熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手及び熱膨張剤収容装置
【課題】簡単に施工でき製作も容易で安価に得られる熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手を提供する
【解決手段】耐火二層管継手の受け口形の接続口を備えた合成樹脂製の継手内管の外周面に繊維混入モルタルの被覆層を形成し、被覆層の内側に火災の熱により膨張して管路の遮断のために該内管を押し潰す熱膨張手段を、管内方向へ膨張可能な薄手の帯状袋に粉末の熱膨張剤を収容して構成した。帯状袋を内三つ折りしたテープで形成し、或いは一対の二つ折りテープで形成し、或いは熱膨張剤の収容部とこれに連らなる蛇腹部を有する断面形状に形成する。帯状袋をアルミニウムにより形成し、帯状袋の内面に接着剤層を設けてこれに粉末の熱膨張剤を付着固定する。
【解決手段】耐火二層管継手の受け口形の接続口を備えた合成樹脂製の継手内管の外周面に繊維混入モルタルの被覆層を形成し、被覆層の内側に火災の熱により膨張して管路の遮断のために該内管を押し潰す熱膨張手段を、管内方向へ膨張可能な薄手の帯状袋に粉末の熱膨張剤を収容して構成した。帯状袋を内三つ折りしたテープで形成し、或いは一対の二つ折りテープで形成し、或いは熱膨張剤の収容部とこれに連らなる蛇腹部を有する断面形状に形成する。帯状袋をアルミニウムにより形成し、帯状袋の内面に接着剤層を設けてこれに粉末の熱膨張剤を付着固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の継手内管に繊維混入モルタルを被覆した構成の耐火二層管継手に適用して火災の熱で膨張する熱膨張手段により継手内管の管路を閉塞する作動を促進する形式の熱膨張閉塞型耐火二層管継手及び熱膨張剤収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高層住宅の床スラブなどの防火区画を貫通して設けられる管路には、火災時に防火区画を通じて火災の被害を波及させないように十分な耐火性能と防災性能を備えることが要望されている。このうち耐火性を備えた管路構成の一例として、床スラブに耐火二層管継手を埋設し、この継手の接続口に耐火二層管を接続したものが知られている。この耐火二層管継手は、ポリ塩化ビニール製の継手内管の周面が繊維混入モルタルで覆われており、この継手に接続される耐火二層管は、ポリ塩化ビニール製の内管に繊維混入モルタル製の外管を装着した構成のもので、耐火二層管継手と耐火二層管の接続部分には、耐火性のテープを巻き付けるか、或いは熱膨張性目地を介在させるなどして火災の熱が接続部分への侵入を防止している(特開2004−150619号公報 第2図、第3図参照)。尚、継手内管の周面を繊維混入モルタルで覆うには、継手内管を金型に収め、継手内管と金型の隙間に繊維混入モルタルを注入することにより行われている。
【0003】
上記した耐火二層管継手と耐火二層管で構成された管路を一層安価に構築するために、耐火二層管の代わりに内管のみ、例えばポリ塩化ビニール管のみを使用することが考えられるが、この場合は、ポリ塩化ビニール管に耐火性がないので、管継手の接続部に熱膨張性耐火材を取り付け、火災の際にはこの熱膨張性耐火材が膨張して継手内管を押し潰すことで管路の閉塞を促進し、これにより火災の被害が防火区画を介して他室へ波及することを阻止している(特開平9−152065号公報)。
【0004】
また、管路の継手に鋳物製のものを使用し、この継手にポリ塩化ビニールなどの合成樹脂製の配管を接続して管路を構築することも提案されているが、この場合も配管が溶損し易いので鋳鉄製継手の端部に配管を囲む熱膨張性耐火材を取り付け、火災の際には熱膨張性耐火材が膨張して配管を押し潰し、管路を閉塞することも提案されている(特開2008−208653号公報)。
【特許文献1】特開2004−150619号公報
【特許文献2】特開平9−152065号公報
【特許文献3】特開2008−208653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、耐火性テープを巻き付け、或いは熱膨張性目地を使用する防火措置は、管路を閉塞するものではないから、管路が損傷した場合に煙や熱風が継手を介して防火区画を越えて火災の被害が波及することがある。これに対し、特許文献2に記載されたような熱膨張性耐火材が配管を押し潰して管路の閉塞を促進する形式のものは、管路が閉塞されるので、耐火性の継手にポリ塩化ビニール管のような耐火性のない比較的安価な配管を接続することができ、かなり長い時間に亘って管路を閉塞し続けることができるという利点がある。この管路の閉塞状態について更に説明すると、熱膨張性耐火材は、合成樹脂製の配管が軟化する温度になったとき膨張を開始し、軟化した配管を押し潰すことで管路を閉塞するが、時間が経過すると軟化した配管は炭化し、火炎等で飛散するまでの間、その閉塞状態を続けることができる。こうした閉塞式のものは、熱膨張性耐火材を取付けるための特別な装置を設けると配管費用が高くなり、施工に時間が掛かる不都合がある。
【0006】
また、これに使用される熱膨張性耐火材には各種のものがあり、例えば熱膨張性黒鉛、加硫ゴム、亜リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムを含んだ成形品が使用されているが、嵩張るうえに生産コストが掛かりかなり高価である。
【0007】
本発明は、管路閉塞のためのこうした不都合等を解消し、簡単に施工でき製作も容易で安価に得られる熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記課題を解決すべく、耐火二層管継手の受け口形の接続口を備えた合成樹脂製の継手内管の外周面に、繊維混入モルタルの被覆層を形成するとともに該被覆層の内側に火災の熱により膨張して管路の遮断のために該内管を押し潰す熱膨張手段を継手内管の外周面に捲回して埋設したものに於いて、該熱膨張手段を、管内方向へ膨張可能な薄手の帯状袋に粉末の熱膨張剤を収容して構成した。この熱膨張手段を構成する帯状袋は、内三つ折りしたテープにより形成し、その折り片側の面を上記継手内管の外周面に当接させて設けることにより、或いは、一対の二つ折りテープで構成し、その一方の二つ折りテープに熱膨張剤を収容し、その開口部を、他方の二つ折りテープを入り組ませて塞ぐことにより、或いは、熱膨張剤の収容部とこれに連らなる蛇腹部を有する断面形状に構成し、蛇腹部側の面を上記継手内管の外周面に当接させて設けることにより、製作される。
【0009】
上記帯状袋を、熱伝導性がよく、薄くて比較的柔軟で且つ形状保持性があり、耐火性の良いアルミニウムにより形成し、或いは、帯状袋の内面に接着剤層を設けてこれに粉末の熱膨張剤を付着固定し、或いは、上記熱膨張手段を、上記継手内管の接続口の奥部に対応した外周面に設けた構成とすることもできる。
【0010】
この熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手は、合成樹脂製の継手内管の受け口形の接続口の外周面に、粉末の熱膨張剤を収容したアルミニウム製の薄手の膨張可能な帯状袋を巻き付けて固定し、この継手内管を金型内に収め、継手内管と金型内面との間の空間に繊維混入モルタルを注入して繊維混入モルタルの被覆層を形成し、これを金型内から取り出して養生することにより製作され、製作の上で必要なら、上記熱膨張手段をその上面を覆った粘着テープにより継手内管に貼着してもよい。配管コストを削減するために、この耐火二層管継手に接続される配管を、合成樹脂製の管又は合成樹脂製の透明管としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手は、これに継手内管が軟化するような火災の熱が作用したとき、熱膨張手段を構成する帯状袋内の粉末の熱膨張剤が膨張して該継手内管を押し潰し、継手内管による管路の閉塞を促進するもので、耐火二層管継手の受け口形の接続口を備えた合成樹脂製の継手内管の外周面に繊維混入モルタルの被覆層を形成するとともに該被覆層の内側に埋設される熱膨張手段を、管内方向へ膨張可能な薄手の帯状袋に粉末の熱膨張剤を収容して構成したので、従来の熱膨張性耐火材のように加硫ゴムや亜リン酸アルミニウムなどの添加物が不要で成形加工なども省略でき、比較的安価な帯状袋と熱膨張性黒鉛の粉末で製作できるから、高倍率の膨張が得られると共に製作コストが廉価になり、帯状袋は被覆層の内側に位置するので外力から保護されて変形や破損のおそれもなく、長期に亘って閉塞機能を維持できる。また、配管施工に際して熱膨張手段を取付けるための装置や取付け作業が要らないから、施工を迅速容易に行える。
【0012】
該熱膨張手段を構成する帯状袋を内三つ折りしたテープにより形成し、その折り片側の面を継手内管の外周面に当接させて設けると、粉末の熱膨張剤の膨張時に折り片部分が押されて緩むので帯状袋が小さな抵抗で膨張することができ、膨張する熱膨張剤の粉末の飛散を抑止しつつ軟化した継手内管を確実に押し潰して管路の閉塞を促進できる。
また、熱膨張手段を構成する帯状袋を、一対の二つ折りテープで構成し、その一方の二つ折りテープに熱膨張剤を収容し、その開口部を、他方の二つ折りテープを入り組ませることにより塞いだ場合、袋内の熱膨張剤の膨張時には二つ折りテープの継手内管側の重なり部分が開き、この場合も抵抗少なく袋が膨張し、熱膨張剤の粉末の飛散を防止しつつ軟化した継手内管を確実に押し潰すようにして管路の閉塞が促進される。
更に、熱膨張手段を構成する帯状袋を、熱膨張剤の収容部とこれに連らなる蛇腹部を有する断面形状に構成し、蛇腹部側の面を上記継手内管の外周面に当接させて設けた場合、袋内の熱膨張剤は蛇腹部を拡大しながら膨張し、前記テープの場合と同様に、熱膨張剤の粉末の飛散を防止しつつ軟化した継手内管を確実に押し潰すように管路の閉塞を促進できる。尚、蛇腹部の先端は適当な手段により封鎖することが好ましい。
【0013】
上記帯状袋をアルミニウムにより形成すると、熱伝導性や耐火性が良いので温度に応じて迅速に熱膨張剤を膨張させることができ、形状保持性や防湿性も良く被覆層が形成し易くしかも耐久性の良い帯状袋が得られる。
【0014】
上記帯状袋の内面に接着剤層を設けてこれに粉末の熱膨張剤を付着固定することで、袋内の熱膨張剤の粉末が片寄らず全体に均一に位置させることができ、製作時や運搬時、施工時の振動や衝撃の対しても粉末が安定するので、継手内管をその周囲から均一に押し潰して迅速な閉塞作動を行える。
【0015】
上記継手内管は受け口形の接続口が形成されたものであり、接続口の奥部は段部が形成されるため口径が小さいので、この奥部に対応した外周面に上記熱膨張手段を設けると、口径の大きい接続口の周囲に設けた場合よりも短時間で管路の閉塞促進を行える。
【0016】
耐火二層管継手は、合成樹脂製の継手内管を金型に収め、継手内管と金型内面との間の空間に繊維混入モルタルを注入して繊維混入モルタルの被覆層を形成し、これを金型から取り出して養生することにより製作されるが、この継手内管の受け口形の接続口の外周面に、粉末の熱膨張剤を収容したアルミニウム製の薄手の膨張可能な帯状袋を巻き付けて固定しておくことで、金型内のモルタルの流れにより袋が変形したり熱膨張剤が移動したりすることもなく、モルタルの流れを損なわずに成形性のよい加工が行える。この熱膨張手段は、その上面全体を覆うようなクラフトテープやアルミガラスクロスの粘着テープにより継手内管に貼着することで、金型内のモルタルの流れを損なわず、モルタルの流れによる袋の変形が防止できる。
【0017】
上記耐火二層管継手には熱膨張手段が備わっているので、この継手に接続される配管に、耐火性の乏しい合成樹脂製の管或いは合成樹脂製の透明管を選択しても火災に対する安全性を維持でき、配管コストを低廉化できる。また、前記した構成の各帯状袋は、継手以外の他の構成の防火用配管遮断装置に転用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態を別紙図面に基づき説明すると、図1及び図2に於いて符号1は耐火二層管継手の受け口形の接続口2を備えたポリ塩化ビニール製の継手内管を示し、この継手内管1の外周面には熱膨張手段3が設けられ、更に図3に示すように繊維混入モルタルの被覆層4を該外周面に形成することで熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手5が得られる。こうした構成は従来の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手の構成と特に変わりが無く、図4に示すように床スラブなどの防火区画6を貫通して設置され、火災の際には背面が固い被覆層4でバックアップされた熱膨張手段3が膨張し、火災の熱で軟化した継手内管1を押し潰すことを促進して管路を閉塞することも従来のものと同様であるが、本発明のものは、該熱膨張手段3を、図5及び図6に示すような、継手内管の管内方へ膨張可能な薄手の帯状袋7に粉末の熱膨張剤8を収容して構成したことを特徴とするもので、この特徴ある構成とすることにより安価に継手6を製作でき、熱膨張手段3を設けた継手内管1を金型(図示してない)に収めて継手5を製作するとき、良好な繊維混入モルタルの流れを生じさせると共に帯状袋7の変形を起こさずにきれいな被覆層4を形成できる。
【0019】
該熱膨張手段3を構成する帯状袋7は、熱膨張剤8の膨張を妨げない程度の柔軟性と熱膨張剤8が漏れ出さない程度の丈夫さと耐火性を有するもので製作され、図6に示した例では、断面形状を有する内三つ折りしたアルミニウムフィルム製のテープ9により形成され、その折り片側の面10を該継手内管1の外周面に当接させて図1のように周回し、該帯状袋7の上面にクラフトテープ製の粘着テープ19を貼着して外周面に固定した。折り片側の面10は、図3に示すように継手内管1の外周面に対して接しているだけであるから、その内部の熱膨張剤8が膨張する際には面10を管内方向へ押し膨らませて比較的自由に膨張することができ、軟化した継手内管1を強く押し潰すことができる。その状態は図7に示す如くであり、熱で軟化した継手内管1が熱膨張剤8の膨張力で押されて管内方向へせり出し、火災の煙や火炎が流通しないように管内を閉塞する。
【0020】
熱膨張黒鉛などの熱膨張剤8は通常は粉末であり、このままでは取り扱いが面倒で取り付けも難しいため従来は各種材料を混合して所望の形状に加工成形して使用するのが一般的で、このような処理のために熱膨張手段3が高価になっていたが、本発明の如く薄手の帯状袋7の構成とすることで粉末の熱膨張剤8の単体をそのまま利用でき、非熱膨張物が混入していないので高倍率の膨張が得られるようになる。この実施例では、酸化処理した黒鉛粉末(市販品 エア・ウオーター・ケミカル(株)製 商品名SS−3)を熱膨張剤8として使用した。この黒鉛は、1gは1.5ccで260℃になると約330cc以上に膨張する特性を有する。図1の継手内管1に適用した例では、厚さ20ミクロン、幅10.0cm、長さ450cmのアルミニウムフィルム製テープにより帯状袋7を作成し、その内部に10gの熱膨張性黒鉛の熱膨張剤8を均一に分散させて収容した。
【0021】
本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手5として、図4に見られるように、縦管11を接続のための上下の接続口2、2の他に横枝管12、12が接続される枝管接続口13、13を備えた集合管形状のものを説明したが、図11に示したような縦管の下端に接続される脚部継手形状のものなどの耐火二層管継手にも適用できる。また、これらの縦管11や横枝管12は、内管が合成樹脂管で外管が繊維混入モルタル管からなる耐火二層管(図示してない)であることが防火上は好ましいが、非耐火性の合成樹脂管を使用しても熱膨張手段3が設けられているため火災の煙などが防火区画6を越えて上層階へ及ぶことを防止できる。
【0022】
図8に示した帯状袋7は、アルミニウムフィルム製の一対の二つ折りテープ15で構成し、その一方の二つ折りテープ15aに熱膨張剤8を収容し、テープ15aの開口部に、他方の二つ折りテープ15bを入り組ませて塞いで構成したもので、熱膨張剤8の膨張時は二つ折りテープ15の側方が張り出して膨張し、継手内管1が管内を閉塞することを促進援助する。
また、図9及び図10に示した帯状袋7は、熱膨張剤8の収容部16とこれに連らなる蛇腹部17を有する断面形状にアルミニウムフィルム製のテープにより構成したもので、蛇腹部側の面18を継手内管1の外周面に当接するように設け、熱膨張剤8の膨張時は蛇腹部17が張り出して継手内管1の閉塞を促進するように作動する。蛇腹部17の先端部は、必要に応じて折り曲げ加工や封止加工が施される。
これらの帯状袋7は前記三つ折りの帯状袋と同様の外形寸法に製作され、内部に10g
【0023】
これらの帯状袋7内に均一に分散させて熱膨張剤8を収容することは比較的難しく、帯状袋7を耐火二層管継手5に取付けた後には輸送などの振動により粉末の熱膨張剤8が偏ってしまい、十分に膨張機能を発揮できなくなることが考えられ、こうした不都合を防ぐために帯状袋7の内面に接着剤層(図示してない)を設けてこれに粉末の熱膨張剤を付着固定することが望ましい。
【0024】
熱膨張手段3を構成する帯状袋7は、継手内管1の外周を取り巻いて設けられるが、この熱膨張手段3を、図3のように継手内管1の受け口形の接続口2の奥部の段部に対応した外周面に設けると、継手内管1の内径が接続口2の前方部分よりも小さくなっているため、熱膨張手段3が膨張開始して管内を閉塞するまで時間を短くすることができ、安全性が高まる。
【0025】
本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手5は、ポリ塩化ビニール製の継手内管1の受け口形の接続口2の外周面に、熱膨張性黒鉛の粉末のみからなる熱膨張剤8を収容したアルミニウムフィルム製の薄手の膨張可能な帯状袋7を巻き付けて固定し、この帯状袋7が取付けられた継手内管1を金型(図示してない)内に収め、従来の耐火二層管継手の製作と同様に継手内管1と金型内面との間の空間に繊維混入モルタルを注入して繊維混入モルタルの被覆層4を形成し、これを金型内から取り出して養生することにより製作した。この場合は、帯状袋7は熱膨張する粉末の熱膨張剤8のみを収容するので、薄手に構成でき、継手内管1の外周面に取付けても金型内での繊維混入モルタルの流れをあまり妨げず、きれいな被覆層4を形成できる。熱膨張手段3の帯状袋7は、その上面を覆って設けた粘着テープ19により継手内管1の外周面に貼着し、帯状袋7の前面が軟化した継手内管1を押して膨張することが許容されるようにした。
【0026】
本発明の耐火二層管継手5は、継手本体に被覆層4で覆って管路閉塞のための熱膨張手段3が設けられているから、これに接続される配管、例えば横枝管12に安価な合成樹脂製の管を使用しても熱膨張手段3が作動している間は火災により横枝管12が破損することはなく、配管コストを低廉化できる。
【0027】
熱膨張性黒鉛(エア・ウオーター・ケミカル(株)製 SS−3)10gをアルミニウムフィルムテープにより製作した図7の断面形状を有する帯状袋7に均一に収容し、これを継手内管1の接続口2の奥部に捲き付け、アルミガラスクロスの粘着テープ19で固定した。接続口2の口径は100mmである。これを金型内に収容し、継手内管1と金型内面との隙間に繊維混入モルタルを注入して被覆層4を形成した。金型を解体して被覆層4の形成された継手内管1を取り出し、養生して熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手5を作製した。
この継手5を図4のように防火区画6にモルタルで埋設し、縦管11には耐火二層管を接続するとともに横枝管12にポリ塩化ビニールの管を接続した。
そして継手5の下方の室をISO834−1の標準加熱曲線にしたがって加熱したところ、20分経過の時点で継手内管1が軟化し始め、25分経過したとき熱膨張剤8が膨張して継手内管1を押し潰し、管路内が軟化した継手内管1により閉塞された。この閉塞状態は1時間15分経過するまで継続し、この間、継手内管1は炭化するも上方の縦管や横枝管12には変化が無かった。
【0028】
帯状袋7の材料として、例えばセラミックペーパーなども使用できる。また、図示した各種の帯状袋7は、熱膨張剤収容装置として他の構成の防火用配管遮断装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手を構成する継手内管に帯状袋を取付けた状態の側面図
【図2】図1の一部切断側面図
【図3】図1の継手内管に被覆層を形成した状態の一部切断側面図
【図4】本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手の使用状態の側面図
【図5】帯状袋の正面図
【図6】図5の拡大断面図
【図7】作動状態の説明図
【図8】帯状袋の変形例の断面図
【図9】帯状袋の他の変形例の断面図
【図10】図9の帯状袋の作動状態の断面図
【図11】本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手の他の実施例の一部切断側面図
【符号の説明】
【0030】
1 継手内管、2 接続口、3 熱膨張手段、4 被覆層、5 熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手、7 帯状袋、8 熱膨張剤、9 テープ、10 折り片側の面、15 二つ折りテープ、15a 一方の二つ折りテープ、15b 他方の二つ折りテープ、16 収容部、17 蛇腹部、18 蛇腹部側の面、19 粘着テープ、
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の継手内管に繊維混入モルタルを被覆した構成の耐火二層管継手に適用して火災の熱で膨張する熱膨張手段により継手内管の管路を閉塞する作動を促進する形式の熱膨張閉塞型耐火二層管継手及び熱膨張剤収容装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高層住宅の床スラブなどの防火区画を貫通して設けられる管路には、火災時に防火区画を通じて火災の被害を波及させないように十分な耐火性能と防災性能を備えることが要望されている。このうち耐火性を備えた管路構成の一例として、床スラブに耐火二層管継手を埋設し、この継手の接続口に耐火二層管を接続したものが知られている。この耐火二層管継手は、ポリ塩化ビニール製の継手内管の周面が繊維混入モルタルで覆われており、この継手に接続される耐火二層管は、ポリ塩化ビニール製の内管に繊維混入モルタル製の外管を装着した構成のもので、耐火二層管継手と耐火二層管の接続部分には、耐火性のテープを巻き付けるか、或いは熱膨張性目地を介在させるなどして火災の熱が接続部分への侵入を防止している(特開2004−150619号公報 第2図、第3図参照)。尚、継手内管の周面を繊維混入モルタルで覆うには、継手内管を金型に収め、継手内管と金型の隙間に繊維混入モルタルを注入することにより行われている。
【0003】
上記した耐火二層管継手と耐火二層管で構成された管路を一層安価に構築するために、耐火二層管の代わりに内管のみ、例えばポリ塩化ビニール管のみを使用することが考えられるが、この場合は、ポリ塩化ビニール管に耐火性がないので、管継手の接続部に熱膨張性耐火材を取り付け、火災の際にはこの熱膨張性耐火材が膨張して継手内管を押し潰すことで管路の閉塞を促進し、これにより火災の被害が防火区画を介して他室へ波及することを阻止している(特開平9−152065号公報)。
【0004】
また、管路の継手に鋳物製のものを使用し、この継手にポリ塩化ビニールなどの合成樹脂製の配管を接続して管路を構築することも提案されているが、この場合も配管が溶損し易いので鋳鉄製継手の端部に配管を囲む熱膨張性耐火材を取り付け、火災の際には熱膨張性耐火材が膨張して配管を押し潰し、管路を閉塞することも提案されている(特開2008−208653号公報)。
【特許文献1】特開2004−150619号公報
【特許文献2】特開平9−152065号公報
【特許文献3】特開2008−208653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、耐火性テープを巻き付け、或いは熱膨張性目地を使用する防火措置は、管路を閉塞するものではないから、管路が損傷した場合に煙や熱風が継手を介して防火区画を越えて火災の被害が波及することがある。これに対し、特許文献2に記載されたような熱膨張性耐火材が配管を押し潰して管路の閉塞を促進する形式のものは、管路が閉塞されるので、耐火性の継手にポリ塩化ビニール管のような耐火性のない比較的安価な配管を接続することができ、かなり長い時間に亘って管路を閉塞し続けることができるという利点がある。この管路の閉塞状態について更に説明すると、熱膨張性耐火材は、合成樹脂製の配管が軟化する温度になったとき膨張を開始し、軟化した配管を押し潰すことで管路を閉塞するが、時間が経過すると軟化した配管は炭化し、火炎等で飛散するまでの間、その閉塞状態を続けることができる。こうした閉塞式のものは、熱膨張性耐火材を取付けるための特別な装置を設けると配管費用が高くなり、施工に時間が掛かる不都合がある。
【0006】
また、これに使用される熱膨張性耐火材には各種のものがあり、例えば熱膨張性黒鉛、加硫ゴム、亜リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウムを含んだ成形品が使用されているが、嵩張るうえに生産コストが掛かりかなり高価である。
【0007】
本発明は、管路閉塞のためのこうした不都合等を解消し、簡単に施工でき製作も容易で安価に得られる熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、上記課題を解決すべく、耐火二層管継手の受け口形の接続口を備えた合成樹脂製の継手内管の外周面に、繊維混入モルタルの被覆層を形成するとともに該被覆層の内側に火災の熱により膨張して管路の遮断のために該内管を押し潰す熱膨張手段を継手内管の外周面に捲回して埋設したものに於いて、該熱膨張手段を、管内方向へ膨張可能な薄手の帯状袋に粉末の熱膨張剤を収容して構成した。この熱膨張手段を構成する帯状袋は、内三つ折りしたテープにより形成し、その折り片側の面を上記継手内管の外周面に当接させて設けることにより、或いは、一対の二つ折りテープで構成し、その一方の二つ折りテープに熱膨張剤を収容し、その開口部を、他方の二つ折りテープを入り組ませて塞ぐことにより、或いは、熱膨張剤の収容部とこれに連らなる蛇腹部を有する断面形状に構成し、蛇腹部側の面を上記継手内管の外周面に当接させて設けることにより、製作される。
【0009】
上記帯状袋を、熱伝導性がよく、薄くて比較的柔軟で且つ形状保持性があり、耐火性の良いアルミニウムにより形成し、或いは、帯状袋の内面に接着剤層を設けてこれに粉末の熱膨張剤を付着固定し、或いは、上記熱膨張手段を、上記継手内管の接続口の奥部に対応した外周面に設けた構成とすることもできる。
【0010】
この熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手は、合成樹脂製の継手内管の受け口形の接続口の外周面に、粉末の熱膨張剤を収容したアルミニウム製の薄手の膨張可能な帯状袋を巻き付けて固定し、この継手内管を金型内に収め、継手内管と金型内面との間の空間に繊維混入モルタルを注入して繊維混入モルタルの被覆層を形成し、これを金型内から取り出して養生することにより製作され、製作の上で必要なら、上記熱膨張手段をその上面を覆った粘着テープにより継手内管に貼着してもよい。配管コストを削減するために、この耐火二層管継手に接続される配管を、合成樹脂製の管又は合成樹脂製の透明管としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手は、これに継手内管が軟化するような火災の熱が作用したとき、熱膨張手段を構成する帯状袋内の粉末の熱膨張剤が膨張して該継手内管を押し潰し、継手内管による管路の閉塞を促進するもので、耐火二層管継手の受け口形の接続口を備えた合成樹脂製の継手内管の外周面に繊維混入モルタルの被覆層を形成するとともに該被覆層の内側に埋設される熱膨張手段を、管内方向へ膨張可能な薄手の帯状袋に粉末の熱膨張剤を収容して構成したので、従来の熱膨張性耐火材のように加硫ゴムや亜リン酸アルミニウムなどの添加物が不要で成形加工なども省略でき、比較的安価な帯状袋と熱膨張性黒鉛の粉末で製作できるから、高倍率の膨張が得られると共に製作コストが廉価になり、帯状袋は被覆層の内側に位置するので外力から保護されて変形や破損のおそれもなく、長期に亘って閉塞機能を維持できる。また、配管施工に際して熱膨張手段を取付けるための装置や取付け作業が要らないから、施工を迅速容易に行える。
【0012】
該熱膨張手段を構成する帯状袋を内三つ折りしたテープにより形成し、その折り片側の面を継手内管の外周面に当接させて設けると、粉末の熱膨張剤の膨張時に折り片部分が押されて緩むので帯状袋が小さな抵抗で膨張することができ、膨張する熱膨張剤の粉末の飛散を抑止しつつ軟化した継手内管を確実に押し潰して管路の閉塞を促進できる。
また、熱膨張手段を構成する帯状袋を、一対の二つ折りテープで構成し、その一方の二つ折りテープに熱膨張剤を収容し、その開口部を、他方の二つ折りテープを入り組ませることにより塞いだ場合、袋内の熱膨張剤の膨張時には二つ折りテープの継手内管側の重なり部分が開き、この場合も抵抗少なく袋が膨張し、熱膨張剤の粉末の飛散を防止しつつ軟化した継手内管を確実に押し潰すようにして管路の閉塞が促進される。
更に、熱膨張手段を構成する帯状袋を、熱膨張剤の収容部とこれに連らなる蛇腹部を有する断面形状に構成し、蛇腹部側の面を上記継手内管の外周面に当接させて設けた場合、袋内の熱膨張剤は蛇腹部を拡大しながら膨張し、前記テープの場合と同様に、熱膨張剤の粉末の飛散を防止しつつ軟化した継手内管を確実に押し潰すように管路の閉塞を促進できる。尚、蛇腹部の先端は適当な手段により封鎖することが好ましい。
【0013】
上記帯状袋をアルミニウムにより形成すると、熱伝導性や耐火性が良いので温度に応じて迅速に熱膨張剤を膨張させることができ、形状保持性や防湿性も良く被覆層が形成し易くしかも耐久性の良い帯状袋が得られる。
【0014】
上記帯状袋の内面に接着剤層を設けてこれに粉末の熱膨張剤を付着固定することで、袋内の熱膨張剤の粉末が片寄らず全体に均一に位置させることができ、製作時や運搬時、施工時の振動や衝撃の対しても粉末が安定するので、継手内管をその周囲から均一に押し潰して迅速な閉塞作動を行える。
【0015】
上記継手内管は受け口形の接続口が形成されたものであり、接続口の奥部は段部が形成されるため口径が小さいので、この奥部に対応した外周面に上記熱膨張手段を設けると、口径の大きい接続口の周囲に設けた場合よりも短時間で管路の閉塞促進を行える。
【0016】
耐火二層管継手は、合成樹脂製の継手内管を金型に収め、継手内管と金型内面との間の空間に繊維混入モルタルを注入して繊維混入モルタルの被覆層を形成し、これを金型から取り出して養生することにより製作されるが、この継手内管の受け口形の接続口の外周面に、粉末の熱膨張剤を収容したアルミニウム製の薄手の膨張可能な帯状袋を巻き付けて固定しておくことで、金型内のモルタルの流れにより袋が変形したり熱膨張剤が移動したりすることもなく、モルタルの流れを損なわずに成形性のよい加工が行える。この熱膨張手段は、その上面全体を覆うようなクラフトテープやアルミガラスクロスの粘着テープにより継手内管に貼着することで、金型内のモルタルの流れを損なわず、モルタルの流れによる袋の変形が防止できる。
【0017】
上記耐火二層管継手には熱膨張手段が備わっているので、この継手に接続される配管に、耐火性の乏しい合成樹脂製の管或いは合成樹脂製の透明管を選択しても火災に対する安全性を維持でき、配管コストを低廉化できる。また、前記した構成の各帯状袋は、継手以外の他の構成の防火用配管遮断装置に転用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態を別紙図面に基づき説明すると、図1及び図2に於いて符号1は耐火二層管継手の受け口形の接続口2を備えたポリ塩化ビニール製の継手内管を示し、この継手内管1の外周面には熱膨張手段3が設けられ、更に図3に示すように繊維混入モルタルの被覆層4を該外周面に形成することで熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手5が得られる。こうした構成は従来の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手の構成と特に変わりが無く、図4に示すように床スラブなどの防火区画6を貫通して設置され、火災の際には背面が固い被覆層4でバックアップされた熱膨張手段3が膨張し、火災の熱で軟化した継手内管1を押し潰すことを促進して管路を閉塞することも従来のものと同様であるが、本発明のものは、該熱膨張手段3を、図5及び図6に示すような、継手内管の管内方へ膨張可能な薄手の帯状袋7に粉末の熱膨張剤8を収容して構成したことを特徴とするもので、この特徴ある構成とすることにより安価に継手6を製作でき、熱膨張手段3を設けた継手内管1を金型(図示してない)に収めて継手5を製作するとき、良好な繊維混入モルタルの流れを生じさせると共に帯状袋7の変形を起こさずにきれいな被覆層4を形成できる。
【0019】
該熱膨張手段3を構成する帯状袋7は、熱膨張剤8の膨張を妨げない程度の柔軟性と熱膨張剤8が漏れ出さない程度の丈夫さと耐火性を有するもので製作され、図6に示した例では、断面形状を有する内三つ折りしたアルミニウムフィルム製のテープ9により形成され、その折り片側の面10を該継手内管1の外周面に当接させて図1のように周回し、該帯状袋7の上面にクラフトテープ製の粘着テープ19を貼着して外周面に固定した。折り片側の面10は、図3に示すように継手内管1の外周面に対して接しているだけであるから、その内部の熱膨張剤8が膨張する際には面10を管内方向へ押し膨らませて比較的自由に膨張することができ、軟化した継手内管1を強く押し潰すことができる。その状態は図7に示す如くであり、熱で軟化した継手内管1が熱膨張剤8の膨張力で押されて管内方向へせり出し、火災の煙や火炎が流通しないように管内を閉塞する。
【0020】
熱膨張黒鉛などの熱膨張剤8は通常は粉末であり、このままでは取り扱いが面倒で取り付けも難しいため従来は各種材料を混合して所望の形状に加工成形して使用するのが一般的で、このような処理のために熱膨張手段3が高価になっていたが、本発明の如く薄手の帯状袋7の構成とすることで粉末の熱膨張剤8の単体をそのまま利用でき、非熱膨張物が混入していないので高倍率の膨張が得られるようになる。この実施例では、酸化処理した黒鉛粉末(市販品 エア・ウオーター・ケミカル(株)製 商品名SS−3)を熱膨張剤8として使用した。この黒鉛は、1gは1.5ccで260℃になると約330cc以上に膨張する特性を有する。図1の継手内管1に適用した例では、厚さ20ミクロン、幅10.0cm、長さ450cmのアルミニウムフィルム製テープにより帯状袋7を作成し、その内部に10gの熱膨張性黒鉛の熱膨張剤8を均一に分散させて収容した。
【0021】
本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手5として、図4に見られるように、縦管11を接続のための上下の接続口2、2の他に横枝管12、12が接続される枝管接続口13、13を備えた集合管形状のものを説明したが、図11に示したような縦管の下端に接続される脚部継手形状のものなどの耐火二層管継手にも適用できる。また、これらの縦管11や横枝管12は、内管が合成樹脂管で外管が繊維混入モルタル管からなる耐火二層管(図示してない)であることが防火上は好ましいが、非耐火性の合成樹脂管を使用しても熱膨張手段3が設けられているため火災の煙などが防火区画6を越えて上層階へ及ぶことを防止できる。
【0022】
図8に示した帯状袋7は、アルミニウムフィルム製の一対の二つ折りテープ15で構成し、その一方の二つ折りテープ15aに熱膨張剤8を収容し、テープ15aの開口部に、他方の二つ折りテープ15bを入り組ませて塞いで構成したもので、熱膨張剤8の膨張時は二つ折りテープ15の側方が張り出して膨張し、継手内管1が管内を閉塞することを促進援助する。
また、図9及び図10に示した帯状袋7は、熱膨張剤8の収容部16とこれに連らなる蛇腹部17を有する断面形状にアルミニウムフィルム製のテープにより構成したもので、蛇腹部側の面18を継手内管1の外周面に当接するように設け、熱膨張剤8の膨張時は蛇腹部17が張り出して継手内管1の閉塞を促進するように作動する。蛇腹部17の先端部は、必要に応じて折り曲げ加工や封止加工が施される。
これらの帯状袋7は前記三つ折りの帯状袋と同様の外形寸法に製作され、内部に10g
【0023】
これらの帯状袋7内に均一に分散させて熱膨張剤8を収容することは比較的難しく、帯状袋7を耐火二層管継手5に取付けた後には輸送などの振動により粉末の熱膨張剤8が偏ってしまい、十分に膨張機能を発揮できなくなることが考えられ、こうした不都合を防ぐために帯状袋7の内面に接着剤層(図示してない)を設けてこれに粉末の熱膨張剤を付着固定することが望ましい。
【0024】
熱膨張手段3を構成する帯状袋7は、継手内管1の外周を取り巻いて設けられるが、この熱膨張手段3を、図3のように継手内管1の受け口形の接続口2の奥部の段部に対応した外周面に設けると、継手内管1の内径が接続口2の前方部分よりも小さくなっているため、熱膨張手段3が膨張開始して管内を閉塞するまで時間を短くすることができ、安全性が高まる。
【0025】
本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手5は、ポリ塩化ビニール製の継手内管1の受け口形の接続口2の外周面に、熱膨張性黒鉛の粉末のみからなる熱膨張剤8を収容したアルミニウムフィルム製の薄手の膨張可能な帯状袋7を巻き付けて固定し、この帯状袋7が取付けられた継手内管1を金型(図示してない)内に収め、従来の耐火二層管継手の製作と同様に継手内管1と金型内面との間の空間に繊維混入モルタルを注入して繊維混入モルタルの被覆層4を形成し、これを金型内から取り出して養生することにより製作した。この場合は、帯状袋7は熱膨張する粉末の熱膨張剤8のみを収容するので、薄手に構成でき、継手内管1の外周面に取付けても金型内での繊維混入モルタルの流れをあまり妨げず、きれいな被覆層4を形成できる。熱膨張手段3の帯状袋7は、その上面を覆って設けた粘着テープ19により継手内管1の外周面に貼着し、帯状袋7の前面が軟化した継手内管1を押して膨張することが許容されるようにした。
【0026】
本発明の耐火二層管継手5は、継手本体に被覆層4で覆って管路閉塞のための熱膨張手段3が設けられているから、これに接続される配管、例えば横枝管12に安価な合成樹脂製の管を使用しても熱膨張手段3が作動している間は火災により横枝管12が破損することはなく、配管コストを低廉化できる。
【0027】
熱膨張性黒鉛(エア・ウオーター・ケミカル(株)製 SS−3)10gをアルミニウムフィルムテープにより製作した図7の断面形状を有する帯状袋7に均一に収容し、これを継手内管1の接続口2の奥部に捲き付け、アルミガラスクロスの粘着テープ19で固定した。接続口2の口径は100mmである。これを金型内に収容し、継手内管1と金型内面との隙間に繊維混入モルタルを注入して被覆層4を形成した。金型を解体して被覆層4の形成された継手内管1を取り出し、養生して熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手5を作製した。
この継手5を図4のように防火区画6にモルタルで埋設し、縦管11には耐火二層管を接続するとともに横枝管12にポリ塩化ビニールの管を接続した。
そして継手5の下方の室をISO834−1の標準加熱曲線にしたがって加熱したところ、20分経過の時点で継手内管1が軟化し始め、25分経過したとき熱膨張剤8が膨張して継手内管1を押し潰し、管路内が軟化した継手内管1により閉塞された。この閉塞状態は1時間15分経過するまで継続し、この間、継手内管1は炭化するも上方の縦管や横枝管12には変化が無かった。
【0028】
帯状袋7の材料として、例えばセラミックペーパーなども使用できる。また、図示した各種の帯状袋7は、熱膨張剤収容装置として他の構成の防火用配管遮断装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手を構成する継手内管に帯状袋を取付けた状態の側面図
【図2】図1の一部切断側面図
【図3】図1の継手内管に被覆層を形成した状態の一部切断側面図
【図4】本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手の使用状態の側面図
【図5】帯状袋の正面図
【図6】図5の拡大断面図
【図7】作動状態の説明図
【図8】帯状袋の変形例の断面図
【図9】帯状袋の他の変形例の断面図
【図10】図9の帯状袋の作動状態の断面図
【図11】本発明の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手の他の実施例の一部切断側面図
【符号の説明】
【0030】
1 継手内管、2 接続口、3 熱膨張手段、4 被覆層、5 熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手、7 帯状袋、8 熱膨張剤、9 テープ、10 折り片側の面、15 二つ折りテープ、15a 一方の二つ折りテープ、15b 他方の二つ折りテープ、16 収容部、17 蛇腹部、18 蛇腹部側の面、19 粘着テープ、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火二層管継手の受け口形の接続口を備えた合成樹脂製の継手内管の外周面に、繊維混入モルタルの被覆層を形成するとともに該被覆層の内側に火災の熱により膨張して管路の遮断のために該内管を押し潰す熱膨張手段を継手内管の外周面に捲回して埋設したものに於いて、該熱膨張手段を、管内方向へ膨張可能な薄手の帯状袋に粉末の熱膨張剤を収容して構成したことを特徴とする熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項2】
上記熱膨張手段を構成する帯状袋を内三つ折りしたテープにより形成し、その折り片側の面を上記継手内管の外周面に当接させて設けたことを特徴とする請求項1に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項3】
上記熱膨張手段を構成する帯状袋を、一対の二つ折りテープで構成し、その一方の二つ折りテープに熱膨張剤を収容し、その開口部を、他方の二つ折りテープを入り組ませて塞いだことを特徴とする請求項1に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項4】
上記熱膨張手段を構成する帯状袋を、熱膨張剤の収容部とこれに連らなる蛇腹部を有する断面形状に構成し、蛇腹部側の面を上記継手内管の外周面に当接させて設けたことを特徴とする請求項1に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項5】
上記熱膨張手段を、上記継手内管の接続口の奥部に対応した外周面に設けたことを特徴とする請求項1に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項6】
合成樹脂製の継手内管の受け口形の接続口の外周面に、粉末の熱膨張剤を収容したアルミニウム製の薄手の膨張可能な帯状袋を巻き付けて固定し、この継手内管を金型内に収め、継手内管と金型内面との間の空間に繊維混入モルタルを注入して繊維混入モルタルの被覆層を形成し、これを金型内から取り出して養生することにより製作したことを特徴とする熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項7】
上記熱膨張手段をその上面を覆った粘着テープにより継手内管に貼着したことを特徴とする請求項1又は6に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項8】
上記耐火二層管継手に接続される配管を、合成樹脂製の管又は合成樹脂製の透明管としたことを特徴とする請求項1又は6に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項9】
合成樹脂製の配管の外周面に沿って環状に配置され、火災の熱で膨張して該配管を押し潰すべく膨張する粉末の熱膨張剤を収容した帯状袋を、内三つ折りしたテープにより形成し、その折り片側の面を該配管の外周面に対向するように設けたことを特徴とする熱膨張剤収容装置。
【請求項10】
合成樹脂製の配管の外周面に沿って環状に配置され、火災の熱で膨張して該配管を押し潰すべく膨張する粉末の熱膨張剤を収容した帯状袋を、一対の二つ折りテープで構成し、その一方の二つ折りテープに熱膨張剤を収容し、その開口部を、他方の二つ折りテープを入り組ませて塞いだことを特徴とする熱膨張剤収容装置。
【請求項11】
合成樹脂製の配管の外周面に沿って環状に配置され、火災の熱で膨張して該配管を押し潰すべく膨張する粉末の熱膨張剤を収容した帯状袋を、熱膨張剤の収容部とこれに連らなる蛇腹部を有する断面形状に構成し、蛇腹部側の面を該配管の外周面に当接させて設けたことを特徴とする熱膨張剤収容装置。
【請求項12】
上記帯状袋をアルミニウムにより形成したことを特徴とする請求項1乃至4又は請求項9乃至11に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手又は熱膨張剤収容装置。
【請求項13】
上記帯状袋の内面に接着剤層を設けてこれに粉末の熱膨張剤を付着固定したことを特徴とする請求項1乃至4又は請求項9乃至11に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手又は熱膨張剤収容装置。
【請求項1】
耐火二層管継手の受け口形の接続口を備えた合成樹脂製の継手内管の外周面に、繊維混入モルタルの被覆層を形成するとともに該被覆層の内側に火災の熱により膨張して管路の遮断のために該内管を押し潰す熱膨張手段を継手内管の外周面に捲回して埋設したものに於いて、該熱膨張手段を、管内方向へ膨張可能な薄手の帯状袋に粉末の熱膨張剤を収容して構成したことを特徴とする熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項2】
上記熱膨張手段を構成する帯状袋を内三つ折りしたテープにより形成し、その折り片側の面を上記継手内管の外周面に当接させて設けたことを特徴とする請求項1に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項3】
上記熱膨張手段を構成する帯状袋を、一対の二つ折りテープで構成し、その一方の二つ折りテープに熱膨張剤を収容し、その開口部を、他方の二つ折りテープを入り組ませて塞いだことを特徴とする請求項1に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項4】
上記熱膨張手段を構成する帯状袋を、熱膨張剤の収容部とこれに連らなる蛇腹部を有する断面形状に構成し、蛇腹部側の面を上記継手内管の外周面に当接させて設けたことを特徴とする請求項1に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項5】
上記熱膨張手段を、上記継手内管の接続口の奥部に対応した外周面に設けたことを特徴とする請求項1に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項6】
合成樹脂製の継手内管の受け口形の接続口の外周面に、粉末の熱膨張剤を収容したアルミニウム製の薄手の膨張可能な帯状袋を巻き付けて固定し、この継手内管を金型内に収め、継手内管と金型内面との間の空間に繊維混入モルタルを注入して繊維混入モルタルの被覆層を形成し、これを金型内から取り出して養生することにより製作したことを特徴とする熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項7】
上記熱膨張手段をその上面を覆った粘着テープにより継手内管に貼着したことを特徴とする請求項1又は6に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項8】
上記耐火二層管継手に接続される配管を、合成樹脂製の管又は合成樹脂製の透明管としたことを特徴とする請求項1又は6に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手。
【請求項9】
合成樹脂製の配管の外周面に沿って環状に配置され、火災の熱で膨張して該配管を押し潰すべく膨張する粉末の熱膨張剤を収容した帯状袋を、内三つ折りしたテープにより形成し、その折り片側の面を該配管の外周面に対向するように設けたことを特徴とする熱膨張剤収容装置。
【請求項10】
合成樹脂製の配管の外周面に沿って環状に配置され、火災の熱で膨張して該配管を押し潰すべく膨張する粉末の熱膨張剤を収容した帯状袋を、一対の二つ折りテープで構成し、その一方の二つ折りテープに熱膨張剤を収容し、その開口部を、他方の二つ折りテープを入り組ませて塞いだことを特徴とする熱膨張剤収容装置。
【請求項11】
合成樹脂製の配管の外周面に沿って環状に配置され、火災の熱で膨張して該配管を押し潰すべく膨張する粉末の熱膨張剤を収容した帯状袋を、熱膨張剤の収容部とこれに連らなる蛇腹部を有する断面形状に構成し、蛇腹部側の面を該配管の外周面に当接させて設けたことを特徴とする熱膨張剤収容装置。
【請求項12】
上記帯状袋をアルミニウムにより形成したことを特徴とする請求項1乃至4又は請求項9乃至11に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手又は熱膨張剤収容装置。
【請求項13】
上記帯状袋の内面に接着剤層を設けてこれに粉末の熱膨張剤を付着固定したことを特徴とする請求項1乃至4又は請求項9乃至11に記載の熱膨張閉塞促進型耐火二層管継手又は熱膨張剤収容装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−139057(P2010−139057A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335968(P2008−335968)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(595025224)フネンアクロス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(595025224)フネンアクロス株式会社 (23)
【Fターム(参考)】
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