説明

熱硬化性樹脂から物品を製造する方法

【課題】反応して熱硬化性材料となり、しかも、熱可塑性樹脂の加工技術で加工が可能な、優れた耐衝撃性を有する材料と、この材料の製造方法。
【解決手段】エポキシ樹脂とレオロジー調節剤とからなる配合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂に関するものである。
本発明は、特に熱可塑性樹脂のような挙動を示し、熱可塑性樹脂の通常の加工方法で加工ができ、しかも、反応して熱硬化性材料と成る、熱硬化性化合物をベースにした配合物に関するものである。
本発明はさらに、この配合物の製造方法と、配合物から作られる完成品とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性材料とは種々の長さのポリマー鎖が共有結合によって互いに結合して三次元ネットワークを形成する材料と定義できる。熱硬化性材料は例えば熱硬化性樹脂、例えばエポキシと、アミン型硬化剤との反応で得られる。熱硬化性材料は多くの重要な特性を有し、構造接着剤、複合材料用マトリックス、さらには電子部品の保護材料等で使用されている。
【0003】
エポキシ材料は大きな架橋密度と高いガラス転移温度Tgとを有し、優れた熱機械的性質を有している。架橋密度が高くなるとガラス転移温度Tgも高くなり、その結果、熱機械的性質が良くなり、材料の使用限界温度も高くなる。
しかし、エポキシ材料は反応前に液体であり、取り扱いが面倒である。
【0004】
エポキシ樹脂を使用し、加工する際には、取り扱いに問題がある。一般に流体であるエポキシ樹脂は貯蔵が容易ではなく、液状であるため加工法の数も限られる。さらに、モル質量の関係から、用途に必要な流動性にするために溶媒を使用したり、固体樹脂と液体樹脂とを混合する必要がある場合もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、熱硬化性材料とレオロジー調節剤とをベースにした特定の配合物が熱可塑性樹脂の通常の加工技術によって成形または加工ができるということを見出した。本発明で製造された物品は熱硬化性材料の外観と熱機械的性質とを有している。
本発明配合物は、熱硬化性樹脂とレオロジー調節剤として使用するメタクリル酸メチル単位を主とした少なくとも一種のブロックを有するブロックコポリマーとから成り、この配合物はコポリマーを熱硬化性樹脂中に溶解し、硬化剤を加え、加熱架橋して製造できる。本発明を用いることで熱硬化性材料から溶媒を用いずに複雑な物品を作ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の対象は、熱可塑性材料で使用される加工技術をベースにして熱硬化性の材料および物品を製造する方法にある。この方法は下記の(a)〜(c)の段階で記載できる:
(a)押出成形、カレンダ加工、混練または反応器中での溶解のような通常の技術で、熱硬化性材料をベースにした配合物を調製し、
(b)(a)で調製した配合物を回収し、必要な場合には貯蔵し、
(c)(b)で得られた物を、当業者に周知の通常は熱可塑性樹脂に限定される加工法を用いて加工して完成品を製造する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の配合物は下記の(1)〜(3)から成る:
(1)配合物の全重量の1〜80重量%のS−B−M、B−MおよびM−B−Mブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のブロックコポリマーから成るレオロジー調節剤(I):
(ここで、
MはPMMAのホモポリマーまたはメタクリル酸メチルを少なくとも50重量%含むコポリマーであり、
Bはガラス転移温度Tgが熱硬化性材料の使用温度以下で、熱硬化性樹脂およびMブロックには非相溶なもの、
SはTgまたは融点TmがBブロックのTgより高く、熱硬化性樹脂、BブロックおよびMブロックには非相溶なもの、
上記の各ブロックは共有結合によって互いに接合されているか、一方のブロックに一つの共有結合で結合され、他方のブロックに別の共有結合で結合された中間分子を介して結合されている)
(2) 配合物の全重量の20〜99重量%の、少なくとも一種の熱硬化性樹脂(II)、
(3) 配合物の全重量の0〜50重量%の少なくとも一種の熱硬化性材料(III)。
【0008】
上記配合物が当業者に周知の各種の有機および無機の充填剤、例えばファイバー、顔料、充填剤、紫外線吸収剤、耐火性改良剤等を含んでいても本発明の範囲を逸脱するものではない。
本発明の配合物は熱可塑性の挙動を示し、熱可塑性樹脂の通常の加工法で加工できるが、反応して熱硬化性材料を形成する。この反応中、配合物は完全な液体またはゴムの状態にすることができる。
【0009】
熱硬化性材料は各種の長さのポリマー鎖が共有結合によって互いに結合して三次元ネットワークを形成する材料と定義できる。
その例としてはシアノアクリレート、ビスマレイミドおよびエポキシ樹脂があり、これらは硬化剤によって架橋されるか、アニオン重合またはカチオン重合によって架橋される。
シアノアクリレートの中ではモノマーCH2=C(CN)COORの重合(Rは各種の基にすることができる)(硬化剤の添加は不要)で得られる熱硬化性材料である2−シアノアクリル酸のエステルが挙げられる。
ビスマレイミド型熱硬化性樹脂の例としては下記を挙げることができる:
メチレンジアニリン+ベンゾフェノンジアンヒドリド+ナディクイミド、
メチレンジアニリン+ベンゾフェノンジアンヒドリド+ペンチルアセチレン、
メチレンジアニリン+無水マレイン酸+マレイミド。
【0010】
本発明の熱硬化性材料は熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤との反応で得られるのが好ましい。これはオキシラン基を有するオリゴマと硬化剤との反応で得られる化合物とも定義できる。エポキシ樹脂の反応時に起こる反応で架橋した材料となり、対応する三次元ネットワークの密度は使用した樹脂と硬化剤の種類に依存する。
【0011】
「エポキシ樹脂」(以下、Eで表す)とは開環によって重合可能な少なくとも二つのオキシラン型官能基を有する任意の有機化合物を意味する。この「エポキシ樹脂」という用語には室温(23℃)またはそれ以上の温度で液体である任意のエポキシ樹脂が含まれる。このエポキシ樹脂はモノマー状でもポリマー状でもよく、また脂肪族、芳香族、脂環式または複素環式の化合物でよい。エポキシ樹脂の例としてはレゾルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ブロモビスフェノールFジグリシジルエーテル、m−アミノフェノールトリグリシジルエーテル、テトラグリシジルメチレンジアニリン、(トリヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、フェノールホルムアルデヒドノボラックポリグリシジルエーテル、o−クレゾールノボラックグリシジルエーテルおよびテトラフェニルエタンテトラグリシジルエーテルを挙げることができる。これらの樹脂の少なくとも2つの混合物を使うこともできる。
【0012】
好ましいものは一分子当たり少なくとも1.5個のオキシラン基、好ましくは2〜4個のオキシラン基を有するエポキシ樹脂である。また、少なくとも一つの芳香環を有するエポキシ樹脂、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテルも好ましい。
【0013】
硬化剤はエポキシ樹脂の硬化剤として一般に使用されている硬化剤で、室温または室温以上の温度で反応するものである。例としては以下のものを挙げることができるが、下記のものに限定されるものではない。
酸無水物、特に無水コハク酸、
芳香族または脂肪族ポリアミン、特にジアミノジフェニルスルホン(DDS)、メチレンジアニリンまたは4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6−ジエチルアニリン)(MCDEA)
ジシアンジアミドとその誘導体、
イミダゾール、
ポリカルボン酸、
ポリフェノール。
【0014】
S−B−MブロックコポリマーのMはメタクリル酸メチルのモノマーから成るか、メタクリル酸メチルを少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%含むものである。このMブロックを構成する他のモノマーはアクリル系のモノマーであってもなくてもよく、反応性モノマーであってもなくてもよい。「反応性モノマー」とはエポキシ分子のオキシラン基または硬化剤の化学基と反応可能な化学基を意味し、例としてはオキシラン基、アミン基またはカルボキシル基等の反応性官能基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。反応性モノマーは(メタ)アクリル酸またはこの酸に加水分解可能な他の任意のモノマーにすることができる。Mブロックを構成できる他のモノマーとしてはメタクリル酸グリシジル、t−ブチルメタクリレート等が挙げられる。Mブロックは少なくとも60%がシンジオタクティックPMMAから成るのが好ましい。
【0015】
BのTgは0℃以下、好ましくは−40℃以下にする。
エラストマブロックBを合成するのに用いられるモノマーはブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエンから選択されるジエンにすることができる。このBはポリ(ジエン)、特にポリ(ブタジエン)、ポリ(イソプレン)およびこれらのランダムコポリマーまたは部分的または完全に水素化されたポリ(ジエン類)の中から選択するのが好ましい。ポリブタジエンの中ではTgが最も低いもの、例えば1,4−ポリブタジエン(約−90℃)を使用するのが有利である(1,2−ポリブタジエン(約0℃)よりTgが低い)。Bのブロックは水素化されていてもよい。この水素化は通常の方法に従って行える。
【0016】
エラストマブロックBの合成に用いるモノマーは以下のようなアルキル(メタ)アクリレートにすることができる(アクリレートの名称の後に、得られるTg値をカッコ中に示す):アクリル酸エチル(−24℃)、アクリル酸ブチル(−54℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(−85℃)、ヒドロキシエチルアクリレート(−15℃)および2−エチルヘキシルメタアクリレート(−10℃)。アクリル酸ブチルを用いるのが好ましい。BとMは非相溶であるという条件から、このアクリレートはMブロックのアクリレートとは相違する。
Bブロックは主として1,4−ポリブタジエンから成るのが好ましい。
【0017】
SのTgまたはTmは23℃以上、好ましくは50℃以上であるのが好ましい。Sブロックの例として芳香族ビニル化合物、例えばスチレン、α−メチルスチレンまたはビニールトルエンから得られるもの、アルキル鎖が1〜18の炭素原子を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸のアルキルエステルから得られるものを挙げることができる。後者の場合、SとMは互いに非相溶であるというその条件から、アクリレートはMブロックのものとは相違する。
【0018】
S−B−Mトリブロックは10,000〜500,000g/mol、好ましくは20,000〜200,000g/molの数平均分子量を有するのが好ましい。このS−B−Mトリブロックは下記重量組成を有するのが好ましい(全体で100%):
M: 10〜80%、好ましくは15〜70%、
B: 2〜80%、好ましくは5〜70%、
S: 10〜88%、好ましくは15〜85%。
本発明材料で使用されるブロックコポリマーはアニオン重合で製造でき、例えば下記文献に記載の方法で製造できる:
【特許文献1】欧州特許第EP 524,054号公報
【特許文献2】欧州特許第EP 749,987号公報
【0019】
90〜40%の熱硬化性樹脂に対して衝撃改質剤は10〜60%の比率にするのが好ましい。
【0020】
S−BジブロックのSとBブロックは互いに非相溶性で、これらはS−B−MトリブロックのSブロックおよびBブロックと同じモノマーおよびコモノマから成る。このSおよびBブロックは、熱硬化性材料の衝撃改質剤の他のブロックコポリマー中に存在する他のSおよびBブロックと同一でも異なっていてもよい。
S−Bジブロックは10,000〜500,000g/mol、好ましくは20,000〜200,000g/molの数平均分子量を有するのが好ましい。S−BジブロックはBを5〜95%、好ましくは5〜60%含むのが好ましい。
【0021】
本発明の好ましい実施例ではレオロジー調節剤が少なくとも一種のS−B−Mブロックコポリマーと少なくとも一種のS−Bブロックコポリマーとから成る。このレオロジー調節剤は5〜80%のS−Bジブロックと95〜20%のS−B−Mトリブロックとから成るのが好ましい。
本発明組成の利点は、合成で得られたS−B−Mを精製する必要がないという点にある。すなわち、S−B−M単位は一般にS−B単位から作られ、反応ではS−BとS−B−Mの混合物が得られ、それを分離してS−B−Mにする。
【0022】
本発明の好ましい実施例ではS−B−Mの一部をS−Bジブロックに代えることができる。その比率はS−B−Mの70重量%までである。
S−B−Mトリブロックの全部または一部をペンタブロックM−S−B−S−MまたはM−B−S−B−Mに代えても本発明の範囲を逸脱するものではない。これらは二官能性開始剤を使用する以外は上記のジ-またはトリブロックからアニオン重合で製造することができる。これらのペンタブロックの数平均分子量はS−B−Mトリブロックと同じ範囲内にある。二つのMブロック全体または二つのBまたはSブロック全体の比率はトリブロックS−B−MのS、BおよびMの比率と同じ範囲内にある。
【0023】
本発明の配合物は未架橋の熱硬化性樹脂を従来の混合装置を用いて混合することで製造できる。熱硬化性樹脂と調節剤とを均質混合することができる任意の熱可塑性技術、例えば押出成形、カレンダリング、射出成形またはプレス成形を用いることができる。得られた生成物は顆粒、シートまたはフィルムの形にすることができる。こうして得られた未反応または一部が反応した材料を取り扱いが可能なゴム状材料の形にすることもできる。上記の加工は熱硬化性材料の反応速度を遅くする温度で行う。[c]段階で完成品の形に加工する際に単に温度を上げるだけで熱硬化性樹脂は熱硬化材料に成形される。温度を上昇させたときに反応中のゴム状材料は、樹脂(II)および調節剤(I)の種類に応じて、液体状態に戻るかゴム状態を維持する。
【0024】
本発明を、反応後に熱可塑性挙動を示す直鎖または分岐鎖を有するポリマーを生成する反応性液体樹脂に適用できるということは明らかである。この方法は例えばアクリル樹脂に適用でき、そうしても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0025】
本発明の完成品は工業の種々の分野で使用できる。例としては高圧、高温チューブの製造での用途が挙げられるが、これに限定されるものではない。この高圧、高温チューブはDGEBA−MDEAブレンドを50%のS−B−Mと一緒に150℃の温度で押出し、所望温度で成形し、温度を上げて(配合物の液化が起こる温度以下)架橋させて製造できる。
【0026】
この樹脂は押出しコーティング、押出キャストまたはカレンダリングで厚さが100μm以下のフィルムまたはシートの形に製造できる。押出し成形を反応が過度に進行しないような温度で行った後、フィルムまたはシートを基材に接着させ、最後に温度を上げて架橋するか、反応速度が遅い温度、例えば0℃で貯蔵することができる。
以下、実験の部で本発明を説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
硬化条件
通常の条件である。
通常の添加物、例えばポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂を熱硬化性材料に加えても本発明の範囲を逸脱するものではない。
以下の材料を使用した:
【0028】
エポキシ樹脂
チバガイギー社からLY556の名称で市販のビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)。これは分子量が383g/molで、1エポキシ基当たりの水酸基の平均数がn= 0.075である。
硬化剤
Lonza社からLONZACURE M−DEAの名称で市販の芳香族ジアミンであるアミン硬化剤の4,4’−メチレンビス(3−クロロ−2,6− ジエチルアニリン)。この化合物の特徴は融点が87〜90℃で、分子量が310g/molである点にある。
【0029】
SBM1
Sがポリスチレンで、Bがポリブタジエンで、MがPMMAであるS−B−Mトリブロックコポリマー。これは22重量%のポリスチレンと、9重量%のポリブタジエンと、69重量%のポリ(メタクリル酸メチル)とからなる。数平均分子量が7,000g/molのポリスチレンブロックと、11,000g/molのポリブタジエンブロックと、数平均分子量が84,000g/molのポリ(メタクリル酸メチル)ブロックとの一連のアニオン重合で得られる。この化合物は特許文献1(欧州特許第EP 524,054号)および特許文献2(欧州特許第EP 749,987号)に記載の方法で得た。この化合物は三つのガラス転移点:−90℃、95℃および130℃を有している。
【0030】
SBM2
Sがポリスチレンで、Bがポリブタジエンで、MがPMMAであるS−B−Mトリブロックコポリマー。これは12重量%のポリスチレンと、18重量%のポリブタジエンと、70重量%のポリ(メタクリル酸メチル)とからなる。数平均分子量が14,000g/molのポリスチレンブロックと、数平均分子量が22,000g/molのポリブタジエンブロックと、85,000g/molのポリ(メタクリル酸メチル)ブロックと一連のアニオン重合で得られる。この化合物も欧州特許第EP 524,054号および欧州特許第EP 749,987号に記載の方法で得た。この化合物は三つのガラス転移点:−90℃、95℃および130℃を有する。
【0031】
コア/シェルまたはSBSのような別の型のレオロジー調節剤を含む混合物の製造
カレンダーを使用してコアシェル粒子をDGEBA中に分散させる。材料を10分間混合した後、10分間休むサイクルで製造。混合物を100℃(アミンの融点以上)に加熱し、10分間かけてジアミンを分散させる。
【0032】
硬化条件
混合物を220℃で2時間硬化する。
【0033】
熱機械的分析によるガラス転移温度Tgの測定
TgはRheometrics装置(Rheometrics Solid Analyser, RSAII)を使用して後硬化後のサンプルでの動的機械分析によって測定した。平行四辺形のサンプル(1×2.5×34mm3)に50℃〜250℃の温度で1Hzの引張り周波数を加える。最大tan d値をガラス転移温度とする。
【0034】
膨潤度の測定
トルエンを充填した100mlビーカー中に20×20×1mm寸法の平行四辺形のサンプルを入れ、ビーカーを密封し、室温で15日間放置する。15日間液に浸した後、サンプルを取り出し、重量(m)を計る。膨張度を下記式で求める:
膨潤度%=[m(15日目)−m(初期))/m(初期)
次ぎにサンプルを乾燥して、材料中の各成分がトルエンによって溶かされなかったかを調べるために再び重量を計る。
【0035】
実施例1(本発明)
ローラーミキサーに、40gのPSブロックの数平均分子量が7000g/molのSBM組成物203050と、60gの分子量が348.5g/molのDOW Chemicals社のDGEBAエポキシドDER332(登録商標)とLonza社のMDEAアミンとの混合物とを導入した。DGEBAとMDEAは混合物中に化学量論比率すなわち41.53gのDGEBAと18.47gのMDEAの量を入れた。混合は150℃で行う。混合物を最初に厚さ1mmの透明なプレートの形にプレスした。このプレートの引張破断伸び率は650%で、ガラス転移温度は0℃であった。次に、この混合物を220℃で2時間硬化した。混合物の液化温度は150℃であった。得られたプレートのガラス転移温度は154℃で、トルエンでの膨潤は見られなかった。
【0036】
実施例2(本発明)
ローラーミキサーに、40gのPSブロックの数平均分子量が25000g/molのSBM組成物203050と、60gの分子量が348.5g/molのDOW Chemicals社のDGEBAエポキシドDER332(登録商標)とMDEAアミンとの混合物とを導入した。DGEBAとMDEAは混合物中に化学量論比率すなわち41.53gのDGEBAと18.47gのMDEAとを添加した。混合は150℃で行った。混合物を最初に厚さ1mmの透明なプレートの形にプレスした。このプレートの引張破断伸び率は700%で、ガラス転移温度は0℃であった。次に、この混合物を220℃で2時間硬化した。混合物の液化温度は230℃であった。得られたプレートのガラス転移温度は155℃で、トルエンでの膨潤は見られなかった。
【0037】
実施例3(本発明)
ローラーミキサーに、30gのPSブロックの数平均分子量が7000g/molのSBM組成物203050と、60gの分子量が348.5g/molのDOW Chemicals社のDGEBAエポキシドDER332(登録商標)とMDEAアミンとの混合物と導入した。DGEBAとMDEAは混合物中に化学量論比率すなわち41.53gのDGEBAと18.47gのMDEAとを添加した。混合は150℃で行った。混合物を最初に厚さ1mmの透明なプレートの形にプレスした。このプレートの引張破断伸び率は620%で、ガラス転移温度は0℃であった。次に、混合物を220℃で2時間硬化した。混合物の液化温度は230℃であった。得られたプレートのガラス転移温度は158℃で、トルエンでの膨潤は見られなかった。
【0038】
実施例4(比較例)
ローラーミキサーに、40gのSBSブロックコポリマーと、60gの分子量が348.5g/molのDOW Chemicals社のDGEBAエポキシドDER332(登録商標)とMDEAアミンとの混合物とを導入する。DGEBAとMDEAは混合物中に化学量論比率すなわち41.53gのDGEBAと18.47gのMDEAを添加した。冷却後に得られた混合物は不透明で、マクロ分離し、全く凝集しなかった。
【0039】
実施例5(比較例)
ローラーミキサーに、40gの主としてブチルアクリレートから成るコアとポリ(メタクリル酸メチル)のシェルとからなるコアシェル粒子を有するコアシェル型Paraloid KM355(登録商標)と、60gの分子量が348.5g/molのDOW Chemicals社のDGEBAエポキシドDER332(登録商標)とMDEAアミンとの混合物とを導入した。DGEBAとMDEAは混合物中に化学量両論比率すなわち41.53gのDGEBAと18.47gのMDEAを添加した。冷却後に得られた混合物は半透明で、凝集を全く示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(a)〜(c)の段階によって熱硬化性樹脂から物品を製造する方法:
(a)熱硬化性材料をベースとした配合物を調製し、
(b)(a)で調製された配合物を回収し、必要な場合には貯蔵し、
(c)(b)で得られた物を通常は熱可塑性樹脂に限定される加工技術で加工して完成品を製造する。
【請求項2】
下記(1)〜(3)からなる配合物を押出成形、カレンダ加工または反応器中での溶解によって調製する請求項1に記載の方法:
(1)S−B−M、B−MおよびM−B−Mのブロックコポリマーの中から選択される少なくとも一種のブロックコポリマーからなるレオロジー調節剤(I):配合物の全重量の1〜80重量%、
(ここで、
MはPMMAのホモポリマーまたはメタクリル酸メチルを少なくとも50重量%含むコポリマー、
Bはガラス転移温度Tgが熱硬化性材料の使用温度以下である、熱硬化性樹脂およびMブロックとは非相溶なブロック、
SはTgまたは融点TmがブロックBのTgより高い、熱硬化性樹脂、BブロックおよびMブロックとは非相溶なブロック、
上記各ブロックは共有結合によって互いに結合されているか、一方のブロックに一つの共有結合で結合され、他方のブロックに別の共有結合で結合された中間分子を介して互いに結合している)
(2)少なくとも一種の熱硬化性材料(II):配合物の全重量の20〜99重量%、
(3)少なくとも一種の熱硬化性材料(III):配合物の全重量の0〜50重量%、
(上記配合物は有機および無機の充填剤、例えばファイバ、顔料、紫外線吸収剤および/または耐火性改良剤をさらに含むことができる)
【請求項3】
段階(a)で、熱硬化性材料(II)とレオロジー調節剤(I)とを熱硬化性材料(II)の反応速度が遅くなるような条件下で混合した後、第2段階で温度を上げるか、その他の手段を用いて反応を開始させる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ブロックコポリマーのMブロックが少なくとも60%がシンジオタクティックのPMMAから成る請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
ブロックコポリマーのMブロックが反応性モノマー、好ましくはメタクリル酸グリシジル、t-ブチルメタクリレートまたはアクリル酸を含む請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ブロックコポリマーのBブロックのTgが0℃以下、好ましくは−40℃以下である請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ブロックコポリマーのBブロックが主としてポリブタジエン−1,4からなる請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
Bブロックのジエンが水素化されている請求項2〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
Bブロックがポリ(ブチルアクリレート)から成る請求項2〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
SのTgまたはTmが23℃以上、好ましくは50℃以上である請求項2〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
Sがポリスチレンである請求項2〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ブロックコポリマーの数平均分子量が10,000g/mol〜500,000g/molである請求項2〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ブロックコポリマーの数平均分子量が20,000g/mol〜200,000g/molである請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
レオロジー調節剤(I)の比率が1〜35%で、(II)の比率が99〜65%であり、好ましくは、レオロジー調節剤(I)の比率が8〜32%で、(II)の比率が92〜68%である請求項2〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
レオロジー調節剤(I)が、ブロックコポリマーM−B−MまたはS−B−Mの少なくとも一つと、コアシェル(A)、官能化されたエラストマー、S−Bブロックコポリマーおよび反応性ゴムATBNまたはCTBNの中から選択される少なくとも一つのポリマーとから成る請求項2〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
S−BジブロックのSおよびBブロックが請求項7〜11のいずれか一項に記載のものである請求項2〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
S−Bジブロックの数平均分子量が10,000g/mol〜500,000g/molである請求項16に記載の方法。
【請求項18】
衝撃改質剤が、少なくとも一種のS−B−Mブロックコポリマーと、少なくとも一種のS−Bブロックコポリマーとから成る請求項2〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
衝撃改質剤が、少なくとも一種のS−B−Mブロックコポリマーと、少なくとも一種のコア−シェルポリマー(A)とから成る請求項2〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
衝撃改質剤が、少なくとも一種のS−B−Mブロックコポリマーと、少なくとも一種の反応性ゴムATBNまたはCTBNとから成り、必要に応じてさらにS−Bブロックコポリマーをさらに含む請求項2〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
S−B−Mトリブロックの全部または一部をM−S−B−S−MまたはM−B−S−B−Mペンタブロックに代えた請求項2〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
上記の熱硬化性樹脂が熱硬化性エポキシ樹脂と硬化剤とである請求項2〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
(b)段階で得られる物が顆粒の形をしている請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
顆粒が期間制限なしに貯蔵可能である請求項23に記載の方法。
【請求項25】
(b)段階で得られる物がシートの形をしている1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
(b)段階で得られる物がフィルムの形をしている請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
シートまたはフィルムが0℃以下の温度で期間制限なしに貯蔵可能である請求項27または28に記載の方法。
【請求項28】
(c)段階で得られる完成品がチューブである請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
請求項28に記載のチューブの高圧または高温用途での使用。
【請求項30】
(c)段階で得られる完成品がプレートである請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
請求項30に記載のプレートの自動車工業で使用される熱成形可能な材料としての使用。
【請求項32】
(c)段階で得られる完成品がシートである請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項32に記載のシートの電気および電子用途で使用される材料としての使用。
【請求項34】
(c)段階で得られる完成品がフィルムである請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
請求項34に記載のフィルムの被覆用途で使用される材料としての使用。

【公表番号】特表2007−514795(P2007−514795A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507540(P2005−507540)
【出願日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【国際出願番号】PCT/FR2003/002048
【国際公開番号】WO2005/014699
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(591004685)アルケマ フランス (112)
【Fターム(参考)】