説明

熱疲労評価方法、並びに、熱疲労評価装置

【課題】試料がさらされる雰囲気温度や試料の熱膨張係数の差に起因する熱応力及びクリープ変形による熱疲労の評価に最適な熱疲労評価方法、並びに、熱疲労評価装置の提供を目的とする。
【解決手段】熱疲労評価装置1は、温調部3を有し、温調部3において温度調整された空気を試験室2に送り込むことにより、試料Wがさらされる雰囲気温度や試料自体の温度、すなわち試験環境温度を調整することができる。熱疲労評価装置1は、試験環境温度を低温設定温度と高温設定温度との間で変化させる際の温度変化率を設定し、この設定通りに試験環境温度を推移させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱疲労評価方法、並びに、熱疲労評価装置に関するものであり、特に試料の熱膨張係数の差に起因する熱応力及びクリープ変形による熱疲労の評価に最適な熱疲労評価方法と、この試験方法を好適に実施可能な熱疲労評価装置の提供を目的とする。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品や電子機器の小型化・高機能化に伴い、その構成は複雑になっている。ここで、電子部品や電子機器は、複数の構成材を半田等のろう材や接着剤等の接合材料で接合した複合物であることが多い。そのため、機器の使用環境の変化や動作・停止の繰り返しにより温度ストレスが繰り返し作用すると、半田等の接合材料が線膨張係数の差による変位が繰り返されて変形や破断を起こす、いわゆるクリープ変形を起こす可能性がある。そのため、温度ストレスによる影響が懸念される機器類やこれに使用される部品の製造や開発をするために、温度ストレスに対する信頼性評価試験(冷熱サイクル試験)が実施されることが多い。
【0003】
従来より、温度ストレスに対する信頼性評価方法として、一般的に下記特許文献1に開示されているように試料に対して機械的ひずみを強制的に付与する方法や、下記特許文献2に開示されているように、高温雰囲気下や低温雰囲気下に試料をさらし、試料に熱的ひずみを付与する方法が提供されている。
【特許文献1】特許第2679262号公報
【特許文献2】特許第2835780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されているような試験方法では、試料に対して一定のひずみを繰り返し与えることができる反面、この試験方法で試料に付与されるひずみは機械的ひずみであるため、熱的ひずみによる影響を再現することができないという問題があった。また、上記特許文献2に開示されているような冷熱サイクル試験方法を採用した場合は、試料がさらされる雰囲気を高温から低温、あるいは、低温から高温に変化させる際に、試料がさらされる雰囲気温度の変化の割合を調整することができず、上記した試料の熱膨張係数の差に起因する熱応力及びクリープ変形(以下、必要に応じてクリープ変形等と称す)による接合材料等の変形や破断の様子を忠実に再現することができないという問題があった。
【0005】
また、試料がさらされる雰囲気温度の変化の割合が試験毎に不均一であると、ひずみ速度と試料の強度との相関関係が試験を実施するごとに異なることとなる。そのため、従来技術を採用して冷熱サイクル試験を実施する場合は、複数回にわたって試験を行っても各試験毎のデータの比較ができなかったり、比較結果の精度が悪くなるといった問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、熱膨張係数の差に起因する熱応力及びクリープ変形による熱疲労の評価に最適な熱疲労評価方法、並びに、熱疲労評価装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、上記した課題を解決すべく提供される請求項1に記載の発明は、電機部品や材料等の試料の熱膨張係数の差に起因する熱応力及びクリープ変形による熱疲労評価方法であって、試料がさらされる気体の温度を調整することにより、試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度まで、時間に対して所定の誤差範囲内で比例するように変化させる昇温動作と、試料がさらされる気体の温度を調整することにより、試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度まで、時間に対して所定の誤差範囲内で比例するように変化させる降温動作とを含む温度サイクル動作を所定の周期で実施することを特徴とする熱疲労評価方法である。
【0008】
本発明の熱疲労評価方法のように、昇温動作や降温動作において、試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度を、時間に対して所定の誤差範囲内で比例するように変化させれば、試料がクリープ変形等を起こす状態を忠実に再現することができる。
【0009】
ここで、上記請求項1に記載の熱疲労評価方法において、温度サイクル動作は、昇温動作の後、試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度に維持する高温維持動作と、降温動作の後、試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度に維持する低温維持動作とを含むものであってもよい(請求項2)。
【0010】
すなわち、上記請求項1に記載の熱疲労評価方法は、昇温動作、高温維持動作、降温動作、低温維持動作の4つの動作を含む温度サイクル動作を所定の周期で繰り返して実施する構成としてもよい。さらに詳細には、本発明の熱疲労評価方法は、試料がさらされる雰囲気温度や試料の温度(以下、必要に応じて試験環境温度と称する)の昇温、高温維持、降温、低温維持を一連のサイクルとし、これを複数回繰り返す構成としてもよい。かかる構成によれば、試料がクリープ変形等を起こす状態をより一層忠実に再現することができる。
【0011】
ここで、上記請求項1又は2に記載の熱疲労評価方法を実施する場合は、室温より低温の設定温度を−70℃〜0℃の範囲で設定し、室温より高温の設定温度を60℃〜180℃の範囲で設定し、昇温動作および降温動作の実施時に試料がさらされる雰囲気温度、あるいは、試料の温度を毎分1℃〜30℃の範囲で比例するように設定し、変化させることが望ましい(請求項3)。
【0012】
かかる条件により温度サイクル試験を実施すれば、試料がクリープ変形等を起こす状態をより一層忠実に再現することができる。
【0013】
なお、上記請求項1又は2に記載の熱疲労評価方法を実施する場合において、昇温動作および降温動作の実施時に試料がさらされる雰囲気温度、あるいは、試料の温度を毎分5℃〜20℃の範囲で比例するように設定し、変化させれば、温度サイクル試験の精度を確保しつつ、温度サイクル試験に要する期間を最小限に抑制することができる。
【0014】
また、上記請求項1〜3のいずれかに記載の熱疲労評価方法を実施する場合、昇温動作および降温動作の実施時に試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度の誤差範囲が+5℃〜−5℃であることが望ましい(請求項4)。
【0015】
かかる条件下によれば、試料がクリープ変形等を起こす状態を忠実に再現でき、温度サイクル試験の試験精度を向上させることができる。
【0016】
ここで、本発明者らが種々の条件下で温度サイクル試験を実施したところ、昇温動作を実施する際の試験環境温度の変化の割合と、降温動作を実施する際の試験環境温度の変化の割合とが実質的に同一となるように調整すれば、試料のクリープ変形等の様子をより一層忠実に再現できることを見いだした。
【0017】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項5に記載の発明は、昇温動作および降温動作の実施時において試料がさらされる雰囲気温度の温度変化の割合、あるいは、試料の温度変化の割合を、昇温動作を実施する際と降温動作を実施する際とで実質的に同一とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱疲労評価方法である。
【0018】
かかる条件下で温度サイクル試験を実施すれば、クリープ変形等の再現に適した状態で試料に温度ストレスを付与することができ、信頼性に優れた温度サイクル試験を実施することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、試料を所定の試験室内に配置し、当該試験室内に温度調整された気体を供給することにより、試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度が調整され、試料の近傍における風速が少なくとも2m/秒以上となるように調整されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱疲労評価方法である。
【0020】
従来の冷熱サイクル試験において試料が配置される試験室内に導入される気体の風速が1m/秒以下であるのに対して、本発明の熱疲労評価方法では、試料の近傍における風速が少なくとも2m/秒以上となるように気体が供給される。そのため、本発明の熱疲労評価方法によれば、試験中における試料の熱交換率を向上させ、試料がさらされる雰囲気温度や試料自体の温度をクリープ変形等の再現に適した範囲内で迅速かつ的確に変化させることができる。
【0021】
また、本発明の熱疲労評価方法によれば、試料がさらされる雰囲気温度や試料自体の温度の変化の割合を精度良く調整できるため、ひずみ速度と試料の強度との相関関係を正確に把握することができる。また、本発明の熱疲労評価方法によって試験を実施すれば、試験結果を示すデータ同士を精度良く比較することができる。
【0022】
ここで、上記各発明にかかる熱疲労評価方法は、次のような構成の熱疲労評価装置によって実施することができる。さらに詳細には、試料を収容可能な試験室と、当該試験室内に供給される気体の温度を調整する温調手段と、試験室に気体を供給可能な送風手段とを有し、温調手段において温度調整された気体を試験室に導入することにより、試料が収容されている試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度、あるいは、室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度に切り替え可能な熱疲労評価装置であって、前記温調手段が、前記試験室内に供給される気体を冷却可能な冷却手段と、前記気体を加熱可能な加熱手段とを備えており、前記冷却手段が、冷媒が流れる冷媒流路と冷却器とを備え、当該冷却器により試験室に供給される気体を冷却可能な気体冷却用の冷却系統を備えたものであり、当該気体冷却用の冷却系統が、冷媒流路を流れる冷媒を前記冷却器を迂回をするように流すことが可能なバイパス流路を有し、当該バイパス流路側に迂回する冷媒の量を調整することにより冷却器に供給される冷媒の量を調整可能なものであり、目安として前記試験室を立方体に近いものと想定した場合に、この試験室の容量1リットルに対して、毎分0.2m3以上の気体が前記試験室に供給されることを特徴とする熱疲労評価装置によって上記した熱疲労評価方法を実施することができる。
【0023】
上記した構成の熱疲労評価装置では、気体冷却用の冷却系統を構成する冷媒流路に設けられたバイパス流路側に迂回する冷媒の量を調整することにより、冷却器に供給される冷媒の量を調整可能な構成とされている。そのため、上記した熱疲労評価装置では、気体冷却用の冷却系統においてバイパス流路側に迂回する冷媒の量を調整することにより冷却手段の冷却能力を正確に調整できる。従って、上記した熱疲労評価装置は、冷却能力を調整することにより、試験室や試料の温度を変化させる際に、その温度変化の割合を精度良く調整でき、試料がさらされる雰囲気温度をクリープ変形の再現に適した状態に調整できる。
【0024】
上記した構成の熱疲労評価装置では、送風手段により立方体に近い試験室の容量1リットルに対して、毎分0.2m3以上もの気体が供給される。そのため、上記した熱疲労評価装置では、試料がさらされる雰囲気温度や試料自体の温度をクリープ変形の再現に適した範囲内で迅速かつ的確に変化させることができる。従って、上記した熱疲労評価装置によれば、温度ストレスに対する温度サイクル試験(熱疲労評価試験)を迅速かつ精度良く実施することができる。
【0025】
また、上記した熱疲労評価装置では、試料がさらされる雰囲気温度や試料自体の温度の変化の割合を精度良く調整できるため、ひずみ速度と試料の強度との相関関係を正確に把握することができる。また、上記した熱疲労評価装置によって試験を実施すれば、試験結果を示すデータ同士を精度良く比較することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明は、試料を収容可能な試験室と、当該試験室内に供給される気体の温度を調整する温調手段と、試験室に気体を供給可能な送風手段とを有し、温調手段において温度調整された気体を試験室に導入することにより、試料が収容されている試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度、あるいは、室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度に切り替え可能な熱疲労評価装置であって、試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を−70℃〜180℃の範囲内で調整可能であり、試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度に切り替える昇温動作と、試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度に維持する高温維持動作と、試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度に切り替える降温動作と、試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度に維持する低温維持動作とを含む温度サイクル動作を実施可能であり、試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度変化の割合を毎分1℃〜30℃の範囲で比例するように設定し、所定の誤差範囲内で変化させることが可能であり、高温維持動作および低温維持動作の実施時間を設定可能であり、温度サイクル動作の繰り返し回数を1回以上に設定可能であり、昇温動作および降温動作の実施時に試料がさらされる雰囲気温度、あるいは、試料の温度の変化の割合を毎分1℃〜30℃の範囲で設定可能であることを特徴とする熱疲労評価装置である。
【0027】
本発明の熱疲労評価装置では、高温維持動作や低温維持動作の実施時間や温度サイクル動作の繰り返し回数に加えて、昇温動作や降温動作の実施時に、試料がされられる雰囲気温度や試料の温度変化の割合をクリープ変形等の再現に適した範囲(毎分1℃〜30℃の範囲)で調整することができる。そのため、上記した構成によれば、試験室内の雰囲気温度や試料の温度変化を試料のクリープ変形等の様子を再現するのに的確な状態に調整可能な熱疲労評価装置を提供できる。
【0028】
上記したように、本発明の熱疲労評価装置では、試料がさらされる雰囲気温度や試料自体の温度の変化の割合を調整できる。そのため、本発明の熱疲労評価装置によれば、試料のひずみ速度と試料の強度との相関関係を正確に把握することができる。さらに、本発明の熱疲労評価装置によれば、試験結果を示すデータ同士を精度良く比較することができる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、温調手段として、前記試験室内に供給される気体を冷却可能な冷却手段と、前記気体を加熱可能な加熱手段とを備えたものが採用されており、前記冷却手段が、冷媒が流れる冷媒流路と冷却器とを備え、当該冷却器により試験室に供給される気体を冷却可能な気体冷却用の冷却系統を備えたものであり、当該気体冷却用の冷却系統が、冷媒流路を流れる冷媒を前記冷却器を迂回をするように流すことが可能なバイパス流路を有し、当該バイパス流路側に迂回する冷媒の量を調整することにより冷却器に供給される冷媒の量を調整可能なものであり、試験室内の雰囲気温度の変化及び/又は試料の温度変化に応じて前記気体冷却用の冷却系統においてバイパス流路側に迂回する冷媒の量を調整して冷却手段の冷却能力を調整しつつ、試験室内の雰囲気温度の設定値及び/又は試料の温度の設定値に対する過剰に冷却された分の熱量を補足するように加熱手段を作動させるものであることを特徴とする請求項7に記載の熱疲労評価装置である。
【0030】
本発明の熱疲労評価装置では、冷却手段と加熱手段とが相補的に作動し、試験室内の雰囲気温度変化や試料の温度変化を的確に制御することができる。そのため、本発明の熱疲労評価装置によれば、試験室内の雰囲気温度や試料の温度変化を試料のクリープ変形等を再現するのに適した状態に調整することができる。
【0031】
請求項9に記載の発明は、高温維持動作が、昇温動作によって室温より高温の設定温度に到達した時点から所定の遅延時間を経た後に開始され、低温維持動作が、降温動作によって室温より低温の設定温度に到達した時点から所定の遅延時間を経た後に開始されることを特徴とする請求項8に記載の熱疲労評価装置である。
【0032】
本発明の熱疲労評価装置では、試験室内の雰囲気温度や試料の温度が安定してから高温維持動作や低温維持動作が開始されるため、試料を高温の設定温度や低温の設定温度の環境下にさらす時間のばらつきを最小限に抑制し、試料のクリープ変形等の様子を精度よく再現することができる。
【0033】
請求項10に記載の発明は、温調手段として、前記試験室内に供給される気体を冷却可能な冷却手段と、前記気体を加熱可能な加熱手段とを備えたものが採用されており、前記冷却手段が、冷媒が流れる冷媒流路と冷却器とを備え、当該冷却器により試験室に供給される気体を冷却可能な気体冷却用の冷却系統を備えたものであり、当該気体冷却用の冷却系統が、圧縮機と、冷媒流路を流れる冷媒を前記冷却器を迂回をするように流すことが可能な第1及び第2のバイパス流路と、前記冷媒流路に設けられ、冷却器に流入する冷媒の量を調整可能な流量可変膨張弁と、前記第1のバイパス流路を開閉可能な第1のバイパス弁と、前記第1のバイパス流路に設けられ、冷却系統を流れる冷媒の温度に応じて開閉あるいは開度が変化する温度式膨張弁と、前記第2のバイパス流路を開閉可能な第2のバイパス弁と、前記第2のバイパス流路に設けられ、冷却負荷の変動にあわせて容量を調整する容量膨張弁とを備えており、前記流量可変膨張弁を調整することにより、冷却器に供給される冷媒の量を調整可能であり、試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度に切り替える昇温動作と、試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度に維持する高温維持動作と、試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度に切り替える降温動作と、試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度に維持する低温維持動作とを含む温度サイクル動作を実施可能であり、昇温動作時に、第1,2のバイパス弁が開状態とされ、流量可変膨張弁の開度が10%以下に調整された状態で、加熱手段の出力が60〜100%の範囲内で調整され、高温維持動作時に、第1,2のバイパス弁が開状態とされ、流量可変膨張弁の開度が10%以下に調整された状態で、加熱手段の出力が30〜50%の範囲内で調整され、降温動作時に、第1,2のバイパス弁が閉状態とされ、流量可変膨張弁の開度が50〜100%の範囲内で調整されると共に、加熱手段の出力が0〜20%の範囲内で調整され、低温維持動作時に、第1のバイパス弁が閉状態とされ、第2のバイパス弁が開状態とされると共に、流量可変膨張弁の開度が30〜50%の範囲内で調整され、加熱手段の出力が20〜30%の範囲内で調整されることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の熱疲労評価装置である。
【0034】
かかる構成によれば、一連の温度サイクルにおいて試験室内の雰囲気温度や試料の温度を的確かつ精度良く調整することができる。従って、本発明によれば、試験室内の雰囲気温や試料の温度を試料のクリープ変形等の様子を再現するのに適切な状態に調整でき、精度の高い熱疲労評価試験を実施することができる。
【0035】
請求項11に記載の発明は、試験室の雰囲気温度の設定値、あるいは、試料の温度の設定値の切り替え時における温度変化の割合を設定可能であり、当該温度変化の割合の設定値と、試験室の雰囲気温度の設定値及び/又は試料の温度の設定値とに基づいてバイパス流路側に迂回する冷媒の量が調整されることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の熱疲労評価装置である。
【0036】
かかる構成によれば、試料がさらされる試験室内の雰囲気温度や試料自体の温度をクリープ変形等の再現に適した状態に調整でき、温度サイクル試験を精度良く実施可能な熱疲労評価装置を提供できる。
【0037】
また、上記請求項7〜10に記載の熱疲労評価装置と同様に、次のような構成のものによっても熱疲労評価試験を好適に実施することができる。すなわち、本発明の熱疲労評価装置は、試料を収容可能な試験室と、当該試験室内に供給される気体の温度を調整する温調手段と、試験室に気体を供給可能な送風手段とを有し、温調手段において温度調整された気体を試験室に導入することにより、試料が収容されている試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度、あるいは、室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度に切り替え可能な熱疲労評価装置であって、前記温調手段が、前記試験室内に供給される気体を冷却可能な冷却手段と、前記気体を加熱可能な加熱手段とを備えており、前記冷却手段が、冷媒が流れる冷媒流路と冷却器とを備え、当該冷却器により試験室に供給される気体を冷却可能な気体冷却用の冷却系統を備えたものであり、当該気体冷却用の冷却系統が、冷媒流路を流れる冷媒を前記冷却器を迂回をするように流すことが可能な一又は複数のバイパス流路を有し、当該バイパス流路側に迂回する冷媒の量を調整することにより冷却器に供給される冷媒の量を調整可能なものであり、試験室の雰囲気温度の設定値、あるいは、試料の温度の設定値の切り替え時における温度変化の割合を設定可能であり、当該温度変化の割合と、試験室の雰囲気温度及び/又は試料の温度とに基づいてバイパス流路側に迂回する冷媒の量が調整されることを特徴とするものであってもよい。
【0038】
かかる構成によれば、試験室に供給される気体の冷却用に設けられた冷却系統を構成する冷媒流路において、冷却器を迂回してバイパス流路側に流れる冷媒の量を調整することにより、試験室に導入される気体を精度良く冷却することができる。従って、熱疲労評価装置を上記したような構成とすれば、温度サイクル試験の実施中における試験室の雰囲気温度や試料の温度を安定化することができる。
【0039】
また、上記した構成の熱疲労評価装置では、試験室の雰囲気温度や試料自体の温度条件を切り替える際におけるこれらの温度の変化の割合を設定可能な構成とされており、設定された温度変化の割合と、実際の試験室の雰囲気温度や試料の温度とに基づいてバイパス流路側に迂回する冷媒の量が調整される構成とされている。そのため、上記した構成によれば、試料がさらされる雰囲気温度や試料自体の温度をクリープ変形等の再現に適した状態に調整でき、信頼性の高い温度サイクル試験を実施可能な熱疲労評価装置を提供できる。
【0040】
また、上記したような構成を採用すれば、試料がさらされる雰囲気温度や試料自体の温度の変化の割合を精度良く調整できるため、ひずみ速度と試料の強度との相関関係を正確に把握することができる。また、上記した構成を採用すれば、試験結果を示すデータ同士を精度良く比較することができる。
【0041】
ここで、上記請求項8〜11のいずれかに記載の熱疲労評価装置は、試料の近傍における風速が少なくとも2m/秒以上となるように気体を供給可能なものであってもよい(請求項12)。
【0042】
かかる構成によれば、試料がさらされる雰囲気温度や試料自体の温度をクリープ変形等の再現に適した範囲内で速く変化させることができ、温度ストレスに対する温度サイクル試験を迅速に行うことができる。
【0043】
ここで、上記請求項7〜12のいずれかに記載の熱疲労評価装置は、冷却手段が、第1の冷却系統と第2の冷却系統と含む複数の冷却系統を備えており、前記第1の冷却系統が、気体冷却用の冷却系統であり、冷媒が流れる冷媒流路と、試験室に供給される気体を冷却可能な冷却器と、冷媒流路を流れる冷媒を前記冷却器を迂回をするように流すことが可能なバイパス流路とを有し、当該バイパス流路側に迂回する冷媒の量を調整することにより冷却器に供給される冷媒の量を調整可能なものであり、前記第2の冷却系統が、第1の冷却系統を構成する冷媒流路との間で熱交換可能な冷媒系統を備えていることを特徴とするものであってもよい。
【0044】
上記した構成において採用されている冷却手段は、複数の冷却系統を有し、気体冷却用の冷却器を含む第1の冷却系統の冷媒流路と、第2の冷却系統を構成する冷媒流路との間で熱交換可能な構成とされた、いわゆる多元冷却(冷凍)方式のものである。そのため、上記した構成を採用すれば、気体を極低温まで冷却することができる。
【0045】
ここで、上記請求項7〜12のいずれかに記載の熱疲労評価装置は、試験室の雰囲気温度の設定値、あるいは、試料の温度の設定値の切り替え時における温度変化の割合を毎分1℃〜30℃の範囲内で調整可能であってもよい。
【0046】
かかる構成によれば、試料が配置される試験室内の雰囲気温度や試料自体の温度をクリープ変形等の再現に適した範囲内で速く変化させることができ、温度ストレスに対する温度サイクル試験を迅速に行うことができる。
【0047】
ここで、本発明者らが上記した本発明の熱疲労評価装置を用いて温度サイクル試験を実施したところ、試料が収容されている試験室の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度に切り替える昇温動作を実施する際の温度変化の割合と、試料が収容されている試験室の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度に切り替える降温動作を実施する際の温度変化の割合とが実質的に同一となるように調整すれば、試料のクリープ変形等の様子を忠実に再現できることを見いだした。
【0048】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項13に記載の発明は、試料が収容されている試験室の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度に切り替える昇温動作と、試料が収容されている試験室の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度に維持する高温維持動作と、試料が収容されている試験室の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度に切り替える降温動作と、試料が収容されている試験室の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度に維持する低温維持動作とを順に実施する温度サイクル試験を実施可能であり、温度変化の割合が、昇温動作を実施する際と降温動作を実施する際とで実質的に同一であることを特徴とする請求項7〜12のいずれかに記載の熱疲労評価装置である。
【0049】
かかる構成によれば、クリープ変形等の再現に適した状態で試料に温度ストレスを付与することができ、試料の温度サイクル試験を精度良く実施することができる。
【0050】
請求項14に記載の発明は、昇温動作および降温動作の実施時における試験室の雰囲気温度、及び/又は、試料の温度の誤差を、試験室の雰囲気温度の設定値、及び/又は、試料の温度の設定値に対して+5℃〜−5℃の範囲内で調整可能であることを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の熱疲労評価装置である。
【0051】
本発明の熱疲労評価装置によれば、試験室の雰囲気温度や試料の温度を熱疲労評価に最適な誤差範囲に維持することができるため、試料がクリープ変形等を起こす状態を精度良く再現することができる。
【0052】
ここで、上記請求項7〜14のいずれかに記載の熱疲労評価装置は、昇温動作および降温動作の実施時における試験室の雰囲気温度、あるいは、試料の温度の変化の割合を毎分1℃〜30℃の範囲で設定可能であり、低温の設定温度を−70℃〜0℃の範囲で設定可能であり、高温の設定温度を60℃〜180℃の範囲で設定可能であることが望ましい。
【0053】
かかる構成によれば、クリープ変形等の再現に適した状態で試料に温度ストレスを付与することができ、試料の温度サイクル試験の精度をより一層向上させることができる。
【0054】
また、上記請求項7〜14のいずれかに記載の熱疲労評価装置は、昇温動作および降温動作の実施時における試験室の雰囲気温度、あるいは、試料の温度の変化の割合を毎分5℃〜20℃の範囲で設定可能な構成とすることも可能である。かかる構成とした場合は、温度サイクル試験の精度をより一層向上させつつ、熱疲労評価試験に要する期間を最小限に抑制することができる。
【0055】
ここで、上記請求項7〜14のいずれかに記載の熱疲労評価装置において、加熱手段および冷却手段に要求される加熱能力および冷却能力を演算して導出し、これに基づいて加熱手段および冷却手段の出力値を調整する構成とする場合は、加熱能力や冷却能力の演算をなるべく高頻度で行うことが望ましい。
【0056】
そこで、かかる知見に基づいて提供される請求項15に記載の発明は、試験室の雰囲気温度、あるいは、試料の温度を検出し、当該温度に基づいて加熱手段および冷却手段に要求される加熱能力および冷却能力を演算して導出し、当該演算結果に基づいて加熱手段および冷却手段の出力値を調整するものであり、前記演算が1秒以下の周期で実施されることを特徴とする請求項7〜14のいずれかに記載の熱疲労評価装置である。
【0057】
かかる構成によれば、加熱手段および冷却手段の出力値を緻密に調整することができ、試験室の雰囲気温度や試料の温度を精度良く調整できる。従って、本発明によれば、クリープ変形等の再現に適した状態で試料に温度ストレスを付与可能であり、試料の温度サイクル試験を高精度に実施可能な熱疲労評価装置を提供できる。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、試料がさらされる雰囲気温度や試料自体の温度をクリープ変形等の再現に適した状態に調整可能な熱疲労評価方法、並びに、熱疲労評価装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
続いて、本発明の一実施形態にかかる熱疲労評価装置、および、熱疲労評価方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1において、1は本実施形態の熱疲労評価装置である。熱疲労評価装置1は、試験対象である試料Wを収容する試験室2と、試験室2内に送り込まれる空気の温度を調整するための温調部3(温調手段)と、温調部3の動作を制御する制御手段10とを有する。
【0060】
試験室2は、熱疲労評価試験を行う試料Wを収容可能な空間を有する。さらに具体的には、試験室2は、150リットルの容量を有する。試験室2の内部には、雰囲気温度センサ25および試料温度センサ26が設けられている。雰囲気温度センサ25は、試験室2内の雰囲気温度を検知可能なものである。また、試料温度センサ26は、試験室2内に配置された試料Wに取り付けることにより、試料Wの温度を検知可能な構成とされている。
【0061】
温調部3は、冷却部5(冷却手段)、加熱部6(加熱手段)および送風部7(送風手段)を有する。熱疲労評価装置1は、設定手段20を介して設定された試験条件に応じて温調部3を構成する冷却部5や加熱部6、送風部7の動作を制御して試験室2内に加熱あるいは冷却された空気を送り込み、試験室2内の雰囲気温度あるいは試験室2内に設置された試料Wの温度を高温状態あるいは低温状態に調整する構成とされている。
【0062】
冷却部5は、図2に示すように、いわゆる多元冷却(冷凍)方式(本実施形態では二元冷却方式)の冷却回路30を採用した構成とされている。冷却部5は、低温側冷却系統31と、高温側冷却系統32とを組み合わせて構成されており、両者がカスケードコンデンサ35を介して熱的に接続された構成とされている。
【0063】
低温側冷却系統31は、冷媒が循環可能な低温側冷媒流路37を有し、この中途にカスケードコンデンサ35と低温側冷却器36とが設けられた構成とされている。また、高温側冷却系統32は、冷媒が循環可能な高温側冷媒流路65を有し、この中途にカスケードコンデンサ35と高温側凝縮器38とが配された構成とされている。すなわち、冷却部5において、カスケードコンデンサ35には、低温側冷媒流路37と高温側冷媒流路65とが接続された構成とされている。従って、カスケードコンデンサ35は、低温側冷却系統31の凝縮器として機能すると共に、高温側冷却系統32の冷却器として機能し、低温側冷却系統31と高温側冷却系統32とを熱的に接続している。換言すれば、冷却回路30は、カスケードコンデンサ35において、低温側冷却系統31と高温側冷却系統32との間における熱交換が可能な構成とされている。
【0064】
低温側冷却系統31を構成する低温側冷媒流路37の中途には、低温側圧縮機41やオイルセパレータ42、アキュームレータ43、熱交換器45、膨張弁46(流量可変膨張弁)、電磁弁47が設けられた構成とされている。低温側冷却系統31は、膨張弁46および電磁弁47を開状態とした状態で低温側圧縮機41を作動させることにより、図2に矢印Aで示すように低温側冷却器36を通過するように冷媒を循環させることができる。
【0065】
膨張弁46は、いわゆる電子式の膨張弁であり、制御手段10から発信される制御信号に基づいて開閉可能な構成とされている。膨張弁46(以下、必要に応じて電子膨張弁46と称す)は、低温側冷却器36に対して冷媒の流れ方向上流側であって、カスケードコンデンサ35よりも冷媒の流れ方向下流側に配置されている。また、電磁弁47についても、制御手段10から発信される制御信号に基づいて開閉可能な構成とされている。電磁弁47は、電子膨張弁46に対して冷媒の流れ方向上流側であって、カスケードコンデンサ35よりも冷媒の流れ方向下流側に配置されている。
【0066】
低温側冷媒流路37の中途には、3つのバイパス流路50,51,52が設けられている。バイパス流路50,51,52は、いずれも低温側冷却器36を迂回するように設けられている。バイパス流路50は、冷却器36に対して低温側冷媒流路37を流れる冷媒の流れ方向下流側の位置と、電磁弁47およびカスケードコンデンサ35の間の位置とをバイパスする流路である。すなわち、バイパス流路50は、図2に矢印Bで示すように、低温側冷却器36を迂回するように冷媒を流し、カスケードコンデンサ35に戻す流路である。
【0067】
バイパス流路50(以下、必要に応じて第1バイパス流路50と称す)の中途には、膨張弁55と電磁弁56(第1のバイパス弁)とが設けられている。膨張弁55は、いわゆる温度式の膨張弁であり、冷媒の温度に応じて開閉可能な構成とされている。すなわち、膨張弁55は、低温側冷却器36よりも下流側を流れる冷媒の温度が入力され自動的に開閉するものであり、低温側圧縮機41に流れる冷媒の温度を下げるべく、低温側冷却器36よりも下流側を流れる冷媒の温度が高い場合に開き、低い場合に閉じる構成とされている。また、電磁弁56は、制御手段10から発信される制御信号に基づいて開閉可能な構成とされている。
【0068】
バイパス流路51(以下、必要に応じて第2バイパス流路51と称す)は、低温側圧縮機41の出力調整用に設けられたものであり、低温側冷却器36に対して低温側冷媒流路37を流れる冷媒の流れ方向下流側の位置と、カスケードコンデンサ35および熱交換器45の間の位置とをバイパスする流路である。すなわち、第2バイパス流路51は、図2に矢印Cで示すように、低温側冷却器36およびカスケードコンデンサ35を迂回するように冷媒を流し、熱交換器45に供給する流路である。
【0069】
第2バイパス流路51の中途には、膨張弁57と電磁弁58(第2のバイパス弁)とが設けられている。膨張弁57は、いわゆる容量膨張弁であり、負荷変動に合わせて低温側圧縮機41の容量を制御するために設けられている。また、電磁弁58は、容量膨張弁57に対して冷媒の流れ方向上流側に配されており、制御手段10から発信される制御信号に基づいて開閉可能な構成とされている。
【0070】
バイパス流路52(以下、必要に応じて第3バイパス流路52と称す)は、低温側冷却系統31の保安用に設けられたものであり、上記した第2バイパス流路51と同様に低温側冷却器36に対して低温側冷媒流路37を流れる冷媒の流れ方向下流側の位置と、カスケードコンデンサ35および熱交換器45の間の位置とをバイパスする流路である。第3バイパス流路52の中途には電磁弁60が設けられており、必要に応じて制御手段10から発信される制御信号に基づいて開閉可能な構成とされている。
【0071】
高温側冷却系統32は、高温側凝縮器38と、これを介して冷媒が循環可能な高温側冷媒流路65とを有し、高温側冷媒流路65の中途にカスケードコンデンサ35が設けられた構成を有する。高温側冷却系統32において、カスケードコンデンサ35は、冷却器として機能し、低温側冷却系統31と高温側冷却系統32とを熱的に接続している。
【0072】
高温側冷媒流路65の中途には、高温側圧縮機66やアキュームレータ68、膨張弁70、電磁弁71が設けられている。高温側圧縮機66やアキュームレータ68は、カスケードコンデンサ35よりも冷媒の流れ方向下流側であって、高温側凝縮器38よりも上流側の位置に配置されている。また、膨張弁70および電磁弁71については、カスケードコンデンサ35よりも冷媒の流れ方向上流側であって、高温側凝縮器38よりも下流側の位置に配置されている。膨張弁70は、カスケードコンデンサ35よりも下流側を流れる冷媒の温度が入力され自動的に開閉する構成とされている。
【0073】
冷却部5は、上記したような冷却回路30を備えた構成とされている。冷却回路30は、低温側冷却系統31の低温側圧縮機41および高温側冷却系統32の高温側圧縮機66を作動させて低温側冷媒流路37および高温側冷媒流路65に冷媒を循環させ、カスケードコンデンサ35において両流路37,65間で熱交換を行わせることにより、低温側冷却器36で空気を−70℃〜−40℃程度の極低温まで冷却可能な状態とすることができる。
【0074】
加熱部6は、従来公知のヒータによって構成されている。加熱部6は、制御手段10からの制御信号に基づき、出力を適宜調整可能な構成とされている。
【0075】
送風部7は、従来公知の送風機を備えた構成とされている。熱疲労評価装置1は、送風部7を作動させることにより、冷却部5や加熱部6において温度調整された空気を試験室2に送り込むことができる。熱疲労評価装置1では、試験室2内における試料Wの熱交換率を向上させるべく、立方体に近い試験室2の容量に対して大量の風を導入する構成とされている。さらに詳細には、熱疲労評価装置1では、送風部7を作動させることにより、試料Wの近傍における風速が少なくとも2m/秒以上となるような構成とされている。
【0076】
また、熱疲労評価装置1では、送風部7を作動させることにより、試験室2の容量1リットルに対して、毎分0.2m3以上の空気が導入可能な構成とされている。すなわち、熱疲労評価装置1は、試験室2が150リットルの容量を有するため、毎分30m3以上の空気を導入可能な構成とされている。本実施形態の熱疲労評価装置1では、温度サイクル試験の実施時に、毎分40m3(試験室2の容量1リットルに対して毎分約0.27m3)の空気が温度調整された状態で試験室2に導入される構成とされている。
【0077】
制御手段10は、図1に示すように入力部80と制御部81、データ蓄積部82、演算部83および出力部85を有し、それぞれが電気的に接続された状態とされている。入力部80は、試験室2内に設けられた雰囲気温度センサ25および試料温度センサ26の検知信号を入力可能な構成とされている。また、入力部80には、別途設けられた設定手段20を介して入力された熱疲労評価試験の試験条件等のデータが入力される。さらに具体的には、熱疲労評価装置1は、制御手段10を介して熱疲労評価試験の試験温度、すなわち高温側および低温側の試験温度や、当該試験温度で保持する保持時間、試験環境の切り替え時における温度変化率(温度勾配の絶対値)、試験時間(あるいは試験サイクル数)に関する条件や、雰囲気温度センサ25および試料温度センサ26のどちらの検知信号に基づいて熱疲労評価装置1の動作を制御するか等、熱疲労評価試験に必要な試験条件を設定することができる。入力部80に入力された試験条件等のデータは、データ蓄積部82に記憶される。
【0078】
データ蓄積部82に記憶されている試験条件等のデータや、入力部80を介して入力される試験室2内の温度や試料Wの温度等は、演算部83において演算処理され、制御部81に入力される。制御部81は、演算部83から入力された演算結果や、試験室2内の温度や試料Wの温度等に基づいて冷却部5や加熱部6、送風部7の制御方法やパラメータを決定する。出力部85は、制御部81において決定された制御方法やパラメータに従って制御信号を冷却部5や加熱部6、送風部7に送信し、これらの動作を試験室2内の温度や試料Wの温度が制御手段10を介して設定された通りに調整可能なように制御する。
【0079】
さらに詳細に説明すると、熱疲労評価装置1は、設定手段20を介して設定された試験条件に応じて温調部3において加熱あるいは冷却された空気を試験室2内に送り込み、図4(a)に示すように試験室2内の雰囲気温度や試験室2内に配された試料Wの温度を高温および低温の設定温度(以下、必要に応じて高温設定温度Shおよび低温設定温度Scと称する)に順次切り替えて急激に変化させる温度サイクルを繰り返し実施し、試料Wに熱的ストレスを与えることが可能な構成とされている。
【0080】
熱疲労評価装置1は、雰囲気温度センサ25によって検知される試験室2内の温度に基づいて温調部3の動作を制御する雰囲気温度制御モードと、試料Wに取り付けられた試料温度センサ26の検知温度に基づいて温調部3の動作を制御する試料温度制御モードのいずれかを選択して熱疲労評価試験を実施することができる。また、熱疲労評価装置1は、設定手段20を介して高温設定温度Shや低温設定温度Scに加えて、保持時間T、試験環境の切り替え時における温度変化率U(温度勾配の絶対値)、サイクル数Nおよび動作モードを設定することができる。
【0081】
ここで、本実施形態の熱疲労評価装置1では、高温設定温度Shを60℃〜180℃の範囲内で設定可能とされている。また、低温設定温度Scについては、−70℃〜0℃の範囲で設定可能とされている。
【0082】
保持時間Tは、温度サイクルにおいて高温設定温度Shや低温設定温度Scで試験室2の雰囲気温度や試料Wの温度を保持し、この環境下に試料Wをさらす時間を指す。本実施形態の熱疲労評価装置1において、保持時間Tは、試験室2の雰囲気温度や試料Wの温度(以下、必要に応じて試験環境温度Pと称す)を高温設定温度Shで保持する場合と、試験環境温度Pを低温設定温度Scで保持する場合とで同一の値に設定される。
【0083】
また、温度変化率Uは、試験環境温度Pを高温設定温度Shから低温設定温度Scへ降温させる際、あるいは、低温設定温度Scから高温設定温度Shへと昇温させる際の温度勾配の絶対値を指す。熱疲労評価装置1において、温度変化率Uは、降温時と昇温時とで同一とされている。また、本実施形態の熱疲労評価装置1では、温度変化率Uを毎分1℃〜30℃の範囲内で設定可能とされている。
【0084】
サイクル数Nは、熱疲労評価試験において実施される温度サイクルの実施回数である。さらに詳細には、熱疲労評価装置1では、図4(a)に示すように、試験環境温度Pを高温設定温度Shまで昇温する昇温動作、試験環境温度Pを高温設定温度Shで保持時間Tにわたって維持する高温維持動作、試験環境温度Pを低温設定温度Scまで低下させる降温動作、試験環境温度Pを低温設定温度Scに維持する低温維持動作からなる4つの動作を順次実施する温度サイクルを繰り返し実施する構成とされている。そこで、熱疲労評価装置1は、前記した温度サイクルの実施回数をサイクル数Nとして設定可能な構成とされている。
【0085】
熱疲労評価装置1は、動作モードとして、上記した雰囲気温度制御モードと試料温度制御モードのいずれかを選択することができる。熱疲労評価装置1において、試験方法として雰囲気温度制御モードが選択された場合は、雰囲気温度センサ25の検知信号(検知温度)に基づいて温調部3の動作が制御され、試料温度制御モードが選択された場合は、試料Wに取り付けられた試料温度センサ26の検知信号に基づいて温調部3の動作が制御される。
【0086】
続いて、本実施形態の熱疲労評価装置1の動作について図4のタイミングチャートや図3のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。熱疲労評価装置1は、図4に示すように、上記した昇温動作、高温維持動作、降温動作および低温維持動作からなる4段階の動作を1サイクルとする温度サイクルを所定のサイクル数Nだけ繰り返す。
【0087】
各部の動作についてさらに詳細に説明すると、上記したように、送風部7は、熱疲労評価試験の実施中は常時、毎分40m3(試験室2の容量1リットルに対して毎分約0.27m3)の空気が温度調整された状態で試験室2に導入される構成とされている。一方、冷却部5や加熱部6は、図3に示すように、熱疲労評価試験の実施段階や、予め設定された高温設定温度Sh、低温設定温度Sc、温度変化率U等の条件に基づいて出力が調整される。すなわち、熱疲労評価装置1は、図4や表1に示すように冷却部5や加熱部6の出力を調整して温度サイクルをサイクル数Nにわたって繰り返し実施する構成とされている。
【0088】
【表1】

【0089】
さらに具体的には、温度サイクルが昇温動作の段階にある場合、すなわち試験環境温度Pを高温設定温度Shに向けて昇温させていく過程では、冷却部5の出力が最小限に抑制されると共に、加熱部6の出力が加熱能力の60%〜100%の範囲内で調整される。すなわち、昇温動作の実施中は、表1に示すように低温側冷媒流路37および第1,2バイパス流路50,51に設けられた電磁弁47,56,58がそれぞれ開状態とされる。また、昇温動作の実施中は、低温側冷却器36の上流側に設けられた電子膨張弁46の開度が10%程度に絞られる。これにより、低温側冷媒流路37を流れる冷媒の大部分が低温側冷却器36を迂回することになり、低温側冷却器36の冷却能力が最小限に抑制される。その一方で、昇温動作の実施中は、試験環境温度Pが、先に設定された温度変化率Uで時間の経過に対して所定の誤差範囲(本実施形態では±3.0℃の範囲内)で比例的に変化(昇温)するように加熱部6の加熱能力が調整される。
【0090】
上記したようにして試験環境温度Pが予め設定された高温設定温度Shに到達すると、温度サイクルが高温維持動作の実施段階に移行する。高温維持動作の実施中、すなわち試験環境温度Pが高温設定温度Shに到達してから所定の保持時間Tが経過するまでは、試験環境温度Pを高温設定温度Shに維持すべく、冷却部5の冷却能力が引き続き抑制されると共に、雰囲気温度センサ25や試料温度センサ26の検知温度に基づいて加熱部6の出力が調整される。すなわち、高温維持動作の実施中は、表1に示すように電磁弁47,56,58がそれぞれ開状態とされ、電子膨張弁46の開度が10%程度に絞られる。一方、加熱部6の出力は、試験環境温度Pを高温設定温度Shで維持させるべく、30〜50%の間で調整される。
【0091】
高温維持動作の実施開始から所定の保持時間Tが経過すると、温度サイクルは、降温動作の実施段階に移行する。さらに具体的に説明すると、図4や表1に示すように、降温動作が実施される場合は、制御手段10から冷却部5および加熱部6に制御信号が発信され、それぞれの出力が調整される。すなわち、降温動作が実施される場合は、制御手段10から冷却部5に制御信号が発信され、第2バイパス流路51に設けられた電磁弁58が閉状態とされる。また、第1バイパス流路50に設けられた電磁弁56は、降温動作の開始後しばらくの間、すなわち試験環境温度Pの降温が開始された直後であり、さほど大きな冷却能力が必要とされない間は開状態に維持されるが、その後試験環境温度Pがある程度低下し、大きな冷却能力が必要とされる段階になると閉状態とされる。電磁弁56,58が閉状態とされると、その分だけ低温側冷却系統31を循環している冷媒が多く低温側冷却器36に供給されることとなり、冷却部5の冷却能力が向上する。
【0092】
また、降温動作の実施中は、先に設定された温度変化率Uで試験環境温度Pを低下させるのに必要とされる冷却部5の出力(冷却能力)が制御手段10の演算部83において導出され、これに合わせて制御部81が低温側冷媒流路37の中途に設けられた電子膨張弁46の開度を判断する。そして、この判断に基づいて出力部85から冷却部5に向けて制御信号が発信され、電子膨張弁46の開度が調整される。この時、電子膨張弁46の開度は、50%〜100%の間で推移する。
【0093】
さらに、制御手段10は、降温動作の実施中においても、加熱部6に制御信号を発信し、必要に応じて加熱能力を発揮させる。さらに具体的には、本実施形態では、降温動作の実施中に、加熱部6の出力が0%〜20%の間で調整される。これにより、冷却部5の制御誤差等の要因により冷却部5の冷却能力が過剰に発揮されるなどして試験環境温度Pの低下の程度が先に設定された温度変化率Uから乖離し、急激に低下するのが防止される。さらに具体的には、降温動作中は、試験環境温度Pが、先に設定された温度変化率Uで時間の経過に対して所定の誤差範囲(本実施形態では±3.0℃の範囲内)で比例的に変化(降温)する。
【0094】
降温動作を実施することにより試験環境温度Pが低温設定温度Scに到達すると、温度サイクルは低温維持動作の実施段階に移行する。低温維持動作が開始されると、試験環境温度Pが保持時間Tにわたって低温設定温度Scに保持される。さらに具体的に説明すると、図4や表1に示すように、低温維持動作中は、電磁弁47が開状態に、第1バイパス流路50の電磁弁56が閉状態に維持されるが、第2バイパス流路51の電磁弁58は開状態とされる。これにより、低温側冷媒流路37を循環し、低温側冷却器36に流入する冷媒の量が降温動作の実施中よりも減少する。また、低温維持動作の実施中は、試験環境温度Pを低温設定温度Scで安定させるのに必要な冷却部5の出力(冷却能力)が制御手段10の演算部83において導出され、これに応じて電子膨張弁46の開度が調整される。本実施形態の熱疲労評価装置1において、低温維持動作の実施中は、電子膨張弁46の開度が30%〜50%の間で調整される。
【0095】
制御手段10は、低温維持動作においても加熱部6に制御信号を発信して加熱能力を発揮させ、冷却部5の制御誤差等による試験環境温度Pの変動を最小限に抑制する。さらに具体的には、本実施形態では、低温維持動作の実施中における加熱部6の出力が20%〜30%の間で調整される。
【0096】
熱疲労評価装置1は、図3に示す制御フローに則って試験環境温度Pの調整を行い、上記した温度サイクルをサイクル数Nだけ繰り返す。さらに具体的に説明すると、熱疲労評価装置1により信頼性評価試験(温度サイクル試験)を実施する場合は、先ずステップ1において設定手段20を介して試験条件が設定される。すなわち、ステップ1では、制御手段10を介して上記した高温設定温度Shや低温設定温度Sc、保持時間T、温度変化率U、サイクル数Nおよび動作モードに関する情報が入力部80に入力され、データ蓄積部82に記憶(設定)される。
【0097】
ステップ1において試験条件が設定されると、制御フローがステップ2に移行し、熱疲労評価試験が開始される。すなわち、制御フローがステップ2に移行して熱疲労評価試験が開始されると、制御フローがステップ3に移行し、ステップ1において設定された動作モードに応じて、雰囲気温度センサ25あるいは試料温度センサ26によって検知された試験環境温度Pに関する検知信号が制御手段10の入力部80に入力される。その後、ステップ4で試験環境温度Pに関する検知信号が演算部83に入力され、冷却部5や加熱部6に要求される出力値が演算により導出される。その後、制御フローはステップ5に進められる。
【0098】
制御フローがステップ5に移行すると、制御手段10は、温度サイクル動作の実施状況に応じて、演算部83で演算された結果に基づいて冷却部5や加熱部6の出力調整を行う。すなわち、ステップ5において、制御手段10は、試験環境温度Pの調整に必要な冷却能力を発揮させるべく、冷却部5を構成する膨張弁46の開度や膨張弁55,57の開閉、電磁弁47,56,58,60の開閉を制御する。また、制御手段10は、試験環境温度Pの調整に必要な加熱能力を発揮させるべく、加熱部6の出力を調整する。
【0099】
ステップ5において冷却部5や加熱部6の出力が調整されると、制御フローがステップ6に移行し、試験終了のタイミングに達しているか否かが確認される。すなわち、制御フローのステップ6では、上記した温度サイクルがステップ1において設定されたサイクル数Nだけ完了したか否かが確認される。ステップ6において熱疲労評価装置1が試験終了のタイミングに達していないと判断された場合は、制御フローがステップ3に戻され、熱疲労評価試験が引き続き実施される。一方、ステップ6において、既に温度サイクルがサイクル数N分だけ実施されていると判断された場合は、図3に示す一連の制御フローが完了し、熱疲労評価試験が完了する。
【0100】
上記したように、昇温動作や降温動作において、試験環境温度Pを時間に対して所定の誤差範囲内(±3℃)で比例するように変化させて温度サイクル試験を実施すれば、試料Wがクリープ変形等を起こす状態を忠実に再現することができる。
【0101】
上記したように、本実施形態の熱疲労評価装置1では、冷却部5として多元冷凍方式の冷却回路30を備えた構成とされている。そして、冷却回路30を構成する気体冷却用の低温側冷却系統31にバイパス流路50〜52が設けられており、電磁弁56,58,60を開くことにより低温側冷却器36を迂回するように冷媒を流すことが可能な構成とされている。また、低温側冷却系統31は、低温側冷媒流路37の中途に設けられた電子膨張弁46の開度を調整することにより、低温側冷却器36に流入する冷媒の量を調整し、気体の冷却能力を調整できる構成とされている。そのため、熱疲労評価装置1では、冷却部5や加熱部6の出力調整を行うことにより試験環境温度Pを精度良く調整することができる。また特に、熱疲労評価装置1によれば、温度サイクルの昇温動作時や降温動作時における試験環境温度Pの変化の割合についても、予め設定された温度変化率Uに則って精度よく調整できる。従って、熱疲労評価装置1によれば、試料Wのクリープ変形等を精度良く再現することができる。
【0102】
また、本実施形態の熱疲労評価装置1では、送風部7を構成する送風機を作動させることにより、試料Wの近傍において少なくとも風速2m/秒以上の空気を温度調整した状態で供給可能な構成とされており、温度サイクル試験の実施時に、毎分40m3(試験室2の容量1リットルに対して毎分約0.27m3)もの空気が温調部3において温度調整された状態で試験室2内に送り込まれる。さらに、熱疲労評価装置1は、温度サイクル試験中に実施される昇温動作や降温動作において、試験環境温度Pを所定の温度変化率Uで、時間に対して比例的に昇温あるいは降温させることが可能な構成とされている。そのため、熱疲労評価装置1では、予め設定された温度変化率Uに則って試験環境温度Pをスムーズに変化させることができ、試料Wのクリープ変形等を再現するのに適した状態とすることができる。従って、熱疲労評価装置1によれば、試料Wの温度ストレスに対する温度サイクル試験(熱疲労評価試験)を迅速かつ精度良く実施することができる。
【0103】
本実施形態の熱疲労評価装置1は、試験室2に温度調整された空気を導入することにより試験環境温度Pを調整するものであるため、複数の試料Wの温度サイクル試験を一度に実施することができる。
【0104】
上記実施形態では、温度サイクル試験の実施中に、試験室2のほぼ全体にわたって風速2m/秒以上の空気を温度調整して試験室2内に導入可能な構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、試料のごく近傍のみ2m/秒以上の空気を供給可能な構成であったり、この範囲を上回る量の空気を試験室2内に導入可能な構成であってもよい。
【0105】
また、熱疲労評価装置1によって温度サイクル試験を実施すれば、試験環境温度Pの変化の割合(温度変化率U)を精度良く調整でき、ひずみ速度と試料Wの強度との相関関係について正確に把握することができる。そのため、熱疲労評価装置1によって温度サイクル試験を実施すれば、試験の再現性が高く、別々に実施された試験の結果を示すデータ同士を精度良く比較することができる。
【0106】
上記した熱疲労評価装置1は、試験環境温度Pを高温設定温度Shから低温設定温度Sc、あるいは、低温設定温度Scから高温設定温度Shに切り替える際、すなわち昇温動作時あるいは降温動作時における温度変化率Uを設定可能であり、この温度変化率U通りに試験環境温度Pを変化させることができる。そのため、熱疲労評価装置1によれば、試験環境温度Pをクリープ変形等の再現に適した状態に調整でき、試料Wの温度サイクル試験を精度良く実施できる。
【0107】
また、本実施形態の熱疲労評価装置1では、昇温動作時と降温動作時とで温度変化率Uが同一とされている。そのため、熱疲労評価装置1によれば、クリープ変形等の再現に適した状態で試料Wに温度ストレスを付与することができ、信頼性の高い温度サイクル試験を実施することができる。
【0108】
上記実施形態では、昇温動作時と降温動作時とで温度変化率Uを同一とする構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば試料Wのクリープ変形等を再現する上で影響のない程度の範囲内で昇温動作時と降温動作時とで温度変化率Uが異なる構成としてもよい。また、熱疲労評価装置1は、昇温動作時の温度変化率Uと降温動作時の温度変化率Uとを別々に設定可能な構成とし、必要に応じて異なる値に設定可能な構成としてもよい。
【0109】
上記したように、熱疲労評価装置1では、試験環境温度Pを予め設定された試験条件通りに調整すべく、制御手段10において冷却部5および加熱部6に要求される冷却能力や加熱能力を演算して導出し、この結果に基づいて冷却部5や加熱部6の出力を調整する構成とされている。ここで、本実施形態の熱疲労評価装置1では、制御手段10による冷却部5の冷却能力や加熱部6の加熱能力についての演算処理が、1秒以下のごく短い周期で実施されている。そのため、熱疲労評価装置1は、冷却部5や加熱部6の出力調整を緻密に調整することができ、試験環境温度Pを精度良く調整できる。
【0110】
なお、上記実施形態では、制御手段10による冷却部5や加熱部6の出力についての演算処理を1秒以下の周期で実施する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、これよりも長い周期で前記したような演算処理を実施する構成としてもよい。
【0111】
上記実施形態では、高温維持動作時の保持時間Tと、低温維持動作時の保持時間Tとが同一の値に設定される構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、それぞれ別々の値に設定可能な構成としてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、温度サイクル試験において、試験環境温度Pを高温設定温度Shあるいは低温設定温度Scで保持する高温維持動作や低温維持動作を実施する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、高温維持動作や低温維持動作を省略、すなわち保持時間Tをゼロとしてもよい。
【0113】
上記実施形態では、温度サイクルが図4のように昇温動作から始まる構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば温度サイクルが降温動作から始まる一連の動作(降温動作→低温維持動作→昇温動作→高温維持動作)によって構成されていてもよい。
【0114】
上記実施形態では、雰囲気温度センサ25によって検知される試験室2内の雰囲気温度、あるいは、試料温度センサ26によって検知される試料W自体の温度を試験環境温度Pとみなして冷却部5や加熱部6の動作を制御する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば雰囲気温度センサ25および試料温度センサ26の双方の検知温度を所定の演算式に代入して得られる値を試験環境温度Pとしたり、条件に応じて雰囲気温度センサ25および試料温度センサ26のいずれか一方の検知温度を試験環境温度Pとして採用する構成としてもよい。
【0115】
熱疲労評価装置1は、温調部3において温度が調整された空気を試験室2に供給する構成を例示したが、空気に代わって他の気体を温度調整して試験室2に供給する構成としてもよい。
【0116】
上記実施形態では、冷却回路30に設けられた電子膨張弁46や電磁弁47,56,58,60を調整して低温側冷却器36に流入する冷媒の量を調整して低温側冷却器36の冷却能力を調節する構成であったが、本発明はこれに限定されるものではない。さらに具体的には、熱疲労評価装置1は、例えば低温側圧縮機41の出力を調整したり、低温側圧縮機41を低温側冷却系統31に複数設け、その作動台数を調整して冷却能力を調整してもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、冷却部5が単一の冷却回路30によって構成されたものであったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば冷却回路30に相当するものを複数設け、空気の冷却に必要とされる冷却能力に応じて作動する冷却回路30の数を調整する構成としてもよい。
【0118】
上記した冷却部5は、冷却回路30を低温側冷却系統31および高温側冷却系統32をカスケードコンデンサ35を介して熱的に接続した構成であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばカスケードコンデンサ35等を用いてさらに多段階に冷却系統を熱的に接続した構成としたり、低温側冷却系統31をカスケードコンデンサ35を用いて高温側冷却系統32に熱的に接続する代わりに、カスケードコンデンサ35に相当する位置に凝縮器を配置した、単一の冷却系統のみからなる構成としてもよい。
【0119】
上記実施形態では、一連の温度サイクル動作において、昇温動作が完了したタイミングから高温維持動作に移行したり、降温動作が完了したタイミングから低温維持動作に移行する例を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば昇温動作や降温動作が完了したタイミングから所定の遅延時間を経た後に高温維持動作や低温維持動作に移行する構成としてもよい。かかる構成によれば、高温維持動作や低温維持動作の実施時に試料が高温設定温度Shや低温設定温度Scの環境下にさらされる時間を確実に保持時間T以上とすることができ、熱疲労評価試験の精度をより一層向上させることができる。
【0120】
上記した熱疲労評価装置1は、温度変化率Uを毎分1℃〜30℃の範囲内で設定可能とされているが、熱疲労評価方法を実施する場合において、温度変化率Uを毎分5℃〜20℃の範囲で比例するように設定し、変化させれば、温度サイクル試験の精度を確保しつつ、温度サイクル試験に要する期間を最小限に抑制することができる。
【0121】
上記した熱疲労評価装置1は、温度変化率Uを毎分1℃〜30℃の範囲内で設定可能とされているが、温度変化率Uを毎分5℃〜20℃の範囲で比例するように設定し、変化させることが可能な構成であってもよい。かかる構成によっても、上記実施形態の熱疲労評価装置1と同等の精度で温度サイクル試験を実施可能であると共に、温度サイクル試験に要する期間を最小限に抑制することができる。
【実施例1】
【0122】
続いて、上記した熱疲労評価装置1によって温度サイクル試験を実施した場合、および、従来技術の冷熱サイクル試験装置によって冷熱サイクル試験を実施した場合における試料Wの温度変化の様子を比較した試験結果について説明する。
【0123】
図5は、それぞれ熱疲労評価装置1および従来技術の冷熱サイクル試験装置を下記の試験条件で作動させた場合における試料Wの温度変化を示すグラフである。なお、従来技術の冷熱サイクル試験装置は、温度変化率Uを設定できない。
試験条件 低温設定温度Sc = −40℃
高温設定温度Sh = 125℃
温度変化率U = 10℃/分
【0124】
熱疲労評価装置1により温度サイクル試験を実施した場合は、図5に示すように、昇温動作および降温動作の際の温度変化(温度勾配)を略均一とすることができた。また、熱疲労評価装置1により温度サイクル試験を実施した場合は、試料Wの温度(試験環境温度P)の誤差が±2℃の範囲内にあり、極めて安定していた。
【0125】
一方、従来技術の冷熱サイクル試験装置により冷熱サイクル試験を実施した場合は、図5に示すように、昇温動作および降温動作の際の温度変化が不均一であった。また、従来技術の冷熱サイクル装置により試験を実施した場合は、試料Wの温度(試験環境温度P)が急激に変化したり、変化がゆるやかになるなどして不安定であった。
【実施例2】
【0126】
続いて、上記した熱疲労評価装置1によって温度サイクル試験を実施した場合において、昇温動作における温度変化率U(以下、昇温変化率U1と称す)と、降温動作における温度変化率U(以下、降温変化率U2と称す)とを同一とした場合の試験結果について説明する。
【0127】
本実施例では、図6に示すようにプリント基板90上に銅製の電気回路パターン91をろう付けし、さらにこの電気回路パターン91上に電子部品92を半田93でろう付けしたものを試料Wとし、下記の試験条件で温度サイクル試験を実施した。本実施例の温度サイクル試験で採用した試料Wを構成するプリント基板90の熱膨張率は、60〜80[ppm/℃]であり、電気回路パターン91の熱膨張率は、17[ppm/℃]である。また、電子部品92の熱膨張率は、8[ppm/℃]であり、半田93の熱膨張率は25[ppm/℃]である。
試験条件 高温設定温度Sh = +125℃
低温設定温度Sc = −40℃
昇温変化率U1 = 16℃/分
降温変化率U2 = 16℃/分
保持時間T = 20分
サイクル数N = 3000
【0128】
上記条件で温度サイクル試験を実施することにより半田93が破断した部分を拡大した電子顕微鏡写真(図7(a)参照)と、実際に試料Wを使用することにより半田93が破断した部分を拡大した電子顕微鏡写真(図7(b)参照)とを比べると、両者がほぼ同一の劣化状態であることが判明した。従って、熱疲労評価装置1により温度サイクル試験を実施すれば、試料Wを構成する半田93が実際に変形したり破断する様子を忠実に再現できることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の一実施形態にかかる熱疲労評価装置の構成を模式的に示す概念図である。
【図2】図1に示す熱疲労評価装置において採用されている冷却系統の作動原理図である。
【図3】図1に示す熱疲労評価装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す熱疲労評価装置の動作状態を示すタイミングチャートであり、(a)は試験環境温度の推移を示すタイミングチャートであり、(b)は冷却部の出力の推移を示すタイミングチャート、(c)は電子膨張弁の開度の推移を示すタイミングチャート、(d)は加熱部の出力の推移を示すタイミングチャートである。
【図5】図1に示す熱疲労評価装置による温度サイクル試験および従来技術の冷熱サイクル試験装置による冷熱サイクル試験を実施した際の試験環境温度の推移を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例で採用した試料の構成を示す模式図である。
【図7】(a)は温度サイクル試験を実施することにより半田が破断した部分を拡大した電子顕微鏡写真であり、(b)は実際に試料を使用することにより半田が破断した部分を拡大した電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0130】
1 熱疲労評価装置
2 試験室
3 温調部(温調手段)
5 冷却部(冷却手段)
6 加熱部(加熱手段)
7 送風部(送風手段)
10 制御手段
25 雰囲気温度センサ
26 試料温度センサ
30 冷却系統
31 低温側冷却系統
32 高温側冷却系統
35 カスケードコンデンサ
36 低温側冷却器
37 低温側冷媒流路
41 低温側圧縮機
46 膨張弁(流量可変膨張弁、電子膨張弁)
47,60 電磁弁
56 電磁弁(第1のバイパス弁)
58 電磁弁(第2のバイパス弁)
50,51,52 バイパス流路
65 高温側冷媒流路
83 演算部
W 試料
Sh 高温設定温度
Sc 低温設定温度
U 温度変化率
P 試験環境温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電機部品や材料等の試料の熱膨張係数の差に起因する熱応力及びクリープ変形による熱疲労評価方法であって、
試料がさらされる気体の温度を調整することにより、試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度まで、時間に対して所定の誤差範囲内で比例するように変化させる昇温動作と、
試料がさらされる気体の温度を調整することにより、試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度まで、時間に対して所定の誤差範囲内で比例するように変化させる降温動作とを含む温度サイクル動作を所定の周期で実施することを特徴とする熱疲労評価方法。
【請求項2】
温度サイクル動作が、昇温動作の後、試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度に維持する高温維持動作と、
降温動作の後、試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度に維持する低温維持動作とを含むことを特徴とする請求項1に記載の熱疲労評価方法。
【請求項3】
室温より低温の設定温度を−70℃〜0℃の範囲で設定し、
室温より高温の設定温度を60℃〜180℃の範囲で設定し、
昇温動作および降温動作の実施時に試料がさらされる雰囲気温度、あるいは、試料の温度を毎分1℃〜30℃の範囲で比例するように設定し、変化させることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱疲労評価方法。
【請求項4】
昇温動作および降温動作の実施時に試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度の誤差範囲が+5℃〜−5℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱疲労評価方法。
【請求項5】
昇温動作および降温動作の実施時に試料がさらされる雰囲気温度の温度変化の割合、あるいは、試料の温度変化の割合を、昇温動作を実施する際と降温動作を実施する際とで実質的に同一とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱疲労評価方法。
【請求項6】
試料を所定の試験室内に配置し、当該試験室内に温度調整された気体を供給することにより、試料がさらされる雰囲気温度及び/又は試料の温度が調整され、
試料の近傍における風速が少なくとも2m/秒以上となるように調整されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の熱疲労評価方法。
【請求項7】
試料を収容可能な試験室と、当該試験室内に供給される気体の温度を調整する温調手段と、試験室に気体を供給可能な送風手段とを有し、
温調手段において温度調整された気体を試験室に導入することにより、試料が収容されている試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度、あるいは、室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度に切り替え可能な熱疲労評価装置であって、
試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を−70℃〜180℃の範囲内で調整可能であり、
試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度に切り替える昇温動作と、
試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度に維持する高温維持動作と、
試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度に切り替える降温動作と、
試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度に維持する低温維持動作とを含む温度サイクル動作を実施可能であり、
試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度変化の割合を毎分1℃〜30℃の範囲で比例するように設定し、所定の誤差範囲内で変化させることが可能であり、
高温維持動作および低温維持動作の実施時間を設定可能であり、
温度サイクル動作の繰り返し回数を1回以上に設定可能であり、
昇温動作および降温動作の実施時に試料がさらされる雰囲気温度、あるいは、試料の温度の変化の割合を毎分1℃〜30℃の範囲で設定可能であることを特徴とする熱疲労評価装置。
【請求項8】
温調手段として、前記試験室内に供給される気体を冷却可能な冷却手段と、前記気体を加熱可能な加熱手段とを備えたものが採用されており、
前記冷却手段が、冷媒が流れる冷媒流路と冷却器とを備え、当該冷却器により試験室に供給される気体を冷却可能な気体冷却用の冷却系統を備えたものであり、
当該気体冷却用の冷却系統が、冷媒流路を流れる冷媒を前記冷却器を迂回をするように流すことが可能なバイパス流路を有し、当該バイパス流路側に迂回する冷媒の量を調整することにより冷却器に供給される冷媒の量を調整可能なものであり、
試験室内の雰囲気温度の変化及び/又は試料の温度変化に応じて前記気体冷却用の冷却系統においてバイパス流路側に迂回する冷媒の量を調整して冷却手段の冷却能力を調整しつつ、試験室内の雰囲気温度の設定値及び/又は試料の温度の設定値に対する過剰に冷却された分の熱量を補足するように加熱手段を作動させるものであることを特徴とする請求項7に記載の熱疲労評価装置。
【請求項9】
高温維持動作が、昇温動作によって室温より高温の設定温度に到達した時点から所定の遅延時間を経た後に開始され、
低温維持動作が、降温動作によって室温より低温の設定温度に到達した時点から所定の遅延時間を経た後に開始されることを特徴とする請求項8に記載の熱疲労評価装置。
【請求項10】
温調手段として、前記試験室内に供給される気体を冷却可能な冷却手段と、前記気体を加熱可能な加熱手段とを備えたものが採用されており、
前記冷却手段が、冷媒が流れる冷媒流路と冷却器とを備え、当該冷却器により試験室に供給される気体を冷却可能な気体冷却用の冷却系統を備えたものであり、
当該気体冷却用の冷却系統が、圧縮機と、冷媒流路を流れる冷媒を前記冷却器を迂回をするように流すことが可能な第1及び第2のバイパス流路と、前記冷媒流路に設けられ、冷却器に流入する冷媒の量を調整可能な流量可変膨張弁と、前記第1のバイパス流路を開閉可能な第1のバイパス弁と、前記第1のバイパス流路に設けられ、冷却系統を流れる冷媒の温度に応じて開閉あるいは開度が変化する温度式膨張弁と、前記第2のバイパス流路を開閉可能な第2のバイパス弁と、前記第2のバイパス流路に設けられ、冷却負荷の変動にあわせて容量を調整する容量膨張弁とを備えており、
前記流量可変膨張弁を調整することにより、冷却器に供給される冷媒の量を調整可能であり、
試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度に切り替える昇温動作と、
試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度に維持する高温維持動作と、
試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度に切り替える降温動作と、
試験室内の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度に維持する低温維持動作とを含む温度サイクル動作を実施可能であり、
昇温動作時に、第1,2のバイパス弁が開状態とされ、流量可変膨張弁の開度が10%以下に調整された状態で、加熱手段の出力が60〜100%の範囲内で調整され、
高温維持動作時に、第1,2のバイパス弁が開状態とされ、流量可変膨張弁の開度が10%以下に調整された状態で、加熱手段の出力が30〜50%の範囲内で調整され、
降温動作時に、第1,2のバイパス弁が閉状態とされ、流量可変膨張弁の開度が50〜100%の範囲内で調整されると共に、加熱手段の出力が0〜20%の範囲内で調整され、
低温維持動作時に、第1のバイパス弁が閉状態とされ、第2のバイパス弁が開状態とされると共に、流量可変膨張弁の開度が30〜50%の範囲内で調整され、加熱手段の出力が20〜30%の範囲内で調整されることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の熱疲労評価装置。
【請求項11】
試験室の雰囲気温度の設定値、あるいは、試料の温度の設定値の切り替え時における温度変化の割合を設定可能であり、
当該温度変化の割合の設定値と、試験室の雰囲気温度の設定値及び/又は試料の温度の設定値とに基づいてバイパス流路側に迂回する冷媒の量が調整されることを特徴とする請求項7〜10のいずれかに記載の熱疲労評価装置。
【請求項12】
試料の近傍における風速が少なくとも2m/秒以上となるように気体を供給可能であることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の熱疲労評価装置。
【請求項13】
試料が収容されている試験室の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度から室温より高温の設定温度に切り替える昇温動作と、
試料が収容されている試験室の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度に維持する高温維持動作と、
試料が収容されている試験室の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より高温の設定温度から室温より低温の設定温度に切り替える降温動作と、
試料が収容されている試験室の雰囲気温度及び/又は試料の温度を室温より低温の設定温度に維持する低温維持動作とを順に実施する温度サイクル試験を実施可能であり、
温度変化の割合が、昇温動作を実施する際と降温動作を実施する際とで実質的に同一であることを特徴とする請求項7〜12のいずれかに記載の熱疲労評価装置。
【請求項14】
昇温動作および降温動作の実施時における試験室の雰囲気温度、及び/又は、試料の温度の誤差を、試験室の雰囲気温度の設定値、及び/又は、試料の温度の設定値に対して+5℃〜−5℃の範囲内で調整可能であることを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の熱疲労評価装置。
【請求項15】
試験室の雰囲気温度、あるいは、試料の温度を検出し、当該温度に基づいて加熱手段および冷却手段に要求される加熱能力および冷却能力を演算して導出し、当該演算結果に基づいて加熱手段および冷却手段の出力値を調整するものであり、
前記演算が1秒以下の周期で実施されることを特徴とする請求項7〜14のいずれかに記載の熱疲労評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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