説明

熱寸法安定性の改善された生分解性複合繊維

生分解性親水性バインダー繊維。これらの繊維は、材料特性が改善された繊維を得るために脂肪族ポリエステル材料をポリ乳酸ポリマーと並列構造で共紡糸することにより製造することができる。多価カルボン酸は、繊維の一方の成分又は双方の成分に組込むことができる。脂肪族ポリエステルポリマーは、ポリブチレンスクシネートポリマー、ポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマー、又はこれらのポリマーのブレンドより選ばれてもよい。生分解性複合繊維は、かなりの生分解性を示すが、熱安定性が改善されるとともに収縮が著しく減少する。複合繊維は、体液のような液体の吸収を企図した使い捨て吸収性製品に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生分解性バインダー複合繊維に関する。これらの繊維は、材料特性が改良された繊維を得るために、脂肪族ポリエステル材料をポリ乳酸ポリマー(polylactide polymer)と並列構造で共紡糸することにより製造することができる。多価カルボン酸は、繊維の一方の成分又は双方の成分へ組込むことができる。脂肪族ポリエステルポリマーは、ポリブチレンスクシネートポリマー、ポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマー、及びこれらのポリマーのブレンドより選ぶことができる。生分解性の複合繊維は、実質的な生分解性の性質を示すが、熱安定性が改善され、収縮の減少が著しい。複合繊維は、体液のような液体の吸収を企図した使い捨て吸収性製品に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
使い捨て吸収性製品は、現在多くの用途に広範囲に使用されている。例えば、乳幼児の保育領域においては、おむつやトレーニングパンツは一般的には再使用可能な布の吸収性物品が取って代わられている。他の典型的な使い捨て吸収性製品としては、女性のケア製品、例えば、生理用ナプキン又はタンポン、成人の失禁用品、及び健康関連品、例えば外科用ドレープ又は創傷用包帯が含まれる。典型的な使い捨て吸収性製品は、一般的には、上面シート、裏面シート、及び上面シートと裏面シート間の吸収性構造体を含む複合構造体を備えている。これらの製品は、通常は、着用者に製品をフィットさせるためのある種の固定システムを含んでいる。
使い捨て吸収性製品は、典型的には、使用の間、水、尿、月経又は血液のような1種以上の液体放出を受ける。このように、使い捨て吸収性製品の材料は、典型的には、液体不溶性材料、例えば、ポリプロピレンフィルムでできている。フィルムは、十分な強度と処理能力を示すので使い捨て吸収性製品が着用者によって使用の間、その一体性を保持する。
現在の使い捨ての乳児おむつ及び他の使い捨て吸収性製品は一般の人々によっておおむね受け入れられてきたが、これらの製品は、なお特定の領域において改善を必要とする。例えば、多くの使い捨て吸収性製品は、トイレ又はトイレを下水システムと接続しているパイプを通して処分するのが困難なものである。
使い捨て吸収性製品の環境ウェルネスは、世界の全体にわたって懸念が常に増加している。埋め立て地が一杯になり続けるにつれて、使い捨て製品における材料源の低減、使い捨て製品における更にリサイクル可能な及び/又は分解可能な成分の取込み、また、埋立地のような廃棄物処理場へ組込む以外の手段によって処分することができる製品の設計の要求が増加してきた。
そのように、一般的には、使用の間、それらの一体性と強度を保持するが、使用後、材料を更に効率的に処分することができる使い捨て吸収性製品で使うことができる新素材が求められている。例えば、使い捨て吸収性製品は、コンポスト化によって容易に且つ効率的に処分することができる。或は、使い捨て吸収性製品は液体の下水システムに容易に且つ効率的に処分することができ、ここで、使い捨て吸収性製品は微生物によって分解することができる。
【0003】
市販の生分解性高分子の多くは、脂肪族ポリエステル材料である。脂肪族ポリエステルから調製される繊維が知られるが、それらの使用によって問題に直面した。特に、脂肪族ポリエステルポリマーは、例えば、ポリオレフィンポリマーと比較して、比較的遅い晶出速度を有することが知られ、このことによりしばしば脂肪族ポリエステルポリマーの加工性が悪くなる。ほとんどの脂肪族ポリエステルポリマーは、また、ポリオレフィンより溶融温度が非常に低く、熱処理後に十分冷却するのが困難である。脂肪族ポリエステルポリマーは、一般に、本質的に湿潤性材料でなく、パーソナルケア用途に用いるために変性を必要とすることがある。更に、処理添加剤の使用は、元の材料の生分解速度を遅延させることができ、処理添加剤がそれ自体生分解性でなくてもよい。
また、分解可能な一成分繊維が知られるが、それらの使用によって問題に直面した。特に、既知の分解可能な繊維は、典型的には、熱結合又はラミネーションのような下流の熱処理プロセスの間にポリマー鎖が弛緩するために、繊維が通常ひどい熱収縮を受けるようなプロセスで熱硬化プロセスが使われない場合には、良好な熱寸法安定性を有しない。実際の熱硬化プロセスは、不織プロセスを実行不可能な方法にし、ポリマーから製造された繊維を紡糸する。
例えば、ポリ(乳酸)ポリマーから調製された繊維が知られるが、それらの使用によって問題に直面した。特に、ポリ(乳酸)ポリマーは、例えば、ポリオレフィンポリマーと比較して晶出速度が比較的遅いことが知られ、このことによりしばしば脂肪族ポリエステルポリマーの加工性が悪くなる。更に、ポリ(乳酸)ポリマーは、一般的には、熱寸法安定性が良好でない。ポリ(乳酸)ポリマーは、通常は、熱結合やラミネーションのような下流の熱処理プロセスの間のポリマー鎖の緩和のために、熱硬化のような特別なステップがとられない限り激しい熱収縮を受ける。しかしながら、そのような熱硬化ステップは、一般的に、元の位置の不織布形成プロセス、例えば、スパンボンドメルトブローンにおける繊維の使用を制限し、熱硬化が達成されることは非常に難しい。
【0004】
更に、パーソナルケア用途のための不織布を製造する場合、最終ウェブの機能性を強化する多くの物理的性質がある。切断繊維、例えば、エアレイド又はボンデッドカードウェブから構成されたウェブを製造するために、繊維成分の1種はバインダー繊維でなければならない。バインダー繊維として効果的に作用するために、繊維は、通常は、高い溶融成分と低い溶融成分間の溶融温度において顕著な差、即ち、少なくとも20℃をもつ均一な多成分繊維であるように選ばれる。これらの繊維は、多くの異なる構造、例えば、並列又は外筒コアで形成することができる。
パーソナルケア用途において用いられる材料の大多数は、本質的に疎水性材料であるポリオレフィンである。これらの材料を機能的にするために、追加の紡糸後処理ステップ、例えば、界面活性剤処理が必要とされる。これらの特別なステップは、コストを追加し、最適液体処置特性を達成するためにしばしば十分でない溶液を形成する。
パーソナルケア用途のために、不織布ウェブと、それらの成分繊維の最も基本的特性の1つは、湿潤性である。親水性で永続的に湿潤性である材料を製造することは有益である。現在のステーブルファイバーと関連している問題点の1つは、永続的な湿潤性が欠けていることである。ポリオレフィンは、湿潤性に与えるために界面活性剤処理を受けなければならない疎水性材料である。この処理後にわずかに親水性であることに加えて、界面活性剤が連続的な放出の間に洗い流される傾向があるので、この湿潤性は永続的ではない。
従って、固有の湿潤性と結合特性を与えるバインダー繊維が求められている。更に、また、これらの改良された湿潤性及び結合特性を与えつつ生分解性であるが、著しく熱収縮せずに紡糸することができるバインダー繊維が求められている。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、改良された湿潤性及び結合特性を与えつつ生分解性であるが、典型的には、後熱処理プロセスにおいて従来のポリ乳酸(polylactide)又は脂肪族ポリエステルによって直面する、著しい熱収縮を受けずに選ばれた最終の不織構造へ容易に調製され容易に処理可能であるバインダー繊維を提供する。
本発明の一態様は、脂肪族ポリエステル材料をポリ乳酸ポリマーと並列構造で含むバインダー複合繊維に関する。
そのような脂肪族ポリエステル材料の一実施態様は、ポリブチレンスクシネートポリマー、ポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマー、ポリカプロラクトンポリマー、これらのポリマーの混合物、及びこれらのポリマーのコポリマーより選ばれた脂肪族ポリエステルポリマーと; 多価カルボン酸の混合物を含み、ここで、多価カルボン酸の炭素原子の合計は約30未満である。
他の態様においては、本発明は、本明細書に開示されるバインダー複合繊維を含む不織構造に関する。
そのような不織構造の一実施態様は、使い捨て吸収性製品に有効な層である。
他の態様においては、本発明は、本明細書に開示されるバインダー複合繊維を調製する方法に関する。
他の態様においては、本発明は、本明細書に開示されるバインダー複合繊維を含む使い捨て吸収性製品に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、脂肪族ポリエステル材料をポリ乳酸ポリマーと並列構造で含む生分解性バインダー繊維に関する。脂肪族ポリエステル材料は、熱可塑性組成物である。本明細書に用いられる“熱可塑性”という用語は、熱にさらされる場合に軟化し、室温に冷却される場合にその元の状態に実質的に戻る材料を意味する。
未変性ポリ乳酸は、繊維処理の間の晶出速度が遅いために30パーセントより大きい熱収縮を受けることがある。熱収縮を減少させるために、後熱硬化段階が必要である。しかしながら、熱硬化段階は、不織形成工程において実用的でない。このことは、熱仕上ステップのいずれかが繊維を小さく硬質の認識できない部分にするので、不織布プロセスにおけるポリ乳酸の使用を見栄えが悪い選択にする。ポリ乳酸が生分解性ポリマーのための別の実行可能な選択であるので、複合繊維の生分解性を犠牲にせずにこの問題を克服するための手法を見出すことが所望された。
脂肪族ポリエステルポリマーは、他の処理放出がそれらの使用と関連している生分解性ポリマーである。これらのポリマーの粘度が非常に高く且つ溶融温度が非常に低いために、繊維紡糸の間に十分な冷却を達成することは難しいことがある。このことにより、空気延伸間に繊維凝集のような問題点が生じる。これらの繊維の特性により、高速延伸工程の非常に狭い作動窓が生じる。
このポリマーとポリ乳酸とを共紡糸することにより、この繊維凝集を減少させることができる。更に、脂肪族のポリエステルポリマーの優れた熱寸法安定性が優れていることから、ポリ乳酸の支持体として作用することができ、そのことにより、熱収縮が実質的に減少する。並列複合構造での材料のこのユニークな組み合わせにより、個々のポリマーの各々と関連している処理と機能の問題点が取り除かれる。最後に、脂肪族ポリエステルポリマーは、ポリ乳酸の核形成が生じることを助けるために用いることができ、そのことにより、ポリ乳酸の結晶化が促進される。
【0007】
二成分系において最適処理を達成するために、ポリマーが適合レオロジー特性を有することは有益である。ポリマーメルトフローの特性を調整するために、多価カルボン酸を、脂肪族ポリエステルポリマー、ポリ乳酸ポリマー又はその双方に加えることができる。この添加は加工性を達成するために用いることができるだけでなく、機能的な特性、例えば、繊維に対する自動けん縮加工特性を与えることができる。
本明細書に記載される成分の反応していない混合物を用いることにより、バインダー繊維を調製することができ、ここで、そのようなバインダー繊維は、実質的に生分解性であるが、バインダー繊維は、有益な繊維の機械的性質を示す不織構造へ容易に加工されることが発見された。
バインダー繊維は、一実施態様においては、脂肪族ポリエステル材料をポリ乳酸ポリマーと並列構造で含む複合繊維を含んでいる。多価カルボン酸は、脂肪族のポリエステルポリマー、ポリ乳酸ポリマー又はその双方に添加することができる。
複合繊維における第一成分は、ポリブチレンスクシネートポリマー、ポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマー、ポリカプロラクトンポリマー、これらのポリマーの混合物、及びこれらのポリマーのコポリマーより選ばれた脂肪族ポリエステルポリマーである。
ポリブチレンスクシネートポリマーは、一般的にはグリコールとジカルボン酸又はその酸無水物の縮重合によって調製される。ポリブチレンスクシネートポリマーは、鎖状ポリマーか又は、長鎖枝分れポリマーであってもよい。長鎖枝分れポリブチレンスクシネートポリマーは、一般的には、三官能性又は四官能性ポリオール、オキシカルボン酸、及び多塩基性カルボン酸からなる群より選ばれた追加の多官能性成分を用いて調製される。ポリブチレンスクシネートポリマーは、当該技術において既知であり、そして、例えば、昭和高分子(株)、東京、日本の欧州特許出願第0 569 153 A2号に記載されている。
【0008】
ポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマーは、一般的には、少なくとも1つのアルキルグリコールと1を超える脂肪族多官能性酸の重合によって調製される。ポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマーは、また、当該技術において既知である。
本発明に用いるのに適したポリブチレンスクシネートポリマーとポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマーの例としては、本質的に鎖状ポリマーである呼称BIONOLLE 1020ポリブチレンスクシネートポリマー又はBIONOLLE 3020ポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマーとして、昭和高分子(株)、東京、日本から入手できる、種々のポリブチレンスクシネートポリマーとポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマーが含まれる。これらの材料は、実質的に生分解性であることが知られる。
ポリカプロラクトンポリマーは、一般的には、ε-カプロラクトンの重合によって調製される。本発明に用いるのに適したポリカプロラクトンポリマーの例としては、呼称TONE(登録商標)ポリマーP767EやTONE(登録商標)ポリマーP787ポリカプロラクトンポリマーとしてユニオンカーバイド社、サマセット、ニュージャージーから入手できる種々のポリカプロラクトンポリマーが含まれる。これらの材料は、実質的に生分解性であることが知られる。
一実施態様においては、脂肪族ポリエステルポリマーは、ポリブチレンスクシネートポリマー、ポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマー、ポリカプロラクトンポリマー、これらのポリマーの混合物、及びこれらのポリマーのコポリマーより選ばれる。脂肪族ポリエステルポリマーは、脂肪族ポリエステル材料中に、選ばれた特性を示すバインダー繊維に結果としてなるのに有効な量で存在する。有益な特性としては、ポリ乳酸ポリマーの熱収縮の減少や結晶化の促進を含むことができるがこれらに限定されるものではない。
【0009】
脂肪族ポリエステルポリマーは、0より大きいが、100重量パーセント未満である重量で存在する。有益には、脂肪族ポリエステルポリマーとポリ乳酸ポリマーとの重量比は、約1:1〜約10:1の範囲にある。他の実施態様においては、脂肪族ポリエステルポリマーとポリ乳酸ポリマーとの重量比は、約1.5:1〜約9:1の範囲にある。更に他の実施態様においては、脂肪族ポリエステルポリマーポリ乳酸ポリマーに対するの重量比約2:1〜約8:1の範囲にある。更に他の実施態様においては、脂肪族ポリエステルポリマーとポリ乳酸ポリマーとの重量比は、約3:1〜約7:1の範囲にある。更に他の実施態様においては、脂肪族ポリエステルポリマーとポリ乳酸ポリマーとの重量比は、約4:1〜約6:1の範囲にある。
一実施態様においては、脂肪族ポリエステルポリマーは、脂肪族ポリエステル材料が有益な溶融強度、繊維の機械強度、及び繊維の紡績性を示すのに有効である重量平均分子量を示している。一般に、脂肪族ポリエステルポリマーの重量平均分子量があまりに大きい場合には、処理しにくい脂肪族ポリエステルポリマーを含む熱可塑性組成物を結果として生じてしまうポリマー鎖が重くもつれることを表している。逆に、脂肪族ポリエステルポリマーの重量平均分子量があまりに小さい場合には、比較的弱い溶融強度を示し、高速処理を非常に難しくするその脂肪族ポリエステルポリマーを含む脂肪族ポリエステル材料を結果として生じてしまうほど十分にポリマー鎖がもつれないことを表している。従つて、本発明に用いるのに適した脂肪族ポリエステルポリマーは、重量平均分子量が有益には約10,000〜約2,000,000、更に有益には約50,000〜約400,000、適切には約100,000〜約300,000あることを示している。ポリマー又はポリマーブレンドのための重量平均分子量は、当業者に既知の方法で求めることができる。
【0010】
他の実施態様においては、脂肪族ポリエステルポリマーは、脂肪族ポリエステルが有益な溶融強度、繊維の機械強度、及び繊維の紡績性を示すのに、有効である多分散性指標値を示している。本明細書で用いられる“多分散性指標”は、ポリマーの重量平均分子量をポリマーの数平均分子量で割ることによって得られる値を表すことを意味する。ポリマー又はポリマーブレンドの数平均分子量は、当業者に既知の方法で求めることができる。一般に、脂肪族ポリエステルポリマーの多分散指標値が大きすぎる場合には、その脂肪族ポリエステルポリマーを含む脂肪族ポリエステル材料は、紡糸の間、溶融強度特性が低い低分子量ポリマーを含むポリマーセグメントによりもたらされる相反した加工特性に起因して加工が困難になる。従つて、一実施態様においては、脂肪族ポリエステルポリマーの多分散指標値は有益には約1〜約15、更に有益には約1〜約4、適切には約1〜約3である。
他の実施態様においては、脂肪族ポリエステルポリマーは溶融処理可能である。本実施態様においては、脂肪族ポリエステルポリマーは、メルトインデックスが有益には1グラム/10分〜約200グラム/10分、適切には10グラム/10分〜約100グラム/10分、更に適切には20グラム/10分〜約40グラム/10分であることを示している。材料のメルトインデックスは、例えば、ASTM試験法D1238-Eに従って求めることができ、この試験法の記載は本願明細書に全体で含まれるものとする。
本発明においては、脂肪族ポリエステルポリマーは、実質的に生分解性である。結果として、バインダー繊維を含む不織材料が環境に処分され、空気及び/又は水にさらされた場合には、実質的に分解可能である。本明細書に用いられる“生分解性”は、材料が細菌、真菌、及び藻類のような天然に存在する微生物の作用から分解することを意味する。材料の生分解性は、ASTM試験法5338.92又はISO CD試験法14855を用いて求めることができ、各試験法の記載は本願明細書に全体で含まれるものとする。ある具体的な実施態様においては、材料の生分解性は、変更したASTM試験法5338.92を用いて求めることができ、ここで、試験チャンバは、増加する温度プロファイルを用いるより試験全体にわたって約58℃の一定温に維持される。
【0011】
本発明においては、脂肪族ポリエステルポリマーは、実質的にコンポスト可能であってもよい。結果として、脂肪族ポリエステルポリマーを有するバインダー繊維を含む不織材料は、環境に処分され、空気及び/又は水にさらされる場合に実質的にコンポスト可能である。本明細書に用いられる“コンポスト可能”は、材料がコンポスト用地において生分解を受けることができ、材料が既知のコンポスト可能材料と一致した速度で視覚的に識別可能でなく二酸化炭素、水、無機化合物、及びバイオマスに分解することを意味する。
本発明のバインダー複合繊維の第二部分は、ポリ乳酸ポリマー材料を含んでいる。このポリ乳酸ポリマー材料は、生分解性材料でなければならない。本発明に用いられる材料としては、L:D比が異なるポリ乳酸又はポリ(乳酸)(polylactic acid, “PLA”)が含まれるがこれらに限定されない。PLAは、2つの異なる光学活性形、L異性体とD異性体で存在する。100%のL-PLAからなるポリ乳酸の溶融温度は、約175℃である。L:D比を調整することによって、溶融温度を下げることができる。従って、PLAは、0〜100% L異性体と100〜0% D異性体のブレンドであり得る。
脂肪族ポリエステルポリマーのポリ乳酸ポリマーと並列結合での使用は、熱寸法安定性を改善しつつ分解可能である複合繊維の製造を助ける。一般に、多くのポリ乳酸ポリマーは、熱仕上ステップのときに激しい熱収縮を受け、熱結合ステップのような熱処理ステップを含む不織布においてこれらの材料が使われることを妨げる。しかしながら、脂肪族ポリエステルポリマーは、冷却されるままポリ乳酸ポリマーの結晶化を促進させる。本発明においては、脂肪族ポリエステルポリマーがポリ乳酸ポリマーと並列構造にあるので、ポリ乳酸と接触する脂肪族ポリエステルポリマーはポリ乳酸の核形成を引き起こすことができ、このことにより、ポリ乳酸の結晶化が促進される。核形成と結晶化は融解した段階の間、界面で生じ、ポリ乳酸が結晶化するので、核形成部位が、界面から離れて残っているポリ乳酸へ更に広がる。そのように、ポリ乳酸の結晶化は、繊維の冷却の間に更に急速に生じ、仕上げた繊維における熱収縮が減少する結果となる。一実施態様においては、本発明の複合繊維の熱収縮は約15%未満である。他の実施態様においては、本発明の複合繊維の熱収縮は約10%未満である。更に他の実施態様においては、本発明の複合繊維の熱収縮は約5%未満である。
【0012】
脂肪族ポリエステルポリマーは、また、熱安定性が良好であり溶融温度が低いという利点を与え、そのように、これらの脂肪族ポリエステルポリマーは、繊維の固態の間、定位置にポリ乳酸ポリマーを保持することによって熱収縮を防止する。脂肪族ポリエステルポリマーの下部の溶融する性質が低いことから、複合繊維は、あらゆる熱結合ステップに用いることができる。
本発明の複合繊維における任意の成分は、多価カルボン酸である。多価カルボン酸は、脂肪族ポリエステルポリマー、ポリ乳酸ポリマー、又はその双方と用いることができる。多価カルボン酸は、脂肪族ポリエステルポリマー、ポリ乳酸ポリマー、又はその双方の粘度が繊維の有益な加工特性を達成するように調整されることを可能にする。
多価カルボン酸は、2種以上のカルボン酸基を含むあらゆる酸である。本発明の一実施態様においては、多価カルボン酸は線状であることが好ましい。2つのカルボン酸基を含むジカルボン酸が本発明に用いるのに適している。他の実施態様においては、多価カルボン酸は総炭素数があまり大きくなくてもよい。晶出動力学、脂肪族ポリエステル材料から調製される繊維又は不織構造の結晶化が生じる速度が有益であるより遅くなり得るからである。それ故、多価カルボン酸の炭素原子の合計が有益には約30未満、更に有益には約4〜約30、適切には約5〜約20、更に適切には約6〜約10であることが有益である。適切な多価カルボン酸としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸及びこれらの酸の混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。一実施態様においては、多価カルボン酸は、脂肪族ポリエステルポリマー及び/又はポリ乳酸ポリマーに、選ばれた特性を示す熱可塑性組成物が得られるのに有効な量で存在する。多価カルボン酸は、脂肪族ポリエステルポリマー及び/又はポリ乳酸ポリマー中に、0重量パーセントより多く、有益には約1重量パーセント〜約15重量パーセント、より有益には約1重量パーセント〜約10重量パーセント、最も適切には約2重量パーセント〜約5重量パーセントである重量で存在することができ、ここで、全ての重量パーセントは、複合繊維に存在する脂肪族ポリエステルポリマー、ポリ乳酸ポリマー、及び多価カルボン酸の総重量に基づくものである。これは、従来技術の適用で用いることができる多価カルボン酸の量からかなり減少している。
【0013】
押出されたポリマーを周囲温度に冷却する方法は、通常は、押出されたポリマーの上に周囲温度又は周囲温度未満の空気を吹き込むことによって達成される。そのような方法は、温度の変化が、比較的短い期間(数秒)にわたって、通常は100℃より大きく、多くの場合150℃より大きいので急冷又は過冷却と呼ぶことができる。ポリマーの溶融粘度を低下させることによって、そのようなポリマーは、一般的には低い温度で巧く押出すことができる。これは、一般的には、冷却時に必要とされる温度変化を、好ましくは150℃未満、場合によっては、100℃未満であるように低下させる。この一般の方法を更に実在の製造プロセスにおいて脂肪族ポリエステルの晶出動力学を最大にする唯一の方法であることを必要とした理想的な冷却温度プロファイルへ注文で特製することは、非常に短い時間内で極端に冷却することが必要とされることから非常に難しい。標準の冷却法は、しかし、第2変更方法と組み合わせて用いることができる。従来の第2方法は、急冷中に結晶化を始める部位を与えるために熱可塑性組成物と混合した、固体微粒子のような核形成剤を有するものである。しかしながら、そのような固体の核形成剤は、一般的には、熱可塑性組成物において非常に容易に集合し、紡糸中にフィルタや紡糸口金孔を閉鎖することになってしまう。更に、そのような固体の核形成剤の核形成の影響は、通常は、そのような固体の核形成剤の約1パーセントのアドオンレベルでピークに達する。これらの要因のどちらも、一般的には、そのような固体の核形成剤の高重量パーセントで熱可塑性組成物に添加する能力又は要求を低下させる。しかしながら、脂肪族ポリエステルポリマー及び/又はポリ乳酸ポリマーを処理する際に、脂肪族ポリエステルポリマーがポリ乳酸ポリマーのための核形成剤として機能することがわかった。
バインダー繊維への脂肪族ポリエステルポリマーの熱処理において直面した他の主な問題点は、これらのポリマーの粘着性である。機械的に、又は空気延伸プロセスによって繊維を延伸する試みは、しばしば繊維が固体塊へ凝集する結果となる。一般的には、固体充填剤を添加すると、ほとんどの場合、ポリマー溶融物の粘着性が低下するように作用することが既知である。しかしながら、固体充填剤の使用は、不織布適用において問題となることがあり、ポリマーは直径が非常に小さな孔を通って押出される。これは、充填剤粒子が紡糸口金孔やフィルタスクリーンを塞ぐ傾向があり、そのことにより、繊維紡績工程を中断するからである。本発明においては、対照的に、多価カルボン酸は、一般的には、押出工程の間は液体のままであるが、急冷工程でほとんど直ちに固化する。従つて、多価カルボン酸は、固体充填剤として効果的に作用し、系の全体の結晶化度が高められ、粘度調整剤として作用して繊維の粘着性を低下させ、延伸の間の繊維凝集のような問題が取り除かれる。
【0014】
本発明の利点の1つは、複合繊維が脂肪族ポリエステル材料の一部としての湿潤剤を必要とせずに紡糸することができることである。湿潤剤は、本発明の複合繊維が親水性と疎水性の間の境界にあるので必要とされない。更に、本発明の複合繊維は、前進接触角が約90度に近く、湿潤剤を利用する従来技術の複合繊維より改善される。
他の追加の特性は、本発明によって達成することができる。ある種のプロセスパラメータとある種の組成物によって、自動けん縮加工特性を有する繊維を製造することができる。即ち、機械的又は空気延伸時に繊維が自発的にけん縮加工して、一実施態様においては約3〜約51けん縮/cm(1〜約20けん縮/インチ)のけん縮レベルを与える。他の実施態様においては、けん縮レベルは約25〜約51けん縮/cm(約10〜約20けん縮/インチ)である。
本発明に用いられる脂肪族ポリエステル材料の主成分を上記で記載したが、そのような脂肪族ポリエステル材料は、それらに限定されず、脂肪族ポリエステル材料の選ばれた特性に逆効果にならない他の成分を含むことができる。追加成分として用いることができる例示的な材料としては、色素、抗酸化剤、安定剤、界面活性剤、ワックス、流れ促進剤、固形溶媒、可塑剤、核形成剤、微粒子、熱可塑性組成物の加工性を高めるために加えられる他の材料が含まれるが、これらに限定されない。そのような追加成分が脂肪族ポリエステル材料に含まれる場合には、追加成分は有益には約10重量パーセント未満、更に有益には約5重量パーセント未満、適切には約1重量パーセント未満の量で用いることができ、ここで、全ての重量パーセントは、複合繊維に存在する脂肪族ポリエステルポリマー、ポリ乳酸ポリマー、及びマルチカルボン酸の総重量に基づくものである。
種々の成分を熱的に処理するのに典型的な条件としては、有益には約100秒-1〜約50000秒-1、更に有益には約500秒-1〜約5000秒-1、適切には約1000秒-1〜約3000秒-1、最も適切には約1000秒-1時であるせん断速度を用いることが含まれる。成分を熱的に処理するのに典型的な条件としては、また、有益には約50℃〜約500℃、更に有益には約75℃〜約300℃、適切には約100℃〜約250℃である温度を用いることが含まれる。
【0015】
一旦脂肪族ポリエステルポリマーとポリ乳酸ポリマーが選ばれ形成されると、これらの材料は、2つの材料を共紡糸することによりバインダー繊維へ形成することができる。繊維を紡糸した後に、親水性ステーブルファイバを製造するために延伸、切断及び/又はけん縮加工することができる。これらの繊維は、次に、不織材料を形成するためにボンデッドカードウェブ又はエアレイドプロセスで用いることができ、次に、使い捨て衣類に用いられる。短いステーブルファイバーは、また、処分の後、繊維を微生物によって分解させることを可能にする。複合繊維の製造は、二軸押出紡績システムで行われる。各成分は、単軸又は二軸押出機に供給され、溶融物に加熱され、紡糸口金に供給される。紡糸口金の設計によって、繊維の最終形状が決定される。紡糸口金を通って押出される溶融ポリマーは、固態に達するま周囲空気又は周囲空気未満によって冷却される。ソリッドファイバーは、次に、用いうるあらゆる手段、例えば、ゴデットロールによって延伸される。そこから、繊維を切断、けん縮加工、延伸、又は処理するあらゆる標準法を用いることができる。
本明細書に用いられる“疎水性”という用語は、空気中の水の接触角が少なくとも90度である材料を意味する。対照的に、本明細書に用いられる“親水性”という用語は、空気中の水の接触角が90度未満である材料を意味する。しかしながら、市販パーソナルケア製品は、一般には、選ばれた液体の担持特性を与えるために有意には90度より小さい接触角を必要とする。パーソナルケア製品に有益な迅速な吸入及び湿潤性を達成するために、空気中の水の接触角は約70度より小さく選ぶことができる。一般的に、接触角が小さいほど、湿潤性が良好である。本出願のために、接触角の測定は、本明細書の試験法の項に示されるように求められる。接触角の一般事項とその測定は、例えば、Robert J. Good and Robert J. Stromberg, Ed.,“Surface and Colloid Science - Experimental Methods”, Vol. II, (Plenum Press, 1979)のように当該技術において周知である。示されるように、前進接触角は約90度である。
【0016】
一般的には、脂肪族ポリエステル材料の溶融温度又は軟化温度は、典型的には、ほとんどの工程適用で直面する範囲内にあることが有益である。そのように、一般的には、その脂肪族ポリエステル材料の溶融又は軟化温度は、有益には約25℃〜約350℃であり、更に有益には約35℃〜約300℃であり、適切には約45℃〜約250℃であることが選ばれる。
本発明に用いられる多価カルボン酸とブレンドした脂肪族ポリエステルは、一般的には、脂肪族ポリエステルポリマーを含むが多価カルボン酸を全く含まない熱可塑性組成物と比較して加工性が改善されることがわかった。これは、一般的には、多価カルボン酸のために生じる粘度の著しい低下によるものである。多価カルボン酸を含まないと、脂肪族ポリエステルポリマーの粘度は、高すぎて処理することができない。
本明細書に用いられるように、脂肪族ポリエステル材料の加工性の改善は、約170℃の温度と約1000秒-1のせん断速度の典型的な工業的押出処理条件における熱可塑性組成物の見掛け粘度の低下として測定される。脂肪族ポリエステル材料が高すぎる見掛け粘度を示す場合には、脂肪族ポリエステル材料は、一般には、処理が非常に困難である。対照的に、脂肪族ポリエステル材料の見掛け粘度が低すぎる場合には、脂肪族ポリエステル材料は、一般的には、引張強さが非常に不十分な押出繊維になる。
それ故、一般的には、脂肪族ポリエステル材料は、約170℃の温度、約1000秒-1のせん断速度における見掛け粘度値が有益には約5パスカル秒(Pa・s)〜約200パスカル秒、更に有益には約10パスカル秒〜約150パスカル秒、適切には約20パスカル秒〜約100パスカル秒であることが有益である。見掛け粘度値を求める方法は、実施例と関連して後述される。
本明細書に用いられる“繊維”又は“繊維の”という用語は、そのような材料の長さと直径との比が約10より大きい材料を意味する。逆に、“非繊維”又は“非繊維の”材料は、そのような材料の長さと直径との比が約10以下である材料を表すことを意味する。
【0017】
繊維の製造方法は、周知であり、ここで詳細に記載することを必要としない。ポリマーの溶融紡糸としては、連続フィラメント構造、例えば、スパンボンド又はメルトブローン、非連続フィラメント、例えば、ステープルファイバーやショートカットファイバー構造の製造が含まれる。スパンボンド繊維又はメルトブローン繊維を形成するために、一般的には、熱可塑性組成物が押出され、分配システムに供給され、そこで熱可塑性組成物が紡糸口金プレートへ導入される。次に、紡糸した繊維が冷却され、固化され、空気力学的システムによって延伸され、次に、従来の不織布へ形成される。その間に、ショートカット又はステープルを製造するために、紡糸した繊維が冷却され、固化され、一般的には機械的ロールシステムによって、中間フィラメント径に延伸され、不織構造に直接形成されるよりはむしろ繊維が収集される。続いて、収集された繊維がその軟化温度より低い温度で選ばれた仕上げの繊維径に“冷延伸”することができ、続いてけん縮加工/特殊加工し、選ばれた繊維の長さに切断することができる。多成分繊維は、比較的短い長さ、例えば、長さが一般的には約25〜約50ミリメートルの範囲にあるステーブルファイバーや更に短く、長さが一般的には約18ミリメートル未満であるショートカットファイバーに切断することができる。例えば、Taniguchi et alの米国特許第4,789,592号、及びStrack et alの米国特許第5,336,552号を参照のこと。いずれの明細書の記載も本願明細書に全体で含まれるものとする。
本発明のバインダー繊維を用いる生分解性不織材料は、使い捨て吸収性製品、例えば、おむつ、成人の失禁用品、及びベッドパッドを含む使い捨て製品; 月経用部材、例えば、生理用ナプキンやタンポン; 他の吸収性製品、例えば、ワイプ、胸当て、創傷包帯、手術用ケープ又はドレープに用いるのに適している。従って、他の態様においては、本発明は多成分繊維を含む使い捨て吸収性製品に関する。
本発明の一実施態様においては、バインダー繊維は、使い捨て吸収性製品に取込むための繊維マトリックスへ形成される。繊維マトリックスは、例えば、繊維の不織布ウェブという形をとることができる。用いられる繊維の長さは、企図される具体的な最終用途に左右されてもよい。繊維が、例えば、トイレにおいて水に分解される場合には、長さが約15ミリメートル以下に維持されることが有利である。
【0018】
本発明の一実施態様においては、使い捨て吸収性製品が供給され、使い捨て吸収性製品は、一般的には、液体透過性トップシート、液体捕捉層、吸収性構造、及び液体不透過性裏シートを含む複合構造を備え、液体透過性トップシートの、液体捕捉層、又は液体不透過性裏シートの少なくとも1つは本発明の不織材料を含んでいる。ある場合に、トップシート、液体捕捉層、及び裏シートの全3つが記載された不織材料を含むことが有益であってもよい。
他の実施態様においては、使い捨て吸収性製品は、一般的には、液体透過性トップシート、吸収性構造及び液体不透過性裏シートを含む複合構造を備えることができる、液体透過性トップシート又は液体不透過性裏シートの少なくとも1つは、記載される不織材料を含んでいる。
本発明の他の実施態様においては、不織材料は、スパンボンドラインで調製することができる。以前記載された熱可塑性材料を含む樹脂ペレットが形成され、予備乾燥される。次に、単一の押出機に供給される。繊維は、繊維延伸ユニット(FDU)又は空気延伸ユニットを形成ワイヤーに延伸することができ、熱的に結合することができる。しかしながら、他の方法や調製技術を用いることもできる。
例示的な使い捨て吸収性製品は、一般的には、米国特許出願第4,710,187号; 同第4,762,521号; 同第4,770,656号; 同第4,798,603号に記載され; これらの明細書の記載は本願明細書に含まれるものとする。
本発明の全ての態様の吸収性製品及び構造は、一般的には、使用中に体液の複数の放出を受ける。従って、吸収性製品及び構造は、体液の複数の放出を吸収性製品及び構造が使用中にさらされる量で吸収することができる。放出は、一般的には、一定の期間で相互に分離される。
【0019】
試験法
溶融温度
材料の溶融温度は、示差走査熱量測定法を用いて求めた。呼称サーマルアナリスト2910示差走査熱量計による示差走査熱量計は、液体窒素冷却付属物が装備され、サーマルアナリスト2200分析ソフトウェア(バージョン8.10)プログラムと組み合わせて用いられ、いずれもニューキャッスル、デラウェア、のT.A. Instruments Inc.から入手できるものであり、溶融温度の測定に用いた。
試験される材料サンプルは、繊維か又は樹脂ペレットの形のどちらかとした。間違った結果を生じるいかなるものも持ち込まないように直接材料サンプルを扱わずにピンセットや他のツールをむしろ用いることが好ましい。材料サンプルは、繊維の場合、切断され、樹脂ペレットの場合、アルミニウム製皿へ入れられ、分析用天秤により0.01mgの精度で重量を測定した。必要であれば、皿の材料サンプルの上にリッドを圧着した。
示差走査熱量計のためのマニュアルに説明されるように、インジウム金属標準と修正が行われたベースラインを用いて示差走査熱量計を調整した。試験のために示差走査熱量計の試験チャンバに材料サンプルを入れ、標準として空のパンが用いられる。全ての試験は、試験チャンバについて55立方センチメートル/分の窒素(工業用グレード)パージで行った。加熱冷却プログラムは、-75℃のチャンバの平衡化から始め、次に20℃/分〜220℃の加熱サイクル、次に20℃/分〜-75℃の冷却サイクル、次に、20℃/分〜220℃の他の加熱サイクルの2サイクル試験とした。結果を、分析ソフトウエアプログラムを用いて評価し、変曲点のガラス転移温度(Tg)、吸熱ピークと放熱ピークを確認し定量した。異なった傾きの変化が生じるライン上の領域としてガラス転移温度を確認し、次に、自動変曲点計算を用いて溶融温度を求めた。
【0020】
見掛け粘度
呼称Goettfert Rheograph 2003毛管レオメータによる毛管レオメータは、WinRHEO(バージョン2.31)分析ソフトウェアと組み合わせて用いられ、いずれもロックヒル、サウスカロライナ、のGoettfert Co.から入手できるものであり、これを用いて材料サンプルの見掛け粘度流動学的性質を評価した。毛管レオメータの準備としては、2000bar圧力トランスデューサ、30mm長/30mm有効長/1mm径/0mm高さ/180o角度で実験の円形孔毛管ダイが含まれる。
試験されている材料サンプルが、水感受性を有することが証明され、或いは既知であった場合には、材料サンプルを、ポリ(乳酸)材料のガラス転移温度より高い、即ち、55又は60℃より高い真空オーブン内で、少なくとも38センチメートル(15インチ)の水銀減圧下で少なくとも毎時0.8標準立方メートル(30標準立方フィート)の窒素ガスパージによって少なくとも16時間乾燥した。
一旦計測器がウォームアップされ、圧力トランスジューサが調整されると、押し込み棒でカラムに樹脂を充填したカラムにそのつど材料サンプルが逐次装填され、試験の間、一貫した溶融物を確実にした。材料サンプルを装填した後、材料サンプルが試験温度で完全に融解することを可能にするために、各試験の前に2分間融解させた。毛管レオメータが自動的にデータ点を取り、7つの見掛けの剪断速度(秒-1): 50、100、200、500、1000、2000、5000における見掛け粘度(パスカル秒)を求めた。得られた曲線を調べた場合、曲線が比較的なめらかであることが重要であった。おそらくカラムにおける空気のために、ある点から他の点まで一般曲線から有意な偏差があった場合には、結果を確認するために試験運転を繰り返した。
見掛け剪断速度と見掛け粘度のその結果としてのレオロジー曲線から、押出法においてその温度で材料サンプルがどのように流れるかが示される。少なくとも1000秒-1のせん断速度での見かけの粘度値は、これらが市販の繊維紡績押出機に見られる典型的な条件であるので特に重要である。
【0021】
接触角
装置としては、DCA-322動的接触角分析計(Dynamic Contact Angle Analyzer)とWinDCA(バージョン1.02)ソフトウェアが含まれ、いずれもマディソン、ウィスコンシンのATI-CAHN Instruments, Inc.から入手できるものである。試験は、バランススターラップが取り付けられた“A”ループについて行われた。マニュアルに示されるように、調整はモーターが毎月、バランス(100mgの塊が用いられる)が毎日行わなければならない。
熱可塑性組成物は、繊維へ紡糸され、接触角の定量に自由落下試料(0のジェットストレッチ)を用いた。汚染が最少限に保たれることを確実にするために、繊維が取扱いに晒されることを最少限にするために、繊維調製全体にわたって注意しなければならない。繊維サンプルは、その2-3cmの繊維がハンガーの端を超えて伸びるようにスコッチテープでワイヤーハンガーに取り付けられた。次に、約1.5cmがハンガーの端を超えて伸びるように繊維サンプルをカミソリで切断した。光学顕微鏡を用いて、繊維に沿って平均直径(3〜4測定)を求めた。
ワイヤーハンガー上の試料をループ“A”上のバランススターラップから吊り下げた。浸液は蒸留水であり、各試料のために変えた。試料パラメータ(即ち、繊維径)を入力し、試験を開始した。段階により、繊維が蒸留水の表面と接触した浸水深さゼロを検出するまで151.75マイクロメートル(151.75ミクロン)/秒で前進させた。浸漬の深さゼロから、1cmの水へ繊維が前進し、0秒留めて、次に、すぐに1cm後退させた。ソフトウェアで実行させた接触角の自動分析から、マニュアルにおいて確認された標準の計算に基づいて繊維サンプルの接触角の前進と後退を求めた。ゼロ又はゼロ未満の接触角は、試料が全体に湿潤性になったことを意味する。各試料について5回繰り返して試験し、平均、標準偏差、及び変化率係数の統計的分析を算出した。本明細書に実施例で示されるように、また、特許請求の範囲全体に用いられるように、前進接触角値は前の試験方法に従って求めた繊維サンプルについての蒸留水の前進接触角である。同様に、本明細書に実施例で示されるように、また、特許請求の範囲全体に用いられるように、後退接触角値は前の試験方法に従って求めた繊維サンプルについての蒸留水の後退接触角である。
【0022】
熱収縮試験
400メートル/分以上の引落速度で製造された約20フィラメントの試料をバンドルに集め、一端にテープを巻く。次に、ファイバーバンドルを、ポスターボードによって支持された方眼紙片の一方の縁にクリップで留める。バンドルのもう一端が教示されるように引っ張られ、方眼紙上の垂線と平行に並ぶ。次に、クリップが繊維を束ねたところから18センチメートル(7インチ)下に、ファイバーバンドルの周りに0.5gのおもりではさむ。通常は、3回の繰り返し実験を、一度に取り付けることができる。おもりの初期位置を示すために方眼紙にマークをつけることができる。試料を105℃オーブンへ入れ、それらを垂直に掛け、ポスターボードに触れないようにする。30分が経過するまで5分毎に、オーブンから試料を取り出さずにおもりの位置を急速に測定する。次に、本出願において熱収縮パーセントとして呼ばれる長さの減少割合を算出するためにバインダーバンドル長の変化が用いられる。
【実施例】
【0023】
次の実施例において熱可塑性組成物と複合繊維を形成するために成分として種々の材料を用いた。呼称及びこれらの材料の種々の特性を表1に示す。
ポリ(乳酸)(PLA)ポリマーは、呼称HEPLON(登録商標) E10001ポリ(乳酸)ポリマーとしてChronopol Inc.、ゴールデン、コロラドから入手した。
呼称BIONOLLE(登録商標)1020のポリブチレンスクシネートとして昭和高分子(株)、東京、日本から得られるポリブチレンスクシネートポリマーを入手した。
呼称BIONOLLE(登録商標)3020ポリブチレンスクシネート-コ-アジペートとして昭和高分子(株)、東京、日本から得られるポリブチレンスクシネート-コ-アジペートを入手した。
多価カルボン酸としてアジピン酸を用いた。
実施例1-10
材料をポリマーのガラス転移温度より高い真空オーブン内で一晩予備乾燥した。ポリ乳酸が吸湿性であり、また、その加工特性が水分の増加につれて急速に悪化するという事実のために、材料の由来や大気中の水分に晒される予想レベルによって、この乾燥の強度を必要に応じて変動させた。周囲湿度は、これらの材料の加工性に対する影響が著しいので注意した。
脂肪族ポリエステル材料は、各種成分を用い、それらを乾燥混合し、続いて逆回転する二軸押出機で溶融混合して成分を激しく混合することにより調製した。溶融混合は、回転する混合スクリューの剪断効果と組合わせた、成分の部分的又は完全な溶融を含んでいる。そのような条件は、熱可塑性組成物の成分の最適ブレンド及び分散にさえ貢献する。二軸押出機、例えば、Karlsautte、ドイツのHaake GmbHから入手できるHaake Rheocord 90二軸押出機、又は南ハッケンサック、ニュージャージーのBrabender Instrumentsから入手できるブラベンダーツインスクリューミキサ(cat no 05-96-000)又は他の匹敵する二軸押出機が、この作業にかなり適している。これは、また、共回転する二軸押出機、例えば、ラムジー、ニュージャージーのWerner & Pfleiderer Corporationから入手できるZSK-30押出機を含んでいる。特にことわらない限り、全ての試料はHaake Rheocord 90二軸押出機により調製した。溶融した組成物は、液体冷却ロールか又は表面によって及び/又は押出物を通過する強制空気によってメルトミキサーから押出した後に冷却される。冷却された組成物は、続いて、繊維に変換するためにペレットにした。
【0024】
バインダー繊維へのこれらの樹脂の変換は、2つの0.75インチ(1.905cm)径押出機を有する社内紡績ラインで行った。各押出機は、24:1のL:D(長さ:直径)比スクリューと押出機からスピンパックまで移送パイプへ供給する5つの加熱ゾーンを有する。移送パイプは、第4と第5の加熱ゾーンを構成し、ニューヨーク州ニューヨークのKoch Engineering Company Inc.から入手できる0.75インチ径KOCH(登録商標)SMX型静的ミキサユニットを含有する。移送パイプは、紡績ヘッド(第6と第7の加熱ゾーン)へ、溶融ポリマーが押出される数多くの小孔を有する回転プレートを通って伸びている。本明細書に用いられるスピンプレートは、2つのポリマーを分配した3つの金属板を有し、フローを並べて並列複合繊維を製造する第4のプレートを有した。第4スピンプレートは15-30の孔を有し、各孔の直径は12mil(0.305mm)である。繊維は、13℃〜22℃の温度で空気を用いて空気急冷され、ゴデットロール上で延伸される。紡糸後伸縮性が所望される場合には、第2ゴデットロールがわずかに高い回転速度で加えることができ、繊維を2本のロール間で伸ばした。
本発明のバインダー繊維は、ラボスケールの社内紡績ラインで製造した。紡績ラインは、2つの24:1のL:Dの一軸押出機、静的混合ユニット、及びスピンパックからなった。スピンパックはポリマーを分配した3層のプレートに続いてその構成が最終繊維の構造を決定する第4のプレートを含有した。これらの実施例の場合、並列構造を用いた。
これらの複合繊維の加工性は、非常に良好であった。これは、アジピン酸の使用によよりポリ乳酸ポリマーとポリブチレンスクシネート/ポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマーの粘度の調整が所望の加工特性を達成させることを可能にするという事実によるものであった。



















【0025】
表1
熱収縮データ

【0026】
表2
繊維紡糸温度プロファイル

【0027】
実施例11-12
これらの実施例は、Heplon/Bionelle繊維と多価カルボン酸及び多価カルボン酸を含むものとの比較を示し、後者の繊維がどのように自動けん縮するかが示される。
【0028】
表3
けん縮レベルデータ

【0029】
当業者は、本発明がその範囲から逸脱することなく多くの修正や変更が可能であることを認識する。従って、上に記載された詳細な説明と実施例は単に具体的に説明することを意味し、いかなる方法でも、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル材料をポリ乳酸ポリマーと並列構造で含む複合バインダー繊維であって;
該複合バインダー繊維の熱収縮値が約15%未満であり;
更に、脂肪族ポリエステルポリマーとポリ乳酸ポリマーの重量比が約1:1〜約10:1の範囲にある、前記複合バインダー繊維。
【請求項2】
複合バインダー繊維の熱収縮値が約10%未満である、請求項1記載の複合バインダー繊維。
【請求項3】
複合バインダー繊維の熱収縮値が約5%未満である、請求項1記載の複合バインダー繊維。
【請求項4】
脂肪族ポリエステルポリマーが、ポリブチレンスクシネートポリマー、ポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマー、ポリカプロラクトンポリマー、これらのポリマーの混合物、及びこれらのポリマーのコポリマーより選ばれる、請求項1記載の複合バインダー繊維。
【請求項5】
脂肪族ポリエステルポリマーがポリブチレンスクシネートポリマーである、請求項4記載の複合バインダー繊維。
【請求項6】
脂肪族ポリエステルポリマーがポリブチレンスクシネート-コ-アジペートポリマーである、請求項4記載の複合バインダー繊維。
【請求項7】
脂肪族ポリエステルポリマーがポリカプロラクトンポリマーである、請求項4記載の複合バインダー繊維。
【請求項8】
ポリ乳酸ポリマーが、L:D比の異なるポリ乳酸又はポリ(乳酸)より選ばれる、請求項1記載の複合バインダー繊維。
【請求項9】
脂肪族ポリエステルポリマーと混合した多価カルボン酸を更に含む、請求項1記載の複合バインダー繊維。
【請求項10】
多価カルボン酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びこれらの酸の混合物より選ばれる、請求項9記載の複合バインダー繊維。
【請求項11】
多価カルボン酸が、脂肪族ポリエステルポリマー中に約0.1重量パーセント〜約10重量パーセントの重量で存在する、請求項9記載の複合バインダー繊維。
【請求項12】
多価カルボン酸が、脂肪族ポリエステルポリマー中に約0.1重量パーセント〜約5重量パーセントの重量で存在する、請求項11記載の複合バインダー繊維。
【請求項13】
多価カルボン酸が、脂肪族ポリエステルポリマー中に約0.1重量パーセント〜約3重量パーセントの重量で存在する、請求項12記載の複合バインダー繊維。
【請求項14】
ポリ乳酸ポリマーと混合した多価カルボン酸を更に含む、請求項1記載の複合バインダー繊維。
【請求項15】
多価カルボン酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びこれらの酸の混合物より選ばれる、請求項14記載の複合バインダー繊維。
【請求項16】
多価カルボン酸が、ポリ乳酸ポリマー中に約1重量パーセント〜約15重量パーセントの重量で存在する、請求項14記載の複合バインダー繊維。
【請求項17】
多価カルボン酸が、ポリ乳酸ポリマー中に約1重量パーセント〜約10重量パーセントの重量で存在する、請求項16記載の複合バインダー繊維。
【請求項18】
多価カルボン酸が、ポリ乳酸ポリマー中に約2重量パーセント〜約5重量パーセントの重量で存在する、請求項17記載の複合バインダー繊維。
【請求項19】
脂肪族ポリエステルポリマー及びポリ乳酸ポリマーと混合した多価カルボン酸を更に含む、請求項1記載の複合バインダー繊維。
【請求項20】
多価カルボン酸が、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びこれらの酸の混合物より選ばれる、請求項19記載の複合バインダー繊維。
【請求項21】
多価カルボン酸が、脂肪族ポリエステルポリマー中に約0.1重量パーセント〜約10重量パーセントの重量で存在し、多価カルボン酸が、ポリ乳酸ポリマー中に約1重量パーセント〜約15重量パーセントの重量で存在する、請求項19記載の複合バインダー繊維。
【請求項22】
多価カルボン酸が、脂肪族ポリエステルポリマー中に約0.1重量パーセント〜約5重量パーセントの重量で存在し、多価カルボン酸が、ポリ乳酸ポリマー中に約1重量パーセント〜約10重量パーセントの重量で存在する、請求項21記載の複合バインダー繊維。
【請求項23】
多価カルボン酸が、脂肪族ポリエステルポリマー中に約0.1重量パーセント〜約3重量パーセントの重量で存在し、多価カルボン酸が、ポリ乳酸ポリマー中に約2重量パーセント〜約5重量パーセントの重量で存在する、請求項22記載の複合バインダー繊維。
【請求項24】
脂肪族ポリエステルポリマーとポリ乳酸ポリマーとの重量比が約1.5:1〜約9:1の範囲にある、請求項1記載の複合バインダー繊維。
【請求項25】
脂肪族ポリエステルポリマーとポリ乳酸ポリマーとの重量比が約2:1〜約8:1の範囲にある、請求項24記載の複合バインダー繊維。
【請求項26】
脂肪族ポリエステルポリマーとポリ乳酸ポリマーとの重量比が約3:1〜約7:1の範囲にある、請求項25記載の複合バインダー繊維。
【請求項27】
脂肪族ポリエステルポリマーとポリ乳酸ポリマーとの重量比が約4:1〜約6:1の範囲にある、請求項26記載の複合バインダー繊維。

【公表番号】特表2006−512506(P2006−512506A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565146(P2004−565146)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/038063
【国際公開番号】WO2004/061172
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(504460441)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (396)
【Fターム(参考)】