熱転写シートおよびそれを用いた情報記録体の製造方法
【課題】ポストキレート方式により被記録体上に画像を形成し、次いで基材上の画像形成部分以外の部分に文字情報を熱転写により記録したような情報記録体を製造する場合において、文字情報記録時の熱転写による再加熱を行っても、サーマルヘッドや熱転写シートへの熱ダメージが少なく、かつ、画像情報部分の優れた画質と、プリンタ装置の高速化および小型化とを両立させることができるとともに、均一なロール状の形態に巻回できる文字情報記録用熱転写シートを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材上の一部に設けられた色材層と、前記基材上の前記色材層が設けられていない部分に設けられた加熱促進層と、を少なくとも備え、前記加熱促進層が、前記被記録体上の画像情報が印画された部分と対応するように、パターニングされており、前記加熱促進層が、前記色材層が設けられた部分の熱転写シートの厚みと、前記加熱促進層が設けられた部分の熱転写シートの厚みとが、同じになるような厚みで、基材上に設けられている熱転写シートとする。
【解決手段】基材と、前記基材上の一部に設けられた色材層と、前記基材上の前記色材層が設けられていない部分に設けられた加熱促進層と、を少なくとも備え、前記加熱促進層が、前記被記録体上の画像情報が印画された部分と対応するように、パターニングされており、前記加熱促進層が、前記色材層が設けられた部分の熱転写シートの厚みと、前記加熱促進層が設けられた部分の熱転写シートの厚みとが、同じになるような厚みで、基材上に設けられている熱転写シートとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートに関し、より詳細には、文字情報と画像情報とが同一面上に記録された、IDカードやキャッシュカード等の情報記録体を製造する際に好適に使用される文字情報記録用の熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
身分証明書等のIDカードや銀行等のキャッシュカードにおいて、個別認識できるように、その一方の面に、人物の顔写真等の画像情報とその人物の住所や名前等の文字情報とが記録されたものが使用されている。このようなIDカードや銀行等のキャッシュカード等の情報記録体は、プラスチック等のカードの一方の面に画像情報と文字情報とを記録することにより製造されている。このような情報記録体は、画像情報の鮮明性や文字情報を印字する際の簡便性を考慮して、熱転写シートを用いて製造されている。例えば、基材上にイエロー、マゼンタおよびシアン等の色材層を設けた熱転写シートを用いて、カード上にカラーの人物画像を記録し、次いで、ブラックの色材層を設けた熱転写シートを用いて、基材上の人物画像を形成した以外の部分に文字等を記録することにより製造されている。熱転写シートを用いて得られる画像は、中間色の再現性や階調性に優れ、フルカラー写真画像に匹敵する高品質な画像を形成できるため、特に身分証明書等のIDカードや銀行等のキャッシュカードのような、記録画像により個別認識を必要とするような情報記録体においては、熱転写シートを用いて製造することが一般的となっている。
【0003】
近年、プリンタの高速化に伴い、より低いエネルギーで画像の濃淡を表現でき、かつ優れた画像耐久性を実現できる、いわゆるポストキレート方式による熱転写方法が提案されている。ポストキレート方式とは、受像層中に特定の金属イオン化合物を含有させた被記録体と、その特定金属イオンとキレート錯体を形成し得る染料を色材層とした熱転写シートとを用いて、熱転写後に、それらを反応させてキレート錯体を形成させることにより画像を形成する方法である(例えば、特開平4−89292号公報や特開平4−292989号公報等)。このポストキレート方式により形成された画像は、染料の褪色や滲みが生じにくく耐光性にも優れることから、上記したようなカード類等の情報記録体にも適用され始めている。
【0004】
ポストキレート方式を用いて画像情報を情報記録体に形成する場合、色材を熱転写シートから情報記録体の受像層へ移行させる際の熱エネルギーだけでは、受像層中の金属イオン化合物と色材との反応が不十分な場合があり、良好な色調が得られない場合がある。特にプリンタの高速化により、熱転写時のエネルギーだけではキレート反応を十分に進めることができないという問題がある。この問題を解決するために、例えば特開2003−58847号公報には、画像情報と文字情報とを記録した後に、画像情報が記録された部分に透明保護転写箔を転写して、転写時の熱エネルギーにより、画像情報が記録された部分を再加熱してキレート反応を完全ならしめることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−89292号公報
【特許文献2】特開平4−292989号公報
【特許文献3】特開2003−58847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プリンタの更なる高速化が希求されており、キレート反応を完全ならしめるための再加熱工程が高速化の障害となっていた。また、上記の特開2003−58847号公報に開示されている方法においては、図12に示すように、イエロー、マゼンタおよびシアンの各色材層を面順次の設けた熱転写シートを用いて、先ず画像情報部分を形成し、次いで、図13に示すような、ブラック色材層と透明保護転写箔とが面準位に設けられた熱転写シートを用いて、文字情報を画像形成部分以外の部分に形成した後に、画像形成部分に透明保護転写箔を転写することが行われていた。そのため、転写工程が複雑となりプリンタ装置自体を小型化することが困難であった。
【0007】
本発明者らは、先の出願(特願2010−140252号)において、ポストキレート熱転写方式により基材上に画像を形成し、次いで基材上の画像形成部分以外の部分に文字情報を熱転写により記録する際に、同時に画像形成部分を再加熱することにより、画像情報の画質を維持しつつプリンタ装置を高速化および小型化できる情報記録体の製造方法を提案している。しかしながら、上記の再加熱は、文字情報記録用熱転写シートの色材層が設けられていない部分をサーマルヘッド等の加熱手段を用いて行われるため、当該部分が常に加熱されて、基材にダメージを与え、その結果、熱転写シートにシワを生じさせたり、切れてしまうことがあった。また、文字情報記録用熱転写シートの色材層が設けられている部分と色材層が設けられていない部分とで、熱転写シートの厚みが異なるため、巻回してロール状の形態とした場合に段差を生じ、この段差が影響して文字情報を被記録体に印刷する際に影響を印字品質に影響を与える恐れもある。この段差は、色材層が設けられた部分の熱転写シートの厚みと同じになるように、色材層が設けられていない部分に樹脂層等を設けることにより解決できるが、このような樹脂層を設けると、画像形成部分を再加熱の際に熱エネルギーが樹脂層で吸収されてしまい、ポストキレート反応を促進することの障害になる。一方、ポストキレート反応を完全ならしめるために、再加熱の際の熱量を増やすと、サーマルヘッドや熱転写シートへの熱ダメージが増加するため、情報記録体の製造工程での不具合が発生する恐れもある。
【0008】
今般、上記したようなポストキレート方式により被記録体上に画像を形成し、次いで基材上の画像形成部分以外の部分に文字情報を熱転写により記録したような情報記録体を製造する場合に、文字情報記録用の熱転写シートの、被記録体の画像形成部分に相当する部分に加熱促進層を設けておくことにより、上記のような文字情報記録時の熱転写による再加熱を行っても、サーマルヘッドや熱転写シートへの熱ダメージが少なく、かつ、画像情報部分の優れた画質と、プリンタ装置の高速化および小型化とを両立させることができる、との知見を得た。そして、このような構成の熱転写シートとすることにより、均一なロール状の形態に巻回できるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ポストキレート方式により被記録体上に画像を形成し、次いで基材上の画像形成部分以外の部分に文字情報を熱転写により記録したような情報記録体を製造する場合において、上記のような文字情報記録時の熱転写による再加熱を行っても、サーマルヘッドや熱転写シートへの熱ダメージが少なく、かつ、画像情報部分の優れた画質と、プリンタ装置の高速化および小型化とを両立させることができるとともに、均一なロール状の形態に巻回できる文字情報記録用熱転写シートを提供することである。
【0010】
また、本発明の別の目的は、上記の文字情報記録用熱転写シートを用いた情報記録体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による文字情報記録用熱転写シートは、ポストキレート方式により画像形成された被記録体の同一面上に文字情報を記録するために用いられる熱転写シートであって、
基材と、前記基材上の一部に設けられた色材層と、前記基材上の前記色材層が設けられていない部分に設けられた加熱促進層と、を少なくとも備え、
前記加熱促進層が、前記被記録体上の画像情報が印画された部分と対応するように、パターニングされており、
前記加熱促進層が、前記色材層が設けられた部分の熱転写シートの厚みと、前記加熱促進層が設けられた部分の熱転写シートの厚みとが、同じになるような厚みで、基材上に設けられている、ことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の態様においては、前記加熱促進層が、金属、金属窒化物または金属酸化物から選択される少なくとも1種以上の微粒子またはフィラーを含んでなることが好ましい。
【0013】
また、本発明の態様においては、前記微粒子またはフィラーが、前記加熱促進層中に、質量基準で、50〜85%含まれてなることが好ましい。
【0014】
また、本発明の態様においては、前記基材上の、前記色材層および前記加熱促進層が設けられていない部分に、シアン染料層、マゼンタ染料層およびイエロー染料層が面順位に設けられていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の別の態様による情報記録体の製造方法は、上記文字情報記録用熱転写シートを用いて、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体を製造する方法であって、
画像情報記録用熱転写シート中の色材とキレート錯体を形成し得る金属イオン含有化合物を含んでなる受像層を備えた被記録体を準備し、
前記色材を含んでなる色材層を備えた画像情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して画像情報を印画し、
前記受像層上の画像情報形成部以外の部分に、前記文字情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して文字情報を印画する際に、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行う、
ことを含んでなることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の態様においては、前記画像情報形成部の加熱が、前記文字情報記録用熱転写シートから色材を熱転写する際のサーマルヘッドからの熱エネルギーにより行われることが好ましい。
【0017】
また、本発明の態様においては、前記文字情報記録用熱転写シートから色材を熱転写する際に、前記加熱促進層が設けられた部分に、サーマルヘッドからの熱エネルギーを付与して、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行うことが好ましい。
【0018】
また、本発明の別の態様においては、上記の製造方法により得られた情報記録体も提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明による文字情報記録用熱転写シートには、被記録体の画像形成部分に相当する部分に加熱促進層が設けられているため、ポストキレート方式により被記録体上に画像を形成し、次いで基材上の画像形成部分以外の部分に文字情報を熱転写により記録したような情報記録体を製造する場合において、文字情報記録時の熱転写による再加熱を行っても、サーマルヘッドや熱転写シートへの熱ダメージが少なく、かつ、画像情報部分の優れた画質と、プリンタ装置の高速化および小型化とを両立させることができる。また、色材層が設けられている部分と加熱促進層が設けられている部分の熱転写シートの厚みが同じであるため、熱転写シートを巻回した場合であっても、均一なロール状の形態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による文字情報記録用熱転写シートの一実施形態を示した斜視概略図である。
【図2】図1の文字情報記録用熱転写シートのA−A’断面を示した断面概略図である。
【図3】被記録体の一実施形態を示した断面概略図である。
【図4】被記録体の別の実施形態を示した断面概略図である。
【図5】画像情報記録用熱転写シートの一実施形態を示した断面概略図である。
【図6】画像情報記録用熱転写シートの別の実施形態を示した斜視概略図である。
【図7】本発明による情報記録体の製造方法に用いられる製造装置の一実施形態を示した概略構成図である。
【図8】文字情報記録用と画像情報記録用を兼ね備える熱転写シートの一実施形態を示した斜視概略図である。
【図9】透明保護層転写箔シートの一実施形態を示した断面概略図である。
【図10】光学変化素子転写箔シートの一実施形態を示した断面概略図である。
【図11】本発明による情報記録体の一実施形態を示した断面概略図である。
【図12】従来の情報記録体の製造に用いられていた画像情報記録用熱転写シートを示した断面概略図である。
【図13】従来の情報記録体の製造に用いられていた文字情報記録用熱転写シートを示した断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<文字情報記録用熱転写シート>
本発明による熱転写シートは、ポストキレート方式により画像形成された被記録体の同一面上に文字情報を記録するために用いられる熱転写シートであって、図1に示すように、基材24と、基材24上の一部に設けられた色材層22と、基材24上の色材層22が設けられていない部分に設けられた加熱促進層23と、を少なくとも備えた層構成を有しており、加熱促進層23が、被記録体上の画像情報が印画された部分と対応するようにパターニングされているものである。ポストキレート方式により画像形成された被記録体の同一面上に、上記のような加熱促進層を設けた熱転写シートを用いて文字情報を記録する場合、プリンタのサーマルヘッドからの熱エネルギーにより、熱転写シートの熱溶融ブラック色材層中の色材が、被記録体へ熱転写されて、画像形成部分以外の部分の所望の位置に文字情報を記録することができる。また、熱転写シートの加熱促進層が設けられた部分にサーマルヘッドからの熱エネルギーを付与することにより、加熱促進層を介して、被記録体の画像情報が記録された部分(すなわち、被記録体の受像層のうち、熱転写シートの加熱促進層が設けられている範囲に対応した範囲)に熱が伝達され、被記録体の受像層中の色材(イエロー染料、マゼンタ染料およびシアン染料)と金属イオン含有化合物とがキレート反応が促進されて、所望の発色及び階調を有する画像情報が形成される。
【0022】
上記のような加熱促進層が文字情報記録用熱転写シートに設けられていない場合、熱転写の際に、被記録体の画像情報が記録された部分は直接、熱転写シートの基材と接することとなるため、当該部分が常に加熱されて、基材にダメージを与え、その結果、熱転写シートにシワを生じさせたり、切れてしまう場合がある。また、文字情報記録用熱転写シートの色材層が設けられている部分と色材層が設けられていない部分とで、熱転写シートの厚みが異なるため、巻回してロール状の形態とした場合に段差を生じ、この段差が影響して文字情報を被記録体に印刷する際に影響を印字品質に影響を与える恐れもある。この段差は、色材層が設けられた部分の熱転写シートの厚みと同じになるように、色材層が設けられていない部分に樹脂層等を設けることにより解決できるが、このような樹脂層を設けると、画像形成部分を再加熱の際に熱エネルギーが樹脂層で吸収されてしまい、ポストキレート反応を促進することの障害になる。一方、ポストキレート反応を完全ならしめるために、再加熱の際の熱量を増やすと、サーマルヘッドや熱転写シートへの熱ダメージが増加するため、情報記録体の製造工程での不具合が発生する恐れもある。本発明においては、上記のように、熱転写シートに段差を生じさせないような厚みの加熱促進層を、熱転写シートの基材の一部に設けることにより、画像情報記録部分の再加熱によりポストキレート反応を促進するとともに、そのような再加熱を行っても、熱転写シートやサーマルヘッドへの熱ダメージの影響が低減することができる。以下、文字情報記録用熱転写シートを構成する各層について説明する。
【0023】
図2は、図1のA−A’断面を示した概略断面図である。基材24上には、色材層22と加熱促進層23とが設けられている。基材としては、従来公知の熱転写シートに用いられている基材フィルムを用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等の樹脂フィルム等を用いることができる。これら樹脂フィルムの中でも耐熱性やコストの観点からポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に使用できる。
【0024】
印刷速度を向上させ、また再加熱時の熱量を増大させる観点から、基材の厚みは2〜10μm、好ましくは2〜6μm、より好ましくは2〜4μmである。基材は薄い方が好ましいが、2μm未満では張力により、熱転写シートが変形し易くなる。隣接する層との接着性を向上させるため、基材表面には、表面処理を施してもよい。上記表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、グラフト化処理等、公知の樹脂表面改質技術を適用することができる。
【0025】
また、必要に応じ、その一方の面又は両面にプライマー層(図示せず)を設けてもよい。プライマー層は、例えば基材フィルムの溶融押出しの成膜時に、未延伸フィルムにプライマー液を塗布し、その後に延伸処理して行なうことができる。また、プライマー液としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等のビニル系樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂等からなる塗工液を使用することができる。
【0026】
色材層22は、基材24上に顔料等で着色した熱溶融性インキを塗工することにより形成することができる。熱溶融性インキとしては、従来公知の熱転写シートに用いられているものを制限なく使用することができる。例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の公知の手段により、基材の一方の面に公知のブラックインキを塗布し、乾燥することにより色材層を形成することができる。このようにして形成される色材層の厚みは、0.1〜5.0μm程度、好ましくは0.2〜3.0μmである。
【0027】
基材24上に色材層22を直接設けてもよいが、基材24と色材層22との間に剥離層25を設けてもよい。剥離層を設けることにより、熱転写時に溶融したブラックインキ溶融を基材から剥離し易くするとともに、被記録体に文字情報を記録した後も、文字記録部分に滑り性を与えて、耐擦過性を向上させることができる。剥離層としては、融点もしくは軟化点が、50〜150℃、特に60〜120℃の範囲にある熱可塑性樹脂や2種以上熱可塑性樹脂を混合して上記の温度範囲になるものを好適に使用できる。例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーンまたはフッ素で変性した各種の樹脂やワックスを主成分とした従来公知のものを使用することができる。また、熱可塑性樹脂の他に、必要に応じて、パルミチン酸、ステアリン酸、マルガリン酸およびベヘン酸等の高級脂肪酸;パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、マルガニルアルコール、ミリシルアルコールおよびエイコサノール等の高級アルコール;バルミチン酸セチル、バルミチン酸ミリシル、ステアリン酸セチルおよびステアリン酸ミリシル等の高級脂肪酸エステル;アセトアミド、プロピオン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドおよびアミドワックス等のアミド類;ならびにステアリルアミン、ベヘニルアミンおよびパルチミルアミン等の高級アミン類などを添加してもよい。これら添加成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、剥離性を調節するため界面活性剤を含んでいてもよく、好適な界面活性剤として、ポリオキシエチレン鎖含有化合物が挙げられる。さらに、無機あるいは有機の微粒子(金属粉、シリカゲルなど)や、オイル類(アマニ油鉱油など)を添加することもできる。熱伝導性の観点から、剥離層の厚みは、0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.0μmとするのが好ましい。
【0028】
色材層22上には、接着層26を設けて、色材層と被記録体との接着性を向上させてもよい。この接着層は、サーマルヘッド、レーザー等の加熱により、軟化して接着性を発揮する熱可塑性エラストマーを主体とし、得られる熱転写シートをロール状に巻き取った時にブロッキングを防止するために、ワックス類、高級脂肪酸のアミド、エステル及び塩、フッ素樹脂や無機物質の粉末のようにブロッキング防止剤を添加することができる。熱可塑性エラストマーとして、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(EEA)、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール、アセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレン、エチルセルロースまたはポリアセタールなどが挙げられる。また、添加されるワックス類としては、例えば、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等がある。更に、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、ポリエステルワックス、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等、種々のワックスが挙げられる。
【0029】
接着層は、熱可塑性エラストマーと添加剤とを適当な溶剤に溶解または分散させた塗工液を、従来公知のホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアダイレクトコート、グラビアリバースコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート等の方法により形成することができる。接着層の厚みは、0.05〜2.0μm程度、好ましくは0.1〜1.0μmである。
【0030】
また、基材24の色材層22を設けた側とは反対の側の面には、背面層27を設けてもよい。背面層は、熱転写時の熱で熱転写シートが変形しないように耐熱性を向上させるとともに、また熱転写時のサーマルヘッドの走行性を改善してスティッキング等を抑制する機能を有する。背面層は、バインダー樹脂に滑性剤、界面活性剤、無機粒子、有機粒子、顔料等を添加したものを塗布、乾燥することにより形成できる。耐熱層に使用されるバインダー樹脂としては、従来公知のものを使用でき、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、硝化綿などのセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル−スチレン共重合体などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性またはフッ素変性ウレタン樹脂等が挙げられる。また、滑性剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリオレフィンおよびエチレン性不飽和カルボン酸またはそのエステル無水物から誘導されたポリマーを含むワックス等を好適に使用することができる。このような背面層を設けることにより、文字情報記録用熱転写シートをロール状にした場合の基材の裏面と色材層との接触面積を小さくして、基材裏面へ色材が移行するのを低減することもできる。背面層の厚みは、熱伝導性の観点から、0.05〜2.0μm程度、好ましくは0.2〜2.0μmである。
【0031】
基材上の色材層が設けられていない部分に設ける加熱促進層は、色材層中の色材を被記録体の受容層へ熱転写する際に行う画像情報記録部分への再加熱を促進するために設けられる層である。この加熱促進層は、基材上の色材層がない部分に設けられるとともに、熱転写の際に被記録体上の画像情報が印画された部分と、文字情報記録用熱転写シートの加熱促進層のある部分とが対応するように、パターニングされて設けられている。図1に示すように、色材層と加熱促進層とがパターニングして設けられているため、文字情報記録用熱転写シート20の表面に段差を生じる場合がある。そのため、本発明においては、加熱促進層は、図2に示すように、色材層22の設けられた部分の総厚みと同じ厚みになるように形成されている。このように段差をなくして熱転写シートの表面を均一にすることにより、熱転写シートを均一なロール状の形態に巻回すことができる。
【0032】
加熱促進層は、高熱伝導性材料とバインダー樹脂とを適当な溶剤に分散させた塗工液を基材上に塗布、乾燥させることにより形成することができる。高熱伝導性材料としては、熱伝導率が1Wm−1・K−1以上の材料、好ましくは、5Wm−1・K−1以上の材料を好適に使用することができ、このような材料としては、カーボン、グラファイト、金、銀、銅、ニッケル等の金属、窒化アルミニウム、窒化ボロン等の金属窒化物、ベリリア(BeO)、アルミナ、マグネシア(MgO)等の金属酸化物、チタン酸カリウムやチタンブラック、カーボンブラック等の微粒子やウィスカ、または、これら微粒子やウィスカを適当なフィラーにコーティングしたもの等が挙げられる。また、上記の高熱伝導性材料を分散させるバインダー樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレンとのオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリマーボネート系樹脂等が挙げられ、これらのなかでも、ビニル系樹脂およびポリエステル系樹脂が好適に使用できる。
【0033】
加熱促進層中に含まれる高熱伝導性材料の含有量は、質量基準において、10〜90%であることが好ましく、より好ましくは50〜85%である。高熱伝導性材料の含有量が上記範囲よりも多いと、加熱促進層を形成する際の塗膜造膜性が不十分となり、塗膜が破壊され易くなり、いわゆる箔こぼれが生じやすくなる。一方、高熱伝導性材料の含有量が上記範囲よりも少ないと、ポストキレート反応を促進させるための熱量が不足する。
【0034】
加熱促進層は、上記したように、図2に示すように、色材層22の設けられた部分の総厚みと同じ厚みになるように形成される。加熱促進層の厚みは、色材層の設けられている部分の各層(接着層、離型層、色材層等)の厚みにもよるが、0.2〜7.0μm程度、好ましくは1.0〜5.0μmである。
【0035】
文字情報記録用熱転写シートは、上記した各層以外にも、従来公知の熱転写シートと同様に、離型層や下引き層等のその他の層が設けられていてもよい。
【0036】
<情報記録体の製造方法>
次に、上記した文字情報記録用熱転写シートを用いた情報記録体の製造方法を、図面を参照しながら説明する。本発明による情報記録体の製造方法は、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体を製造する方法であって、
(1)画像情報記録用熱転写シート中の色材とキレート錯体を形成し得る金属イオン含有化合物を含んでなる受像層を備えた被記録体を準備する工程、
(2)前記色材を含んでなる色材層を備えた画像情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して画像情報を印画する工程、
(3)前記受像層上の画像情報形成部以外の部分に、前記文字情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して文字情報を印画する際に、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行う工程、
を含むものである。以下、本発明による情報記録体の製造方法を、図面を参照しながら各工程順に説明する。
【0037】
本発明による情報記録体の製造方法においては、受像層を一方の面に備えた被記録体に文字情報および画像情報を印画することにより、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体が製造される。本発明においては、身分証明書等のIDカードや銀行等のキャッシュカードのような情報記録体を製造することを目的とするものであり、従って、被記録体として、ICチップを供えたIDカード基材に文字情報や画像情報等を印画することを一例に、被記録体について、まず説明する。
【0038】
図3は、ICカード基材2と受像層3とを備えた被記録体1の断面図を示したものである。ICカード基材2は、第1のシート部材4と第2のシート部材5との間に所定の厚みの電子部品8とを備えており、電子部品8は、アンテナ体8a、ICチップ8b等からなり、この電子部品8のICモジュールはインレット7に備えられている。第1のシート部材4と第2のシート部材5との間にインレット7を配置し、接着剤6を介在して、各部材を積層した積層構造である。また、被記録体は、図4に示すように、電子部品8を接着剤6中に備えた構造としてもよい。
【0039】
被記録体1は、ICカード基材2の第2シート部材5側に受像層3が設けられている。受像層3は、熱転写記録方式で昇華もしくは熱拡散性染料画像を受容して、被記録体1に文字情報および画像情報を印画するためのものである。受像層を形成するための材料としては、昇華性染料または熱溶融性インキ等の熱移行性の色材を受容し易い従来公知の樹脂材料を使用することができる。例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体もしくはポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンもしくはプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体系樹脂、アイオノマーもしくはセルロースジアスターゼ等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等が挙げられ、特に、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂またはポリエステル樹脂が好ましい。
【0040】
本発明においては、受像層3は、後記する色材である色素化合物と反応してキレートを形成し得る金属イオン含有化合物を含有している。すなわち、本発明においては、色材である色素化合物を受像層へ熱転写した後、受像層中の金属イオン含有化合物と色素化合物とを反応させてキレート錯体を形成する、いわゆるポストキレート方式により、画像情報および/または文字情報を被記録体に転写して画像形成するものである。ポストキレート方式を採用することにより、被記録体へ転写された画像や文字の耐光性を向上させることができる。
【0041】
受像層中に含有させる金属イオン含有化合物としては、従来公知のものを使用することができ、第I、第VIII族に属する2価および多価の金属の無機または有機の塩および金属錯体を好適に使用することができる。例えば、Ni2+、Cu+、Co2+、Cr2+およびZn2+を含有する、下記一般式:
[M(Q1)k(Q2)m (Q3)n]p+p(L−)
(式中、Mは金属イオンを表し、Q1、Q2、Q3は各々Mで表される金属イオンと配位結合可能な配位化合物を表わし、Lは錯体を形成しうる対アニオンを表し、kは1、2または3の整数を表し、mは1、2または0を表し、nは1または0を表すが、これらは前記一般式で表される錯体が4座配位か、6座配位かによって決定されるか、あるいはQ1、Q2、Q3の配位子の数によって決定され、pは1、2または3を表す。)で表される錯体が好ましく用いられる。これらの中でも、金属と配位結合する少なくとも一個のアミノ基を有する配位化合物が好ましく、具体的にはエチレンジアミンおよびその誘導体、グリシンアミドおよびその誘導体、ピコリンアミドおよびその誘導体が挙げられる。また、錯体を形成しうる対アニオンLとしては、Cr、SO4、ClO4等の無機化合物アニオンやベンゼンスルホン酸誘導体、アルキルスルホン酸誘導対等の有機化合物アニオンが挙げられるが、特に好ましくはテトラフェニルホウ素アニオンおよびその誘導体、ならびにアルキルベンゼンスルホン酸アニオンおよびその誘導体である。このような金属イオン含有化合物としては、米国特許第4,987,049号明細書に例示されたものを挙げることができる。
【0042】
金属イオン含有化合物の樹脂中への添加量は0.5〜20g/m2が好ましく、1〜15g/m2がより好ましい。
【0043】
受像層には、離型剤が添加されていてもよい。離型剤としては、用いるバインダーと相溶性のあるものが好ましく、具体的には変性シリコーンオイル、変性シリコーンポリマーが代表的であり、例えばアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーン樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂等が挙げられる。このなかでもポリエステル変性シリコーンオイルはインクシートとの融着を防止するが、受像層の2次加工性を妨げないという点で特に優れている。その他の離型剤として、シリカ等の微粒子や硬化型シリコーン化合物等を使用することもできる。
【0044】
上記した各成分を溶媒に分散あるいは溶解させた受像層用塗工液を調製し、受像層用塗工液をICカード基材の一方のシート部材上に塗布し、乾燥することよって受像層を形成することができる。受像層の厚みは、一般的に1〜50μm、好ましくは2〜10μm程度である。
【0045】
受像層には、画像情報や文字情報を印画する前に、予め、罫線等のフォーマット印刷がされていてもよい。フォーマット印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット方式、昇華転写方式、電子写真方式、熱溶融方式等のいずれの方式によって形成することができる。
【0046】
ICカード基材2は、図3および4に示したように、第1のシート部材4と第2のシート部材5との間に所定の厚みの電子部品8とを備えており、電子部品8は、アンテナ体8a、ICチップ8b等からなり、この電子部品8のICモジュールはインレット7または接着層6に備えられている。ICカード基材2は、第1のシート部材4と第2のシート部材5との間にインレット7を配置し、接着剤6を介在して、各部材を積層した積層構造を有する。ICカード基材に用いられるシート部材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、生分解性脂肪族ポリエステル、生分解性ポリカーボネート、生分解性ポリ乳酸、生分解性ポリビニルアルコール、生分解性セルロースアセテート、生分解性ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂シート、または上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、金属箔等の単層体あるいはこれら2層以上の積層体が挙げられる。
【0047】
シート部材の厚みは30〜300μm、好ましくは50〜200μmである。50μm以下であるとシート部材1,2を互いに貼り合わせる際に熱収縮等を起こす場合がある。なお、熱収縮率を低減させるシート部材のアニール処理を行ってもよい。
【0048】
電子部品8は、一般的に、電子カードの利用者の情報を電気的に記憶するICチップ8bおよびICチップ8bに接続されたコイル状のアンテナ体8aとから構成される。また、電子部品8を含むインレット7または接着剤6中には、ICチップは点圧強度が弱いためにICチップ近傍に補強板9を備えていてもよい。インレットを含む電子部品の全厚さは100〜600μmが好ましく、より好ましくは150〜500μm、特に好ましくは、150〜450μmである。
【0049】
また、本発明においては、図3に示した被記録体のように、受像層3と第2シート部材2との間にクッション層10が設けられていてもよい。クッション層を設けると、熱転写の際の表面の凹凸の影響を緩和することができ画像や文字を再現性良く転写記録することができる。
【0050】
クッション層を形成する材料としては、ポリオレフィンが好ましい。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−水素添加イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエン、光硬化型樹脂層のような柔軟性を有し、熱伝導性の低いものが適する。具体的には、特願平2001−16934等のクッション層を使用することができる。
【0051】
第1のシート部材と第2のシート部材との間に所定の電子部品と設けた積層構造を形成する方式としては、熱貼合法、接着剤貼合法、接着剤塗布法及び射出成形法が挙げられる。また、各部材を貼り合わせる際には、シート基材の表面平滑性や、第1のシート部材と第2のシート部材との間に設ける電子部品の密着性を向上させるために、上下プレス方式、ラミネート方式等により加熱及び加圧を行うことが好ましい。
【0052】
本発明においては、上記した被記録体の受像層に、画像情報記録用熱転写シートを用いて、画像情報を印画する。上記したような被記録体と画像情報記録用熱転写シートとを、被記録体の受像層と画像情報記録用熱転写シートの色材層とが対抗するように重ね合わせて、画像情報記録用熱転写シート側から、サーマルヘッド等の加熱手段により加熱して、色材層中の色材を、被記録体の受像層へ熱転写することにより、画像情報を被記録体へ画像情報を印画する。
【0053】
画像情報記録用熱転写シート10は、図5に示すように、基材11の一方の面に設けた色材層12を備えたものである。基材11の前記色材層12を設けた面とは反対側の面に耐熱滑性層13を設けてもよい。色材層12は、従来公知の熱転写シートと同様に、イエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層とから構成されていてよいが、本発明においては、図6に示すように、シアン染料層(C)、マゼンタ染料層(M)およびイエロー染料層(Y)が面順位に設けられた画像情報記録用熱転写シートを用い、シアン、マゼンタ、およびイエローの順で、各染料を被記録体の受像層へ熱転写して画像情報の印画を行うことが好ましい。後記するように、画像情報記録用熱転写シートに使用される昇華性染料として、いわゆるポストキレート色素を用いる場合、ポストキレート色素は、上記の被記録体の受像層中のメタルソースと反応して発色する。そのため、必ずしも画像情報記録用熱転写シート上に設けた色材層の色(シアン、マゼンタ、イエロー)と、被記録体へ画像情報を熱転写した後の色(すなわち、受像層で色素染料がメタルソースと反応した後の色)とが同じように発色せず、むしろ全く異なる色となる場合がある。熱転写時の熱量が不十分で、色素とメタルソースとの反応が不完全な場合、未反応のポストキレート色素の色が、被転写体の受像層に形成された画像部分に残存するため、画像の色濁りが生じやすくなる。特に、メタルソースと反応する前のポストキレートシアン染料やポストキレートマゼンタ染料の濃度は、ポストキレートイエロー染料の濃度と比べて高くなる傾向があるため、ポストキレート反応が不完全であると、被記録体の受像層に熱転写した際に、イエロー染料からなる色成分にシアンやマゼンタ染料が混入して、印画部分に色濁りが生ずる場合がある。本発明においては、染料層において染料濃度が高くなる順に、画像情報記録用熱転写シート上に、シアン染料層(C)、マゼンタ染料層(M)およびイエロー染料層(Y)を面順位に設けて、画像形成の際に、シアン、マゼンタ、イエローの順で熱転写を行うことにより、熱転写時に、染料濃度の高い染料ほどより多くの熱エネルギーを付与することができる。その結果、染料濃度の高いシアンやマゼンタ染料が受像層中でのメタルソースとより完全に反応し、所望の染料の発色が得られるため、形成画像の色濁りが生じにくくなる。特に、上記のような順で各染料層を設けることにより、シアン染料が熱転写された印画部分のマゼンタ濁りが解消する。
【0054】
上記したようなポストキレート色素としては、従来公知のものを使用することができ、このようなキレート形成可能な昇華性色素としては、例えば特開昭59−78893号、同59−109349号、特願平2−213303号、同2−214719号、同2−203742号に記載されている、少なくとも2座のキレートを形成することができるシアン色素、マゼンタ色素およびイエロー色素を挙げることができる。キレートの形成可能な好ましい昇華性色素は、下記一般式で表わすことができる。
X1−N=N−X2−G
(式中、X1は、少なくとも一つの環が5〜7個の原子から構成される芳香族の炭素環、または複素環を完成するのに必要な原子の集まりを表わし、アゾ結合に結合する炭素原子の隣接位の少なくとも一つが、窒素原子またはキレート化基で置換された炭素原子であり、X2は、少なくとも一つの環が5〜7個の原子から構成される芳香族複素環または、芳香族炭素環を表わし、Gはキレート化基を表わす。)
【0055】
上記したようなポストキレート昇華性色素の使用量は、通常、基材1m2当たり0.1〜20g、好ましくは0.2〜5gである。
【0056】
色材層を構成するバインダーとしては、特に制限がなく従来から公知のものを使用することができる。さらに前記インク層には、従来から公知の各種添加剤を適宜に添加することができる。
【0057】
画像情報記録用熱転写シートは、インク層を形成する前記各種の成分を溶媒に分散ないし溶解させた塗工液を調製し、これを基材表面に塗工し、乾燥することにより作製することができる。色材層の厚さは、通常0.2〜10μmであり、好ましくは、0.3〜3μmである。
【0058】
次に、本発明による文字情報記録用熱転写シートと上記画像情報記録用熱転写シートとを用いた情報録体の製造方法の一例を、図面を参照しながら説明する。
【0059】
図7は、本発明による方法の一実施形態を実施するための情報記録体製造装置の概略構成図を示したものである。情報記録体製造装置30は、上方位置にカード基材供給部40及び情報記録部50が配置され、下方位置に、透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部60、並びに樹脂層形成用塗工液付与部及び/又は活性放射線照射部70が配置されている。本実施形態においては、一例として、カード状の情報記録体を製造する方法を説明するが、情報記録体としてシート状のものを製造できることは言うまでもない。
【0060】
カード基材供給部40には、カード使用者の個人情報を書き込むために予め枚葉状にカットされた複数枚のカード基材1が、顔写真等の画像情報を記録する面(即ち受像層を設けた面)を上に向けてストックされている。本実施形態においては、受像層を備えたカード基材1が1枚ずつ、カード基材供給部40から所定のタイミングで自動供給される。
【0061】
情報記録部50は、図6に示したようなイエロー染料層、マゼンタ染料層およびシアン染料層が面順次に設けられた画像情報記録用熱転写シート10が配置され、その位置に対応してサーマルヘッド51が配置された画像情報記録部52と、図1に示したような熱溶融ブラック色材層と加熱促進層とがパターニングされて設けられた文字情報記録用熱転写シート20が配置され、その位置に対応してサーマルヘッド53が配置された文字情報記録部54とから構成されている。なお、図8に示すような画像情報記録用熱転写シートと文字情報記録用熱転写シートとを兼ねる熱転写シートを用いてもよく、この場合、情報記録部のサーマルヘッドを1つにすることができるため、より装置の簡素化が図られることは言うまでもない。
【0062】
カード基材供給部40から供給されたカード基材1は、先ず画像情報記録部52において、カード基材1が移動している間に、その受像層の所定領域にカード使用者の顔写真等の諧調を有する画像情報が、画像情報記録用熱転写シートによりイエロー、マゼンタ、シアンの順に記録される。
【0063】
受像層への画像情報の熱転写に続いて、カード基材1の所定領域に、カード使用者の氏名やカード発行日等の文字情報が、文字情報記録用熱転写シート20により記録される。その際、受像層の画像情報が記録されている領域にもサーマルヘッドからの熱エネルギーが付与され、画像情報が記録された受像層中の色材(イエロー染料、マゼンタ染料およびシアン染料)と金属イオン含有化合物とがキレート反応が促進されて、所望の発色及び階調を有する画像情報が形成される。従って、ポストキレート方式により画像情報を形成した情報記録体の製造方法において、本発明では、従来の方法のように画像情報を形成した後にヒートスタンプやホットローラ等による再加熱の工程を必要としない。その結果、優れた発色性と耐光性とを備える画像を被記録体上に形成できるとともに、製造工程を簡略化できるため、製造装置を小型化することができる。また、カード基材に文字情報を記録すると同時に画像情報部分の加熱を行うため、連続して情報記録体を製造する場合の各工程を高速化することができる。
【0064】
免許証やIDカード等の文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体においては、人物の顔等が画像情報として記録されることが多いが、一般的に、画像部分は情報記録体の全面積に対して比較的小さい割合である。そのため、通常は、画像部分の周辺まで文字情報が書き込まれている場合が多い。このよう情報記録体を製造する場合、文字情報を被記録体に熱転写する際に、文字情報記録用熱転写シート用のサーマルヘッドで、先に形成された画像部分の再加熱を行い、ポストキレート染料の発色性を向上させる場合がある。被転写体への文字情報の記録と同時に、先に形成された画像部分の再加熱行う場合、画像の発色性を向上させるために再加熱を充分にすると、熱溶融ブラック色材により記録した文字情報が影響を受けることがあり、例えば、情報記録体の画像部分の周辺の文字潰れが生じる場合がある。特に、再加熱した画像部分の周縁部は熱が伝わりやすくなるため文字記録部分が受ける影響も顕著である。そのため、文字潰れが生じないような熱量で熱溶融ブラック色材の転写を行う必要があり、同じサーマルヘッド等の加熱手段を用いて先に形成した画像部分を再加熱する場合に、再加熱の熱量が不足することがある。
【0065】
本発明においては、同じ加熱手段(すなわち、文字情報を記録する際の画像情報記録用熱転写シートへのサーマルヘッド等の熱源)を用いて、文字潰れの解消と再加熱時の熱量増加を行うために、以下のような方法が好ましく適用できる。例えば、文字情報を熱転写する際の印画速度を高速化するとともに、熱転写時の熱エネルギーの付与を、高温化かつ短時間化することができる。例えば、従来の情報記録体を製造する際の印画速度は6.8mm/s程度であったが、これを15〜30mm/s、より好ましくは20mm/s程度とし、熱転写時の熱エネルギーの付与時間を、従来7.5ms/lであったのを、0.5〜5ms/l、より好ましくは1〜3ms/lとする。なお、「ms/l」とは、1ライン印画(加熱)するのに要する時間(秒数)を意味する。印画速度を高速化は、熱転写シートの巻き取り装置の速度を上げることにより行われるが、巻き取り装置のモーターは、精度が高くかつ高出力で小型のものを使用することが好ましい。
【0066】
さらに本発明においては、文字潰れの解消と再加熱時の熱量増加を行うために、印画速度や再加熱時の熱量を増加させることの他、画像情報が形成された部分へ供給する熱量を補うため、画像情報形成時にサーマルヘッド周囲の環境温湿度を高めたり、基材の裏面から熱を加える装置を備え付けて、ポストキレート反応を促進させる方法が好ましく用いられる。
【0067】
また、熱溶融ブラック色材層と加熱促進層とを備えた文字情報記録用熱転写シートを用いて、被記録体にブラック色材を熱転写するとともに、被記録体の画像部分を加熱促進層を介して再加熱する手段として、ヘッド面積の小さなユニットを2つ組み合わせたサーマルヘッドを用いてもよい。2つのユニットからなるサーマルヘッドを用いることにより、画像情報が形成された部分を、文字情報の熱転写時に再加熱する際、文字情報記録用のヘッド(すなわち熱溶融ブラック色材層を熱転写するためのユニット)とは別に、画像情報部分側のヘッドの電圧を上げて熱量を増やすことができ、それによりポストキレート反応をより効率よく促進することができる。
【0068】
受像層に画像および文字情報が記録されたカード基材1は、次いで、透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部60に移動する。透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部には、保護層転写箔シート61および/または光学変化素子転写箔シート62が配置され、その位置に対応してヒートローラー63が配置されている。
【0069】
透明保護層転写箔シート61は、図9に示すように、支持体611その支持体611の一方の面に設けられた透明保護転写層612とから構成され、透明保護転写層612は、支持体611側から順に、離型層613、透明保護層614および接着層615が積層した構造を有する。この透明保護層転写箔シート61は、サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプ等の加熱手段により、透明保護層転写層612が支持体611から剥離して被記録体である基材カード1に転写されるものである。また、光学変化素子転写箔シート62は、図10に示すように、支持体621とその支持体621の一方の面に設けられた光学変化素子転写層622とから構成され、光学変化素子転写層622は、支持体621側から順に、離型層623、光学変化素子層624および接着層625が積層した構造を有する。この光学変化素子転写箔シート62は、サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプ等の加熱手段により、光学変化素子転写層622が支持体621から剥離して被記録体である基材カード1に転写されるものである。
【0070】
透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部60に移動したカード基材1は、この工程において、適宜、透明保護転写層および/または光学変化素子転写層が転写される。例えば、カード基材1上の画像情報を記録した部分にのみ透明保護転写層61を設けたり、カード基材1上の任意の位置に光学変化素子転写層62を設けたりすることができる。カード基材1の画像情報記録部分に透明保護転写層61を設ける際には、上記したように、サーマルヘッド、ヒートロール、ホットスタンプ等の加熱手段を利用して透明保護転写層がカード基材1に熱転写されるため、画像情報部分の再加熱を兼ねることになる。その結果、受像層中の色材と金属イオン含有化合物とのキレート反応がさらに促進することになり、より優れた発色と階調を有する画像情報をカード基材上に形成することができる。また、光学変化素子転写層をカード基材上に転写することにより、情報記録体の偽変造を抑制することができる。
【0071】
上記した透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートは、従来公知のものを使用することができる。例えば、透明保護層としては、被記録体に記録された画像情報を保護するために、耐久性や透明性に優れた樹脂であれば、従来公知の何れの樹脂も使用でき、例えば、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。透明保護層は、例えば、適当な溶剤又は分散液に、上記の樹脂を溶解又は分散させた保護層塗工液を、支持体又は離型層の表面に、厚みが0.5〜5g/m2(乾燥基準)程度となるように塗布し、乾燥させることにより形成することができる。透明樹脂層の厚みは0.3〜50μmが好ましく、より好ましくは0.3〜30μm、特に好ましくは0.3〜20μmである。
【0072】
光学変化素子層としては、従来公知の光学変化素子を用いることができ、例えば、キネグラムのような回折格子の2次元のCG画像であって線画像構成の画像が移動、回転、膨張、縮小等事由に動き、変化する点に特徴があるもの、ピクセルグラムのような画像がポジとネガに変化する点に特徴があるもの、OSD(Optical Security Device)のような色が金色から緑色に変化する点に特徴があるもの、LEAD(Long Economical Anticopy Device)のような画像が変化して見える点に特徴を有するもの、ストライプ型OVD(Optical VariableDevice)、金属箔、および日本印刷学会誌(1998年)第35巻第6号第482〜496頁に記載されているような素材、特殊な印刷法、特殊なインキ等により形成されたもの、を用いることができる。また、ホログラム等も好適に使用できる。
【0073】
また、上記の透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートの支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂シート、又は上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、金属箔等の単層体またはこれら2層以上の積層体が挙げられる。支持体の厚みは10〜200μm、好ましくは15〜80μmである。
【0074】
透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートの離型層としては、高ガラス転移温度を有するアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ボリビニルブチラール樹脂などの樹脂、ワックス類、シリコンオイル類、フッ素化合物、水溶性を有するポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、Si変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース樹脂、ヒドロキシセルロース樹脂、シリコン樹脂、パラフィンワックス、アクリル変性シリコーン、ポリエチレンワックス、エチレン酢酸ビニルなどの樹脂、ポリジメチルシロキサンやその変性物、フッ素化オレフィン、パーフルオロ燐酸エステル系化合物等のフッ素系化合物が挙げられる。
【0075】
透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートの接着層としては、熱貼着性樹脂としてエチレン酢酸ビニル樹脂、エチンエチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、アイオノマー樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、粘着付与剤などが挙げられ、それらの共重合体や混合物でもよい。具体的には、ハイテックS−6254、S−6254B、S−3129等(東邦化学工業(株)製)、ジュリマーAT−210、AT−510、AT−613等(日本純薬(株)製)、プラスサイズL−201、SR−102、SR−103、J−4等(互応化学工業(株)製)の市販のものを使用することができる。接着層の厚みは0.1〜1.0μm程度である。
【0076】
また、透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートは、支持体、離型層、透明保護層または光学変化素子層、ならびに接着層の各層の接着性を向上させるため、各層の間に中間層としてプライマー層や保護層が設けられていてもよい。
【0077】
透明保護転写層61および/または光学変化素子転写層62が転写されたカード基材1は、続いて、活性放射線硬化層付与部及び/又は活性放射線照射部70に移動する。本工程において、画像/文字情報が記録され、透明保護転写層等が転写されたカード基材1の表面に活性放射線硬化液が塗布され、活性放射線により露光が行なわれ、活性放射線硬化層が形成される。活性放射線硬化層は、カード基材上に記録された文字/画像情報や光学変化素子層等を保護し、情報記録体の耐久性を向上させるために設ける任意の層である。
【0078】
活性放射線硬化層は、紫外線や電子線等の活性放射線の照射により硬化する樹脂であれば従来公知のものを使用することができ、例えばエポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等に光重合開始剤、光増感剤を添加した電離放射線硬化性樹脂を使用できる。電離放射線硬化樹脂は、これらの樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイを含む)であっても良い。
【0079】
<情報記録体>
上記のようにして得られた情報記録体90は、図11に示すように、カード基材1の受像層3中に画像情報81および文字情報82が記録され、画像情報81が記録された部分には、透明保護転写層61が設けられ、また、カード基材表面の任意の位置に光学変化素子転写層62が設けられている。さらに、これら文字情報82、透明保護転写層61、および光学変化素子転写層62を覆うように、活性放射線硬化層71が設けられている。また、カード基材1の受像層3を設けていない側の面には、任意の層として、筆記層や帯電防止層(図示せず)を設けてもよい。
【実施例】
【0080】
次に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0081】
実施例1
<文字情報記録用熱転写シートの準備>
基材として、厚さ4.5μmの易接着処理済みポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー、東レ株式会社製)を用いた。基材の一方の面に、下記の組成の背面層用塗工液をグラビアコーターを用いて塗工し、80℃で1分間乾燥させ、厚さ1.6μmの背面層を形成した。また、基材の他方の面(易接着処理面)に、図1に示した符合23の部分(Bk)に相当するパターンとなるように、下記の組成の剥離層用塗布液をグラビアコーターにより塗布量が0.3g/m2(固形分)となるように塗布、乾燥して剥離層を形成した。
【0082】
<背面層用塗工液>
ポリビニルブチラール樹脂
(エスレックBX−1、積水化学工業株式会社製) 2.0部
リン酸エステル系界面活性剤
(プライサーフA208N、第一工業製薬株式会社製) 1.3部
タルク(ミクロエースP−3、日本タルク工業株式会社製) 0.3部
ポリイソシアネート
(バーノックD750−45、大日本インキ化学工業株式会社製) 9.2部
メチルエチルケトン 43.6部
トルエン 43.6部
【0083】
<剥離層用インキ>
塩素化ポリプロピレン 20.0部
溶剤(トルエン/酢酸エチル(質量比1:1)) 80.0部
【0084】
続いて、剥離層の表面に、下記の組成の熱溶融性ブラックインキ層をグラビアコーターにより塗布量が1.5g/m2となるように塗布、乾燥して、熱溶融性ブラックインキ層を形成した。
<熱溶融性インキ層用塗布液>
カーボンブラック(ダイヤブラック、三菱化学株式会社製) 10.0部
エチレン−酢酸ビニル共重合体
(EVAFLEX200W、三井ポリケミカル株式会社製) 10.0部
カルナバワックス 15.0部
パラフィンワックス 60.0部
【0085】
更に、熱溶融性インキ層の上に、下記組成の感熱接着層用塗布液をグラビアコート法により塗布量が0.2g/m2(固形分換算)となるように塗布、乾燥して、接着層を形成した。
<感熱接着層用塗布液>
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂
(EVAFLEX#420、三井ポリケミカル株式会社製) 10.0部
溶剤(トルエン) 90.0部
【0086】
次に、基材上の、剥離層、熱溶融性ブラックインキ層および接着層を設けていない部分(図1の符合23の部分に相当)に、下記の組成の加熱促進層用塗布液をグラビアコーターにより塗布量が2.0g/m2(固形分換算)となるように塗布、乾燥して加熱促進層を形成することにより、文字情報記録用熱転写シートを作製した。
<加熱促進層用インキ>
アクリル樹脂(BR−83、三菱レイヨン株式会社製) 10.0部
窒化ホウ素
(デンカボロンナイトライドSP−2、電気化学工業株式会社製) 10.0部
溶剤(メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1)) 80.0部
【0087】
<画像情報記録用熱転写シートの準備>
基材として、厚さ4.5μmの易接着処理済みポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー、東レ株式会社製)を用いた。基材の一方の面に、文字情報記録用熱転写シートの作製に用いたものと同様の背面層用塗工液をグラビアコーターを用いて塗工し、80℃で1分間乾燥させ、厚さ1.6μmの背面層を形成した。また、基材の他方の面(易接着処理面)に、下記の組成の染料層用塗工液を厚さ2.0μmの各染料層となるように、イエロー染料層(Y)、シアン染料層(C)、マゼンタ染料層(M)の順に面順次に繰り返し、グラビアコーターを用いて塗布、乾燥することにより、画像情報記録用熱転写シートを作製した。
【0088】
<染料層用塗工液>
イエロー染料層用塗工液(Y)
分散染料(ホロンブリリアントイエローS−6GL) 5.5部
ポリビニルアセタール樹脂
(エスレックスKS−5、積水化学株式会社製) 4.5部
リン酸エステル系界面活性剤
(プライサーフA208N、第一工業製薬株式会社製) 0.1部
ポリエチレンワックス 0.1部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0089】
マゼンタ染料層用塗工液(M)
MS−RED−G
(ディスパーレッド60、三井東圧化学株式会社製) 1.5部
マクロレックスレッドバイオレットR
(ディスパースバイオレット26 バイエル株式会社製) 2.0部
ポリビニルアセタール樹脂
(エスレックスKS−5、積水化学株式会社製) 4.6部
リン酸エステル系界面活性剤
(プライサーフA208N、第一工業製薬株式会社製) 0.1部
ポリエチレンワックス 0.1部
トルエン 45.8部
メチルエチルケトン 45.8部
【0090】
シアン染料層用塗工液(C)
分散染料(カヤセットブルー714) 4.5部
ポリビニルアセタール樹脂
(エスレックスKS−5、積水化学株式会社製) 4.5部
リン酸エステル系界面活性剤
(プライサーフA208N、第一工業製薬株式会社製) 0.1部
ポリエチレンワックス 0.1部
トルエン 45.4部
メチルエチルケトン 45.4部
【0091】
<ICカードへの画像情報および文字情報の記録>
ICカードとして、特開2005−174220の実施例(塗液L、接着剤S2使用)のICカードを用いた。また、カードプリンタとして、カード表面に2ユニットで印画及び印字を行い、次いで、カード表面に表面保護箔を熱転写する機能を有するIDカード用プリンタ(CX120、日本ビクター株式会社製)を用いた。
上記のようにして得られた画像情報記録用熱転写シートを用いて、下記の印画条件1でICカード上に印画し、続いて、上記のようにして得られた文字情報記録用熱転写シートを用いて、下記の印画条件2で印字した。
【0092】
印画条件1(画像情報記録)
サーマルヘッド抵抗値:4000(Ω)
サーマルヘッド電圧値:18(V)
印圧:2.2kg/inch
印画速度:2.5msec/line
Duty:75%
サーマルヘッド解像度:400dpi
印画パターン:255階調目 ベタ画像
【0093】
印画条件2(文字情報記録)
サーマルヘッド抵抗値:4000(Ω)
サーマルヘッド電圧値:19(V)
印圧:2.2kg/inch
印画速度:1.4msec/line
Duty:熱溶融ブラック色材層部分:60%、バリア層(色材層が無い)部分:40%
サーマルヘッド解像度:400dpi
【0094】
比較例1
実施例1で使用した文字情報記録用熱転写シートにおいて、加熱促進層用塗工液を下記の組成の塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にして文字情報記録用熱転写シートを作製し、実施例1と同様にして、ICカードへの画像情報および文字情報の記録を行った。
<塗工液>
アクリル樹脂(BR−83、三菱レイヨン株式会社製) 10.0部
溶剤(メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1)) 90.0部
【0095】
比較例2
実施例1で使用した文字情報記録用熱転写シートにおいて、加熱促進層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして文字情報記録用熱転写シートを作製し、実施例1と同様にして、ICカードへの画像情報および文字情報の記録を行った。
【0096】
評価結果
画像情報および文字情報を記録したICカードの画像記録部分を目視にて観察したところ、実施例のICカードの画像情報記録部分の発色は良好であった。また、文字情報記録部分の印字も良好であった。一方、比較例1で得られた印画物においては、画像情報記録部分の発色が劣っていた。また、比較例2で得られた印画物においては、文字情報記録部分の印字も一部がかすれていた。この文字のかすれは、文字情報記録用熱転写シートをロール状でプリンタに供給した際の、ロール表面の段差に対応するものであった。更に、比較例2の文字情報記録用熱転写シートを用いてICカードに連続プリントを行ったところ、途中で、文字情報記録用熱転写シートが破断した。
【符号の説明】
【0097】
1 被記録体(ICカード)
2 カード基材
3 受像層
10 画像情報記録用熱転写シート
11 基材
12 色材層(YMC)
13 耐熱滑性層
20 文字情報記録用熱転写シート
21 基材
22 熱溶融ブラック色材層
23 加熱促進層
30 情報記録体製造装置
40 カード基材供給部
50 情報記録部
60 透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部
61 透明保護層転写箔シート
62 光学変化素子転写箔シート
70 樹脂層形成用塗工液付与部及び/又は活性放射線照射部
71 活性放射線硬化層
81 画像情報
82 文字情報
90 情報記録体
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートに関し、より詳細には、文字情報と画像情報とが同一面上に記録された、IDカードやキャッシュカード等の情報記録体を製造する際に好適に使用される文字情報記録用の熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
身分証明書等のIDカードや銀行等のキャッシュカードにおいて、個別認識できるように、その一方の面に、人物の顔写真等の画像情報とその人物の住所や名前等の文字情報とが記録されたものが使用されている。このようなIDカードや銀行等のキャッシュカード等の情報記録体は、プラスチック等のカードの一方の面に画像情報と文字情報とを記録することにより製造されている。このような情報記録体は、画像情報の鮮明性や文字情報を印字する際の簡便性を考慮して、熱転写シートを用いて製造されている。例えば、基材上にイエロー、マゼンタおよびシアン等の色材層を設けた熱転写シートを用いて、カード上にカラーの人物画像を記録し、次いで、ブラックの色材層を設けた熱転写シートを用いて、基材上の人物画像を形成した以外の部分に文字等を記録することにより製造されている。熱転写シートを用いて得られる画像は、中間色の再現性や階調性に優れ、フルカラー写真画像に匹敵する高品質な画像を形成できるため、特に身分証明書等のIDカードや銀行等のキャッシュカードのような、記録画像により個別認識を必要とするような情報記録体においては、熱転写シートを用いて製造することが一般的となっている。
【0003】
近年、プリンタの高速化に伴い、より低いエネルギーで画像の濃淡を表現でき、かつ優れた画像耐久性を実現できる、いわゆるポストキレート方式による熱転写方法が提案されている。ポストキレート方式とは、受像層中に特定の金属イオン化合物を含有させた被記録体と、その特定金属イオンとキレート錯体を形成し得る染料を色材層とした熱転写シートとを用いて、熱転写後に、それらを反応させてキレート錯体を形成させることにより画像を形成する方法である(例えば、特開平4−89292号公報や特開平4−292989号公報等)。このポストキレート方式により形成された画像は、染料の褪色や滲みが生じにくく耐光性にも優れることから、上記したようなカード類等の情報記録体にも適用され始めている。
【0004】
ポストキレート方式を用いて画像情報を情報記録体に形成する場合、色材を熱転写シートから情報記録体の受像層へ移行させる際の熱エネルギーだけでは、受像層中の金属イオン化合物と色材との反応が不十分な場合があり、良好な色調が得られない場合がある。特にプリンタの高速化により、熱転写時のエネルギーだけではキレート反応を十分に進めることができないという問題がある。この問題を解決するために、例えば特開2003−58847号公報には、画像情報と文字情報とを記録した後に、画像情報が記録された部分に透明保護転写箔を転写して、転写時の熱エネルギーにより、画像情報が記録された部分を再加熱してキレート反応を完全ならしめることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−89292号公報
【特許文献2】特開平4−292989号公報
【特許文献3】特開2003−58847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プリンタの更なる高速化が希求されており、キレート反応を完全ならしめるための再加熱工程が高速化の障害となっていた。また、上記の特開2003−58847号公報に開示されている方法においては、図12に示すように、イエロー、マゼンタおよびシアンの各色材層を面順次の設けた熱転写シートを用いて、先ず画像情報部分を形成し、次いで、図13に示すような、ブラック色材層と透明保護転写箔とが面準位に設けられた熱転写シートを用いて、文字情報を画像形成部分以外の部分に形成した後に、画像形成部分に透明保護転写箔を転写することが行われていた。そのため、転写工程が複雑となりプリンタ装置自体を小型化することが困難であった。
【0007】
本発明者らは、先の出願(特願2010−140252号)において、ポストキレート熱転写方式により基材上に画像を形成し、次いで基材上の画像形成部分以外の部分に文字情報を熱転写により記録する際に、同時に画像形成部分を再加熱することにより、画像情報の画質を維持しつつプリンタ装置を高速化および小型化できる情報記録体の製造方法を提案している。しかしながら、上記の再加熱は、文字情報記録用熱転写シートの色材層が設けられていない部分をサーマルヘッド等の加熱手段を用いて行われるため、当該部分が常に加熱されて、基材にダメージを与え、その結果、熱転写シートにシワを生じさせたり、切れてしまうことがあった。また、文字情報記録用熱転写シートの色材層が設けられている部分と色材層が設けられていない部分とで、熱転写シートの厚みが異なるため、巻回してロール状の形態とした場合に段差を生じ、この段差が影響して文字情報を被記録体に印刷する際に影響を印字品質に影響を与える恐れもある。この段差は、色材層が設けられた部分の熱転写シートの厚みと同じになるように、色材層が設けられていない部分に樹脂層等を設けることにより解決できるが、このような樹脂層を設けると、画像形成部分を再加熱の際に熱エネルギーが樹脂層で吸収されてしまい、ポストキレート反応を促進することの障害になる。一方、ポストキレート反応を完全ならしめるために、再加熱の際の熱量を増やすと、サーマルヘッドや熱転写シートへの熱ダメージが増加するため、情報記録体の製造工程での不具合が発生する恐れもある。
【0008】
今般、上記したようなポストキレート方式により被記録体上に画像を形成し、次いで基材上の画像形成部分以外の部分に文字情報を熱転写により記録したような情報記録体を製造する場合に、文字情報記録用の熱転写シートの、被記録体の画像形成部分に相当する部分に加熱促進層を設けておくことにより、上記のような文字情報記録時の熱転写による再加熱を行っても、サーマルヘッドや熱転写シートへの熱ダメージが少なく、かつ、画像情報部分の優れた画質と、プリンタ装置の高速化および小型化とを両立させることができる、との知見を得た。そして、このような構成の熱転写シートとすることにより、均一なロール状の形態に巻回できるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、ポストキレート方式により被記録体上に画像を形成し、次いで基材上の画像形成部分以外の部分に文字情報を熱転写により記録したような情報記録体を製造する場合において、上記のような文字情報記録時の熱転写による再加熱を行っても、サーマルヘッドや熱転写シートへの熱ダメージが少なく、かつ、画像情報部分の優れた画質と、プリンタ装置の高速化および小型化とを両立させることができるとともに、均一なロール状の形態に巻回できる文字情報記録用熱転写シートを提供することである。
【0010】
また、本発明の別の目的は、上記の文字情報記録用熱転写シートを用いた情報記録体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による文字情報記録用熱転写シートは、ポストキレート方式により画像形成された被記録体の同一面上に文字情報を記録するために用いられる熱転写シートであって、
基材と、前記基材上の一部に設けられた色材層と、前記基材上の前記色材層が設けられていない部分に設けられた加熱促進層と、を少なくとも備え、
前記加熱促進層が、前記被記録体上の画像情報が印画された部分と対応するように、パターニングされており、
前記加熱促進層が、前記色材層が設けられた部分の熱転写シートの厚みと、前記加熱促進層が設けられた部分の熱転写シートの厚みとが、同じになるような厚みで、基材上に設けられている、ことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の態様においては、前記加熱促進層が、金属、金属窒化物または金属酸化物から選択される少なくとも1種以上の微粒子またはフィラーを含んでなることが好ましい。
【0013】
また、本発明の態様においては、前記微粒子またはフィラーが、前記加熱促進層中に、質量基準で、50〜85%含まれてなることが好ましい。
【0014】
また、本発明の態様においては、前記基材上の、前記色材層および前記加熱促進層が設けられていない部分に、シアン染料層、マゼンタ染料層およびイエロー染料層が面順位に設けられていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の別の態様による情報記録体の製造方法は、上記文字情報記録用熱転写シートを用いて、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体を製造する方法であって、
画像情報記録用熱転写シート中の色材とキレート錯体を形成し得る金属イオン含有化合物を含んでなる受像層を備えた被記録体を準備し、
前記色材を含んでなる色材層を備えた画像情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して画像情報を印画し、
前記受像層上の画像情報形成部以外の部分に、前記文字情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して文字情報を印画する際に、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行う、
ことを含んでなることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の態様においては、前記画像情報形成部の加熱が、前記文字情報記録用熱転写シートから色材を熱転写する際のサーマルヘッドからの熱エネルギーにより行われることが好ましい。
【0017】
また、本発明の態様においては、前記文字情報記録用熱転写シートから色材を熱転写する際に、前記加熱促進層が設けられた部分に、サーマルヘッドからの熱エネルギーを付与して、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行うことが好ましい。
【0018】
また、本発明の別の態様においては、上記の製造方法により得られた情報記録体も提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明による文字情報記録用熱転写シートには、被記録体の画像形成部分に相当する部分に加熱促進層が設けられているため、ポストキレート方式により被記録体上に画像を形成し、次いで基材上の画像形成部分以外の部分に文字情報を熱転写により記録したような情報記録体を製造する場合において、文字情報記録時の熱転写による再加熱を行っても、サーマルヘッドや熱転写シートへの熱ダメージが少なく、かつ、画像情報部分の優れた画質と、プリンタ装置の高速化および小型化とを両立させることができる。また、色材層が設けられている部分と加熱促進層が設けられている部分の熱転写シートの厚みが同じであるため、熱転写シートを巻回した場合であっても、均一なロール状の形態とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による文字情報記録用熱転写シートの一実施形態を示した斜視概略図である。
【図2】図1の文字情報記録用熱転写シートのA−A’断面を示した断面概略図である。
【図3】被記録体の一実施形態を示した断面概略図である。
【図4】被記録体の別の実施形態を示した断面概略図である。
【図5】画像情報記録用熱転写シートの一実施形態を示した断面概略図である。
【図6】画像情報記録用熱転写シートの別の実施形態を示した斜視概略図である。
【図7】本発明による情報記録体の製造方法に用いられる製造装置の一実施形態を示した概略構成図である。
【図8】文字情報記録用と画像情報記録用を兼ね備える熱転写シートの一実施形態を示した斜視概略図である。
【図9】透明保護層転写箔シートの一実施形態を示した断面概略図である。
【図10】光学変化素子転写箔シートの一実施形態を示した断面概略図である。
【図11】本発明による情報記録体の一実施形態を示した断面概略図である。
【図12】従来の情報記録体の製造に用いられていた画像情報記録用熱転写シートを示した断面概略図である。
【図13】従来の情報記録体の製造に用いられていた文字情報記録用熱転写シートを示した断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<文字情報記録用熱転写シート>
本発明による熱転写シートは、ポストキレート方式により画像形成された被記録体の同一面上に文字情報を記録するために用いられる熱転写シートであって、図1に示すように、基材24と、基材24上の一部に設けられた色材層22と、基材24上の色材層22が設けられていない部分に設けられた加熱促進層23と、を少なくとも備えた層構成を有しており、加熱促進層23が、被記録体上の画像情報が印画された部分と対応するようにパターニングされているものである。ポストキレート方式により画像形成された被記録体の同一面上に、上記のような加熱促進層を設けた熱転写シートを用いて文字情報を記録する場合、プリンタのサーマルヘッドからの熱エネルギーにより、熱転写シートの熱溶融ブラック色材層中の色材が、被記録体へ熱転写されて、画像形成部分以外の部分の所望の位置に文字情報を記録することができる。また、熱転写シートの加熱促進層が設けられた部分にサーマルヘッドからの熱エネルギーを付与することにより、加熱促進層を介して、被記録体の画像情報が記録された部分(すなわち、被記録体の受像層のうち、熱転写シートの加熱促進層が設けられている範囲に対応した範囲)に熱が伝達され、被記録体の受像層中の色材(イエロー染料、マゼンタ染料およびシアン染料)と金属イオン含有化合物とがキレート反応が促進されて、所望の発色及び階調を有する画像情報が形成される。
【0022】
上記のような加熱促進層が文字情報記録用熱転写シートに設けられていない場合、熱転写の際に、被記録体の画像情報が記録された部分は直接、熱転写シートの基材と接することとなるため、当該部分が常に加熱されて、基材にダメージを与え、その結果、熱転写シートにシワを生じさせたり、切れてしまう場合がある。また、文字情報記録用熱転写シートの色材層が設けられている部分と色材層が設けられていない部分とで、熱転写シートの厚みが異なるため、巻回してロール状の形態とした場合に段差を生じ、この段差が影響して文字情報を被記録体に印刷する際に影響を印字品質に影響を与える恐れもある。この段差は、色材層が設けられた部分の熱転写シートの厚みと同じになるように、色材層が設けられていない部分に樹脂層等を設けることにより解決できるが、このような樹脂層を設けると、画像形成部分を再加熱の際に熱エネルギーが樹脂層で吸収されてしまい、ポストキレート反応を促進することの障害になる。一方、ポストキレート反応を完全ならしめるために、再加熱の際の熱量を増やすと、サーマルヘッドや熱転写シートへの熱ダメージが増加するため、情報記録体の製造工程での不具合が発生する恐れもある。本発明においては、上記のように、熱転写シートに段差を生じさせないような厚みの加熱促進層を、熱転写シートの基材の一部に設けることにより、画像情報記録部分の再加熱によりポストキレート反応を促進するとともに、そのような再加熱を行っても、熱転写シートやサーマルヘッドへの熱ダメージの影響が低減することができる。以下、文字情報記録用熱転写シートを構成する各層について説明する。
【0023】
図2は、図1のA−A’断面を示した概略断面図である。基材24上には、色材層22と加熱促進層23とが設けられている。基材としては、従来公知の熱転写シートに用いられている基材フィルムを用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルフィドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等の樹脂フィルム等を用いることができる。これら樹脂フィルムの中でも耐熱性やコストの観点からポリエチレンテレフタレートフィルムが好適に使用できる。
【0024】
印刷速度を向上させ、また再加熱時の熱量を増大させる観点から、基材の厚みは2〜10μm、好ましくは2〜6μm、より好ましくは2〜4μmである。基材は薄い方が好ましいが、2μm未満では張力により、熱転写シートが変形し易くなる。隣接する層との接着性を向上させるため、基材表面には、表面処理を施してもよい。上記表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、オゾン処理、紫外線処理、放射線処理、粗面化処理、化学薬品処理、プラズマ処理、グラフト化処理等、公知の樹脂表面改質技術を適用することができる。
【0025】
また、必要に応じ、その一方の面又は両面にプライマー層(図示せず)を設けてもよい。プライマー層は、例えば基材フィルムの溶融押出しの成膜時に、未延伸フィルムにプライマー液を塗布し、その後に延伸処理して行なうことができる。また、プライマー液としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂やポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂等のビニル系樹脂、ポリビニルアセトアセタールやポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール系樹脂、セルロース系樹脂等からなる塗工液を使用することができる。
【0026】
色材層22は、基材24上に顔料等で着色した熱溶融性インキを塗工することにより形成することができる。熱溶融性インキとしては、従来公知の熱転写シートに用いられているものを制限なく使用することができる。例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の公知の手段により、基材の一方の面に公知のブラックインキを塗布し、乾燥することにより色材層を形成することができる。このようにして形成される色材層の厚みは、0.1〜5.0μm程度、好ましくは0.2〜3.0μmである。
【0027】
基材24上に色材層22を直接設けてもよいが、基材24と色材層22との間に剥離層25を設けてもよい。剥離層を設けることにより、熱転写時に溶融したブラックインキ溶融を基材から剥離し易くするとともに、被記録体に文字情報を記録した後も、文字記録部分に滑り性を与えて、耐擦過性を向上させることができる。剥離層としては、融点もしくは軟化点が、50〜150℃、特に60〜120℃の範囲にある熱可塑性樹脂や2種以上熱可塑性樹脂を混合して上記の温度範囲になるものを好適に使用できる。例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、シリコーンまたはフッ素で変性した各種の樹脂やワックスを主成分とした従来公知のものを使用することができる。また、熱可塑性樹脂の他に、必要に応じて、パルミチン酸、ステアリン酸、マルガリン酸およびベヘン酸等の高級脂肪酸;パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、マルガニルアルコール、ミリシルアルコールおよびエイコサノール等の高級アルコール;バルミチン酸セチル、バルミチン酸ミリシル、ステアリン酸セチルおよびステアリン酸ミリシル等の高級脂肪酸エステル;アセトアミド、プロピオン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミドおよびアミドワックス等のアミド類;ならびにステアリルアミン、ベヘニルアミンおよびパルチミルアミン等の高級アミン類などを添加してもよい。これら添加成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、剥離性を調節するため界面活性剤を含んでいてもよく、好適な界面活性剤として、ポリオキシエチレン鎖含有化合物が挙げられる。さらに、無機あるいは有機の微粒子(金属粉、シリカゲルなど)や、オイル類(アマニ油鉱油など)を添加することもできる。熱伝導性の観点から、剥離層の厚みは、0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜1.0μmとするのが好ましい。
【0028】
色材層22上には、接着層26を設けて、色材層と被記録体との接着性を向上させてもよい。この接着層は、サーマルヘッド、レーザー等の加熱により、軟化して接着性を発揮する熱可塑性エラストマーを主体とし、得られる熱転写シートをロール状に巻き取った時にブロッキングを防止するために、ワックス類、高級脂肪酸のアミド、エステル及び塩、フッ素樹脂や無機物質の粉末のようにブロッキング防止剤を添加することができる。熱可塑性エラストマーとして、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エステル共重合体(EEA)、ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、石油樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、塩化ビニリデン樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール、アセチルセルロース、ニトロセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリイソブチレン、エチルセルロースまたはポリアセタールなどが挙げられる。また、添加されるワックス類としては、例えば、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、パラフィンワックス等がある。更に、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、イボタロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、ポリエステルワックス、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等、種々のワックスが挙げられる。
【0029】
接着層は、熱可塑性エラストマーと添加剤とを適当な溶剤に溶解または分散させた塗工液を、従来公知のホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアダイレクトコート、グラビアリバースコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート等の方法により形成することができる。接着層の厚みは、0.05〜2.0μm程度、好ましくは0.1〜1.0μmである。
【0030】
また、基材24の色材層22を設けた側とは反対の側の面には、背面層27を設けてもよい。背面層は、熱転写時の熱で熱転写シートが変形しないように耐熱性を向上させるとともに、また熱転写時のサーマルヘッドの走行性を改善してスティッキング等を抑制する機能を有する。背面層は、バインダー樹脂に滑性剤、界面活性剤、無機粒子、有機粒子、顔料等を添加したものを塗布、乾燥することにより形成できる。耐熱層に使用されるバインダー樹脂としては、従来公知のものを使用でき、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、硝化綿などのセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、アクリル樹脂、ポリアクリルアミド、アクリロニトリル−スチレン共重合体などのビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性またはフッ素変性ウレタン樹脂等が挙げられる。また、滑性剤としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、ポリオレフィンおよびエチレン性不飽和カルボン酸またはそのエステル無水物から誘導されたポリマーを含むワックス等を好適に使用することができる。このような背面層を設けることにより、文字情報記録用熱転写シートをロール状にした場合の基材の裏面と色材層との接触面積を小さくして、基材裏面へ色材が移行するのを低減することもできる。背面層の厚みは、熱伝導性の観点から、0.05〜2.0μm程度、好ましくは0.2〜2.0μmである。
【0031】
基材上の色材層が設けられていない部分に設ける加熱促進層は、色材層中の色材を被記録体の受容層へ熱転写する際に行う画像情報記録部分への再加熱を促進するために設けられる層である。この加熱促進層は、基材上の色材層がない部分に設けられるとともに、熱転写の際に被記録体上の画像情報が印画された部分と、文字情報記録用熱転写シートの加熱促進層のある部分とが対応するように、パターニングされて設けられている。図1に示すように、色材層と加熱促進層とがパターニングして設けられているため、文字情報記録用熱転写シート20の表面に段差を生じる場合がある。そのため、本発明においては、加熱促進層は、図2に示すように、色材層22の設けられた部分の総厚みと同じ厚みになるように形成されている。このように段差をなくして熱転写シートの表面を均一にすることにより、熱転写シートを均一なロール状の形態に巻回すことができる。
【0032】
加熱促進層は、高熱伝導性材料とバインダー樹脂とを適当な溶剤に分散させた塗工液を基材上に塗布、乾燥させることにより形成することができる。高熱伝導性材料としては、熱伝導率が1Wm−1・K−1以上の材料、好ましくは、5Wm−1・K−1以上の材料を好適に使用することができ、このような材料としては、カーボン、グラファイト、金、銀、銅、ニッケル等の金属、窒化アルミニウム、窒化ボロン等の金属窒化物、ベリリア(BeO)、アルミナ、マグネシア(MgO)等の金属酸化物、チタン酸カリウムやチタンブラック、カーボンブラック等の微粒子やウィスカ、または、これら微粒子やウィスカを適当なフィラーにコーティングしたもの等が挙げられる。また、上記の高熱伝導性材料を分散させるバインダー樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルエステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンやプロピレンとのオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体樹脂、アイオノマー、セルロースジアセテート等のセルロース系樹脂、ポリマーボネート系樹脂等が挙げられ、これらのなかでも、ビニル系樹脂およびポリエステル系樹脂が好適に使用できる。
【0033】
加熱促進層中に含まれる高熱伝導性材料の含有量は、質量基準において、10〜90%であることが好ましく、より好ましくは50〜85%である。高熱伝導性材料の含有量が上記範囲よりも多いと、加熱促進層を形成する際の塗膜造膜性が不十分となり、塗膜が破壊され易くなり、いわゆる箔こぼれが生じやすくなる。一方、高熱伝導性材料の含有量が上記範囲よりも少ないと、ポストキレート反応を促進させるための熱量が不足する。
【0034】
加熱促進層は、上記したように、図2に示すように、色材層22の設けられた部分の総厚みと同じ厚みになるように形成される。加熱促進層の厚みは、色材層の設けられている部分の各層(接着層、離型層、色材層等)の厚みにもよるが、0.2〜7.0μm程度、好ましくは1.0〜5.0μmである。
【0035】
文字情報記録用熱転写シートは、上記した各層以外にも、従来公知の熱転写シートと同様に、離型層や下引き層等のその他の層が設けられていてもよい。
【0036】
<情報記録体の製造方法>
次に、上記した文字情報記録用熱転写シートを用いた情報記録体の製造方法を、図面を参照しながら説明する。本発明による情報記録体の製造方法は、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体を製造する方法であって、
(1)画像情報記録用熱転写シート中の色材とキレート錯体を形成し得る金属イオン含有化合物を含んでなる受像層を備えた被記録体を準備する工程、
(2)前記色材を含んでなる色材層を備えた画像情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して画像情報を印画する工程、
(3)前記受像層上の画像情報形成部以外の部分に、前記文字情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して文字情報を印画する際に、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行う工程、
を含むものである。以下、本発明による情報記録体の製造方法を、図面を参照しながら各工程順に説明する。
【0037】
本発明による情報記録体の製造方法においては、受像層を一方の面に備えた被記録体に文字情報および画像情報を印画することにより、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体が製造される。本発明においては、身分証明書等のIDカードや銀行等のキャッシュカードのような情報記録体を製造することを目的とするものであり、従って、被記録体として、ICチップを供えたIDカード基材に文字情報や画像情報等を印画することを一例に、被記録体について、まず説明する。
【0038】
図3は、ICカード基材2と受像層3とを備えた被記録体1の断面図を示したものである。ICカード基材2は、第1のシート部材4と第2のシート部材5との間に所定の厚みの電子部品8とを備えており、電子部品8は、アンテナ体8a、ICチップ8b等からなり、この電子部品8のICモジュールはインレット7に備えられている。第1のシート部材4と第2のシート部材5との間にインレット7を配置し、接着剤6を介在して、各部材を積層した積層構造である。また、被記録体は、図4に示すように、電子部品8を接着剤6中に備えた構造としてもよい。
【0039】
被記録体1は、ICカード基材2の第2シート部材5側に受像層3が設けられている。受像層3は、熱転写記録方式で昇華もしくは熱拡散性染料画像を受容して、被記録体1に文字情報および画像情報を印画するためのものである。受像層を形成するための材料としては、昇華性染料または熱溶融性インキ等の熱移行性の色材を受容し易い従来公知の樹脂材料を使用することができる。例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体もしくはポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンもしくはプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体系樹脂、アイオノマーもしくはセルロースジアスターゼ等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等が挙げられ、特に、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂またはポリエステル樹脂が好ましい。
【0040】
本発明においては、受像層3は、後記する色材である色素化合物と反応してキレートを形成し得る金属イオン含有化合物を含有している。すなわち、本発明においては、色材である色素化合物を受像層へ熱転写した後、受像層中の金属イオン含有化合物と色素化合物とを反応させてキレート錯体を形成する、いわゆるポストキレート方式により、画像情報および/または文字情報を被記録体に転写して画像形成するものである。ポストキレート方式を採用することにより、被記録体へ転写された画像や文字の耐光性を向上させることができる。
【0041】
受像層中に含有させる金属イオン含有化合物としては、従来公知のものを使用することができ、第I、第VIII族に属する2価および多価の金属の無機または有機の塩および金属錯体を好適に使用することができる。例えば、Ni2+、Cu+、Co2+、Cr2+およびZn2+を含有する、下記一般式:
[M(Q1)k(Q2)m (Q3)n]p+p(L−)
(式中、Mは金属イオンを表し、Q1、Q2、Q3は各々Mで表される金属イオンと配位結合可能な配位化合物を表わし、Lは錯体を形成しうる対アニオンを表し、kは1、2または3の整数を表し、mは1、2または0を表し、nは1または0を表すが、これらは前記一般式で表される錯体が4座配位か、6座配位かによって決定されるか、あるいはQ1、Q2、Q3の配位子の数によって決定され、pは1、2または3を表す。)で表される錯体が好ましく用いられる。これらの中でも、金属と配位結合する少なくとも一個のアミノ基を有する配位化合物が好ましく、具体的にはエチレンジアミンおよびその誘導体、グリシンアミドおよびその誘導体、ピコリンアミドおよびその誘導体が挙げられる。また、錯体を形成しうる対アニオンLとしては、Cr、SO4、ClO4等の無機化合物アニオンやベンゼンスルホン酸誘導体、アルキルスルホン酸誘導対等の有機化合物アニオンが挙げられるが、特に好ましくはテトラフェニルホウ素アニオンおよびその誘導体、ならびにアルキルベンゼンスルホン酸アニオンおよびその誘導体である。このような金属イオン含有化合物としては、米国特許第4,987,049号明細書に例示されたものを挙げることができる。
【0042】
金属イオン含有化合物の樹脂中への添加量は0.5〜20g/m2が好ましく、1〜15g/m2がより好ましい。
【0043】
受像層には、離型剤が添加されていてもよい。離型剤としては、用いるバインダーと相溶性のあるものが好ましく、具体的には変性シリコーンオイル、変性シリコーンポリマーが代表的であり、例えばアミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、ポリエステル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーン樹脂、ウレタン変性シリコーン樹脂等が挙げられる。このなかでもポリエステル変性シリコーンオイルはインクシートとの融着を防止するが、受像層の2次加工性を妨げないという点で特に優れている。その他の離型剤として、シリカ等の微粒子や硬化型シリコーン化合物等を使用することもできる。
【0044】
上記した各成分を溶媒に分散あるいは溶解させた受像層用塗工液を調製し、受像層用塗工液をICカード基材の一方のシート部材上に塗布し、乾燥することよって受像層を形成することができる。受像層の厚みは、一般的に1〜50μm、好ましくは2〜10μm程度である。
【0045】
受像層には、画像情報や文字情報を印画する前に、予め、罫線等のフォーマット印刷がされていてもよい。フォーマット印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、シルク印刷、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット方式、昇華転写方式、電子写真方式、熱溶融方式等のいずれの方式によって形成することができる。
【0046】
ICカード基材2は、図3および4に示したように、第1のシート部材4と第2のシート部材5との間に所定の厚みの電子部品8とを備えており、電子部品8は、アンテナ体8a、ICチップ8b等からなり、この電子部品8のICモジュールはインレット7または接着層6に備えられている。ICカード基材2は、第1のシート部材4と第2のシート部材5との間にインレット7を配置し、接着剤6を介在して、各部材を積層した積層構造を有する。ICカード基材に用いられるシート部材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート共重合体等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、生分解性脂肪族ポリエステル、生分解性ポリカーボネート、生分解性ポリ乳酸、生分解性ポリビニルアルコール、生分解性セルロースアセテート、生分解性ポリカプロラクトン等の生分解性樹脂、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂シート、または上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、金属箔等の単層体あるいはこれら2層以上の積層体が挙げられる。
【0047】
シート部材の厚みは30〜300μm、好ましくは50〜200μmである。50μm以下であるとシート部材1,2を互いに貼り合わせる際に熱収縮等を起こす場合がある。なお、熱収縮率を低減させるシート部材のアニール処理を行ってもよい。
【0048】
電子部品8は、一般的に、電子カードの利用者の情報を電気的に記憶するICチップ8bおよびICチップ8bに接続されたコイル状のアンテナ体8aとから構成される。また、電子部品8を含むインレット7または接着剤6中には、ICチップは点圧強度が弱いためにICチップ近傍に補強板9を備えていてもよい。インレットを含む電子部品の全厚さは100〜600μmが好ましく、より好ましくは150〜500μm、特に好ましくは、150〜450μmである。
【0049】
また、本発明においては、図3に示した被記録体のように、受像層3と第2シート部材2との間にクッション層10が設けられていてもよい。クッション層を設けると、熱転写の際の表面の凹凸の影響を緩和することができ画像や文字を再現性良く転写記録することができる。
【0050】
クッション層を形成する材料としては、ポリオレフィンが好ましい。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−水素添加イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリブタジエン、光硬化型樹脂層のような柔軟性を有し、熱伝導性の低いものが適する。具体的には、特願平2001−16934等のクッション層を使用することができる。
【0051】
第1のシート部材と第2のシート部材との間に所定の電子部品と設けた積層構造を形成する方式としては、熱貼合法、接着剤貼合法、接着剤塗布法及び射出成形法が挙げられる。また、各部材を貼り合わせる際には、シート基材の表面平滑性や、第1のシート部材と第2のシート部材との間に設ける電子部品の密着性を向上させるために、上下プレス方式、ラミネート方式等により加熱及び加圧を行うことが好ましい。
【0052】
本発明においては、上記した被記録体の受像層に、画像情報記録用熱転写シートを用いて、画像情報を印画する。上記したような被記録体と画像情報記録用熱転写シートとを、被記録体の受像層と画像情報記録用熱転写シートの色材層とが対抗するように重ね合わせて、画像情報記録用熱転写シート側から、サーマルヘッド等の加熱手段により加熱して、色材層中の色材を、被記録体の受像層へ熱転写することにより、画像情報を被記録体へ画像情報を印画する。
【0053】
画像情報記録用熱転写シート10は、図5に示すように、基材11の一方の面に設けた色材層12を備えたものである。基材11の前記色材層12を設けた面とは反対側の面に耐熱滑性層13を設けてもよい。色材層12は、従来公知の熱転写シートと同様に、イエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層とから構成されていてよいが、本発明においては、図6に示すように、シアン染料層(C)、マゼンタ染料層(M)およびイエロー染料層(Y)が面順位に設けられた画像情報記録用熱転写シートを用い、シアン、マゼンタ、およびイエローの順で、各染料を被記録体の受像層へ熱転写して画像情報の印画を行うことが好ましい。後記するように、画像情報記録用熱転写シートに使用される昇華性染料として、いわゆるポストキレート色素を用いる場合、ポストキレート色素は、上記の被記録体の受像層中のメタルソースと反応して発色する。そのため、必ずしも画像情報記録用熱転写シート上に設けた色材層の色(シアン、マゼンタ、イエロー)と、被記録体へ画像情報を熱転写した後の色(すなわち、受像層で色素染料がメタルソースと反応した後の色)とが同じように発色せず、むしろ全く異なる色となる場合がある。熱転写時の熱量が不十分で、色素とメタルソースとの反応が不完全な場合、未反応のポストキレート色素の色が、被転写体の受像層に形成された画像部分に残存するため、画像の色濁りが生じやすくなる。特に、メタルソースと反応する前のポストキレートシアン染料やポストキレートマゼンタ染料の濃度は、ポストキレートイエロー染料の濃度と比べて高くなる傾向があるため、ポストキレート反応が不完全であると、被記録体の受像層に熱転写した際に、イエロー染料からなる色成分にシアンやマゼンタ染料が混入して、印画部分に色濁りが生ずる場合がある。本発明においては、染料層において染料濃度が高くなる順に、画像情報記録用熱転写シート上に、シアン染料層(C)、マゼンタ染料層(M)およびイエロー染料層(Y)を面順位に設けて、画像形成の際に、シアン、マゼンタ、イエローの順で熱転写を行うことにより、熱転写時に、染料濃度の高い染料ほどより多くの熱エネルギーを付与することができる。その結果、染料濃度の高いシアンやマゼンタ染料が受像層中でのメタルソースとより完全に反応し、所望の染料の発色が得られるため、形成画像の色濁りが生じにくくなる。特に、上記のような順で各染料層を設けることにより、シアン染料が熱転写された印画部分のマゼンタ濁りが解消する。
【0054】
上記したようなポストキレート色素としては、従来公知のものを使用することができ、このようなキレート形成可能な昇華性色素としては、例えば特開昭59−78893号、同59−109349号、特願平2−213303号、同2−214719号、同2−203742号に記載されている、少なくとも2座のキレートを形成することができるシアン色素、マゼンタ色素およびイエロー色素を挙げることができる。キレートの形成可能な好ましい昇華性色素は、下記一般式で表わすことができる。
X1−N=N−X2−G
(式中、X1は、少なくとも一つの環が5〜7個の原子から構成される芳香族の炭素環、または複素環を完成するのに必要な原子の集まりを表わし、アゾ結合に結合する炭素原子の隣接位の少なくとも一つが、窒素原子またはキレート化基で置換された炭素原子であり、X2は、少なくとも一つの環が5〜7個の原子から構成される芳香族複素環または、芳香族炭素環を表わし、Gはキレート化基を表わす。)
【0055】
上記したようなポストキレート昇華性色素の使用量は、通常、基材1m2当たり0.1〜20g、好ましくは0.2〜5gである。
【0056】
色材層を構成するバインダーとしては、特に制限がなく従来から公知のものを使用することができる。さらに前記インク層には、従来から公知の各種添加剤を適宜に添加することができる。
【0057】
画像情報記録用熱転写シートは、インク層を形成する前記各種の成分を溶媒に分散ないし溶解させた塗工液を調製し、これを基材表面に塗工し、乾燥することにより作製することができる。色材層の厚さは、通常0.2〜10μmであり、好ましくは、0.3〜3μmである。
【0058】
次に、本発明による文字情報記録用熱転写シートと上記画像情報記録用熱転写シートとを用いた情報録体の製造方法の一例を、図面を参照しながら説明する。
【0059】
図7は、本発明による方法の一実施形態を実施するための情報記録体製造装置の概略構成図を示したものである。情報記録体製造装置30は、上方位置にカード基材供給部40及び情報記録部50が配置され、下方位置に、透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部60、並びに樹脂層形成用塗工液付与部及び/又は活性放射線照射部70が配置されている。本実施形態においては、一例として、カード状の情報記録体を製造する方法を説明するが、情報記録体としてシート状のものを製造できることは言うまでもない。
【0060】
カード基材供給部40には、カード使用者の個人情報を書き込むために予め枚葉状にカットされた複数枚のカード基材1が、顔写真等の画像情報を記録する面(即ち受像層を設けた面)を上に向けてストックされている。本実施形態においては、受像層を備えたカード基材1が1枚ずつ、カード基材供給部40から所定のタイミングで自動供給される。
【0061】
情報記録部50は、図6に示したようなイエロー染料層、マゼンタ染料層およびシアン染料層が面順次に設けられた画像情報記録用熱転写シート10が配置され、その位置に対応してサーマルヘッド51が配置された画像情報記録部52と、図1に示したような熱溶融ブラック色材層と加熱促進層とがパターニングされて設けられた文字情報記録用熱転写シート20が配置され、その位置に対応してサーマルヘッド53が配置された文字情報記録部54とから構成されている。なお、図8に示すような画像情報記録用熱転写シートと文字情報記録用熱転写シートとを兼ねる熱転写シートを用いてもよく、この場合、情報記録部のサーマルヘッドを1つにすることができるため、より装置の簡素化が図られることは言うまでもない。
【0062】
カード基材供給部40から供給されたカード基材1は、先ず画像情報記録部52において、カード基材1が移動している間に、その受像層の所定領域にカード使用者の顔写真等の諧調を有する画像情報が、画像情報記録用熱転写シートによりイエロー、マゼンタ、シアンの順に記録される。
【0063】
受像層への画像情報の熱転写に続いて、カード基材1の所定領域に、カード使用者の氏名やカード発行日等の文字情報が、文字情報記録用熱転写シート20により記録される。その際、受像層の画像情報が記録されている領域にもサーマルヘッドからの熱エネルギーが付与され、画像情報が記録された受像層中の色材(イエロー染料、マゼンタ染料およびシアン染料)と金属イオン含有化合物とがキレート反応が促進されて、所望の発色及び階調を有する画像情報が形成される。従って、ポストキレート方式により画像情報を形成した情報記録体の製造方法において、本発明では、従来の方法のように画像情報を形成した後にヒートスタンプやホットローラ等による再加熱の工程を必要としない。その結果、優れた発色性と耐光性とを備える画像を被記録体上に形成できるとともに、製造工程を簡略化できるため、製造装置を小型化することができる。また、カード基材に文字情報を記録すると同時に画像情報部分の加熱を行うため、連続して情報記録体を製造する場合の各工程を高速化することができる。
【0064】
免許証やIDカード等の文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体においては、人物の顔等が画像情報として記録されることが多いが、一般的に、画像部分は情報記録体の全面積に対して比較的小さい割合である。そのため、通常は、画像部分の周辺まで文字情報が書き込まれている場合が多い。このよう情報記録体を製造する場合、文字情報を被記録体に熱転写する際に、文字情報記録用熱転写シート用のサーマルヘッドで、先に形成された画像部分の再加熱を行い、ポストキレート染料の発色性を向上させる場合がある。被転写体への文字情報の記録と同時に、先に形成された画像部分の再加熱行う場合、画像の発色性を向上させるために再加熱を充分にすると、熱溶融ブラック色材により記録した文字情報が影響を受けることがあり、例えば、情報記録体の画像部分の周辺の文字潰れが生じる場合がある。特に、再加熱した画像部分の周縁部は熱が伝わりやすくなるため文字記録部分が受ける影響も顕著である。そのため、文字潰れが生じないような熱量で熱溶融ブラック色材の転写を行う必要があり、同じサーマルヘッド等の加熱手段を用いて先に形成した画像部分を再加熱する場合に、再加熱の熱量が不足することがある。
【0065】
本発明においては、同じ加熱手段(すなわち、文字情報を記録する際の画像情報記録用熱転写シートへのサーマルヘッド等の熱源)を用いて、文字潰れの解消と再加熱時の熱量増加を行うために、以下のような方法が好ましく適用できる。例えば、文字情報を熱転写する際の印画速度を高速化するとともに、熱転写時の熱エネルギーの付与を、高温化かつ短時間化することができる。例えば、従来の情報記録体を製造する際の印画速度は6.8mm/s程度であったが、これを15〜30mm/s、より好ましくは20mm/s程度とし、熱転写時の熱エネルギーの付与時間を、従来7.5ms/lであったのを、0.5〜5ms/l、より好ましくは1〜3ms/lとする。なお、「ms/l」とは、1ライン印画(加熱)するのに要する時間(秒数)を意味する。印画速度を高速化は、熱転写シートの巻き取り装置の速度を上げることにより行われるが、巻き取り装置のモーターは、精度が高くかつ高出力で小型のものを使用することが好ましい。
【0066】
さらに本発明においては、文字潰れの解消と再加熱時の熱量増加を行うために、印画速度や再加熱時の熱量を増加させることの他、画像情報が形成された部分へ供給する熱量を補うため、画像情報形成時にサーマルヘッド周囲の環境温湿度を高めたり、基材の裏面から熱を加える装置を備え付けて、ポストキレート反応を促進させる方法が好ましく用いられる。
【0067】
また、熱溶融ブラック色材層と加熱促進層とを備えた文字情報記録用熱転写シートを用いて、被記録体にブラック色材を熱転写するとともに、被記録体の画像部分を加熱促進層を介して再加熱する手段として、ヘッド面積の小さなユニットを2つ組み合わせたサーマルヘッドを用いてもよい。2つのユニットからなるサーマルヘッドを用いることにより、画像情報が形成された部分を、文字情報の熱転写時に再加熱する際、文字情報記録用のヘッド(すなわち熱溶融ブラック色材層を熱転写するためのユニット)とは別に、画像情報部分側のヘッドの電圧を上げて熱量を増やすことができ、それによりポストキレート反応をより効率よく促進することができる。
【0068】
受像層に画像および文字情報が記録されたカード基材1は、次いで、透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部60に移動する。透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部には、保護層転写箔シート61および/または光学変化素子転写箔シート62が配置され、その位置に対応してヒートローラー63が配置されている。
【0069】
透明保護層転写箔シート61は、図9に示すように、支持体611その支持体611の一方の面に設けられた透明保護転写層612とから構成され、透明保護転写層612は、支持体611側から順に、離型層613、透明保護層614および接着層615が積層した構造を有する。この透明保護層転写箔シート61は、サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプ等の加熱手段により、透明保護層転写層612が支持体611から剥離して被記録体である基材カード1に転写されるものである。また、光学変化素子転写箔シート62は、図10に示すように、支持体621とその支持体621の一方の面に設けられた光学変化素子転写層622とから構成され、光学変化素子転写層622は、支持体621側から順に、離型層623、光学変化素子層624および接着層625が積層した構造を有する。この光学変化素子転写箔シート62は、サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプ等の加熱手段により、光学変化素子転写層622が支持体621から剥離して被記録体である基材カード1に転写されるものである。
【0070】
透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部60に移動したカード基材1は、この工程において、適宜、透明保護転写層および/または光学変化素子転写層が転写される。例えば、カード基材1上の画像情報を記録した部分にのみ透明保護転写層61を設けたり、カード基材1上の任意の位置に光学変化素子転写層62を設けたりすることができる。カード基材1の画像情報記録部分に透明保護転写層61を設ける際には、上記したように、サーマルヘッド、ヒートロール、ホットスタンプ等の加熱手段を利用して透明保護転写層がカード基材1に熱転写されるため、画像情報部分の再加熱を兼ねることになる。その結果、受像層中の色材と金属イオン含有化合物とのキレート反応がさらに促進することになり、より優れた発色と階調を有する画像情報をカード基材上に形成することができる。また、光学変化素子転写層をカード基材上に転写することにより、情報記録体の偽変造を抑制することができる。
【0071】
上記した透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートは、従来公知のものを使用することができる。例えば、透明保護層としては、被記録体に記録された画像情報を保護するために、耐久性や透明性に優れた樹脂であれば、従来公知の何れの樹脂も使用でき、例えば、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。透明保護層は、例えば、適当な溶剤又は分散液に、上記の樹脂を溶解又は分散させた保護層塗工液を、支持体又は離型層の表面に、厚みが0.5〜5g/m2(乾燥基準)程度となるように塗布し、乾燥させることにより形成することができる。透明樹脂層の厚みは0.3〜50μmが好ましく、より好ましくは0.3〜30μm、特に好ましくは0.3〜20μmである。
【0072】
光学変化素子層としては、従来公知の光学変化素子を用いることができ、例えば、キネグラムのような回折格子の2次元のCG画像であって線画像構成の画像が移動、回転、膨張、縮小等事由に動き、変化する点に特徴があるもの、ピクセルグラムのような画像がポジとネガに変化する点に特徴があるもの、OSD(Optical Security Device)のような色が金色から緑色に変化する点に特徴があるもの、LEAD(Long Economical Anticopy Device)のような画像が変化して見える点に特徴を有するもの、ストライプ型OVD(Optical VariableDevice)、金属箔、および日本印刷学会誌(1998年)第35巻第6号第482〜496頁に記載されているような素材、特殊な印刷法、特殊なインキ等により形成されたもの、を用いることができる。また、ホログラム等も好適に使用できる。
【0073】
また、上記の透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートの支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、エチレン−4フッ化エチレン共重合体、等のポリフッ化エチレン系樹脂、ナイロン6、ナイロン6.6等のポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロン等のビニル重合体、三酢酸セルロース、セロファン等のセルロース系樹脂、ポリメタアクリル酸メチル、ポリメタアクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリイミド等の合成樹脂シート、又は上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙等の紙、金属箔等の単層体またはこれら2層以上の積層体が挙げられる。支持体の厚みは10〜200μm、好ましくは15〜80μmである。
【0074】
透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートの離型層としては、高ガラス転移温度を有するアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ボリビニルブチラール樹脂などの樹脂、ワックス類、シリコンオイル類、フッ素化合物、水溶性を有するポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、Si変性ポリビニルアルコール、メチルセルロース樹脂、ヒドロキシセルロース樹脂、シリコン樹脂、パラフィンワックス、アクリル変性シリコーン、ポリエチレンワックス、エチレン酢酸ビニルなどの樹脂、ポリジメチルシロキサンやその変性物、フッ素化オレフィン、パーフルオロ燐酸エステル系化合物等のフッ素系化合物が挙げられる。
【0075】
透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートの接着層としては、熱貼着性樹脂としてエチレン酢酸ビニル樹脂、エチンエチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、アイオノマー樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、ウレタン樹脂、粘着付与剤などが挙げられ、それらの共重合体や混合物でもよい。具体的には、ハイテックS−6254、S−6254B、S−3129等(東邦化学工業(株)製)、ジュリマーAT−210、AT−510、AT−613等(日本純薬(株)製)、プラスサイズL−201、SR−102、SR−103、J−4等(互応化学工業(株)製)の市販のものを使用することができる。接着層の厚みは0.1〜1.0μm程度である。
【0076】
また、透明保護層転写箔シートや光学変化素子転写箔シートは、支持体、離型層、透明保護層または光学変化素子層、ならびに接着層の各層の接着性を向上させるため、各層の間に中間層としてプライマー層や保護層が設けられていてもよい。
【0077】
透明保護転写層61および/または光学変化素子転写層62が転写されたカード基材1は、続いて、活性放射線硬化層付与部及び/又は活性放射線照射部70に移動する。本工程において、画像/文字情報が記録され、透明保護転写層等が転写されたカード基材1の表面に活性放射線硬化液が塗布され、活性放射線により露光が行なわれ、活性放射線硬化層が形成される。活性放射線硬化層は、カード基材上に記録された文字/画像情報や光学変化素子層等を保護し、情報記録体の耐久性を向上させるために設ける任意の層である。
【0078】
活性放射線硬化層は、紫外線や電子線等の活性放射線の照射により硬化する樹脂であれば従来公知のものを使用することができ、例えばエポキシ変性アクリレート樹脂、ウレタン変性アクリレート樹脂、アクリル変性ポリエステル等に光重合開始剤、光増感剤を添加した電離放射線硬化性樹脂を使用できる。電離放射線硬化樹脂は、これらの樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイを含む)であっても良い。
【0079】
<情報記録体>
上記のようにして得られた情報記録体90は、図11に示すように、カード基材1の受像層3中に画像情報81および文字情報82が記録され、画像情報81が記録された部分には、透明保護転写層61が設けられ、また、カード基材表面の任意の位置に光学変化素子転写層62が設けられている。さらに、これら文字情報82、透明保護転写層61、および光学変化素子転写層62を覆うように、活性放射線硬化層71が設けられている。また、カード基材1の受像層3を設けていない側の面には、任意の層として、筆記層や帯電防止層(図示せず)を設けてもよい。
【実施例】
【0080】
次に、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0081】
実施例1
<文字情報記録用熱転写シートの準備>
基材として、厚さ4.5μmの易接着処理済みポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー、東レ株式会社製)を用いた。基材の一方の面に、下記の組成の背面層用塗工液をグラビアコーターを用いて塗工し、80℃で1分間乾燥させ、厚さ1.6μmの背面層を形成した。また、基材の他方の面(易接着処理面)に、図1に示した符合23の部分(Bk)に相当するパターンとなるように、下記の組成の剥離層用塗布液をグラビアコーターにより塗布量が0.3g/m2(固形分)となるように塗布、乾燥して剥離層を形成した。
【0082】
<背面層用塗工液>
ポリビニルブチラール樹脂
(エスレックBX−1、積水化学工業株式会社製) 2.0部
リン酸エステル系界面活性剤
(プライサーフA208N、第一工業製薬株式会社製) 1.3部
タルク(ミクロエースP−3、日本タルク工業株式会社製) 0.3部
ポリイソシアネート
(バーノックD750−45、大日本インキ化学工業株式会社製) 9.2部
メチルエチルケトン 43.6部
トルエン 43.6部
【0083】
<剥離層用インキ>
塩素化ポリプロピレン 20.0部
溶剤(トルエン/酢酸エチル(質量比1:1)) 80.0部
【0084】
続いて、剥離層の表面に、下記の組成の熱溶融性ブラックインキ層をグラビアコーターにより塗布量が1.5g/m2となるように塗布、乾燥して、熱溶融性ブラックインキ層を形成した。
<熱溶融性インキ層用塗布液>
カーボンブラック(ダイヤブラック、三菱化学株式会社製) 10.0部
エチレン−酢酸ビニル共重合体
(EVAFLEX200W、三井ポリケミカル株式会社製) 10.0部
カルナバワックス 15.0部
パラフィンワックス 60.0部
【0085】
更に、熱溶融性インキ層の上に、下記組成の感熱接着層用塗布液をグラビアコート法により塗布量が0.2g/m2(固形分換算)となるように塗布、乾燥して、接着層を形成した。
<感熱接着層用塗布液>
エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂
(EVAFLEX#420、三井ポリケミカル株式会社製) 10.0部
溶剤(トルエン) 90.0部
【0086】
次に、基材上の、剥離層、熱溶融性ブラックインキ層および接着層を設けていない部分(図1の符合23の部分に相当)に、下記の組成の加熱促進層用塗布液をグラビアコーターにより塗布量が2.0g/m2(固形分換算)となるように塗布、乾燥して加熱促進層を形成することにより、文字情報記録用熱転写シートを作製した。
<加熱促進層用インキ>
アクリル樹脂(BR−83、三菱レイヨン株式会社製) 10.0部
窒化ホウ素
(デンカボロンナイトライドSP−2、電気化学工業株式会社製) 10.0部
溶剤(メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1)) 80.0部
【0087】
<画像情報記録用熱転写シートの準備>
基材として、厚さ4.5μmの易接着処理済みポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー、東レ株式会社製)を用いた。基材の一方の面に、文字情報記録用熱転写シートの作製に用いたものと同様の背面層用塗工液をグラビアコーターを用いて塗工し、80℃で1分間乾燥させ、厚さ1.6μmの背面層を形成した。また、基材の他方の面(易接着処理面)に、下記の組成の染料層用塗工液を厚さ2.0μmの各染料層となるように、イエロー染料層(Y)、シアン染料層(C)、マゼンタ染料層(M)の順に面順次に繰り返し、グラビアコーターを用いて塗布、乾燥することにより、画像情報記録用熱転写シートを作製した。
【0088】
<染料層用塗工液>
イエロー染料層用塗工液(Y)
分散染料(ホロンブリリアントイエローS−6GL) 5.5部
ポリビニルアセタール樹脂
(エスレックスKS−5、積水化学株式会社製) 4.5部
リン酸エステル系界面活性剤
(プライサーフA208N、第一工業製薬株式会社製) 0.1部
ポリエチレンワックス 0.1部
トルエン 44.9部
メチルエチルケトン 44.9部
【0089】
マゼンタ染料層用塗工液(M)
MS−RED−G
(ディスパーレッド60、三井東圧化学株式会社製) 1.5部
マクロレックスレッドバイオレットR
(ディスパースバイオレット26 バイエル株式会社製) 2.0部
ポリビニルアセタール樹脂
(エスレックスKS−5、積水化学株式会社製) 4.6部
リン酸エステル系界面活性剤
(プライサーフA208N、第一工業製薬株式会社製) 0.1部
ポリエチレンワックス 0.1部
トルエン 45.8部
メチルエチルケトン 45.8部
【0090】
シアン染料層用塗工液(C)
分散染料(カヤセットブルー714) 4.5部
ポリビニルアセタール樹脂
(エスレックスKS−5、積水化学株式会社製) 4.5部
リン酸エステル系界面活性剤
(プライサーフA208N、第一工業製薬株式会社製) 0.1部
ポリエチレンワックス 0.1部
トルエン 45.4部
メチルエチルケトン 45.4部
【0091】
<ICカードへの画像情報および文字情報の記録>
ICカードとして、特開2005−174220の実施例(塗液L、接着剤S2使用)のICカードを用いた。また、カードプリンタとして、カード表面に2ユニットで印画及び印字を行い、次いで、カード表面に表面保護箔を熱転写する機能を有するIDカード用プリンタ(CX120、日本ビクター株式会社製)を用いた。
上記のようにして得られた画像情報記録用熱転写シートを用いて、下記の印画条件1でICカード上に印画し、続いて、上記のようにして得られた文字情報記録用熱転写シートを用いて、下記の印画条件2で印字した。
【0092】
印画条件1(画像情報記録)
サーマルヘッド抵抗値:4000(Ω)
サーマルヘッド電圧値:18(V)
印圧:2.2kg/inch
印画速度:2.5msec/line
Duty:75%
サーマルヘッド解像度:400dpi
印画パターン:255階調目 ベタ画像
【0093】
印画条件2(文字情報記録)
サーマルヘッド抵抗値:4000(Ω)
サーマルヘッド電圧値:19(V)
印圧:2.2kg/inch
印画速度:1.4msec/line
Duty:熱溶融ブラック色材層部分:60%、バリア層(色材層が無い)部分:40%
サーマルヘッド解像度:400dpi
【0094】
比較例1
実施例1で使用した文字情報記録用熱転写シートにおいて、加熱促進層用塗工液を下記の組成の塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にして文字情報記録用熱転写シートを作製し、実施例1と同様にして、ICカードへの画像情報および文字情報の記録を行った。
<塗工液>
アクリル樹脂(BR−83、三菱レイヨン株式会社製) 10.0部
溶剤(メチルエチルケトン/トルエン(質量比1:1)) 90.0部
【0095】
比較例2
実施例1で使用した文字情報記録用熱転写シートにおいて、加熱促進層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして文字情報記録用熱転写シートを作製し、実施例1と同様にして、ICカードへの画像情報および文字情報の記録を行った。
【0096】
評価結果
画像情報および文字情報を記録したICカードの画像記録部分を目視にて観察したところ、実施例のICカードの画像情報記録部分の発色は良好であった。また、文字情報記録部分の印字も良好であった。一方、比較例1で得られた印画物においては、画像情報記録部分の発色が劣っていた。また、比較例2で得られた印画物においては、文字情報記録部分の印字も一部がかすれていた。この文字のかすれは、文字情報記録用熱転写シートをロール状でプリンタに供給した際の、ロール表面の段差に対応するものであった。更に、比較例2の文字情報記録用熱転写シートを用いてICカードに連続プリントを行ったところ、途中で、文字情報記録用熱転写シートが破断した。
【符号の説明】
【0097】
1 被記録体(ICカード)
2 カード基材
3 受像層
10 画像情報記録用熱転写シート
11 基材
12 色材層(YMC)
13 耐熱滑性層
20 文字情報記録用熱転写シート
21 基材
22 熱溶融ブラック色材層
23 加熱促進層
30 情報記録体製造装置
40 カード基材供給部
50 情報記録部
60 透明保護層付与部及び/又は光学変化素子層付与部
61 透明保護層転写箔シート
62 光学変化素子転写箔シート
70 樹脂層形成用塗工液付与部及び/又は活性放射線照射部
71 活性放射線硬化層
81 画像情報
82 文字情報
90 情報記録体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポストキレート方式により画像形成された被記録体の同一面上に文字情報を記録するために用いられる文字情報記録用熱転写シートであって、
基材と、前記基材上の一部に設けられた色材層と、前記基材上の前記色材層が設けられていない部分に設けられた加熱促進層と、を少なくとも備え、
前記加熱促進層が、前記被記録体上の画像情報が印画された部分と対応するように、パターニングされており、
前記加熱促進層が、前記色材層が設けられた部分の熱転写シートの厚みと、前記加熱促進層が設けられた部分の熱転写シートの厚みとが、同じになるような厚みで、基材上に設けられている、ことを特徴とする、熱転写シート。
【請求項2】
前記加熱促進層が、金属、金属窒化物または金属酸化物から選択される少なくとも1種以上の微粒子またはフィラーを含んでなる、請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記微粒子またはフィラーが、前記加熱促進層中に、質量基準で、50〜85%含まれてなる、請求項2に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記基材上の、前記色材層および前記加熱促進層が設けられていない部分に、シアン染料層、マゼンタ染料層およびイエロー染料層が面順位に設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の文字情報記録用熱転写シートを用いて、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体を製造する方法であって、
画像情報記録用熱転写シート中の色材とキレート錯体を形成し得る金属イオン含有化合物を含んでなる受像層を備えた被記録体を準備し、
前記色材を含んでなる色材層を備えた画像情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して画像情報を印画し、
前記受像層上の画像情報形成部以外の部分に、前記文字情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して文字情報を印画する際に、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行う、
ことを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記画像情報形成部の加熱が、前記文字情報記録用熱転写シートから色材を熱転写する際のサーマルヘッドからの熱エネルギーにより行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記文字情報記録用熱転写シートから色材を熱転写する際に、前記加熱促進層が設けられた部分に、サーマルヘッドからの熱エネルギーを付与して、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法により得られた、情報記録体。
【請求項1】
ポストキレート方式により画像形成された被記録体の同一面上に文字情報を記録するために用いられる文字情報記録用熱転写シートであって、
基材と、前記基材上の一部に設けられた色材層と、前記基材上の前記色材層が設けられていない部分に設けられた加熱促進層と、を少なくとも備え、
前記加熱促進層が、前記被記録体上の画像情報が印画された部分と対応するように、パターニングされており、
前記加熱促進層が、前記色材層が設けられた部分の熱転写シートの厚みと、前記加熱促進層が設けられた部分の熱転写シートの厚みとが、同じになるような厚みで、基材上に設けられている、ことを特徴とする、熱転写シート。
【請求項2】
前記加熱促進層が、金属、金属窒化物または金属酸化物から選択される少なくとも1種以上の微粒子またはフィラーを含んでなる、請求項1に記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記微粒子またはフィラーが、前記加熱促進層中に、質量基準で、50〜85%含まれてなる、請求項2に記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記基材上の、前記色材層および前記加熱促進層が設けられていない部分に、シアン染料層、マゼンタ染料層およびイエロー染料層が面順位に設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱転写シート。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の文字情報記録用熱転写シートを用いて、文字情報および画像情報が同一面上に記録された情報記録体を製造する方法であって、
画像情報記録用熱転写シート中の色材とキレート錯体を形成し得る金属イオン含有化合物を含んでなる受像層を備えた被記録体を準備し、
前記色材を含んでなる色材層を備えた画像情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して画像情報を印画し、
前記受像層上の画像情報形成部以外の部分に、前記文字情報記録用熱転写シートを用いて、色材を前記被記録体の受像層側に熱転写して文字情報を印画する際に、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行う、
ことを含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項6】
前記画像情報形成部の加熱が、前記文字情報記録用熱転写シートから色材を熱転写する際のサーマルヘッドからの熱エネルギーにより行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記文字情報記録用熱転写シートから色材を熱転写する際に、前記加熱促進層が設けられた部分に、サーマルヘッドからの熱エネルギーを付与して、前記被記録体に印画された前記画像情報形成部の加熱を行う、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法により得られた、情報記録体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−187819(P2012−187819A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53323(P2011−53323)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]