熱安定性ビウレット系及びイソシアヌレート系表面改質用巨大分子並びにそれらの使用
本発明は、高い分解温度を有する表面改質用巨大分子(SMM)、及び高温加工を必要とするベースポリマーから作製される物品の製造におけるその使用に関する。表面改質剤は、撥アルコール性及び撥水性を付与するためにベースポリマーと混合される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い分解温度を有する表面改質用巨大分子(SMM)、及び高温加工を必要とするベースポリマーから作製される物品(article)の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のフッ素化学品は、さまざまな基材に撥水性及び撥油性さらには防汚性を付与するために使用されてきた。これらのフッ素化学品は、ほとんどの場合、(例えば、スプレー処理、パディング処理、又は仕上げ浴浸漬により)局所適用されてきた。得られた撥性基材は、例えば医療技術者用や実験室作業者用の防護服の場合のように、撥水特性及び/又は撥油特性(さらに防汚特性)が重要視される多くの用途で使用されてきた。撥性基材は、例えば、血液、血液媒介病原体、その他の体液が布を透過するのを防止したり(即ち、化学毒性因子又は感染性因子に晒されるのを阻止したり)、アルコールやケトン、アルデヒドといった低表面張力化学物質に晒されるのを低減したりすることが望まれる場合に使用可能である。
【0003】
商業的に使用される医療用衣類や防護用衣類は、多くの場合、熱可塑性フィルム、熱可塑性繊維、繊維状不織材料、熱可塑性フォーム材料等の押出し品から全部又は一部が構成される。これらの製品の例としては、サージカルドレープ、サージカルガウン、及び手術用包帯、防護用衣類(特に、例えば、作業着、フェイスマスク、及び実験着)が挙げられる。これらの材料は、多くの場合、200℃を超える高温加工条件を必要とする。
【0004】
多くのフッ素化学品は、200℃超の温度で加工するのに必要な熱安定性が欠如している(例えば、275〜300℃を超える高い押出し温度が必要とされる場合が多い、溶融紡糸用途において)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、撥水性、撥油性、及び/又はより低い表面エネルギーを付与するための、高温加工を必要とするベースポリマーと混合して使用可能な熱安定性添加剤の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高い分解温度を有する表面改質用巨大分子(SMM又は表面改質剤)添加剤を提供する。このSMMは、高温加工を必要とするベースポリマーから作製される物品の製造に有用である。
【0007】
従って、第一の態様では、本発明は、式(I):
【化1】
で示される表面改質剤を特徴とする。
【0008】
式(I)中、Aはソフトセグメント、例えば、水素化ポリブタジエン、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)、ポリブタジエン、アジピン酸ポリ(ジエチレングリコール)、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステル、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(PrO-PDMS-PrO)ブロックコポリマー、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、水素化ヒドロキシル末端ポリイソプレン、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール) ブロックコポリマー、1,12-ドデカンジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ポリ(エチレン-co-ブチレン)、1,6-ヘキサンジオール-無水オルトフタル酸ポリエステル、ネオペンチルグリコール-無水オルトフタル酸ポリエステル、もしくはビスフェノールAエトキシレート、又は1,6-ヘキサンジオール-無水オルトフタル酸ポリエステルであり、Bはハードセグメント、例えば、ウレタン型三量体(urethane trimer)又はビウレット型三量体であり、Gは表面活性基であり、かつnは、0〜10の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)である。
【0009】
式(I)で示される表面改質剤は、少なくとも200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、さらには350℃の熱分解温度を有することが可能である。特定の実施形態では、表面改質剤は、200〜250℃、220〜250℃、220〜300℃、220〜280℃、220〜260℃、240〜300℃、240〜280℃、240〜260℃、260〜300℃、260〜280℃、200〜345℃、220〜345℃、250〜345℃、275〜345℃、300〜450℃、320〜450℃、340〜450℃、360〜450℃、380〜450℃、400〜450℃、420〜450℃、300〜430℃、300〜410℃、300〜400℃、300〜380℃、300〜360℃、300〜340℃、及び300〜320℃の熱分解温度を有する。
【0010】
特定の実施形態では、ソフトセグメントは、500〜3,500ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する。いくつかの実施形態では、Mnは、500〜1000、500〜1250、500〜1500、500〜1750、500〜2000、500〜2250、500〜2500、500〜2750、500〜3000、500〜3250、1000〜1250、1000〜1500、1000〜1750、1000〜2000、1000〜2250、1000〜2500、1000〜2750、1000〜3000、1000〜3250、1000〜3500、1500〜1750、1500〜2000、1500〜2250、1500〜2500、1500〜2750、1500〜3000、1500〜3250、又は1500〜3500ダルトンである。さらに他の実施形態では、表面活性基は、100〜1,500ダルトンの分子量を有する。さらに他の実施形態では、表面活性基は、100〜1,500、100〜1,400、100〜1,300、100〜1,200、100〜1,100、100〜1,000、100〜900、100〜900、100〜800、100〜700、100〜600、100〜500、100〜400、100〜300、又は100〜200ダルトンの分子量を有する。
【0011】
表面活性基としては、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、ポリフルオロアルキル、フッ素化ポリエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。望ましくは、表面活性基は、ポリフルオロアルキル、例えば、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-デカノール((CF3)(CF2)7CH2CH2OH)、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-オクタノール((CF3)(CF2)5CH2CH2OH)、1H,1H,5H-ペルフルオロ-1-ペンタノール(CHF2(CF2)3CH2OH)、及び1H,1H-ペルフルオロ-1-ブタノール((CF3)(CF2)2CH2OH)、もしくはそれらの混合物(例えば、(CF3)(CF2)7CH2CH2OHと(CF3)(CF2)5CH2CH2OHとの混合物)、又は一般式CF3(CF2)rCH2CH2-〔式中、rは2〜20である〕及びCF3(CF2)s(CH2CH2O)χ-〔式中、χは1〜10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10)であり、かつsは1〜20(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20)である〕で示される基である。
【0012】
特定の実施形態では、nは、0〜5の整数(例えば、0、1、2、3、4、又は5)である。望ましくは、nは、0、1、又は2である。
【0013】
本発明に係る表面改質剤は、25kDa未満、望ましくは、20kDa未満、18kDa未満、16kDa未満、15kDa未満、14kDa未満、13kDa未満、12kDa未満、11kDa未満、10kDa未満、8kDa未満、6kDa未満、さらには4kDa未満の理論分子量を有することが可能である。他の実施形態では、本発明に係る表面改質剤は、9kDa、8.5kDa、7.5kDa、7kDa、6.5kDa、5.5kDa、5kDa、4.5kDa、3.5kDa、3kDa、2.5kDa、2kDa、1.5kDa、又は1kDaの理論分子量を有する。
【0014】
本発明に係る表面改質剤は、5%〜35%、10%〜35%、5〜30%、10〜30%、5〜20%、5〜15%、又は15〜30%(w/w)のハードセグメント、40〜90%、50〜90%、60〜90%、40〜80%、又は40〜70%(w/w)のソフトセグメント、及び25〜55%、25〜50%、25〜45%、25〜40%、25〜35%、25〜30%、30〜55%、30〜50%、30〜45%、30〜40%、30〜35%、35〜55%、35〜50%、35〜45%、35〜40%、40〜55%、40〜50%、40〜45%、45〜55%、45〜50%、又は50〜55%(w/w)の表面活性基を含むことが可能である。
【0015】
本発明はまた、ベースポリマーと混合した、本発明に係る表面改質剤を含む混加物(admixture)を特徴とする。特定の実施形態では、ベースポリマーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリシリコーン、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)、ポリ塩化ビニル、及びそれらのブレンドから選択される。例えば、水素化ポリブタジエンを含むSMMは、ポリプロピレン又はポリエチレンと混合可能であり、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)を含むSMMは、ポリウレタンと混合可能であり、また、ポリ(エチレン-co-ブチレン)を含むSMMは、ポリエチレン又はポリウレタンと混合可能である。
【0016】
混加物は、(i)ベースポリマーと表面改質剤とを混合して混合物を形成すること、及び(ii)この混合物を200℃超、220℃超、250℃超、270℃超、300℃超、320℃超、又は350℃超に加熱することにより調製可能である。本発明に係る混加物は、0.05%〜20%、0.05%〜15%、0.05%〜13%、0.05%〜10%、0.05%〜5%、0.05%〜3%、0.5%〜15%、0.5%〜10%、0.5%〜6%、0.5%〜4%、1%〜15%、1%〜10%、1%〜8%、1%〜6%、1%〜5%、2%〜5%、又は4%〜8%(w/w)の表面改質剤を含有する。
【0017】
本発明はさらに、本発明に係る混加物から形成される物品を特徴とする。本発明に係る混加物を用いて形成可能な物品としては、手術帽、サージカルシート、サージカルカバークロス(surgical covering clothes)、サージカルガウン、マスク、手袋、サージカルドレープ、フィルター(例えば、レスピレーター、ウォーターフィルター、エアフィルター、又はフェイスマスクの一部)、ケーブル、フィルム、パネル、パイプ、ファイバー、シート、及びインプラント可能な医療用デバイス(例えば、心臓補助デバイス、カテーテル、ステント、補綴インプラント、人工括約筋、又は薬剤送達デバイス)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明はまた、(i)ベースポリマーと、本発明に係る表面改質剤とを混合して混合物を形成すること、及び(ii)この混合物を少なくとも150℃に加熱することにより物品を作製する方法を特徴とする。望ましくは、混合物は、250℃〜450℃の温度に加熱される。
【0019】
本発明はさらに、式(I):
【化2】
〔式中、Aは、ソフトセグメントであり、Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、各Gは、表面活性基であり、nは、0〜10の整数である〕
で示される表面改質剤の熱分解温度を増大させる方法を特徴とする。ただし、この方法は、以下の工程、即ち、
(a) ウレタン型三量体又はビウレット型三量体をモノヒドロキシル表面活性基と反応させる工程、及び
(b) (a)の生成物をソフトセグメントと反応させる工程、
を含む(工程(a)又は(b)は、ビスマス触媒(例えばカルボン酸ビスマス触媒)の存在下で行われる)。
【0020】
特定の実施形態では、ジオールソフトセグメントは、水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ポリ(エチレン-co-ブチレン)ジオール、ヒドロキシル末端ポリブタジエンポリオール、アジピン酸ポリ(ジエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール、1,6-ヘキサンジオール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール、ネオペンチルグリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール、及びビスフェノールAエトキシレートジオールから選択される。特定の実施形態では、工程(a)は、ジイソシアネートを水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン又はポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオールと反応させることを含む。他の実施形態では、ジイソシアネートは、3-イソシアナトメチル、3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、4,4'-メチレンビス(フェニル)イソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート)、及びヘキサメチレンジイソシアネートから選択される。本発明に係るSMMの製造に有用なモノヒドロキシル表面活性基としては、本明細書中に開示されたいずれかが挙げられる。特定の実施形態では、モノヒドロキシル表面活性基は、一般式CF3(CF2)rCH2CH2OH〔式中、rは2〜20である〕及びCF3(CF2)s(CH2CH2O)χCH2CH2OH〔式中、χは1〜10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)であり、かつsは1〜20(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)である〕で示される化合物から選択される。
【0021】
本発明はまた、式(II):
【化3】
〔式中、Aは、ソフトセグメントであり、Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、B'は、ウレタンを含むハードセグメントであり、かつ各Gは、表面活性基であり、nは、0〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)であり、表面改質剤は、250℃〜450℃の熱分解温度を有する〕
で示される表面改質剤を特徴とする。式(II)で示される表面改質剤は、少なくとも200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、さらには350℃の熱分解温度を有することが可能である。特定の実施形態では、表面改質剤は、200〜250℃、220〜250℃、220〜300℃、220〜280℃、220〜260℃、240〜300℃、240〜280℃、240〜260℃、260〜300℃、260〜280℃、200〜345℃、220〜345℃、250〜345℃、275〜345℃、300〜450℃、320〜450℃、340〜450℃、360〜450℃、380〜450℃、400〜450℃、420〜450℃、300〜430℃、300〜410℃、300〜400℃、300〜380℃、300〜360℃、300〜340℃、及び300〜320℃の熱分解温度を有する。
【0022】
式(II)で示される表面改質剤は、本発明に係る方法、物品、及び混加物のいずれにも使用可能である。
【0023】
本発明はまた、表面改質剤をベースポリマーと共にアニールすることにより撥性を増大させる方法(アニーリング温度は50℃〜75℃であり、かつアニーリング時間は1〜24時間である)を特徴とする。
【0024】
いくつかの実施形態では、表面改質剤は、以下の構造:
【化4】
〔式中、Aは、ソフトセグメントであり、Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、B'は、ウレタンを含むハードセグメントであり、各Gは、表面活性基であり、nは、0〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)であり、かつ、この表面改質剤は、250℃〜450℃の熱分解温度を有する〕を有する。特定の実施形態では、表面改質剤は、200〜250℃、220〜250℃、220〜300℃、220〜280℃、220〜260℃、240〜300℃、240〜280℃、240〜260℃、260〜300℃、260〜280℃、200〜345℃、220〜345℃、250〜345℃、275〜345℃、300〜450℃、320〜450℃、340〜450℃、360〜450℃、380〜450℃、400〜450℃、420〜450℃、300〜430℃、300〜410℃、300〜400℃、300〜380℃、300〜360℃、300〜340℃、及び300〜320℃の熱分解温度を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、アニーリング温度は、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、54.4℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、70℃、又は75℃である。他の実施形態では、アニーリング時間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12時間である。
【0026】
本明細書中で用いられる場合、「表面改質剤」とは、本明細書に記載の化合物又は米国特許第6,127,507号明細書もしくは米国特許出願第12/002,226号明細書(それらはいずれも参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載の化合物を意味する。表面改質剤はまた、20kDa未満の中心部分を含みかつ少なくとも1個の表面活性基に共有結合されている、比較的低分子量のポリマー又はオリゴマーとして記述可能である。表面改質剤は低分子量であるので、ベースポリマーの巨大分子ポリマー鎖間を拡散可能である。
【0027】
「表面活性基」とは、表面改質剤に共有結合された親油性基を意味する。表面活性基は、表面改質剤のポリマー中心部分の一方又は両方の末端をキャッピングするように配置可能であり、あるいは、表面改質剤のポリマー中心部分に存在する1個以上の側鎖に結合可能である。表面活性基の例としては、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、ポリフルオロアルキル、フッ素化ポリエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本明細書中で用いられる場合、「熱分解温度」という用語は、サーモグラフィー分析時のSMMの重量損失の開始点(小さい重量損失を示す第1の開始点、それに続く、その重量の大部分を示す、相当に高い温度での第2の開始点)が存在する温度を意味する。
【0029】
SMMの熱安定性はまた、過酷な加熱条件下で、例えば、10及び25分間にわたり220、260、及び300℃で試験され、対応する重量損失は、これらの温度で決定された。これらは、高温を必要とする条件で加工時にポリマーが受ける典型的な温度である。等温条件下での10及び25分間の長い加熱時間は、やや過酷であり、実際には、ポリマーは、実際の加工時、より短い滞留時間(例えば5分未満)を経るにすぎないであろう。このほかに、長い加熱時間により、これらの表面改質剤の一体性が試験され、また、10及び25分間で生じる重量損失による分解度が評価される。この分析は、実施例1に記載されている。
【0030】
本発明の他の特徴及び利点は、図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】SMM1の化学構造を示している。
【図1b】SMM2の化学構造を示している。
【図1c】SMM3の化学構造を示している。
【図1d】SMM4の化学構造を示している。
【図1e】SMM5の化学構造を示している。
【図1f】SMM6の化学構造を示している。
【図1g】SMM7の化学構造を示している。
【図1h】SMM8の化学構造を示している。
【図1i】SMM9の化学構造を示している。
【図1j】SMM10の化学構造を示している。
【図1k】SMM11の化学構造を示している。
【図1l】SMM12の化学構造を示している。
【図1m】SMM13の化学構造を示している。
【図1n】SMM14の化学構造を示している。
【図2】SMM2の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=284℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-1%)に続きT=396℃における主重量損失(-61%)が示される。
【図3】SMM3の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=295℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-1.1%)に続きT=405℃における主重量損失(-55.31%)が示される。
【図4】SMM5の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=306℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-1.34%)に続きT=433℃における主重量損失(-37.82%)が示される。
【図5】SMM7の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=295℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-2.29%)に続きT=365℃における主重量損失(-31%)が示される。
【図6】SMM8の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=290℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-0.43%)に続きT=415℃における主重量損失(-56.09%)が示される。
【図7】SMM10の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=293℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-1.30%)に続きT=347℃における主重量損失(-37.70%)が示される。
【図8】SMM11の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=294℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-2.80%)に続きT=339℃における主重量損失(-40.16%)が示される。
【図9A】SMM1〜SMM14に対する熱的データ及びポリマー特性解析データ(TGA及びEAの結果を含む)を示している。
【図9B】SMM1〜SMM14に対する熱的データ及びポリマー特性解析データ(TGA及びEAの結果を含む)を示している。
【図10】SMMと混合した時の種々のベースポリマー(例えば、ポリウレタン、シロキサン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニル)の表面改質、及びXPS分析後のこれらのポリマーの表面上のフッ素パーセントを示すプロットである。
【図11】アニーリングの時間及び温度の関数として、表面改質メルトブローン(MB)布の撥IPA性を示している。
【図12】滅菌サイクル後の表面改質MB布の撥IPA性を示している。
【図13】処理済み及び未処理の不織布の撥性を示している。
【図14】100〜130℃のホットプレート表面との短時間の直接接触の後、MB布で達成された撥性を示している。
【図15】SMMで改質されたスパンボンド布で、80vol%程度の高いIPA濃度のアルコール溶液に対する撥性を達成可能であることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る方法及び組成物は、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、シリコーン、PVC、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンのような高温で加工される一連の市販のベースポリマーの表面改質に有用な熱安定性SMMを特徴とする。
【0033】
本発明は、フッ素化が強化されたヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレートをベースとする一連のSMMを特徴とする。SMMはまた、200℃超の温度での高温安定性及びベースポリマー(例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシロキサン、ポリ塩化ビニル、及びポリカーボネート)との適合性を有し、また、インプラント可能なデバイス及びインプラント可能ではないデバイスの両方の物品の製造に使用可能である。
【0034】
所要の機能性を提供するために、本発明に係るSMM添加剤は、押出し、溶融紡糸、スパンボンド、溶剤紡糸、又は射出成形のいずれかに関らず、加工時に所望のベースポリマーに添加される。添加剤は、(a)耐熱性及び耐薬品性、機械的強度、(b)撥油性及び撥水性、(c)表面平滑性、(d)炭化水素、酸、極性溶媒、及び塩基に対する耐性、(e)高温寸法安定性、(f)疎水性、(g)非接着特性、(h)親水特性、(i)生体適合性、並びに(j)表面硬度を含む材料特性を付与可能であるが、これらの材料特性に限定されるものではない。
【0035】
本発明に係る表面改質剤は、式(I):
【化5】
〔式(I)中、
(i) Aは、Bにそれぞれ共有結合された2個のヒドロキシル末端基を含むソフトセグメントであり、
(ii) Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、かつ
(iii) 各Gは、表面活性基であり、
nは、0〜10の整数である〕
により記述可能である。
【0036】
ソフトセグメント
例示的なソフトセグメントとしては、水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン(HLBH)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール(PCN)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(PHCN)、ポリ(エチレン-co-ブチレン)ジオール(PEB)、ヒドロキシル末端ポリブタジエンポリオール(LBHP)、アジピン酸ポリ(ジエチレングリコール)(PEGA)、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール(PTMO)、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール(PDP)、1,6-ヘキサンジオール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール(SPH)、ネオペンチルグリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール(SPN)、ビスフェノールAエトキシレートジオール(BPAE)、水素化ヒドロキシル末端ポリイソプレン(HHTPI)、ポリ(2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー(C22又はPrO-PDMS-PrO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、及びポリカプロラクトン(PCL)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
好適なハードセグメントとしては、ビウレット型三量体及びウレタン型三量体(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレート)が挙げられる。ハードセグメントとして使用するのに好適な例示的な三量体は、Bayer社製のDesmodur製品として入手可能である。本発明に係る巨大分子に有用な例示的なDesmodur製品としては、以下のものが挙げられる:
【化6】
【0038】
表面活性基
表面活性基としては、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、ポリフルオロアルキル、フッ素化ポリエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。望ましくは、表面活性基は、ポリフルオロアルキル、例えば、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-デカノール、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-オクタノール、1H,1H,5H-ペルフルオロ-1-ペンタノール、及び1H,1H-ペルフルオロ-1-ブタノール、もしくはそれらの混合物、又は一般式CHmF(3-m)(CF2)rCH2CH2-もしくはCHmF(3-m)(CF2)s(CH2CH2O)χ-〔式中、mは0、1、2、又は3であり、χは1〜10の整数であり、rは2〜20の整数であり、かつsは1〜20の整数である〕で示される基である。
【0039】
本発明に係る表面改質剤は、米国特許第6,127,507号明細書(参照により本明細書に組み入れられるものとする)及び実施例1〜6に記載されるように調製可能である。本発明に係る表面改質剤は、熱安定性を付与するように選択されたソフトセグメントを含有するように選択可能である。そのようなソフトセグメントとしては、水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール、ヒドロキシル末端ポリブタジエンポリオール、アジピン酸ポリ(ジエチレングリコール)、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール、及び1,6-ヘキサンジオール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオールを挙げることができる。本発明はまた、ベースポリマーの加工技術に特有な条件との適合性を改良するために、本明細書に記載の合成方法によるSMMの熱安定性を増大させる方法を包含する。望ましくは、本発明に係るSMMは、ビスマス触媒(例えばカルボン酸ビスマス触媒)のようなスズを含まない触媒を用いて調製される。最終生成物中の残留スズは細胞傷害性であり、また、少量でも加熱時にSMMの分解を触媒・促進して、熱安定性の低下を招く可能性のあることが示されている。ウレタンの合成におけるビスマス触媒の使用は、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第4,584,362号明細書、同第4,742,090号明細書、同第4,788,083号明細書、同第5,064,871号明細書、及び同第6,353,057号明細書を参照されたい)。ビスマスは、非細胞傷害性でありかつ環境に優しい。ビスマス触媒の使用により、ポリマーの生体適合性が増大し、しかも改善された反応速度論的挙動がもたらされて、より狭い分子量分布を有しかつより熱安定性である生成物が得られる。スズの場合と同様に、加熱時の脱重合を防止するために、残留ビスマスレベルを最小限に抑えなければならない。本発明に係る方法で使用するために購入可能なビスマス触媒としては、Bi348、Bi221、及びBi601(カルボン酸ビスマス、King Industries, Norwalk CT)の他に、ビスマストリス(ネオデカノエート)(NeoBi 200, Shepherd Chemicals)が挙げられる。
【0040】
表面改質剤のソフトセグメントは、混合時にベースポリマー基材内で表面改質剤のアンカーとして機能しうる。表面活性基は、部分的には、表面改質剤を混加物の表面に移行させる役割を担い、この場合、表面活性基は表面上に露出される。結果として、本明細書に記載の物品のいずれについてもその表面にある表面改質剤は、他の表面との接触により活性化されると、混加物から表面への表面改質剤のマイグレーションにより連続的に補充される。後者の過程は、混加物の表面で低表面エネルギーを確立しようとする傾向により駆動されると考えられる。固着と表面マイグレーションとのバランスが達成された場合、表面改質剤は、ポリマーの表面に安定に残存すると同時に表面性を改質する。
【0041】
好適なベースポリマー(熱可塑性又は熱硬化性のいずれかでありうる)としては、汎用プラスチック、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(高密度、低密度、極低密度)、ポリプロピレン及びポリスチレン、エンジニアリングプラスチック、例えば、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(ブチレンテレフタレート))、ポリアミド(脂肪族、アモルファス、芳香族)、ポリカーボネート(例えば、ビスフェノールAから誘導されるような芳香族ポリカーボネート)、ポリオキシメチレン、ポリアクリレート及びポリメタクリレート(例えば、ポリ(メチルメタクリレート))、いくつかの変性ポリスチレン(例えば、スチレン-アクリロニトリル(SAN)コポリマー及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー)、高耐衝撃性ポリスチレン(SB)、フルオロプラスチック、及びポリ(フェニレンオキシド)-ポリスチレンやポリカーボネート-ABSのようなブレンド、高性能プラスチック、例えば、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン、ポリイミド及びポリエーテルイミド、熱硬化性物質、例えば、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂(例えば、メラミン樹脂及びウレア樹脂)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル(いわゆるビニルエステルを含む)、ポリウレタン、アリル系化合物(例えば、アリルジグリコールカーボネートから誘導されるポリマー)、フルオロエラストマー及びポリアクリレート、並びにそれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
ベースポリマーは、本発明に係る表面改質剤と混合して混加物を形成する。熱可塑性ポリマーは、その溶融加工性の点でより好ましい。熱可塑性ポリマーは、高温(例えば、200℃超、240℃超、270℃超、さらには300℃超)で溶融加工可能である。本発明に係る混加物で使用するのに望ましい熱可塑性ベースポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)、スチレン、ポリ塩化ビニル、及びそれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
表面改質剤は、種々の物品を製造するために、ベースポリマーの溶融加工前に添加される。溶融加工により混加物を形成するために、表面改質剤は、例えば、ペレット状又は粉末状のポリマーと混合可能であり、次に、例えば、成形、メルトブロー、溶融紡糸、又は溶融押出しのような公知の方法により溶融加工可能である。表面改質剤は、溶融状態でポリマーと直接混合可能であるか、又はブラベンダーミキサー中で、表面改質剤/ポリマー混加物の濃縮物の形態でポリマーと予め最初に混合しておくことができる。所望により、表面改質剤の有機溶液を粉末状又はペレット状のポリマーと混合し、続いて、溶媒を蒸発させ、次に、溶融加工することが可能である。他の選択肢として、繊維又は任意の他の所望の形状に押し出す直前に、表面改質剤を溶融ポリマーの流れに注入して、混加物を形成することができる。
【0044】
溶融加工後、ベースポリマーの撥性の展開を増進するためにアニーリング工程を行うことが可能である。そのようなアニーリング工程に加えて又はその代わりに、溶融加工して混合したものを2本の加熱ロール(その一方又は両方がパターン化されていてもよい)間でエンボス加工することも可能である。アニーリング工程は、典型的には、ポリマーの溶融温度よりも低い温度で行われる(例えば、ポリアミドの場合、約150〜220℃で5分間まで)。他の選択肢として、完成品を加熱滅菌処理することが可能である(例えば、54.4℃でエチレンオキシド滅菌(EtO滅菌))。
【0045】
表面改質剤は、特定の用途に望まれる撥性を達成するのに十分な量で、熱可塑性又は熱硬化性のポリマーに添加される。典型的には、使用される表面改質剤の量は、混加物の0.05〜15%(w/w)の範囲内である。その量は、経験的に決定可能であり、所要又は所望により、ポリマーの他の物理的性質を損なうことなく撥性を達成するように調整可能である。
【0046】
例えば、ベースポリマー-SMM混加物を加工してメルトブローン繊維又は溶融紡糸繊維を製造する場合、これらの繊維は、なんらかのレベルの撥性が望まれる任意の用途に有用な不織布を製造するために使用可能である。例えば、本発明に係るSMMは、医療用布、医療用及び工業用の衣服、衣類製造用布、家庭用の備品、及び濾過システム、例えば、化学プロセス用のフィルター及びレスピレーターに使用可能である。他の用途は、自動車工業及び建設工業にある。布は撥アルコール特性及び撥水特性を呈する。布はまた、さまざまな環境条件下で撥油特性(及び防汚特性)も呈することができ、また、さまざまな用途で使用することが可能である。
【0047】
不織ウェブ又は不織布は、メルトブローンウェブ又はスパンボンドウェブのいずれかの製造に使用されるプロセスにより作製可能である。例えば、「Superfine Thermoplastic Fibers」 Indus. Eng'g Chem. 48, 1342 (1956)中でWenteにより、又は「Manufacture of Superfine Organic Fibers」 Naval Research Laboratories Report No. 4364 (1954)中でWenteらにより記述されたプロセスに類似したものを使用することが可能である。不織布から製造される多層構成体は、例えば医療用布として、広範な工業上及び商業上の有用性を備えている。そのような多層構成体の構成層の構造は、所望の最終用途特性によってさまざまでありうる。また、構成体は、米国特許第5,145,727号明細書(Pottsら)及び米国特許第5,149,576号明細書(Pottsら)(それらの記載内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されるような多くの有用な組み合わせにおいて、2層以上のメルトブローンウェブ及びスパンボンドウェブを含むことができる。多層構成体において、表面改質剤は、構成体全体に撥特性を付与するように1層以上の層で使用可能である。
【0048】
他の選択肢として、ベースポリマー-SMM混加物は、適切な成形型を用いて所望の形状を生成するように溶融加工される。
【0049】
物品
本発明に係る表面改質剤及び混加物は、押出し品(例えば、熱可塑性フィルム、熱可塑性繊維、繊維状不織布材料、熱可塑性フォーム材料等)の形態で、多くの場合200℃を超える高温加工を必要とするフィルム及び不織布用途(例えば、サージカルドレープ、ガウン、フェイスマスク、ラップ、バンデージ、及び他の医療技術者用防護着(例えば、作業着、実験着))で使用可能であり、この場合、加工温度は、250〜300℃の範囲に達することもある。本発明に係る表面改質剤及び混加物はまた、インプラント可能な医療用デバイス(例えば、低減された閉塞性及び増大された血液適合性を付与するための中心静脈カテーテル)で使用可能である。本発明に係る表面改質剤及び混加物はまた、流体又はガスの分離のために、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリシロキサンのベースポリマーから製造される中空繊維膜濾過で使用してもよい。
【0050】
本発明に係る表面改質剤及び混加物は、不織布の製造において加工時に必要とされる高温安定性を有するか、又はカテーテルの製造で使用されるポリマーとの適合性を有する。従って、この混加物は、高温で所要の耐分解性を提供することができると同時に、所望の生体適合性と共に、撥水性及び/又は撥油性及び/又は撥アルコール性を提供することができる。この技術では、SMMをベースポリマーに組み込んでから、表面に堆積させることによりポリマーの表面を改質するが、バルクの性質は元のまま保持される。ベースポリマーは、この時点では高度の疎水性を備えたフッ素化表面を有する。
【0051】
インプラントデバイス
本発明に係る混加物から形成可能な物品としては、インプラントデバイスが挙げられる。インプラントデバイスとしては、人工装具、例えば、ペースメーカー、電気リード、例えば、ペーシングリード、除細動器、人工心臓、心室補助デバイス、解剖学的に再構築した人工装具、例えば、乳房インプラント、人工心臓弁、心臓弁ステント、心膜パッチ、サージカルパッチ、冠動脈ステント、血管グラフト、血管ステント及び構造ステント、血管シャント又は心血管シャント、生体導管、綿撒糸、縫合糸、弁輪形成リング、ステント、ステープル、弁付きグラフト、創傷治癒用真皮グラフト、整形外科用脊椎インプラント、整形外科用ピン、子宮内デバイス、尿道ステント、顎顔面再構築プレート、歯科用インプラント、眼内レンズ、クリップ、胸骨ワイヤー、骨、皮膚、靭帯、腱、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。経皮デバイスとしては、種々のタイプのカテーテル、カニューレ、ドレナージチューブ、例えば、胸腔チューブ、外科用器具、例えば、鉗子、開創器、針、及び手袋、並びにカテーテルカフが挙げられるが、これらに限定されるものではない。皮膚用デバイスとしては、火傷ドレッシング、創傷ドレッシング、及び歯科用金属製品、例えば、橋脚及び歯列矯正具が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
特定の実施形態では、ソフトセグメントとしてポリシロキサンを含む表面改質剤を含む混加物は、カテーテルの製造に使用される。
【0053】
以下の例は、本明細書中で特許請求された方法及び化合物をどのように実施、製造、及び評価するかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されており、本発明を単に例示することを意図したものであって、本発明者らが自らの発明とみなす範囲を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0054】
本発明に係るSMMは、ハードセグメント(例えばジイソシアネート又はトリイソシアネート)と中央のソフトセグメント(例えばジオール)とフッ素化末端キャッピング基とを適切に設計して組み合わせることにより、所望の高い分解温度を有する広範なポリウレタンを形成することができ、特に、重合時にビスマス触媒を利用することにより構築可能である。これらは、限定されるものではないが、以下に挙げる成分試薬を含む。
【0055】
・ジイソシアネート
HMDI=4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)
IPDI=イソホロンジイソシアネート
TMXDI=m-テトラメチレンキシレンジイソシアネート
HDI=ヘキサメチレンジイソシアネート
・トリイソシアネート(ハードセグメント)
Desmodur N3200又はDesmodur N-3200=ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ビウレット型三量体
Desmodur Z4470A又はDesmodur Z-4470A=イソホロンジイソシアネート(IPDI)三量体
Desmodur N3300=ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)三量体:
・ジオール/ポリオール(ソフトセグメント)
HLBH=水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン、
PCN=ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール
PHCN=ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール
PEGA=アジピン酸ポリ(ジエチレングリコール)
PTMO=ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール
PDP=ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール
HHTPI=水素化ヒドロキシル末端ポリイソプレン
C22=ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー
ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)ポリマーブロックコポリマー(「PEO-PPO-PEO Pluronicポリマー」)
DDD=1,12-ドデカンジオール
・フッ素化末端キャッピング基
C6-FOH=(CF3)(CF2)5CH2CH2OH(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクタノール)
C8-FOH=(CF3)(CF2)7CH2CH2OH(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカノール)
C6-C8 FOH=(CF3)(CF2)7CH2CH2OH及び(CF3)(CF2)5CH2CH2OH(C6-FOHとC8-FOHとの混合物、BAL-Dとも記される)
C4-FOH=CHF2(CF2)3CH2OH(1H,1H,5H-ペルフルオロ-1-ペンタノール)
C3-FOH=(CF3)(CF2)2CH2OH(1H,1H-ペルフルオロブタノール)
・非スズ系触媒
Bi348−カルボン酸ビスマスタイプ1
Bi221−カルボン酸ビスマスタイプ2
Bi601−カルボン酸ビスマスタイプ3
以上に列挙されたビスマス触媒は、King Industries(Norwalk CT)から購入可能である。当技術分野で公知のビスマス触媒はいずれも、本発明に係るSMMの合成に使用可能である。
【0056】
[実施例1]SMM4及びSMM6の一般的な合成スキーム
SMM4及びSMM6のような本発明に係る表面改質剤は、スキーム1及び2に示されるスキームに従って二工程の収束法により合成可能である。簡潔に述べると、有機溶媒(例えば無水THF又はジメチルアセトアミド(DMAC))中、触媒の存在下、25℃で、ポリイソシアネート(例えば、Desmodur N3200又はDesmodur 4470)を表面活性基(例えば、フルオロアルキルアルコール)と、滴下により2時間反応させることができる。フッ素化アルコールの添加後、撹拌を50℃で1時間、さらに70℃で1時間継続する。これらの工程により、部分的にフッ素化された中間体が形成される。次に、この中間体を14時間にわたり70℃でポリオール(例えば水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン又はポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール)と結合させることで、SMMが提供される。反応は水分に敏感であるので、不活性N2雰囲気下かつ無水条件下で行われる。また、望ましくない副反応を回避するために、特に部分フッ素化中の温度プロファイルを注意深く保持する。反応生成物をMeOH中で沈澱させ、追加のMeOHで数回洗浄する。最初に、熱THF中又は熱IPA中にSMMを溶解させ、続いて、このSMMをEDTA溶液と反応させ、続いて、MeOH中で沈殿させることにより、触媒残渣を除去する。最後に、SMMを使用前に120〜140℃でロータリーエバポレーター中で乾燥させる。
【化7】
【化8】
【0057】
[実施例2]SMM5の合成
すべてのガラス製品を110℃のオーブン中で一晩乾燥させた。攪拌子及び還流冷却器を備えた三口5000mL反応器に300g(583mmol)のDesmodur N3300を添加した。混合物を周囲温度で一晩脱気した。水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン(HLBHポリオール MW=2000)を2000mLフラスコに計量して入れ、60℃で一晩脱気した。ビスマス触媒K-Kat 348(カルボン酸ビスマス、King Industriesから入手可能)を250mLフラスコに計量して入れ、周囲温度で一晩脱気した。過フッ素化アルコールを1000mLフラスコに計量して入れ、周囲温度で30分間脱気した。脱気後、すべての容器を窒素でパージした。
【0058】
次に、300mLのTHF(又はDMAC)をDesmodur N3300含有容器に添加し、混合物を撹拌してポリイソシアネートを溶解させた。同様に、622mLのTHFをHLBHポリオールに添加し、混合物を撹拌してポリオールを溶解させた。同様に、428mLのTHF(又はDMAC)を過フッ素化アルコールに添加し、混合物を撹拌して溶解させた。K-Kat 348についても同様に、77mLのTHF又はDMACに溶解させた。すべての試薬がそれらのそれぞれの容器内で確実に溶解されように撹拌を継続した。
【0059】
K-Kat溶液の半分を過フッ素化溶液に移して5分間攪拌した。この溶液を、窒素の正圧下で、カニューレ(両頭針)を介して周囲温度(25℃)で2時間かけて、Desmodur N3300溶液を含む反応容器に滴下した。添加後、温度を50℃に1時間上昇させ、そして70℃にさらに1時間上昇させた。全体を通して適正な撹拌を保持した。残りのK-Kat 348触媒をHLBH-2000のフラスコに移し、攪拌溶解後、これを、N3300を含む反応器に添加した。反応混合物を70℃で一晩かけて14時間反応させ、4個のフッ素化末端基を有するSMM5を生成させた。
【0060】
SMM/ポリマー混加物
SMM溶液を周囲温度で冷却させた。30Lフラスコに15リットルのMeOH(メタノール)を充填し、10分間にわたり一定した攪拌を行いながら、この容器内にポリマー溶液をゆっくり注いで加えた。その時点で、ポリマーは沈殿析出し始めた。クルードなポリマーを沈降させ、上澄みを吸い取った。毎回激しく攪拌しながらポリマーをMeOH(5L)で2回洗浄した。ポリマーを70℃のTHFに再溶解させ、EDTA溶液(240mL)を添加した。これを70℃で攪拌し、その後、さらに240mLのEDTA溶液を添加した。加熱を停止し、溶液をさらに30分間撹拌した。この混合物に15LのMeOHをゆっくり添加してポリマーを沈殿させた。上澄みを注意深く吸い出し、毎回5Lを用いてMeOHを2回にわけて添加することにより洗浄を終了した。ポリマーをロータリーエバポレーターに移して120〜140℃で乾燥させた。精製ポリマーをデシケーター内のガラス瓶で貯蔵した。
【0061】
本明細書に記載の手順に従って調製可能な代表的SMMの例は、図1a〜1nに図解されている。
【0062】
[実施例3]熱安定性
表面改質剤(SMM)の熱分解温度を熱重量分析装置(TGA)により決定した。熱重量分析(TGA)は、多くの場合、温度の関数としての重量損失分解プロファイルを利用して、熱安定性を決定するために使用される。これは、Dynamic(High Resoltion)Hi-Res(商標)モード <分解能:4、最大ランプ値:50℃/min、最大温度:500℃で作動するTA instruments TGA Q500(オートサンプラー付きV6.3 Build 189)Thermogravimetric Analyzerを用いて行った。
【0063】
簡潔に述べると、加熱炉部の外に位置する化学天秤から吊り下げられた100μL白金皿中に20〜50mgの各サンプルを配置した。天秤の目盛りをゼロに合わせた後、N2(流量 40cc/min 天秤、60cc/min 炉)の窒素雰囲気中でサンプル皿を周囲温度から500℃に加熱した。Hi-Res TGAモードで、サンプル重量損失速度の関数として加熱速度を変化させることにより、重量損失のない領域では、高い加熱速度を使用し、また、重量損失の移行域では、低減された加熱速度を使用して、試験サンプルの分解特性をより正確に表すことが可能である。この技術によれば、オーバーラップする事象又は境界が不明瞭な事象を分離することによって、開始点の再現性及び分解能が改善され、また、分解挙動の加熱速度への依存性が排除される。重量損失及び重量損失速度(又は微分)を示すTGAプロットは、Universal Analysis 2000ソフトウェア(TA Instruments - Waters LLC, version 4.1D)を用いて温度に対してプロットした。材料が完全に乾燥している場合、加熱時、分解の開始に表す開始点(ポリマーの性質に依存して1個又は2個)が存在する。
【0064】
例示的な実施例として、図2は、SMM2のプロファイルを示しており、第1の開始点がTd1=285℃の分解温度において示され、また、フルオロ末端基及びハードセグメント(イソシアネート結合)に起因する副重量損失(-1%)に続いて、SMMのソフトセグメント(ポリオール結合)に起因するTd2=397℃での主重量損失(-61%)が示されている。
【0065】
図2〜8は、異なる化学的性質を有するSMMの種々の実施例の熱分解パターンを示している。SMM2(図2)、SMM3(図3)、SMM5(図4)、SMM7(図5)、SMM8(図6)、SMM10(図7)、及びSMM11(図8)は、高分解能熱重量プロット(High Resolution Themogravimateric Plot)により表されている。他の熱的データ及びポリマー特性解析データは、TGA及びEAの結果を含めて、図9にまとめられている。
【0066】
[実施例4] 元素分析(EA)によるバルクフッ素分析
バルク元素(炭素、水素、窒素、及びフッ素)組成は、炭素、水素、及び窒素に対する燃焼元素分析器を用いて、ASTM D-5987に従いGalbraith Labs(Knoxville, TN)によって分析された。フッ素含有量は、酸素燃焼ボンベ及びフッ化物イオン選択性電極を用いて、酸素フラスコ内の希塩基溶液中にフッ素蒸気が吸収されることにより生成されるフッ化物イオンを測定して分析した。図9の元素フッ素から、全てのSMMが、15%超の良好なバルクフッ素を有することが示唆される。
【0067】
[実施例5] X線光電子分光法(XPS)による表面元素分析
Carbothane(商標)(Thermedics Inc MA, USA)、PE、及びPPを対照ポリマー及びベースポリマーとして使用した。実施例2に従って調製されたSMM混加物をXPSにより分析して、表面フッ素(疎水性)の濃度の他にウレタンの化学的性質(極性基)を測定した。測定は、100Åの深さに対応する90°の又は10Åの深さに対応する20°の一つの取出し角度で行い、4×7mm2の表面領域を分析した。フィルムは、フッ素(F)、酸素(O)、窒素、炭素(C)、及びケイ素(Si)の相対的な原子の割合に関して調べた。SMMで改質された3つの異なるベースポリマーについて、対象元素であるフッ素(F)のみの原子百分率の結果を表1及び図10に例として提供する。このデータから、SMMが、医療産業で使用される、広範なベースポリマーと適合可能であることがデータから例証される。
【表1】
【0068】
[実施例6] 不織布において撥性のために使用されるSMM
(i) SMM改質メルトブローン不織布の撥性
MFI=1200g/10min(230℃/2.16kg)を有するメルトブローグレードのポリプロピレン(Basell Polyolefins社製のPP MF650X)を用いて、6"パイロットラインで行われるメルトブロー試験でSMMを使用した。最初に、SMM添加剤をマスターバッチ中にコンパウンドし、メルトブロープロセスで2〜3重量%の濃度に希釈した。SMM添加剤のマイグレーションを促進するために、ポリプロピレンの結晶化速度を遅くすることができる加工助剤(例えば、市販の低分子量炭化水素ポリマー)を10wt%で使用した。不織布は、0.4g/孔/minのスループットで、260℃にてメルトブロープロセスを行って得た。作製された不織布は、触感が柔らかく、約25 gsmの基本重量及び約3μmの繊維直径を有していた。撥性試験は、種々の濃度の70%イソプロパノール(IPA)溶液を用いて、メルトブロー製造ラインから送出された直後の布で行った。エアフローオーブン中、低温でアニールした後、再度、布を試験した。American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC)標準試験法193-2005を、割合の代わりに体積濃度で溶液を調製するように変更を加えて、布の撥性試験に使用した。図11は、製造ラインから送出された布(MB)では最小の撥性を有していたが(30%の撥IPA性)、低温でアニールした後で撥性が劇的に増大したことを示している(12時間にわたり60℃でアニールした後では、70%の撥IPA性であり、65℃でアニールした後では75%超の撥IPA性である)。標準的なEtO滅菌サイクル(54.4℃)を行った後でも、メルトブローン布は、70%IPA溶液に対する撥性を示した(図12)。
【0069】
図13は、処理済み及び未処理の不織布の撥性を示している。対照の布(SMM処理なしのポリプロピレン)は、70%IPAの液滴の透過により示唆されるように撥性を示さないが(湿潤性)、右側の布は、湿潤せずに布上にあるIPAの液滴の形状により示唆される顕著な撥性を示す。滅菌中に熱に晒すことにより、追加のアニーリングを必要とすることなくSMM添加剤のマイグレーションを十分に促進する。
【0070】
さらに、布の所望される撥性は、100〜130℃の温度に接触しながら短時間晒す(2〜10秒)ことでも達成可能である。医療用衣類の布は、帯電防止処理剤の乾燥や多層布のカレンダー接合のような標準的な製造プロセスの間そのような条件を経てもよい。図14は、100〜130℃のホットプレート表面に短時間直接接触させた後、MB布で達成された撥性を示している。
【0071】
(ii) SMM改質スパンボンド不織布の撥性
SMMは、スパンボンドパイロットラインの条件を模倣するように構成されたR&Dプロトタイプ装置を用いて行われるスパンボンド(SB)試験で使用した。具体的には、4つの温度域を備えた小型押出し機を、計量ポンプ及び68個の紡糸口金孔を備えたダイに接続した。押出機は、高圧空気を供給するアテニュエーターガン(attenuator gun)(押し出した繊維を延伸するために使用した)中に押し出された繊維を方向付けるガイドシャフト上の骨組みに定置した。細くなった繊維をランダムに可動メッシュ上に堆積させた。こうして形成された不織ウェブは、接着されていなかった。
【0072】
このSMMは、5〜10wt%の加工助剤と共に1〜2wt%の濃度で、MFI=36g/10min(230℃/2.16kg)を有するスパンボンドグレードのポリプロピレン(Exxon Mobil社製のPP3155)中にコンパウンドした。このコンパウンドした樹脂は、ダイにおいて230℃のプロセス温度であるR&D装置を用いて、スパンボンド不織ウェブへと押出した。
【0073】
このスパンボンドウェブは、120℃の加熱表面との5秒間の直接接触によりアニールした後、又は54.4℃の標準サイクルで不織ウェブをEtO滅菌した後、IPA溶液に対する撥性について試験した。図15は、80vol%IPA程度の高い濃度を有するアルコール溶液に対する撥性が、SMMで改質されたスパンボンド布上で達成可能であることを示している。
【0074】
これらの結果から、合成されたSMMは、(メルトブローン又はスパンボンド)不織布に、撥アルコール性(70%IPA)を付与するうえで非常に重要な有用性を有することが示される。
【0075】
他の実施形態
本明細書に挙げられた出版物、特許、及び特許出願はすべて、個々の出版物又は特許出願が具体的かつ個別的に明示されて参照により組み込まれたのと同程度まで、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0076】
本発明をその特定の実施形態と関連させて説明してきたが、当然のことながら、さらなる修正が可能であり、本出願は、一般に本発明の原理に従い、また、本発明の関連する技術の範囲内である公知又は慣用の規範に入り、以上に示された本質的特徴に適用し得るような本開示からの逸脱を含む、本発明の変形、使用、又は調整を包含することが意図されており、特許請求の範囲内に従う。
【0077】
他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い分解温度を有する表面改質用巨大分子(SMM)、及び高温加工を必要とするベースポリマーから作製される物品(article)の製造におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のフッ素化学品は、さまざまな基材に撥水性及び撥油性さらには防汚性を付与するために使用されてきた。これらのフッ素化学品は、ほとんどの場合、(例えば、スプレー処理、パディング処理、又は仕上げ浴浸漬により)局所適用されてきた。得られた撥性基材は、例えば医療技術者用や実験室作業者用の防護服の場合のように、撥水特性及び/又は撥油特性(さらに防汚特性)が重要視される多くの用途で使用されてきた。撥性基材は、例えば、血液、血液媒介病原体、その他の体液が布を透過するのを防止したり(即ち、化学毒性因子又は感染性因子に晒されるのを阻止したり)、アルコールやケトン、アルデヒドといった低表面張力化学物質に晒されるのを低減したりすることが望まれる場合に使用可能である。
【0003】
商業的に使用される医療用衣類や防護用衣類は、多くの場合、熱可塑性フィルム、熱可塑性繊維、繊維状不織材料、熱可塑性フォーム材料等の押出し品から全部又は一部が構成される。これらの製品の例としては、サージカルドレープ、サージカルガウン、及び手術用包帯、防護用衣類(特に、例えば、作業着、フェイスマスク、及び実験着)が挙げられる。これらの材料は、多くの場合、200℃を超える高温加工条件を必要とする。
【0004】
多くのフッ素化学品は、200℃超の温度で加工するのに必要な熱安定性が欠如している(例えば、275〜300℃を超える高い押出し温度が必要とされる場合が多い、溶融紡糸用途において)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、撥水性、撥油性、及び/又はより低い表面エネルギーを付与するための、高温加工を必要とするベースポリマーと混合して使用可能な熱安定性添加剤の必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高い分解温度を有する表面改質用巨大分子(SMM又は表面改質剤)添加剤を提供する。このSMMは、高温加工を必要とするベースポリマーから作製される物品の製造に有用である。
【0007】
従って、第一の態様では、本発明は、式(I):
【化1】
で示される表面改質剤を特徴とする。
【0008】
式(I)中、Aはソフトセグメント、例えば、水素化ポリブタジエン、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)、ポリブタジエン、アジピン酸ポリ(ジエチレングリコール)、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステル、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(PrO-PDMS-PrO)ブロックコポリマー、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、水素化ヒドロキシル末端ポリイソプレン、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール) ブロックコポリマー、1,12-ドデカンジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ポリ(エチレン-co-ブチレン)、1,6-ヘキサンジオール-無水オルトフタル酸ポリエステル、ネオペンチルグリコール-無水オルトフタル酸ポリエステル、もしくはビスフェノールAエトキシレート、又は1,6-ヘキサンジオール-無水オルトフタル酸ポリエステルであり、Bはハードセグメント、例えば、ウレタン型三量体(urethane trimer)又はビウレット型三量体であり、Gは表面活性基であり、かつnは、0〜10の整数(例えば、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)である。
【0009】
式(I)で示される表面改質剤は、少なくとも200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、さらには350℃の熱分解温度を有することが可能である。特定の実施形態では、表面改質剤は、200〜250℃、220〜250℃、220〜300℃、220〜280℃、220〜260℃、240〜300℃、240〜280℃、240〜260℃、260〜300℃、260〜280℃、200〜345℃、220〜345℃、250〜345℃、275〜345℃、300〜450℃、320〜450℃、340〜450℃、360〜450℃、380〜450℃、400〜450℃、420〜450℃、300〜430℃、300〜410℃、300〜400℃、300〜380℃、300〜360℃、300〜340℃、及び300〜320℃の熱分解温度を有する。
【0010】
特定の実施形態では、ソフトセグメントは、500〜3,500ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する。いくつかの実施形態では、Mnは、500〜1000、500〜1250、500〜1500、500〜1750、500〜2000、500〜2250、500〜2500、500〜2750、500〜3000、500〜3250、1000〜1250、1000〜1500、1000〜1750、1000〜2000、1000〜2250、1000〜2500、1000〜2750、1000〜3000、1000〜3250、1000〜3500、1500〜1750、1500〜2000、1500〜2250、1500〜2500、1500〜2750、1500〜3000、1500〜3250、又は1500〜3500ダルトンである。さらに他の実施形態では、表面活性基は、100〜1,500ダルトンの分子量を有する。さらに他の実施形態では、表面活性基は、100〜1,500、100〜1,400、100〜1,300、100〜1,200、100〜1,100、100〜1,000、100〜900、100〜900、100〜800、100〜700、100〜600、100〜500、100〜400、100〜300、又は100〜200ダルトンの分子量を有する。
【0011】
表面活性基としては、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、ポリフルオロアルキル、フッ素化ポリエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。望ましくは、表面活性基は、ポリフルオロアルキル、例えば、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-デカノール((CF3)(CF2)7CH2CH2OH)、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-オクタノール((CF3)(CF2)5CH2CH2OH)、1H,1H,5H-ペルフルオロ-1-ペンタノール(CHF2(CF2)3CH2OH)、及び1H,1H-ペルフルオロ-1-ブタノール((CF3)(CF2)2CH2OH)、もしくはそれらの混合物(例えば、(CF3)(CF2)7CH2CH2OHと(CF3)(CF2)5CH2CH2OHとの混合物)、又は一般式CF3(CF2)rCH2CH2-〔式中、rは2〜20である〕及びCF3(CF2)s(CH2CH2O)χ-〔式中、χは1〜10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10)であり、かつsは1〜20(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20)である〕で示される基である。
【0012】
特定の実施形態では、nは、0〜5の整数(例えば、0、1、2、3、4、又は5)である。望ましくは、nは、0、1、又は2である。
【0013】
本発明に係る表面改質剤は、25kDa未満、望ましくは、20kDa未満、18kDa未満、16kDa未満、15kDa未満、14kDa未満、13kDa未満、12kDa未満、11kDa未満、10kDa未満、8kDa未満、6kDa未満、さらには4kDa未満の理論分子量を有することが可能である。他の実施形態では、本発明に係る表面改質剤は、9kDa、8.5kDa、7.5kDa、7kDa、6.5kDa、5.5kDa、5kDa、4.5kDa、3.5kDa、3kDa、2.5kDa、2kDa、1.5kDa、又は1kDaの理論分子量を有する。
【0014】
本発明に係る表面改質剤は、5%〜35%、10%〜35%、5〜30%、10〜30%、5〜20%、5〜15%、又は15〜30%(w/w)のハードセグメント、40〜90%、50〜90%、60〜90%、40〜80%、又は40〜70%(w/w)のソフトセグメント、及び25〜55%、25〜50%、25〜45%、25〜40%、25〜35%、25〜30%、30〜55%、30〜50%、30〜45%、30〜40%、30〜35%、35〜55%、35〜50%、35〜45%、35〜40%、40〜55%、40〜50%、40〜45%、45〜55%、45〜50%、又は50〜55%(w/w)の表面活性基を含むことが可能である。
【0015】
本発明はまた、ベースポリマーと混合した、本発明に係る表面改質剤を含む混加物(admixture)を特徴とする。特定の実施形態では、ベースポリマーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリシリコーン、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)、ポリ塩化ビニル、及びそれらのブレンドから選択される。例えば、水素化ポリブタジエンを含むSMMは、ポリプロピレン又はポリエチレンと混合可能であり、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)を含むSMMは、ポリウレタンと混合可能であり、また、ポリ(エチレン-co-ブチレン)を含むSMMは、ポリエチレン又はポリウレタンと混合可能である。
【0016】
混加物は、(i)ベースポリマーと表面改質剤とを混合して混合物を形成すること、及び(ii)この混合物を200℃超、220℃超、250℃超、270℃超、300℃超、320℃超、又は350℃超に加熱することにより調製可能である。本発明に係る混加物は、0.05%〜20%、0.05%〜15%、0.05%〜13%、0.05%〜10%、0.05%〜5%、0.05%〜3%、0.5%〜15%、0.5%〜10%、0.5%〜6%、0.5%〜4%、1%〜15%、1%〜10%、1%〜8%、1%〜6%、1%〜5%、2%〜5%、又は4%〜8%(w/w)の表面改質剤を含有する。
【0017】
本発明はさらに、本発明に係る混加物から形成される物品を特徴とする。本発明に係る混加物を用いて形成可能な物品としては、手術帽、サージカルシート、サージカルカバークロス(surgical covering clothes)、サージカルガウン、マスク、手袋、サージカルドレープ、フィルター(例えば、レスピレーター、ウォーターフィルター、エアフィルター、又はフェイスマスクの一部)、ケーブル、フィルム、パネル、パイプ、ファイバー、シート、及びインプラント可能な医療用デバイス(例えば、心臓補助デバイス、カテーテル、ステント、補綴インプラント、人工括約筋、又は薬剤送達デバイス)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明はまた、(i)ベースポリマーと、本発明に係る表面改質剤とを混合して混合物を形成すること、及び(ii)この混合物を少なくとも150℃に加熱することにより物品を作製する方法を特徴とする。望ましくは、混合物は、250℃〜450℃の温度に加熱される。
【0019】
本発明はさらに、式(I):
【化2】
〔式中、Aは、ソフトセグメントであり、Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、各Gは、表面活性基であり、nは、0〜10の整数である〕
で示される表面改質剤の熱分解温度を増大させる方法を特徴とする。ただし、この方法は、以下の工程、即ち、
(a) ウレタン型三量体又はビウレット型三量体をモノヒドロキシル表面活性基と反応させる工程、及び
(b) (a)の生成物をソフトセグメントと反応させる工程、
を含む(工程(a)又は(b)は、ビスマス触媒(例えばカルボン酸ビスマス触媒)の存在下で行われる)。
【0020】
特定の実施形態では、ジオールソフトセグメントは、水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ポリ(エチレン-co-ブチレン)ジオール、ヒドロキシル末端ポリブタジエンポリオール、アジピン酸ポリ(ジエチレングリコール)、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール、1,6-ヘキサンジオール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール、ネオペンチルグリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール、及びビスフェノールAエトキシレートジオールから選択される。特定の実施形態では、工程(a)は、ジイソシアネートを水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン又はポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオールと反応させることを含む。他の実施形態では、ジイソシアネートは、3-イソシアナトメチル、3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、4,4'-メチレンビス(フェニル)イソシアネート、トルエン-2,4-ジイソシアネート)、及びヘキサメチレンジイソシアネートから選択される。本発明に係るSMMの製造に有用なモノヒドロキシル表面活性基としては、本明細書中に開示されたいずれかが挙げられる。特定の実施形態では、モノヒドロキシル表面活性基は、一般式CF3(CF2)rCH2CH2OH〔式中、rは2〜20である〕及びCF3(CF2)s(CH2CH2O)χCH2CH2OH〔式中、χは1〜10(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)であり、かつsは1〜20(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20)である〕で示される化合物から選択される。
【0021】
本発明はまた、式(II):
【化3】
〔式中、Aは、ソフトセグメントであり、Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、B'は、ウレタンを含むハードセグメントであり、かつ各Gは、表面活性基であり、nは、0〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)であり、表面改質剤は、250℃〜450℃の熱分解温度を有する〕
で示される表面改質剤を特徴とする。式(II)で示される表面改質剤は、少なくとも200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、さらには350℃の熱分解温度を有することが可能である。特定の実施形態では、表面改質剤は、200〜250℃、220〜250℃、220〜300℃、220〜280℃、220〜260℃、240〜300℃、240〜280℃、240〜260℃、260〜300℃、260〜280℃、200〜345℃、220〜345℃、250〜345℃、275〜345℃、300〜450℃、320〜450℃、340〜450℃、360〜450℃、380〜450℃、400〜450℃、420〜450℃、300〜430℃、300〜410℃、300〜400℃、300〜380℃、300〜360℃、300〜340℃、及び300〜320℃の熱分解温度を有する。
【0022】
式(II)で示される表面改質剤は、本発明に係る方法、物品、及び混加物のいずれにも使用可能である。
【0023】
本発明はまた、表面改質剤をベースポリマーと共にアニールすることにより撥性を増大させる方法(アニーリング温度は50℃〜75℃であり、かつアニーリング時間は1〜24時間である)を特徴とする。
【0024】
いくつかの実施形態では、表面改質剤は、以下の構造:
【化4】
〔式中、Aは、ソフトセグメントであり、Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、B'は、ウレタンを含むハードセグメントであり、各Gは、表面活性基であり、nは、0〜10の整数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)であり、かつ、この表面改質剤は、250℃〜450℃の熱分解温度を有する〕を有する。特定の実施形態では、表面改質剤は、200〜250℃、220〜250℃、220〜300℃、220〜280℃、220〜260℃、240〜300℃、240〜280℃、240〜260℃、260〜300℃、260〜280℃、200〜345℃、220〜345℃、250〜345℃、275〜345℃、300〜450℃、320〜450℃、340〜450℃、360〜450℃、380〜450℃、400〜450℃、420〜450℃、300〜430℃、300〜410℃、300〜400℃、300〜380℃、300〜360℃、300〜340℃、及び300〜320℃の熱分解温度を有する。
【0025】
いくつかの実施形態では、アニーリング温度は、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、54.4℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、70℃、又は75℃である。他の実施形態では、アニーリング時間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12時間である。
【0026】
本明細書中で用いられる場合、「表面改質剤」とは、本明細書に記載の化合物又は米国特許第6,127,507号明細書もしくは米国特許出願第12/002,226号明細書(それらはいずれも参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載の化合物を意味する。表面改質剤はまた、20kDa未満の中心部分を含みかつ少なくとも1個の表面活性基に共有結合されている、比較的低分子量のポリマー又はオリゴマーとして記述可能である。表面改質剤は低分子量であるので、ベースポリマーの巨大分子ポリマー鎖間を拡散可能である。
【0027】
「表面活性基」とは、表面改質剤に共有結合された親油性基を意味する。表面活性基は、表面改質剤のポリマー中心部分の一方又は両方の末端をキャッピングするように配置可能であり、あるいは、表面改質剤のポリマー中心部分に存在する1個以上の側鎖に結合可能である。表面活性基の例としては、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、ポリフルオロアルキル、フッ素化ポリエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本明細書中で用いられる場合、「熱分解温度」という用語は、サーモグラフィー分析時のSMMの重量損失の開始点(小さい重量損失を示す第1の開始点、それに続く、その重量の大部分を示す、相当に高い温度での第2の開始点)が存在する温度を意味する。
【0029】
SMMの熱安定性はまた、過酷な加熱条件下で、例えば、10及び25分間にわたり220、260、及び300℃で試験され、対応する重量損失は、これらの温度で決定された。これらは、高温を必要とする条件で加工時にポリマーが受ける典型的な温度である。等温条件下での10及び25分間の長い加熱時間は、やや過酷であり、実際には、ポリマーは、実際の加工時、より短い滞留時間(例えば5分未満)を経るにすぎないであろう。このほかに、長い加熱時間により、これらの表面改質剤の一体性が試験され、また、10及び25分間で生じる重量損失による分解度が評価される。この分析は、実施例1に記載されている。
【0030】
本発明の他の特徴及び利点は、図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1a】SMM1の化学構造を示している。
【図1b】SMM2の化学構造を示している。
【図1c】SMM3の化学構造を示している。
【図1d】SMM4の化学構造を示している。
【図1e】SMM5の化学構造を示している。
【図1f】SMM6の化学構造を示している。
【図1g】SMM7の化学構造を示している。
【図1h】SMM8の化学構造を示している。
【図1i】SMM9の化学構造を示している。
【図1j】SMM10の化学構造を示している。
【図1k】SMM11の化学構造を示している。
【図1l】SMM12の化学構造を示している。
【図1m】SMM13の化学構造を示している。
【図1n】SMM14の化学構造を示している。
【図2】SMM2の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=284℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-1%)に続きT=396℃における主重量損失(-61%)が示される。
【図3】SMM3の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=295℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-1.1%)に続きT=405℃における主重量損失(-55.31%)が示される。
【図4】SMM5の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=306℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-1.34%)に続きT=433℃における主重量損失(-37.82%)が示される。
【図5】SMM7の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=295℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-2.29%)に続きT=365℃における主重量損失(-31%)が示される。
【図6】SMM8の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=290℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-0.43%)に続きT=415℃における主重量損失(-56.09%)が示される。
【図7】SMM10の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=293℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-1.30%)に続きT=347℃における主重量損失(-37.70%)が示される。
【図8】SMM11の高分解能熱重量プロファイルを表すグラフであり、分解温度Td1=294℃における第1の開始点が示され、副重量損失(-2.80%)に続きT=339℃における主重量損失(-40.16%)が示される。
【図9A】SMM1〜SMM14に対する熱的データ及びポリマー特性解析データ(TGA及びEAの結果を含む)を示している。
【図9B】SMM1〜SMM14に対する熱的データ及びポリマー特性解析データ(TGA及びEAの結果を含む)を示している。
【図10】SMMと混合した時の種々のベースポリマー(例えば、ポリウレタン、シロキサン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニル)の表面改質、及びXPS分析後のこれらのポリマーの表面上のフッ素パーセントを示すプロットである。
【図11】アニーリングの時間及び温度の関数として、表面改質メルトブローン(MB)布の撥IPA性を示している。
【図12】滅菌サイクル後の表面改質MB布の撥IPA性を示している。
【図13】処理済み及び未処理の不織布の撥性を示している。
【図14】100〜130℃のホットプレート表面との短時間の直接接触の後、MB布で達成された撥性を示している。
【図15】SMMで改質されたスパンボンド布で、80vol%程度の高いIPA濃度のアルコール溶液に対する撥性を達成可能であることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明に係る方法及び組成物は、特にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ポリウレタン、シリコーン、PVC、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンのような高温で加工される一連の市販のベースポリマーの表面改質に有用な熱安定性SMMを特徴とする。
【0033】
本発明は、フッ素化が強化されたヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレートをベースとする一連のSMMを特徴とする。SMMはまた、200℃超の温度での高温安定性及びベースポリマー(例えば、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシロキサン、ポリ塩化ビニル、及びポリカーボネート)との適合性を有し、また、インプラント可能なデバイス及びインプラント可能ではないデバイスの両方の物品の製造に使用可能である。
【0034】
所要の機能性を提供するために、本発明に係るSMM添加剤は、押出し、溶融紡糸、スパンボンド、溶剤紡糸、又は射出成形のいずれかに関らず、加工時に所望のベースポリマーに添加される。添加剤は、(a)耐熱性及び耐薬品性、機械的強度、(b)撥油性及び撥水性、(c)表面平滑性、(d)炭化水素、酸、極性溶媒、及び塩基に対する耐性、(e)高温寸法安定性、(f)疎水性、(g)非接着特性、(h)親水特性、(i)生体適合性、並びに(j)表面硬度を含む材料特性を付与可能であるが、これらの材料特性に限定されるものではない。
【0035】
本発明に係る表面改質剤は、式(I):
【化5】
〔式(I)中、
(i) Aは、Bにそれぞれ共有結合された2個のヒドロキシル末端基を含むソフトセグメントであり、
(ii) Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、かつ
(iii) 各Gは、表面活性基であり、
nは、0〜10の整数である〕
により記述可能である。
【0036】
ソフトセグメント
例示的なソフトセグメントとしては、水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン(HLBH)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール(PCN)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール(PHCN)、ポリ(エチレン-co-ブチレン)ジオール(PEB)、ヒドロキシル末端ポリブタジエンポリオール(LBHP)、アジピン酸ポリ(ジエチレングリコール)(PEGA)、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール(PTMO)、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール(PDP)、1,6-ヘキサンジオール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール(SPH)、ネオペンチルグリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール(SPN)、ビスフェノールAエトキシレートジオール(BPAE)、水素化ヒドロキシル末端ポリイソプレン(HHTPI)、ポリ(2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー(C22又はPrO-PDMS-PrO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、及びポリカプロラクトン(PCL)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
好適なハードセグメントとしては、ビウレット型三量体及びウレタン型三量体(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレート)が挙げられる。ハードセグメントとして使用するのに好適な例示的な三量体は、Bayer社製のDesmodur製品として入手可能である。本発明に係る巨大分子に有用な例示的なDesmodur製品としては、以下のものが挙げられる:
【化6】
【0038】
表面活性基
表面活性基としては、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、ポリフルオロアルキル、フッ素化ポリエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。望ましくは、表面活性基は、ポリフルオロアルキル、例えば、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-デカノール、1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-1-オクタノール、1H,1H,5H-ペルフルオロ-1-ペンタノール、及び1H,1H-ペルフルオロ-1-ブタノール、もしくはそれらの混合物、又は一般式CHmF(3-m)(CF2)rCH2CH2-もしくはCHmF(3-m)(CF2)s(CH2CH2O)χ-〔式中、mは0、1、2、又は3であり、χは1〜10の整数であり、rは2〜20の整数であり、かつsは1〜20の整数である〕で示される基である。
【0039】
本発明に係る表面改質剤は、米国特許第6,127,507号明細書(参照により本明細書に組み入れられるものとする)及び実施例1〜6に記載されるように調製可能である。本発明に係る表面改質剤は、熱安定性を付与するように選択されたソフトセグメントを含有するように選択可能である。そのようなソフトセグメントとしては、水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール、ヒドロキシル末端ポリブタジエンポリオール、アジピン酸ポリ(ジエチレングリコール)、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール、及び1,6-ヘキサンジオール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオールを挙げることができる。本発明はまた、ベースポリマーの加工技術に特有な条件との適合性を改良するために、本明細書に記載の合成方法によるSMMの熱安定性を増大させる方法を包含する。望ましくは、本発明に係るSMMは、ビスマス触媒(例えばカルボン酸ビスマス触媒)のようなスズを含まない触媒を用いて調製される。最終生成物中の残留スズは細胞傷害性であり、また、少量でも加熱時にSMMの分解を触媒・促進して、熱安定性の低下を招く可能性のあることが示されている。ウレタンの合成におけるビスマス触媒の使用は、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第4,584,362号明細書、同第4,742,090号明細書、同第4,788,083号明細書、同第5,064,871号明細書、及び同第6,353,057号明細書を参照されたい)。ビスマスは、非細胞傷害性でありかつ環境に優しい。ビスマス触媒の使用により、ポリマーの生体適合性が増大し、しかも改善された反応速度論的挙動がもたらされて、より狭い分子量分布を有しかつより熱安定性である生成物が得られる。スズの場合と同様に、加熱時の脱重合を防止するために、残留ビスマスレベルを最小限に抑えなければならない。本発明に係る方法で使用するために購入可能なビスマス触媒としては、Bi348、Bi221、及びBi601(カルボン酸ビスマス、King Industries, Norwalk CT)の他に、ビスマストリス(ネオデカノエート)(NeoBi 200, Shepherd Chemicals)が挙げられる。
【0040】
表面改質剤のソフトセグメントは、混合時にベースポリマー基材内で表面改質剤のアンカーとして機能しうる。表面活性基は、部分的には、表面改質剤を混加物の表面に移行させる役割を担い、この場合、表面活性基は表面上に露出される。結果として、本明細書に記載の物品のいずれについてもその表面にある表面改質剤は、他の表面との接触により活性化されると、混加物から表面への表面改質剤のマイグレーションにより連続的に補充される。後者の過程は、混加物の表面で低表面エネルギーを確立しようとする傾向により駆動されると考えられる。固着と表面マイグレーションとのバランスが達成された場合、表面改質剤は、ポリマーの表面に安定に残存すると同時に表面性を改質する。
【0041】
好適なベースポリマー(熱可塑性又は熱硬化性のいずれかでありうる)としては、汎用プラスチック、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン(高密度、低密度、極低密度)、ポリプロピレン及びポリスチレン、エンジニアリングプラスチック、例えば、ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)及びポリ(ブチレンテレフタレート))、ポリアミド(脂肪族、アモルファス、芳香族)、ポリカーボネート(例えば、ビスフェノールAから誘導されるような芳香族ポリカーボネート)、ポリオキシメチレン、ポリアクリレート及びポリメタクリレート(例えば、ポリ(メチルメタクリレート))、いくつかの変性ポリスチレン(例えば、スチレン-アクリロニトリル(SAN)コポリマー及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)コポリマー)、高耐衝撃性ポリスチレン(SB)、フルオロプラスチック、及びポリ(フェニレンオキシド)-ポリスチレンやポリカーボネート-ABSのようなブレンド、高性能プラスチック、例えば、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリスルホン、ポリイミド及びポリエーテルイミド、熱硬化性物質、例えば、アルキド樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂(例えば、メラミン樹脂及びウレア樹脂)、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル(いわゆるビニルエステルを含む)、ポリウレタン、アリル系化合物(例えば、アリルジグリコールカーボネートから誘導されるポリマー)、フルオロエラストマー及びポリアクリレート、並びにそれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
ベースポリマーは、本発明に係る表面改質剤と混合して混加物を形成する。熱可塑性ポリマーは、その溶融加工性の点でより好ましい。熱可塑性ポリマーは、高温(例えば、200℃超、240℃超、270℃超、さらには300℃超)で溶融加工可能である。本発明に係る混加物で使用するのに望ましい熱可塑性ベースポリマーとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)、スチレン、ポリ塩化ビニル、及びそれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
表面改質剤は、種々の物品を製造するために、ベースポリマーの溶融加工前に添加される。溶融加工により混加物を形成するために、表面改質剤は、例えば、ペレット状又は粉末状のポリマーと混合可能であり、次に、例えば、成形、メルトブロー、溶融紡糸、又は溶融押出しのような公知の方法により溶融加工可能である。表面改質剤は、溶融状態でポリマーと直接混合可能であるか、又はブラベンダーミキサー中で、表面改質剤/ポリマー混加物の濃縮物の形態でポリマーと予め最初に混合しておくことができる。所望により、表面改質剤の有機溶液を粉末状又はペレット状のポリマーと混合し、続いて、溶媒を蒸発させ、次に、溶融加工することが可能である。他の選択肢として、繊維又は任意の他の所望の形状に押し出す直前に、表面改質剤を溶融ポリマーの流れに注入して、混加物を形成することができる。
【0044】
溶融加工後、ベースポリマーの撥性の展開を増進するためにアニーリング工程を行うことが可能である。そのようなアニーリング工程に加えて又はその代わりに、溶融加工して混合したものを2本の加熱ロール(その一方又は両方がパターン化されていてもよい)間でエンボス加工することも可能である。アニーリング工程は、典型的には、ポリマーの溶融温度よりも低い温度で行われる(例えば、ポリアミドの場合、約150〜220℃で5分間まで)。他の選択肢として、完成品を加熱滅菌処理することが可能である(例えば、54.4℃でエチレンオキシド滅菌(EtO滅菌))。
【0045】
表面改質剤は、特定の用途に望まれる撥性を達成するのに十分な量で、熱可塑性又は熱硬化性のポリマーに添加される。典型的には、使用される表面改質剤の量は、混加物の0.05〜15%(w/w)の範囲内である。その量は、経験的に決定可能であり、所要又は所望により、ポリマーの他の物理的性質を損なうことなく撥性を達成するように調整可能である。
【0046】
例えば、ベースポリマー-SMM混加物を加工してメルトブローン繊維又は溶融紡糸繊維を製造する場合、これらの繊維は、なんらかのレベルの撥性が望まれる任意の用途に有用な不織布を製造するために使用可能である。例えば、本発明に係るSMMは、医療用布、医療用及び工業用の衣服、衣類製造用布、家庭用の備品、及び濾過システム、例えば、化学プロセス用のフィルター及びレスピレーターに使用可能である。他の用途は、自動車工業及び建設工業にある。布は撥アルコール特性及び撥水特性を呈する。布はまた、さまざまな環境条件下で撥油特性(及び防汚特性)も呈することができ、また、さまざまな用途で使用することが可能である。
【0047】
不織ウェブ又は不織布は、メルトブローンウェブ又はスパンボンドウェブのいずれかの製造に使用されるプロセスにより作製可能である。例えば、「Superfine Thermoplastic Fibers」 Indus. Eng'g Chem. 48, 1342 (1956)中でWenteにより、又は「Manufacture of Superfine Organic Fibers」 Naval Research Laboratories Report No. 4364 (1954)中でWenteらにより記述されたプロセスに類似したものを使用することが可能である。不織布から製造される多層構成体は、例えば医療用布として、広範な工業上及び商業上の有用性を備えている。そのような多層構成体の構成層の構造は、所望の最終用途特性によってさまざまでありうる。また、構成体は、米国特許第5,145,727号明細書(Pottsら)及び米国特許第5,149,576号明細書(Pottsら)(それらの記載内容は参照により本明細書に組み入れられるものとする)に記載されるような多くの有用な組み合わせにおいて、2層以上のメルトブローンウェブ及びスパンボンドウェブを含むことができる。多層構成体において、表面改質剤は、構成体全体に撥特性を付与するように1層以上の層で使用可能である。
【0048】
他の選択肢として、ベースポリマー-SMM混加物は、適切な成形型を用いて所望の形状を生成するように溶融加工される。
【0049】
物品
本発明に係る表面改質剤及び混加物は、押出し品(例えば、熱可塑性フィルム、熱可塑性繊維、繊維状不織布材料、熱可塑性フォーム材料等)の形態で、多くの場合200℃を超える高温加工を必要とするフィルム及び不織布用途(例えば、サージカルドレープ、ガウン、フェイスマスク、ラップ、バンデージ、及び他の医療技術者用防護着(例えば、作業着、実験着))で使用可能であり、この場合、加工温度は、250〜300℃の範囲に達することもある。本発明に係る表面改質剤及び混加物はまた、インプラント可能な医療用デバイス(例えば、低減された閉塞性及び増大された血液適合性を付与するための中心静脈カテーテル)で使用可能である。本発明に係る表面改質剤及び混加物はまた、流体又はガスの分離のために、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリシロキサンのベースポリマーから製造される中空繊維膜濾過で使用してもよい。
【0050】
本発明に係る表面改質剤及び混加物は、不織布の製造において加工時に必要とされる高温安定性を有するか、又はカテーテルの製造で使用されるポリマーとの適合性を有する。従って、この混加物は、高温で所要の耐分解性を提供することができると同時に、所望の生体適合性と共に、撥水性及び/又は撥油性及び/又は撥アルコール性を提供することができる。この技術では、SMMをベースポリマーに組み込んでから、表面に堆積させることによりポリマーの表面を改質するが、バルクの性質は元のまま保持される。ベースポリマーは、この時点では高度の疎水性を備えたフッ素化表面を有する。
【0051】
インプラントデバイス
本発明に係る混加物から形成可能な物品としては、インプラントデバイスが挙げられる。インプラントデバイスとしては、人工装具、例えば、ペースメーカー、電気リード、例えば、ペーシングリード、除細動器、人工心臓、心室補助デバイス、解剖学的に再構築した人工装具、例えば、乳房インプラント、人工心臓弁、心臓弁ステント、心膜パッチ、サージカルパッチ、冠動脈ステント、血管グラフト、血管ステント及び構造ステント、血管シャント又は心血管シャント、生体導管、綿撒糸、縫合糸、弁輪形成リング、ステント、ステープル、弁付きグラフト、創傷治癒用真皮グラフト、整形外科用脊椎インプラント、整形外科用ピン、子宮内デバイス、尿道ステント、顎顔面再構築プレート、歯科用インプラント、眼内レンズ、クリップ、胸骨ワイヤー、骨、皮膚、靭帯、腱、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。経皮デバイスとしては、種々のタイプのカテーテル、カニューレ、ドレナージチューブ、例えば、胸腔チューブ、外科用器具、例えば、鉗子、開創器、針、及び手袋、並びにカテーテルカフが挙げられるが、これらに限定されるものではない。皮膚用デバイスとしては、火傷ドレッシング、創傷ドレッシング、及び歯科用金属製品、例えば、橋脚及び歯列矯正具が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
特定の実施形態では、ソフトセグメントとしてポリシロキサンを含む表面改質剤を含む混加物は、カテーテルの製造に使用される。
【0053】
以下の例は、本明細書中で特許請求された方法及び化合物をどのように実施、製造、及び評価するかについての完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されており、本発明を単に例示することを意図したものであって、本発明者らが自らの発明とみなす範囲を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0054】
本発明に係るSMMは、ハードセグメント(例えばジイソシアネート又はトリイソシアネート)と中央のソフトセグメント(例えばジオール)とフッ素化末端キャッピング基とを適切に設計して組み合わせることにより、所望の高い分解温度を有する広範なポリウレタンを形成することができ、特に、重合時にビスマス触媒を利用することにより構築可能である。これらは、限定されるものではないが、以下に挙げる成分試薬を含む。
【0055】
・ジイソシアネート
HMDI=4,4'-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)
IPDI=イソホロンジイソシアネート
TMXDI=m-テトラメチレンキシレンジイソシアネート
HDI=ヘキサメチレンジイソシアネート
・トリイソシアネート(ハードセグメント)
Desmodur N3200又はDesmodur N-3200=ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ビウレット型三量体
Desmodur Z4470A又はDesmodur Z-4470A=イソホロンジイソシアネート(IPDI)三量体
Desmodur N3300=ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)三量体:
・ジオール/ポリオール(ソフトセグメント)
HLBH=水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン、
PCN=ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール
PHCN=ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール
PEGA=アジピン酸ポリ(ジエチレングリコール)
PTMO=ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール
PDP=ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール
HHTPI=水素化ヒドロキシル末端ポリイソプレン
C22=ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー
ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール)ポリマーブロックコポリマー(「PEO-PPO-PEO Pluronicポリマー」)
DDD=1,12-ドデカンジオール
・フッ素化末端キャッピング基
C6-FOH=(CF3)(CF2)5CH2CH2OH(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロオクタノール)
C8-FOH=(CF3)(CF2)7CH2CH2OH(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロデカノール)
C6-C8 FOH=(CF3)(CF2)7CH2CH2OH及び(CF3)(CF2)5CH2CH2OH(C6-FOHとC8-FOHとの混合物、BAL-Dとも記される)
C4-FOH=CHF2(CF2)3CH2OH(1H,1H,5H-ペルフルオロ-1-ペンタノール)
C3-FOH=(CF3)(CF2)2CH2OH(1H,1H-ペルフルオロブタノール)
・非スズ系触媒
Bi348−カルボン酸ビスマスタイプ1
Bi221−カルボン酸ビスマスタイプ2
Bi601−カルボン酸ビスマスタイプ3
以上に列挙されたビスマス触媒は、King Industries(Norwalk CT)から購入可能である。当技術分野で公知のビスマス触媒はいずれも、本発明に係るSMMの合成に使用可能である。
【0056】
[実施例1]SMM4及びSMM6の一般的な合成スキーム
SMM4及びSMM6のような本発明に係る表面改質剤は、スキーム1及び2に示されるスキームに従って二工程の収束法により合成可能である。簡潔に述べると、有機溶媒(例えば無水THF又はジメチルアセトアミド(DMAC))中、触媒の存在下、25℃で、ポリイソシアネート(例えば、Desmodur N3200又はDesmodur 4470)を表面活性基(例えば、フルオロアルキルアルコール)と、滴下により2時間反応させることができる。フッ素化アルコールの添加後、撹拌を50℃で1時間、さらに70℃で1時間継続する。これらの工程により、部分的にフッ素化された中間体が形成される。次に、この中間体を14時間にわたり70℃でポリオール(例えば水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン又はポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール)と結合させることで、SMMが提供される。反応は水分に敏感であるので、不活性N2雰囲気下かつ無水条件下で行われる。また、望ましくない副反応を回避するために、特に部分フッ素化中の温度プロファイルを注意深く保持する。反応生成物をMeOH中で沈澱させ、追加のMeOHで数回洗浄する。最初に、熱THF中又は熱IPA中にSMMを溶解させ、続いて、このSMMをEDTA溶液と反応させ、続いて、MeOH中で沈殿させることにより、触媒残渣を除去する。最後に、SMMを使用前に120〜140℃でロータリーエバポレーター中で乾燥させる。
【化7】
【化8】
【0057】
[実施例2]SMM5の合成
すべてのガラス製品を110℃のオーブン中で一晩乾燥させた。攪拌子及び還流冷却器を備えた三口5000mL反応器に300g(583mmol)のDesmodur N3300を添加した。混合物を周囲温度で一晩脱気した。水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン(HLBHポリオール MW=2000)を2000mLフラスコに計量して入れ、60℃で一晩脱気した。ビスマス触媒K-Kat 348(カルボン酸ビスマス、King Industriesから入手可能)を250mLフラスコに計量して入れ、周囲温度で一晩脱気した。過フッ素化アルコールを1000mLフラスコに計量して入れ、周囲温度で30分間脱気した。脱気後、すべての容器を窒素でパージした。
【0058】
次に、300mLのTHF(又はDMAC)をDesmodur N3300含有容器に添加し、混合物を撹拌してポリイソシアネートを溶解させた。同様に、622mLのTHFをHLBHポリオールに添加し、混合物を撹拌してポリオールを溶解させた。同様に、428mLのTHF(又はDMAC)を過フッ素化アルコールに添加し、混合物を撹拌して溶解させた。K-Kat 348についても同様に、77mLのTHF又はDMACに溶解させた。すべての試薬がそれらのそれぞれの容器内で確実に溶解されように撹拌を継続した。
【0059】
K-Kat溶液の半分を過フッ素化溶液に移して5分間攪拌した。この溶液を、窒素の正圧下で、カニューレ(両頭針)を介して周囲温度(25℃)で2時間かけて、Desmodur N3300溶液を含む反応容器に滴下した。添加後、温度を50℃に1時間上昇させ、そして70℃にさらに1時間上昇させた。全体を通して適正な撹拌を保持した。残りのK-Kat 348触媒をHLBH-2000のフラスコに移し、攪拌溶解後、これを、N3300を含む反応器に添加した。反応混合物を70℃で一晩かけて14時間反応させ、4個のフッ素化末端基を有するSMM5を生成させた。
【0060】
SMM/ポリマー混加物
SMM溶液を周囲温度で冷却させた。30Lフラスコに15リットルのMeOH(メタノール)を充填し、10分間にわたり一定した攪拌を行いながら、この容器内にポリマー溶液をゆっくり注いで加えた。その時点で、ポリマーは沈殿析出し始めた。クルードなポリマーを沈降させ、上澄みを吸い取った。毎回激しく攪拌しながらポリマーをMeOH(5L)で2回洗浄した。ポリマーを70℃のTHFに再溶解させ、EDTA溶液(240mL)を添加した。これを70℃で攪拌し、その後、さらに240mLのEDTA溶液を添加した。加熱を停止し、溶液をさらに30分間撹拌した。この混合物に15LのMeOHをゆっくり添加してポリマーを沈殿させた。上澄みを注意深く吸い出し、毎回5Lを用いてMeOHを2回にわけて添加することにより洗浄を終了した。ポリマーをロータリーエバポレーターに移して120〜140℃で乾燥させた。精製ポリマーをデシケーター内のガラス瓶で貯蔵した。
【0061】
本明細書に記載の手順に従って調製可能な代表的SMMの例は、図1a〜1nに図解されている。
【0062】
[実施例3]熱安定性
表面改質剤(SMM)の熱分解温度を熱重量分析装置(TGA)により決定した。熱重量分析(TGA)は、多くの場合、温度の関数としての重量損失分解プロファイルを利用して、熱安定性を決定するために使用される。これは、Dynamic(High Resoltion)Hi-Res(商標)モード <分解能:4、最大ランプ値:50℃/min、最大温度:500℃で作動するTA instruments TGA Q500(オートサンプラー付きV6.3 Build 189)Thermogravimetric Analyzerを用いて行った。
【0063】
簡潔に述べると、加熱炉部の外に位置する化学天秤から吊り下げられた100μL白金皿中に20〜50mgの各サンプルを配置した。天秤の目盛りをゼロに合わせた後、N2(流量 40cc/min 天秤、60cc/min 炉)の窒素雰囲気中でサンプル皿を周囲温度から500℃に加熱した。Hi-Res TGAモードで、サンプル重量損失速度の関数として加熱速度を変化させることにより、重量損失のない領域では、高い加熱速度を使用し、また、重量損失の移行域では、低減された加熱速度を使用して、試験サンプルの分解特性をより正確に表すことが可能である。この技術によれば、オーバーラップする事象又は境界が不明瞭な事象を分離することによって、開始点の再現性及び分解能が改善され、また、分解挙動の加熱速度への依存性が排除される。重量損失及び重量損失速度(又は微分)を示すTGAプロットは、Universal Analysis 2000ソフトウェア(TA Instruments - Waters LLC, version 4.1D)を用いて温度に対してプロットした。材料が完全に乾燥している場合、加熱時、分解の開始に表す開始点(ポリマーの性質に依存して1個又は2個)が存在する。
【0064】
例示的な実施例として、図2は、SMM2のプロファイルを示しており、第1の開始点がTd1=285℃の分解温度において示され、また、フルオロ末端基及びハードセグメント(イソシアネート結合)に起因する副重量損失(-1%)に続いて、SMMのソフトセグメント(ポリオール結合)に起因するTd2=397℃での主重量損失(-61%)が示されている。
【0065】
図2〜8は、異なる化学的性質を有するSMMの種々の実施例の熱分解パターンを示している。SMM2(図2)、SMM3(図3)、SMM5(図4)、SMM7(図5)、SMM8(図6)、SMM10(図7)、及びSMM11(図8)は、高分解能熱重量プロット(High Resolution Themogravimateric Plot)により表されている。他の熱的データ及びポリマー特性解析データは、TGA及びEAの結果を含めて、図9にまとめられている。
【0066】
[実施例4] 元素分析(EA)によるバルクフッ素分析
バルク元素(炭素、水素、窒素、及びフッ素)組成は、炭素、水素、及び窒素に対する燃焼元素分析器を用いて、ASTM D-5987に従いGalbraith Labs(Knoxville, TN)によって分析された。フッ素含有量は、酸素燃焼ボンベ及びフッ化物イオン選択性電極を用いて、酸素フラスコ内の希塩基溶液中にフッ素蒸気が吸収されることにより生成されるフッ化物イオンを測定して分析した。図9の元素フッ素から、全てのSMMが、15%超の良好なバルクフッ素を有することが示唆される。
【0067】
[実施例5] X線光電子分光法(XPS)による表面元素分析
Carbothane(商標)(Thermedics Inc MA, USA)、PE、及びPPを対照ポリマー及びベースポリマーとして使用した。実施例2に従って調製されたSMM混加物をXPSにより分析して、表面フッ素(疎水性)の濃度の他にウレタンの化学的性質(極性基)を測定した。測定は、100Åの深さに対応する90°の又は10Åの深さに対応する20°の一つの取出し角度で行い、4×7mm2の表面領域を分析した。フィルムは、フッ素(F)、酸素(O)、窒素、炭素(C)、及びケイ素(Si)の相対的な原子の割合に関して調べた。SMMで改質された3つの異なるベースポリマーについて、対象元素であるフッ素(F)のみの原子百分率の結果を表1及び図10に例として提供する。このデータから、SMMが、医療産業で使用される、広範なベースポリマーと適合可能であることがデータから例証される。
【表1】
【0068】
[実施例6] 不織布において撥性のために使用されるSMM
(i) SMM改質メルトブローン不織布の撥性
MFI=1200g/10min(230℃/2.16kg)を有するメルトブローグレードのポリプロピレン(Basell Polyolefins社製のPP MF650X)を用いて、6"パイロットラインで行われるメルトブロー試験でSMMを使用した。最初に、SMM添加剤をマスターバッチ中にコンパウンドし、メルトブロープロセスで2〜3重量%の濃度に希釈した。SMM添加剤のマイグレーションを促進するために、ポリプロピレンの結晶化速度を遅くすることができる加工助剤(例えば、市販の低分子量炭化水素ポリマー)を10wt%で使用した。不織布は、0.4g/孔/minのスループットで、260℃にてメルトブロープロセスを行って得た。作製された不織布は、触感が柔らかく、約25 gsmの基本重量及び約3μmの繊維直径を有していた。撥性試験は、種々の濃度の70%イソプロパノール(IPA)溶液を用いて、メルトブロー製造ラインから送出された直後の布で行った。エアフローオーブン中、低温でアニールした後、再度、布を試験した。American Association of Textile Chemists and Colorists(AATCC)標準試験法193-2005を、割合の代わりに体積濃度で溶液を調製するように変更を加えて、布の撥性試験に使用した。図11は、製造ラインから送出された布(MB)では最小の撥性を有していたが(30%の撥IPA性)、低温でアニールした後で撥性が劇的に増大したことを示している(12時間にわたり60℃でアニールした後では、70%の撥IPA性であり、65℃でアニールした後では75%超の撥IPA性である)。標準的なEtO滅菌サイクル(54.4℃)を行った後でも、メルトブローン布は、70%IPA溶液に対する撥性を示した(図12)。
【0069】
図13は、処理済み及び未処理の不織布の撥性を示している。対照の布(SMM処理なしのポリプロピレン)は、70%IPAの液滴の透過により示唆されるように撥性を示さないが(湿潤性)、右側の布は、湿潤せずに布上にあるIPAの液滴の形状により示唆される顕著な撥性を示す。滅菌中に熱に晒すことにより、追加のアニーリングを必要とすることなくSMM添加剤のマイグレーションを十分に促進する。
【0070】
さらに、布の所望される撥性は、100〜130℃の温度に接触しながら短時間晒す(2〜10秒)ことでも達成可能である。医療用衣類の布は、帯電防止処理剤の乾燥や多層布のカレンダー接合のような標準的な製造プロセスの間そのような条件を経てもよい。図14は、100〜130℃のホットプレート表面に短時間直接接触させた後、MB布で達成された撥性を示している。
【0071】
(ii) SMM改質スパンボンド不織布の撥性
SMMは、スパンボンドパイロットラインの条件を模倣するように構成されたR&Dプロトタイプ装置を用いて行われるスパンボンド(SB)試験で使用した。具体的には、4つの温度域を備えた小型押出し機を、計量ポンプ及び68個の紡糸口金孔を備えたダイに接続した。押出機は、高圧空気を供給するアテニュエーターガン(attenuator gun)(押し出した繊維を延伸するために使用した)中に押し出された繊維を方向付けるガイドシャフト上の骨組みに定置した。細くなった繊維をランダムに可動メッシュ上に堆積させた。こうして形成された不織ウェブは、接着されていなかった。
【0072】
このSMMは、5〜10wt%の加工助剤と共に1〜2wt%の濃度で、MFI=36g/10min(230℃/2.16kg)を有するスパンボンドグレードのポリプロピレン(Exxon Mobil社製のPP3155)中にコンパウンドした。このコンパウンドした樹脂は、ダイにおいて230℃のプロセス温度であるR&D装置を用いて、スパンボンド不織ウェブへと押出した。
【0073】
このスパンボンドウェブは、120℃の加熱表面との5秒間の直接接触によりアニールした後、又は54.4℃の標準サイクルで不織ウェブをEtO滅菌した後、IPA溶液に対する撥性について試験した。図15は、80vol%IPA程度の高い濃度を有するアルコール溶液に対する撥性が、SMMで改質されたスパンボンド布上で達成可能であることを示している。
【0074】
これらの結果から、合成されたSMMは、(メルトブローン又はスパンボンド)不織布に、撥アルコール性(70%IPA)を付与するうえで非常に重要な有用性を有することが示される。
【0075】
他の実施形態
本明細書に挙げられた出版物、特許、及び特許出願はすべて、個々の出版物又は特許出願が具体的かつ個別的に明示されて参照により組み込まれたのと同程度まで、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0076】
本発明をその特定の実施形態と関連させて説明してきたが、当然のことながら、さらなる修正が可能であり、本出願は、一般に本発明の原理に従い、また、本発明の関連する技術の範囲内である公知又は慣用の規範に入り、以上に示された本質的特徴に適用し得るような本開示からの逸脱を含む、本発明の変形、使用、又は調整を包含することが意図されており、特許請求の範囲内に従う。
【0077】
他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
〔式中、
(i) Aは、ソフトセグメントであり、
(ii) Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、かつ
(iii) 各Gは、表面活性基であり、
nは、0〜10の整数である〕
で示される、表面改質剤。
【請求項2】
前記表面改質剤が200℃〜450℃の熱分解温度を有する、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項3】
前記ソフトセグメントが500〜3,500ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項4】
前記ソフトセグメントが、水素化ポリブタジエン(HLBH)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)(PCN)、ポリブタジエン(LBHP)、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステル(PDP)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(PrO-PDMS-PrO)ブロックコポリマー、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、水素化ヒドロキシル末端ポリイソプレン、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール) ブロックコポリマー、1,12-ドデカンジオール、水素化ポリイソプレン(HHTPI)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ポリ(2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピルカーボネート)、又はヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー(C22)を含む、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項5】
前記ソフトセグメントがHLBH又はPCNを含む、請求項3に記載の表面改質剤。
【請求項6】
前記ハードセグメントが、トリイソシアネートを前記ソフトセグメントを含むジオールと反応させることにより形成され、該トリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ビウレット型三量体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)三量体、又はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)三量体から選択される、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項7】
各表面活性基が100〜1,500Daの分子量を有する、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項8】
前記表面活性基が、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、ポリフルオロアルキル、フッ素化ポリエーテル、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項9】
前記表面活性基がポリフルオロアルキルを含む、請求項7に記載の表面改質剤。
【請求項10】
前記表面活性基が、一般式CHmF(3-m)(CF2)rCH2CH2-及びCHmF(3-m)(CF2)s(CH2CH2O)χ-〔式中、
mは、0、1、2、又は3であり、
χは、1〜10の整数であり、
rは、2〜20の整数であり、かつ
sは、1〜20の整数である〕
で示される基からなる群より選択される、請求項8に記載の表面改質剤。
【請求項11】
mが0である、請求項10に記載の表面改質剤。
【請求項12】
mが1である、請求項10に記載の表面改質剤。
【請求項13】
各表面活性基が、独立して、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、(CF3)(CF2)7CH2CH2O-、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、CHF2(CF2)3CH2O-、及び(CF3)(CF2)2CH2O-から選択される、請求項10に記載の表面改質剤。
【請求項14】
nが0である、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項15】
nが1である、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項16】
前記表面改質剤が10,000ダルトン未満の理論分子量を有する、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項17】
前記表面改質剤が、5〜30%(w/w)の前記ハードセグメントと40〜90%(w/w)の前記ソフトセグメントと25〜55%(w/w)の前記表面活性基とを含む、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項18】
前記表面改質剤が、
a) ビウレット型三量体又はウレタン型三量体を含む溶液を、前記表面活性基を含む溶液と混合する工程、及び
b) (a)の生成物を、前記ソフトセグメントを含む溶液と混合する工程、
を含むプロセスにより形成される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の表面改質剤。
【請求項19】
工程(a)又は工程(b)がビスマス触媒の存在下で行われる、請求項18に記載の表面改質剤。
【請求項20】
工程(a)及び工程(b)の両方がビスマス触媒の存在下で行われる、請求項18に記載の表面改質剤。
【請求項21】
ベースポリマーと混合された、請求項1〜20のいずれか1項に記載の表面改質剤を含む、混加物。
【請求項22】
前記ベースポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリシリコーン、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)、スチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスルホン、及びポリエーテルスルホン、並びにそれらのブレンドから選択される、請求項21に記載の混加物。
【請求項23】
(i)前記ベースポリマーと前記表面改質剤とを混合して混合物を形成すること、及び(ii)該混合物を200℃超に加熱することにより形成される、請求項21に記載の混加物。
【請求項24】
前記混加物が0.05%〜10%(w/w)の前記表面改質剤を含む、請求項21に記載の混加物。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか1項に記載の混加物から形成される物品。
【請求項26】
前記物品が、手術帽、サージカルシート、サージカルカバークロス、サージカルガウン、マスク、手袋、及びサージカルドレープから選択される、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
前記物品がフィルターである、請求項25に記載の物品。
【請求項28】
前記フィルターが、レスピレーター、ウォーターフィルター、エアフィルター、又はフェイスマスクの一部である、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記物品が、ケーブル、フィルム、パネル、パイプ、ファイバー、又はシートである、請求項25に記載の物品。
【請求項30】
前記物品がインプラント可能な医療用デバイスである、請求項25に記載の物品。
【請求項31】
前記物品が、心臓補助デバイス、カテーテル、ステント、補綴インプラント、人工括約筋、又は薬剤送達デバイスである、請求項30に記載の物品。
【請求項32】
物品の製造方法であって、
(i) ベースポリマーを請求項1〜20のいずれか1項に記載の表面改質剤と混合して混合物を形成する工程、及び
(ii) 該混合物を少なくとも200℃に加熱する工程、
を含む、上記方法。
【請求項33】
工程(ii)が、前記混合物を220℃〜345℃の温度に加熱することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
式(I):
【化2】
〔式中、
(i) Aは、Bにそれぞれ共有結合された2個のヒドロキシル末端基を含むソフトセグメントであり、
(ii) Bは、トリイソシアネートを含むハードセグメントであり、かつ
(iii) 各Gは、表面活性基であり、しかも
(iv) nは、0〜10の整数である〕
で示される表面改質剤の熱分解温度を増大させる方法であって、
以下の工程:
(a) トリイソシアネートをモノヒドロキシル表面活性基と反応させる工程、及び
(b) (a)の生成物をソフトセグメントジオールと反応させる工程、
を含み、
工程(a)又は(b)がビスマス触媒の存在下で行われる、
上記方法。
【請求項35】
前記ジオールソフトセグメントが、水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン(HLBH)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール(PCN)、ヒドロキシル末端ポリブタジエンポリオール(LBHP)、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール(PDP)、水素化ヒドロキシル末端ポリイソプレン(HHTPI)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ポリ(2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール、又はヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー(C22)を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程(a)が、モノヒドロキシル表面活性基をHLBH又はPCNと反応させることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記トリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ビウレット型三量体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)三量体、又はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)三量体を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記モノヒドロキシル表面活性基が、一般式CHmF(3-m)(CF2)rCH2CH2-OH及びCHmF(3-m)(CF2)s(CH2CH2O)χ-CH2CH2OH〔式中、
mは、0、1、2、又は3であり、
χは、0〜10の整数であり、
rは、2〜20の整数であり、かつ
sは、1〜20の整数である〕
で示される化合物から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
式(II):
【化3】
〔式中、
(i) Aは、ソフトセグメントであり、
(ii) Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、
(iii) B'は、ウレタンを含むハードセグメントであり、かつ
(iv) 各Gは、表面活性基であり、
nは、0〜10の整数であり、表面改質剤は、220℃〜450℃の熱分解温度を有する〕
で示される、表面改質剤。
【請求項40】
前記表面改質剤が、
a) ビウレット型三量体又はウレタン型三量体を含む溶液を、表面活性基を含む溶液と混合する工程、及び
b) (a)の生成物を、ソフトセグメントを含む溶液と混合する工程、
を含むプロセスにより形成される、請求項39に記載の表面改質剤。
【請求項41】
工程(a)又は工程(b)がビスマス触媒の存在下で行われる、請求項40に記載の表面改質剤。
【請求項42】
工程(a)及び工程(b)の両方がビスマス触媒の存在下で行われる、請求項40に記載の表面改質剤。
【請求項43】
ベースポリマーと混合された、請求項39〜42のいずれか1項に記載の表面改質剤を含む、混加物。
【請求項44】
前記ベースポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリシリコーン、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)、スチレン、ポリ塩化ビニル、及びそれらのブレンドから選択される、請求項43に記載の混加物。
【請求項45】
(i)前記ベースポリマーと前記表面改質剤とを混合して混合物を形成すること及び(ii)該混合物を200℃超に加熱することにより形成される、請求項43に記載の混加物。
【請求項46】
前記混加物が0.05%〜10%(w/w)の前記表面改質剤を含む、請求項43に記載の混加物。
【請求項47】
請求項43〜46のいずれか1項に記載の混加物から形成される物品。
【請求項48】
前記物品が、手術帽、サージカルシート、サージカルカバークロス、サージカルガウン、マスク、手袋、及びサージカルドレープから選択される、請求項47に記載の物品。
【請求項49】
前記物品がフィルターである、請求項47に記載の物品。
【請求項50】
前記フィルターが、レスピレーター、ウォーターフィルター、エアフィルター、又はフェイスマスクの一部である、請求項49に記載の物品。
【請求項51】
前記物品が、ケーブル、フィルム、パネル、パイプ、ファイバー、又はシートである、請求項47に記載の物品。
【請求項52】
前記物品が、インプラント可能な医療用デバイスである、請求項47に記載の物品。
【請求項53】
前記物品が、心臓補助デバイス、カテーテル、ステント、補綴インプラント、人工括約筋、又は薬剤送達デバイスである、請求項52に記載の物品。
【請求項54】
物品の製造方法であって、
(i) ベースポリマーを、請求項39〜42のいずれか1項に記載の表面改質剤と混合して混合物を形成する工程、及び
(ii) 該混合物を少なくとも200℃に加熱する工程、
を含む、上記方法。
【請求項55】
工程(ii)が、前記混合物を220℃〜345℃の温度に加熱することを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
表面改質剤をベースポリマーと共にアニールすることにより撥性を増大させる方法であって、アニーリング温度が50℃〜75℃でありかつアニーリング時間が1〜24時間である、上記方法。
【請求項57】
前記表面改質剤が、以下の構造:
【化4】
〔式中、
(i) Aは、ソフトセグメントであり、
(ii) Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、かつ
(iii) 各Gは、表面活性基であり、
nは、0〜10の整数であり、該表面改質剤は、250℃〜450℃の熱分解温度を有する〕
を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記表面改質剤が、以下の構造:
【化5】
〔式中、
(i) Aは、ソフトセグメントであり、
(ii) Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、
(iii) B'は、ウレタンを含むハードセグメントであり、かつ
(iv) 各Gは、表面活性基であり、
nは、0〜10の整数であり、該表面改質剤は、200℃〜450℃の熱分解温度を有する〕
を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記アニーリング時間が30時間である、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
前記アニーリング温度が、54℃、54.4℃、55℃、60℃、又は65℃である、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項1】
式(I):
【化1】
〔式中、
(i) Aは、ソフトセグメントであり、
(ii) Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、かつ
(iii) 各Gは、表面活性基であり、
nは、0〜10の整数である〕
で示される、表面改質剤。
【請求項2】
前記表面改質剤が200℃〜450℃の熱分解温度を有する、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項3】
前記ソフトセグメントが500〜3,500ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項4】
前記ソフトセグメントが、水素化ポリブタジエン(HLBH)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)(PCN)、ポリブタジエン(LBHP)、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステル(PDP)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサン(PrO-PDMS-PrO)ブロックコポリマー、ポリ(テトラメチレンオキシド)ジオール、水素化ヒドロキシル末端ポリイソプレン、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレングリコール)-ポリ(エチレングリコール) ブロックコポリマー、1,12-ドデカンジオール、水素化ポリイソプレン(HHTPI)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ポリ(2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピルカーボネート)、又はヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー(C22)を含む、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項5】
前記ソフトセグメントがHLBH又はPCNを含む、請求項3に記載の表面改質剤。
【請求項6】
前記ハードセグメントが、トリイソシアネートを前記ソフトセグメントを含むジオールと反応させることにより形成され、該トリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ビウレット型三量体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)三量体、又はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)三量体から選択される、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項7】
各表面活性基が100〜1,500Daの分子量を有する、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項8】
前記表面活性基が、ポリジメチルシロキサン、炭化水素、ポリフルオロアルキル、フッ素化ポリエーテル、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項9】
前記表面活性基がポリフルオロアルキルを含む、請求項7に記載の表面改質剤。
【請求項10】
前記表面活性基が、一般式CHmF(3-m)(CF2)rCH2CH2-及びCHmF(3-m)(CF2)s(CH2CH2O)χ-〔式中、
mは、0、1、2、又は3であり、
χは、1〜10の整数であり、
rは、2〜20の整数であり、かつ
sは、1〜20の整数である〕
で示される基からなる群より選択される、請求項8に記載の表面改質剤。
【請求項11】
mが0である、請求項10に記載の表面改質剤。
【請求項12】
mが1である、請求項10に記載の表面改質剤。
【請求項13】
各表面活性基が、独立して、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、(CF3)(CF2)7CH2CH2O-、(CF3)(CF2)5CH2CH2O-、CHF2(CF2)3CH2O-、及び(CF3)(CF2)2CH2O-から選択される、請求項10に記載の表面改質剤。
【請求項14】
nが0である、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項15】
nが1である、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項16】
前記表面改質剤が10,000ダルトン未満の理論分子量を有する、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項17】
前記表面改質剤が、5〜30%(w/w)の前記ハードセグメントと40〜90%(w/w)の前記ソフトセグメントと25〜55%(w/w)の前記表面活性基とを含む、請求項1に記載の表面改質剤。
【請求項18】
前記表面改質剤が、
a) ビウレット型三量体又はウレタン型三量体を含む溶液を、前記表面活性基を含む溶液と混合する工程、及び
b) (a)の生成物を、前記ソフトセグメントを含む溶液と混合する工程、
を含むプロセスにより形成される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の表面改質剤。
【請求項19】
工程(a)又は工程(b)がビスマス触媒の存在下で行われる、請求項18に記載の表面改質剤。
【請求項20】
工程(a)及び工程(b)の両方がビスマス触媒の存在下で行われる、請求項18に記載の表面改質剤。
【請求項21】
ベースポリマーと混合された、請求項1〜20のいずれか1項に記載の表面改質剤を含む、混加物。
【請求項22】
前記ベースポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリシリコーン、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)、スチレン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスルホン、及びポリエーテルスルホン、並びにそれらのブレンドから選択される、請求項21に記載の混加物。
【請求項23】
(i)前記ベースポリマーと前記表面改質剤とを混合して混合物を形成すること、及び(ii)該混合物を200℃超に加熱することにより形成される、請求項21に記載の混加物。
【請求項24】
前記混加物が0.05%〜10%(w/w)の前記表面改質剤を含む、請求項21に記載の混加物。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか1項に記載の混加物から形成される物品。
【請求項26】
前記物品が、手術帽、サージカルシート、サージカルカバークロス、サージカルガウン、マスク、手袋、及びサージカルドレープから選択される、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
前記物品がフィルターである、請求項25に記載の物品。
【請求項28】
前記フィルターが、レスピレーター、ウォーターフィルター、エアフィルター、又はフェイスマスクの一部である、請求項27に記載の物品。
【請求項29】
前記物品が、ケーブル、フィルム、パネル、パイプ、ファイバー、又はシートである、請求項25に記載の物品。
【請求項30】
前記物品がインプラント可能な医療用デバイスである、請求項25に記載の物品。
【請求項31】
前記物品が、心臓補助デバイス、カテーテル、ステント、補綴インプラント、人工括約筋、又は薬剤送達デバイスである、請求項30に記載の物品。
【請求項32】
物品の製造方法であって、
(i) ベースポリマーを請求項1〜20のいずれか1項に記載の表面改質剤と混合して混合物を形成する工程、及び
(ii) 該混合物を少なくとも200℃に加熱する工程、
を含む、上記方法。
【請求項33】
工程(ii)が、前記混合物を220℃〜345℃の温度に加熱することを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
式(I):
【化2】
〔式中、
(i) Aは、Bにそれぞれ共有結合された2個のヒドロキシル末端基を含むソフトセグメントであり、
(ii) Bは、トリイソシアネートを含むハードセグメントであり、かつ
(iii) 各Gは、表面活性基であり、しかも
(iv) nは、0〜10の整数である〕
で示される表面改質剤の熱分解温度を増大させる方法であって、
以下の工程:
(a) トリイソシアネートをモノヒドロキシル表面活性基と反応させる工程、及び
(b) (a)の生成物をソフトセグメントジオールと反応させる工程、
を含み、
工程(a)又は(b)がビスマス触媒の存在下で行われる、
上記方法。
【請求項35】
前記ジオールソフトセグメントが、水素化ヒドロキシル末端ポリブタジエン(HLBH)、ポリ(2,2-ジメチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール(PCN)、ヒドロキシル末端ポリブタジエンポリオール(LBHP)、ポリテトラメチレンオキシド(PTMO)、ジエチレングリコール-無水オルトフタル酸ポリエステルポリオール(PDP)、水素化ヒドロキシル末端ポリイソプレン(HHTPI)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ポリ(2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピルカーボネート)ジオール、又はヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンブロックコポリマー(C22)を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
工程(a)が、モノヒドロキシル表面活性基をHLBH又はPCNと反応させることを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記トリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ビウレット型三量体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)三量体、又はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)三量体を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記モノヒドロキシル表面活性基が、一般式CHmF(3-m)(CF2)rCH2CH2-OH及びCHmF(3-m)(CF2)s(CH2CH2O)χ-CH2CH2OH〔式中、
mは、0、1、2、又は3であり、
χは、0〜10の整数であり、
rは、2〜20の整数であり、かつ
sは、1〜20の整数である〕
で示される化合物から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
式(II):
【化3】
〔式中、
(i) Aは、ソフトセグメントであり、
(ii) Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、
(iii) B'は、ウレタンを含むハードセグメントであり、かつ
(iv) 各Gは、表面活性基であり、
nは、0〜10の整数であり、表面改質剤は、220℃〜450℃の熱分解温度を有する〕
で示される、表面改質剤。
【請求項40】
前記表面改質剤が、
a) ビウレット型三量体又はウレタン型三量体を含む溶液を、表面活性基を含む溶液と混合する工程、及び
b) (a)の生成物を、ソフトセグメントを含む溶液と混合する工程、
を含むプロセスにより形成される、請求項39に記載の表面改質剤。
【請求項41】
工程(a)又は工程(b)がビスマス触媒の存在下で行われる、請求項40に記載の表面改質剤。
【請求項42】
工程(a)及び工程(b)の両方がビスマス触媒の存在下で行われる、請求項40に記載の表面改質剤。
【請求項43】
ベースポリマーと混合された、請求項39〜42のいずれか1項に記載の表面改質剤を含む、混加物。
【請求項44】
前記ベースポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ナイロン、ポリシリコーン、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン)、スチレン、ポリ塩化ビニル、及びそれらのブレンドから選択される、請求項43に記載の混加物。
【請求項45】
(i)前記ベースポリマーと前記表面改質剤とを混合して混合物を形成すること及び(ii)該混合物を200℃超に加熱することにより形成される、請求項43に記載の混加物。
【請求項46】
前記混加物が0.05%〜10%(w/w)の前記表面改質剤を含む、請求項43に記載の混加物。
【請求項47】
請求項43〜46のいずれか1項に記載の混加物から形成される物品。
【請求項48】
前記物品が、手術帽、サージカルシート、サージカルカバークロス、サージカルガウン、マスク、手袋、及びサージカルドレープから選択される、請求項47に記載の物品。
【請求項49】
前記物品がフィルターである、請求項47に記載の物品。
【請求項50】
前記フィルターが、レスピレーター、ウォーターフィルター、エアフィルター、又はフェイスマスクの一部である、請求項49に記載の物品。
【請求項51】
前記物品が、ケーブル、フィルム、パネル、パイプ、ファイバー、又はシートである、請求項47に記載の物品。
【請求項52】
前記物品が、インプラント可能な医療用デバイスである、請求項47に記載の物品。
【請求項53】
前記物品が、心臓補助デバイス、カテーテル、ステント、補綴インプラント、人工括約筋、又は薬剤送達デバイスである、請求項52に記載の物品。
【請求項54】
物品の製造方法であって、
(i) ベースポリマーを、請求項39〜42のいずれか1項に記載の表面改質剤と混合して混合物を形成する工程、及び
(ii) 該混合物を少なくとも200℃に加熱する工程、
を含む、上記方法。
【請求項55】
工程(ii)が、前記混合物を220℃〜345℃の温度に加熱することを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
表面改質剤をベースポリマーと共にアニールすることにより撥性を増大させる方法であって、アニーリング温度が50℃〜75℃でありかつアニーリング時間が1〜24時間である、上記方法。
【請求項57】
前記表面改質剤が、以下の構造:
【化4】
〔式中、
(i) Aは、ソフトセグメントであり、
(ii) Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、かつ
(iii) 各Gは、表面活性基であり、
nは、0〜10の整数であり、該表面改質剤は、250℃〜450℃の熱分解温度を有する〕
を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記表面改質剤が、以下の構造:
【化5】
〔式中、
(i) Aは、ソフトセグメントであり、
(ii) Bは、ウレタン型三量体又はビウレット型三量体を含むハードセグメントであり、
(iii) B'は、ウレタンを含むハードセグメントであり、かつ
(iv) 各Gは、表面活性基であり、
nは、0〜10の整数であり、該表面改質剤は、200℃〜450℃の熱分解温度を有する〕
を有する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記アニーリング時間が30時間である、請求項57又は58に記載の方法。
【請求項60】
前記アニーリング温度が、54℃、54.4℃、55℃、60℃、又は65℃である、請求項57又は58に記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図1h】
【図1i】
【図1j】
【図1k】
【図1l】
【図1m】
【図1n】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図1e】
【図1f】
【図1g】
【図1h】
【図1i】
【図1j】
【図1k】
【図1l】
【図1m】
【図1n】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2012−501377(P2012−501377A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525245(P2011−525245)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/055418
【国際公開番号】WO2010/025398
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(508215131)インターフェース バイオロジクス,インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2009/055418
【国際公開番号】WO2010/025398
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(508215131)インターフェース バイオロジクス,インコーポレーテッド (7)
【Fターム(参考)】
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