説明

熱転写シート

【課題】転写色材層のワックス成分等の低分子量成分の裏面である耐熱樹脂層への移行を低減して印画時のカス発生を防止する熱転写シートを提供することを課題とする。
【解決手段】基材フィルムの一方の面に熱によって転写可能な転写色材層を有し、他方の面に耐熱樹脂層を有する熱転写シートであって、前記転写色材層が少なくとも1種類の有機材料からなる有機フィラーを含有し、且つ、該有機フィラーの粒子径が0.1μm以上2μm以下の範囲内であることを特徴とする熱転写シートとした。さらには、前記転写基材層が無機材料からなる無機フィラーを含有し、且つ、該無機フィラーの粒子径が前記有機フィラーの粒子径よりも小さいか、または、転写色材層の層厚よりも小さい熱転写シートとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱によって転写可能な転写色材層を有する熱転写シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材フィルムの一方の面に転写色材層を設けた熱転写シートを、転写色材層を設けた面と基材フィルムの他方の面からサーマルヘッドで加熱して、転写色材層を選択的に転写して非転写体上に文字、模様、図柄などの画像を形成する転写方式が広く利用されている。
【0003】
近年は高品質画像の形成を目的として、プリンターのさらなる高分解能化のためにサーマルヘッド部の高温化、高速化が必要とされている。基材としてポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた場合、加熱したサーマルヘッドによって、基材の一部が融解してサーマルヘッドに融着することがある。この場合、画像品質を著しく低下させるとともに、基材がサーマルヘッドに焼きついてその後の熱転写シートの搬送を不可能にする。
【0004】
この発熱部の高温化に対応するため、転写色材層を設けた面と基材フィルムの他方の面に耐熱性樹脂からなる耐熱樹脂層を設けてサーマルヘッドからの熱により基材がサーマルヘッドから融着することによる不良を防止する技術が広く知られている。この耐熱樹脂層は連続印画の際、サーマルヘッドによって削られ、サーマルヘッド付近にカスが発生してこのカスがサーマルヘッドに付着または融着することによって、熱転写シートへの熱が伝わりにくくなったり、熱転写シートの搬送を阻害することによって印画品質を低下させることがわかっている。この耐熱樹脂層のカスを防止するため、例えば、アクリル−シリコーングラフトポリマーにシリコーンオイルを含有させて耐熱樹脂層に柔軟性を付与させる方法(特許文献1)や、シリコーンオイルのかわりにシリコーン変性樹脂を用いてカス防止とさらに耐熱樹脂層からのシリコーンオイルの転写色材層への移行を防止する方法(特許文献2)や、シリコーン変性樹脂の他に熱架橋剤と金属石鹸とフィラーを用いて耐熱樹脂層を形成しカスの防止とともに基材のシワ発生を防止する方法(特許文献3)が提案されている。
【0005】
熱転写シートは連続印画に対応するためフィルム巻き取り状態に加工される。熱転写シートのうち昇華転写用染料を転写色材層に用いた昇華型熱転写シートでは巻き取り状態で保管した際、色材層と耐熱樹脂層が接するため色材層中の染料がこの耐熱樹脂層に移行してしまうことが知られている。(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−149059号公報
【特許文献2】特開2003−63155号公報
【特許文献3】特開2006−306017号公報
【特許文献4】特開2008−105373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱転写シートにおいて、転写色材層に含まれる樹脂成分と比較して低分子量の成分は染料同様に色転写材層から裏側の耐熱樹脂層に移行してしまうと考えられる。染料の他に転写色材層から耐熱樹脂層に裏移りして移行する成分としてはオイル成分やワックス成分がある。
【0008】
熱転写シートのうち熱溶融型の熱転写シートは、色材として顔料を用いた場合、高精度でかつ十分な濃度でプリントするために高い顔料含有量が要求されるため顔料分散機能を有するワックス成分を添加する。このワックス成分は常温においては固体であり、加熱によって溶融する物質である。したがってワックス成分が耐熱樹脂層に存在すると、サーマルヘッドの加熱によってワックス成分が溶融して耐熱樹脂層から溶出しサーマルヘッドの冷却によってサーマルヘッド上に溶着または析出してカス発生の原因となる。また、熱転写シートでは転写色材層が色材層の他に色材層上に転写保護層を設ける場合があるが、この場合においても転写保護層から低分子量成分つまりワックス成分などの耐熱樹脂層への移行が懸念される。従来のカス発生を防止する方法では転写色材層から耐熱樹脂層に移行するワックス成分に対しては言及されていない。
【0009】
本発明は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、転写色材層のワックス成分等の低分子量成分の裏面である耐熱樹脂層への移行を低減して印画時のカス発生を防止する熱転写シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1にかかる発明としては、基材フィルムの一方の面に熱によって転写可能な転写色材層を有し、他方の面に耐熱樹脂層を有する熱転写シートであって、前記転写色材層が少なくとも1種類の有機材料からなる有機フィラーを含有し、且つ、該有機フィラーの粒子径が0.1μm以上2μm以下の範囲内であることを特徴とする熱転写シートとした。
【0011】
また、請求項2にかかる発明としては、前記転写基材層が無機材料からなる無機フィラーを含有し、且つ、該無機フィラーの粒子径が前記有機フィラーの粒子径よりも小さいか、または、前記無機フィラーの粒子径が前記転写色材層の層厚よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の熱転写シートとした。
【0012】
また、請求項3にかかる発明としては、前記転写色材層がパターン化された複数種の転写色材層からなり、且つ、複数種の転写色材層のうち最も層厚の厚い転写色材層が少なくとも1種類の有機材料からなる有機フィラーを含有し、且つ、該有機フィラーの粒子径が0.1μm以上2μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の熱転写シートとした。
【0013】
また、請求項4にかかる発明としては、前記最も層厚の厚い転写基材層が無機材料からなる無機フィラーを含有し、且つ、該無機フィラーの粒子径が前記有機フィラーの粒子径よりも小さいか、または、前記無機フィラーの粒子系が前記最も層厚の厚い転写色材層の層厚よりも小さいことを特徴とする請求項3記載の熱転写シートとした。
【0014】
また、請求項5にかかる発明としては、前記耐熱樹脂層が少なくとも1種類の有機材料からなる有機フィラーを含有し、且つ、該有機フィラーの粒子径が0.1μm以上2μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱転写シートとした。
【0015】
また、請求項6にかかる発明としては、前記転写色材層がワックス成分を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱転写シートとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明の構成の熱転写シートとすることにより、転写色材層のワックス成分の移行性を低減して印画時のカス発生を防止する熱転写シートを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の熱転写シートの説明断面図である。
【図2】図2は本発明の別の態様の熱転写シートの説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の熱転写シートについて説明する。
【0019】
図1に本発明の熱転写シートの説明断面図を示した。本発明の熱転写シートにあっては基材フィルム1の一方の面の最表面層に熱によって転写可能な転写色材層2を有し、他方の面の最表面層に耐熱樹脂層3を有する。そして、本発明にあっては、転写色材層2が少なくとも1種類の有機材料からなる有機フィラーを含有し、且つ、該有機フィラーの粒子径が0.1μm以上2μm以下の範囲内であることを特徴とする。
【0020】
本発明の熱転写シートにあっては転写色材層2に有機材料からなる有機フィラーを含有させることにより、転写色材層表面に凹凸を形成することができ、巻き取り状態における転写色材層2に含まれるワックス成分等の低分子量成分の耐熱樹脂層3への移行を防ぐことができる。これにより、熱転写時にサーマルヘッド上に出現するカスの発生を防ぐことができる。ワックス成分が転写基材層から耐熱樹脂層に移行した場合には、印画時にサーマルヘッドの加熱によってワックス成分が溶融して耐熱樹脂層から溶出し、サーマルヘッドの冷却によってサーマルヘッド上に溶着または析出してカス発生の原因となってしまう。また、転写色材層にフィラーを含有させることにより印画する際の基材フィルムに対する離型性を向上させることができる。
【0021】
本発明の熱転写シートにあっては、転写色材層に含まれるフィラーは少なくとも1種類が有機材料からなる有機フィラーであることを特徴とする。有機フィラーは無機材料からなる無機フィラーと比較して表面形状が滑らかで軟らかいため、巻き取り状態での保存時に耐熱樹脂層への傷などの損傷を防ぐことができ、巻き取り状態での保存時の熱転写色材層と耐熱樹脂層の貼り付きをより効果的に防止することができる。
【0022】
本発明の熱転写シートにあっては、転写色材層に含まれる有機フィラーの粒子径が0.1μm以上2.0μm以下の範囲内であることを特徴とする。有機フィラーの粒子径が0.1μmよりも小さい場合、転写色材層表面に十分な凹凸形状を形成することができず、保存時に耐熱樹脂層へのワックス成分の移行がおこりやすく、印画時にカスが発生しやすくなる。一方、有機フィラーの平均粒子径が2μmよりも大きい場合には、印画時の転写色材層の熱転写を阻害し、転写ムラや所望の濃度の被転写物を得ることができない。
【0023】
また、本発明の熱転写シートにあっては、転写基材層が有機フィラーの他に無機材料からなる無機フィラーを含有し、且つ、無機フィラーの粒子径が前記有機フィラーの粒子径よりも小さいか、または、無機フィラーの粒子径が転写色材層の層厚よりも小さいことが好ましい。転写色材層に無機フィラーを含有させることにより、転写時の熱転写シートの熱シワを防止することができる。有機フィラーを含有し形成される転写色材層は熱転写時のサーマルヘッドの熱により収縮が起こりやすく、このとき基材フィルムと転写色材層との熱収縮性に差が生じ、熱転写シートに熱シワが生じやすくなる。転写色材層に無機フィラーを添加することにより、基材フィルムと転写色材層との熱収縮性に差が生じにくくなり、転写時の熱転写シートの熱シワを防止することができる。
【0024】
また、転写色材層に無機フィラーを含有させることにより保存時の転写色材層と耐熱樹脂層の貼り付きをより防止することができ、転写色材層に含まれる低分子量成分の耐熱樹脂層への移行を防ぐことができる。しかしながら、無機フィラーは有機フィラーと比較して高硬度であり、無機フィラーが転写色材層表面から突出している場合には巻き取り状態での保存時において耐熱樹脂層が傷などの損傷を受ける場合がある。したがって、転写色材層に無機フィラーを含有させる場合には、無機フィラーの粒子径を有機フィラーの粒子径よりも小さくするか、または、転写色材層の層厚よりも小さくすることが好ましい。無機フィラーの粒子径を有機フィラーの粒子径よりも小さくするか、または、転写色材層の層厚よりも小さくすることにより、無機粒子が転写色材層表面から突出することを防ぎ、巻き取り状態での保存時に発生する耐熱樹脂層が傷の発生を抑制することができる。
【0025】
図2に本発明の別の態様の熱転写シートの説明断面図を示した。図2の熱転写シートにあっては、基材フィルム1の一方の面の最表面層に熱によって転写可能な転写色材層2a、2b、2c、2dを有し、他方の面の最表面層に耐熱樹脂層3を有する。転写色材層2a、2b、2c、2dは基材フィルム1上にパターン化されている。
【0026】
本発明の熱転写シートにあっては、所望の画像がモノカラーである場合には、図1に示したように転写色材層として適宜選択した1色のみを形成してもよい。また、所望の画像がフルカラー画像である場合には、図2に示したように、転写色材層として、シアン、マゼンタ、イエローをそれぞれを選択し、必要があればブラックや光沢層、装飾層、保護層などを選択して、転写色材層をそれぞれパターン形成することができる。このときシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックといった色材層や光沢層、装飾層、保護層から選択される転写色材各層は所望の画像を得るためには、それぞれ異なる厚みの転写色材層をそれぞれ形成してもよい。
【0027】
本発明の熱転写シートにあっては、図2に示したようにパターン化された複数種の転写色材層2a、2b、2c、2dを有し、各転写色材層が異なる層厚を有する場合には、複数種の転写色材層2a、2b、2c、2dのうち最も層厚の厚い転写色材層2aが少なくとも1種類の有機材料からなるの粒子径が0.1μm以上2μm以下の範囲内である有機フィラーを含有することが好ましい。
【0028】
最も層厚の厚い転写色材層に有機フィラーを含有させることにより、巻き取り状態における転写色材層2に含まれるワックス成分等の低分子量成分の耐熱樹脂層への移行を防ぐことができ、熱転写時にサーマルヘッド上に出現するカスの発生を防ぐことができる。
【0029】
また、本発明の熱転写シートにあっては、転写色材層がパターン化された複数種の転写色材層からなる場合に、有機フィラーを含む最も層厚の厚い転写基材層が無機材料からなる無機フィラーをさらに含有し、且つ、無機フィラーの粒子径が有機フィラーの粒子径よりも小さいか、または、前記最も層厚の厚い転写色材層の層厚よりも小さいことが好ましい。
【0030】
有機フィラーを含む最も層厚の厚い転写基材層にさらに無機フィラーを含有させることにより、有機フィラーを含有し形成される転写色材層の熱収縮を防ぎ、熱転写時に発生する傾向にある熱転写シートの熱シワを防ぐことができる。また、転写色材層に無機フィラーを含有させることにより保存時の転写色材層と耐熱樹脂層の貼り付きをより防止することができる。しかし、高硬度である無機フィラーが最も層厚の厚い転写色材層表面から突出している場合には巻き取り状態での保存時において耐熱樹脂層が傷などの損傷を受ける場合がある。したがって、最も層厚の厚い転写色材層に無機フィラーを含有させる場合には、無機フィラーの粒子径を有機フィラーの粒子径よりも小さくするか、または、最も層厚の厚い転写色材層の層厚よりも小さくすることが好ましい。無機フィラーの粒子径を有機フィラーの粒子径よりも小さくするか、または、最も層厚の厚い転写色材層の層厚よりも小さくすることにより、無機粒子が最も層厚の厚い転写色材層表面から突出することを防ぎ、巻き取り状態での保存時に発生する耐熱樹脂層が傷の発生を抑制することができる。
【0031】
また、本発明の熱転写シートにあっては、耐熱樹脂層が少なくとも1種類の有機材料からなる有機フィラーを含有し、且つ、有機フィラーの粒子径が0.1μm以上2μm以下であることが好ましい。耐熱樹脂層にフィラーを含有させることにより耐熱樹脂層表面に凹凸を形成することにより、印画時にサーマルヘッドとの接触面積が小さくすることができ、印画時のサーマルヘッドに対する耐熱樹脂層の離型性が向上する。また、耐熱樹脂層に含まれるフィラー成分のうち1種類は、熱溶融性色材層に含有している粒子径が0.1μm以上2μm以下の範囲内である有機材料からなる有機フィーラーであることが好ましい。耐熱樹脂層に有機フィラー成分を含有させることで耐熱樹脂層の表面に熱溶融色材層と同等の凹凸が形成され、本発明の転写シートを巻き取り保存時での転写色材層に含有しているワックス成分等の低分子量成分の耐熱樹脂層への移行をさらに防止することができる。
【0032】
また、本発明の熱転写シートにあっては、転写色材層がワックス成分を含むことが好ましい。転写シートの転写色材層から耐熱樹脂層に移行する移行成分のうち、熱転写時にサーマルヘッドに発生するカスの中でもっとも問題となるのはワックス成分である。本発明にあっては、転写色材層がワックス成分を含む際に大きな効果を得ることができる。
【0033】
さらに詳細に本発明の熱転写シートについて説明する。本発明の熱転写シートは、昇華型熱転写シートである場合には、転写色材層として昇華性の染料を含む昇華性色材層を形成し、熱溶融型の熱転写シートである場合には、転写色材層として顔料などで着色した熱溶融性色材層を形成する。ワックス成分を用いるのは主に顔料を用いる熱溶融性色材層であるので、以下熱溶融型の熱転写シートの場合を説明するが、本発明は熱溶融型の熱転写シートのみに限定されるものではない。
【0034】
本発明の熱転写シートに用いる基材フィルムとしては、従来公知の熱転写シートの基材フィルムとして使用されているものと同等なものを使用することができ、機械的強度、耐熱性などを有することが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等の合成樹脂フィルム、及び、コンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類が挙げられる。特に、物性や加工性で適しているポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
これらの基材フィルムは単独で使用することも、または組み合わされた複合体として使用することも可能である。
【0035】
基材フィルムの厚さは、操作性、加工性を考慮し、2〜50μmの範囲のものが使用できるが、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2〜10μm程度のものが好ましい。基材フィルムは、基材フィルムと隣接する層との間の密着性を向上させるために、基材フィルムの一方または両方の面に易接着層を設けてもよい。易接着層に用いられる材料としては、基材フィルムと隣接する層の両方と親和性があるものが適当であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。易接着層の厚みはサーマルヘッドからの熱転写層への熱の移動を妨げない程度の厚みがよく、0.01〜1μm、より好ましくは0.05〜0.5μmである。易接着層は支持体上に公知の塗布方法で塗液を塗布することで形成することができる。また、基材フィルムを成膜する過程で同時に形成してもよい。また、易接着層を設けないで、基材フィルムの一方または両方の面に表面処理を施して密着性を向上させてもよい。上記表面処理としては薬品処理などの化学的処理や、コロナ処理やプラズマ処理、オゾン処理などの物理的処理などの公知の樹脂表面改質技術を適用することができる。これらの表面処理は1種類のみ行ってもよいし、2種類以上おこなってもよい。
【0036】
次に、転写色材層である熱溶融性色材層について説明する。熱溶融性色材層は顔料と樹脂成分を含み、さらに、ワックス成分、フィラーを含む。
【0037】
溶熱融性色材層に用いられる顔料としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。上記顔料としては、例えば、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料、カーボンブラック、群青、紺青などを用いることができる。これらの顔料を単体で使用しても、複数組み合わせて使用してもよい。上記熱溶融性色材層において、顔料は熱溶融性色材層の重量に対して5〜90重量%、好ましくは30〜70重量%であることが好ましい。ここでいう熱溶融性色材層の重量とは、熱溶融性色材層用塗液組成物に含まれる溶剤以外の全成分の総和である。
【0038】
熱溶融性色材層に用いられる樹脂成分としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。上記樹脂成分としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂等の耐熱性、色材移行性等に優れた樹脂が使用できる。
【0039】
熱溶融性色材層の樹脂成分のガラス転位点は、好ましくは60℃以上、より好ましくは110℃以上であることがよい。ガラス転位点が低い場合、印画不良を起こす可能性が高くなる。
【0040】
また、顔料と樹脂成分との重量比(顔料/樹脂)は、0.5〜3.0の範囲内であることが好ましい。0.5より小さい場合、顔料の濃度が小さくなるため、発色感度が不十分となり良好な熱転写画像が得られない場合がある。一方、3.0より大きい場合、樹脂成分に対する顔料の分散性が極端に低下するため、熱溶融性色材層の保存安定性が低下し易くなるため好ましくない。さらには、顔料と樹脂成分との重量比(顔料/樹脂)は、0.8〜1.5の範囲内であることがより好ましい。
【0041】
溶熱融性色材層に用いられるワックス成分としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。上記ワックス成分とは常温において固体であり、加熱によって溶融する物質である。例えば、カルナバロウ、木ロウ、蜜ロウ、シェラックワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、モンタン酸、モンタン酸エチレングリコールエステル、モンタン酸グリセリントリエステル、ポリエチレンワックス、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、硬化ひまし油、水素添加ひまし油、ジステアリルエポキシヘキサヒドロフタレート、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルシン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、N−オレイルパルミトアミド、N−ステアリルオレイルアミド、N−ステアリルエルカアミド、メチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド等が挙げられる。
【0042】
本発明の熱転写シートにあっては、転写色材層である熱溶融性色材層に含まれる有機フィラーの粒子径は0.1μm以上2.0μm以下の範囲内であることを特徴とする。熱溶融性色材層に用いられるフィラー成分としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。フィラー成分を含有させることで色材層の表面に凹凸が形成されるので、保存時の貼り付きを防止しワックス成分の裏面への移行を防ぎ、印画時の離型性を向上させることができる。フィラー成分は2種類以上の粒径の異なる無機フィラーまたは有機フィラーを含有し、少なくとも1種類以上のフィラーが有機フィラーであり、この有機フィラーの粒子径が0.1μm〜2μmであることが望ましい。有機フィラーの粒子径が0.1μmよりも小さい場合、保存時に耐熱樹脂層へのワックス成分の移行がおこりやすく、印画時にカスが発生しやすくなる。また2μmよりも大きい場合には、印画時の熱溶融性色材層の熱転写を阻害し、転写ムラや所望の濃度の印画物を得ることができない。また有機フィラーは無機フィラーと比較して、表面形状が滑らかで軟らかいため、保存時に、耐熱樹脂層への傷などの損傷を防ぐことができるため、保存時の熱溶融性色材層と耐熱樹脂層の貼り付きを効果的に防止することができる。
【0043】
熱溶融性色材層に含まれるフィラー成分において、有機フィラーとしては、シリコーンフィラー、フッ素樹脂フィラー、ポリエチレンフィラー、ポリプロピレンフィラー、ポリスチレンフィラー、ポリメチルメタクリレート樹脂フィラー、ポリウレタン樹脂フィラーなどを用いることができる。一方、無機フィラーとしては、シリカ粒子、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、カオリン、クレーを用いることができる。
【0044】
フィラー成分は熱溶融性色材層に対して0.01〜0.15の重量比で含まれることが好ましい。熱溶融性色材層が複数のフィラー成分を含む場合には、全フィラー成分は熱溶融性色材層に対して0.01〜0.15の重量比で含まれることが好ましい。ここでいう熱溶融性色材層の重量とは、熱溶融性色材層用塗液組成物に含まれる溶剤以外の全成分の総和である。重量比が0.01より小さい場合、本発明の効果が得られにくくなる。一方、重量比が0.15より大きい場合、印画時の色材層の熱転写を阻害し、転写ムラや所望の濃度の印画物を得ることができない場合がある。さらにフィラーの粒子径が0.1μm〜2μmである有機フィラーの重量比がフィラー成分全体の0.1〜0.5の範囲内であることがより好ましい。0.1より小さい場合、本発明の効果が得られにくくなる。0.5より大きい場合、印画時の色材層の熱転写を阻害し、転写ムラや所望の濃度の印画物を得ることができない場合がある。
【0045】
本発明の熱転写シートは所望の画像がモノカラーである場合には、色材として適宜選択した1色のみを色材層形成してもよいし、所望の画像がフルカラー画像である場合には色材として、シアン、マゼンタ、イエローをそれぞれを選択して、必要があればブラックや光沢層、装飾層、保護層を選択して、転写色材層である熱溶融性色材層をそれぞれ形成することができ、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックなどの各層は所望の画像を得るためには、それぞれ異なる厚みの層をそれぞれ形成してもよい。本発明の熱転写シートは巻き取り状態で保管するため、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック各層の厚みが異なる場合には層の最も厚みの厚い熱溶融性色材層で保存時にワックス成分が移行がもっとも起こりやすいため最も厚みの厚い熱溶融性色材層のみに上記フィラー成分を含有させることができる。
【0046】
本発明の熱転写シートにあっては、転写色材層を積層構造としてもよい。例えば、転写色材層を色材層と転写保護層の積層構造とすることができる。
【0047】
本発明の熱転写シートに用いる耐熱樹脂層はサーマルヘッドの熱による基材フィルムの熱収縮やサーマルヘッドとの摩擦による基材フィルムの破断を防止するために、基材フィルムの熱溶融性色材層を設けた面の反対側の表面に設けられる。耐熱樹脂層としては、従来公知の熱転写シートの耐熱樹脂層として使用されているものと同等なものを使用することができる。
耐熱樹脂層は樹脂成分を含み、樹脂成分としては、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アセタール系樹脂等を用いることができる。
【0048】
耐熱樹脂層の厚みは0.1〜2.5μmの範囲内であることが好ましい。耐熱樹脂層の厚みが0.1μmより小さい場合、サーマルヘッドからの耐熱性が劣り、印画時に基材フィルムの熱収縮が生じやすくなる。一方、2.5μmより大きい場合、サーマルヘッドからの熱が色材層に十分伝わらず、所望の濃度の印画物を得ることができない。さらには、耐熱樹脂層の厚みは0.5〜1.5μmの範囲内であることがより好ましい。
【0049】
また、樹脂成分のTgは40℃以上が好ましい。Tgが40℃以上の場合、印画時のリボン強度がさらに強くなり、耳切れつまりリボンの両サイドの非印画部が熱収縮に負けて切れる現象や、ちぎれ、裂けつまり印画部終点が切れる現象のような印画不良が起こりにくくなる。
【0050】
また、耐熱樹脂層にあってはすべり性を向上させる目的で界面活性剤などの滑剤を含有してもよい。例えば、滑剤を含有させることで、耐熱滑性層とサーマルヘッドとの間の動摩擦係数を小さくすることができるので、サーマルヘッドからの力による基材フィルムの変形を防止できる。
【0051】
耐熱樹脂層にあっては耐熱性を向上させる目的で架橋剤を併用してもよい。架橋剤を含有させることで耐熱滑性層の耐熱性が向上し、サーマルヘッドとの摩擦による基材の変形を防止できる。架橋剤としてはポリイソシアネートが挙げられ、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系のポリオール樹脂やセルロース系樹脂、アセタール樹脂等の組合せで用いられる。このとき、使用されるポリイソシアネートの添加量はNCO/OHの比で0.8以上であることが好ましく、特に0.8〜1.3の範囲内であることが好ましい。ポリイソシアネートの含有量が0.8未満の場合、架橋密度が低く耐熱性が不十分となる。一方、ポリイソシアネートの含有量が1.3を超える場合、耐熱滑性層に残った未反応のNCO基と空気中の水分、あるいは未反応のNCO基同士が反応し、造膜性の低い樹脂が形成されてしまうという問題が生じる。
【0052】
また、耐熱樹脂層はフィラー成分を含有してもよい。耐熱樹脂層にフィラーを含有させることにより耐熱樹脂層表面に凹凸が形成され、印画時にサーマルヘッドとの接触面積が小さくなるので、印画時のサーマルヘッドに対する耐熱樹脂層の離型性が向上する。耐熱樹脂層に含有させるフィラーは、有機材料からなる有機フィラーまたは無機材料からなる無機フィラーどちらでもよい。フィラー成分は具体的には、シリコーンフィラー、ポリエチレンフィラー、ポリメチルメタクリレート樹脂フィラー、ポリウレタン樹脂フィラー等の有機フィラー、シリカフィラー、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、カオリン、クレー等の無機フィラーを使用することができる。耐熱樹脂層にあっては、サーマルヘッドからの熱により変形しない無機フィラー成分を1種類以上含有することがより好ましい。また、上記フィラーは1種類でも2種以上を混ぜ合わせて使用してもよい。また、上記フィラー成分のうち1種類は、熱溶融性色材層に含有している粒子径が0.1μm〜2μmの有機フィーラー成分であることがより望ましい。当該有機フィラー成分を含有させることで耐熱樹脂層の表面に熱溶融色材層と同等の凹凸が形成され、本発明の転写シート保存時の熱溶融性色材層に含有しているワックス成分の耐熱樹脂層への移行をさらに防止できる。
【実施例】
【0053】
以下に、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0054】
<実施例1>
基材フィルムとして厚さ5μm (商品名:テトロンフィルム メーカー:帝人デュポンフィルム(株)製)のポリエステルフィルム上に耐熱性樹脂層作製用インキ組成物、詳しくはアクリルポリオール(商品名:アクリット6BT−307 大成ファインケミカル(株)製)、トルエン、メチルエチルケトン、イソシアネート(商品名:タケネートP20 三井化学ポリウレタン(株)製)、粒子径0.15μmのシリカを用いて耐熱性樹脂層を形成した。なお、基材フィルムへのコートはバーコーターを用いて基材上に1.0g/mとなるように塗布した後オーブンにて加熱乾燥させた。
次に、熱溶融性色材層作製用シアンインキ組成物、詳しくはフタロシアニンブルー、ポリビニルブチラールA (商品名:エスレックKS−1 積水化学工業(株)製)、エチレンビスラウリンリン酸アミド、ジイソシアネート、トルエン、メチルエチルケトン、粒子径1μmの12−ナイロンフィラーを用いて、耐熱樹脂層とは反対の面に熱溶融性色材層を形成した。塗布装置としてバーコーターを用い、塗布量が1.0g/mとなるように塗布した後、オーブンにて加熱乾燥させた。以上により実施例1の熱転写シートを作製した。
【0055】
<実施例2>
熱溶融性色材層作製用シアンインキ組成物にさらに粒子径0.15μmのシリカを用いた以外は実施例1同様に作製した。
【0056】
<実施例3>
耐熱性樹脂層作製用インキ組成物にさらに粒子径1μmの12−ナイロンフィラーを用いた以外は実施例2同様に作製した。
【0057】
<比較例1>
熱溶融性色材層作製用シアンインキ組成物に粒子径1μmの12−ナイロンフィラーを用いなかった以外は実施例1同様に作製した。
【0058】
<実施例4>
基材フィルムとして厚さ5μm (商品名:テトロンフィルム メーカ:帝人デュポンフィルム(株)製)のポリエステルフィルム上に耐熱性樹脂層作製用インキ組成物、詳しくはアクリルポリオール (商品名:アクリット6BT−307 大成ファインケミカル(株)製)、トルエン、メチルエチルケトン、イソシアネート(商品名:タケネートP20 三井化学ポリウレタン(株)製)、粒子径0.15μmのシリカを用いて耐熱性樹脂層を形成した。なお、基材フィルムへのコートはグラビアコーターを用いて基材上に1.0g/mとなるように塗布し、塗布後オーブンにて加熱乾燥させた。
次に熱溶融性色材インキ層は、熱溶融性色材層作製用インキ組成物、詳しくは顔料、ポリビニルブチラールA(商品名:エスレックKS−1 積水化学工業(株)製)、エチレンビスステアリン酸アミド、ジイソシアネート、トルエン、メチルエチルケトンを用いて、耐熱樹脂層とは反対の面にイエロー、マゼンダ、シアン、ブラックの順に形成した。このとき熱溶融性色材層作製用ブラックインキ組成物にのみ、粒子径1μmの12−ナイロンフィラーを含有させた。また、イエロー顔料としてはハンザイエロー10Gを用い、マゼンダ顔料としてはブリリアントカーミン6Bを用い、シアン顔料としてはフタロシアニンブルーを用い、ブラック顔料としてはカーボンブラックを用いた。塗布は枚葉式のグラビア試験機で印刷をおこないイエロー、マゼンダ、シアンは塗布量が1.0g/m、ブラックは塗布量が1.5g/mとなるように塗布したのち、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラック各1区画、計4区画分を1画面として400画面分をフィルム巻取り状態に加工した。以上により実施例1の熱転写シートを作製した。
【0059】
<実施例5>
熱溶融性色材層作製用ブラックインキ組成物にさらに粒子径0.15μmのシリカを用いた以外は実施例4同様に作製した。
【0060】
<実施例6>
耐熱性樹脂層作製用インキ組成物にさらに粒子径1μmの12−ナイロンフィラーを用いた以外は実施例5同様に作製した。
【0061】
<比較例2>
熱溶融性色材層作製用ブラックインキ組成物に粒子径1μmの12−ナイロンフィラーを用いなかった以外は実施例4同様に作製した。
【0062】
なお、実施例1〜6、比較例1〜2において用いたフィラーの粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いフィラーの粒子径の測定をおこない、20回測定をおこなった平均値をフィラーの粒子径とした。
【0063】
(試験及び結果1)
以上のようにして作製した、実施例1〜3と比較例1の熱転写シートを用いそれぞれ裏写り試験をおこなった。
【0064】
(裏写り試験)
作製した試料は5cm×5cmに断裁し、耐熱樹脂層面と熱溶融性色材層が重なるように10枚重ねたのちブロッキングテスターを用いて、200kg重の加重をかけて、23℃、30%で1ヶ月間保管した。保管後、テトラヒドロフラン溶媒を用いて耐熱樹脂層面の成分の抽出をおこない、液体クロマトグラフィー/質量分析装置(LC/MS)を用いてエチレンビスラウリン酸アミド(以下ワックス成分)の定量をおこなった。
【0065】
(試験及び結果2)
以上のようにして作製した、実施例4〜6と比較例2の熱転写シートを用いそれぞれ裏写り評価および走行試験をおこなった。
【0066】
(裏写り評価)
作製した熱転写しフィルムは、巻き取り状態で20℃、30%で1ヶ月間保管した。保管後、テトラヒドロフラン溶媒を用いて耐熱樹脂層面の成分の抽出をおこない、液体クロマトグラフィー/質量分析装置(LC/MS)を用いてワックス成分の定量をおこなった。抽出は、イエロー、マゼンダ、シアン、ブラックと接触していた耐熱樹脂面それぞれでおこない、平均値をワックス成分定量値とした。
【0067】
(印画走行試験)
印画機を用いて、サンプル画面を100画面分印刷した後のサーマルヘッドの外観を観察した。白色のカスが目視ではっきり付着しているのが確認できる場合はバツ印、ほとんど付着していない場合は三角印、付着していない場合は丸印とした。
【0068】
結果は以下の表1の通りとなった。印画走行試験でカスが目視ではっきり確認できる(バツ印)の比較例2と、カスが付着していない(丸印)とほとんど付着していない(三角印)の実施例4〜6は、裏移り評価においてワックス移行量が明らかに少なくワックスの移行量が少ないとカス発生が少なくなることがわかる。比較例1と比較して実施例1〜3は裏移り試験においてワックス移行量が明らかに少ないため、比較例1と比較して実施例1〜3では印画時のサーマルヘッドカス発生が少なくなると考えられる。また、実施例1、2と比較して実施例3はワックス移行量が少ないため、実施例3では実施例1、2と比較して印画時のサーマルヘッドカス発生が少なくなると考えられる。
【0069】
【表1】

【符号の説明】
【0070】
1 基材フィルム
2 転写色材層
2a 転写色材層
2b 転写色材層
2c 転写色材層
2d 転写色材層
3 耐熱樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に熱によって転写可能な転写色材層を有し、他方の面に耐熱樹脂層を有する熱転写シートであって、
前記転写色材層が少なくとも1種類の有機材料からなる有機フィラーを含有し、且つ、該有機フィラーの粒子径が0.1μm以上2μm以下の範囲内であることを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
前記転写基材層が無機材料からなる無機フィラーを含有し、且つ、該無機フィラーの粒子径が前記有機フィラーの粒子径よりも小さいか、または、前記無機フィラーの粒子径が前記転写色材層の層厚よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の熱転写シート。
【請求項3】
前記転写色材層がパターン化された複数種の転写色材層からなり、且つ、
複数種の転写色材層のうち最も層厚の厚い転写色材層が少なくとも1種類の有機材料からなる有機フィラーを含有し、且つ、該有機フィラーの粒子径が0.1μm以上2μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の熱転写シート。
【請求項4】
前記最も層厚の厚い転写基材層が無機材料からなる無機フィラーを含有し、且つ、該無機フィラーの粒子径が前記有機フィラーの粒子径よりも小さいか、または、前記無機フィラーの粒子系が前記最も層厚の厚い転写色材層の層厚よりも小さいことを特徴とする請求項3記載の熱転写シート。
【請求項5】
前記耐熱樹脂層が少なくとも1種類の有機材料からなる有機フィラーを含有し、且つ、該有機フィラーの粒子径が0.1μm以上2μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱転写シート。
【請求項6】
前記転写色材層がワックス成分を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の熱転写シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−208285(P2010−208285A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59629(P2009−59629)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】