説明

熱硬化性成形材料および成形品

【課題】植物由来率を高くできる上に、成形性が高く、しかも耐熱性および機械的物性に優れた成形品が得られる熱硬化性成形材料を提供する。
【解決手段】本発明の熱硬化性成形材料は、下記式(1)で表わされるフェノール化合物(A)を含有する糖反応型フェノール樹脂と、該糖反応型フェノール樹脂を硬化させる硬化剤と、植物由来フィラーとを含有する。(式(1)におけるR,Rは、各々独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、クミル基、ヒドロキシクミル基のいずれかである。)
[化1]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェノール樹脂を含有する熱硬化性成形材料に関する。また、熱硬化性成形材料を成形して得た成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への配慮から、石油や石炭等から得た原料の代わりに、再生可能な植物由来の成分を原料とした、いわゆるバイオマス樹脂の開発が進められている。
植物由来の原料を使用したプラスチックとしては、熱可塑性であるポリ乳酸が広く知られている。しかしながら、植物由来の熱可塑性プラスチックは耐熱性が低く、利用分野が限られるという問題を有していた。
そこで、耐熱性の向上を目的として、植物由来材料を用いた熱硬化性のプラスチックが提案されている。例えば、特許文献1では、フェノール類と砂糖類及び澱粉類の混合物とを、酸性触媒の存在下で反応させて得たフェノール樹脂が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載のフェノール樹脂は溶融粘度が高いため、特許文献1に記載のフェノール樹脂に硬化剤およびフィラーを配合して熱硬化性成形材料として使用すると、成形性が不充分になった。
【0003】
特許文献2,3には、フェノールと木材等のバイオマス材料とを反応させて得たバイオマスフェノールと、木粉等の植物由来のフィラーとを含有する熱硬化性成形材料が開示されている。特許文献2,3に記載のバイオマスフェノールは分子量が大きいため、溶融粘度が高く、成形性が不充分であり、また、吸水率および成形収縮率が大きい傾向にあった。そのため、特許文献2では、融点100℃以下の化合物を配合して成形性を調整し、特許文献3では、石油化学由来のフェノール樹脂を配合して吸水率および成形収縮率の改善を図っている。
しかしながら、特許文献2,3に記載の熱硬化性成形材料では、剛性等の機械的物性が不足することがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−248040号公報
【特許文献2】特開2004−352978号公報
【特許文献3】特開2009−221279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、植物由来率を高くできる上に、成形性が高く、しかも耐熱性および機械的物性に優れた成形品が得られる熱硬化性成形材料を提供することを目的とする。また、植物由来率を高くできる上に、耐熱性、機械的物性に優れる成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の熱硬化性成形材料は、下記式(1)で表わされるフェノール化合物(A)を含有する糖反応型フェノール樹脂と、該糖反応型フェノール樹脂を硬化させる硬化剤と、植物由来フィラーとを含有することを特徴とする。
(式(1)におけるR,Rは、各々独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、クミル基、ヒドロキシクミル基のいずれかである。)
【0007】
【化1】

【0008】
本発明の成形品は、上記熱硬化性成形材料が成形され、加熱硬化されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱硬化性成形材料は、植物由来率を高くできる上に、成形性が高く、しかも耐熱性および機械的物性に優れた成形品が得られる。
本発明の成形品は、植物由来率を高くできる上に、耐熱性、機械的物性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<熱硬化性成形材料>
本発明の熱硬化性成形材料は、糖反応型フェノール樹脂と硬化剤と植物由来フィラーとを含有する。
【0011】
(糖反応型フェノール樹脂)
糖反応型フェノール樹脂とは、酸性触媒存在下、フェノール類と糖質類との反応により得られる組成物である。本発明で使用される糖反応型フェノール樹脂には、上記式(1)で表わされるフェノール化合物(A)が含まれる。
フェノール化合物(A)は、フェノール類とヒドロキシメチルフルフラールとの反応により得られたものである。ヒドロキシメチルフルフラールは、例えば、糖質類を適切な酸性条件にすること、あるいは糖質類を適切な温度で熱分解することで得られる。糖反応型フェノール樹脂を得るために酸性触媒存在下でフェノール類と糖質類とを反応させる際には、糖質類からヒドロキシメチルフルフラールが生成することが多い。そのため、この反応時に生成したヒドロキシメチルフルフラールを用いてフェノール化合物(A)を得ることができる。しかし、別途合成したヒドロキシメチルフルフラールをフェノール類に反応させてフェノール化合物(A)を得ても構わない。
また、フェノール化合物(A)としては、フェノール類と糖質類との反応とは別に合成したものを添加しても構わない。
【0012】
糖反応型フェノール樹脂におけるフェノール化合物(A)以外の成分としては、フェノール化合物(A)にさらにフェノール類および/または糖質類が反応した化合物が挙げられる。例えば、フェノール化合物(A)に1分子のフェノールが反応したもの、フェノール化合物(A)に1分子のヒドロキシメチルフルフラールが反応したもの、フェノール化合物(A)に1分子のフェノールと1分子のヒドロキシメチルフルフラールが反応したもの、フェノール化合物(A)に2分子以上のフェノールが反応したもの、フェノール化合物(A)に2分子以上のヒドロキシメチルフルフラールが反応したもの、フェノール化合物(A)に2分子以上のフェノールと2分子以上のヒドロキシメチルフルフラールが反応したものなどが挙げられる。
反応の際に、ホルムアルデヒドを共存させる場合には、一部のフェノールはホルムアルデヒドを介してフェノール化合物(A)に反応する。また、フェノール同士がアルデヒドを介して結合したものも生成する。
糖反応型フェノール樹脂中のフェノール化合物(A)量を増やすためには、フェノール類と糖質類との反応における酸性触媒量および反応温度を後述する好ましい範囲にすればよい。
【0013】
式(1)におけるフェノール部位のR,Rは、各々独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基等)、ハロゲン基(例えば、ブロモ基等)、フェニル基、クミル基、ヒドロキシクミル基のいずれかである。
上記の中でも、フェノール化合物(A)が容易に得られる点では、水素原子、アルキル基、ヒドロキシクミル基が好ましく、R,Rの一方が水素原子で、他方が水素原子、アルキル基、ヒドロキシクミル基のいずれかであることがより好ましい。
フェノール化合物(A)において、フルフラール部位を有する置換基は、フェノール部位のヒドロキシ基に対してパラ位またはオルト位に結合していることが好ましい。
【0014】
糖反応型フェノール樹脂を得るために用いるフェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ブチルクレゾール、フェニルフェノール、クミルフェノール、メトキシフェノール、ブロモフェノール、ビスフェノールA、レゾルシノール、カテコールなどが挙げられる。
これらの中でも、反応性が高く、しかも入手容易な点で、フェノール、クレゾール、キシレノール、ビスフェノールA、レゾルシノールが好ましい。
【0015】
糖質類としては、酸性条件下でヒドロキシメチルフルフラールを生成しやすく、フェノール化合物(A)が得られやすいことから、フルクトース、フルクトースを含有する糖類が好適に用いられる。フルクトース含有糖類としては、具体的には、異性化糖が挙げられる。
また、フルクトースを含有しない糖質類であっても、pH条件または温度条件によってはフルクトースを生成する場合があるため、糖質類として、フルクトースを含まない糖質類を用いることができる場合もある。また、フェノール化合物(A)を別途添加する場合も、フルクトースを含まない糖質類を用いることができる。
フルクトースを含まない糖質類としては、単糖類、2糖類、3糖類、少糖類、多糖類のいずれであってもよい。具体的には、グルコース、マンノース、ガラクトース、アラビノース、キシロース、マルトース、イソマルソース、ラクトース、スクロース、トレハロース、ラフィノース、ショ糖、デキストリン、オリゴ糖、フラクタン、フラクトオリゴ糖、澱粉、粗澱粉、アミロース、アミロペクチン、廃棄糖蜜(澱粉かす)などが挙げられる。これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、糖質類としては、澱粉液化処理液を用いることもできる。澱粉液化処理液も、酸性条件下でヒドロキシメチルフルフラールを生成しやすく、フェノール化合物(A)が得られやすい。澱粉を液化処理する方法としては、例えば、水溶液化した澱粉を酸または酵素によって糖化する方法などが挙げられる。糖化に使用できる酸としては、例えば、硫酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸などが挙げられ、酵素としては、例えば、アミラーゼ、グルコシダーゼ、イソメラーゼなどが挙げられる。
【0016】
糖質類は、フルクトースを、糖質類の固形分全体を100質量%とした際に5質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、55質量%以上含有することが特に好ましい。さらには、糖質類の100質量%がフルクトースであることが最も好ましい。糖質類がフルクトースを5質量%以上含有すれば、フェノール化合物(A)を充分量形成できる。
【0017】
糖反応型フェノール樹脂を得る際の糖質類とフェノール類との質量比率は、糖質類を1とした際にフェノール類が2〜20倍であることが好ましく、3〜6倍であることがより好ましい。フェノール類が糖質類の2倍以上であれば、反応率を高くして収率を高くできる上に分子量を高くでき、20倍以下であれば、得られる糖反応型フェノール樹脂について充分な植物由来率を確保できる。
【0018】
糖質類とフェノール類とを反応させる際には、酸性触媒が用いられる。酸性触媒としては、例えば、鉱酸類(例えば、塩酸、硫酸等)、有機酸類(例えば、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸等)などが使用される。
酸性触媒の使用量は、糖質類の固形分とフェノール類との合計を100質量%とした際に0.1〜50質量%であることが好ましく、0.2〜10質量%であることがより好ましい。酸性触媒の使用量が0.1質量%以上であれば、充分な量のフェノール化合物(A)を生成でき、50質量%以下であれば、酸分解やゲル化を抑制できる。
【0019】
反応温度は20〜200℃であることが好ましく、120〜160℃であることがより好ましい。反応温度が20℃以上であれば、充分に反応させることができ、200℃以下であれば、分解を抑制できる。
反応時間は0.5〜20時間であることが好ましく、1〜3時間であることがより好ましい。反応時間が0.5時間以上であれば、高い収率で糖反応型フェノール樹脂を得ることができ、20時間以下であれば、生産性の低下を抑制できる。
【0020】
糖反応型フェノール樹脂の軟化点は70〜150℃であることが好ましく、80〜140℃であることがより好ましい。糖反応型フェノール樹脂の軟化点が70℃以上であれば、耐熱性が向上し、150℃以下であれば、該熱硬化性成形材料から得た成形品の機械的特性および成形性を実用的なものとすることができる。
糖反応型フェノール樹脂の軟化点は、フェノール化合物(A)の含有量によって調整することができる。フェノール樹脂の軟化点を70〜150℃にするためのフェノール化合物(A)の含有量は、フェノール化合物(A)のR,Rの種類によって異なるため、一概には言えないが、フェノール化合物(A)の含有量が多くなる程、軟化点が低くなる。軟化点を70℃以上にするためには、フェノール化合物(A)の含有量を、フェノール樹脂全体を100質量%とした際の50質量%以下にすることが好ましい。
【0021】
糖反応型フェノール樹脂におけるフェノール化合物(A)の含有量は、糖反応型フェノール樹脂全体を100質量%とした際の1〜50質量%であることが好ましく、3〜35質量%であることがより好ましく、5〜25質量%であることが特に好ましい。糖反応型フェノール樹脂におけるフェノール化合物(A)の含有量が1質量%以上であれば、熱硬化性成形材料の成形性をより向上させることができ、50質量%以下であれば、熱硬化性成形材料から得た成形品の耐熱性を高めることができる。
糖反応型フェノール樹脂中のフェノール化合物(A)を、糖反応型フェノール樹脂全体を100質量%とした際の1〜50質量%にするためには、例えば、反応の際、糖質類を1とした際にフェノール類量を2〜20倍(質量基準)にすればよい。
【0022】
(ノボラック型フェノール樹脂)
本発明の熱硬化性成形材料は、ノボラック型フェノール樹脂を含有してもよい。ここで、ノボラック型フェノール樹脂とは、酸性触媒の存在下でフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得たフェノール樹脂のことである。
ノボラック型フェノール樹脂を得るために用いるフェノール類としては、糖反応型フェノール樹脂を得るために用いるフェノール類と同様のものが挙げられる。
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、フルフラール等が挙げられる。
【0023】
糖反応型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂との質量比率(糖反応型フェノール樹脂/ノボラック型フェノール樹脂)は100/0〜10/90であることが好ましく、100/0〜30/70であることがより好ましい。糖反応型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂との質量比率(糖反応型フェノール樹脂/ノボラック型フェノール樹脂)が10/90以上であれば、熱硬化性成形材料の植物由来率をより高くできる。
【0024】
(硬化剤)
硬化剤は、上記糖反応型フェノール樹脂を硬化させるものである。熱硬化性成形材料がノボラック型フェノール樹脂を含有する場合には、該硬化剤はノボラック型フェノール樹脂も硬化させる。
硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、レゾール型フェノール樹脂を用いることができる。
ここで、レゾール型フェノール樹脂とは、アルカリ性触媒の存在下でフェノール類とアルデヒド類とを反応させて得たフェノール樹脂のことである。
レゾール型フェノール樹脂を得るために用いるフェノール類としては、糖反応型フェノール樹脂を得るために用いるフェノール類と同様のものが挙げられる。レゾール型フェノール樹脂を得るために用いるアルデヒド類としては、ノボラック型フェノール樹脂を得るために用いるアルデヒド類と同様のものが挙げられる。アルカリ性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0025】
硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを用いた場合、ヘキサメチレンテトラミンの含有量は、糖反応型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂の合計100質量部に対して1〜40質量部であることが好ましく、3〜30質量部であることがより好ましい。 ヘキサメチレンテトラミンの含有量が1質量部以上であれば、熱硬化性材料の硬化性に優れ、40質量部以下であれば、機械的物性をより高くできる。
【0026】
硬化剤としてレゾール型フェノール樹脂を用いた場合、糖反応型フェノール樹脂およびノボラック型フェノール樹脂の合計とレゾール型フェノール樹脂との質量比率(糖反応型フェノール樹脂およびノボラック型フェノール樹脂/レゾール型フェノール樹脂)は90/10〜10/90であることが好ましく、80/20〜20/80であることがより好ましい。糖反応型フェノール樹脂およびノボラック型フェノール樹脂の合計とレゾール型フェノール樹脂との質量比率が90/10以下かつ10/90以上であれば、熱硬化性材料の硬化性が高くなる。
【0027】
(植物由来フィラー)
植物由来フィラーとしては、例えば、木粉、籾粉、綿粉、竹粉、胡桃殻粉、紙粉、竹繊維、ケナフ繊維等が挙げられる。これらの中でも、機械的物性の向上効果が大きく、また、入手が容易であることから、木粉が好ましい。
植物由来フィラーが粒子状である場合、その平均粒子径は0.1〜1000μmであることが好ましい。ここで、平均粒子径は、二軸平均展開径である。
二軸平均展開径は、任意の100個の粒子につき、各々、長軸径(μm)および短軸径(μm)をマイクロスコープと画像解析ソフト(例えば、キーエンス社製マイクロスコープVH−5000と同社製ソフトVH−H1A5)により測定し、(長軸径+短軸径)/2の値を求め、得られた値を平均して求められる。
粒子状の植物由来フィラーの平均粒子径が0.1μm以上であれば、熱硬化性成形材料の流動性をより高くでき、1000μm以下であれば、熱硬化性成形材料から得た成形品の機械的物性をより高くできる。
植物由来フィラーが繊維状である場合、その平均繊維長は0.1〜100mmであることが好ましい。ここで、平均繊維長は、JIS P8226に記載の偏光光源方式により測定した値である。
繊維状の植物由来フィラーの平均繊維長が0.1mm以上であれば、熱硬化性成形材料から得た成形品の機械的物性をより高くでき、100mm以下であれば、熱硬化性成形材料の流動性をより高くできる。
【0028】
植物由来フィラーの含有量は、フェノール樹脂(糖反応型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂)の合計100質量部に対して30〜500質量部であることが好ましく、50〜300質量部であることがより好ましい。植物由来フィラーの含有量が30質量部以上であれば、植物由来率を高くしつつ機械的物性をより高くでき、500質量部以下であれば、流動性をより高くできる。
【0029】
(無機フィラー)
本発明の熱硬化性樹脂材料は、機械的物性をより向上させる目的で、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、窒化ケイ素、炭化ケイ素、タルク、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレー、チタンホワイト等の粉体、ガラス繊維、カーボン繊維等の繊維体が挙げられる。
無機フィラーが粒子状である場合の平均粒子径は、植物由来フィラーと同様の理由により、0.1〜1000μmであることが好ましい。また、無機フィラーが繊維状である場合の平均繊維長は、植物由来フィラーと同様の理由により、0.1〜100mmであることが好ましい。
【0030】
植物由来フィラーと無機フィラーの合計の含有量は、フェノール樹脂の合計100質量部に対して30〜500質量部であることが好ましく、50〜300質量部であることがより好ましい。植物由来フィラーと無機フィラーの合計の含有量が30質量部以上であれば、機械的物性をより高くでき、500質量部以下であれば、流動性をより高くできる。
植物由来フィラーと無機フィラーとの質量比率(植物由来フィラー/無機フィラー)は100/0〜5/95であることが好ましく、100/0〜10/90であることがより好ましい。植物由来フィラー/無機フィラーが5/95以上であれば、植物由来率がより高くなる。
【0031】
(硬化触媒)
本発明の熱硬化性樹脂材料は、硬化触媒を含有してもよい。硬化触媒は、糖反応型フェノール樹脂と硬化剤との反応を促進し、ノボラック型フェノール樹脂を含有する場合には、ノボラック型フェノール樹脂と硬化剤との反応も促進するものである。具体的には、水酸化カルシウム(消石灰)、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられる。
硬化触媒の含有量は、糖反応型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂の合計100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましい。硬化触媒の含有量が0.1質量部以上であれば、短時間に充分に硬化させることができる。しかし、20質量部を超えて硬化触媒を含んでも、硬化促進効果は飽和し、コストが高くなる。
【0032】
(滑剤)
また、本発明の熱硬化性樹脂材料は、流動性をより向上させるために滑剤を含有してもよい。滑剤としては、例えば、カルナバワックス、モンタン酸ワックス、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、低分子量ポリエチレン(ポリエチレンワックス)などが用いられる。
【0033】
(その他の添加剤)
また、本発明の熱硬化性樹脂材料には、例えば、カーボンブラック等の着色剤、離型剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤が含まれてもよい。
【0034】
(熱硬化性成形材料の製造方法)
熱硬化性成形材料は、糖反応型フェノール樹脂と硬化剤と植物由来フィラーと、必要に応じて、ノボラック型フェノール樹脂、無機フィラー、硬化触媒、滑剤、その他の添加剤とを混合することで得られる。その混合の際、ミキシングロール等の混合機を用いてもよい。また、混合の際には、糖反応型フェノール樹脂が硬化しない範囲で加熱してもよい。また、加熱後、必要に応じて、粉砕してもよい。
【0035】
(作用効果)
本発明者らが調べた結果、本発明の熱硬化性成形材料を構成する糖反応型フェノール樹脂は低軟化点で流動性が高く、成形性に優れることが判明した。また、糖反応型フェノール樹脂の硬化により得られる成形品は耐熱性が高い。しかも、フェノール化合物(A)を含む糖反応型フェノール樹脂を用いることにより、得られる成形品の機械的物性が向上する。
また、糖反応型フェノール樹脂は、植物成分である糖質類にフェノール類を反応させることにより得られるため、植物由来率を高くでき、石油化学原料の使用量を削減できる。
【0036】
<成形品>
本発明の成形品は、上記熱硬化性成形材料が成形され、加熱硬化されたものである。具体的には、糖反応型フェノール樹脂が硬化剤によって架橋された三次元架橋構造体からなる成形品である。熱硬化性成形材料がノボラック型フェノール樹脂を含有する場合には、糖反応型フェノール樹脂およびノボラック型フェノール樹脂が硬化剤によって架橋された三次元架橋構造体からなる成形品である。
熱硬化性成形材料の成形方法としては、例えば、圧縮成形法、トランスファー成形法、射出成形法などが挙げられる。
成形温度は80〜220℃であることが好ましい。成形温度が80℃以上であれば、充分に硬化させることができ、220℃以下であれば、熱劣化を防止できる。
【0037】
本発明の成形品は、上記熱硬化性成形材料から得られたものであるから、植物由来率を高くでき、しかも、耐熱性および機械的物性に優れる。
本発明の成形品は、例えば、電気・電子部品、自動車部品、産業機器部品、金属代替部品、厨房・雑貨用部品などに好適に使用される。
【実施例】
【0038】
「フェノール樹脂の合成」
(合成例1)
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三口フラスコに、フェノール1128g、群栄化学工業製異性化糖HF95(フルクトース含有率95質量%、固形分濃度75質量%)501g(固形分376g)、パラトルエンスルホン酸7.5gを仕込んだ。なお、フェノールと糖質類との質量比率は3:1、パラトルエンスルホン酸の添加量は、糖質類の固形分とフェノールの合計量100質量%に対して0.5質量%であった。
次いで、昇温途中で生成する水を除きながら150℃まで加熱し、150℃を保ったまま、1時間攪拌した後、水1.7gに溶解させた水酸化ナトリウム1.7gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール686gを留去し、713gのフェノール樹脂(F−1)を得た。
【0039】
(合成例2)
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三口フラスコに、フェノール1128g、群栄化学工業製異性化糖HF55(フルクトース含有率55質量%、固形分濃度75質量%)376g(固形分282g)、シュウ酸7.05gを仕込んだ。なお、フェノールと糖質類との質量比率は4:1、シュウ酸の添加量は、糖質類の固形分とフェノールの合計量100質量%に対して0.5質量%であった。
次いで、昇温途中で生成する水を除きながら150℃まで加熱し、150℃を保ったまま、1時間攪拌した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール600gを留去し、812gのフェノール樹脂(F−2)を得た。
【0040】
(合成例3)
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三口フラスコに、フェノール1128g、フルクトース226g、パラトルエンスルホン酸6.8gを仕込んだ。なお、フェノールと糖質類との質量比率は5:1、パラトルエンスルホン酸の添加量は、糖質類の固形分とフェノールの合計量100質量%に対して0.5質量%であった。
次いで、昇温途中で生成する水を除きながら150℃まで加熱し、150℃を保ったまま、1時間攪拌した後、水1.5gに溶解させた水酸化ナトリウム1.5gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール686gを留去し、391gのフェノール樹脂(F−3)を得た。
【0041】
(比較合成例1)
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量3Lの三口フラスコに、フェノール1128g、グルコース1128g、硫酸11.3gを仕込んだ。なお、フェノールと糖質類との質量比率は1:1、硫酸の添加量は、糖質類の固形分とフェノールの合計量100質量%に対して0.5質量%であった。
次いで、昇温途中で生成する水を除きながら150℃まで加熱し、150℃に保ったまま、1時間攪拌した後、水9.2gに溶解させた水酸化ナトリウム9.2gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール226gを留去し、1172gのフェノール樹脂(F−4)を得た。
【0042】
(比較合成例2)
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量3Lの三口フラスコに、フェノール1000g、ショ糖(フルクトース含有率0質量%、フラクトース構造ユニット50質量%)を300g、澱粉(フルクトース含有率0質量%)23g(固形分20g)、パラトルエンスルホン酸50gを仕込んだ。なお、フェノールと糖質類との質量比率は3:1、パラトルエンスルホン酸の添加量は、糖質類の固形分とフェノールの合計量100質量%に対して3.8質量%であった。
次いで、130℃まで加熱し、130℃で3時間、生成する水を除きながら反応させた後に、内温を180℃まで昇温し、反応を終了した。その後、フラスコ内に、メチルイソブチルケトン2000gを添加し、希釈した後に、水10.5gに溶解させた水酸化ナトリウム10.5gを添加し、中和した。
次いで、180℃の常圧蒸留により脱水、脱溶剤し、その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール331gを留去し、880gのフェノール樹脂(F−5)を得た。
【0043】
(比較合成例3)
温度計、攪拌装置、冷却管を備えた内容量2Lの三口フラスコに、フェノール1000g、杉木粉333g、硫酸10.0gを仕込んだ。なお、フェノールと杉木粉との質量比率は3:1、硫酸の添加量は、フェノール100質量%に対して1.0質量%であった。
次いで、150℃まで加熱し、150℃を保ったまま、3時間攪拌して反応させた。その後、水8.2gに溶解させた水酸化ナトリウム8.2gを添加して中和した。次いで、180℃まで昇温し、常圧蒸留により脱水し、その後、180℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール750gを留去し、667gのフェノール樹脂(F−6)を得た。
【0044】
得られたフェノール樹脂について、フェノール化合物(A)の含有量、軟化点、溶融粘度、流動性、植物由来率を以下の方法で測定した。測定結果を表1に示す。
[フェノール化合物(A)の含有量]
得られたフェノール樹脂をテトラヒドロフランに溶解した溶液を測定試料とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を下記条件により測定し、数平均分子量202のピーク面積率をフェノール化合物(A)の含有量とした。
・GPC測定条件
GPC測定装置:東ソー社製 HLC8120GPC
カラム:TSKgel G3000H+G2000H+G2000H
ピークの物質の同定:日本電子社製 質量分析計SX−102A、及び日本電子社製 核磁気共鳴装置 LA−400
[軟化点]
JIS K 6910に従って軟化点を測定した。軟化点が高い程、耐熱性に優れる。
[溶融粘度]
熱硬化性成形材料0.13gを150℃に設定した粘度計(ブルックフィールド社製CAP2000 VISCOMETER)により、150℃における溶融粘度を測定した。溶融粘度が低い程、流動性に優れる。
[流動性]
JIS K 6910に従って流動性を測定した。この流動性は、熱硬化性成形材料が溶融し、硬化するまでの流動長さ[mm]であり、流動長さが長い程、流動性に優れる。
[植物由来率]
植物由来率 =100−{100×[(フェノール仕込み質量)−(留去した未反応フェノール質量)−(中和塩の質量(理論値))]/(樹脂収量)}
なお、植物由来成分は、大気中の二酸化炭素を用いた光合成により得られる。そのため、植物由来成分の焼却時の二酸化炭素発生量は、光合成時の二酸化炭素吸収量により相殺され、大気中の二酸化炭素増加に影響を与えないと考えられる(いわゆるカーボンニュートラル)。したがって、植物由来率が高い程、大気中の二酸化炭素量増加を抑制でき、地球温暖化防止効果が高くなる。
【0045】
【表1】

【0046】
「成形材料の製造」
(実施例1)
フェノール樹脂(F−1)100g、ヘキサメチレンテトラミン20g、消石灰3.0g、木粉100g、ステアリン酸亜鉛3.0g、カーボンブラック1gを、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合した。これにより得た混合物を、2軸ロール(前ロール90℃、後ロール105℃)により、3分間混練した後、室温まで冷却して、塊状物を得た。この塊状物を、開口径4mmのスクリーンを備えた粉砕機を用いて粉砕して、成形材料を得た。
【0047】
(実施例2)
フェノール樹脂(F−1)100gの代わりに、フェノール樹脂(F−1)80gとノボラック型フェノール樹脂(群栄化学工業社製レヂトップPSM−2600)20gを用いたこと以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0048】
(実施例3)
フェノール樹脂(F−1)100gの代わりに、フェノール樹脂(F−1)50gとレゾール型フェノール樹脂(群栄化学工業社製レヂトップPS−4122)50gを用い、ヘキサメチレンテトラミンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0049】
(実施例4)
フェノール樹脂(F−1)100gの代わりに、フェノール樹脂(F−2)100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0050】
(実施例5)
フェノール樹脂(F−1)100gの代わりに、フェノール樹脂(F−3)100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0051】
(比較例1)
フェノール樹脂(F−1)100gの代わりに、ノボラック型フェノール樹脂(群栄化学工業社製レヂトップPSM−2600)100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0052】
(比較例2)
フェノール樹脂(F−1)100gの代わりに、ノボラック型フェノール樹脂(群栄化学工業社製レヂトップPSM−2600)50gとレゾール型フェノール樹脂(群栄化学工業社製レヂトップPS−4122)50gを用い、ヘキサメチレンテトラミンを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0053】
(比較例3)
フェノール樹脂(F−1)100gの代わりに、フェノール樹脂(F−4)100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0054】
(比較例4)
フェノール樹脂(F−1)100gの代わりに、フェノール樹脂(F−5)100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0055】
(比較例5)
フェノール樹脂(F−1)100gの代わりに、フェノール樹脂(F−6)100gを用いたこと以外は実施例1と同様にして成形材料を得た。
【0056】
(比較例6)
ポリ乳酸(三井化学株式会社製LACEA H−100JF19)100g、ジグリセリンテトラアセテート17g、木粉100g、カーボンブラック1gを、ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合した。これにより得た混合物を、2軸ロール(前ロール150℃、後ロール200℃)により、5分間混練した後、室温まで冷却して、塊状物を得た。この塊状物を、開口径4mmのスクリーンを備えた粉砕機を用いて粉砕して、成形材料を得た。
【0057】
「成形材料の評価」
[成形材料の植物由来率]
各成形材料の植物由来率を下記の式により求めた。各成形材料の植物由来率を表2に示す。
成形材料の植物由来率 =[(樹脂配合質量)×(樹脂の植物由来率)×0.01+(木粉使用質量)]/(成形材料用原料の全質量)×100
【0058】
各成形材料のスパイラルフロー、曲げ強度・曲げ弾性率、ガラス転移温度を下記の方法により測定し、圧縮成形性、射出成形性を下記の方法により評価した。測定結果および評価結果を表2に示す。
【0059】
[スパイラルフロー]
幅4mm、厚さ4mmのキャビティを有するスパイラルフロー測定用金型が取り付けられた射出成形機(日精樹脂工業社製PNX−40)を用い、金型温度160℃、射出圧力50MPaの条件にて射出成形し、成形材料の流動長さを測定した。流動長さが長い程、流動性に優れ、具体的に20〜70cmの範囲内であると、良好な成形性が得られる。
[曲げ強度・曲げ弾性率]
JIS K6911に従って曲げ強度、曲げ弾性率を25℃にて測定した。曲げ強度が70MPa以上であれば、充分な機械的物性となる。
なお、試験片は、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製PNX−40)により成形した。成形条件は比較例6の成形材料のみ、成形温度30℃、成形時間60秒とし、それ以外の成形材料は成形温度160℃、成形時間60秒とした。
[ガラス転移温度]
JIS K7197に従って、熱機械分析装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TMA/SS120)を使用し、ガラス転移温度を測定した。
なお、試験片は、上記曲げ強度・曲げ弾性率の測定で用いた試験片と同様に作製した。
【0060】
[圧縮成形性]
熱硬化性である実施例1〜5および比較例1〜5の各成形材料については、JIS K6911に従い、圧縮成形(成形温度160℃、成形荷重24.5kN、成形時間60秒)により得た成形品の金型離型性、表面の平滑性、外観について以下の基準で評価した。
熱可塑性である比較例6の成形材料については、JIS K7151に従い、圧縮成形(予熱温度180℃、予熱時間5分、成形温度180℃、圧縮圧力120MPa、冷却温度30℃)により得た成形品の金型離型性、表面の平滑性、外観について以下の基準で評価した。
・金型離型性
成形物を金型より手で掴んで離型する際の離型性を下記の基準で評価した。
◎:成形物が金型から容易に離型した。
○:成形物が金型から離型しにくいが、離型は可能であった。
×:成形物が金型から離型しなかった。
・表面の平滑性
成形物の表面を目視により観察し、下記の基準で評価した。
◎:成形物の表面の平滑な部分が98%以上。
○:成形物の表面の平滑な部分が90%以上98%未満。
×:成形物の表面の平滑な部分が90%未満。
・外観
◎:しわ、斑点が見られた部分が成形物表面の2%未満であった。
○:しわ、斑点が見られた部分が成形物表面の2%以上10%未満であった。
×:しわ、斑点が見られた部分が成形物表面の10%以上であった。
【0061】
[射出成形性]
日精樹脂工業株式会社製射出成形機PNX−40に、100mm×10mm×4mmの棒型キャビティを有する金型を取り付けた。実施例1〜5および比較例1〜5の成形材料では、金型温度を160℃、加熱筒先端温度を100℃とし、比較例6の成形材料では、金型温度を30℃、加熱筒先端温度を200℃とし、連続的に射出成形できる射出圧力を調べた。
また、射出成形品の表面の平滑性と外観を、上記圧縮成形性における表面の平滑性と外観の評価と同様にして評価した。
【0062】
【表2】

【0063】
フェノール化合物(A)を含有する糖反応型フェノール樹脂を用いた実施例1〜5の成形材料は、スパイラルフローの流動長さが長く、圧縮成形性、射出成形性に優れる上に、得られた成形品のガラス転移温度が高く、曲げ強度および曲げ弾性率が大きく、植物由来率が高かった。
これに対し、ノボラック型フェノール樹脂を用い、糖反応型フェノール樹脂を用いなかった比較例1の成形材料、ノボラック型フェノール樹脂およびレゾール型フェノール樹脂を用い、糖反応型フェノール樹脂を用いなかった比較例2の成形材料は、植物由来率が低かった。
フェノール化合物(A)を含有しない糖反応型フェノール樹脂を用いた比較例3,4の成形材料では、スパイラルフローの流動長さが短く、圧縮成形性、射出成形性が低かった。特に、比較例3,4の成形材料は、射出圧力を200MPaまで高くしても連続的な射出成形が困難であった。なお、比較例3,4の成形材料は連続的な射出成形でなければ成形可能であり、得られた成形品の曲げ強度が低かった。
糖質類の代わりに杉木粉を用いて得たフェノール樹脂を用いた比較例5の成形材料は、射出圧力を200MPaまで高くしても連続的な射出成形が困難であった。また、射出成形性が低かった。
熱可塑性樹脂であるポリ乳酸を用いた比較例6の成形材料から得られた成形品はガラス転移温度が低く、耐熱性が不充分であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表わされるフェノール化合物(A)を含有する糖反応型フェノール樹脂と、該糖反応型フェノール樹脂を硬化させる硬化剤と、植物由来フィラーとを含有することを特徴とする熱硬化性成形材料。
【化1】

(式(1)におけるR,Rは、各々独立して、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基、フェニル基、クミル基、ヒドロキシクミル基のいずれかである。)
【請求項2】
請求項1に記載の熱硬化性成形材料が成形され、加熱硬化されたことを特徴とする成形品。