説明

熱転写シート及びそれを用いた印画物

【課題】基材シートの一方の面に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色の熱転写性インク層と熱転写性保護層を長手方向へ面順次に設けた熱転写シートにおいて、印画物に抗菌性を付与し、かつ印画物に高い光沢を持たることを課題とする。
【解決手段】基材シートの一方の面に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色(またはブラックを含む4色)の熱転写性インク層と、熱転写性保護層を長手方向へ面順次設け、前記熱転写性保護層が前記基材シート側から離型層、剥離層、接着層の順に積層された構成からなる熱転写シートにおいて、前記剥離層にコロイド粒子からなる無機系抗菌剤を含有させたことを特徴とする熱転写シート、及びそれを用いた印画物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写法により得られる保護層付き印画物に使用するための熱転写シートに関するものである。更に詳しくは、印画物に抗菌性を付与させる熱転写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱転写シートは、サーマルリボンと呼ばれ、熱転写方式のプリンタに使用されているインクリボンのことであり、基材の一方の面に熱転写層、その基材の他方の面にバックコート層(耐熱滑性層)を設けたものである。ここで熱転写層は、インクの層であって、プリンタのサーマルヘッドに発生する熱によって、そのインクを昇華(昇華転写方式)あるいは溶融(溶融転写方式)させ、被転写体側に転写するものである。
【0003】
現在、熱転写方式は、プリンタの高機能化と併せて各種画像を簡便に形成できるため、身分証明書などのカード類をはじめアミューズメント用出力物等広く利用されている。そういった用途の多様化と共に、得られる印画物への耐久性を求める声も大きくなり、近年ではインク層により形成した画像上に保護層を転写によって設けた印画物がかなり普及してきている。
【0004】
また近年、抗菌剤を含んだ製品が幅広く開発され使用されている。例えば、鉛筆、ボールぺン、手帳、ファイルなどの事務用品、パソコン、電話機などの電気製品、椅子、机などの家具、スリッパなどの家庭用品やファイル、ラベルなどである。
【0005】
特に銀は、強い抗菌性を有し、飲料水や食品の腐敗防止に有効であることは良く知られている。銀などの抗菌剤を含んだ製品が幅広く開発されている。このような状況から熱転写法により得られる印画物も消費者が直接手に触れるため、抗菌性を持たせた印画物の要求が多くなっている。
【0006】
また、抗菌剤としては、有機系抗菌剤と無機系抗菌剤とがある。しかし有機系抗菌剤は、衛生上の安全性に不安がある。よって無機系抗菌剤が広く利用されている。
【0007】
転写シートに無機系抗菌剤を用いて、熱転写法により得られる印画物に抗菌性を発現させる提案がある(特許文献1)。
【0008】
転写シートの剥離層に、剥離層の膜厚の2倍以下の平均粒径を持つ銀系抗菌性微粒子を添加し、転写した後、印画物の表面層に抗菌性微粒子が存在させることに、抗菌性を発現せることが提案されている。
【0009】
しかしながら、表面層に含有する抗菌性微粒子が、平均粒径が1μmを用いているため、表面層に凹凸が生じ、印画物の光沢性を低下させる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−86056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、転写法により得られる印画物に抗菌性を付与し、かつ印画物の光沢性を低下
させない転写シートを提供すること課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明は、基材シートの一方の面に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色の熱転写性インク層と、熱転写性保護層を長手方向へ面順次設け、
前記熱転写性保護層が、前記基材シート側から離型層、剥離層、接着層の順に積層された熱転写シートにおいて、
前記剥離層にコロイド粒子からなる無機系抗菌剤を含有したことを特徴とする熱転写シートである。
【0013】
本発明の請求項2に係る発明は、前記無機系抗菌剤が銀を抗菌成分とした抗菌剤であることを特徴とする請求項1記載の転写シートである。
【0014】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の転写シートを転写してなる印画物の表面層が、前記剥離層であることを特徴とする印画物である。
【発明の効果】
【0015】
熱転写法により得られる印画物の表面層に銀のコロイド粒子からなる無機系抗菌剤を含有することで、印画物に抗菌性を付与し、かつ印画物の光沢性を低下させない転写シートである。
【0016】
請求項1記載の発明によれば、転写シートの熱転写性保護層のうち、剥離層にコロイド粒子からなる無機系抗菌剤を含有したことを特徴とする。コロイド粒子の粒径は、1〜100nmを有し、非常に細かい微粒子であるため、印画物の表面層に含有されても、強力な抗菌性を付与することができる。かつ印画物の表面層は凹凸がなく、均一の平滑性を保ち、光沢性を低下させることはない。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、無機系抗菌剤が銀を抗菌成分とした抗菌剤であることを特徴とする。銀は、高い抗菌力を有し、更に衛生上の問題の心配がない。また銀コロイド粒子の1〜100nmの非常に細かい微粒子を有しているため、印画物の表面層で均一に分散し、抗菌効果を一層発現することができる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の転写シートを転写してなる印画物の表面層が、前記剥離層であることを特徴とする。転写シートの剥離層が、転写してなる印画物の表面層になるように設計されている。よって印画物の表面層に、抗菌性を付与することができる。かつ光沢性を低下させない。
【0019】
熱転写シートの剥離層に銀コロイド粒子からなる無機系抗菌剤を含有させることで、転写法により得られる印画物の表面層に抗菌性を付与し、かつ印画物の光沢性を低下させない、転写シ―トを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の転写シートの一例を示す説明図である。
【図2】本発明の印画物の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の転写シート、および印画物を、図面を参照にして説明する。
【0022】
図1に、本発明の転写シートの一例を示す説明図である。転写シートは、基材シート(
1)の一方の面にイエロー(3)、マゼンタ(4)、シアン(5)の3色の熱転写性インク層と熱転写性保護層{基材シート(1)側から、離型層(6)と、剥離層(7)と、接着層(8)と、からなる}を長手方向へ面順次に設け、基材シート(1)の他方の面に耐熱滑性層(2)を設けた構成である。
【0023】
図2に、本発明の印画物の一例を示す説明図である。印画物は、支持体(11)の上に色材受容層(12)を設け、転写シートを色材受容層(12)に熱転写して印画物(13)を形成し、その上に熱転写により熱転写性保護層のうち、接着層(8)と剥離層(7)とを形成させたものである。印画物の表面層は、剥離層(7)になる。
【0024】
本発明における転写シート(14)の基材シート(1)としては、熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度が要求されるので、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、およびコンデンサー紙、パラフィン紙などの紙類等を単独で又は組み合わされた複合体として使用可能であるが、中でも、物性面、加工性、コスト面などを考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。また、その厚さは、操作性、加工性を考慮し、2〜50μmの範囲のものが使用可能であるが、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2〜12μmの範囲のものが好ましい。
【0025】
熱転写性インク層(3)、(4)、(5)は熱転写可能な色材を任意のバインダで担持させた層である。色材として使用する染料または顔料は、従来公知の熱転写シートに使用されている染料または顔料をいずれも使用可能であり、特に限定されない。
【0026】
昇華タイプの熱転写性インク層に用いられる熱昇華性染料としては、昇華性分散染料が好ましく、一例を挙げると、イエロー成分としては、ソルベントイエロー56,16,30,93,33、ディスパースイエロー201,231,33等が挙げられる。マゼンタ成分としては、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等が挙げられる。シアン成分としては、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、あるいはC.I.ディスパースブルー24等が挙げられる。墨の染料としては、上記の各染料を組み合わせて調色するのが一般的である。
【0027】
昇華タイプの熱転写性インク層に用いられるバインダとしては、特に限定されるものではないが、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等である。中でも、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等の耐熱性、染料移行性等に優れる樹脂が使用できる。また必要に応じて、物性を制御するために上記の樹脂の他に、イソシアネート系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ジアルデヒド系樹脂などの樹脂を添加することができる。
【0028】
昇華タイプの熱転写性インク層には、また必要に応じて、被転写体との剥離強度を制御するために離型剤を添加することができる。使用可能な離型剤としては公知のシリコーン系化合物またはフッ素系化合物、またはワックス類等が使用できる。
【0029】
本発明において添加するシリコーン系化合物としては、ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルおよびその硬化物が使用できる。
【0030】
本発明に用いられるフッ素系化合物としては、構造にフルオロアルキル基またはパーフルオロアルキル基を持つ化合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0031】
本発明に用いられるワックス類としては、カルナバワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ライスワックス等が挙げられる。
【0032】
溶融タイプの熱転写性インク層に用いられる染料としては、ジアリールメタン系、トリアリールメタン系、チアゾール系、メチン系、アゾメタン系、キサンテン系、アキサジン系、チアジン系、アジン系、アクリジン系、アゾ系、スピロジピラン系、イソドリノスピロピラン系、フルオラン系、ローダミンダクタム系、アントラキノン系等の一般に使用されている感熱転写性染料を広く使用することができる。また、顔料としては、公知の有機顔料、無機顔料を使用することができ、一例を挙げると、カーボンブラック、アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、イソインドリノン系等の顔料が挙げられる。
【0033】
溶融タイプの熱転写性インク層に用いられるバインダとしては、熱溶融性以外特に限定されるものではないが、一例を挙げると、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類である。中でも、ポリエステル、エポキシ樹脂が好適である。
【0034】
熱転写性保護層(6)、(7)、(8)は、熱転写性インク層により被転写体上に形成された印画物への紫外線等からの耐久性が要求される。また熱転写法というプロセスにより被転写体上に形成される必要があるため、一般的には、紫外線吸収等の保護層としての本来的な性能と、同時に被転写体への接着性を兼ね備える必要がある。よって接着層(8)、その下層に基材から熱転写時に容易に剥離するための剥離層(7)、熱転写時に基材に残留し、剥離層を容易に剥離させるための離型層(6)といった複数の層から形成される。
【0035】
離型層(6)は、熱転写性保護層と基材シートの剥離の重さを適当な範囲内に調整し、基材シートからの安定的な剥離性を確保するために設けられるものであり、上記の条件さえ満たしていれば必ずしも必要ではない。離型層の材質としては、特に制限されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等の水溶性高分子、塩化ゴム、環化ゴム等の天然ゴム誘導体、天然ワックス、合成ワックス等のワックス類、ニトロセルロース、セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等の繊維素誘導体、アクリル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリアセタール系、塩素化ポリオレフィン系、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体系等の熱可塑性樹脂、メラミン系、エポキシ系、ポリウレタン系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0036】
剥離層(7)の材質としては、一例を挙げると、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類である。中でも、アクリル系樹脂、セルロース誘導体が好適である。
【0037】
剥離層(7)には、離型性や滑り性を付与する添加剤として、シリコーンオイル、リン酸エステル系に代表される離型剤、ワックス、樹脂フィラーなどの滑り剤、また必要に応じて紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等を添加してもよい。
【0038】
接着層(8)の材質としては、一例を挙げると、ポリスチレン、ポリα−メチルスチレン等のスチレン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等のビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、石油樹脂、アイオノマー、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体等の合成樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース誘導体、ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、エステルガム、ポリイソブチレンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、ポリ塩素化オレフィン等の天然樹脂や合成ゴムの誘導体、カルナバワックス、パラフィンワックス等のワックス類が挙げられる。中でも、アクリル系樹脂、セルロース誘導体が好適である。また、必要に応じてリン酸エステル系に代表される離型剤、ワックス、樹脂フィラーに代表される滑り剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤等を添加することができる。
【0039】
耐熱滑性層(2)は,本発明の熱転写シートの過熱手段としてサーマルヘッドを用いる場合、必要とされるものであり、サーマルヘッドの融着防止や熱転写シートをロールで巻きとった時に背面の熱転写性保護層、熱転写性インク層の染料あるいは顔料が移行しないように離型性を持たせる役割がある。本発明における耐熱滑性層は特に限定はされるものではないが、熱転写シートの基材、およびサーマルヘッドの過熱量に応じて適宜選択することができる。
【0040】
耐熱活性層(2)材質としては、アクリルオリゴマーの紫外線硬化物、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリイミド等の合成樹脂に、シリコーンオイルなどの離型剤を添加したもの、シリコーンを共重合したものを挙げることができる。また必要に応じてフィラーを添加しても問題なく、添加するフィラーの一例としては、シリコーンパウダー、シリカおよびレジンパウダーを挙げることができる。
【0041】
熱転写性保護層の接着層(8)、剥離層(7)に添加される紫外線吸収剤は、従来、コストや紫外線吸収範囲、種類の多さ、用途範囲の現状から、ベンゾフェノン系やベンゾトリアゾール系を使用することができる。必要とされる紫外線吸収能力などを考慮して任意に選択すれば良い。
【0042】
本発明に用いるコロイド粒子からなる無機系抗菌剤としては、抗菌性金属成分として銀、銅、亜鉛などを含むものが挙げられる。特に銀は高い抗菌力を有し、さらに衛生上の問題がないため好ましい。コロイド粒子を作成する方法は、銀塩水溶液に還元炎を吹き付ける方法、硝酸銀の希薄溶液を還元炎で還元する方法、酸化銀をタンニンの希薄溶液で処理する方法、酸化銀を水素ガスで還元する方法などが知られている。本発明の銀コロイド粒子は、特に特定はされない。
【0043】
これらのコロイド粒子を分散させるコロイド溶液には、分散媒として水または、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの任意の有機溶剤を利用可能である。また、この溶液にはコロイド粒子の分散性を向上させるため、必要に応じて界面活性剤を添加することができる。界面活性剤は、カチオン系界面活性剤が好ましい。
【0044】
本発明の具体的実施例について説明する。
【0045】
以下に、本発明の各実施例および各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
【0046】
<転写シート作成用材料>
<基材シート>
ポリエステルフィルム:厚さ4.5μm
<熱転写形成用イエローインク>
C.I.ソルベントイエロー93 7.5部
C.I.ソルベントイエロー16 2.5部
ポリビニルアセタール樹脂 8.5部
シリコーン変性樹脂 0.2部
2,6−トリレンジイソシアネート 1.5部
メチルエチルケトン 53.2部
トルエン 26.6部
<熱転写形成用マゼンタインク>
C.I.ディスパースレッド60 5.0部
C.I.ディスパースバイオレット26 5.0部
ポリビニルアセタール樹脂 8.5部
シリコーン変性樹脂 0.2部
2,6−トリレンジイソシアネート 1.5部
メチルエチルケトン 53.2部
トルエン 26.6部
<熱転写形成用シアンインク>
C.I.ソルベントブルー63 5.0部
C.I.ソルベントブルー36 5.0部
ポリビニルアセタール樹脂 8.5部
シリコーン変性樹脂 0.2部
2,6−トリレンジイソシアネート 1.5部
メチルエチルケトン 53.2部
トルエン 26.6部
<耐熱滑性層形成用インク>
ポリビニルアセタール 25.2部
イソシアネート硬化剤 1.1部
タルク 1.0部
メチルエチルケトン 36.3部
トルエン 36.3部
<離型層形成用インク>
酢酸セルロース樹脂 20.0部
メチルエチルケトン 80.0部
<剥離層形成用インク1>
アクリル樹脂 19.9部
トルエン 39.9部
メチルエチルケトン 39.9部
銀コロイド粒子 0.3部
<剥離層形成用インク2>
アクリル樹脂 19.6部
トルエン 39.2部
メチルエチルケトン 39.2部
銀系抗菌性ゼオライト 2.0部
<剥離層形成用インク3>
アクリル樹脂 20.0部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
<接着層形成用インク1>
アクリル樹脂 19.0部
シリコーンパウダー 1.0部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
<接着層形成用インク2>
アクリル樹脂 18.9部
シリコーンパウダー 1.0部
銀コロイド粒子 0.3部
トルエン 40.9部
メチルエチルケトン 40.9部
以上とした。
【0047】
<印画物作成用材料>
<支持体>
発泡ポリエステルフィルム:厚さ188μm
<色材受容層形成用インク>
塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 19.5部
アミノ変性シリコーンオイル 0.5部
トルエン 40.0部
メチルエチルケトン 40.0部
以上とした。
【0048】
<耐熱滑性層付き基材シートの作成>
グラビアコート法により、基材シートの一方の面に、耐熱滑性層形成用インクを用いて、耐熱滑性層を乾燥厚0.9μmで形成し、その後40℃で5日間エージングすることで、耐熱滑性層付き基材シートを作成した。
【0049】
<印画物用被転写体の作成>
グラビアコート法により、支持体の一方の面に、色材受容層形成用インクを用いて、色材受容層を乾燥厚5.0μmの印画物用被転写体を作成した。
【実施例1】
【0050】
グラビアコート法により、耐熱滑性層付き基材シートの未塗工面に、熱転写形成用イエローインク、熱転写形成用マゼンタインク、熱転写形成用シアンインクを用いて、昇華熱転写層を各乾燥膜厚0.7μmで面順次に形成し、さらに離型層形成用インクを用いて、耐熱滑性層付き基材シート上に離型層を乾燥膜厚0.5μmで面順次に形成した後、離型層上に、剥離層形成用インク1を用いて剥離層を乾燥膜厚0.5μmで形成し、さらに剥離層上に接着層形成用インク1を用いて接着層を乾燥膜厚1.5μmで形成し、本発明の熱転写シートを作成した。
【実施例2】
【0051】
実施例1の接着層形成用インク1のインクを接着層形成用インク2にする以外は実施例1と同様にして比較例の熱転写シートを作成した。
【0052】
<比較例1>
実施例1の剥離層のインクを剥離層形成用インク2にする以外は実施例1と同様にして比較例の熱転写シートを作成した。
【0053】
<比較例2>
実施例1の剥離層のインクを剥離層形成用インク3にする以外は実施例1と同様にして比較例の熱転写シートを作成した。
【0054】
<比較例3>
実施例1の剥離層のインクを剥離層形成用インク3にし、さらに接着層のインクを接着層形成用インク2にする以外は実施例1と同様にして比較例の熱転写シートを作成した。
【0055】
転写性の評価は、以下のように行った。
【0056】
実施例1,2および比較例1,2、3の熱転写シートに関して、それぞれ昇華型熱転写プリンターに装填できるように加工し、昇華型熱転写プリンターで最高濃度の全面黒画像(黒ベタ)を、印画物用被転写体の色材受容層の面に印画した。
【0057】
抗菌試験は、以下のように行った。
【0058】
実施例1,2および比較例1,2、3の印画物および、対照としてポリエチレンフィルムを使用して、抗菌性検査を行った。すなわち、黄色ブドウ球菌及び大腸菌を105個/mlとなるように滅菌済み蒸留水に懸濁し、この懸濁液1mlを検体それぞれに滴下し、24時間放置後菌体を洗い出し、混釈法により生残菌数を測定した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

表1に示すように熱転写性保護層のうち、印画時に最表面になる層に抗菌剤を添加することで印画物に抗菌性を付与することが出来た。
【0060】
また光沢度評価は、以下のように行った。
【0061】
実施例1,2および比較例1,2、3の印画物に関して、60°反射光沢度を測定した。結果を表2に示す。
【0062】
【表2】

表2に示すように印画物の光沢性を大きく低下させることはなく、維持できることができた。
【符号の説明】
【0063】
(1)…基材
(2)…耐熱滑性層
(3)…熱転写性インク層(イエロー)
(4)…熱転写性インク層(マゼンタ)
(5)…熱転写性インク層(シアン)
(6)…離型層
(7)…剥離層(コロイド粒子の無機系抗菌剤含有)
(8)…接着層
(11)…支持体
(12)…色材受容層
(13)…印画物
(14)…転写シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の3色の熱転写性インク層と、熱転写性保護層を長手方向へ面順次設け、
前記熱転写性保護層が、前記基材シート側から離型層、剥離層、接着層の順に積層された熱転写シートにおいて、
前記剥離層にコロイド粒子からなる無機系抗菌剤を含有したことを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
前記無機系抗菌剤が銀を抗菌成分とした抗菌剤であることを特徴とする請求項1記載の転写シート。
【請求項3】
請求項1または2記載の転写シートを転写してなる印画物の表面層が、前記剥離層であることを特徴とする印画物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate