量線法で定量した。なお、標準試料にはギ酸ナトリウム水溶液を用いた。
イオンクロマトグラフは、Dionex社製のDX−500型を用い、検出器には電気伝導度検出器を用いた。測定カラムとして、ガードカラムにAG-15、分離カラムにAS-15を用い、溶離液濃度は10mM-NaOHとした。流速は1.2ml/minで、恒温槽温度は、35℃とした。
サプレッサーには、メンブランサプレッサーを用い、再生液には25mM-H2SO4を用いた。
【0111】
[製造例1]
(A)ポリカーボネートの製造
イソソルビド(ロケットフルーレ社製)27.7重量部(0.516モル)に対して、1,4−シクロヘキサンジメタノール(イーストマン社製、以下「1,4−CHDM」と略記する。)13.0重量部(0.221モル)、ジフェニルカーボネート(三菱化学社製、以下「DPC」と略記する。)59.2重量部(0.752モル)、および触媒として、炭酸セシウム(和光純薬社製)2.21×10−4重量部(1.84×10−6モル)を反応容器に投入し、窒素雰囲気下にて、反応の第1段目の工程として、加熱槽温度を150℃に加熱し、必要に応じて攪拌しながら、原料を溶解させた(約15分)。
次いで、圧力を常圧から13.3kPaにし、加熱槽温度を190℃まで1時間で上昇させながら、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。
【0112】
反応容器全体を190℃で15分保持した後、第2段目の工程として、反応容器内の圧力を6.67kPaとし、加熱槽温度を230℃まで、15分で上昇させ、発生するフェノールを反応容器外へ抜き出した。攪拌機の攪拌トルクが上昇してくるので、8分で250℃まで昇温し、さらに発生するフェノールを取り除くため、反応容器内の圧力を0.200kPa以下に到達させた。所定の攪拌トルクに到達後、反応を終了し、生成した反応物を水中に押し出して、ポリカーボネートのペレットを得た。 得られたポリカーボネートの特性(還元粘度、ガラス転移温度)について、それぞれ上記(1)、(2)の方法に従って測定し、結果を表1に示す。本製造例で得られたポリカーボネートを「ISOB−PC1」とした。
【0113】
[製造例2]
製造例1において、イソソルビド19.7重量部(0.363モル)、1,4−CHDM21.6重量部(0.404モル)、DPC58.8重量部(0.741モル)、触媒として、炭酸セシウム2.19×10−4重量部(1.82×10−6モル)に変更した以外は、同様に実施した。このポリカーボネートの物性測定により得られた結果を表1に示す。本製造例で得られたポリカーボネートを「ISOB−PC2」とした。
【0114】
[製造例3]
製造例1において、イソソルビド15.7重量部(0.288モル)に対して、1,4−CHDM25.8重量部(0.480モル)、DPC58.6重量部(0.734モル)、及び触媒として、炭酸セシウム2.18×10−4重量部(1.80×10−6モル)に変更した以外は、同様に実施した。このポリカーボネートの物性測定により得られた結果を表1に示す。本製造例で得られたポリカーボネートを「ISOB−PC3」とした。
【0115】
[製造例4]
製造例1において、イソソルビド35.9重量部(0.674モル)、1,4−CHDM4.4重量部(0.083モル)、DPC59.7重量部(0.764モル)、触媒として、炭酸セシウム2.22×10−4重量部(1.87×10−6モル)に変更した以外は、同様に実施した。得られた結果を表1に示す。このポリカーボネートの物性測定により得られた結果を表1に示す。本製造例で得られたポリカーボネートを「ISOB−PC4」とした。
【0116】
[製造例5]
製造例1において、イソソルビド40.1重量部(0.581モル)に対して、DPC59.9重量部(0.592モル、触媒として、炭酸セシウム2.23×10−4重量部(1.45×10−6モル)をに変更した以外は、同様に実施した。このポリカーボネートの物性測定により得られた結果を表1に示す。本製造例で得られたポリカーボネートを「ISOB−PC5」とした。
【0117】
[実施例1〜8]
実施例および比較例の樹脂組成物を次のようにして得た。
二軸押出機(日本製鋼所製、TEX30XCT、L/D=42、バレル数12)を用いて、シリンダー温度260℃、スクリュー回転数400rpmの条件にて、表2に示す割合にて成分(A)ポリカーボネートおよび(B)スチレン系樹脂をタンブラーミキサーにて均一に混合した後、バレル1よりフィードし溶融混合させて組成物を作成した。得られた組成物に対して前記の評価を行った。なお評価用の試験片はいずれも真珠光沢などの色むらもなく、良好な白色不透明な外観であった。得られた熱可塑性樹脂について、上記(3)〜(5)の評価試験をおこなった。結果を表2に示す。
【0118】
[比較例1〜8]
上記実施例1において、表3に示す割合にて成分(A)ポリカーボネート単独、又は(B)スチレン系樹脂単独で用いた以外、同様に熱可塑性樹脂を製造した。得られた組成物に対して前記の評価を行った。なお評価用の試験片はいずれも真珠光沢などの色むらもなく、良好な白色不透明な外観であった。得られた熱可塑性樹脂について、上記(3)〜(5)の評価試験をおこなった。結果を表3に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
1)比較例6〜8に示すように、スチレン系樹脂単独は、特にHIPSは耐熱性、衝撃強度に一部問題な特性を有しているものの、流動性が良好で、大型成形品用樹脂として好適である。
2)また、比較例1〜5に示すように、イソソルビドを含むポリカーボネートは、流動性がいずれも目標に達成せず、一部には衝撃強度において著しく悪いものもある。
3)一方、実施例1〜8に示すように、本発明の範囲のイソソルビドを含むポリカーボネートとスチレン系樹脂のアロイは、流動性、耐熱性、衝撃強度、ウエルド強度比率のいずれも目標に達成しており、大型成形品にも好適な材料であり、同時に植物由来のイソソルビドを含有しているので、資源、環境保全に配慮した樹脂組成物である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、機械的強度、衝撃強度、耐熱性、流動性、表面硬度、耐候変色性等に優れる樹脂組成物であり、イソソルビドを含むポリカーボネートは植物などのバイオマス資源由来のものであり、より良い未来社会の構築においても環境・石油資源保全という観点から環境・資源保全について少しでも改良が可能となった。また、自動車分野、OA機器分野及び電子電気機器分野等の各種工業用途に極めて有用であり、特に自動車分野の外装材用途、内装材用途、及び電子機器筐体のように比較的大型成形品が必要となる用途に最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネートと、(B)スチレン系樹脂よりなる熱可塑性樹脂組成物において、その構成重量比率が90/10〜10/90の範囲であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【化1】

【請求項2】
前記(A)ポリカーボネートのガラス転移温度が90℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ポリカーボネートが、脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)ポリカーボネートが、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位を含むポリカーボネート共重合体であって、上記一般式(1)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構成単位と脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構成単位の比率(モル%)が85:15〜65:35の範囲である請求項3に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)スチレン系樹脂が、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、耐衝撃性ポリスチレン、及びアクリロニトリル・スチレン・アクリルゴム共重合体からなる群より少なくとも1種類以上を選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。

【公開番号】特開2009−144016(P2009−144016A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321403(P2007−321403)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】