説明

熱硬化性誘電体ペーストおよびそれを用いたディスプレイ用部材の製造方法

【課題】ポットライフに優れるとともに、ディスプレイ用部材の誘電体層形成に用いた場合に、電極材料に用いている銀成分が誘電体層や隔壁の形成時に使用する溶媒を介して誘電体層や隔壁まで拡散し、隔壁や誘電体層に含まれる低軟化点ガラスと反応することにより隔壁と誘電体層が黄色化することを防止し、ディスプレイの発光効率および色純度を向上させ表示特性の優れたディスプレイを得ることができる熱硬化性誘電体ペーストを提供すること。
【解決手段】低軟化点ガラス粉末、特定の構造を有するモノマー(A)および特定の構造を有し、重量平均分子量が500〜5000の範囲内であるオリゴマー(B)を含有し、前記モノマー(A)と前記オリゴマー(B)の合計の含有量が1〜20重量%の範囲内であり、前記モノマー(A)と前記オリゴマー(B)の重量基準の含有量の比が50:50〜90:10の範囲内であり、かつ前記モノマー(A)および前記オリゴマー(B)中に含まれるフェニル基の含有量が、前記モノマー(A)および前記オリゴマー(B)の合計量に対し、分子量換算で20〜50%の範囲内である熱硬化性誘電体ペーストとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下PDPという)などのディスプレイの誘電体層の形成などに用いる熱硬化性誘電体ペーストおよびそれを用いたディスプレイ用部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フラットパネルディスプレイは、画像形成装置の軽量化、薄型化が可能であるため注目されている。フラットディスプレイの中でも、PDPは、自発光型のデバイスであり、視野角の広さ、応答性の速さ、色再現性に優れるという特徴がある。また、PDPは大型ディスプレイとして生産効率やコスト力に優れ、今後更なる大型化にも対応可能であるため、家庭用テレビ用途だけでなく、商業用や教育など多目的な表示ディスプレイとして強いニーズがある。
【0003】
PDPは、前面板ガラス基板(以下、前面板)と背面板ガラス基板(以下、背面板)との間に備えられた放電空間で電極間にプラズマ放電を発生させ、放電空間に封入されているXe−Ne混合ガスなどの放電ガスから発生した紫外線を、放電空間に設けた蛍光体に照射、発行させることにより表示を行うものである。
【0004】
前面板は基板上に走査電極、維持電極、誘電体層、保護層を有し、背面板には基板上にアドレス電極、誘電体層、隔壁、蛍光体層を有している。
【0005】
背面板ガラス基板上に形成される誘電体層は、大きく分けて(1)電極の保護層、(2)放電に必要な表面電荷蓄積層、(3)隔壁の支持層、(4)反射層の4つの役割を果たしている。
【0006】
PDP製造プロセスにおいて、特許文献1には電極層、誘電体層と隔壁をまとめて一度に焼成することで省プロセス化を可能とある同時焼成技術が記載されている。しかしながら、同時焼成を行った場合、電極材料に用いている銀成分が、誘電体層や隔壁の形成時に使用する溶媒を介して誘電体層や隔壁まで拡散し、焼成後誘電体層や隔壁が黄色化するという問題を生じる。拡散した銀成分による誘電体層や隔壁の黄色化により、蛍光体が発光した可視光を吸収、背面板からの反射率を低下させ、プラズマディスプレイの発光効率を低下させてしまうという問題があった。
【0007】
電極として銀を用いた際にガラスが黄色化するという問題に対して、特許文献2には低軟化点ガラスおよび酸化剤を含有する誘電体ペーストが記載されており、この誘電体ペーストを用いて同時焼成技術により電極、誘電体層および隔壁を形成すると誘電体層の黄色化を抑制可能であると記載されている。しかし、引用文献2記載の誘電体ペーストでは粘度上昇が起こりやすく、使用可能な期間が短い、均一な膜形成が困難であるといった問題の原因となりやすいという問題があった。
【0008】
特許文献3では、有機ケイ素化合物を含む誘電体ペーストを用いることにより誘電体を効率的に形成し、排気管が安定的に付着されたプラズマディスプレイの製造方法が提案されている。しかし、この方法では電極、誘電体および隔壁をそれぞれ形成するために焼成が複数回必要となる。また、該誘電体層の同時焼成を行うと、電極のエッジカールや、誘電体膜の亀裂や剥離が発生しうる。
【0009】
また、特許文献4では、同時焼成時に発生する誘電体の亀裂や剥離に対する解決方法として有機ケイ素化合物をペースト中に添加する方法で、電極のエッジカールや、誘電体膜の亀裂や剥離、隔壁の着色などの問題を解消可能する方法を提案している。しかし、誘電体ペーストに低軟化点ガラスおよび有機ケイ素化合物やそれらの重合物として反応性の高い1価のシラノール基を有する化合物を使用するため、ペーストの粘度が上昇し、使用可能な期間、いわゆるポットライフが短くなるといった問題や、ペーストの粘度が変化することによってや均一な膜形成ができないといった問題があった。また、有機ケイ素化合物をペースト中に添加する方法で、誘電体膜の亀裂や剥離を抑制することによる隔壁の着色の抑制効果は得られるが、誘電体前駆体層は隔壁形成用感光性ペーストや現像液の浸み込みは抑制することは困難であり、焼成時に隔壁や誘電体層の着色を完全に抑制することはできないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−57630号公報
【特許文献2】特開2002―25341号
【特許文献3】特開2008−130566号公報
【特許文献4】特開2003−104755号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ポットライフに優れるとともに、ディスプレイ用部材の誘電体層形成に用いた場合に、電極材料に用いている銀成分が誘電体層や隔壁の形成時に使用する溶媒を介して誘電体層や隔壁まで拡散し、隔壁や誘電体層に含まれる低軟化点ガラスと反応することにより隔壁と誘電体層が黄色化することを防止し、ディスプレイの発光効率および色純度を向上させ表示特性の優れたディスプレイを得ることができる熱硬化性誘電体ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は下記の構成を有する。すなわち本発明の誘電体ペーストは、少なくとも低軟化点ガラス粉末と特性の構造の有機ケイ素化合物モノマーおよびオリゴマーを特定量、特定比率で含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ペーストのポットライフを向上でき、PDPの背面板等のディスプレイ用部材の誘電体層を効率的に形成できるとともに、発光効率および色純度等の表示特性の優れたディスプレイを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、低軟化点ガラス粉末、下記の一般式(I)で表されるモノマー(A)と、下記の一般式(II)で表されるオリゴマー(B)を含有する。
化合物(A)の一般式(I)
【0015】
【化1】

【0016】
(ここで、R、R、R、Rはそれぞれ炭素数が1〜6の範囲内であるアルキル基、フェニル基またはフェニル基の1〜2の水素が炭素数1〜6の範囲内であるアルキル基で置換された基、a、b、c、dはそれぞれ0以上の整数であり、a+b+c+dは4、c+dは1または2である。)
化合物(B)の一般式(II)
【0017】
【化2】

【0018】
(ここで、R〜R10はそれぞれ炭素数が1〜6の範囲内であるアルキル基、フェニル基またはフェニル基の1〜2の水素が炭素数1〜6の範囲内であるアルキル基で置換された基、e、f、gはそれぞれ0以上の整数である。)
本発明において、一般式(I)で表されるモノマー(A)として具体的には以下の化合物をその例として挙げることができる。ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、ジ(o-メチルフェニル)ジメトキシシラン、ジ(m-メチルフェニル)ジメトキシシラン、ジ(p-メチルフェニル)ジメトキシシラン、ジ(o-ジメチルフェニル)ジメトキシシラン、ジ(o,p-ジメチルフェニル)ジメトキシシラン、ジ(m-メチルフェニル)ジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシラン、ヘキシルフェニルジメトキシシラン、フェニルビニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリフェニルメトキシシランなどが挙げられる。これらは単体であっても混合しても用いることができる。

一般式(II)で表されるオリゴマー(B)はゾルーゲル法により作製される。オリゴマー(B)の重量平均分子量は500〜5000の範囲内であり、好ましくは1000〜5000の範囲内である。オリゴマー(B)の重量平均分子量を5000以下とすることで、特に焼成後の誘電体層の焼結性が良好となり、誤放電を防ぐことができる。また、オリゴマー(B)の重量平均分子量を500以上とすることで、特に誘電体ペーストの粘度の調整やポットライフを向上させ、均一な厚みの誘電体層を得ることができる。
【0019】
一般式(II)で表されるオリゴマー(B)を合成するには、有機ケイ素化合物モノマーとしてジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジヘキシルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、エチルフェニルジメトキシシラン、ヘキシルフェニルジメトキシシラン、フェニルビニルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジ(o-メチルフェニル)ジメトキシシラン、ジ(m-メチルフェニル)ジメトキシシラン、ジ(p-メチルフェニル)ジメトキシシラン、ジ(o-ジメチルフェニル)ジメトキシシラン、ジ(o,p-ジメチルフェニル)ジメトキシシラン、ジ(m-メチルフェニル)ジメトキシシランなどから選ばれるモノマーを使用する。
【0020】
一般式(II)で表されるオリゴマー(B)は、単一のモノマー構造から形成されてもよい。また、数種類のモノマー構造から構成される共重合物であってもよい。オリゴマーを構成するモノマー種の選択は、誘電体ペースト中の他成分との親和性や低軟化点ガラスの分散性、重合体の安定性を確保するための構造制御による反応性の調整、誘電体層形成プロセスに合わせ、選択することができる。また、共重合したオリゴマーの構造はランダム共重合、ブロック共重合とすることで、誘電体ペーストの粘度やポットライフなどの目的に応じて選択することができる。
一般式(I)で表されるモノマー(A)と一般式(II)で表されるオリゴマー(B)の合計量は誘電体ペーストに対し、1〜20重量%の範囲内である必要がある。20重量%より多く添加すると、ペーストの安定性が低下して経時で粘度が上昇してしまう。また、焼成後の誘電体層の焼結性が低下し、パネル作製後の不活性ガス中の不純物量が増加し、誤放電が発生しやすく十分に放電状態できず、輝度が低下してしまうと言う問題を生じる。一方、1重量%未満とすると、焼成後の隔壁の黄色を抑制する効果が得られない。
【0021】
モノマー(A)とオリゴマー(B)の重量基準の含有量の比が50:50〜90:10の範囲内である必要がある。モノマー(A)とオリゴマー(B)の合計量に対してオリゴマー(B)の重量が10%未満であると、ペースト作製後の初期粘度が低下、塗布性の悪化、ペーストの粘度が経時的に上昇する傾向があるため好ましくない。モノマー(A)とオリゴマー(B)の合計量に対してオリゴマー(B)の重量を50%以下とすることより、焼成工程で誘電体層を良好に焼結することができる。
【0022】
モノマー(A)およびオリゴマー(B)はフェニル基を含有し、これにより誘電体前駆体が隔壁形成の現像工程時における現像液の浸透を抑制し、誘電体層の黄色化を抑制するとの効果を奏する。モノマー(A)とオリゴマー(B)の化学構造中に含まれるフェニル基の含有量は、モノマー(A)とオリゴマー(B)の合計量に対し、分子量換算で20〜50%であり、この範囲内とすることで、誘電体の黄色化を抑制することができる。フェニル基の含有量を20%以上することで、現像液が誘電体層内に浸透、焼成後の黄色化を抑制することができ、作製したパネルの輝度を向上させることが可能である。また、フェニル基の含有量は、モノマー(A)およびオリゴマー(B)に求めれる反応性等の特性を考慮すると、50%が上限である。
【0023】
本発明の誘電体ペーストは、低軟化点ガラスを含むことが必要である。ここでいる低軟化点ガラスとは、ガラス転移点400〜550℃かつ軟化点450〜600℃のガラスのことをいう。低軟化点ガラスのガラス転移点が550℃以下、軟化点を600℃以下であることで、高温焼成を必要とせず、焼成の際にガラス基板に歪みを生じない。また、ガラス転移点が400℃以上、軟化点を450℃以上であることにより、後工程の蛍光体層の形成や封着の際に誘電体層に歪みを生じることがなく、膜厚精度を保つこともできる。
本発明の誘電体ペーストに配合される低軟化点ガラスは、酸化物換算表記で、
酸化ビスマス 10〜85重量%
酸化ケイ素 3〜50重量%
酸化ホウ素 5〜40重量%
酸化亜鉛 4〜40重量%
からなる組成を有するものである。この組成範囲であると低軟化点ガラスは520〜590℃でガラス基板上に焼き付けることができる。
【0024】
低軟化点ガラス粉末中の酸化ビスマスの配合量が10重量%より小さいと、焼き付け温度や軟化点を制御することが難しくなる傾向があり、85重量%より大きいと、ガラスの耐熱温度が低くなりすぎ、ガラス基板上への焼き付けが適正に行なわれなくなる傾向がある。なお、酸化ビスマスの配合量は、20〜80重量%がより好ましい。
【0025】
酸化ケイ素の配合量を3重量%以上とすることにより、ガラス層の緻密性、強度や安定性を向上させ、また熱膨張係数がガラス基板の値と近いものとなり、ガラス基板とのミスマッチを防止することができる。また50重量%以下とすることによって、軟化点やガラス転移点が低くなり、580℃以下でガラス基板上に緻密に焼き付けることができる。なお、酸化ケイ素の配合量は3〜45重量%がより好ましい。
【0026】
酸化ホウ素は5〜40重量%の範囲で配合することによって、電気絶縁性、強度、熱膨張係数、緻密性などの電気、機械および熱的特性を向上することができる。なお、酸化ホウ素の配合量は、6〜35重量%がより好ましい。
【0027】
酸化亜鉛の配合量を4重量%以上にすることによって緻密性向上の効果が現れ、40重量%以下にすることによって焼き付け温度が低くなり過ぎて制御できなくなることを防ぎ、また絶縁抵抗を保持することができる。なお、酸化亜鉛の配合量は、5〜35重量%がより好ましい。
【0028】
もう一つは、酸化物換算組成で、酸化ビスマスは30〜70重量%の範囲で配合することが好ましい。30重量%未満の場合は、ガラス転移点や軟化点を制御する点や、基板や隣接層との接着強度を高める点での効果が少ない。また70重量%を越えると低軟化点ガラスの軟化点が低くなりペースト中のバインダーが蒸発する前に低軟化点ガラスが溶融する。このためペーストの脱バインダー性が悪くなり、焼結性が低下し、また隣接する基板や隣接層との接着強度が低下する傾向がある。
【0029】
また、低軟化点ガラスが、酸化物換算表記で
酸化ビスマス35〜65重量%
酸化ケイ素 5〜25重量%
酸化ホウ素 2〜20重量%
酸化ジルコニウム 3〜10重量%
酸化アルミニウム 1〜5重量%
の組成範囲からなるものを80重量%以上含有し、かつ酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化リチウムを実質的に含有しないアルカリフリーの低軟化点ガラスであることが好ましい。この範囲であると、ガラス基板を用いる場合の好ましい焼き付け温度である550〜600℃で電極を基板上に強固に焼き付けできる低軟化点ガラスが得られる。
【0030】
上記低軟化点ガラスは、実質的にアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素を含まないことが好ましい。本発明のペーストを用いて形成される誘電体層や電極は、多くの場合、ガラス基板や隣接層に隣接して形成されるため、これら隣接部分に含まれる物質とアルカリ金属およびアルカリ土類金属元素によるイオン交換反応が進行しやすく、ガラス基板や隣接層が着色しやすい傾向がある。実質的に含まないとは、具体的にはガラス成分中に、アルカリ金属の合計含有量が0.5重量%以下であること、好ましくは0.1重量%以下であることを意味する。
【0031】
低軟化点ガラス粉末の添加量は、熱硬化性誘電体ペーストに対して20〜80重量%であることが必要である。低軟化点ガラス粉末の添加量が20重量%未満であると、緻密な誘電体層を得ることができず、また相対的に有機成分の含有量が増加するので、焼成時の焼成残渣が増加する傾向がある。低軟化点ガラス粉末の添加量が80重量%より大きいと、有機成分の含有量が低くなり、架橋剤による三次元網目構造が充分密にならず、焼成時の誘電体層亀裂を生じる傾向がある。
【0032】
本発明の熱硬化性誘電体ペーストは、さらにフィラーを含有することも好ましい。フィラーは、焼成時の誘電体層の収縮率を小さくし、基板にかかる応力を低下させるなどの効果があるが、このようなフィラーとして好ましいのは、軟化点650〜850℃の高融点ガラス粉末、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、コーディエライト、ムライト、スピネル、チタン酸バリウムおよび酸化ジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種である。この中でも特に、酸化チタン、酸化アルミニウム、シリカ、が好ましく用いられる。プラズマディスプレイの背面板の場合、誘電体層には蛍光体から発生する可視光を反射させ、輝度を向上するために高い反射率が要求される。その点から白色顔料である酸化チタンをフィラーの1種として用いることが特に好ましい。
【0033】
フィラーの添加量は、ペーストに対して、5〜30重量%とすることが好ましい。フィラー添加量を5重量%以上とすることで、焼成収縮率を低くし、熱膨張係数を制御する効果が得られる。また、フィラー添加量を30重量%以下とすることで、焼成後の緻密性や強度を保つことが可能となり、同時に、クラック発生などの欠陥を防止することができる。
【0034】
熱硬化性誘電体ペーストは、有機成分に無機粉末を混合・分散した様態を有するものであり、無機粉末を有機成分の中に均一に混合・分散することが良好な塗布性のために好ましく、このようなペーストを得るため、無機粉末の平均粒子径、最大粒径およびタップ密度などが適正な
範囲にあることが好ましい。
【0035】
無機粉末の平均粒子径は好ましくは、0.2〜4.5μm、より好ましくは0.3〜3.0μmである。粒子径が0.2μm未満であるとペーストの塗布性が低下する。4.5μmを越えると塗布膜の表面が粗くなり、寸法精度が低下するので好ましくない。また、最大粒子径を20μm以下とすることも、内部でのボイド発生や表面の不要な凹凸の発生を防止する上で好ましい。ここでいう粒子径は、レーザ散乱・回折法で測定した値であり、平均粒子径は50%体積粒径、最大粒子径は粒子径の最大値である。
【0036】
本発明の熱硬化性誘電体ペーストに導電性微粒子を添加することにより駆動時の信頼性の高いPDPを作製することができる。導電性微粒子は、ニッケル、クロムなどの金属粉末が好ましく、中心粒子径は1〜10μmが好ましい。1μm未満にすると充分な効果を発揮することができない傾向がある。また、10μmより大きくすると誘電体上にて凹凸が生じ、隔壁形成が困難となる傾向がある。これらの導電性微粒子が誘電体層に含まれる含有量としては、0.1〜10重量%が好ましい。含有量が0.1重量% 未満にすると導電性を得ることができない傾向がある。また、10重量%より大きくすると、隣り合うアドレス電極間でのショートが生じる傾向がある。
【0037】
本発明で用いられる誘電体ペーストは重合開始剤と不飽和結合を有する有機成分を含有させることにより好ましく達成することができる。これにより、不飽和結合の開裂反応の連鎖によって重合または架橋反応を進行させ、誘電体ペースト塗布膜中に3次元網目構造を有するものに変化させることができる。
【0038】
重合開始剤として、アゾ化合物や有機過酸化物から選ばれた少なくとも一種類のラジカル重合開始剤を含むことが望ましい。具体例として、アゾ化合物では2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1−1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリルなど、有機過酸化物ではジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどが挙げられる。重合開始剤の含有量は誘電体ペーストに対して0.01〜20重量%が好ましい。
【0039】
不飽和結合を有する有機成分とは、反応性モノマーとバインダー樹脂の両方を含んでもよい。
【0040】
反応性モノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジル、またはテトラグリシジルメタキシリレンジアミンとの反応生成物、アミド誘導体、エポキシ化合物とアクリル酸またはメタクリル酸との反応物、ウレタン(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。また、多官能モノマーにおいて、不飽和基は、アクリル、メタクリル、ビニル、アリル基が混合して存在してもよい。これらは単独で用いてもよく、また組み合わせて用いてもよい。
【0041】
バインダー樹脂としては、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ブタジエン/スチレン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、高分子量ポリエーテル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリアクリルアミドおよび種々のアクリルポリマーやセルロース化合物などがあげられる。このなかで、アクリルポリマーまたはセルロース化合物を用いることが焼成時の焼成残渣を低減する点で好ましい。
【0042】
バインダー樹脂の含有量としては、誘電体ペーストに対して0.1〜50重量%が好ましく、1〜20重量%が好ましい。含有量が0.1重量%より小さいと誘電体ペーストの粘度が低下し、誘電体ペーストの組成を安定化することが困難になる。一方、含有量が50重量%より大きいと誘電体ペーストの粘度が高くなりすぎることによる塗布不良や、焼成収縮が大きくなることによる亀裂等の問題が生じる傾向がある。
【0043】
本開発の誘電体ペーストに用いられる溶媒は沸点が100℃以上の高沸点溶媒であり、一価または二価のアルコール、ケトン類、ケトアルコール類、エーテル類等であり、例えばピナコール、メチルエチルケトン、テルピネオール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、プロパノールアミン、ジメチルホルムアミド、テルピネオール、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。溶媒の沸点が100℃より小さいと、有機シランの重合時に溶媒の蒸発が発生する可能性があり、良好に反応を進行されることが困難となる。
【0044】
以下、本発明の熱硬化性誘電体ペーストを用いたディスプレイ用部材の製造方法をについて、プラズマディスプレイの背面板の製造方法を例に説明するが、これに限定されるものではない。
【0045】
プラズマディスプレイの背面板の基板には、通常、ソーダガラスや旭硝子社製の“PD−200”などの高歪み点ガラス基板を用いて製造されるものである。ガラス基板上への銀電極形成は、感光性ペースト法またはスクリーン印刷法を用い、未焼成電極パターン前駆体を形成する。誘電体層は、未焼成電極パターン前駆体を形成した基板上に、本開発の誘電体ペーストを40〜200℃で乾燥した誘電体前駆体層を形成し、隔壁パターン形成後の400〜600℃で焼成される。焼成前の誘電体前駆体層の厚みは5〜24μmが好ましい。また、焼成後の誘電体層の厚みは4〜20μmが好ましい。
【0046】
ガラス基板上への銀電極の形成は、感光性銀ペーストをスクリーン印刷法、バーコーター法、ロールコーター法、ドクターブレード法、スリットダイコーター法などの一般的な方法で塗布、乾燥を行った後、パターン露光して現像することにより電極パターンを得る方法や銀ペーストをスクリーン印刷でパターンを形成する方法がある。
【0047】
本開発の誘電体ペーストはガラス基板上に、スクリーン印刷法、バーコーター法、ロールコーター法、ドクターブレード法、スリットダイコーター法などの一般的な方法で行うことができる。塗布厚さは、所望の膜厚とペーストの焼成収縮率を考慮して決めることができる。本発明では、塗布膜のレベリング性が良好な塗布方法であるスクリーン印刷法やドクターブレード法あるいはスリットダイコーター法を用いて塗布することが好ましく、40〜200℃で硬化され、誘電体層前駆体が形成される。
【0048】
隔壁形成方法として以下に挙げられる。例えば、ペーストの塗布方法として、スクリーン印刷法、バーコーター法、ロールコーター法、ドクターブレード法などの一般的な方法で行うことができる。塗布厚さは、所望の隔壁の高さとペーストの焼成による収縮率を考慮して決めることができるが、通常好ましい隔壁の焼成後の高さは60〜170μmであり、焼成収縮を考慮すると塗布する隔壁ペースト塗布膜の厚さは100〜220μmあることが好ましい。
【0049】
本発明によると、電極前駆体から誘電体前駆体への銀成分の移動、隔壁から誘電体前駆体への成分の移動を抑制することが可能であり、電極前駆体中の銀成分が隔壁中への移動は見られず、焼成後の黄色化を抑制することができる。
【0050】
隔壁ペーストを塗布後に乾燥して露光を行う。露光に使用される活性光線は、紫外線が最も好ましく、その光源として、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプなどが使用される。超高圧水銀灯を光源とした平行光線を用いる露光機が一般的である。
【0051】
塗布・乾燥した隔壁ペースト膜にフォトマスクを介して露光を行った後、現像して隔壁パターンを形成する。感光性隔壁ペースト中にカルボキシル基などの酸性基をもつ化合物が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液としては水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム水溶液などが使用できる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.05〜2重量%である。アルカリ濃度が低すぎれば可溶部が完全に除去されず、残渣が発生し、焼成後の黒色残渣となる。アルカリ濃度が高すぎれば、露光部のパターンを剥離させたり、誘電体前駆体層を侵食したりするおそれがある。
感光性ペーストの塗布膜から露光・現像の工程を経て形成された隔壁パターンは、次に焼成炉で焼成されて、有機成分を熱分解して除去し、同時に無機粒子中の低軟化点ガラスを溶融させて無機成分の隔壁を形成する。焼成を行うには通常、隔壁パターンが形成されたガラス基板を500〜590℃に10〜50分間保持して焼成を行う。このような工程で隔壁が形成されたディスプレイ用部材を得ることができる。また、本開発の誘電体ペーストを用いたディスプレイ部材は、電極前駆体、誘電体層前駆体と隔壁パターンを同時に焼成する同時焼成技術を適応することも可能であり、背面板作製プロセスにおける工程する削減という観点から必要である。
隔壁に挟まれたセル内に、赤、緑、青に発光する蛍光体ペーストを塗布・焼成して蛍光体層を形成するとPDP用の背面板が構成される。この背面板と別途作製された前面ガラス基板を張りあわせ後、封着、ガス封入してPDPが作製される。これらの技術は、PALC、FEDやVFDを用いたディスプレイなどにおいても、好ましく適用される。
【0052】
有機ケイ素化合物であるオリゴマー(B)の合成方法の一例として、以下に示す。オリゴマー(B)は、有機ケイ素化合物であるモノマー、pH調整剤、純水、溶媒を用いて合成する。例えば、有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメチルシラン46重量%、pH調整剤としてリン酸0.05重量%、純水6.9重量%、γ―ブチロラクトン46重量%を40℃、2時間加熱攪拌した後、80℃に昇温し、反応副生成物を留去する。さらに110℃に昇温し脱水縮合反応を進行させ、重量平均分子量2500のオリゴマー(B)が得られる。反応生成物は1H NMRとGPC測定により確認する。
【実施例】
【0053】
実施例1〜5、9〜17に記載の有機ケイ素化合物であるオリゴマー(B)はメチルフェニルジメチルシランからなるオリゴマーである。
【0054】
実施例12に記載の有機ケイ素化合物であるオリゴマー(B)はジメチルジメトキシシランからなるオリゴマーである。
【0055】
実施例6〜8、18に記載の有機ケイ素化合物であるオリゴマー(B)はメチルフェニルジメトキシシランとジフェニルジメトキシシランからなるオリゴマーである。合成後のオリゴマーの反応性比から、オリゴマー構造中に含まれるメチルフェニルジメトキシシランとジフェニルジフェニルシランの共重合比を算出し、ペースト中に含有するフェニル基量を決めた。
【0056】
(実施例1)
低軟化点ガラス40重量%(組成は酸化鉛38重量部、酸化ケイ素6重量部、酸化ホウ素20重量部、酸化亜鉛20重量部、酸化アルミニウム4重量部からなるもの)。ガラス転移点445℃、軟化点485℃、熱膨張係数75×10−7/℃、密度4.81g/cm。フィラーに酸化チタン20重量%、バインダーポリマー(エチルセルロース)9.8重量%、反応性モノマー(トリメチロールプロパントリアクリレート)5重量%、重合開始剤(1−1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)0.2重量%、γ―ブチロラクトン25重量%からなる組成に対して、有機ケイ素化合物であるモノマー(メチルフェニルジメトキシシラン)(A)0.5重量%、有機ケイ素化合物であるオリゴマー(メチルフェニルジメトキシシランからなるオリゴマー)(B)0.5重量%の配合比で混合し、三本ローラーを用いて混練しペーストを得た。
【0057】
(実施例2)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン0.5重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンオリゴマーを0.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0058】
(実施例3)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン2.5重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンオリゴマーを2.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0059】
(実施例4)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン5.0重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンオリゴマーを5.0重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0060】
(実施例5)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン7.5重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンオリゴマーを7.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0061】
(実施例6)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン2.5重量%、重量平均分子量2000であるジメチルシロキサンとメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを2.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0062】
(実施例7)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン2.5重量%、重量平均分子量3000であるジメチルシロキサンとメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを2.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0063】
(実施例8)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン2.5重量%、重量平均分子量3000であるジメチルシロキサンとメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを2.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0064】
(実施例9)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン2.5重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを2.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0065】
(実施例10)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン4.5重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを0.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0066】
(実施例11)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン4.0重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを1.0重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0067】
(実施例12)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン3.5重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを1.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0068】
(実施例13)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてジメチルジメトキシシラン3.0重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを2.0重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0069】
(実施例14)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン3.5重量%、重量平均分子量2000であるメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを1.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0070】
(実施例15)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン3.5重量%、重量平均分子量1000であるメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを1.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0071】
(実施例16)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン3.5重量%、重量平均分子量4000であるメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを1.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0072】
(実施例17)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン3.5重量%、重量平均分子量5000であるメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを1.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0073】
(実施例18)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン3.5重量%、重量平均分子量4000であるメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを1.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0074】
(1)ペースト安定性
熱硬化性誘電体ペーストを調合し、混練後のペーストをデジタル演算機能付きB型粘度計(ブルックフィールド製、DV−II+Pro)でペースト作製日とそれから25℃、30日間経時したペーストの粘度を温度25℃、回転数3rpmで測定した。粘度評価については、有機ケイ素化合物であるモノマー(A)と有機ケイ素化合物であるオリゴマー(B)を添加していない誘電体ペーストの初期粘度100として、本発明の実施例の誘電体ペーストの経時後粘度を相対値で評価した。
【0075】
(2)オリゴマー(b)の重量平均分子量の測定
γ―ブチロラクトンで0.1重量%に希釈した試料を用いて、HLC8220GPC(東ソー(株)製)で測定した。標準試料としてポリスチレンスタンダード(東ソー(株)製)を用いて検量線を作成し、分子量を求めた。
【0076】
(3)塗膜の撥水性、色度、空隙率、パネル形成後の輝度評価
パネル作製後、パネル点灯を行い、ミノルタ製輝度計LS−100を用いて、測定角1度、測定光束円形31mmの条件で測定した。
【0077】
プラズマディスプレイの背面板を製造した。対角42インチのガラス基板(旭硝子社製PD200)を洗浄し、その表面にアドレス電極を形成した。電極の形成は感光性ペースト法で行った。感光性銀ペーストを基板全面に塗布・乾燥した後、所望のパターンを紫外光露光し、不要部分を現像液で除去し、焼成した。本実施例は、厚み3μm、線幅30μm、ピッチ200μmのストライプパターンの銀電極を形成した。次にこの電極の上に誘電体層を形成した。
【0078】
これらの誘電体ペーストを電極付きガラス基板上の全面にスクリーン印刷法により塗布した。誘電体ペーストを塗布した後、150℃で20分間熱重合を行った。表1〜3に示す各誘電体ペーストを用いて形成した誘電体層前駆体の接触角を、接触角測定装置CA−D型(協和界面科学製)を用いて、接触液に0.2重量%2−アミノエタノール水溶液を用いて測定した。
【0079】
次に隔壁形成用感光性ペーストを、誘電体ペースト膜を熱重合した塗布膜上にダイコート法で塗布した。隔壁形成用感光性ペースト塗布膜を乾燥した後、ストライプ状パターンのフォトマスクを介して、200mJ/cmの露光量を与えた後、0.2重量%2−アミノエタノール水溶液で現像し、ピッチ220μm、線幅30μm、高さ160μmの隔壁パターンを形成した。その後、ローラーハース式焼成炉を用いた焼成温度570℃で15分間焼成した。表1〜3に示す各種誘電体ペーストを用いて形成した誘電体層のb*値を測定することにより、色度を評価した。隔壁、誘電体層、電極基板を顕微分光計(オリンパス(株)製USPM−RU)で5倍の光学レンズを用いてb*値を測定した。異なる5点で得られた平均値を求めて隔壁のb*値とした。L*a*b*表色系の黄色度を表すb*値(JIS−Z−8729)を測定することができる。この黄色度を表すb*値が−5〜10の範囲にあることが好ましく、蛍光体から発生する可視光の吸収を抑制できるため、プラズマディスプレイの発光効率を低下させることがない。また、波長により吸収強度のバラツキを防止でき、プラズマディスプレイの色純度低下についても抑制することが可能となる。より好ましくは−2〜7である。
【0080】
また、焼成後の基板を割断した後、誘電体層中の空隙を測定することにより、誘電体層の空隙率を評価した。
【0081】
この隔壁を形成した基板に赤、緑、青3色の蛍光体層を形成し、前面板と合わせて封着し、ガス注入を行ってパネルを作製した。輝度評価については、有機ケイ素化合物(A)と有機ケイ素化合物であるオリゴマー(B)を添加していないプラズマディスプレイを白色点灯させたときの輝度を100として、実施例、比較例のディスプレイの輝度を相対値で評価した。
【0082】
(比較例1)
有機ケイ素化合物であるモノマーとオリゴマーを用いずにペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0083】
(比較例2)
有機ケイ素化合物であるモノマーとして、メチルフェニルジメトキシシランを5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0084】
(比較例3)
有機ケイ素化合物であるモノマーは用いず、重量平均分子量2000であるメチルフェニルシロキサンオリゴマーを5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0085】
(比較例4)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン2.5重量%、重量平均分子量300であるメチルフェニルシロキサンオリゴマーを2.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0086】
(比較例5)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン3.5重量%、重量平均分子量6000であるメチルフェニルシロキサンオリゴマーを1.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0087】
(比較例6)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン0.25重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンオリゴマーを0.25重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0088】
(比較例7)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン15重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンオリゴマーを15重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0089】
(比較例8)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてジメチルジメトキシシラン2.5重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンオリゴマーを2.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0090】
(比較例9)
有機ケイ素化合物であるモノマーとしてメチルフェニルジメトキシシラン4.75重量%、重量平均分子量2500であるメチルフェニルシロキサンの共重合オリゴマーを0.25重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。
【0091】
(比較例10)
有機ケイ素化合物であるモノマーやオリゴマーとして有機ケイ素化合物3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランを2.5重量%、感光性有機ケイ素化合物3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランからなるオリゴマー重合平均分子量5000を2.5重量%添加し、ペーストを作製した以外は実施例1を繰り返した。該ペーストは同時焼成を行うと、電極のエッジカールや、誘電体膜の亀裂が発生した。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低軟化点ガラス粉末、下記一般式(I)で表されるモノマー(A)、
【化1】

(ここで、R,R,R,Rはそれぞれ炭素数が1〜6の範囲内であるアルキル基、フェニル基またはフェニル基の1〜2の水素が炭素数が1〜6の範囲内であるアルキル基で置換された基、a,b,c,dはそれぞれ0以上の整数であり、a+b+c+dは4、c+dは1または2である。)
および下記一般式(II)で表され、重量平均分子量が500〜5000の範囲内であるオリゴマー(B)を含有し、
【化2】

(ここで、R〜R10はそれぞれ炭素数が1〜6の範囲内であるアルキル基、フェニル基またはフェニル基の1〜2の水素が、炭素数が1〜6の範囲内であるアルキル基で置換された基、e,f,gはそれぞれ0以上の整数である。)
前記モノマー(A)と前記オリゴマー(B)の合計の含有量が1〜20重量%の範囲内であり、前記モノマー(A)と前記オリゴマー(B)の重量基準の含有量の比が50:50〜90:10の範囲内であり、かつ前記モノマー(A)および前記オリゴマー(B)中に含まれるフェニル基の含有量が、前記モノマー(A)および前記オリゴマー(B)の合計量に対し、分子量換算で20〜50%の範囲内であることを特徴とする熱硬化性誘電体ペースト。
【請求項2】
基板上に請求項1に記載の熱硬化性誘電体ペーストを塗布し、焼成することにより誘電体層を形成することを特徴とするディスプレイ用部材の製造方法。

【公開番号】特開2011−210533(P2011−210533A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77067(P2010−77067)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】