説明

熱現像記録装置及び熱現像記録方法

【課題】シート状の熱現像感光材料のパッケージを開封後、そのパッケージ内のシート状の熱現像感光材料が、数週間のような比較的長期間にわたり使用される場合でも、仕上がり濃度を所定の濃度範囲に収めることのできる熱現像記録装置及び熱現像記録方法を提供する。
【解決手段】この熱現像記録方法は、載置手段上の複数のシート状の熱現像感光材料を1枚ずつ分離し搬送し、搬送された熱現像感光材料上に潜像を形成し、潜像が形成された熱現像感光材料を熱現像するものあって、載置手段にシート状の熱現像感光材料が滞留されている滞留時間を算出し、その算出された滞留時間に基づいて熱現像感光材料の仕上がり濃度を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、載置手段上の複数のシート状の熱現像感光材料を1枚ずつ分離し搬送し、潜像が形成された熱現像感光材料を熱現像する熱現像記録装置及び熱現像記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、熱現像感光材料が保存状態や温度・湿度の影響を受け、熱現像特性が変化し易いことが開示されており、特許文献1では、熱現像感光材料の標準特性に対する特性変動分を、第2の熱現像器での加熱量で調整(補正)し、仕上がり濃度を一定に保つ工夫がなされている。
【0003】
下記特許文献2には、画像形成装置の設置環境や使用時の装置内部の温度・湿度の変動に左右されずに、安定した仕上がり濃度が得られるようにした熱現像感光材料の露光方法が提案されており、装置内での熱現像感光材料の温度プロフィールに応じて露光量を補正する手段が記載されている。
【0004】
下記特許文献3には、キャリブレーション実施以降のプリント時に、キャリブレーションにより生成された画像信号対露光量の関係を定めるLUT(ルックアップテーブル)に基づいて算出された露光量に、熱現像部の特性変化分を加算し、補正する方式が開示されている。パッチFB補正とFF補正との合算量で露光補正される方式である。
【特許文献1】特開昭52−90934号公報
【特許文献2】特開2000−356829号公報
【特許文献3】特開2004−205554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱現像方式を用いる場合、トレーへのフィルムパック装填後、定期的(連続的に)にフィルムが使用されれば、パッチFB補正で所定の濃度範囲、例えば、0.1以内に収めることが可能である。また、電源投入時の立上げ時の、熱現像部の立上げ直後の加熱部及び冷却部の温度変化に伴う特性変化のような影響は、24時間連続通電等の運用方法で回避も可能である。
【0006】
しかしながら、開業医やクリニック等の小規模施設ではフィルム消費量が比較的少ないく、連続プリントで運用されるケースは少なく、フィルムパッケージ開封後、そのパッケージが、数週間にわたり使用されるような形態においては、仕上がりフィルム濃度を所定の濃度範囲に収めることが困難であった。
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、シート状の熱現像感光材料のパッケージを開封後、そのパッケージ内のシート状の熱現像感光材料が、数週間のような比較的長期間にわたり使用される場合でも、仕上がり濃度を所定の濃度範囲に収めることのできる熱現像記録装置及び熱現像記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による熱現像記録装置は、複数のシート状の熱現像感光材料を集積保持可能な載置手段と、前記載置手段上の熱現像感光材料を分離し搬送するピックアップ手段と、前記搬送される熱現像感光材料上に潜像を形成する露光手段と、前記潜像が形成された熱現像感光材料を熱現像する熱現像手段と、前記載置手段に前記熱現像感光材料が滞留されている滞留時間を算出する算出手段と、前記算出された滞留時間に基づいて前記熱現像感光材料の仕上がり濃度を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この熱現像記録装置によれば、載置手段に滞留されて算出された滞留時間に基づいて熱現像感光材料の仕上がり濃度を補正するので、シート状の熱現像感光材料のパッケージを開封後、そのパッケージ内のシート状の熱現像感光材料が数週間のような比較的長期間にわたり使用される場合でも、仕上がり濃度を所定の濃度範囲に収めることができる。
【0010】
上記熱現像記録装置において入力される画像信号に対し現像濃度が前記熱現像感光材料上で一定となるように前記画像信号と前記画像信号に対応する露光量との関係を校正するキャリブレーション手段を更に備え、前記キャリブレーション手段によるキャリブレーション実施後に前記滞留時間のカウントを開始することが好ましい。キャリブレーションの実施で、その時点での変動分はキャンセルされることになるので、滞留時間のカウントはキャリブレーション実施後に開始する。従って、前記キャリブレーション実施毎に前記滞留時間をリセットすることが好ましい。
【0011】
また、先に装填した複数のシート状の熱現像感光材料が空になった等の理由で前記載置手段に新たな複数のシート状の熱現像感光材料を装填したときに、前記滞留時間をリセットすることが好ましい。
【0012】
また、前記載置手段近傍の温度を検出する温度検出手段を更に備え、前記算出された時間及び前記検出された温度に基づいて前記仕上がり濃度を補正することが好ましい。装置電源がOFFのときの温度と装置電源再投入のときの温度との差異と、この間の滞留時間とに基づいて熱現像感光材料の変動度合いをより精度よく推定することができる。
【0013】
また、前記補正手段は前記仕上がり濃度が一定となるように前記露光手段による露光量を補正するように構成できる。なお、上記補正手段は、シート状の熱現像感光材料の熱現像後の徐冷時の温度や時間等を制御することで行うように構成してもよい。
【0014】
また、前記載置手段が装置本体内の最下部に配置され、上部に前記露光手段と前記熱現像手段が配置され、前記露光手段と前記熱現像手段との距離は前記シート状の熱現像感光材料の長さよりも短いことが好ましい。
【0015】
また、前記ピックアップ手段が爪分離方式であることが好ましく、これにより、従来のように吸盤方式ではなく、分離中のフィルムあばれ(シート状の熱現像感光材料同士の間に周囲の雰囲気空気が流入する)が少なくなるので、シート状の熱現像感光材料同士が集積状態を維持し、シート状の熱現像感光材料間への空気流入により、熱現像感光材料の乳剤中の溶媒成分が揮発する経路(流路)を形成し難く、周囲温度の影響を受け難く、結果として感度変化が一様となり、シート状の熱現像感光材料の積層状態での上面(最上位のシート状の熱現像感光材料)から次のシート状の熱現像感光材料への補正量変化を正しく補正可能となる。
【0016】
本発明による熱現像記録方法は、載置手段上の複数のシート状の熱現像感光材料を1枚ずつ分離し搬送し、前記搬送された熱現像感光材料上に潜像を形成し、前記潜像が形成された熱現像感光材料を熱現像する熱現像記録方法であって、前記載置手段にシート状の熱現像感光材料が滞留されている滞留時間を算出し、前記算出された滞留時間に基づいて前記熱現像感光材料の仕上がり濃度を補正することを特徴とする。
【0017】
この熱現像記録方法によれば、載置手段に滞留されて算出された滞留時間に基づいて熱現像感光材料の仕上がり濃度を補正するので、シート状の熱現像感光材料のパッケージを開封後、そのパッケージ内のシート状の熱現像感光材料が数週間のような比較的長期間にわたり使用される場合でも、仕上がり濃度を所定の濃度範囲に収めることができる。
【0018】
上記熱現像記録方法において所定の濃度信号に対し現像濃度が前記熱現像感光材料上で一定となるようにキャリブレーションを実行し、前記キャリブレーション実施後に前記滞留時間のカウントを開始することが好ましい。キャリブレーションの実施で、その時点での変動分はキャンセルされることになるので、滞留時間のカウントはキャリブレーション実施後に開始する。従って、前記キャリブレーション実施毎に前記滞留時間をリセットすることが好ましい。
【0019】
また、前記載置手段に新たな複数のシート状の熱現像感光材料を装填したときに、前記滞留時間をリセットすることが好ましい。
【0020】
また、前記載置手段近傍の温度を検出し、前記算出された時間及び前記検出された温度に基づいて前記仕上がり濃度を補正することが好ましい。装置電源がOFFのときの温度と装置電源再投入のときの温度との差異と、この間の滞留時間とに基づいて熱現像感光材料の劣化度合いをより精度よく推定することができる。
【0021】
また、前記仕上がり濃度が一定となるように前記潜像の形成時の露光量を補正するようにできる。なお、シート状の熱現像感光材料の熱現像後の徐冷時の温度や時間等を制御することで仕上がり濃度を補正するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の熱現像記録装置及び熱現像記録方法によれば、シート状の熱現像感光材料のパッケージを開封後、そのパッケージ内のシート状の熱現像感光材料が、数週間のような比較的長期間にわたり使用される場合でも、仕上がり濃度を所定の濃度範囲に収めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態による熱現像記録装置の要部を概略的に示す正面図である。
【0024】
図1に示すように、熱現像記録装置40は、PET等からなるシート状の支持基体の片面上に熱現像感光材料が塗布されたEC面と、EC面と反対面の支持基体側のBC面とを有するフィルムFを副走査搬送しながら光走査露光部55からのレーザ光LでEC面に潜像を形成し、次に、フィルムFをBC面側から加熱して現像し潜像を可視化し、曲率のある搬送経路を通して装置上方に搬送し排出するものであり、比較的小型の装置筐体40aを備え、机等に設置して使用可能なデスクトップ型に構成されている。
【0025】
図1の熱現像記録装置40は、装置筐体40aの底部近傍に設けられ未使用の多数枚のフィルムFを収納するフィルム装填部45と、フィルム装填部45の最上のフィルムFをピックアップして搬送する送出しローラ46と、送出しローラ46からのフィルムFを下流側へ搬送する搬送ローラ対47と、を備える。また、フィルム装填部45の最上のフィルムFを送出しローラ46で搬送する際にその下のフィルムから分離爪構造(図8参照)により分離させるようになっている。これにより、集積状態からのズレ発生がより少なくなり、感度変動に対する影響がより少なくなる。
【0026】
また、熱現像記録装置40は、搬送ローラ対47からのフィルムFをガイドし搬送方向をほぼ反転させて搬送するように曲面状に構成された曲面ガイド48と、曲面ガイド48からのフィルムFを副走査搬送するための搬送ローラ対49a,49bと、搬送ローラ対49aと49bとの間でフィルムFに画像データに基づいてレーザ光Lを光走査して露光することによりEC面に潜像を形成する光走査露光部55と、搬送ローラ対49aの上流側に配置されて曲面ガイド48から搬送されてきたフィルムFを検出するための光反射型または光透過型の検出センサ60と、を備える。
【0027】
熱現像記録装置40は、更に、潜像の形成されたフィルムFをBC面側から加熱し所定の熱現像温度まで昇温させる昇温部50と、昇温されたフィルムFを加熱して所定の熱現像温度に保温する保温部53と、加熱されたフィルムFをBC面側から冷却する冷却部54と、冷却部54の出口側に配置されてフィルムFの濃度を測定する濃度計56と、濃度計56からのフィルムFを排出する搬送ローラ対57と、搬送ローラ対57で排出されたフィルムFが載置されるように装置筐体40aの上面に傾斜して設けられたフィルム排出部58と、を備える。
【0028】
図1のように、熱現像記録装置40では、装置筐体40aの底部から上方に向けて、フィルム装填部45、基板部59、搬送ローラ対49a,49b・昇温部50・保温部53(上流側)の順に配置されており、フィルム装填部45が最下方にあり、また昇温部50・保温部53との間に基板部59があるので、熱影響を受け難くなっている。
【0029】
また、副走査搬送の搬送ローラ対49a,49bから昇温部50までの搬送路はフィルムFの長さよりも短く構成されているので、光走査露光部55によりフィルムFに対し露光が行われながらフィルムFの先端側では昇温部50、保温部53で熱現像加熱が行われる。
【0030】
昇温部50と保温部53とで加熱部を構成し、フィルムFを熱現像温度まで加熱し熱現像温度に保持する。昇温部50は、フィルムFを上流側で加熱する第1の加熱ゾーン51と、下流側で加熱する第2の加熱ゾーン52と、を有する。
【0031】
第1の加熱ゾーン51は、アルミニウム等の金属材料からなり固定された平面状の加熱ガイド51bと、加熱ガイド51bの裏面に密着されたシリコンラバーヒータ等からなる平面状の加熱ヒータ51cと、加熱ガイド51bの固定ガイド面51dにフィルムを押圧可能にフィルム厚さよりも狭い隙間を維持するように配置されかつ表面が金属等に比べ熱絶縁性のあるシリコンゴム等からなる複数の対向ローラ51aと、を有する。
【0032】
第2の加熱ゾーン52は、アルミニウム等の金属材料からなり固定された平面状の加熱ガイド52bと、加熱ガイド52bの裏面に密着されたシリコンラバーヒータ等からなる平面状の加熱ヒータ52cと、加熱ガイド52bの固定ガイド面52dにフィルムを押圧可能にフィルム厚さよりも狭い隙間を維持するように配置されかつ表面が金属等に比べ熱絶縁性のあるシリコンゴム等からなる複数の対向ローラ52aと、を有する。
【0033】
保温部53は、アルミニウム等の金属材料からなり固定された加熱ガイド53bと、加熱ガイド53bの裏面に密着されたシリコンラバーヒータ等からなる平面状の加熱ヒータ53cと、加熱ガイド53bの表面に構成された固定ガイド面53dに対し所定の隙間(スリット)dを有するように対向して配置された断熱材等からなるガイド部53aと、を有する。保温部53は、昇温部50側が第2の加熱ゾーン52と連続して平面的に構成され、途中から装置上方に向けて所定の曲率で曲面状に構成されている。
【0034】
昇温部50の第1の加熱ゾーン51では、昇温部50の上流側から搬送ローラ対49a,49bにより搬送されてきたフィルムFが回転駆動された各対向ローラ51aにより固定ガイド面51dに押圧されることでBC面が固定ガイド面51dに密に接触して加熱されながら搬送されるようになっている。
【0035】
第2の加熱ゾーン52でも同様に、第1の加熱ゾーン51から搬送されてきたフィルムFが回転駆動された各対向ローラ52aにより固定ガイド面52dに押圧されることでBC面が固定ガイド面52dに密に接触して加熱されながら搬送されるようになっている。
【0036】
なお、昇温部50の第2の加熱ゾーン52と保温部53との間に上方にV字状に開口した凹部を設けるように構成してもよく、昇温部50からの異物が凹部内に落下することにより、昇温部50からの異物が保温部53に持ち込まれることを防止できる。
【0037】
保温部53では、第2の加熱ゾーン52から搬送されてきたフィルムFが加熱ガイド53bの固定ガイド面53dとガイド部53aとの間の隙間ddにおいて加熱ガイド53bからの熱で加熱(保温)されながら、第2の加熱ゾーン52側の対向ローラ52aの搬送力により隙間ddを通過する。このとき、フィルムFは、隙間ddにおいて水平方向から垂直方向に向きを次第に変えながら搬送され、冷却部54に向かう。
【0038】
冷却部54では、その上流側部分(徐冷部)で、保温部53からほぼ垂直方向に搬送されてきたフィルムFを、一部に温度制御されるヒータ54d(図10)を有し、金属材料等からなる冷却プレート54bの冷却ガイド面14cに対向ローラ54aにより接触させて徐々に冷却しながら搬送し、PETベースのガラス転移点温度以下まで冷却後は、垂直方向から次第に斜め方向にフィルムFの向きをフィルム排出部58方向に変えながらフィルムを急激に冷却しながら搬送するようになっている。なお、冷却プレート54bの下流側部分(急冷部)をフィン付きのヒートシンク構造とすることで、冷却能力向上を図りかつ冷却効果を一定に維持することができる。
【0039】
冷却部54から出た冷却されたフィルムFは濃度計56で濃度測定され、搬送ローラ対57により搬送されてフィルム排出部58へと排出される。フィルム排出部58は複数枚のフィルムFを一時的に載置しておくことができる。
【0040】
上述のように、図1の熱現像記録装置40では、フィルムFは、昇温部50及び保温部53においてBC面が加熱状態の固定ガイド面51d、52d、53dに向いており、熱現像感光材料の塗布されたEC面が開放された状態で搬送される。また、冷却部54では、フィルムFは、BC面が冷却ガイド面54cに接触し冷却され、熱現像材料が塗布されたEC面が開放された状態で搬送される。
【0041】
また、フィルムFは、昇温部50及び保温部53の通過時間が10秒以下となるよう対向ローラ51a、52aにより搬送される。従って、昇温〜保温の加熱時間も10秒以下ということになる。
【0042】
図1の熱現像記録装置40では、均一熱伝達が必要な昇温部50において、加熱ガイド51b、52bと、フィルムFを加熱ガイド51b、52bに押圧する複数の対向ローラ51a,52aとによりフィルムFを固定ガイド面51d、52dに密着させることで接触伝熱を確保しながらフィルムFを搬送するので、フィルム全面が均一に加熱され、均一に温度上昇するので、仕上がりフィルムは濃度むらの発生を抑えた高品質の画像となる。
【0043】
また、フィルムFの加熱時間が10秒以下で済むので、迅速な熱現像プロセスを実現でき、また、昇温部50から水平方向に延びた保温部53が途中から曲面状になって垂直方向に向くよう構成され、フィルムFは冷却部54でフィルムFの向きをほぼ反転させてフィルム排出部58へと排出されるので、装置レイアウトに応じて冷却部54を所定の曲率とすることで、設置面積の小型化・装置全体の小型化に対応可能となる。
【0044】
従来の大型機ではフィルムを現像温度に昇温以降の保温機能で充分な部分にも、昇温部と同一な加熱搬送機構としていたため、結果的に不必要な部材を使用してしまっており、部品点数の増加やコストアップを招いており、また、従来の小型機では昇温時の熱伝達を保障し難いため濃度むら発生の問題があり高画質の保障が困難であったのに対し、図1の熱現像記録装置によれば、熱現像プロセスを昇温部50と保温部53とで別々に実行することで、かかる問題をいずれも解消することができる。
【0045】
また、フィルムFを昇温部50及び保温部53で熱現像感光材料の塗布されたEC面が開放された状態でBC面側から加熱することで、10秒以下の迅速処理で熱現像プロセスを実行する際に、EC面側の開放により、加熱され揮発(蒸発)しようとするフィルムFに含まれる溶媒(水分、有機溶剤等)が最短距離で離散するので、加熱時間(揮発時間)が短くなっても時間短縮の影響を受け難くなるとともに、部分的にフィルムFと固定ガイド面51d、52dとの接触性が悪い部分があっても、BC面のPETベースによる熱拡散効果により、接触性の良い部分との温度差が緩和され、結果として濃度差が起こりにくいので、濃度を安定化でき、画質が安定する。なお、一般的に加熱効率を考慮すると、EC面側加熱の方が良いと考えられていたが、フィルムFの支持基体のPETの熱伝導率0.17W/m℃、PETベースの厚さ170μm前後であることを考慮すると、時間遅れはわずかであり、ヒータ容量アップ等で容易に相殺可能であり、上記の接触むらを緩和する効果の方が期待できる方が好ましい。
【0046】
更に、保温部53を出て、冷却部54に至る間にもフィルムF中の溶媒(水分、有機溶剤等)は高温であるため揮発(蒸発)しようとしているが、冷却部54でもフィルムFのEC面が開放状態であるので、溶媒(水分、有機溶剤等)がトラップされず、より長い時間、揮発させることになるのでより、画質が安定する。このように、迅速処理時には冷却時間も無視できず、加熱時間10秒以下の迅速処理には特に有効となる。
【0047】
次に、図1のフィルム装填部45について図2を参照して説明する。図2は図1のフィルム装填部を装置側面側から見た図である。
【0048】
まず、図1,図2のフィルム装填部45に装填可能なフィルム包装体について図3,図4,図5,図6を参照して説明する。図3は図1,図2のフィルム装填部に装填可能なフィルム包装体(図6(c)の両端部a,bが延びた状態で示す)を一部破断して示す斜視図である。図4は図3のフィルム包装体の遮光袋の断面構成を模式的に示す断面図である。図5は図3のフィルム包装体内でフィルムの束を位置決めるためのトレー状の位置決め部材(トレー)を概略的に示す斜視図である。図6は図3のフィルム包装体の生産工程(a)〜(c)を説明するための概略的な側面図である。
【0049】
フィルム装填部45に装填可能なフィルム包装体Pは、フィルム装填部45に装填可能なフィルム包装体Pは、図3に示すように、シートフィルムを集積する際の位置決め手段となるトレー状の位置決め部材であるトレーD上に、所定のサイズ、例えば半切サイズのシートフィルムを所定枚数(例えば125枚)集積し、トレーD及びトレーD上に集積された束のシートフィルムFを遮光袋B内へ挿入し、遮光袋Bの図5のようなトレー上のトレーDのサイドフラップD1〜D4(立ち上がり部)の少なくとも1つと対峙する部分を直線状に熱溶着等でシールしシール部cとすることで、遮光袋B内部のフィルムFを光密に維持する。
【0050】
トレーDの形状及びフィルム包装体Pの構造は、例えば、特開2002−323736号公報に開示されたものを用いることができる。即ち、トレーDは、図5のように、矩形状の底板D0の4辺で折り曲げられてサイドフラップD1〜D4が形成され、四隅のコーナ部C1〜C4が切り欠かれている。また、トレーDは紙製であることが好ましい。
【0051】
フィルム包装体Pは、図6(a)のようにフィルムFを集積したトレーDを、図6(b)のように一端部aが予めシールされて閉じられかつ他端部bが開いた遮光袋B内に他端部bから挿入した後、遮光袋Bの内部を脱気しながら、図6(c)のように、他端部bをシール部cで直線状にシールして密閉し、両端部a,bをトレーDの上端部に沿って内側に折り曲げて包装用テープeで貼り合わせることで、生産することができる。
【0052】
遮光袋Bは、図4のように、カーボンブラック等の遮光物質92を含むLDPE(低密度ポリエチレン)からなる複数層91a、91b、91cによる多層構造のラミネートフィルムにアルミニウム層93を蒸着等により形成したものであり、アルミニウム層93側が遮光袋Bの外面94となり、LDPE層91c側が内面95となる。
【0053】
図1,図2のフィルム装填部45は、装置筐体40aに対しフィルム装填位置と搬送位置との間で移動可能に構成され、図2の搬送位置から水平方向Hに引き出されて図3のフィルム包装体Pを装填できるようにトレー状に構成されている。ここで、フィルム装填部45の搬送位置とは、フィルム装填部45が図1,図2のように方向Hに押し込まれて、フィルムに光走査露光部55で潜像を形成するようにフィルムを下流側に搬送する位置である。
【0054】
フィルム装填部45が水平方向Hに装置筐体40aから引き出されたフィルム装填位置で、フィルム包装体Pは、遮光袋Bの一端部aが従動回転自在の一対のガイドローラ70の間を通してフィルム装填部45の外部に引き出され、他端部bがフィルム装填部45内に位置するようにして装填される。
【0055】
図2のように、フィルム包装体Pの装填後、遮光用ローラ75で押し付けた他端部bのシール部cをはさみやカッタ等でカット線dのようにカットし、カットされたシール部cを含む遮光袋Bの残部(図2の破線で示す)を除去してから、フィルム装填部45が水平方向H’に押し込まれる。
【0056】
フィルム装填部45が図2の左方から水平方向H’に押し込まれると、フィルム装填部45の後端側に立設され上端の一部が切り欠かれたトレーロック部45aが、ロック部材71の先端の一部が切り欠かれたロック部71aと突き合うようにして係合することで、回動方向r(図の反時計回り方向)にばね等の付勢部材で付勢されたロック部材71が回動方向rへの付勢力に抗して回動方向r’(図の時計回り方向)に回動する。フィルム装填部45が更に押し込まれ、トレーロック部45aがロック部材71のロック部71aを通り過ぎると、ロック部材71が付勢力により回動方向rに回動し元の状態に戻り、図2のように、トレーロック部45aとロック部71aが係合することで、フィルム装填部45がロックされる。このようにして、フィルム装填部45が水平方向H’に押し込まれることで、装置筐体40a内の底部40b上にロック状態でセットされる。
【0057】
なお、ロック状態のフィルム装填部45を水平方向Hに引き出すときは、装置筐体40aの内壁に設けたソレノイド72をスイッチ(図示省略)により駆動させて、図2の破線のように、ロック部材71を回動方向rへの付勢力に抗して回動方向r’に回動させることで、ロック部材71のロック部71aとトレーロック部45aとによる係合を解き、ロックを解除する。
【0058】
次に、図1,図2のフィルム装填部45にフィルム包装体Pを装填し、遮光袋Bを除去し、フィルムFに露光し画像記録が可能になるまでの動作について説明する。
【0059】
図2の位置からフィルム装填部45を水平方向Hに引き出したフィルム装填位置で、フィルム装填部45にフィルム包装体Pを装填し、遮光袋Bの一端部aを一対のガイドローラ70の間を通してフィルム装填部45の外部に引き出し、他端部bを遮光用ローラ75に挟んだ後、はさみやカッタ等でカット線dに沿ってカットし、カット後の残部を除去してから、フィルム装填部45を水平方向H’に押し込み装置筐体40a内の底部40b上にセットする。
【0060】
上記セットにより装置筐体40aとフィルム装填部45との間に形成されたスリットgから遮光袋Bの一端部aが装置筐体40aの外部に残る。そして、図2のように装置筐体40aから長さnで延びた遮光袋Bの一端部aをユーザが手で掴んでほぼ水平方向Hに引っ張ることで遮光袋Bを引き抜く。これにより、装置筐体40a内においてフィルム装填部45内のフィルムFが露出する。なお、装置筐体40aから延びた一端部aの長さnは、遮光袋Bの一端部aをユーザが手で掴んで充分に引っ張ることができる長さである。
【0061】
以上のようにしてフィルム装填部45に装填されたフィルム包装体Pから遮光袋Bを除去し、フィルム装填部45内で露出した最上のフィルムFを必要に応じて図1の送出しローラ46や搬送ローラ対47等により搬送し、光走査露光部55からフィルムFにレーザ光Lを光走査して露光することでフィルムFのEC面に潜像を形成し、昇温部50と保温部53でフィルムFを加熱して熱現像する。
【0062】
なお、図1のようなデスクトップ型の比較的小型の熱現像記録装置では、遮光袋Bの自動引き抜き処理のための自動引き抜き機構は装置全体の大型化につながることから、自動引き抜き処理は好ましくなく、上述のような手動引き抜き処理機構が好ましい。
【0063】
また、上述のように、図2の位置からフィルム装填部45を水平方向Hに引き出したフィルム装填位置で明室装填を行う場合、フィルム包装体Pの装填後、図6(c)の包装用テープeをはがし、引き抜き側の折り曲げられた一端部aを延ばしガイドローラ70の間に通し、一方、カットされる側の他端部bを図2の破線のように、フィルム包装体Pの幅方向に延びた遮光用ローラ75で押さえ、シール部cの内側のカット線dに沿って直線状にカットする。この遮光用ローラ75により遮光袋Bの他端部bをカット線dでカットしたときにフィルム包装体P内の遮光を確実に保つことができる。
【0064】
次に、図1の熱現像記録装置40におけるフィルム搬送装置について図7を参照して説明する。図7は図1のフィルム装填部からフィルムを送り出して下流側に搬送するフィルム搬送装置を概略的に示す正面図である。
【0065】
図7のフィルム搬送装置61は、図1のフィルム収納トレー部45と、送出しローラ46と、搬送ローラ対47と、を備えるが、更に、フィルム収納トレー部45に装填された多数枚のフィルムFを上方に持ち上げるリフト機構を備える。
【0066】
即ち、図7のように、フィルム搬送装置61のリフト機構は、フィルム収納トレー部45側の一端部62aが軸支され回動可能であり、回動方向Sへの回動に伴って破線で示す多数枚のフィルムFを上方に持ち上げる持ち上げ板62と、フィルム収納トレー部45側の一端部63aと持ち上げ板62側の他端部63bが軸支され回動可能であり、回動に伴って他端部63bで持ち上げ板62を上下動させるリフト板63と、を備える。
【0067】
リフト機構は、更に、駆動モータ67と、リフト板63の下面に当接する長円状の当接カム部64と、当接カム部64を回転軸64a周りに回動させる歯車65と、駆動モータ67の回転軸67aにより回動し歯車65と噛み合う歯車66と、を備える。
【0068】
駆動モータ67は、フィルムFが1枚ずつ搬送されて減少しても、常に最上位のフィルムが送出しローラ46と当接するように、歯車66,歯車65を介して当接カム部64を回動させて傾きを変える。即ち、当接カム部64は、フィルムFが多数枚のときは、当接カム部64の長手方向が水平方向に近い状態に傾き、搬送が進んでフィルムFの枚数が減少するに従い当接カム部64の長手方向が徐々に鉛直方向に近い状態に傾くように制御される。
【0069】
送出しローラ46は、駆動モータ68(図10)により駆動される回転ローラから構成され、フィルム収納トレー部45内の最上位のフィルムFに当接して、回転駆動されることで、フィルムFを図2の破線で示す送り出し方向kに送り出し下流側に搬送する。
【0070】
搬送ローラ対47は、送出しローラ46から送り出されてきたフィルムFに搬送方向への推進力を与える推進ローラ47aと、推進ローラ47aに協働してフィルムFを一枚ずつ搬送するローラ47bと、を有する。
【0071】
次に、図7のフィルム収納トレー部からフィルムを搬送する際に最上位のフィルムを分離する分離爪について図8を参照して説明する。図8は図7のフィルム収納トレー部内のフィルムと分離爪との相対位置(a)、(b)を概略的に示す図7と同様の正面図である。
【0072】
図8(a)、(b)のように、図1の装置筐体40aの内側の支持板80に分離爪81が設けられている。分離爪81は、持ち上げ板62の回動に伴い、フィルム収納トレー部45内の最上位のフィルムFの先端両隅に自重で当接可能なように設けられている。
【0073】
図8(a)の初期位置から図の矢印方向に持ち上げ板62でフィルムFを持ち上げると、図8(b)のように最上位のフィルムFに送出しローラ46が当接するとともに、フィルムFの両隅に左右一対の分離爪81が自重で当接する。この状態で送出しローラ46を回転させると、最上位のフィルムの分離爪81に当接している周辺に凸状の弾性変形部が生じ、この弾性変形部に蓄えられたエネルギをきっかけとして、最上位のフィルムと以降に続くフィルムとが分離される。このような分離爪81の構成は、例えば特許第3666885号の特許公報から公知である。
【0074】
また、図7のフィルム搬送装置61の持ち上げ板62は、装填されたフィルムの最上位のフィルムFが所定位置に到達したことを位置検出センサ(図示省略)で検出すると、回動を停止するようになっている。このとき、送出しローラ46は支点軸46b(図10)を中心として、自重で最上位のフィルムに当接する。フィルム搬送に伴い、最上位のフィルムFの位置変化に追従して、送出しローラ46は最上位フィルムと当接するが、最上位のフィルムFの位置が所定量以上変化した(低くなった)場合、フィルムの分離搬送を停止し、持ち上げ板62を、前記位置検出センサが検出するまで、再度回動させる。
【0075】
上記構成により、フィルム搬送される軌跡を所定範囲に収めることが可能となり、傷発生が無く、安定したフィルム分離・搬送が可能となる。
【0076】
図9は、図1,図7,図8の送出しローラ46に設けることのできる調芯リンク機構を模式的に示す正面図である。図9の調芯リンク機構は、リンク部材46aが支点軸46bを支点にして一端に送出しローラ46を軸支し、他端にバランサ46cを設けることで、送出しローラ46のフィルムFに対する当接圧を均一化できる。また、図9においてバランサ46cの重量を変えることで、送出しローラ46のフィルムFに対する当接圧を更に調整できる。
【0077】
図9の調芯リンク機構により、送出しローラ46のフィルムFの幅方向全面にわたる当接圧を均一化できるので、送出しローラ46がフィルムFの幅方向に偏って当接することがないので、フィルムに傷が発生し難くなる。
【0078】
図1の熱現像記録装置40は、外部から画像データが入力すると、フィルム搬送装置61が作動し、持ち上げ板62でフィルムFを持ち上げフィルム収納トレー部45内の最上位のフィルムFに送出しローラ46が当接した状態で回転することでフィルムFを図7の方向kに搬送する。そして、フィルムFは搬送ローラ対47によりガイド48を通して搬送ローラ対49a,49bに送られ副走査搬送され、搬送ローラ対49aと49bとの間でフィルムFに画像データに基づいて光走査露光部55からレーザ光Lを光走査して露光することによりフィルムFのEC面に潜像を形成する。そして、潜像の形成されたフィルムFは昇温部50、保温部53で加熱されて熱現像され潜像が可視像化され、冷却部54で冷却されてフィルム載置部58へと排出される。
【0079】
次に、図1〜図9の熱現像記録装置及びフィルム搬送装置を制御する制御系について図10の制御系ブロック図を参照して説明する。図1〜図9の熱現像記録装置40及びフィルム搬送装置61は、図10のように、装置全体を制御するためにCPU(中央演算処理装置)から構成された制御部85を備える。制御部85は、リフト機構の駆動モータ67及び送出しローラ46を駆動する駆動モータ68を制御し、また、搬送ローラ対49a、49bを駆動する副走査駆動モータ49cを検出センサ60の検出結果に基づいて制御して搬送ローラ対49a、49bによる副走査を制御する。
【0080】
また、制御部85は、駆動モータ68による送出しローラ46の駆動時にタイマ69を作動させ、所定時間経過後までに検出センサ60がフィルムを検出しないときにはフィルム装填部45内のフィルムがエンプティであると判断し、フィルムがなくフィルム補充が必要な旨を装置の表示部86に表示させるようになっている。
【0081】
次に、図1の熱現像記録装置40における制御部85による仕上がり濃度の制御について説明する。
【0082】
図10の制御部85は、フィルム装填部45にフィルムが滞留されている滞留時間を算出する滞留時間算出部88と、算出された滞留時間に基づいて、フィルムに対する光走査露光部55による潜像形成時の露光量を補正する、及び/又は、冷却部54の加熱ヒータ54dのヒータ温度を制御する補正部89と、を制御することで、前回の熱現像処理から所定時間が経過していた場合には、所定量の露光量を補正する、及び/又は、冷却部54の温度を制御する。また、フィルム装填部45に新たなフィルム包装体Pを装填し、後述のキャリブレーション手段によりキャリブレーションLUTを生成した後、滞留時間算出部88による滞留時間をリセットし、零にする。
【0083】
なお、フィルム装填部45におけるフィルムの特性変化は、一般的には全体的な濃度上昇、または低下であり、入力信号対仕上がり濃度のリニア特性への影響は少ないので、露光量での補正ではなく、加熱後のフィルムからの吸熱量の制御でも最終的な仕上がり濃度を制御することができる。また、露光量で補正する場合には、フィルム特性の変化が前記リニア特性への影響がある場合にも補正可能であるが、潜像形成前に補正量の演算を終えておく必要があり、プリントデータ算出時間が必要となる。一方、冷却部54による補正は、プリント開始前(露光開始前)までの演算終了は不要で、サイクルタイム的には有利となる。
【0084】
図1のように、フィルム装填部45が本体底部に位置し、熱現像部等の発熱部の影響を受け難く、更に、装置自体が省エネモードを有し、発熱を抑制する装置構造の場合、例えば、(1)図10の装置電源スイッチ(SW)40cのON/OFFに係わらず、熱現像処理の間隔が48時間以上あいた、と滞留時間算出部88で算出すると、補正部89で濃度換算で0.05だけ補正するように光量を制御する。このような制御により、フィルム装填部45にフィルム包装体Pが装填されて遮光袋Bが除去されたフィルムが数週間のような比較的長期間にわたり使用される場合でも、仕上がり濃度を0.1以内に収めることができる。
【0085】
次に、図1の熱現像記録装置40におけるフィルム仕上がり濃度の制御について図11のフローチャートを参照して説明する。
【0086】
まず、熱現像記録装置40内のフィルム装填部45にフィルム包装体Pを装填し(S01)、フィルム包装体Pから遮光袋Bを除去し、フィルム装填部45内で最上のフィルムFが露出する。この装填時から滞留時間算出部88で滞留時間の計測を開始する(S02)。
【0087】
次に、フィルムに形成すべき画像信号が入力すると(S03)、滞留時間算出部88で算出した滞留時間が所定時間以上であるか否かを判断し(S04)、所定時間以上であれば、上述の補正部89で補正量を得る(S05)。
【0088】
一方、図7,図8のフィルム搬送装置61でフィルム装填部45内から1枚のフィルムFを送出しローラ46によりピックアップし分離して搬送する(S06)。そして、光走査露光部55からレーザ光をフィルムFのEC面に露光することで入力した画像信号に基づいて潜像を形成するが(S07)、露光量で補正する場合のEC面に対する露光量は、上述のように滞留時間が所定時間以上であれば、補正部89で得た補正量を加味した値である。
【0089】
次に、潜像の形成されたフィルムを更に搬送し、昇温部50と保温部53でフィルムFを加熱して熱現像し(S08)、冷却部54で冷却し、フィルム排出部58へ排出する(S09)。
【0090】
また、フィルム装填部45からのフィルムのピックアップ方式が上述のように爪分離方式であるので、吸盤吸着方式とは異なり、2枚目以降のフィルム間に周囲雰囲気空気が流入することがなく、また、最上位フィルムに連れて持ち出された2枚目以降のフィルムがフィルム装填部45内に戻る際に位置ずれ等を生じ、乳剤層に残る溶媒が揮発して濃度変化(濃度ムラ)を生じることがなく、好ましい。
【0091】
また、図1の熱現像記録装置40は、入力画像信号(濃度を指定する信号)に対する仕上がりフィルム濃度の関係が一定となるように入力画像信号と露光量との関係を校正するキャリブレーションを行い、キャリブレーション用LUTを生成する生成部90を備え、露光量でフィルム特性変化を補正する場合には、制御部85は、生成部90で生成したLUTによる露光補正量と、上述の補正部89での熱現像処理間隔の露光補正量と、を加算するように組み合わせた制御用LUTで濃度補正を行うように構成できる。
【0092】
この場合、LUT90によるキャリブレーション実施後に滞留時間算出部88で滞留時間のカウントを開始することが好ましい。キャリブレーションの実施で、その時点での変動分はキャンセルされることになるので、滞留時間のカウントはキャリブレーション実施後に開始する。従って、LUT90によるキャリブレーションの実施毎に滞留時間算出部88による滞留時間をリセットし零とすることが好ましい。
【0093】
また、露光量で補正する場合には、フィルムの所定箇所に形成したパッチの濃度を図1の濃度計56で測定し、このパッチ濃度に基づいて次回の熱現像処理における露光量を補正するパッチFB方式を採用する場合には、前回の熱現像処理で測定したパッチ濃度に基づくFB露光補正量と上述の熱現像処理間隔に基づく露光補正量とを加算するように組み合わせた制御用ルックアップテーブル(LUT)で次の熱現像処理時の露光補正量を得る。
【0094】
以上のように、本実施の形態による熱現像記録装置・方法によれば、フィルム装填部45と熱現像部(昇温部50、保温部53)や光走査露光部55が近接した小型の熱現像記録装置を用い、1つのフィルム包装体に内包されたシート状のフィルムを数週間にわたって使用する場合にも、推定されるフィルム感度変化に対し適切に露光補正を行うので、フィルムの仕上がり濃度を所定の濃度範囲、例えば濃度のばらつき0.1以内に収めることが可能となる。
【0095】
特に、開業医やクリニック等においては、救急等の24時間体制をとる中〜大病院の放射線科等とは異なり、開業時間が、例えば、月・火・木・金・土の9:00〜15:00等の比較的定まった診察ルーティンがとられることが多く、診察期間外は、施設内に医師・看護士等は不在となるため、省エネ及び安全の観点から、熱現像記録装置等は装置電源40cがOFFされる。従って、熱現像記録装置を使用したフィルムの熱現像処理(プリント)もこの診察期間内に行われることになる。ファーストプリントの短縮化のために、装置全体をコンパクトにするため、搬送距離も短く設計されており(露光しながら熱現像する構成も搬送経路短縮(装置コンパクト化)の一環である)、その滞留時間が所定時間以上のときに、前のプリントとの濃度差を所定範囲に保つよう濃度補正を行い、濃度変動を未然に防ぐことができる。また、本実施の形態の熱現像記録装置は、露光しながら熱現像する方式を採用するため、熱現像部でフィルム搬送速度を可変する濃度補正方式は採用することができない。かかる装置の使用環境下で、基本的にはプリント間隔があくほど、フィルムのEC面から溶媒成分が揮発し濃度低下を起こすものと考えられるが、上述のように、本実施の形態では、フィルムの装置内での滞留時間を計測し、その滞留時間が所定時間以上のときに、濃度補正を行い、濃度低下を未然に防ぐことができる。
【0096】
また、前述の開業医やクリニック等においては、装置の通電時間も比較的定型ルーティンをとり、連続プリント等は稀で、機内温度上昇することも少なく、一般的に制御系が内蔵するクロックを使用し、フィルムが空になった後に新フィルム装填(新しいフィルム包装体Pの装填)することで、キャリブレーションを実行し、キャリブレーション用LUTをリセットするとともに、滞留時間算出部88用のタイマ・カウンタをリセットし(カウンタをゼロ)、フィルム装填部45内のフィルムの装置内温度影響をみなし制御し、温度影響分を相殺補正するようにできる。そして、前回からのプリント間隔が所定時間以上あいた場合、所定の濃度補正を行う。
【実施例】
【0097】
次に、実施例により本発明の熱現像記録方法による濃度補正効果について説明する。図12に示す熱現像装置を実験で使用し、次のような構成とした。
【0098】
加熱系として、厚さ10mmのアルミニウムプレートの裏面にシリコンラバーヒータを貼付した、プレート状の第1の加熱プレート(昇温部)及び曲率形状の第2の加熱プレート(保温部)を用いた。第1の加熱プレートのガイド面に、厚さ1mmのシリコンゴム層を表層に設けた直径12mm、有効搬送長380mmのシリコンゴムローラを約8gf/cmの線圧となるよう配置し、このシリコンゴムローラで熱現像感光材料を塗布したフィルムを押圧しBC面を加熱プレートに接触させながら搬送した。第1の加熱プレートの搬送長は84mmである。第2の加熱プレートは、断熱材を配置し、搬送長を126mmとし、図1と同様の曲率構造で設置面積を小さくした。
【0099】
冷却系として厚さ2mm、10mmのアルミプレートをそれぞれ第1、第2の冷却プレートとして用い、第1の冷却プレートはフィルム搬送面と反対の面に加熱ヒータを設け、温度線の測定結果に基づき温度制御した。また、冷却プレートは端部を延長して面積を大きくし(冷却)伝熱効率を上げてある。
【0100】
第2の冷却プレートのアルミニウムプレートの裏面に厚さ0.7mm、高さ35mm、奥行き390mmのフィン21枚をピッチ4mmで配置したヒートシンクを接合した。第1,第2の冷却プレートに、厚さ1mmのシリコンゴム層を表層に設けた直径12mm、有効搬送長380mmのシリコンゴムローラを約8gf/cmの線圧で配置し、フィルムを押圧しながら搬送した。第1、第2の冷却プレートの搬送長は、それぞれ60mm、105mmである。
【0101】
フィルムは保温部から排出されても未だ比較的高温であるので現像が進行するが、徐冷部(濃度補正部)において徐々に冷却されながら温度センサの測定結果に基づいて徐冷部における冷却プレートのガイド面の温度が制御されることで、フィルムFからの吸熱量(熱移動量)を制御する。このように徐冷のときの温度調整を行うことで濃度が制御されて濃度補正を行う。このようにして、露光しながら熱現像を行う場合に、フィルムFの仕上がり濃度を安定化できる。
【0102】
本実施例のような小型・迅速処理装置において、加熱されたフィルムを冷却部で急激に冷却すると、カールやしわを誘発し易く、また、冷却部自体が吸熱量により温度上昇し連続処理時に能力(吸熱能力/冷却能力)が変化し易く濃度が変化し易く、これを冷却部の能力でコントロールしようとしても、冷却部は元々が大幅な熱変動(伝熱)量をコントロールする部分であるので、微小な濃度差に対応する微小温度変化に対する応答性がよくなく、このため微小温度変化には対応できなかったのに対し、本実施例の熱現像記録装置によれば、従来の冷却雰囲気温度に応じてファンやヒートパイプを作用させるものとは異なり、インターバルが12秒以下の連続処理を行っても、徐冷部に加熱ヒータを設け、徐冷のときに温度制御を行うことで、フィルムのカールやしわを防止するとともに、微細な変化量の濃度を制御することができる。また、徐冷部は、従来と同様に連続処理に伴うフィルムの熱により雰囲気温度が上昇し、冷却プレートの温度も影響を受け、フィルムから奪われる熱量が次第に減少する傾向(濃度が上昇する傾向)にあるが、冷却プレートの温度センサにより加熱ヒータの温度を制御することで、冷却プレートを通過中のフィルムが奪われる熱量をリアルタイムでコントロールできるので、最終的なフィルムの仕上がり濃度を管理できる。更に、フィルムFの加熱時間が10秒以下で済むので、迅速な熱現像プロセスを実現でき、また、昇温部から冷却部まで直線的に延びたフィルム搬送経路を装置レイアウトに応じて曲率を持った経路に変更し、設置面積の小型化・装置全体の小型化に対応できる。
【0103】
搬送速度は、21.2mm/sの迅速処理とした。第1及び第2の加熱プレートの温度は123℃とし、第1の冷却プレートは、プレート表面温度の基準値100℃に対し±5℃の範囲で温度調整可能となるようヒータを選定し、制御した。各プレートの間は、プレート間での熱移動量を抑制するために2mmの間隙を設けた。
【0104】
〈実施例1〉
【0105】
熱現像用フィルムは、特開2004−102263号公報に開示されているような有機溶剤系の熱現像用フィルムである、コニカミノルタ社製のSD-Pを使用した。上記フィルムを用いて、図12の熱現像記録装置において熱現像処理を実行した。塗布液を塗布した乳剤層面(EC面)側を開放してシリコンゴムローラで押圧しBC面を加熱プレートに接触させながら搬送し、加熱時間を10秒にして熱現像を行った。
【0106】
目標濃度1.5となるよう露光した40枚のフィルムを連続して熱現像処理するに際し、処理枚数の増加に伴い、徐冷部のヒータを制御し、冷却プレート表面温度を徐々に低下させ、40枚目近傍のフィルム搬送処理時には、プレート表面温度が基準値100℃に対し、−3℃となるようヒータを制御した結果、40枚のフィルム間での仕上がり濃度の差をD=0.05以下に抑えることができた。
【0107】
更に、上述のフィルムを用いて、次の実施例2乃至4において図11の熱現像装置により熱現像処理を実行した。
【0108】
〈実施例2〉
【0109】
本実施例では、徐冷部で全ての濃度を補正する方式を採用した。即ち、装置電源OFFからの通常の立上り時間(ready時間)が10分前後で、省エネモード(熱現像温度をフィルム処理時の例えば123℃からスタンバイ時の50℃で制御する)を保持している場合、開業医等で患者の撮影を決定してから、実際のハードコピー作成までに、撮影フローを停滞させることなく、熱現像の温調が完了するので(処理可能になる時間が10分よりも短い)、患者撮影後は、再度省エネモードに移行するように設定する。
【0110】
元々、開業医等は使用量(ハードコピー生成枚数)が多くなく(数コピー/日)、かつ、熱現像装置本体の下部に設けられたフィルム装填部のフィルムは熱影響を受け難い構成となっており、フィルムの感度変化も生じ難い。従って、装置本体の熱影響よりも、装置が設置された部屋の温度影響を受け易くなる。
【0111】
本実施例の急冷部の冷却方式では、冷却手段の冷却能力変化は、比較的安定しており、また、露光部の温度を略一定に保つヒータを内蔵し、光源(LD)の波長変動(フィルムに対する光量を変動させることとなり、結果として濃度変化を生じさせる)を抑制する場合には、熱現像特性及び露光特性は安定しているので、フィルムが放置された室温影響によるフィルム特性変動分を、徐冷部の温度設定による冷却特性の制御(徐冷部を通過する加熱フィルムからの吸熱量)で濃度を制御した。この場合、例えば、パッチFB制御による濃度安定化システムが併用されている場合、パッチFB補正量+フィルム放置時間に基づく補正量の加算量に基づき、徐冷部の温度設定を行うようにしてもよい。
【0112】
更に、金曜日の最終プリントから月曜日のプリント再開時に、例えば0.05前後の濃度補正を行うとき、月曜日の2枚目以降のプリントに際しては、2枚目(1枚目の補正量の70%)、3枚目(1枚目の補正量の30%)、4枚目(1枚目の補正量の0%、つまりパッチFB補正のみ)とすることにより、金曜日定時の濃度と次週月曜日朝一の濃度との差が約20℃の温度環境下で、D=0.15(中間濃度領域1.5〜2.0)だけ存在したのに対し、本実施例において濃度補正することで、濃度変動を0.1以内に抑制することができた。このように、フィルム保存影響による濃度変動を抑制することができたのは、最上位フィルムが最も周囲の温度影響を受け、積層状態の下側ほど、温度影響を受け難いためであることが、本発明者等の実験により確認された。
【0113】
なお、予め定めた所定期間(本実施例の場合48時間)以内では、パッチFB補正により、次プリント時にフィルム特性変化を含めた濃度補正量が決定され、これにより、プリント間の濃度変動が0.1以上となることが抑制される。
【0114】
また、徐冷部のヒータ温度設定を可変して、仕上がり濃度を制御する方法に替えて、露光量を補正して、仕上がり濃度を制御するようにしてもよい。但し、露光量による補正を行う場合、レーザ露光による書込み前に入力信号に対する露光量を決定する必要があり、キャリブレーション用LUTに基づく露光量+補正処理による露光量加減の演算を行うため、プリント間隔がこの演算時間よりも長いものしか補正ができないことになる。
【0115】
〈実施例3〉
【0116】
本実施例では、露光量補正+徐冷部補正の併用方式を採用した。より厳密な濃度変動に対処する方式である。即ち、厳密的には、熱現像部や冷却部(特に急冷部)は装置電源ON後、時間経過とともに特性が変化するが、この変化を相殺するFF補正を併用した。このFF補正を徐冷部の温度制御で行い、フィルム経時補正+パッチFB補正を露光量補正で行った。フィルムが放置されている温度の影響が全濃度域で均一では無い場合、入力画像信号対出力濃度のリニア特性を確保しながら濃度変動を補正する場合に、特に有効である。
【0117】
冷却部の雰囲気温度を測定し、この温度に基づき、徐冷部のヒータ温度設定を制御し加熱されたフィルムからの吸熱量をFF制御した。フィルム経時変化補正は、金曜日の最終プリントから月曜日のプリント再開時に、例えば、0.05前後の濃度補正を行う時、月曜日の2枚目以降のプリントに際しては、2枚目(1枚目の補正量の70%)、3枚目(1枚目の補正量の30%)、4枚目(1枚目の補正量の0%、つまりパッチFB補正のみ)とすることにより、フィルム保存部の温度影響による濃度変動を0.1以内に抑制することができた。
【0118】
なお、予め定めた所定期間(本実施例の場合48時間)以内では、前のプリントに基づくパッチFB補正により、次プリント時のフィルム特性変化を含めた濃度補正量が決定され、これにより、プリント間の濃度変動が抑制される。
【0119】
また、月曜日のプリント再開時、キャリブレーションを実施し、これに続いてプリントを実行した場合、フィルム経時補正は行われず、FF補正量・FB補正量ともにゼロで、キャリブLUTによる演算結果に基づくプリントが行われ、このプリント結果に基づき算出されたFB補正量が次プリントに適用される。なお、次プリントが実行されるまでの間の冷却部特性変化はリアルタイムでFF補正される。
【0120】
〈実施例4〉
【0121】
本実施例ではフィルム装填部近傍の温度センサによる測定温度とプリント間隔とで濃度補正をした。即ち、使用頻度が少なく、かつ、省エネモードを備えていると、装置電源ON・OFFに係わらず、フィルム装填部近傍の温度影響が大となるので、プリント間隔*フィルム装填部近傍の温度で、フィルム特性変化を推定し、みなし制御により、この変化を相殺するように実施例1の制御方法で濃度制御した(または実施例2の制御方法でもよい)。即ち、25℃に48時間以上、35℃で30時間以上の時、FF補正量やFB補正量に加算して、フィルム経時補正量0.05を加えた。
【0122】
なお、途中で装置電源OFF・ONがあった場合には、それぞれの温度情報により平均的な温度を算出し、この算出結果に基づき、フィルム特性変化量を推定し、これを相殺するフィルム経時補正量を算出するようにできる。
【0123】
以上のように本発明を実施するための最よの形態及び実施例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、図1の熱現像記録装置40は、医用画像データを入力させることで、医用画像をフィルムに形成し出力することができる医療用レーザ熱現像装置に構成できる。
【0124】
また、図1の熱現像記録装置40は、全体がデスクトップ型の比較的コンパクトな構成であったが、本発明のシートフィルム搬送装置は、かかるデスクトップ型の熱現像記録装置にだけ適用できるのではなく、例えば、スタンドアロンタイプ(自立型)等の比較的大型の熱現像記録装置にも適用できることは勿論である。
【0125】
また、使用するフィルム種は複数のフィルム装填部がある場合には、予めフィルム装填部毎に設定すればよい。また、フィルム包装体にバーコード等の記録媒体があれば、バーコード等から読み取ったフィルム種情報を制御系へ伝達し、自動設定するようにできる。
【0126】
また、滞留時間算出部88における滞留時間の算出方法は、図11で説明した方法(1)に限らず、次のような方法(2)乃至(5)のいずれか1つで行ってもよく、また、(1)乃至(5)を複数組み合わせて行ってもよい。
(2)装置電源SW40cがON状態での間隔+装置電源SW40cがOFF状態での間隔が所定時間以上(例えば、48時間以上)となったとき。
(3)α*装置電源SW40cがON状態での間隔+装置電源SW40cがOFF状態での間隔が所定時間以上(例えば、48時間以上)となったとき。この場合、前者の影響が大であるので、α>1と設定することが好ましい。
(4)装置電源SW40cがOFF状態で間隔が所定時間以上(例えば、48時間以上)となったとき。特に、小型機の場合、発熱部の熱容量自体が比較的小さいので、熱現像記録装置が放置されている環境の影響を最も受け易い。
(5)装置電源SW40cがON状態で間隔が所定時間以上(例えば、30時間以上)となったとき。これは、特に、ノーマルモードの発熱影響を受け易い状況(感度劣化を生じ易い状況)の場合に有効である。
【0127】
また、図11において、ステップS01でフィルム装填部45にフィルム包装体Pを装填し、フィルム包装体Pから遮光袋Bを除去し、フィルム装填部45内で最上のフィルムFが露出した状態で生成部90によるキャリブレーションを実行し、このキャリブレーション時から滞留時間算出部88で滞留時間の計測を開始するように制御してもよい。
【0128】
また、図1のように、フィルム装填部45の近傍に配置した温度センサ45bでフィルム装填部45近傍の温度を検出し、この検出温度と上記方法(1)乃至(5)との組合せで制御してもよく、この場合、所定時間以上装置電源SW40cがONされた後、OFFされる前の温度状態が分かれば、フィルム装填部45部のフィルムの冷却状況がより精度よく推定されるので、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本実施の形態による熱現像記録装置の要部を概略的に示す正面図である。
【図2】図1のフィルム装填部を装置側面側から見た図である。
【図3】図1,図2のフィルム装填部に装填可能なフィルム包装体(図6(c)の両端部a,bが延びた状態で示す)を一部破断して示す斜視図である。
【図4】図3のフィルム包装体の遮光袋の断面構成を模式的に示す断面図である。
【図5】図3のフィルム包装体内でフィルムの束を位置決めるためのトレー状の位置決め部材(トレー)を概略的に示す斜視図である。
【図6】図3のフィルム包装体の生産工程(a)〜(c)を説明するための概略的な側面図である。
【図7】図1のフィルム装填部からフィルムを送り出して下流側に搬送するフィルム搬送装置を概略的に示す正面図である。
【図8】図7のフィルム収納トレー部内のフィルムと分離爪との相対位置(a)、(b)を概略的に示す図7と同様の正面図である。
【図9】図1,図7,図8の送出しローラ46に設けることのできる調芯リンク機構を模式的に示す正面図である。
【図10】図1〜図9の熱現像記録装置及びフィルム搬送装置の概略的な制御系ブロック図である。
【図11】図1の熱現像記録装置におけるフィルム仕上がり濃度の制御を説明するためのフローチャートである。
【図12】本実施例で使用した熱現像装置の概略的構成を示す図である。
【符号の説明】
【0130】
40 熱現像記録装置
45 フィルム装填部(載置手段)
45b 温度センサ
46 送出しローラ(ピックアップ手段)
50 昇温部(熱現像手段)
53 保温部(熱現像手段)
54 冷却部
55 光走査露光部(露光手段)
61 フィルム搬送装置
85 制御部
88 滞留時間算出部(算出手段)
89 補正部(補正手段)
90 キャリブレーション用ルックアップテーブルの生成部
F フィルム、シート状フィルム(シート状の熱現像感光材料)
P フィルム包装体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシート状の熱現像感光材料を集積保持可能な載置手段と、
前記載置手段上の熱現像感光材料を分離し搬送するピックアップ手段と、
前記搬送される熱現像感光材料上に潜像を形成する露光手段と、
前記潜像が形成された熱現像感光材料を熱現像する熱現像手段と、
前記載置手段に前記熱現像感光材料が滞留されている滞留時間を算出する算出手段と、
前記算出された滞留時間に基づいて前記熱現像感光材料の仕上がり濃度を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする熱現像記録装置。
【請求項2】
入力される画像信号に対し現像濃度が前記熱現像感光材料上で一定となるように前記画像信号と前記画像信号に対応する露光量との関係を校正するキャリブレーション手段を更に備え、前記キャリブレーション手段によるキャリブレーション実施後に前記滞留時間のカウントを開始する請求項1に記載の熱現像記録装置。
【請求項3】
前記キャリブレーション実施毎に前記滞留時間をリセットする請求項2に記載の熱現像記録装置。
【請求項4】
前記載置手段に新たな複数のシート状の熱現像感光材料を装填したときに、前記滞留時間をリセットする請求項1,2または3に記載の熱現像記録装置。
【請求項5】
前記載置手段近傍の温度を検出する温度検出手段を更に備え、
前記算出された時間及び前記検出された温度に基づいて前記熱現像感光材料の仕上がり濃度を補正する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の熱現像記録装置。
【請求項6】
前記補正手段は前記仕上がり濃度が一定となるように前記露光手段による露光量を補正する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱現像記録装置。
【請求項7】
前記載置手段が装置本体内の最下部に配置され、上部に前記露光手段と前記熱現像手段が配置され、前記露光手段と前記熱現像手段との距離は前記シート状の熱現像感光材料の長さよりも短い請求項1乃至6のいずれか1項に記載の熱現像記録装置。
【請求項8】
前記ピックアップ手段が爪分離方式である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の熱現像記録装置。
【請求項9】
載置手段上の複数のシート状の熱現像感光材料を1枚ずつ分離し搬送し、前記搬送された熱現像感光材料上に潜像を形成し、前記潜像が形成された熱現像感光材料を熱現像する熱現像記録方法であって、
前記載置手段にシート状の熱現像感光材料が滞留されている滞留時間を算出し、前記算出された滞留時間に基づいて前記熱現像感光材料の仕上がり濃度を補正することを特徴とする熱現像記録方法。
【請求項10】
所定の濃度信号に対し現像濃度が前記熱現像感光材料上で一定となるようにキャリブレーションを実行し、前記キャリブレーション実施後に前記滞留時間のカウントを開始する請求項9に記載の熱現像記録方法。
【請求項11】
前記キャリブレーション実施毎に前記滞留時間をリセットする請求項10に記載の熱現像記録方法。
【請求項12】
前記載置手段に新たな複数のシート状の熱現像感光材料を装填したときに、前記滞留時間をリセットする請求項9,10または11に記載の熱現像記録方法。
【請求項13】
前記載置手段近傍の温度を検出し、
前記算出された時間及び前記検出された温度に基づいて前記熱現像感光材料の仕上がり濃度を補正する請求項9乃至12のいずれか1項に記載の熱現像記録方法。
【請求項14】
前記仕上がり濃度が一定となるように前記潜像の形成時の露光量を補正する請求項9乃至13のいずれか1項に記載の熱現像記録方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−183479(P2007−183479A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2439(P2006−2439)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】