説明

熱転写シート

【課題】 検知マークを基材に印刷形成する際の検知マークのインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また検知マークを染料層の位置と、別の領域に設けることなく、検知マークが染料層の位置と重なって形成されることによる熱転写画像のムラなどの品質不良を防止した熱転写シートを提供することを目的とする。
【解決手段】 基材2と、前記基材2上の一方の面に耐熱滑性層4が形成され、前記基材2の他方の面に少なくとも2つ以上の染料層11、12、13が面順次に形成されてなる熱転写シート1において、前記基材と染料層3の間、前記基材と耐熱滑性層の間の少なくとも一つで、染料層、耐熱滑性層の形成された位置と基材厚さ方向で重なる位置に、紫外線吸収剤を含有する検知層5を設けてなる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の面に耐熱滑性層が形成された基材の他方の面に少なくとも2つ以上の染料層が形成された熱転写シートで、検知層が染料層と重なって形成され、熱転写プリンターで、該検知層を読み取って、印画できる熱転写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、種々の熱転写記録方法が知られているが、それらの中でも、昇華転写用染料を記録材とし、これをポリエステルフィルム等の基材上に適当なバインダーで担持させた染料層を有する熱転写シート(昇華熱転写シート)から、昇華染料で染着可能な被転写材、例えば、紙やプラスチックフィルム等に染料受容層を形成した熱転写受像シート上に昇華染料を熱転写し、各種のフルカラー画像を形成する方法が提案されている。この場合には、加熱手段として、プリンターのサーマルヘッドによる加熱によって、3色または4色の多数の加熱量が調整された色ドットを熱転写受像シートの受容層に転移させ、該多色の色ドットにより原稿のフルカラーを再現するものである。このように形成された画像は、使用する色材が染料であることから、非常に鮮明で、かつ透明性に優れているため、得られる画像は中間色の再現性や階調性に優れ、従来のオフセット印刷やグラビア印刷による画像と同様であり、かつフルカラー写真画像に匹敵する高品質画像の形成が可能である。
【0003】
従来の昇華熱転写シートは、特許文献1に示すように、イエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層の3色、またはブラック染料層を加えた4色の染料層を面順次に繰り返し塗布し、3色または4色の染料層の各層に、あるいはイエロー等の印字開始の色の染料層の頭に、検知マークをカーボンブラック、アルミニウム等の顔料を用いたインキにより、印刷形成していた。そして、受像シートに、イエロー画像、マゼンタ画像、シアン画像、必要に応じてブラック画像を重ねて転写し、カラー画像を形成する。その際に、まず熱転写シートのイエロー染料層の検知マークを読み取り、そのイエロー染料層と受像シートの印字開始位置を合わせて、印字を始め、次にマゼンタ染料層と受像シートの印字開始位置を合わせて、印字を行う。この時は、熱転写シートを所定の長さを搬送すれば、マゼンタ染料層の位置を示す検知マークは必ずしも必要なく、同様にシアン染料層などを、印字開始位置を合わせて、カラー印字画像を形成していた。
【0004】
しかし、上記従来の熱転写シートでは、検知マークが黒色等の光透過性の低い、つまり隠蔽性の高いインキにより形成されているので、検知マークを基材に印刷して形成する際に、検知マークとしての正規の箇所だけでなく、インキ飛びなどにより、不要な箇所に印刷され、熱転写画像の欠陥になったりして、問題があった。さらに、上記従来の熱転写シートでは、染料層間に検知マークを形成する領域を余分に設ける必要があった。これは、検知マークが形成された領域をサーマルヘッドで加熱すると、検知マーク自体が熱転写するなど、本来形成するべき画像が形成出来ない虞がある為である。
【0005】
これに対して、特許文献2には、イエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層などを有する熱転写染料シートで、イエロー染料層内に、プリンターで検出可能な光学密度の差異を生じるバイナリーコードなどの印刷領域(検知マーク)を、イエロー染料層の厚さを変えて形成することで、人間の肉眼では知覚できないが、プリンターで検出できるようにしたことが、記載されている。これは、検知マークが、染料層の光学的濃度差を利用して形成したものである。
【0006】
しかし、この熱転写シートでは、熱転写される染料層で、検知マークを形成しているので、その染料層が転写されて形成される熱転写画像に、目視で知覚できないとしているが、実際は画像のムラが生じる可能性が高い問題がある。
【特許文献1】特開平5−155156号公報
【特許文献2】特表2009−541101号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、上記のような問題点を解決すべく、検知マークを基材に印刷形成する際の検知マークのインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また検知マークを染料層の位置と、別の領域に設けることなく、検知マークが染料層の位置と重なって形成されることによる熱転写画像のムラなどの画質不良を防止した熱転写シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の状況を鑑み、鋭意研究開発を進め、本発明は、特許請求の範囲の請求項1において、基材と、前記基材上の一方の面に耐熱滑性層が形成され、前記基材の他方の面に少なくとも2つ以上の染料層が面順次に形成されてなる熱転写シートにおいて、前記基材と染料層の間、前記基材と耐熱滑性層の間の少なくとも一つで、染料層、耐熱滑性層の形成された位置と基材厚さ方向で重なる位置に、紫外線吸収剤を含有する検知層を設けてなることを特徴とする。これにより、検知層が少なくとも2つ以上の染料層と重なった位置にあるので、検知層を染料層とは、別の領域に余分に設けるというムダがない。また、検知層(検知マーク)が染料層と重なって形成されることによる熱転写画像のムラなどの品質不良を防止できた。さらに、検知層を基材に印刷形成する際、検知層は黒色等の光透過性の低い、つまり隠蔽性の高いインキではなく、紫外線吸収剤を含有したインキにより形成されているので、検知層のインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥もない。
【0009】
本発明の請求項2として、前記の染料層として、少なくとも第1の染料層と第2の染料層を基材に面順次に設け、前記の第1の染料層と第2の染料層の形成された位置と基材厚さ方向で重なる位置に、紫外線吸収剤を含有する検知層を設け、該第1の染料層と重なる位置にある検知層は、前記第2の染料層と重なる位置にある検知層とは、異なるパターンであることを特徴とする。これにより、1つの染料層の検知層を、他の検知層と識別して検出し、すなわち印画開始位置を確実に検出することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上記の構成の熱転写シートにより、検知マークを基材に印刷形成する際の検知マークのインキ飛びなどによる熱転写画像の欠陥がなく、また検知マークを染料層の位置と、別の領域に設けることなく、検知マークが染料層の位置と重なって形成されることによる熱転写画像のムラなどの画質不良を防止できた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の熱転写シートの一つの実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明の熱転写シートの他の実施形態を示す概略図である。
【図3】本発明の熱転写シートの他の実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明の熱転写シートの他の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、発明の実施の形態について、詳述する。
図1は、本発明の熱転写シート1の一つの実施形態を示す概略図であり、図1(1)はその概略の平面図であり、図1(1)のX−Xの概略の断面図を図1(2)に示した。基材2の一方の面に耐熱滑性層4が形成され、前記基材2の他方の面にイエロー染料層11、マゼンタ染料層12、シアン染料層13の3つ(3色)の染料層3が面順次に形成され、前記基材2と前記イエロー染料層11との間に、イエロー染料層11の形成された位置と、基材厚さ方向で重なる位置に、紫外線吸収剤を含有する検知層5が形成されてなるものである。尚、図1では、イエロー、マゼンタ、シアンの3つの染料層3からなる染料層を示したが、これに限らず、イエロー、マゼンタ等の2つの染料層からなる染料層、あるいはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4つの染料層からなる染料層であってもよい。
【0013】
図2は、本発明の熱転写シート1の他の実施形態を示す概略図であり、図2(1)はその概略の平面図であり、図2(1)のX−Xの概略の断面図を図2(2)に示した。基材2の一方の面に耐熱滑性層4が形成され、前記基材2の他方の面にイエロー染料層11、マゼンタ染料層12、シアン染料層13の3色が面順次に繰り返し形成され、前記基材2と前記イエロー染料層11との間に、また前記基材2と前記マゼンタ染料層12との間に、また前記基材2と前記シアン染料層13との間に、それぞれ各染料層の形成された位置と、基材厚さ方向で重なる位置に、紫外線吸収剤を含有する検知層14、15、16が形成されてなるものである。検知層14は、検知層15、16とは、異なるパターンである。これにより、イエロー染料層11の検知層14を、他の検知層15、16と識別して検出し、つまり印画開始位置を確実に検出することができる。図示した検知層15と検知層16は同一のパターンであるが、検知層14と異なるパターンであれば、検知層15と検知層16は異なるパターンにすることができる。
【0014】
図3は、本発明の熱転写シート1の他の実施形態を示す概略図であり、基材2の一方の面に耐熱滑性層4が形成され、前記基材2の他方の面にイエロー染料層11、マゼンタ染料層12、シアン染料層13が面順次に形成され、前記基材2と前記の耐熱滑性層4との間に、イエロー染料層11、耐熱滑性層4の形成された位置と、基材厚さ方向で重なる位置に、紫外線吸収剤を含有する検知層14が形成されてなるものである。尚、図3では基材2と耐熱滑性層4との間に検知層14を設けたものを示したが、これに限らず、基材2と耐熱滑性層4との間と、さらに基材2と染料層3との間に、検知層を設けることができる。
【0015】
また、図4は、本発明の熱転写シート1の他の実施形態を示す概略図であり、基材2の一方の面に耐熱滑性層4が形成され、前記基材2の他方の面にイエロー染料層11、マゼンタ染料層12、シアン染料層13が面順次に形成され、前記基材2と前記イエロー染料層11との間に、イエロー染料層11の形成された位置と、基材厚さ方向で重なる位置に、紫外線吸収剤を含有する検知層14が形成され、さらに前記基材2と前記マゼンタ染料層12との間に、マゼンタ染料層12の形成された位置と、基材厚さ方向で重なる位置に、紫外線吸収剤を含有する検知層15が形成されている。図示した検知層14と検知層15は、異なるパターンである。尚、図4では基材2とシアン染料層13との間に、検知層を設けていないものであるが、基材2とシアン染料層13との間に、検知層15のパターンで検知層を設けてもよい。
【0016】
図1〜4で示した熱転写シートでは、基材と染料層の間、基材と耐熱滑性層との間に、直接、検知層を設けたものを示したが、基材/プライマー層/検知層/染料層で積層でき、また基材/プライマー層/検知層/耐熱滑性層で積層できる。また、検知層のパターンは、染料層が繰り返し設けられた方向、つまり熱転写記録の際の搬送方向に対して、略垂直な方向に、連続したストライプ状で示しているが、それに限らず、その略垂直な方向に、間欠したパターンで形成し、検知層を読み取るセンサーの位置に、検知層が存在するものであれば良い。
【0017】
以下に、本発明の熱転写シートを構成する各層について、詳しく説明する。
(基材)
本発明における基材2は、染料層などを保持する機能を有するものである。また、熱転写時には熱が加えられるため、加熱された状態でも取り扱い上支障のない程度の機械的強度を有する材料であることが好ましい。このような基材としては、従来公知のある程度の耐熱性と強度を有するものであればいずれも用いることができる。基材の材質は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、1,4−ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリサルホンフィルム、アラミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、セロハン、酢酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリエチレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ナイロンフィルム、ポリイミドフィルム、アイオノマーフィルム等の樹脂フィルムを用いることができる。基材の厚みは、0.5〜50μm程度、好ましくは3〜10μm程度のものを用いることができる。
【0018】
(耐熱滑性層)
本発明の熱転写シートは、基材シートの染料層の設けてある面と反対面に、サーマルヘッドの熱によるスティッキングやシワなどの悪影響を防止するため、耐熱滑性層4を設ける。上記の耐熱滑性層を形成する樹脂としては、従来公知のものであればよく、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、スチレンアクリレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルクロリド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂などを用いることができる。
【0019】
また、耐熱滑性層のサーマルヘッドとの滑性を高めるために、滑り剤を耐熱滑性層に含有させることが好ましい。この滑り剤の材料として、例えば、ポリエチレンワックス、シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド、燐酸エステル、アルキルリン酸エステルの多価金属塩、アルキルカルボン酸の金属塩、などを使用することができる。アルキルリン酸エステルの多価金属塩やアルキルカルボン酸の金属塩としては、ステアリル燐酸亜鉛やステアリン酸亜鉛を好適に使用できる。ポリエチレンワックスとしては、高密度および低密度ポリエチレンワックスがあり、低密度ポリエチレンは構造上、エチレン重合体で分岐が存在しているのが多く含まれ、これに対し、高密度ポリエチレンは比較的、ポリエチレンの直鎖状構造を主体に構成されているものである。例えば、密度が0.94〜0.97のポリエチレンワックス粒子(ポリエチレンワックスを粒状に微粉末化したもの)を好適に使用できる。
【0020】
耐熱滑性層の耐熱性をさらに高めるために、硬化剤を含有させ、上記の形成樹脂や滑り剤と反応する。このような硬化剤としては、特に制限なく従来公知のものを使用できるが、例えば、ポリイソシアネート樹脂を好適に使用することができる。それらの中でも、芳香族系イソシアネートのアダクト体を使用することが望ましい。このような芳香族系ポリイソシアネートとしては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、又は、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、trans−シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェートがあげられ、特に2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、又は、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物が好ましい。
【0021】
耐熱滑性層には、上記した成分以外にも、滑性の補助的な調整のために、無機または有機の微粒子が添加されていてもよい。無機微粒子としては、例えば、タルク、カオリン等の粘土鉱物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物、硫酸カルシウム等の硫酸塩、シリカ等の酸化物、グラファイト、硝石、窒化ホウ素等の無機微粒子が挙げられる。有機微粒子としては、アクリル樹脂、テフロン(登録商標)樹脂、シリコーン樹脂、ラウロイル樹脂、フェノール樹脂、アセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、ナイロン樹脂等からなる有機樹脂微粒子、またはこれらを架橋剤と反応させた架橋樹脂微粒子等が挙げられる。上記した無機または有機の微粒子のなかでもタルクを好適に使用することができる。また、市販されているものを使用してもよく、例えば、ミクロエースP−3(日本タルク工業株式会社製)等を好適に使用することができる。
【0022】
耐熱滑性層は、上記の成分を、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、キシレン等の適当な溶媒に溶解して、耐熱滑性層形成用インキとして、これをグラビアコーター、ロールコーター、ワイヤーバー等の慣用の適切な印刷方法で上述した基材上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
耐熱滑性層の厚さは固形分で0.05〜5μm、好ましくは0.1〜1μmであることが好ましい。この膜厚が0.05μmよりも薄い場合は、耐熱滑性層としての効果が十分ではなく、また1μmよりも厚いと染料層へのサーマルヘッドからの熱伝達が悪くなり、印字濃度が低くなるという欠点を生じる。
【0023】
(染料層)
染料層3は、サーマルヘッドからの加熱量に応じて、受容層に染料を転写する機能を有するものである。本発明では、基材上に少なくとも2つ以上の染料層、すなわち2色のみの染料層を形成したものであっても良く、また2色以上の染料層を面順次に繰り返し形成したものであっても良い。また、本発明の染料層は、樹脂と染料を含むものであり、その他の添加剤をさらに含むものであっても良い。
【0024】
染料層に含まれる樹脂は、染料やその他の添加剤を保持する機能を有するものであり、一般に、耐熱性を有し、染料と適度の親和性があるものを使用することができる。このような樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂;ポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド等のアクリル樹脂;ポリウレタン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリエステル系樹脂;等が挙げられる。上記した樹脂のなかでも、耐熱性、染料の移行性等が優れる観点から、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が好ましく、ビニル系樹脂がより好ましく、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール等が特に好ましい。
【0025】
染料層に用いられる昇華型の染料としては、特に限定されず、従来公知のものを使用することができる。このようなものとして、例えば、ジアリールメタン系染料;トリアリールメタン系染料;チアゾール系染料;メロシアニン染料;ピラゾロン染料;メチン系染料;インドアニリン系染料;アセトフェノンアゾメチン、ピラゾロアゾメチン、イミダゾルアゾメチン、イミダゾアゾメチン、ピリドンアゾメチン等のアゾメチン系染料;キサンテン系染料;オキサジン系染料;ジシアノスチレン、トリシアノスチレン等のシアノスチレン系染料;チアジン系染料;アジン系染料;アクリジン系染料;ベンゼンアゾ系染料;ピリドンアゾ、チオフェンアゾ、イソチアゾールアゾ、ピロールアゾ、ピラゾールアゾ、イミダゾールアゾ、チアジアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ジスアゾ等のアゾ系染料;スピロピラン系染料;インドリノスピロピラン系染料;フルオラン系染料;ローダミンラクタム系染料;ナフトキノン系染料;アントラキノン系染料;キノフタロン系染料;等が挙げられ、更に具体的には、特開平7−149062号公報に例示列挙された化合物等が挙げられる。
【0026】
上記染料層は、所望により、離型剤、無機微粒子、有機微粒子等の添加剤を使用してもよい。上記離型剤としては、シリコーンオイル、リン酸エステル等が挙げられる。無機微粒子としては、カーボンブラック、アルミニウム、二硫化モリブデン等が挙げられる。また、有機微粒子としては、ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0027】
染料層は、イエロー染料層、マゼンタ染料層、シアン染料層、ブラック染料層などを、適宜使用できるが、上記の染料の中から、希望する色相になるように、染料を選択して、染料層を形成すればよい。通常、イエロー、マゼンタ、およびシアン(必要に応じて、ブラックも追加する)の各染料層を選んで、フルカラー画像を形成する。
【0028】
上記した染料層は、上述の染料とバインダー樹脂とを、必要に応じて添加する添加剤とともに、適当な有機溶剤や水に溶解又は分散して塗工液を調製し、更に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の公知の手段により、上述した基材の一方の面に上記塗工液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。上記有機溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド〔DMF〕等が挙げられる。上記染料層の塗工量は、乾燥固形基準で0.2〜6.0g/m2、好ましくは0.2〜3.0g/m2程度である。
【0029】
(検知層)
検知層5は、紫外線(波長が、200〜400nmである)を照射して、紫外線吸収ピーク波長を選択的に透過するバンドパスフィルターを使用する等して、紫外線吸収剤を含有する検知層として、光学センサーで検出される。この検知層は、基材と染料層の間、基材と耐熱滑性層の間の少なくとも一つで、染料層、耐熱滑性層の形成された位置と基材厚さ方向で重なる位置に、設けられている。この検知層は、バインダー樹脂と紫外線吸収剤を有するものであり、その他の添加剤をさらに含むものであっても良い。これによって、検知層との重なりの有無によって、染料層の発色特性が変化する、つまり熱転写画像の濃淡や色ムラなどの品質不良を防止できる。
【0030】
紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤が挙げられ、例えば、具体的にはTinuvin P、Tinuvin 234、Tinuvin 320、Tinuvin 326、Tinuvin 327、Tinuvin 328、Tinuvin 312、Tinuvin 315(チバガイギー社製)、Sumisorb−110、Sumisorb−130、Sumisorb−140、Sumisorb−200、Sumisorb−250、Sumisorb−300、Sumisorb−320、Sumisorb−340、Sumisorb−350、Sumisorb−400(住友化学工業(株)製)、Mark LA−32、Mark LA−36、Mark 1413(アデカアーガス化学(株)製)等の商品名で市場から入手でき、いずれも本発明で使用することができる。
【0031】
また、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとがランダム共重合した、Tg(ガラス転移点)が60℃以上、好ましくは80℃以上のランダム共重合体を用いることもできる。上記の反応性紫外線吸収剤は従来公知のサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系等の非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、あるいはアルコール系水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入したものを使用することができる。具体的にはUVA635L、UVA633L(BASFジャパン(株)製)、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等の商品名で市場から入手でき、いずれも本発明で使用することができる。
【0032】
以上のような反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体における反応性紫外線吸収剤の量は10質量%〜90質量%、好ましくは30質量%〜70質量%の範囲である。また、このようなランダム共重合体の数平均分子量は5000〜250000の範囲が好ましく、更に好ましくは9000〜30000の範囲である。上記ランダム共重合体の数平均分子量は、市販のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定装置により分析出来る。
【0033】
検知層で使用するバインダー樹脂としては、上記の反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体の他には、例えば、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂等を用いることが出来る。上述した紫外線吸収剤、及び反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体は、各々単独で含有させてもよいし、両方を含有させてもよい。紫外線吸収剤、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体の添加量は、いずれも検知層に対し5質量%〜50質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0034】
検知層は、上述の材料を、必要に応じて添加する添加剤とともに、適当な有機溶剤や水に溶解又は分散して塗工液を調製し、更に、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング印刷法等の公知の手段により、上述した基材の一方の面に上記塗工液を塗布し、乾燥することにより形成することができる。検知層の塗工量は、乾燥固形基準で0.2〜10.0g/m2、好ましくは0.5〜5.0g/m2程度である。
【実施例】
【0035】
次に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
(実施例1)
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材の一方の面に、グラビアコーターを用い、下記耐熱滑性層用塗工液を固形分換算で1.0g/m2で、グラビアコーターにより、塗布、90℃で2時間乾燥させ、耐熱滑性層を形成した。
【0036】
<耐熱滑性層用塗工液>
・ポリビニルブチラール樹脂 4.55部
(エスレックBX−1、積水化学工業(株)製)
・ポリイソシアネート 21.0部
(バーノックD750−45、固形分45質量%、大日本インキ化学工業(株)製)
・リン酸エステル系界面活性剤 3.0部
(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・タルク(ミクロエースP−3、日本タルク工業(株)製) 0.7部
・メチルエチルケトン 100.0部
・トルエン 100.0部
【0037】
基材の他方の面に、グラビア印刷方式で、下記検知層塗工液1を固形分換算で0.8g/m2で塗工し、90℃で1分間乾燥させ、図1に示すパターンで、検知層5を形成した。その検知層上に、また検知層の無い部分は、基材上に、グラビア印刷により、イエロー染料層(Y)、マゼンタ染料層(M)、シアン染料層(C)を、図1に示すように形成した。染料層は、下記の染料層用塗工液(Y)、(M)、(C)を用いて、それぞれ固形分換算で0.05g/m2で塗布、乾燥して、実施例1の熱転写シートを作製した。
【0038】
<検知層塗工液1>
・ポリエステル樹脂 40.0部
(バイロン200 数平均分子量:17000、Tg:67℃ 東洋紡績(株)製)
・反応性紫外線吸収剤を反応結合した共重合樹脂
(BASFジャパン社製UVA−635L) 40.0部
・メチルエチルケトン 100.0部
・トルエン 100.0部
【0039】
<イエロー染料層用塗工液(Y)>
・分散染料(ホロンブリリアントイエロー−S−6GL) 5.5部
・バインダー樹脂 4.5部
(ポリビニルアセトアセタール樹脂KS−5、積水化学工業(株)製)
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
【0040】
<マゼンタ染料層用塗工液(M)>
・分散染料(MSレッドG) 1.5部
・分散染料(マクロレックスレッドバイオレットR) 2.0部
・バインダー樹脂 4.5部
(ポリビニルアセトアセタール樹脂KS−5、積水化学工業(株)製)
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
【0041】
<シアン染料層用塗工液(C)>
・分散染料(カヤセットブルー714) 4.5部
・バインダー樹脂
(ポリビニルアセトアセタール樹脂KS−5、積水化学工業(株)製) 4.5部
・リン酸エステル系界面活性剤 0.1部
(プライサーフA208N、第一製薬工業(株)製)
・ポリエチレンワックス 0.1部
・メチルエチルケトン 45.0部
・トルエン 45.0部
【0042】
(実施例2)
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材の一方の面に、グラビアコーターを用い、実施例1と同様にして、耐熱滑性層を形成した。
基材の他方の面に、グラビア印刷方式で、実施例1で使用した検知層塗工液1を固形分換算で0.8g/m2で塗工し、90℃で1分間乾燥させ、図2に示すパターンで、検知層14、15、16を形成した。その検知層上に、また検知層の無い部分は、基材上に、グラビア印刷により、イエロー染料層(Y)、マゼンタ染料層(M)、シアン染料層(C)を、図2に示す配置で、この順に面順次に繰返して形成した。各染料層(Y、M、C)は、実施例1で使用した各染料層(Y、M、C)用塗工液を用いて、それぞれ固形分換算で0.05g/m2で塗布、乾燥して、実施例2の熱転写シートを作製した。
【0043】
(実施例3)
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材の一方の面に、グラビア印刷方式で、実施例1で使用した検知層塗工液1を固形分換算で0.8g/m2で塗工し、90℃で1分間乾燥させ、図3に示すパターンで、検知層14を形成した。その検知層上に、また検知層の無い部分は、基材上に、実施例1で使用した耐熱滑性層用塗工液を固形分換算で1.0g/m2で、グラビアコーターにより、塗布、90℃で2時間乾燥させ、耐熱滑性層4を形成した。
基材の他方の面に、グラビア印刷方式で、実施例1で使用した各染料層(Y、M、C)用塗工液を用いて、図3に示す配置で、それぞれ固形分換算で0.05g/m2で塗布、乾燥して、イエロー染料層11、マゼンタ染料層12、シアン染料層13を面順次で繰り返し形成し、実施例3の熱転写シートを作製した。
【0044】
(実施例4)
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材の一方の面に、グラビアコーターを用い、実施例1と同様にして、耐熱滑性層を形成した。
基材の他方の面に、グラビア印刷方式で、実施例1で使用した検知層塗工液1を固形分換算で0.8g/m2で塗工し、90℃で1分間乾燥させ、図4に示すパターンで、検知層14、15を形成した。その検知層上に、また検知層の無い部分は、基材上に、実施例1で使用した各染料層(Y、M、C)用塗工液を用いて、図4に示す配置で、それぞれ固形分換算で0.05g/m2で塗布、乾燥して、イエロー染料層11、マゼンタ染料層12、シアン染料層13を面順次で繰り返し形成し、実施例4の熱転写シートを作製した。
【0045】
(比較例1)
厚さ6μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの基材の一方の面に、グラビアコーターを用い、実施例1と同様にして、耐熱滑性層を形成した。
基材の他方の面に、グラビア印刷方式で、イエロー染料層(Y)、マゼンタ染料層(M)、シアン染料層(C)を、この順に面順次に繰返して形成した。但し、各染料層の間には、15mm(染料層が繰り返し設けられた方向に対して、15mmの長さ)の余白で間隔をおいて、各染料層を形成した。その各染料層は、実施例2で使用した染料層(Y、M、C)用塗工液を用いて、それぞれ固形分換算で0.05g/m2で塗布、乾燥して、形成した。
【0046】
上記の各染料層の間の余白に、下記の検知マーク用塗工液を固形分換算で0.8g/m2で塗工し、90℃で1分間乾燥させ、比較例1の熱転写シートを作製した。
<検知マーク用塗工液>
・カーボンブラック 60部
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(#1000GK、電気化学工業(株)製)100部
・ウレタン樹脂(HMS−20、日本ポリウレタン(株)製) 100部
・メチルエチルケトン 160部
・トルエン 160部
【0047】
上記の作製した実施例1〜4の熱転写シートを、熱転写受像シートと組み合わせて、紫外線を照射して、紫外線吸収ピーク波長を選択的に透過するバンドパスフィルターを使用した検出器を搭載した熱転写プリンターを用いて、各熱転写シートの全ての検知マークと重なった染料層が熱転写受像シートに転写されるベタパターンで、印画した。その結果、実施例1〜4の全てで、検知マークを確実に検出して、印画でき、実施例1〜4で、イエロー、マゼンタ、シアンの各ベタの画像が重なって、ブラックの色相の画像がムラなどの画質不良なく、均一な画像で形成された。
【0048】
それに対し、上記の作製した比較例1の熱転写シートを、熱転写受像シートと組み合わせて、赤外線を使用した透過式センサーの検出器を搭載した熱転写プリンターを用いて、ベタパターンで、印画した。その結果、検知マークを検出して、印画できたが、比較例1の熱転写シートでは、染料層間に検知マークを形成する領域を余分に設けたもので、基材の長さをより長く使用して、資源のムダ使いであった。
【符号の説明】
【0049】
1 熱転写シート
2 基材
3 染料層
4 耐熱滑性層
5 検知層
11 イエロー染料層
12 マゼンタ染料層
13 シアン染料層
14、15、16 検知層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上の一方の面に耐熱滑性層が形成され、前記基材の他方の面に少なくとも2つ以上の染料層が面順次に形成されてなる熱転写シートにおいて、前記基材と染料層の間、前記基材と耐熱滑性層の間の少なくとも一つで、染料層、耐熱滑性層の形成された位置と基材厚さ方向で重なる位置に、紫外線吸収剤を含有する検知層を設けてなることを特徴とする熱転写シート。
【請求項2】
前記の染料層として、少なくとも第1の染料層と第2の染料層を基材に面順次に設け、前記の第1の染料層と第2の染料層の形成された位置と基材厚さ方向で重なる位置に、紫外線吸収剤を含有する検知層を設け、該第1の染料層と重なる位置にある検知層は、前記第2の染料層と重なる位置にある検知層とは、異なるパターンであることを特徴とする請求項1に記載する熱転写シート。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−1047(P2013−1047A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136847(P2011−136847)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】