説明

熱可塑性重合体組成物および成形品

【課題】制電性、耐磨耗性および表面外観性に優れた成形品を得ることが出来る熱可塑性重合体組成物を提供する。
【解決手段】オレフィン系樹脂(A)0〜85質量%と、オレフィン重合体ブロック及び親水基を有する重合体ブロックを含むブロック共重合体(B)5〜80質量%と、芳香族ビニル化合物から主として成る重合体ブロックと共役ジエン化合物から主として成る重合体ブロックとを含有するブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれた少なくとも1種のエラストマー(C)10〜95質量%(但し、上記の成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計は100質量%である)を含有する熱可塑性重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性重合体組成物および成形品に関する。
【0002】
ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂は、耐薬品性、耐熱性、流動性などに優れるため、電気・電子分野、OA・家電分野、車両分野、サニタリー分野などに広く使用されている。
【0003】
しかしながら、帯電し易い欠点を有していることから、静電気障害の問題が発生する液晶を使用した表示装置、半導体周辺、プラズマディスプレイ、クリーンルーム内などで使用される各種パーツ、シート、フィルム等に使用することは困難である。
【0004】
ポリオレフィン系樹脂の制電性を改良する方法として、特定の帯電防止剤を配合する方法が提案されている(特許文献1及び2)。しかしながら、この方法では制電性が充分でない等の問題がある。また、制電性の持続性を有する方法として、特定の重合体をポリオレフィン系樹脂に配合する方法が提案されている(特許文献3)。しかしながら、この方法によっても制電性は充分に発現されない。
【0005】
更に、ポリオレフィン系樹脂発泡シートの最外層に制電化されたポリオレフィン系樹脂層を有するポリオレフィン系樹脂積層発泡体が提案されている(特許文献4)。すなわち、発泡体の表面抵抗率が1×1013(Ω/□)以下、好ましくは1×1012(Ω/□)以下、更に好ましくは1×1011(Ω/□)以下となるように最外層のポリオレフィン系樹脂にポリマータイプの帯電防止剤が配合されている。そして、表面抵抗率の限界は、概ね1×10(Ω/□)とされているが、実際には4×1010(Ω/□)以上と高く、制電性は十分ではない。
【0006】
【特許文献1】特開平4―258647号公報
【特許文献2】特開2000―313875号公報
【特許文献3】特開2001―278985号公報
【特許文献4】特許第3616617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、制電性、耐磨耗性および表面外観性に優れた成形品を得ることが出来る熱可塑性重合体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の第1の要旨は、オレフィン系樹脂(A)0〜85質量%と、オレフィン重合体ブロック及び親水基を有する重合体ブロックを含むブロック共重合体(B)5〜80質量%と、芳香族ビニル化合物から主として成る重合体ブロックと共役ジエン化合物から主として成る重合体ブロックとを含有するブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれた少なくとも1種のエラストマー(C)10〜95質量%(但し、上記の成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計は100質量%である)を含有することを特徴とする熱可塑性重合体組成物に存する。
【0009】
そして、本発明の第2の要旨は、上記の熱可塑性重合体組成物から成ることを特徴とする成形品に存し、第3の要旨は、上記の熱可塑性重合体から成るシート又はフィルムを少なくとも片面に有することを特徴とする積層シート又はフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱可塑性重合体組成物によれば、制電性、耐磨耗性および成形品表面外観性に優れた成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合および共重合を意味する。
【0012】
本発明においては、成分として、オレフィン系樹脂(A)、オレフィン重合体ブロック及び親水基を有する重合体ブロックを含むブロック共重合体(B)、芳香族ビニル化合物から主として成る重合体ブロックと共役ジエン化合物から主として成る重合体ブロックとを含有するブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれた少なくとも1種のエラストマー(C)を使用する。ここで、オレフィン系樹脂(A)は、本発明の好ましい態様で使用される任意成分である。
【0013】
成分(A)は、炭素数が通常2〜10のオレフィン類の少なくとも1種から成るオレフィン系樹脂であり、後述する成分(C)を除く(共)重合体である。
【0014】
オレフィン系樹脂(A)の形成に使用するオレフィン類の例としては、エチレン、及び、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1等のα―オレフィンの他、更にノルボルネン等の環状オレフィン等が挙がられる。これらは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。これらの中では、エチレン、プロピレン、ブテン−1、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1及びノルボルネンが好ましい。他の単量体としては、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、1,9−デカジエン等の非共役ジエン等が挙がられる。
【0015】
オレフィン系樹脂(A)としては、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体などのプロピレン単位を主として含む重合体が好ましい。また、ポリエチレン、エチレン−ノルボルネン共重合体も好ましい。特に、プロピレン、プロピレン・エチレン共重合体などのプロピレン単位を主として含む重合体が好ましい。これらは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。特に好ましい組み合わせは、ポリエチレンとエチレン−ノルボルネン共重合体の組み合わせである。なお、上記の各共重合体としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体などがあり、何れも使用できるが、表面外観性からランダム共重合体が特に好ましい。また、ポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等の何れのものも使用できる。
【0016】
オレフィン系樹脂(A)の製造法としては、例えば、高圧重合法、低圧重合法、メタロセン触媒重合法などがある。オレフィン系樹脂(A)は、重合触媒を脱触媒したもの、酸無水物、カルボキシル基、エポキシ基などで変性したもの等であってもよい
【0017】
オレフィン系樹脂(A)の結晶性の有無は問わないが、室温下、X線回折による結晶化度が10%以上であるものを少なくとも1種を使用することが好ましい。また、オレフィン系樹脂(A)のJISK7121に準拠して測定した融点が40℃以上であるものを少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0018】
オレフィン系樹脂(A)としてポリプロピレン系樹脂を使用する場合、そのJISK7210:1999(230℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、通常0.01〜500g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分であり、ポリエチレン系樹脂を使用する場合、そのJISK6922−2(190℃、荷重2.16kg)に準拠して測定したメルトフローレートは、通常0.01〜500g/10分、好ましくは0.05〜100g/10分である。
【0019】
なお、オレフィン系樹脂(A)には、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤などの各種添加剤を配合することも出来る。
【0020】
オレフィン系樹脂(A)の使用量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量%中、0〜85質量%、好ましくは0〜75質量%、更に好ましくは10〜65質量%、特に好ましくは10〜55質量%である。その使用量が85質量%を超えると制電性および成形品表面外観が劣る。本発明の熱可塑性重合体組成物を多層シート又は多層フィルムとして使用する場合であって、特に、オレフィン系樹脂との積層体とする場合は、その接着性の観点から、オレフィン系樹脂(A)を配合するのが好ましい。
【0021】
成分(B)は、オレフィン重合体ブロック(B−a)及び親水基を有する重合体ブロック(B−b)を含むブロック共重合体である。そして、、ジブロックでもよいし、トリブロック以上のマルチブロックであってもよい。
【0022】
オレフィン重合体ブロック(B−a)とは、オレフィン類の(共)重合体のブロックである。ここで使用されるオレフィン類の例としては、好ましい具体例を含め、オレフィン系樹脂(A)において説明したのと同様のオレフィン類が挙げられる。オレフィン重合体ブロック(B−a)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量は、通常800〜20,000、好ましくは1,000〜10,000、更に好ましくは1,2000〜6,000である。
【0023】
オレフィン重合体ブロック(B−a)は、親水基を有する重合体ブロック(B−b)とは実質的に結合されているが、その結合は、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などから選ばれた少なくとも1種の結合であり、これらの結合を介して繰り返し交互に結合した構造を有する。このために、オレフィン重合体ブロック(B−a)の分子末端は、上記のブロック(B−b)に分子両末端官能基と反応性を有する官能基で変性されている必要がある。これらの官能基としては、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基、エポキシ基などがある。
【0024】
上記ブロック(B−a)の成分は、重合法、熱減成法などによって得ることが出来、重合法により得られるポリオレフィンは公知の方法で製造でき、例えば、ラジカル触媒、金属酸化触媒、チーグラー触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒などの存在下で前記のオレフィンを(共)重合させる方法により容易に得ることが出来る。一方、高分子量のポリオレフィンの熱減成法によって得られる低分子量ポリオレフィンは、例えば、特開平3−62804号公報に記載の方法などにより容易に得ることが出来る。分子末端の変性の容易性の観点から熱減成法が好ましい。
【0025】
熱減成法で得られるポリオレフィンは、通常、分子両末端が変性可能なポリオレフィン、片末端が変性可能なポリオレフィン及び変性可能な末端基を持たないポリオレフィンの混合物であるが、両末端が変性可能なポリオレフィンが主成分であるのもが好ましい。熱減成法で得られたポリオレフィン中の二重結合量は、制電性の観点から、炭素数1,000当たり、通常1〜40個、好ましくは2〜30個、更に好ましくは4〜20個である。1分子当たりの二重結合の平均数は、繰り返し構造の形成性の観点および制電性の観点から、通常1.1〜5、好ましくは1.3〜3、更に好ましくは1.8〜2.2である。熱減成法においては、Mnが800〜6,000の範囲で、1分子当たりの平均末端二重結合数が1.5〜2個の低分子量ポリオレフィンが容易に得られる〔例えば、村田勝英、牧野忠彦、日本化学会誌、192頁(1975)参照〕。
【0026】
これらの熱減成法で得たポリオレフィンに官能基を付与する好ましい方法は、熱減成法により得られた分子末端に炭素―炭素二重結合を有するブロック(B−a)の成分に、上記した官能基を有する炭素―炭素不飽和化合物を付加させる方法である。
【0027】
親水基を有する重合体ブロック(B−b)は親水性ポリマーのブロックであり、その成分である親水性ポリマーとしては、ポリエーテル、ポリエーテル含有親水性ポリマー、アニオン性ポリマー等が挙げられる。
【0028】
ポリエーテルとしては、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン及びこれらの変性物が挙げられる。ポリエーテル含有親水性ポリマーとしては、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド、ポリエーテルジオール又はポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタン等が挙げられる。アニオン性ポリマーとしては、スルホニル基を有するジカルボン酸と上記ポリエーテルとを必須成分単位とし、かつ、一分子内に通常2〜80個、好ましくは3〜60個のスルホニル基を有するアニオン性ポリマーが挙がられる。これらは、直鎖状であっても、また、分岐状であってもよい。親水基を有する重合体ブロック(B−b)の特に好ましい成分はポリエーテルである。
【0029】
ポリエーテルにうちポリエーテルジオールとしては、次の一般式(I)や(I I)で表されるもの等が挙げられる。
【0030】
【化1】

【0031】
一般式(I)中、Eは二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nおよびn’は前記二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たりのアルキレンオキサイド付加数を表す。n個の(OA)とn’個の(AO)とは同一であっても異なっていてもよく、また、これらが2種以上のオキシアルキレン基で構成される場合の結合形式はブロック若しくはランダム又はこれらの組み合わせの何れでもよい。nおよびn’は、通常1〜300、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100の整数である。また、nとn’は、同一であっても異なっていてもよい。
【0032】
上記の二価の水酸基含有化合物としては、一分子中にアルコール性またはフェノール性の水酸基を2個含む化合物、すなわち、ジヒドロキシ化合物が挙げられ、具体的には、二価アルコール(例えば炭素数2〜12の脂肪族、脂環式または芳香族二価アルコール)、炭素数6〜18の二価フェノール及び第3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
【0033】
脂肪族二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,12−ドデカンジオール等が挙げられる。脂環式二価アルコールとしては、例えば、1,2−及び1,3−シクロペンタンジオール、1,2−、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙がられ、芳香族二価アルコールとしては、例えば、キシレンジオール等が挙げられる。二価フェノールとしては、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン、ウルシオール等の単環二価フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4、4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルエーテル等のビスフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ビナフトール等の縮合多環二価フェノール等が挙げられる。
【0034】
一般式(II)中、Eは、一般式(I)で記載した二価の水酸基含有化合物から水酸基を除いた残基、Aは、少なくとも一部が一般式(III):−CHR−CHR’―〔式中、R、R’の一方は、一般式(IV):−CHO(AO)R で表される基、他方はHである。一般式(IV)中、xは1〜10の整数、R はHまたは炭素数1〜10の、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアシル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基である。〕で表される置換アルキレン基であり、残りは炭素数2〜4のアルキレン基であってもよい。m個の(OA)とm’個の(AO)とは同一であっても異なっていてもよい。mおよびm’は、通常1〜300、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100の整数である。また、mとm’とは、同一でも異なっていてもよい。
【0035】
一般式(I)で示されるポリエーテルジオールは、二価の水酸基含有化合物にアルキレンオキサイドを付加反応することにより製造することが出来る。アルキレンオキサイドとしては、炭素数2〜4のアルキレンオキサイド、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,4−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、これらの2種以上の組合せが挙げられる。2種以上のアルキレンオキサイドを使用する際の結合形式は、ランダム及び/又はブロックの何れでもよい。アルキレンオキサイドとしては、好ましくは、エチレンオキサイド単独およびエチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの併用によるブロック及び/又はランダム付加である。アルキレンオキサイドの付加数は、前記の二価の水酸基含有化合物の水酸基1個当たり、通常1〜300、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100である。
【0036】
上記の一般式(II)で示されるポリエーテルジオールの好ましい製造方法としては(i)、(ii)の方法などが挙げられる。
【0037】
(i)上記二価の水酸基含有化合物を出発物質として、次の一般式(V)で表されるグリシジルエーテルを重合、または炭素数2〜4のアルキレンオキサイドと共重合する方法。
【0038】
【化2】

【0039】
一般式(V)中、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、pは1〜10の整数、RはH又は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基またはアシル基である。
【0040】
(ii)上記の二価の水酸基含有化合物を出発物質として、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを経由する方法。具体的には、エピクロルヒドリン又はエピクロルヒドリンとアルキレンオキサイドとを付加共重合し、側鎖にクロロメチル基を有するポリエーテルを得た後、当該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールとRX(Rは上記したものと同義であり、Xは、Cl、Br又はIを表す)をアルカリ存在下で反応させるか、または、当該ポリエーテルと炭素数2〜4のポリアルキレングリコールモノカルビルエーテルをアルカリ存在下で反応させる。ここで使用される炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとしては、前記したものが全て使用できる。
【0041】
また、本発明において好ましい成分(B)は、前記のオレフィン重合体ブロック(B−a)と親水性ポリマーブロック(B−b)との各成分を公知の方法で重合することによって得ることが出来る。例えば、ブロック(B−a)とブロック(B−b)の各成分を減圧下200〜250℃で重合反応を行うことにより製造することが出来る。また、重合反応に際し公知の重合触媒を使用することが出来る。触媒としては、モノブチルスズオキサイド等のスズ系触媒、三酸化アンチモン、二酸化アンチモン等のアンチモン系触媒、テトラブチルチタネート等のチタン系触媒、ジルコニウム水酸化物、酸化ジルコニウム、酢酸ジルコニル等のジルコニウム系触媒、IIB族有機酸塩触媒から選ばれる1種または2種以上の組み合わせである。
【0042】
成分(B)には、制電性を向上させる目的からナトリウム及び/又はカリウム含有化合物(B−c)が含ませることが出来る。これらの化合物は、成分(B)の重合時、重合後、またはこれを組み合わせた方法で含有させることが出来るが、好ましくは、重合時にこれらの化合物を存在させて含有させる方法である。
【0043】
成分(B−c)としては、ナトリウムやカリウムの有機酸、スルホン酸、無機酸の塩、ハロゲン化物などが挙げられる。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム等のハロゲン化物;過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の無機酸塩、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の有機酸塩;オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、テトラデシルスルホン酸、ステアリルスルホン酸、テトラコシルスルホン酸、2−エチルヘキシルスルホン酸などの、アルキル基の炭素数8〜24のアルキルスルホン酸のナトリウム塩やカリウム塩;フェニルスルホン酸、ナフチルスルホン酸などの芳香族スルホン酸のナトリウム塩やカリウム塩;オクチルフェニルスルホン酸、ドデシルフェニルスルホン酸、ジブチルフェニルスルホン酸、ジノニルフェニルスルホン酸などの、アルキル基の炭素数6〜18のアルキルベンゼンスルホン酸のナトリウム塩やカリウム塩;ジメチルナフチルスルホン酸、ジイソプロピルナフチルスルホン酸、ジブチルナフチルスルホン酸などの、アルキル基の炭素数2〜18のアルキルナフタレンスルホン酸のナトリウム塩やカリウム塩;トリフルオロメタンスルホン酸などのフッ化スルホン酸などのナトリウム塩やカリウム塩などが挙げられる。これらは2種以上を併用して使用することが出来る。特に好ましい成分(B−c)は、スルホン酸のナトリウム塩またはスルホン酸のカリウム塩である。上記成分(B−c)の含有量は成分(B)に対し、通常0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0044】
成分(B−a)/成分(B−b)の比率は、通常10〜90/10〜90質量%、好ましくは20〜80/20〜80質量%、更に好ましくは、30〜70/30〜70質量%のである。このようなブロック重合体(B)は、例えば、特開2001−278985号公報、特開2003−48990号公報に記載の方法などで製造することが出来、更に、三洋化成工業社製の「ペレスタット300」シリーズの「300」、「303」、「ペレスタット200」シリーズの「230」等として入手できる。
【0045】
成分(B)は、一般的に制電性を向上させる目的から、前記した成分(B−c)を含有する。しかしながら、使用用途に依存するが、成分(B−c)の含有量が多い場合、成形品から溶出するナトリウムイオンやカリウムイオンが金属腐食を起す等の悪い影響を及ぼす場合がある。一方、本発明の熱可塑性重合体組成物の制電性を向上させる方向として成分(B)の配合量を増やす方法が採用され、より溶出イオン量が多くなり前記した課題が顕著になる。このことから、成分(B)に含まるナトリウム及びカリウムの含有量は、通常1000ppm以下、好ましくは500ppm以下、好ましくは実質的に0(含まない)である。
【0046】
ナトリウム及びカリウムとして0〜1000ppmのナトリウム及びカリウム化合物を含む成分(B)を使用した場合、本発明の熱可塑性重合体組成物の制電性が劣る場合がある。その場合、所定量のリチウム塩(D)を使用するのが好ましい。リチウム塩(D)の使用量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対し、通常0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部、更に好ましくは0.3〜2質量部である。リチウム塩(D)の使用量が0.01質量部未満では制電性を向上させる効果が得られず、また、5質量部を超えると成形品表面外観性および耐磨耗性が劣る傾向にある。
【0047】
リチウム塩としては、有機または無機のリチウム化合物が使用され、有機リチウム化合物としては、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウム、脂肪酸のリチウム化合物などがあり、無機リチウム化合物としては、過塩素酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム等がある。これらは、2種以上を組み合わせて使用することが出来る。特に好ましいリチウム塩は、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムであり、三光化学工業社製の「サンコノール0862−13T」、「サンコノールAQ−50T」、「サンコノールTBX−25」(商品名)として、溶液またはマスターバッチとして入手することが出来る。
【0048】
リチウム塩(D)は、成分(B)の重合時、重合後および本発明の熱可塑性重合体組成物の製造時に添加する方法で含有させることが出来る。また、これを組み合わせた方法など含有させることが出来る。本発明の熱可塑性重合体製造時に添加する方法が好ましい。この場合、(1)熱可塑性重合体組成物の成分を配合する際に添加してもよく、(2)本発明の熱可塑性重合体組成物成分の何れかに事前に添加してもよいが、成分(B)に添加するのが好ましい。前記(1)の方法では配合時に各成分と混合してもよく、溶融混練時に混練機途中から添加してもよい。前記(2)の方法ではリチウム塩(D)を事前に配合した成分を他成分を配合して本発明の熱可塑性重合体組成物を得ることも出来る。また、溶融混練機にて特定の成分とリチウム塩(D)とを混練した後、他の成分を添加して混練した後に本発明の熱可塑性重合体組成物を得てもよい。
【0049】
成分(B)の使用量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量%中、5〜80質量%、好ましくは10〜80質量%、更に好ましくは20〜70質量%、特に好ましくは25〜70質量%である。成分(B)の使用量が5質量%未満では制電性が劣り、80質量%を超えると耐磨耗性および成形品表面外観性が劣る。
【0050】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、表面抵抗率(JISK6911に準拠して23℃、50%RH条件下で測定)が1×10Ω/□以下である成形品を得る熱可塑性重合体組成物として特に有効である。この様な組成物を得るための成分(B)の配合量としては25〜70質量%が特に好ましい。また、表面抵抗率が1×10Ω/□以下である成形品を得る熱可塑性重合体組成物を得るための成分(B)の配合量としては30〜70質量%が特に好ましい。
【0051】
本発明で使用する成分(C)は、芳香族ビニル化合物から主として成る重合体ブロック(C1)と共役ジエン化合物から主として成る重合体ブロック(C2)とを含有するブロック共重合体(C−a)及びその水素添加物(C−b)から選ばれた少なくとも1種のエラストマーである。
【0052】
ここで使用される芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α―メチルスチレン、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらの中では、スチレン又はα―メチルスチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。また、共役ジエン化合物としては、ブタジエン、イソプレン、ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン等が挙げられる。これらの中では、ブタジエン又はイソプレンが好ましい。これらは、2種以上を組み合わせて使用することが出来る。更に、重合体ブロック(C2)は、2種以上の共役ジエン化合物を使用し、それらがランダム状、ブロック状、テーパー状の何れかの形態で結合したブロックであってもよい。また、重合体ブロック(C2)は、芳香族ビニル化合物が漸増するテーパーブロックを1〜10個の範囲で含有していてもよく、重合体ブロック(C2)の共役ジエン化合物に由来するビニル結合含有量の異なる重合体ブロック等が適宜共重合していてもよい。
【0053】
成分(C)は次の構造式(VI)〜(VIII)で表される重合体またはその水素添加物であることが好ましい。
【0054】
【化3】

【0055】
構造式(VI)〜(VIII)中、Aは、芳香族ビニル化合物を主体とする重合体ブロックであり、実質的に芳香族ビニル化合物から成る重合体ブロックであれば、一部共役ジエン化合物が含まれていてもよい。芳香族ビニル化合物の含有量は通常90質量%以上、好ましくは99質量%以上である。Bは共役ジエン化合物の単独重合体または芳香族ビニル化合物などの他の単量体と共役ジエン化合物との共重合体であり、Xはカップリング剤の残基であり、Yは1〜5の整数、Zは1〜5の整数を表す。
【0056】
成分(C)における、芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物の使用割合は、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物として、通常10〜70/30〜90質量%、好ましくは15〜65/35〜85質量%、更に好ましくは20〜60/40〜80質量%である。
【0057】
芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物から成るブロック共重合体は、アニオン重合の技術分野で公知のものであり、例えば、特公昭47−28915号公報、特公昭47−3252号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−20038号公報などに開示されている。また、テーパーブロックを有する重合体ブロックの製造方法については、特開昭60−81217号公報などに開示されている。
【0058】
成分(C)の共役ジエン化合物に由来するビニル結合量(1,2−及び3,4−結合)含有量は、通常5〜80%の範囲であり、成分(C)の数平均分子量は、通常10,000〜1,000,000、好ましくは20,000〜500,000、好ましくは20,000〜200,000である。これらのうち、上記(VI)〜(VIII)で表したA部の数平均分子量は3,000〜150,000、B部の数平均分子量は5,000〜200,000であることが好ましい。
【0059】
共役ジエン化合物のビニル結合量の調節は、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジアゾシクロ(2,2,2)オクタミン等のアミン類、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル類、チオエーテル類、ホスフィン類、ホスホアミド類、アルキルベンゼンスルホン酸塩、カリウムやナトリウムのアルコキシド等を使用して行うことが出来る。
【0060】
上記の方法で重合体を得た後、カップリング剤を使用して重合体分子鎖がカップリング剤残基を介して延長または分岐された重合体も成分(C)として好適に使用することが出来る。ここで使用されるカップリング剤としては、アジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、メチルジクロロシラン、四塩化珪素、ブチルトリクロロ珪素、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、ジメチルクロロ珪素、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブリモエタン、1,4−クロロメチルベンゼン、ビス(トリクロロシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等が挙げられる。
【0061】
上記のブロック共重合体のうち、耐衝撃性の観点から好ましいものは、ブロック(C2)に芳香族ビニル化合物が漸増するテーパーブロックを1〜10個の範囲で有する重合体である。また、カップリング処理されたラジアルブロックタイプも好ましい。
【0062】
また、成分(C)として、共役ジエン部分の炭素―炭素二重結合を部分的にまたは完全に水素添加したブロック共重合体を使用することが出来る。得られる組成物の低温衝撃性の観点からは水素添加していないブロック共重合体または水素添加率が90%未満のブロック共重合体をが好ましく、得られる組成物の耐候(光)性の観点からは90%以上水素添加されたブロック共重合体が好ましい。
【0063】
上記の水素添加反応は公知の方法で行うことが出来るし、また、公知の方法で水素添加率を調節することが出来る。具体的な方法としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公昭63−5401号公報、特開平2−133406号公報、特開平1−297413号公報などに開示されている方法がある。
【0064】
ブロック共重合体(C−a)及びその水素添加物(C−b)は、他の重合体がブロック重合体および/またはグラフト重合体として化学的に結合したものであってもよい。
他の重合体は100質量%が化学的に結合している必要はなく、他の重合体の少なくとも10質量%が化学的に結合していればよい。
【0065】
上記の他の重合体としては、芳香族ポリカーボネート又はポリウレタンが好ましく、特に芳香族ポリカーボネートが好ましい。芳香族ポリカーボネート−ブロック共重合体混合物は、例えば、特開2001−220506号公報に記載の方法で製造することが出来る。更に、クラレ社製の「TMポリマー」シリーズの「TM−S4L77」、「TM−H4L77」(商品名)等として入手することが出来る。
【0066】
成分(C)の使用量は、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量%中、10〜95質量%、好ましくは15〜90質量%、更に好ましくは15〜70質量%、特に好ましくは20〜60質量%である。成分(C)の使用量が20質量%未満では制電性および耐磨耗性性が劣り、95質量%を超えると耐磨耗性および成形品表面外観性が劣る。
【0067】
本発明の熱可塑性重合体組成物には、公知の耐候(光)剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、シリコーンオイル、可塑剤、摺動剤、着色剤、染料、発泡剤、難燃剤、結晶核剤、帯電防止剤などを適宜配合することが出来る。
【0068】
また、本発明の熱可塑性重合体組成物には、公知の無機・有機充填材を配合することが出来る。ここで使用される充填材としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラス繊維のミルドファイバー、ガラス粉、ガラスビーズ、中空ガラスビーズ、炭素繊維、炭素繊維のミルドファイバー、銀、銅、黄銅、鉄などの粉体や繊維状物質、カーボンブラック、錫コート酸化チタン、錫コートシリカ、ニッケルコート炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムウイスカー、ワラストナイト、マイカ、カオリン、モンモリロナイト、ヘキトライト、酸化亜鉛ウイスカー、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、板状アルミナ、板状シリカ、有機処理されたスメクタイト、アラミド繊維、フェノール樹脂、ポリエステル繊維、木粉などがある。これらは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。更に、分散性を向上させる目的から、公知のカップリング剤、表面処理剤、集束剤などで処理した充填材を使用することが出来る。カップリング剤としては、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤などがある。無機・有機充填材の使用量は、本発明の熱可塑性重合体組成物100質量部に対し、通常1〜200質量部である。
【0069】
更に、本発明の熱可塑性重合耐組成物には、他の重合体として、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマー、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリエステルエラストマー、PMMA、メタクリル酸メチル・マレイミド化合物共重合体、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性性ポリウレタンエラストマー、エチレン・(メタ)クリル酸メチル共重合体、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、フェノキシ樹脂などを配合することが出来る。
【0070】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、上記の各成分を、各種の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、連続ニーダー、ロール等により溶融混練することにより得ることが出来る。混練りに際し、各成分は一括添加しても分割添加してもよい。
【0071】
本発明の熱可塑性重合体組成物の成形方法としては、射出成形、プレス成形、カレンダー成形、Tダイ押出成形、中空シート押出成形、発泡シート押出成形、インフレーション成形、ラミネーション成形、真空成形、異形押出成形、これらを組み合わせた成形法などを採用することが出来る。また、成形機に混練り押出機、バンバリーミキサー等の混練り機が付帯されている場合、混練り機で本発明の熱可塑性重合体組成物を得ながら成形することも出来る。
【0072】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、シート及びフィルム用途に好適な組成物であり、特にに多層シート及び多層フィルムの表皮材として特に好適である。これ等のシート及びフィルムとしては、単層のシート及びフィルム、他材量と多層化したシート及びフィルムであってもよく、粘着剤などを積層したシート及びフィルム、公知のガスバリア膜を形成したシート及びフィルムでもよい。上記の多層シート又は多層フィルムにおいて、表皮材はシート又はフィルムの片面にあってもよく、また、両面にあってもよい。多層シート又は多層フィルムにおけるコア層は、発泡したものでも、中空になったものでも、更に、これら以外のものでもよい。
【0073】
上記のシート及びフィルムの厚さは、通常5μm〜100mm、好ましくは10μm〜50mm、更に好ましくは30μm〜10mmである。また、上記の多層シート及びフィルムにおける表皮材の厚さは、通常5〜200μm、好ましくは5〜150μm、更にに好ましくは10〜100μmである。
【0074】
上記の多層シート又は多層フィルムにおいては、本発明の熱可塑性重合体組成物と他材との2層構造、他材が中間層である3層構造などとすることが出来るが、ここで使用される他材としては、任意の重合体を使用することが、層間の接着性の観点から、成分(A)、成分(C)等が好ましい。層間の接着が不十分な材料を使用する場合は、公知の接着層を形成することが出来る。また、シート及びフィルムの剛性や耐熱性を向上させる目的から、他材として、前記の無機・有機充填材を配合したものを使用することも出来る。
【0075】
多層シート又は多層フィルムを得る方法としては、Tダイによる共押出、インフレーションによる共押出などが挙げられる。トレイ等の成形品は、例えばシート又はフィルムの真空成形によって得ることが出来る。
【0076】
両表層が本発明の熱可塑性重合体組成物であり、中間層がポリプロピレン系樹脂である多層シートを真空成形する場合、次の様なポリプロピレン系樹脂が好適に使用される。すなわち、メルトフローレート(JISK7210:1999に準拠して230℃、荷重2.16kgで測定)が3.0g/10分以下のポリプロピレン系樹脂が好ましく、メルトフローレート(JISK6922−2に準拠して190℃、2.16kg荷重で測定)が3.0g/10分以下のポリエチレンを10〜30重量%併用したポリプロピレン系樹脂が更に好ましい。
【0077】
両表層が本発明の熱可塑性重合体組成物であり、中間層が発泡ポリプロピレ系樹脂または発泡ポリエチレン系樹脂である多層シートにおいて、発泡ポリプロピレ系樹脂または発泡ポリエチレン系樹脂の発泡剤としては公知のもの使用することが出来る。
【0078】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、従来にない優れた制電性、耐磨耗性および成形品表面外観性に優れていることから、高度な性能が要求される、車両分野、電気・電子分野、OA・家電分野、サニタリー分野などの各種部品として適用できる。
【0079】
すなわち、前述の様にして得られた成形品は、リレーケース、ウエハーケース、レチクルケース、マスクケース等のケース類;液晶トレイ、チップトレイ、ハードディスクトレイ、CCDトレイ、ICトレイ、有機ELトレイ、光ピックアップトレイ、LEDトレイ等のトレイ類;ICキャリアー等のキャリアー類;偏光フィルム、導光板、各種レンズ等の保護フィルム;偏光フィルム切断時の下敷きシート;仕切り板などのクリーンルーム内で使用されるシート又はフィルム類;自動販売機内部部材;液晶パネル、ハードディスク、プラズマパネル等に使用される制電バッグ;プラスチックダンボール、液晶パネル、プラズマパネル等の搬送用ソフトケース;その他の各種部品搬送用関連部材などの分野に使用することが出来る。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例において部および%は、特に断らない限り、質量基準である。また、各種の測定は以下の方法に拠った。
【0081】
(1)制電性:
JISK6911に準拠し、三菱化学社製「ハイレスターUPMCP−HT450」を使用し、印加電圧100V、23℃×50%RHの条件下、表面抵抗率(Ω/□)を測定した。
(2)耐磨耗性:
【0082】
JISK7204に準拠し、同JIS規格に規定の成形品を使用し、テーバー磨耗量(mg)を測定した。測定は、錘500g、磨耗輪CS−17、1,000回の条件で行った。
【0083】
(3)成形品の表面外観性:
成形品を目視観察し、「表面が平滑(〇)」、「表面が平滑でない(×)」の2つの基準で評価した。
【0084】
(4)スキン層とコア層との接着性:
得られたシートのスキン層とコア層との間に切り込みを入れ、剥ぎ取り試験を行い、「非常に強固に接着しており剥ぎ取れなかった(◎)」、「強固に接着していたが一部剥ぎ取れた(○)」の2つの基準で評価した。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
【表3】

【0088】
【表4】

【0089】
実施例1〜16及び比較例1〜4:
表5及び表6に記載の配合割合で各成分(D成分以外)をヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(シリンダー設定温度210℃)を使用して溶融混練しペレット化した。なお、成分(D)は、押出機途中からポンプを使用して注入した。得られたペレットを充分に乾燥した熱可塑性重合体組成物と、表1記載の中間層成分を使用し、両表層が熱可塑性重合体組成物である、三層中空シート、三層発泡シート及び三層フィルムを生産した。シートについて多層Tダイ押出装置を使用て、また、フィルムについては多層インフレーション装置を使用した。
【0090】
三層中空シートにおいて、中空シートの厚さは5mm、表層(一方面)の厚さは30μとした。三層発泡シートにおいて、発泡シートの厚さは3mm、表層(一方面)の厚さは30μとした。三層フィルムにおいて、全体の厚さは100μm、表層(一方面)の厚さは30μmとした。また、中間層の成分については、表中に記載した。
【0091】
上記の各成形品を使用し、制電性、耐磨耗性および成形品表面外観性を評価し、評価結果を表5及び表6に示した。
【0092】
【表5】

【0093】
【表6】

【0094】
表5及び表6に記載された結果から、以下のことが明らかである。
【0095】
(1)本発明の実施例1〜16は、本発明の熱可塑性重合体組成物から成る成形品であり、制電性、耐摩耗性および成形品表面外観性に優れる。
【0096】
(2)比較例1は、成分(B)の使用量が本発明で規定する範囲外で少なく、成分(C)の使用量が本発明規定する範囲外で多い例であり、制電性が劣る。比較例2は成分(B)の使用量が本発明で規定する範囲外で多い例であり、耐磨耗性および成形品表面外観性が劣る。比較例3は、成分(C)の使用量が本発明で規定する範囲外で少ない例であり制電性および耐磨耗性が劣る。比較例4は、成分(A)の使用量が本発明で規定する範囲外で多く、成分(B)及び(C)の使用量が本発明で規定する範囲外で少ない例であり、磨耗性および成形品表面外観性が劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂(A)0〜85質量%と、オレフィン重合体ブロック及び親水基を有する重合体ブロックを含むブロック共重合体(B)5〜80質量%と、芳香族ビニル化合物から主として成る重合体ブロックと共役ジエン化合物から主として成る重合体ブロックとを含有するブロック共重合体およびその水素添加物から選ばれた少なくとも1種のエラストマー(C)10〜95質量%(但し、上記の成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計は100質量%である)を含有することを特徴とする熱可塑性重合体組成物。
【請求項2】
成分(B)に含まれるナトリウム及びカリウムの含有量が0〜1,000ppmである請求項1に記載の熱可塑性重合体組成物。
【請求項3】
成分(B)の配合量が25〜70質量%であり、表面抵抗率が1×10Ω/□(23℃×50%RH条件下)以下である請求項1又は2に記載の熱可塑性重合体組成物。
【請求項4】
更に、上記の熱可塑性重合体組成物100質量部に対して、リチウム塩(D)0.01〜5質量部を含む請求項1〜3の何れかに記載の熱可塑性重合体組成物。
【請求項5】
リチウム塩(D)が、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、過塩素酸リチウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムおよびトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタンリチウムから成る群より選ばれた少なくとも1種である請求項4に記載の熱可塑性重合体組成物。
【請求項6】
成分(A)の配合量が、成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計100質量部に対して10〜55質量部である請求項1〜5の何れかに記載の熱可塑性重合体組成物。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の熱可塑性重合体組成物から成ることを特徴とする成形品。
【請求項8】
シート又はフィルムである請求項7に記載の成形品。
【請求項9】
請求項1〜6の何れかに記載の熱可塑性重合体から成るシート又はフィルムを少なくとも片面に有することを特徴とする積層シート又はフィルム。
【請求項10】
共押出成形法で得られたものである請求項9に記載の積層シート又はフィルム。

【公開番号】特開2008−179696(P2008−179696A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14006(P2007−14006)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】