説明

熱抑制された多糖類および製法

【課題】色等の有意に改良された官能特性を有する熱抑制された多糖類を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、多糖を実質的に無水または無水の状態にまで脱水し、少なくとも6.5モル/mの酸素富化濃度において、100℃以上の温度で、該多糖を抑制するのに十分な時間、該実質的に無水または無水の多糖を熱抑制することによって、熱抑制された多糖を製造する方法に向けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年5月7日に出願された米国仮出願第61/051,057号についての優先権を主張する。
【0002】
本発明は、熱抑制された(thermally inhibited)多糖類、並びに、色、風味、および臭いを含めた、改良された官能的特性の組成物を製造するのに、少なくとも6.5モル/mの有効な酸素濃度下でそれらを製造する改良された方法に関する。
【背景技術】
【0003】
澱粉が、乾燥、異臭の蒸発、煙の臭いの付与、デキストリン化またはアニーリングのような種々の目的で加熱され得るのはよく知られている。より最近では、加熱処理は、熱抑制された澱粉を作成するのに用いられてきた。Chiuらに対する1998年3月10日に発行された米国特許第5,725,676号は、熱処理を用いて、熱抑制された非‐予備糊化(non-pregelatinized)顆粒澱粉の製法を開示する。Jeffcoatらに対する2001年7月17日に発行された米国特許第6,261,376号は、澱粉またはフラワー(flour)を脱水し、加熱処理することによって調製された、熱抑制され予備糊化された非‐顆粒澱粉を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今日、色、および抑制の割合のような有意に改良された官能特性が、多糖の熱抑制処理の間の、有効酸素濃度の使用によって多糖類を熱抑制するプロセスから得られることが判明した。本発明の1つの態様において、制限酸素濃度(12%(v/v)酸素)を増大させることなく、容器雰囲気の酸素含有量が増加し、かくして、安全操作のための可能な設計オプションを提供する。
【0005】
また、熱抑制の間の処理ガスの露点温度の低下が、熱抑制反応の間の加水分解を実質的に低下させることが判明している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
a)多糖を実質的に無水または無水の状態にまで脱水する工程、および
b)増大した容器圧力および/または増大した酸素含有量の使用により少なくとも6.5モル/mの有効酸素濃度において、100℃以上の温度に、該多糖を抑制するのに十分な時間、該実質的に無水または無水の多糖を熱抑制する工程
を含む、熱抑制された多糖の製法に向けられている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】抑制を測定するのに用いられる、ワキシー(waxy)コーンスターチの例についてのブラベンダー(Brabender)曲線を示す。対照曲線は、同様のブラベンダー手順を用いる、熱抑制されていない天然澱粉についての粘度プロフィールを示す。
【0008】
【図2】抑制の間、異なる酸素濃度で、92℃において、400BU粘度に到達するのに必要な処理時間を示す。
【0009】
【図3】抑制の間、92℃で、異なる酸素濃度における、400BU粘度の材料についてのハンターL色値(Hunter L color value)を示す。
【0010】
【図4】実施例1における実験で測定された、抑制の間の、ブラベンダー粘度によるハンターL色の変化を描写する。
【0011】
【図5】抑制の間のガス水分含有量の、ブラベンダー粘度プロフィールに対する影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で用いるのに適した多糖類は、その用語が本明細書中で用いられるように、澱粉、澱粉を含有する成分、澱粉に由来する材料、ガム、およびガムに由来する材料、並びにそのブレンドを含む。
【0013】
澱粉を含有する成分は、限定されるものではないが、フラワーおよびグリット(grit)を含む。澱粉に由来する材料は、限定されるものではないが、オリゴ糖、および澱粉を物理的に、酵素的に、または化学的に修飾することによって調製されたものを含めた、他の澱粉由来材料を含む。そのような材料は当該分野で公知であり、Modified Starches: Properties and Uses, Ed. Wurzburg, CRC Press, Inc.,Florida(1986)のようなテキストに記載されている。
【0014】
本発明で用いる澱粉はいずれの天然源に由来するいずれの澱粉であってもよい。本明細書中で用いる天然澱粉は、それ自体、天然で見出されるものである。交雑種(crossbreeding)、転流(translocation)、逆位(inversion)、形質転換(transformation)、挿入(insertion)、照射(irradiation)、化学的または他の誘導突然変異を含めた標準的な育種技術、またはその変異を含ませるための遺伝子または染色体エンジニアリングのいずれかの他の方法によって得られた植物に由来する澱粉もまた適当である。加えて、突然変異育種の既知の標準方法によって生産することができる、上記の一般的な組成物の誘導された突然変異および変異から成長された植物に由来する澱粉もまた、ここでは適している。
【0015】
澱粉のための典型的な源は穀類、塊茎および根、豆類および果実である。天然源は、限定するものではないが、トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、オオムギ、コムギ、コメ、サゴ、アマランス(amaranth)、タピオカ(キャッサバ)、クズウコン、カンナ、エンドウ、バナナ、オートムギ、ライムギ、ライコムギおよびモロコシ(sorghum)を含めたいずれもの品種、ならびにその低アミロース(ワキシー)および高アミロース品種であり得る。低アミロースまたはワキシー品種は、澱粉の10重量%未満のアミロースを含有する澱粉を、1つの実施態様においては、5重量%未満、もう1つの実施態様においては、2重量%未満、なおもう1つの実施態様においては、1重量%未満のアミロースを含有する澱粉を意味することを意図する。高アミロース品種は、全て澱粉に対する重量で表して、少なくとも約30%のアミロースを、第二の実施態様においては少なくとも約50%アミロースを、第三の実施態様においては少なくとも約70%のアミロースを、第四の実施態様においては少なくとも約80%のアミロースを、および第五の実施態様においては少なくとも約90%のアミロースをそれぞれ含有する澱粉を意味する。
【0016】
多糖は、剪断、多糖の粒状または結晶性性質の変化などによるような、当該分野で知られたいずれかの方法によって物理的に処理して、多糖を機械的に改変することができ、それには本明細書中で用いるように変換および予備糊化を含むことを意図する。当該分野で知られた物理的処理の方法は、ボール‐粉砕、均質化(homogenization)、高剪断ブレンディング、ジェットクッキングのような若しくはホモジェナイザーにおける高剪断クッキング、ドラム乾燥、スプレイ‐乾燥、スプレイクッキング、チルソネーション(chilsonation)、ロール‐粉砕および押出を含む。
【0017】
多糖は当該分野で公知のいずれかの試薬または試薬の組合せでの処理によって化学的に修飾することができる。化学的修飾は、多糖類の架橋、アセチル化、有機エステル化、有機エーテル化、ヒドロキシアルキル化(ヒドロキシプロピル化およびヒドロキシエチル化を含む)、リン酸化、無機エステル化、イオン(カチオン、アニオン、ノニオン、および両性イオン)修飾、コハク酸化、および置換されたコハク酸化を含むことを意図する。また、酸化および漂白も含まれる。そのような修飾は当該分野において、例えば、Modified starches: Properties and Uses. Ed.Wurzburg,CRC Prerss,Inc.,Florida(1986)において公知である。
【0018】
澱粉は熱抑制の前または後のいずれかで、粒状または予備糊化されていてもよい。冷水可溶性または分散された澱粉としても知られている予備糊化澱粉は、熱的、化学的または機械的予備糊化、次いで、乾燥によってそれを調製する方法がそうであるように、当該分野でよく知られている。用語「糊化(gelatinized)」澱粉とは、その偏光(マルタ(Maltese))クロスを失った、またはそれを弱めた、かつその粒状構造を失っていてもいなくてもよい膨潤した澱粉をいう。そのような澱粉を糊化するのに用いられる熱的プロセスは、限定されるものではないが、熱交換器、ジェット‐調理器、噴霧乾燥機、およびドラム乾燥機を含む機器中での、バッチ調理、オートクレーブ処理、および連続的調理プロセスを含む。
【0019】
用いることができるガム類は当該分野でよく知られており、キサンタン、カラギーナン、ジェラン、ローカストビーン、アルギネート、ペクチン、寒天、アラビアガム、およびグアーガムを含む。ガムに由来する材料は、加水分解および化学修飾のような当該分野で知られた方法を用いてさらに修飾された、それらのリストされたものを含む。
【0020】
澱粉およびフラワーは特に有用な多糖類である。1つの適当な実施態様において、澱粉ベースは天然澱粉であり、もう1つの実施態様においては、天然ワキシー澱粉であり、さらにもう1つの実施態様においては、天然高アミロース澱粉である。
【0021】
多糖は単一多糖、または2種以上の多糖類のブレンドである。多糖類は、熱抑制プロセスに干渉しない、または多糖を実質的に加水分解しない他の材料または成分の存在下で熱抑制することもできる。
【0022】
熱抑制プロセスは、多糖がさらに修飾されるに先立って、またはその後に行うことができる。1つの実施態様において、多糖は、熱抑制の前に修飾される。もう1つの実施態様において、多糖は、熱抑制の前または後に、さらに修飾されることはない。
【0023】
多糖は、まず、必要であれば、引き続いての熱抑制工程の間に、中性のpH(7程度のpH値の範囲、約6〜8のpH)または塩基性pH(アルカリ)にpHを維持するのに有効なpHレベルに調整することができる。熱抑制工程前の、中性またはそれ以上のpHで多糖を供することは、この工程の間に起こり得る多糖のいずれの加水分解の可能性も低減し、または排除すると信じられる。従って、特に、もし脱水工程が熱的であれば、pHの調整は脱水工程の前に行うことができる。もし脱水温度が高温(約100℃を超える温度)でなければ、pH調整は脱水工程の前に、または前および後の双方で行うことができる。
【0024】
pHは、1つの実施態様において、6.0〜12.0に調整され、もう1つの実施態様においては、7.0〜10.0に調整される。より高いpHを用いることができるが、そのようなpHは、熱抑制処理の間に多糖の褐変(browning)を増加させる傾向があり、糊化のような他の逆反応を引き起こし得る。従って、12以下のpHへのpH調整は典型的には最も効果的である。熱抑制プロセスの非粘着性テキスチャー(texture)および粘度の利点は、pHが増加するにつれて高められる傾向があるのに注意すべきである。多糖が熱抑制される際に正確なpHを選択する場合に、実行者は色形成および機能的特徴の間のバランスを選択するであろう。
【0025】
多糖が澱粉である本発明の1つの態様において、pHは7.5〜12.0に、もう1つの態様において、8.0〜10.5に、なおもう1つの態様において、9.0〜10.0に調整される。多糖がフラワーである本発明のもう1つの態様において、pHが6.0〜9.5に、なおもう1つの態様において、7.0〜9.5に調整される。
【0026】
pHの調整は当該分野で公知のいずれの方法によって達成してもよい。多糖が、有意に膨潤しない不溶性形態である1つの実施態様において、多糖を水中に(例えば、1部の多糖に対して1.5〜2部の水)、または水性媒体中にスラリー化し、いずれかの適当な塩基の添加によってpHを上昇させることによって、pHが調整される。多糖のpHが所望のpH範囲に入った後、スラリーを脱水し次いで乾燥し、あるいは直接的に、典型的には2%(wt/wt)から多糖の平衡水分含有量までの水分含有量まで乾燥することができる。平衡水分含有量が、とりわけ、多糖のタイプならびにその源(例えば、ジャガイモ、トウモロコシ)に依存することは当該分野で知られている。この乾燥手法は、多糖が無水または実質的に無水の状態まで脱水される脱水工程から区別されるものである。もう1つの実施態様において、塩基(アルカリ)の溶液を多糖に噴霧することによってpHは調整される。炭酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウムのような緩衝液を用いて、必要であれば、pHを維持することができる。
【0027】
食品適用については、食品グレード塩基を用いる。プロセスのpH調整工程で用いるための適当な食品グレード塩基は、限定されるものではないが、規制法下で食品用途で認可されたいずれかの他の塩基と共に、炭酸塩、水酸化物、およびオルトリン酸塩を含めたリン酸塩の塩を含む。これらの規制下、食品用途で認可されていない塩基もまた用いることができ、但し、それらは、最終産物が食品用途の製品製造プラクティスに適合するように多糖から洗浄できるものとする。本発明の1つの態様において、食品グレード塩基は炭酸ナトリウムである。
【0028】
もし多糖が食品用途で用いられようとしているのでなければ、塩基が食品グレード塩基である必要はなく、pHを上昇させることができるいずれの作動可能なまたは適当な無機または有機塩基を用いることもできる。本発明の1つの態様において、食品グレードまたは非‐食品グレード塩基を用いるかに拘わらず、熱抑制プロセスを通じて所望のpHを維持することができる塩基を選択する。
【0029】
多糖は無水または実質的に無水の状態にまで脱水される。本明細書中で用いるように、用語「実質的に無水」とは、2%未満、1つの実施態様においては1.5%未満、なおもう1つの実施態様においては1%(w/w)未満の水を意味することを意図する。脱水は、当該分野で公知のいずれの手段によっても達成することができ、熱的方法、およびアルコール(例えば、エタノール)のような親水性溶媒を用いる等の非‐熱的方法、凍結乾燥、真空乾燥、または乾燥剤の使用を含む。非‐熱的脱水は熱抑制された多糖類の味を改良する。
【0030】
水分を除去し、実質的に無水の多糖を得るための脱水工程は、水分含有量を所望のものまで低下させるのに十分な時間および温度にて、加熱装置を用いて熱的脱水手法によって行うことができる。1つの実施態様において、用いる温度は125℃以下である。もう1つの実施態様において、その温度は100〜140℃の範囲である。脱水温度が100℃よりも低くできるが、少なくとも100℃の温度が、熱的方法を用いる場合に水分を除去するのにより効果的であろう。
【0031】
脱水工程は、水分が除去されるようにするいずれかのプロセス、またはプロセスの組合せを用いて行うことができ、1つの実施態様においては1インチ未満の薄いフィルムで行い、もう1つの実施態様においては半インチ未満の薄いフィルムで行う。澱粉を脱水する典型的な手法は、1999年8月3日にChiu et alに対して発行された米国特許第5,932,017号、および2001年7月17日にJeffcoat et alに対して発行された米国特許第6,261,376号に開示されている。
【0032】
本発明の実施態様において、多糖の脱水は、上昇した温度で加熱しつつ、所望によりガスパージと組合せて、真空を用いて行われる。もう1つの実施態様において、上昇した温度は82〜166℃である。脱水のためのガスパージのオプションと共に真空を用いる技術は、少なくとも部分的真空下で制御された温度プロフィールを伴って材料を加熱することができるいずれかの機器にて用いることができ、さらに1つの実施態様では、パージガスを供給しつつ真空下で制御された温度プロフィールにて材料を加熱することができる機器において用いることができる。機器として用いる器または容器は真空について調節しなければならず、すなわち、真空を維持するために十分にシールされ、かつ構造的に頑丈であって、容器の崩壊を妨げなければならない。パージガスは、限定されるものではないが、二酸化炭素または窒素を含めたいずれの不活性ガスであってもよく、1つの実施態様においては、窒素である。1つの実施態様において、パージオプションは、もし真空が系に存在する水蒸気を除去するのに不十分であれば用いられる。もう1つの実施態様において、澱粉は流動床反応器中で無水または実質的に無水の状態にまで真空乾燥される。
【0033】
もう1つの実施態様において、多糖は上昇した温度および圧力下において圧縮反応器中で脱水される。1つの実施態様において、高められた温度は82℃〜166℃であり、他方、圧力は大気圧〜525kPagであり、他方、もう1つの実施態様において、圧力は145〜515kPagである。なおもう1つの実施態様において、容器雰囲気は混合された窒素/酸素ガスストリームの使用によって限界酸素濃度(Limiting Oxygen Concentration)未満に維持され、なおさらなる実施態様において、酸素は、周囲のガスの8〜12容量%の範囲内にある。上昇した圧力を用いる技術は、制御された温度プロフィールにて材料を加熱することができるいずれの機器でも用いることができる。機器として用いる器または容器は圧力について調節されなければならず、すなわち、酸素雰囲気中において限界酸素濃度未満で操作する場合には、構造的に頑丈で、容器圧力を含まなければならず、1つの実施態様において、もしより高い酸素濃度を用いる場合に容器雰囲気が限界酸素濃度を超えれば、上昇した温度/圧力においてダストの爆発によって生じる燃焼‐爆燃波の伝播を抑制し、または安全に排出できなければならない。
【0034】
本明細書中で用いるように、流動(床)反応器、流動(床)ドライヤー、または流動(床)ミキサーは、ガス、機械的手段または他の手段によるのを問わず、多糖が実質的に流動化されるいずれの装置も意味することを意図する。
【0035】
熱抑制工程は、実質的に無水の多糖を、100℃以上の温度にて、酸素が富化された濃度で、多糖を抑制するのに十分な時間の間加熱することによって行われる。
【0036】
多糖類が水の存在下で加熱に付される場合、加水分解または分解が起こり得る。加水分解または分解は粘度を低下させ、典型的には粘着性を増加させることによって、そのテキスチャーを変化させ、その結果、増大した発色がもたらされる。従って、脱水のための条件は、加水分解および分解を低下させつつ抑制が好都合となるように選択される必要がある。本発明の1つの態様において、多糖は熱処理温度に到達する前に実質的に無水であり、本発明のもう1つの態様において、多糖は熱処理の少なくとも90パーセントを通じて実質的に無水である。
【0037】
本発明の1つの態様において、熱抑制手法の重要な態様は酸素濃度、すなわち、モル酸素/mをあるレベルに維持することである。1つの実施態様において、有効酸素濃度を少なくとも6.5モル/mまで上昇させる結果、上昇した抑制の割合及び、発色の驚くほどに低下した割合が得られ、その結果、色、味および臭いを含めた改良された官能的品質がもたらされる。有効酸素濃度は、もう1つの実施態様において少なくとも9モル/mまで増加し、もう1つの実施態様において少なくとも12モル/mまで、なおもう1つの実施態様において少なくとも25モル/mまで増加する。増加した酸素濃度は、限定的因子である機器の有効性および安全性を考慮して、広い範囲にわたって用いることができる。増加した酸素濃度は当該分野で公知のいずれの方法によって達成することもできる。1つの実施態様において、増加した酸素濃度は豊富化された酸素ガス(空気の約21%(v/v)酸素含有量よりも大)を用いることによって達成される。この実施態様は、安全性が維持される限り、周辺圧力またはより高い圧力におけるものであってよく、1つの実施態様において、周辺圧力におけるものである。もう1つの実施態様において、増大した酸素濃度は、熱抑制の間に周囲の圧力を超えて装置内のガスの圧力を増加させることによって達成され、この実施態様は限定酸素濃度(それより低いとコーンスターチの燃焼が防止される)がガスの圧力と共に変化しない利点を有する。もう1つの実施態様において、限定酸素濃度を超える酸素含有量または豊富化された酸素含有量を超える含有量のいずれかの増大した酸素と圧力の組合せは、熱抑制時間を減少させ、産物の色を減少させる(ハンターのL‐値を増加させる)ことにおいて、最大の改良を供するであろう。本発明のなおもう1つの実施態様において、多糖は真空乾燥を用いて脱水され、ついで、増大した酸素濃度下で熱抑制される。さらになおもう1つの本発明の実施態様において、多糖は、増大した圧力および/または増大した有効酸素濃度を用いて脱水され、次いで、上昇した酸素濃度下で熱抑制される。
【0038】
パージガス酸素濃度と共に、ガス水分含有量も熱抑制に影響する。1つの実施態様において、多糖は、−15℃の露点未満まで、もう1つの実施態様では−20℃の露点未満まで乾燥されたパージガスで熱抑制される。多糖分解は、ガス水分含有量を低く維持することによって熱抑制の間実質的に妨げられる。本発明のなおもう1つの態様において、多糖は−15℃の露点未満まで乾燥され、そして少なくとも6.5モル/mの酸素濃度におけるパージガスで熱抑制される。
【0039】
熱抑制のもう1つの実施態様において、パージガスの流速は最少に維持される。この流動速度は、用いるガス、および維持される圧力ならびに用いる機器のタイプに依存する。この最少流速は、反応の圧力が増大すると共に、および/またはさらなる機械的攪拌と共に減少する。
【0040】
熱抑制は少なくとも100℃の温度の範囲を超えて行われるであろう。その温度は、1つの実施態様において100〜200℃の範囲であり、もう1つの実施態様において100〜180℃の範囲、なおもう1つの実施態様において150〜170℃の範囲である。
【0041】
熱抑制のための時間は、1つの実施態様において0〜12時間であり、もう1つの実施態様において0.25〜6時間であり、なおもう1つの実施態様において0.5〜2時間である。熱抑制のための時間は、温度が安定する(標的温度に到達する)時間から測定され、従って、もし熱抑制がそのような温度に到達されつつある間に起こるならば、熱抑制時間がゼロとなろう。例えば、もし比較的遅い温度上昇を有する装置においてそのプロセスを行うならば、一旦多糖が実質的に無水の状態に到達したならば、温度が十分に高ければ熱抑制が始まり、装置が最終温度に到達する前に完了するであろう。
【0042】
脱水および/または熱抑制工程は、通常の圧力にて、真空下で、または加圧下で行うことができ、当該分野で公知のいずれの手段を用いても達成することができる。1つの方法において、用いるガスを予め乾燥して、いくらかの水分を除去する。
【0043】
脱水および熱抑制工程は同一装置または異なる装置で達成することができる。1つの実施態様において、脱水および熱抑制工程は同一装置におけるものであり、もう1つの実施態様において、連続的である(バッチでない)。脱水および抑制工程はいずれの装置(単数または複数)でも行うことができる。脱水および熱抑制工程が、水分除去において非常に効果的な装置で行われる場合、2つの工程が実質的に同時に起こり得る。2つの工程が温度上昇の間に同時に起こってもよい。
【0044】
脱水工程は、典型的には、水分除去のための手段(例えば、装置のヘッド空間からガス、流動化ガスを掃引するためのベント、真空またはブロア)を備えた装置で行って、実質的に水分が蓄積しおよび/または多糖上に沈澱するのを防ぎ;しかしながら、熱抑制工程は、水分除去のためのそのような手段を備えた、または備えていない装置で行ってもよい。1つの実施態様において、熱抑制装置には、装置から水蒸気を除去するための手段を備える。脱水および熱抑制装置(単数または複数)はいずれの熱的に制御された器とすることもでき、限定されるものではないが、慣用的なまたはマイクロ波オーブンのような工業用オーブン、デキストリン化機、流動床反応器およびドライヤー、およびミキサーまたはブレンダーを含む。
【0045】
脱水および熱抑制工程のための時間および温度の組合せは用いる機器に依存し、処理すべき多糖のタイプ、pHおよび水分含有量、および実行者によって確認されおよび選択される他の因子によっても影響され得る。
【0046】
初期のpH、脱水方法、および条件、並びに熱抑制温度、時間および条件を含めたプロセス条件を変化させることによって、抑制のレベルを変動させて、最終の熱抑制された多糖における異なる粘度特性を供することができる。
【0047】
熱抑制工程に続いて、多糖は以下の1以上によってさらに処理してもよい。即ち、望ましい粒子サイズを選択するためにスクリーニングされ、スラリー化され、かつ洗浄され、濾過され、および/または乾燥され、漂白され、またはそうでなければ精製され、および/またはpH調整される。多糖は、さらに、他の修飾されていないまたは修飾された多糖とブレンドされ、または最終使用産物での使用前に植物成分とさらにブレンドされ得る。
【0048】
得られた多糖類は、十分に調理して(例えば、選択された応用においてその機能性または性能を最大化する)、または分散させた(例えば、澱粉については、もはや複屈折またはマルタクロスを呈しない)場合に、非‐粘着性のスムーズなテキスチャー、および/または熱、剪断、および極端なpHのような処理要因、特にそのような条件下で重要な時間に対する優れた許容性を有することができる点で、化学的に架橋された多糖類と機能的に同様である。また、予備糊化されていない澱粉では、ブラベンダー粘度が、熱抑制されていない澱粉と同様の澱粉のように、より早くまたは実質的に同時に起動する(形成され始める)。そのように熱抑制された多糖類は処理された食品産物に対して望ましいスムーズなテキスチャーを供することもでき、処理操作を通じて濃厚化についてのそれらの能力を維持することもできる。加えて、熱抑制された多糖類は、熱抑制されていない同じ多糖よりも小さな粘度ブレークダウンを有するであろう。
【0049】
粘度ブレークダウンとは、本発明において用いるように、1)ピークを持つ熱抑制された澱粉については、熱抑制された多糖のブラベンダー粘度が、熱抑制されていない同一多糖のブラベンダーの粘度よりも険しくない傾斜で減少し;または2)ピークがない熱抑制された多糖については、熱抑制された多糖のブラベンダー粘度プロフィールが保持された相の初期段階の間に最大粘度を得、次いで、ブラベンダー粘度曲線の保持されたサイクル全体を通じて実質的に平坦なままであり;3)(2)よりも抑制された、粘度ピークがない熱抑制された多糖では、熱抑制された多糖のブラベンダー粘度が保持された相の初期段階においてその粘度の有意な画分を得るが、継続して、保持された相の残り全体を通じて粘度を除々に増加させ;または4)(3)よりも抑制された粘度ピークがない熱抑制された多糖では、熱抑制された多糖のブラベンダー粘度が、加熱サイクルの間、そして保持された相の残りの段階の間の粘度のより迅速な増加前に保持された相の初期段階に徐々に増加することを、粒状澱粉について意味することを意図する。予備糊化澱粉のブラベンダー粘度分析は粒状澱粉のそれとは非常に異なる。それは予備糊化されているので、それはブラベンダー方法とは独立して分散され、水和され、そして加熱を必ずしも必要としない。当業者によって選択された方法に依存して、一般には、非‐熱抑制予備糊化対照と比較してその方法の後期の段階において熱抑制された予備糊化澱粉についてより少ないブレークダウンが観察される。
【0050】
上記で議論したブラベンダー粘度プロフィールは、広い範囲の適用に適した非‐粘着性の短いテキスチャーを有する産物の代わりとして供する。当業者であれば、抑制の程度が適用標的にマッチして、所望の特性を与えることを理解するであろう。
【0051】
得られた熱抑制された多糖類は改良された色、風味および臭いを有する。1つの実施態様において、実施例セクションに記載された方法を用い、熱抑制前の多糖と比較して、熱抑制された多糖のハンター色は7未満だけ減少し、もう1つの実施態様において、5ハンターL単位未満だけ減少する。1つの実施態様において、6.5モル/m未満の有効酸素濃度において同一様式で処理された多糖よりも、ハンターL色は少なくとも0.5単位、もう1つの実施態様において、少なくとも1単位、なおもう1つの実施態様において、少なくとも2単位、さらになおもう1つの実施態様において、少なくとも3単位高い。
【0052】
得られた熱抑制された多糖は、食品で現在用いられる化学的に修飾されたまたは架橋された多糖の代わりに用いてもよく、それでも、クリーンなラベル(非‐修飾ラベル)を維持する。本発明の多糖類の使用によって改良することができる食品産物には、赤ん坊の食品、液体の幼児処方、ソースおよびグラビー、スープ、サラダドレッシングおよびマヨネーズ、並びに他の香辛料、ヨーグルト、酸味クリームおよび他の乳製品、プリンおよびパイフィリング、果実調製物、病院食用の液体ダイエット製品および液体製品、パン、ケーキおよびクッキーのような焼き菓子、および直ぐに食べられるシリアルがある。多糖類はソース、プリン、幼児食、ホットシリアル、栄養製品等のためのドライミックスでも有用である。熱抑制された多糖類は、全ての加工温度を通じて粘度安定性が必要とされる食品用途で用いるのに適している。得られた多糖は望まれるいずれの量で用いることもでき、典型的には、同様な粘度およびテキスチャー特性を付与する化学的に修飾された多糖と実質的に同一濃度で用いられる。1つの実施態様において、多糖は食品の0.1〜35重量%、もう1つの実施態様において、2〜6重量%の量で用いられる。
【0053】
熱抑制された多糖類は、そのような多糖類が、限定されるものではないが、紙、医薬、包装、接着剤およびパーソナルケア製品の製造を含んで、現在用いられている他の用途で、現在用いられる化学的に修飾されたまたは架橋された多糖類の代わりに用いることもできる。
【実施例】
【0054】
以下の実施例は、本発明をさらに示し、説明するために掲げるが、いずれにせよ限定的なものと解釈すべきではない。容量で与えられるパーセント酸素または他のガスを除いて、全ての部およびパーセンテージは重量により与えられ、全ての温度は特記しない限り度摂氏(℃)で表す。
【0055】
以下の手順を実施例全体で用いた。
【0056】
ブラベンダー粘度の手順
テストすべき多糖を十分な量の蒸留水中にスラリー化して、クエン酸ナトリウム/クエン酸緩衝液で調整されたpH3の5%無水固形物スラリーを得た。充填重量は23.0グラムの無水多糖、387グラムの蒸留水、および50グラムの緩衝溶液である。緩衝溶液は、蒸留水で1000mlに希釈した1.5容量の210.2グラムの一水和されたクエン酸を、蒸留水で1000mlに希釈された1.0容量の98.0グラムのクエン酸三ナトリウム二水和物と混合することによって調製される。次いで、スラリーを、350cm/グラムのカートリッジを備えたブラベンダーVISCO/Amylo/GRAPH(C.W.Brabender Instruments,Inc.,Hackensak,NJにより製造)の試料カップに導入し、スラリーを92℃まで加熱(1.5℃/分の速度で)しつつ粘度を測定し、15分間保持した。粘度は92℃で記録し、15分後に再度92℃に保持した(92℃+15)。そのブラベンダー手順に対する時間は、充填物が60℃とされたときにゼロとした。
【0057】
VISCO/Amylo/GRAPHは、多糖スラリーがプログラムされた加熱サイクルに付された場合に生じる粘度をバランスさせるのに必要なトルクを記録する。
【0058】
この手順を用いて、ワキシートウモロコシ澱粉についての実質的加水分解は、500BU未満の92℃の粘度と共に、92℃粘度よりも低い92℃+15分の粘度によって示すことができる。当業者であれば、粘度単独によって熱抑制から加水分解を分離するのは困難であることを認識する。例えば、高レベルの熱抑制、または高レベルの加水分解の結果、低い粘度がもたらされ得る。加水分解がより長くかつより粘着性のテキスチャーを生じる、テキスチャーを通じての、あるいは分散または調理の後の溶解度の増加が加水分解を示す場合に粒状澱粉溶解度の測定を通じて、加水分解の程度を測定するには、より徹底的な分析が必要であることが知られている。
【0059】
水分の手順
5グラムの粉末をCenco B‐3デジタル水分はかりに秤量する。電球の電力を100%に設定して、試料を135〜140℃の間に15分間加熱する。重量パーセント水分は、重量損失によって決定され、水分秤量によって直接的に報告される。
【0060】
ハンター比色計の手順
ハンター色Quest II(Hunter Color Quest II)を、標準化または試料の分析の実施に先立って、1時間温める。標準化は、製造業者によって提供された手順を用いて行う。以下の設定を用いて試料の読みを採取する。即ち、スケール:ハンターLab、光源:D65、手順:なし、観測者:10*、MI光源:少数、差:DE、指標:YID1925(2/C)、ディスプレイモード:絶対、向き:主な列である。本明細書中で報告される全ての色分析は粉末試料で行う。粉末を試料セルに装填し、セルを軽く叩いて、セルウインドウおよび粉末の間のギャップを排除する。試料セルを比色計に装填し、試料を読む。
【0061】
実施例1 機械的に流動化されたミキサーにおける酸素濃度の効果
ProcessAllパイロットスケールの機械的に流動化されたミキサーにおいて、水酸化物および炭酸塩の組合せで9.5のpHにpH調整された同一ロットの無水(真空乾燥によって<1%水分)ワキシーコーンスターチを用いて、一連の実験を行った。45.5kgバッチサイズを、実験シリーズを通して用いた。
【0062】
無水澱粉生成物を2時間の時間にわたって166℃に加熱した。一旦澱粉がその温度に到達すれば、分析のために試料を30分毎に取り出した。各実験において、容器ヘッドスペース中の酸素濃度を異なるレベルで制御した。処理時間は、緩衝化pHのブラベンダークックにおける400ブラベンダー単位(BU)の92℃粘度を生じさせるのに必要なその温度での時間により決定した。
【0063】
図1は、澱粉試料についての抑制を測定するために用いたブラベンダー曲線の例であり、それは、澱粉試料が400BUの92℃粘度まで到達した場合の点および時間を示す。
【0064】
図2は、変化させた酸素濃度において熱抑制された異なる試料についての400BU92℃粘度に到達するのに必要な処理時間を示す。400BU92℃粘度に到達するのに必要な処理時間は、増大させる酸素濃度と共に減少することが示される。
【0065】
異なる酸素濃度で熱抑制されている澱粉試料を用いて、pH3の緩衝化ブラベンダークックにおいて400BUの92℃粘度を有した粉末化澱粉材料について、色値を測定した。ハンターL色値は、異なる粉末試料について決定され、図3に示される。そこに示したように、より高い酸素濃度で処理した試料は、400BUの92℃粘度に到達する減少した時間において、より白い色の値、すなわち、より高いハンターL色値を有する。より重要なことには、色が低下した割合で形成され、すなわち、増加した抑制(92℃粘度の降下)についての色形成の割合は、図4に示すように、酸素濃度が増大するにつれて低下する。また、抑制された産物の色形成が低下するにつれ、すなわち、同一レベルの抑制においてより高い最終ハンターL値が示されて、そしてその産物は対応して良好な官能プロフィールを有する。
【0066】
実施例2 流動床反応器における酸素濃度の効果
9.5のpHに調整されたワキシー澱粉(ハンターL色=94.87)を脱水し、次いで、全て限界酸素濃度未満の種々の酸素濃度レベルで、圧縮された流動床反応器において熱抑制する。最初の実験において、その澱粉は132℃において、かつ345kPagにおいて脱水される。水分は1%未満である場合、内容物は166℃に加熱される。温度が166℃に到達したとき(時刻t=0)、分析のために試料を採取する。時刻t=0は、澱粉についての抑制、または熱処理相の開始である。澱粉のサンプリング、および引き続いての分析は、実施例1に記載されたように澱粉が166℃に保持されている間に継続される。
【0067】
第二の実験において、pHに調整されたワキシー澱粉は132℃および517kPagにおいて、流動床反応器において反応器中で1%未満の水分まで脱水され、他方、第三の実験においては、pH調整されたワキシー澱粉は132℃および周辺圧力において、流動床反応器中で1%未満の水分まで脱水される。実験1および2において、脱水の間の圧力は、澱粉が166℃まで加熱され、抑制の持続の保持される間は維持される。実験2および3についての全ての他のパラメーターは、実験1について前記したのと同一である。
【0068】
酸素濃度(モル/m)、T=0における色、400BUの92℃粘度に到達する処理時間、および関連ハンターL色を表1に示す。これらの結果は、加圧系における脱水澱粉は色の発色を遅らせることを示す。実験1におけるように、増大した酸素含有量の結果、この処理時間/粘度において400BUの92℃粘度およびより低い色に到達する低下した処理時間がもたらされる。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例3 澱粉重量および空気パージ速度の効果
実施例1で用いたものと同様の無水pH調整ワキシーコーンスターチの3つのバッチを、ProcessAllパイロットスケールの機械的に流動化されたミキサーにおいて171℃で熱抑制した。澱粉の重量および空気パージ速度(空気流)を変化させ、緩衝化酸性ブラベンダー手順を用いて熱抑制割合を追跡した。酸素パーセンテージは、容器を保護する補充窒素パージと共に、燃焼に必要な限界酸素含有量よりも低く維持した。容器圧力は周辺圧力であった。結果を以下の表2に示す。
【0071】
【表2】

各組にわたる92℃および92℃+15分における粘度測定で得られた値は+/−20BUの実験誤差内にあると考えられる。
scmh=時間当たりの標準での立方メートル(標準:0℃,101.3kPa)
【0072】
実験AおよびCは澱粉重量比率に対して同一気流を有する。しかしながら、CはAよりもより低いヘッド空間転換速度を有する。2つの実験は、同一調理時間からの試料について92℃ブラベンダー粘度によって測定して、同一反応速度を示す。かくして、熱抑制は澱粉重量に対する気流(比率)に依存するが、容器ヘッド空間転換速度には依存しない。
【0073】
さらに、実験Bは、より低い澱粉重量に対する気流の比率においてより遅い熱抑制速度を示す。これは、60分に対して90分に起こる415BU92℃粘度で明らかである。
【0074】
同一無水pH調整ワキシーコーンスターチのさらなるバッチを、パイロットスケールの機械的に流動化された反応器において168℃で熱抑制した。この実験において、容器圧力は193kPagまで上昇させた。実験A、B、およびCで用いた窒素に対する酸素の同一比率をこの実験で維持して、容器を保護した。結果を以下の表3に示す。
【0075】
【表3】

【0076】
実験Dは、92℃ブラベンダー粘度によって測定した実験AおよびCと同一の反応速度を有する。しかしながら、実験Dにおいては、ガスパージはない。かくして、容器圧力が増大されるにつれ、澱粉に対する気流の比率の重要性が減少し、上昇した温度におけるガスパージの熱抑制要件を除去する。
【0077】
実施例4 露点温度の効果
9.6のpHを持つワキシーコーンスターチを流動床反応器中で脱水する。脱水された物質を2つのアリコットに分割する。最初の試料は、−15℃の流動化ガス露点にて、160℃の流動床反応器中で120分間熱抑制される。第二の試料は、−18℃の流動化ガス露点にて、160℃の同一流動床反応器中で120分間熱抑制される。双方の場合において、参照圧力は101.325kPaである。
【0078】
図5は、流動化ガスの水分含有量の影響を示す。双方の粉末は上記水分の手順によって測定して0.0%水分を有するが、より高い露点流動化ガス中で処理した物質は加水分解を呈した。潜在的な加水分解は、92℃粘度と比較してより低い92℃+15分粘度によって示され、調理物(調理した澱粉)のテキスチャーを調べることによって確認した。
【0079】
実施例5 圧縮空気の効果
炭酸ナトリウムをタピオカ澱粉スラリーに加えることによって、タピオカ澱粉を8.5にpH調整する。澱粉をブヒナー漏斗中で脱水し、ケーキをばらばらに破壊して、一晩トレイ上で風乾する。次いで、澱粉をコーヒーグラインダー中で粉砕し、2つのアリコットに分ける。
【0080】
第一の澱粉部分を、−10℃露点未満まで乾燥した空気で流動化された流動床反応器に入れる。反応器を120℃とし、澱粉が1%未満の水分に脱水されるまでその温度に保持する。一旦、澱粉が1%水分未満になれば、澱粉を166℃まで加熱する。材料をブラベンダーおよび色分析のための実験を通じてサンプリングする。
【0081】
第二の澱粉部分は同一流動床反応器に入れ、第一の部分と同一方法で脱水する。次いで、澱粉を166℃とする。澱粉を166℃として、反応器を586kPagまで加圧し、流動化が乾燥した空気で継続されつつ、酸素濃度を39.5モル/mとする。ブラベンダーおよび色分析のために、試料を加熱処理を通じて採取する。
【0082】
第二の実験からの材料は、第一の実験におけるようにプロセスにおいて同一時間に採取された試料よりもより低い92℃ブラベンダー粘度を有し、加圧反応についての増大した熱抑制速度を示す。加えて、第二の実験からの試料は、第一の実験で採取された匹敵する92℃ブラベンダー粘度試料よりも高いハンターL色値を有する。
【0083】
実施例6 ガス圧力の効果
Bepex Continuator(登録商標)と同様な市販の真空ドライヤーは、澱粉が分解または加水分解されないように、真空、ガスパージおよび温度プロフィールの組み合わせを用いて、コメ澱粉(pHを9.0に調整)を1%未満の水分まで脱水する。脱水された澱粉を2つのロットに分ける。
【0084】
第一のロットをリトルフォード(Littleford)反応器に供給する。空気および窒素の組み合わせをリトルフォードにファージし、ヘッド空間中の酸素の分率を非‐燃焼性レベルまで降下させる。容器の圧力および温度は、酸素濃度が6.7モル/mとなるように200kPagおよび150℃まで増加させる。処理温度および圧力での容器にて、ガスパージを停止させる。引き続いての分析のために加熱‐処理を通じて試料を採取する。
【0085】
第二のロットを同一のリトルフォード反応器に供給する。空気および窒素パージは容器を第一の実験におけるのと同一の酸素分率まで不活性化する。容器温度を150℃まで上昇させ、圧力を0kPagに保持する。処理温度にて、ガスパージを停止させる。引き続いての分析のために加熱‐処理を通じて試料を引き出す。
【0086】
第一の実験からの物質は、ブラベンダー粘度によって測定して熱抑制を示す。第二の実験からの物質は、分解したおよび加水分解された特徴を呈する。例えば、第二の実験からの試料は連続的に上昇する曲線粘度プロフィールを有さず、色はより暗く、望ましい粘着性および長いテキスチャーのような最適下テキスチャー品質によって特徴付けられた、加えて、第二の試料はより大きな溶解度も呈し、加水分解を示す。第二の場合において、パージ速度は、非‐圧縮加熱‐処理で必要な最小値を超えなかった。
【0087】
実施例7 酸素濃度の効果
pH9.5および10%水分における低蛋白質ワキシーコーンフラワーを、分解または加水分解なくして,Solidaire(登録商標)の薄膜ドライヤーを用いて1%未満の水分まで脱水する。
【0088】
500gの試料を1‐リットルのパール(Parr)実験室的反応器に入れ、シールする。容器を0.015scmhの空気でパージし、機械的にカップリングされたパドルで攪拌し、160℃まで加熱する。加熱‐処理を通じて、容器を攪拌し、パージし、および0kPagの圧力および5.88モル/mの酸素濃度に維持する。160℃における1時間後、容器を冷却し、色およびブラベンダー粘度プロフィールについて低蛋白質ワキシーコーンフラワーを分析する。
【0089】
Solidaire(登録商標)からの第二の500gの無水試料を1‐リットルのパール実験室的反応器に入れ、シールする。容器に酸素および窒素の50:50混合物の0.015scmh(14モル/m酸素濃度)をパージする。容器を160℃まで加熱し、その温度に1時間保持する。加熱−処理を通じて、容器を攪拌し、ガス混合物をパージし、0kPagの圧力を維持する。容器を冷却した後、低蛋白質ワキシーコーンフラワーを色およびブラベンダー粘度プロフィールについて分析する。
【0090】
第二の実験での92℃ブラベンダー粘度は第一の実験のそれよりも低い。加えて、第二の実験における抑制度に対する色は第一のものよりも明るい。
【0091】
以下の特許請求の範囲で用いるように、「含む」または「含んでいる」は、以下のエレメントを含むことを意味することを意図するが、他のものを排除せず無制限である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)多糖を実質的に無水または無水の状態にまで脱水する工程、および
b)少なくとも6.5モル/mの有効酸素濃度のガス中で、100℃以上の温度で、該多糖を抑制するのに十分な時間、該実質的に無水または無水の多糖を熱抑制する工程;
を含む、方法。
【請求項2】
前記有効酸素濃度が、前記熱抑制工程の間、前記ガスの圧力を周囲の圧力を超えて増加させることによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記有効酸素濃度が、前記ガスのパーセント酸素含有量を増加させることによって達成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記有効酸素濃度が少なくとも9モル/mである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有効酸素濃度が少なくとも12モル/mである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有効酸素濃度が少なくとも25モル/mである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ガスが−15℃未満の露点温度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記脱水工程が上昇した温度および圧力下で行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記脱水工程が真空下で行われる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
少なくともいくらかの熱抑制が前記脱水工程の間に起こる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記脱水工程および前記熱抑制工程が異なる装置において行われる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記脱水工程および熱抑制工程が同一装置で行われる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの装置が流動床反応器である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記装置が流動床反応器である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記多糖が澱粉である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記澱粉がワキシー澱粉である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記多糖がガムである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記多糖がフラワーである、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項によって製造された組成物。
【請求項20】
前記組成物が6.5モル/m未満の有効酸素濃度にて同一の方法を用いて製造された組成物よりも少なくとも0.5単位高いハンターL色を有する、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が熱抑制前の多糖よりも7単位以下低いハンターL色を有する、請求項19に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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