説明

熱転写シート及びそれを用いた画像形成方法

【課題】 印字品質に優れ、被転写体との接着性が高い機能を有した、基材シート上に熱溶融インキ層を設けた熱転写シート及びその熱転写シートを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 基材シート2の一方の面に少なくとも一部に、離型層3を介して、熱により転写可能な熱溶融性着色層4を設けた熱転写シートにおいて、該離型層3が少なくともエポキシ基を有するシリコーン変性樹脂と硬化触媒を含み、該熱溶融性着色層4が第1成分として、少なくとも塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、第2成分としてアミン変性アクリル樹脂、及び着色剤から構成され、前記アミン変性アクリル樹脂が熱溶融性着色層4の前記第1成分の樹脂全体に対し、0.2〜15%の割合で含有しているものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字品質に優れ、被転写体との接着性が高い機能を有した、基材シート上に熱溶融性着色層を設けた熱転写シート及びその熱転写シートを用いた画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、簡便な印刷方法として熱転写方法が広く使用されるようになってきた。この熱転写方法は、基材シートの一方の面に色材層が設けられた熱転写シートと、必要に応じて画像受容層が設けられた熱転写受像シートを重ね合わせ、サーマルヘッド等の加熱手段により熱転写シートの背面を画像状に加熱して、色材層に含まれる色材を選択的に移行させて、熱転写受像シート上に画像を形成する方法である。その熱転写方法は、溶融転写方式と昇華転写方式に分けられる。溶融転写方式は顔料等の色材を熱溶融性のワックスや樹脂等のバインダーに分散させた熱溶融性着色層をPETフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートを用い、サーマルヘッド等の加熱手段に画像情報に応じたエネルギーを印加し、紙やプラスチックシート等の熱転写受像シート上に、色材をバインダーと共に転写する画像形成方法である。溶融転写方式による画像は、高濃度で鮮鋭性に優れ、文字等の2値画像の記録に適している。
【0003】
一方、昇華転写方式は主に昇華により熱移行する染料を樹脂バインダー中に溶解或いは分散させた染料層をPETフィルム等の基材シートに担持させた熱転写シートを用い、サーマルヘッド等の加熱手段に画像情報に応じたエネルギーを印加し、紙やプラスチック等の基材シートに必要に応じて染料受容層を設けてなる熱転写受像シート上に、染料のみを転写移行させる画像形成方法である。昇華転写方式は、印加されるエネルギー量に応じて染料の移行量を制御できるため、サーマルヘッドのドット毎に画像濃度を制御した階調画像の形成を行なうことができる。また、使用する色材が染料であるため、形成される画像には透明性があり、異なる色の染料を重ねた場合の中間色の再現性が優れている。したがって、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック等の異なる色相の染料層を有する熱転写シートを用い、熱転写受像シート上に各色染料を重ねて転写する際にも、中間色の再現性に優れた高画質な写真調フルカラー画像の形成が可能である。
【0004】
このような熱転写方式の具体的な用途は、多岐にわたっている。代表的なものとしては、印刷の校正刷り、画像の出力、CAD/CAMなどの設計およびデザインなどの出力、CTスキャンや内視鏡カメラなどの各種医療用分析機器、測定機器の出力用途そしてインスタント写真の代替として、また身分証明書やIDカード、クレジットカード、その他カード類への顔写真などの出力、さらに遊園地、ゲームセンター、博物館、水族館などのアミューズメント施設における合成写真、記念写真としての用途などをあげることができる。上記のような用途の多様化に伴い、任意の対象物に熱転写画像を形成する要求が高まり、その対応の一つとして、受容層が基材上に剥離可能に設けられた中間転写記録媒体で、その受容層に染料層や熱溶融性インキ層を有する熱転写シートを用いて、染料、顔料などの着色剤を転写して画像を形成し、その後に中間転写記録媒体を加熱して、受容層を被転写体上に転写する方法が提案されている。(特許文献1参照)
【0005】
また、上記の中間転写記録媒体を用いることは、受容層を被転写体に転写することができるので、色材が移行しにくく、高画質の画像を直接形成できない被転写体や、熱転写時に色材層と融着し易い被転写体等に対して、好ましく用いられている。そのため、中間転写記録媒体は、パスポート等の身分証明書やクレジットカード・IDカード等の印画物の作成に対して好ましく用いられている。また、画像受容層の被転写体への転写の際に、転写したい部分の昇華染料や熱溶融インキ等の色材を熱転写して形成した画像受容層を確実に被転写体上に転写するために、基材シートの一方の面に画像受容層を剥離可能に設けた中間転写記録媒体の画像受容層面に、熱転写記録方法により熱転写シートから色材を転写して画像を形成した後、上記画像が形成された画像受容層を接着層を介して被転写体に転写する画像形成方法が知られている。(特許文献2参照)
【0006】
上記のような中間転写記録媒体を用いて被転写体に昇華染料や熱溶融インキを熱転写して、画像の形成された受容層を転写する画像形成方法では、受容層に昇華染料や熱溶融インキを直接に転写して画像形成しているものであり、受容層と染料層とが融着せずに画像形成するように、受容層には離型剤を添加している。ところが、その受容層に熱溶融インキを転写した場合、熱溶融インキの受容層への転写性が劣り、印字部でカスレや、ツブレが生じやすく、印字品質が良くないという問題がある。また、中間転写記録媒体の受容層と熱溶融インキとの接着性が十分でなく、さらにカード等の被転写体に、画像形成された受容層を転写した際、被転写体と受容層との接着性が十分でない問題がある。
【0007】
また、熱溶融転写方式の熱転写シートで、印字のカスレや、ツブレを無くすために、基材シート上に、離型層を介して熱溶融性インキ層を設けることで、熱溶融性インキ層の転写性を制御することが行なわれるが、その離型層の性能が、ばらつきやすい問題がある。例えば、シリコーン系樹脂を含有する離型層では、均一な塗工膜を形成することが難しく、膜の厚さがばらついてしまう、また水系の塗工液により、離型層を形成する場合、塗工後の離型層の乾燥における温度の多少の変化により、離型性能がばらついてしまう。
【0008】
中間転写記録媒体の離型性を有する受容層に、熱転写シートから熱溶融性インキ層を転写して、その熱溶融性インキ層が転写された受容層を被転写体へ転写して、使用する際に、特に、上記の離型層の性能が要求される。すなわち、中間転写記録媒体の受容層に、印字のツブレや、カスレのないように転写でき、かつ印字部の受容層との接着性、さらに転写された受容層と被転写体との接着性が十分であることが要求される。しかし、上記の離型層の性能を十分に満足させるものがないという問題がある。
【特許文献1】特開昭62−238791号公報
【特許文献2】特開平7−52522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、上記のような問題点を解決し、印字品質に優れ、被転写体との接着性が高い機能を有した、基材シート上に熱溶融性着色層を設けた熱転写シート及びその熱転写シートを用いた画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の状況を鑑み、鋭意研究開発を進め、本発明は、特許請求の範囲の請求項1において、基材シートの一方の面に少なくとも一部に、離型層を介して、熱により転写可能な熱溶融性着色層を設けた熱転写シートにおいて、前記離型層が少なくともエポキシ基を有するシリコーン変性樹脂と硬化触媒を含み、前記熱溶融性着色層が、少なくとも塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含む第一の成分と、アミン変性アクリル樹脂からなる第二の成分と、着色剤から構成され、前記アミン変性アクリル樹脂が熱溶融性着色層の前記第1成分の樹脂全体に対し、0.2〜15質量%の割合で含有していることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2として、請求項1に記載する熱溶融性着色層が、第1成分として更にアクリル樹脂を含み、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と、アクリル樹脂とが、98対2〜40対60の質量比で混合されていることを特徴とする。また、本発明の請求項3として、請求項1または2に記載する熱溶融性着色層の塗布量が、乾燥状態で0.6〜1.4g/m2であることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4の画像形成方法は、上記のいずれかに記載の熱転写シートを用いて、基材シートの一方の面に離型性を有する受容層を有する中間転写記録媒体に対し、該受容層に熱溶融性着色層を転写して画像形成後に、前記中間転写記録媒体の画像形成された受容層を被転写体に転写して、画像を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記の構成の熱転写シートにより、転写された印字部でカスレやツブレが生じることが少なく、印字品質に優れ、また被転写体と印字部との接着性が高いものとなる。また、上記の熱転写シートを用いて、基材シートの一方の面に離型性を有する受容層を有する中間転写記録媒体に対し、該受容層に熱溶融性着色層を転写して画像形成後に、前記中間転写記録媒体の画像形成された受容層を被転写体に転写して、画像を形成することができる。その際の中間転写記録媒体の受容層と、転写された熱溶融性着色層との接着性が高く、さらに画像形成された受容層と、被転写体との接着性も高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の熱転写シートの一つの実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明の画像形成方法を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態について、詳述する。
図1は、本発明の熱転写シート1の一つの実施形態を示す概略図であり、基材シート2上に、離型層3、熱溶融性着色層4を設け、また基材シート2の他方の面に背面層5を設けた構成である。この図示したものに限らず、熱転写シートの表面または裏面の一方もしくは両方に帯電防止層を設けたり、他の層を適宜加えることも可能である。以下に、本発明の熱転写シートを構成する各層について、詳細に説明する。
【0016】
(基材シート)
本発明の熱転写シートで用いられる基材シート2としては、従来の熱転写シートに使用されているものと同じ基材シートをそのまま用いることが出来ると共に、その他のものも使用することが出来、特に制限されない。好ましい基材の具体例としては、例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、セロハン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロン、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、塩化ゴム、アイオノマー等のプラスチックフィルム、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類等があり、又、これらのいずれかを複合したものであってもよい。この基材シートの厚さは、その強度及び熱伝導性が適切になるように材料に応じて適宜変更することが出来るが、印字(記録)感度との関係上2〜12μm程度が好ましい。すなわち、厚さが2μm未満であると、基材シートとしての強度が不足しやすく、また厚さが12μmを越えると印字(記録)時の熱が転写層まで伝わりづらくなる。
【0017】
(離型層)
基材シート上には、熱溶融性着色層の基材シートからの剥離を容易にする離型層3を設ける。離型層に使用する樹脂としては、エポキシ基を有するシリコーン変性樹脂を硬化させたものを用いる。エポキシ基を有するシリコーン変性樹脂としては、シリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂などがあげられる。このエポキシ基を有するシリコーン変性樹脂を硬化させることにより、熱転写シートの印字加熱時に、離型層のシリコーン成分が熱溶融性着色層に移行しないようにして、熱溶融性着色層の印字時の転写性を高められる。
【0018】
上記のエポキシ基を有するシリコーン変性樹脂を硬化させるには、硬化触媒を使用する。この硬化触媒としては、特に限定はされないが、例えば、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート等のアルミニウム化合物、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミン系シランカップリング剤等が挙げられる。
【0019】
離型層は、上記のエポキシ基を有するシリコーン変性樹脂と硬化触媒を溶剤に溶解ないし分散させて塗工液を作製し、該塗工液を塗布および乾燥して離型層が形成される。離型層の塗布量は乾燥時で約0.1〜5.0g/m2程度である。
【0020】
(熱溶融性着色層)
熱溶融性着色層に用いるバインダーは、樹脂を主体として構成するもので、第1成分として、少なくとも塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、第2成分としてアミン変性アクリル樹脂から構成される。熱溶融性着色層は、上記第1成分と第2成分のバインダー樹脂と、着色剤から構成され、第2成分のアミン変性アクリル樹脂が熱溶融性着色層の前記第1成分の樹脂全体に対して、0.2〜15質量%の割合で含有している。上記の塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、ガラス転移点が70℃〜90℃のもの、また重量平均分子量では15000〜30000が好ましく用いられる。またアミン変性アクリル樹脂は、上記の離型層に含有するエポキシ基を有するシリコーン変性樹脂が硬化した後でも、エポキシ基を残存しているので、そのエポキシ基との反応性の強い官能基であるアミノ基を側鎖にもつアクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0021】
そのアミン変性アクリル樹脂は、熱溶融性着色層の前記第1成分の樹脂全体に対して、0.2〜15質量%の割合で含有しているので、そのアミノ基が離型層におけるエポキシ基と反応して、結合し、熱転写シートにおける剥離力を安定させることができる。剥離力とは、離型層と熱溶融性着色層との接着強度のことである。これによって熱転写シートの加熱印字時以外の取り扱い中で、熱溶融性着色層が基材シートから剥がれ落ちることがなく、熱転写印字における「カスレ」が無く、シャープな印字が得られる。また、そのアミン変性アクリル樹脂は重量平均分子量が45000程度の高分子量であり、熱溶融性着色層の皮膜強度を高めている。そのアミン変性アクリル樹脂の含有割合が上記範囲より、少ないと、離型層と熱溶融性着色層との剥離力が不安定になり、印字におけるツブレが発生しやすくなる。またアミン変性アクリル樹脂の含有割合が上記範囲より、多いと、離型層と熱溶融性着色層との剥離力が高くなり、印字における「カスレ」が発生しやすくなる。「カスレ」とは、本来熱溶融性着色層が転写すべき領域の全部又は一部に、熱溶融性着色層が転写できない印画欠陥の事である。また「ツブレ」とは、本来熱溶融性着色層が転写すべきでない領域の全部又は一部に、熱溶融性着色層が転写する印画欠陥の事である。
【0022】
熱溶融性着色層に含有するアミン変性アクリル樹脂は、以下に示す機能を有しているもので、重要な要素である。
熱転写シートの製造上、離型層を形成する際に、塗布した後の乾燥温度が変動した場合に、離型層と熱溶融性着色層との剥離力が変動して、印字におけるツブレやカスレが生じやすい。つまり、離型層の乾燥温度が高いと、離型層内でのエポキシ基の反応が進み、熱溶融性着色層との剥離力が低くなり、印字におけるツブレが生じ易くなる。それに対して、熱溶融性着色層にアミン変性アクリル樹脂を含有させて、離型層の未反応のエポキシ基と、アミン変性アクリル樹脂とが反応して、熱溶融性着色層の離型層からの剥離力を高めて、印字におけるツブレを防止した。
【0023】
また、離型層の形成時の乾燥温度が低いと、離型層内で未反応のエポキシ基が多くなり、その未反応のエポキシ基と熱溶融性着色層とが反応して、離型層と熱溶融性着色層との剥離力が高くなり、印字におけるカスレが生じ易くやすくなる。それに対して、熱溶融性着色層にアミン変性アクリル樹脂を、熱溶融性着色層の第1成分の樹脂全体に対して、0.2〜15質量%の割合で含有させて、離型層の未反応のエポキシ基と、熱溶融性着色層のアミン変性アクリル樹脂のアミノ基とが反応し、離型層と熱溶融性着色層との剥離力を適切に調整することができ、印字カスレ、ツブレを防止できたものである。
【0024】
上記のように熱溶融性着色層で、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体にアミン変性アクリル樹脂を少量添加することにより、離型層に含有するシリコーン変性樹脂のエポキシ基と反応が生じて、熱転写時の剥離力が少し重くなり、印字のツブレが生じにくくなる。また、熱溶融性着色層に含有するアミン変性アクリル樹脂が離型層で残存したエポキシ基と反応して、エポキシ基を無くすために、熱転写における安定した剥離力を確保することができる。塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、熱溶融性着色層における中間転写記録媒体との接着性、さらに被転写体との接着性を高めている。
【0025】
熱溶融性着色層における上記の第1成分のバインダー樹脂として、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の他に、アクリル樹脂を加えることができる。これにより、熱溶融性着色層の塗布量の変動による、印字カスレやツブレに対する影響が少ない、熱転写シートを得る事が出来る。第1の成分として用いるアクリル樹脂は、アミノ基を有さないアクリル樹脂であり、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸アルキルエステル、ポリメタクリル酸、及びこれらの共重合体からなる熱可塑性樹脂を好ましく用いる事ができる。重量平均分子量(Mw)が10000〜50000、好ましくは25000〜40000のものを使用する。上記の分子量は、GPCの方法により測定した値で表している。上記アクリル樹脂の重量平均分子量が上記範囲より、低いと、印字のツブレが生じやすく、また上記範囲より、高いと、印字のカスレが生じやすくなる。
【0026】
上記の熱溶融性着色層は、第1成分のバインダー樹脂として、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と、アクリル樹脂とを、98対2〜40対60の質量比で混合することが好ましく、95対5〜50対50の質量比で混合することがより好ましい。この混合割合でアクリル樹脂の含有割合が低下すると、印字のカスレが生じやすく、また一方でアクリル樹脂の含有割合が高すぎると、印字のツブレなどが生じやすい。また、被転写体や中間転写記録媒体の受容層との接着性が低下してしまう。また、上記のアクリル樹脂は、90〜110℃のガラス転移点が好ましい。ガラス転移点が、低いと、保存性に問題が生じ、又ガラス転移点が高すぎると、印字の感度不足になる。熱溶融性着色層に含有する着色剤としては、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイトなどの各着色剤が、従来公知の染料、顔料より適宜選択して、使用可能である。本発明における熱転写シートを用いた画像形成方法では、文字等の2値画像の記録に適している熱溶融転写では、熱溶融性着色層にカーボンブラックに代表される黒色顔料を用いることが好ましい。
【0027】
本発明の熱溶融性着色層では、着色剤30〜60質量%、バインダー樹脂40〜70質量%の割合で混合したインキ組成物を使用することが好ましい。着色剤が上記の範囲より少ない場合、濃度を得るために、塗布量を多くしなくてはならず、印字感度が不足する。また、着色剤が上記の範囲より多い場合、成膜性が得られず、印字後に、擦過性の低下の原因になる。着色剤を上記の範囲で含有させることで、高濃度で鮮鋭な印字が可能となる。
【0028】
熱溶融性着色層の形成は、上記のような着色剤成分とバインダー樹脂成分と、さらに、これに必要に応じて水、有機溶剤等の溶媒成分を配合調整した熱溶融性着色層形成用塗工液を、従来公知のホットメルトコート、ホットラッカーコート、グラビアダイレクトコート、グラビアリバースコート、ナイフコート、エアコート、ロールコート等の方法により、乾燥状態で塗布量が0.6〜1.4g/m2であることが好ましく、0.8〜1.2g/m2であることが、より好ましい。乾燥塗膜の塗布量が、0.6g/m2未満の場合、成膜性の問題で均一な着色層が得られず、印字のカスレが生じやすくなる。また、塗布量が1.4g/m2を越えた場合、印字転写の際に、高エネルギーが必要となり、特殊な熱転写プリンターでしか印字できなくなり、さらに印字のツブレが生じやすくなる。
【0029】
(背面層)
本発明の熱転写シートでは、必要に応じて、基材シートの裏面、すなわち熱溶融性着色層の設けてある面と反対面に、熱転写手段としてのサーマルヘッド等の熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止するため、背面層5を設けることができる。背面層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタン又はエポキシのプレポリマー、ニトロセルロース樹脂、セルロースナイトレート樹脂、セルロースアセトプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートヒドロジエンフタレート樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0030】
これらの樹脂からなる背面層に添加、あるいは上塗りする滑り性付与剤としては、燐酸エステル、シリコーンオイル、グラファイトパウダー、シリコーン系グラフトポリマー、フッ素系グラフトポリマー、アクリルシリコーングラフトポリマー、アクリルシロキサン、アリールシロキサン等のシリコーン重合体が挙げられるが、好ましくは、ポリオール、例えば、ポリアルコール高分子化合物とポリイソシアネート化合物及び燐酸エステル系化合物からなる層であり、更に充填剤を添加することがより好ましい。背面層は、上記に記載した樹脂、滑り性付与剤、更に充填剤を、適当な溶剤により、溶解又は分散させて、背面層形成用インキを調製し、これを、上記の基材シートの裏面に、例えば、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースコーティング法等の形成手段により塗布し、乾燥して形成することができる。背面層の塗布量は、融着防止や滑性等が果たせられる程度であれば充分で、乾燥時で通常0.1〜3g/m2程度である。
【0031】
(画像形成方法)
本発明の画像形成方法は、上記のいずれかに記載の熱転写シートを用いて、基材シートの一方の面に離型性を有する受容層を設けた中間転写記録媒体に対し、該受容層に熱溶融性着色層を転写して画像形成後に、画像形成された受容層を中間転写記録媒体から被転写体に転写して、画像を形成するものである。図2は、本発明の画像形成方法を説明する概略図であり、
(1)基材シート11の片面に、剥離層12を介して受容層13を有する中間転写記録媒体10を用意し、尚、中間転写記録媒体10は基材シート11の他方の面に背面層14が設けられていて、その受容層13に対して、図1に示したような熱転写シートを用いて、熱溶融性着色層を転写して画像6を形成する。また図示してはいないが別に用意した熱転写シートの基材シートに設けた染料層により、受容層13に昇華転写画像7を形成する。尚、受容層13は、剥離層12が形成されているので、基材シート11から熱転写時に離型しやすくなっており、また基材シート11の他方の面に背面層14を有するので、サーマルヘッドやヒートロール等の熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止している。
【0032】
(2)次に、上記の画像6と昇華転写画像7が形成された受容層13と剥離層12を中間転写記録媒体10から被転写体8に転写して、画像形成された被転写体8、すなわち画像形成物9が得られる。
【0033】
以下に、上記の画像形成方法で適用する中間転写記録媒体を構成する各要素について、説明する。
(基材シート)
中間転写記録媒体を構成する基材シート11は、従来の中間転写記録媒体に使用されているものと同じ基材シートをそのまま用いることができ、特に限定するものではない。具体的には、上記の熱転写シートで説明した基材シートと同様の材質、厚さのものが使用できる。
【0034】
(剥離層)
中間転写記録媒体は、基材シート上に剥離層12を介して、受容層を形成することができる。この剥離層を有していることにより、その中間転写記録媒体から受容層を確実に、かつ容易に被転写体へ転写させることができる。
【0035】
剥離層は、例えば、バインダー樹脂と離型性材料とから形成できる。そのバインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂であるポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル− 酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、エチルセルロース、ニトロセルロース、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、あるいは熱硬化型樹脂である不飽和ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アミノアルキッド樹脂等が使用できる。また、離型性材料としては、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン系樹脂、メラミン樹脂、フッ素系樹脂、タルクやシリカの微粉末、界面活性剤や金属セッケン等の潤滑剤等が使用できる。剥離層は、上記の必要な材料を適当な溶剤により、溶解または分散させて剥離層用塗工液を調製し、これを基材シート上にグラビア印刷法、スクリーン印刷法またはグラビア版を用いたリバースコーティング法等の手段により塗布、乾燥して形成することができる。その塗布量は乾燥時で0.05〜1g/m2程度である。
【0036】
(受容層)
受容層13は、中間転写記録媒体の表面に位置するように設けられる。この受容層上には、熱転写によって、本発明の熱転写シートから熱転写法により、画像が形成される。また、その受容層には、染料層を有する熱転写シートから熱転写法によって昇華転写画像を形成することも可能である。そして、画像が形成された中間転写記録媒体の受容層は、被転写体に転写され、その結果、印画物が形成される。受容層を形成するための材料としては、昇華性染料の熱移行性の色材を受容し易い、従来公知の樹脂材料を使用することができる。例えば、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルもしくはポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル− 酢酸ビニル系共重合体、エチレン− 酢酸ビニル共重合体もしくはポリアクリル酸エステル等のビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートもしくはポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エチレンもしくはプロピレン等のオレフィンと他のビニルポリマーとの共重合体系樹脂、アイオノマーもしくはセルロースジアスターゼ等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート等が挙げられ、特に、塩化ビニル系樹脂、アクリル− スチレン系樹脂またはポリエステル樹脂が好ましい。
【0037】
受容層は、熱転写シートの染料層との熱融着を防止する為に、上記の樹脂に離型剤を配合することが好ましい。離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル系界面活性剤、フッ素系化合物等を用いることができるが、この中でも特にシリコーンオイルが好ましく用いられる。この離型剤の添加量は、受容層を形成するバインダー樹脂100質量部に対し、0.2〜30質量部が好ましい。受容層は、前記の基材シート上に、上記の樹脂に離型剤等の必要な添加剤を加え、水又は有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させたインキを、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法等の通常の方法で塗布して形成することが可能である。その塗布量は、塗布乾燥後で0.1〜10g/m2程度である。
【0038】
(被転写体)
画像形成された受容層が転写される被転写体は、以下のような基材から構成することができる。例えば天燃パルプ紙、コート紙、トレーシングペーパー、転写時の熱で変形しないプラスチックフィルム、ガラス、金属、セラミックス、木材、布等いずれのものでもよい。天然パルプ紙は特に限定されず、例えば、上質紙、アート紙、軽量コート紙、微塗工紙、コート紙、キャストコート紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、熱転写用紙等が挙げられる。被転写体の形状・用途についても、株券、証券、証書、通帳類、乗車券、車馬券、印紙、切手、鑑賞券、入場券、チケット等の金券類、キャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカード、メンバーズカード、グリーティングカード、ハガキ、名刺、運転免許証、ICカード、光カードなどのカード類、カートン、容器等のケース類、バッグ類、帳票類、封筒、タグ、OHPシート、スライドフィルム、しおり、カレンダー、ポスター、パンフレット、メニュー、パスポート、POP用品、コースター、ディスプレイ、ネームプレート、キーボード、化粧品、腕時計、ライター等の装身具、文房具、レポート用紙など文具類、建材、パネル、エンブレム、キー、布、衣類、履物、ラジオ、テレビ、電卓、OA機器等の装置類、各種見本帳、アルバム、また、コンピュータグラフィックスの出力、医療画像出力等、種類を問うものではない。
【実施例】
【0039】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。尚、文中、部または%とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
基材シートして、厚さ4.5μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ株式会社製、ルミラー)の一方の面に、下記組成の背面層用塗工液をワイヤーバーコーティング方式により、乾燥時の塗布量が1.0g/m2になるように塗布し、乾燥して(100℃60秒間)、背面層を形成した。次に、上記基材シートの背面層を形成した面と反対の面に、下記組成の離型層用塗工液をグラビアコーティングにより、乾燥時の塗布量が1.0g/m2になるように塗布、乾燥して(80℃60秒間)、離型層を形成し、さらに離型層の上に、下記組成の熱溶融性着色層用塗工液1をグラビアコーティングにより、乾燥時の塗布量が0.2g/m2、0.4g/m2、0.6g/m2、0.8g/m2、1.0g/m2、1.2g/m2、1.4g/m2、1.6g/m2、の8つのレベルで、各々塗布、乾燥して、熱溶融性着色層を形成して、実施例1の熱転写シートを熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種で作製した。
【0040】
(背面層用塗工液組成)
アクリルニトリル−スチレン共重合体 11部
線状飽和ポリエステル樹脂 0.3部
ジンクステアリルホスフェート 6部
メラミン樹脂粉末 3部
トルエン/エタノール=50/50(質量比) 80部
【0041】
(離型層用塗工液組成)
シリコーン変性アクリル樹脂(エポキシ基を有するシリコーン変性アクリル樹脂、セルトップ226、ダイセル化学工業(株)製) 16部
アルミ触媒(セルトップCAT−A、ダイセル化学工業(株)製) 3部
メチルエチルケトン 8部
トルエン 8部
【0042】
(溶融性着色層用塗工液1)
着色剤(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1) 17.4部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 33.3部
(商品名ソルバインCL、固形分30%、ガラス転移点75℃、重量平均分子量20000、日信化学工業(株)製)
アミン変性アクリル樹脂 0.44部
(固形分45%、ガラス転移点90℃、重量平均分子量45000、DIC社製)
トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 48.86部
【0043】
(実施例2)
実施例1で作製した熱転写シートの作製条件で、熱溶融性着色層用塗工液1を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の熱転写シートを熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種で作製した。
(溶融性着色層用塗工液2)
着色剤(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1) 17.4部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 30.0部
(商品名ソルバインCL、固形分30%、ガラス転移点75℃、重量平均分子量20000、日信化学工業(株)製)
アミン変性アクリル樹脂 2.22部
(固形分45%、ガラス転移点90℃、重量平均分子量45000、DIC社製)
トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 50.38部
【0044】
(実施例3)
実施例1で作製した熱転写シートの作製条件で、熱溶融性着色層用塗工液1を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の熱転写シートを熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種で作製した。
(溶融性着色層用塗工液3)
着色剤(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1) 17.4部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 30.0部
(商品名ソルバインCL、固形分30%、ガラス転移点75℃、重量平均分子量20000、日信化学工業(株)製)
アクリル樹脂 2.5部
(商品名BR−87、固形分40%、ガラス転移点105℃、重量平均分子量25000、三菱レイヨン(株)製)
アミン変性アクリル樹脂 0.11部
(固形分45%、ガラス転移点90℃、重量平均分子量45000、DIC社製)
トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 49.99部
【0045】
(実施例4)
実施例1で作製した熱転写シートの作製条件で、熱溶融性着色層用塗工液1を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の熱転写シートを熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種で作製した。
(溶融性着色層用塗工液4)
着色剤(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1) 17.4部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 16.7部
(商品名ソルバインCL、固形分30%、ガラス転移点75℃、重量平均分子量20000、日信化学工業(株)製)
アクリル樹脂 12.5部
(商品名BR−87、固形分40%、ガラス転移点105℃、重量平均分子量25000、三菱レイヨン(株)製)
アミン変性アクリル樹脂 2.22部
(固形分45%、ガラス転移点90℃、重量平均分子量45000、DIC社製)
トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 51.18部
【0046】
(実施例5)
実施例1で作製した熱転写シートの作製条件で、熱溶融性着色層用塗工液1を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の熱転写シートを熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種で作製した。
(溶融性着色層用塗工液5)
着色剤(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1) 17.4部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 31.7部
(商品名ソルバインCL、固形分30%、ガラス転移点75℃、重量平均分子量20000、日信化学工業(株)製)
アクリル樹脂 1.25部
(商品名BR−83、固形分40%、ガラス転移点105℃、重量平均分子量40000、三菱レイヨン(株)製)
アミン変性アクリル樹脂 0.44部
(固形分45%、ガラス転移点90℃、重量平均分子量45000、DIC社製)
トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 49.21部
【0047】
(実施例6)
実施例1で作製した熱転写シートの作製条件で、熱溶融性着色層用塗工液1を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の熱転写シートを熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種で作製した。
(溶融性着色層用塗工液6)
着色剤(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1) 17.4部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 30.0部
(商品名ソルバインCL、固形分30%、ガラス転移点75℃、重量平均分子量20000、日信化学工業(株)製)
アクリル樹脂 2.5部
(商品名BR−83、固形分40%、ガラス転移点105℃、重量平均分子量40000、三菱レイヨン(株)製)
アミン変性アクリル樹脂 1.11部
(固形分45%、ガラス転移点90℃、重量平均分子量45000、DIC社製)
トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 48.99部
【0048】
(実施例7)
実施例1で作製した熱転写シートの作製条件で、熱溶融性着色層用塗工液1を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の熱転写シートを熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種で作製した。
(溶融性着色層用塗工液7)
着色剤(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1) 17.4部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 30.0部
(商品名ソルバインCL、固形分30%、ガラス転移点75℃、重量平均分子量20000、日信化学工業(株)製)
アクリル樹脂 2.5部
(商品名BR−83、固形分40%、ガラス転移点105℃、重量平均分子量40000、三菱レイヨン(株)製)
アミン変性アクリル樹脂 0.44部
(固形分45%、ガラス転移点90℃、重量平均分子量45000、DIC社製)
トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 49.66部
【0049】
(実施例8)
実施例1で作製した熱転写シートの作製条件で、熱溶融性着色層用塗工液1を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8の熱転写シートを熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種で作製した。
(溶融性着色層用塗工液8)
着色剤(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1) 17.4部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 26.7部
(商品名ソルバインCL、固形分30%、ガラス転移点75℃、重量平均分子量20000、日信化学工業(株)製)
アクリル樹脂 5.0部
(商品名BR−83、固形分40%、ガラス転移点105℃、重量平均分子量40000、三菱レイヨン(株)製)
アミン変性アクリル樹脂 0.44部
(固形分45%、ガラス転移点90℃、重量平均分子量45000、DIC社製)
トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 50.46部
【0050】
(比較例1)
実施例1で作製した熱転写シートの作製条件で、熱溶融性着色層用塗工液1を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の熱転写シートを熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種で作製した。
(溶融性着色層用塗工液9)
着色剤(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1) 17.4部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 33.3部
(商品名ソルバインCL、固形分30%、ガラス転移点75℃、重量平均分子量20000、日信化学工業(株)製)
トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 49.3部
【0051】
(比較例2)
実施例1で作製した熱転写シートの作製条件で、熱溶融性着色層用塗工液1を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2の熱転写シートを熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種で作製した。
(溶融性着色層用塗工液10)
着色剤(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1) 17.4部
アミン変性アクリル樹脂 22.2部
(固形分45%、ガラス転移点90℃、重量平均分子量45000、DIC社製)
トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 60.4部
【0052】
(比較例3)
実施例1で作製した熱転写シートの作製条件で、熱溶融性着色層用塗工液1を下記組成のものに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の熱転写シートを熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種で作製した。
(溶融性着色層用塗工液11)
着色剤(カーボンブラックの分散剤で、固形分46%、配合はカーボンブラック40%、分散剤6%、トルエン/酢酸エチル=1/1) 17.4部
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 26.7部
(商品名ソルバインCL、固形分30%、ガラス転移点75℃、重量平均分子量20000、日信化学工業(株)製)
アクリル樹脂 5.0部
(商品名BR−83、固形分40%、ガラス転移点105℃、重量平均分子量40000、三菱レイヨン(株)製)
トルエン/メチルエチルケトン=50/50(質量比) 50.9部
【0053】
上記の実施例及び比較例で得られた熱転写シートを用いて、以下に示す方法により、印字におけるツブレ及びカスレの評価、また基材シート上に剥離層、受容層を設けた中間転写記録媒体の受容層に、上記の実施例及び比較例で得られた熱転写シートを用いて、熱転写画像を形成し、熱溶融性着色層と受容層との接着性を調べ、さらに熱転写画像の形成された受容層を、被転写体であるカード基材(材質は塩化ビニル)に転写し、カード基材と受容層との接着性を調べた。また、上記の各例の熱転写シートの熱溶融性着色層の塗布量が1.0g/m2のもの1種類で、離型層の形成における乾燥温度の違いと、印字におけるツブレ及びカスレの有無による剥離性の評価を行なった。
【0054】
(印字におけるツブレ)
下記の印字条件で下記条件の中間転写記録媒体の受容層に、各熱転写シートを用いて、線幅が約0.17mm{(1inch/300)×2}で、間隔を1mmとした細線パターンを流れ方向に有するものと、その流れ方向と直行する方向に有する2通りのパターンで印字した。また、このパターンをポジパターンとして、そのポジパターンに対応するネガパターンでも印字した。それらの印字物で、画線部のツブレの有無を目視にて観察して評価した。
(印字条件)
・サーマルヘッド:KGT−217−12MPL20(京セラ(株)製)
・発熱体平均抵抗値:3195(Ω)
・主走査方向印字密度:300dpi
・副走査方向印字密度:300dpi
・印加電力:0.13(w/dot)
・1ライン周期:5(msec.)
・印字開始温度:40(℃)
【0055】
<中間転写記録媒体の調製>
厚さ12μmで透明なポリエチレンテレフタレートを基材シートとして用い、その表面に以下に示す剥離層用塗工液を、グラビアコーターで塗布、乾燥して、基材シートの全面上に乾燥時で厚さ0.8μmの剥離層を形成した。
(剥離層組成)
アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、BR−83) 88部
ポリエステル樹脂 1部
ポリエチレンワックス 11部
メチルエチルケトン 50部
トルエン 50部
【0056】
上記の剥離層上に、下記に示す受容層用塗工液により、グラビアコーターで塗布、乾燥し、乾燥時で厚さ1.5μmの受容層を形成し、中間転写記録媒体を用意した。
(受容層塗工液)
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体 40部
(ユニオンカーバイト社製 VY−LFX)
アクリルシリコーン 2.0部
メチルエチルケトン 50部
トルエン 50部
【0057】
印字におけるツブレとカスレの評価は、各例で作製した熱溶融性着色層の塗布量が異なる8種の熱転写シートの全てで評価した。
【0058】
上記の印字におけるツブレの評価の基準は以下の通りである。
○:ツブレが無く、良好である。
△:部分的にツブレがあるが、判読できる。
×:全体的にツブレがあり、不良である。
【0059】
(印字におけるカスレ)
上記の印字におけるツブレの際に印字した条件と同様にして、印字した。その印字物で、画線部のカスレの有無を目視にて観察して評価した。
上記の印字におけるカスレの評価の基準は以下の通りである。
○:カスレツブレが無く、良好である。
△:部分的にカスレがあるが、判読できる。
×:全体的にカスレがあり、不良である。
【0060】
(熱溶融性着色層と受容層との接着性(中間媒体接着性))
上記の印字におけるツブレの際に印字した条件と同様にして、中間転写記録媒体の受容層に各熱転写シートを用いて、テストパターンを印字して、熱溶融性着色層と受容層との接着性を、印字部にセロハンテープを親指で1往復擦って貼り付け、すぐに180度ハクリ角度で剥がして、接着性を調べた。但し、この場合に使用した熱転写シートは、各例の熱転写シートの溶融性着色層の塗布量が1.0g/m2のもの1種類に限定した。
評価基準は以下の通りである。
◎:目視で剥がれるものが全く無く、非常に良好である。
○:目視で剥がれるものが、ほとんど認められなく無く、良好である。
【0061】
(カード基材と受容層との接着性(カード接着性))
上記の印字におけるツブレの際に印字した条件と同様にして、中間転写記録媒体の受容層に各熱転写シートを用いて、テストパターンを印字して、その印字された受容層をカード基材である被転写体へ転写して、その転写された受容層とカード基材との接着性を、受容層表面にセロハンテープを親指で1往復擦って貼り付け、すぐに180度ハクリ角度で剥がして、接着性を調べた。上記受容層の被転写体への転写は、ヒートロールで加熱、加圧して行なった。但し、この場合に使用した熱転写シートは、各例の熱転写シートの熱溶融性着色層の塗布量が1.0g/m2のもの1種類に限定した。
評価基準は以下の通りである。
○:目視で剥がれるものが無く、良好である。
×:目視にて、画像形成された受容層がセロハンテープ側にとられて、受容層とカード基材との接着性が不良である。
【0062】
(剥離性)
上記の印字におけるツブレの際に印字した条件と同様にして、中間転写記録媒体の受容層に各熱転写シートを用いて、2通りのパターンで印字して、それらの印字物における画線部のツブレの有無、及び画線部のカスレの有無を目視にて観察して評価した。但し、実施例及び比較例において、使用した熱転写シートは、各例の熱転写シートの熱溶融性着色層の塗布量が1.0g/m2のもの1種類に限定し、かつ各例の熱転写シートの離型層を形成する際の乾燥条件を、乾燥温度90℃、110℃(通常条件)、130℃でそれぞれ1分間乾燥させたものを用意した。それらの熱転写シートを用いて、印字物における画線部のツブレの有無、及び画線部のカスレの有無を、以下の基準にて評価して、剥離性を調べた。
○:印字物の画線部のツブレ、カスレが無く、良好である。
△:印字物に画線部のツブレ、あるいはカスレが少し認められる。
×:印字物の画線部のツブレ、あるいはカスレが生じ、不良である。
【0063】
上記の各評価結果を、表1に示す。
【表1】

【0064】
剥離性の評価では、実施例1〜8では、離型層の乾燥温度が通常条件(110℃)と変化した場合、少しの印字のカスレや、ツブレが生じるが、実用上問題は無いレベルである。それに対し、比較例1、3では、乾燥温度が通常より低下すると(90℃になると)、離型層と熱溶融性着色層との剥離力が大きくなり、印字のカスレが生じる。また、比較例2では、乾燥温度が通常より低下すると(90℃になると)離型層と熱溶融性着色層との剥離力が大きくなりすぎて、熱転写シートが中間転写記録媒体に貼り付いてしまう。
【符号の説明】
【0065】
1 熱転写シート
2 基材シート
3 離型層
4 熱溶融性着色層
5 背面層
6 画像
7 昇華転写画像
8 被転写体
9 画像形成物
10 中間転写記録媒体
11 基材シート
12 剥離層
13 受容層
14 背面層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの一方の面に少なくとも一部に、離型層を介して、熱により転写可能な熱溶融性着色層を設けた熱転写シートにおいて、前記離型層が少なくともエポキシ基を有するシリコーン変性樹脂と硬化触媒を含み、前記熱溶融性着色層が、少なくとも塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含む第一の成分と、アミン変性アクリル樹脂からなる第二の成分と、着色剤から構成され、前記アミン変性アクリル樹脂が熱溶融性着色層の前記第1成分の樹脂全体に対し、0.2〜15質量%の割合で含有していることを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
前記の熱溶融性着色層が、第1成分として更にアクリル樹脂を含み、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と、アクリル樹脂とが、98対2〜40対60の質量比で混合されていることを特徴とする請求項1に記載する熱転写シート。
【請求項3】
前記の熱溶融性着色層が、乾燥状態で塗布量が0.6〜1.4g/m2であることを特徴とする請求項1または2に記載する熱転写シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の熱転写シートを用いて、基材シートの一方の面に離型性を有する受容層を有する中間転写記録媒体に対し、該受容層に熱溶融性着色層を転写して画像形成後に、前記中間転写記録媒体の画像形成された受容層を被転写体に転写して、画像を形成することを特徴とする画像形成方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−201182(P2011−201182A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71457(P2010−71457)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】