説明

熱転写印刷方法

【課題】 印刷層を積層して印刷する際にも、印刷ズレを減少させることが出来る熱転写印刷方法を提供する。
【解決手段】サーマルヘッド14を非加熱状態で、中間転写フィルム15へ押圧する工程によって、中間転写フィルム15は、プラテンロール16の外周面16aに圧接されて、この中間転写フィルム15の背面側と、外周面16aとの間の隙間を減少させることができる。
このため、中間転写フィルム15は、プラテンロール16の外周面16aの湾曲した円筒形状に倣い、正確に位置決めされるので、熱転写インクによる中間転写フィルム15の被印刷面15aへの熱転写印刷の位置精度を向上させることができる。
中間転写フィルム15の各絵図によって構成された印刷層は、文字板等の被印刷物上に、そのまま、印刷意匠部として転写印刷される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、自動車等、車両に用いられるメータ装置等の表示装置に用いられる文字板等、透明フィルム母材にインク層を熱転写する熱転写印刷方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の表示装置に用いられる文字板等、母材となる透明フィルムに対して、転写される印刷意匠部としての絵図を、中間転写フィルムの印刷層として、予め印刷する為の熱転写印刷ユニット1を用いた熱転写印刷方法が、知られている(例えば、特許文献1,2等参照)。
【0003】
まず、構成について説明すると、この従来の熱転写印刷ユニット1では、図7に示すように、インクリボン供給機構12には、環状のリボン支持部材11が設けられていて、このリボン支持部材11によって、複数のインクリボン2〜9が支持されて、回転により、何れかのインクリボン2…等が、転写部10に供給されるように構成されている。
【0004】
このリボン支持部材11には、円環状を呈する外側面の周方向aに沿って、所定の間隔を有する複数のインクリボン2〜9が、配列されている。
【0005】
これらのインクリボン2〜9は、各カートリッジ内に各々異なる種類(異なる色彩等)の熱転写性インクが、インク保持面2a等に塗布されてなるリボン本体2b…等が、各々設けられている。
【0006】
また、これらの各リボン本体2bの各端部は、各々所定量、図8に示すように、一対の巻取側軸部材2c,及び繰出側軸部材2dによって、ロール状に巻き取られて格納されている。
【0007】
そして、これらの巻取側軸部材2c,及び繰出側軸部材2dの回動に応じて、これらのリボン本体2bが、ロール状に巻き取られた位置から引き出されて、前記インク保持面2aを、被印刷物の被印刷面側に向けて露出すると共に、所定の張力で張設されるように構成されている。
【0008】
また、このリボン支持部材11を回転駆動するインクリボン供給機構12は、リボン支持部材11の外周面16aの周方向aに沿って、装着された前記インクリボン2〜9を、回動自在に移動させることにより、何れか一つのインクリボン2…等を選択的に、転写部10の位置へ移送可能に構成されている。
【0009】
更に、この熱転写印刷ユニット1には、プラテンロール16を有する中間転写フィルム供給機構19が設けられている。
【0010】
この中間転写フィルム供給機構19のプラテンロール16は、その外周面16aの形状を略円筒形状としている。
【0011】
この外周面16aには、被印刷物としての中間転写フィルム15が、周方向cに沿って巻付けられていて、前記転写部10の位置では、前記何れかのインクリボン2…等のインク保持面2aに対向するように、前記中間転写フィルム15の被印刷面15aが、裏面側から支持される構成としている。
【0012】
前記中間転写フィルム15は、この中間転写フィルム15の長手方向である主走査方向(図10中矢印d方向)に、送り移動及び戻し移動されるように構成されている。
【0013】
更に、この熱転写印刷ユニット1の転写部10には、この転写部10に対向する位置に送り込まれた前記中間転写フィルム15の被印刷面15a方向に対して、前記何れかのインクリボン2…等のインク保持面2aが、平行に張設されるように、張力の調節を行うスライダ装置のプーリ13が設けられている。
【0014】
この熱転写印刷ユニット1には、サーマルヘッド14が設けられていて、図7中矢印b方向に沿って、直線状に摺動駆動されて、図7中二点鎖線位置である退避位置のサーマルヘッド14を、図7中実線位置である伸長位置に移動させることにより、所望の前記インクリボン2〜9のうち、何れかのリボン本体2b等が、このサーマルヘッド14の先端によって押し出されて、前記転写部10に対向する位置に存在する中間転写フィルム15の被印刷面15aに、前記インク保持面2aが圧接される。
【0015】
また、このサーマルヘッド14は、前記インクリボン2…等を押圧している状態で、図示省略のドライバユニットからの印字信号に応じて、画像パターンの形状に加熱が行われることにより、所望の文字若しくは、絵図を、前記中間転写フィルム15の被印刷面15aに印刷するように構成されている。
【0016】
このように構成された従来の熱転写印刷ユニットでは、まず、前記中間転写フィルム供給機構19のプラテンロール16に、前記中間転写フィルム15が、被印刷面15aを前記サーマルヘッド14側に対向させて装着される。
【0017】
そして、前記何れかのインクリボン2〜9が、選択的に前記転写部10に移送されると、この転写部10に位置するサーマルヘッド14が、例えば、インクリボン2…等のインク保持面2a等を、前記転写部10で、対峙した中間転写フィルム15の被印刷面15a方向に押圧して進出させる。
【0018】
この際、前記サーマルヘッド14は加熱されながら、前記インクリボン2のインク保持面2aが、プラテンロール16の外周面16aとの間に位置する中間転写フィルム15に圧接される。
【0019】
このため、インク保持面2aに保持されている熱転写性インクのうち、加熱された部分が、前記中間転写フィルム15の被印刷面15aに熱転写されて、所望の文字若しくは、絵図が、描画可能となる。
【0020】
次に、この従来の熱転写印刷ユニット1を用いた熱転写印刷方法の作用効果について、図9に示すフローチャートに沿って、説明する。
【0021】
まず、Step1で、インク種類別転写処理を、開始すると、Step2では、RAMの転写カウンタのカウント値M(初期値は「0」)が、「1」インクリメントされる。
【0022】
そして、次に、Step3では、図6に示す様な制御装置20に設けられたマイクロコンピュータ21から、ドライバユニット22を介して、接続されたDCサーボモータ23に対して、駆動指令信号が出力される。
【0023】
この駆動指令信号の出力によって、転写カウンタのカウント値Mに対応するインクリボン供給機構12のリボン支持部材11に装着されている何れかのインクリボン2〜9のうち、熱転写に用いる一つのインクリボン2…等が、前記転写部10の位置まで、移送される。
【0024】
次に、Step4では、被印刷物の印刷位置特定処理の間に、DCサーボモータ23のエンコーダ23aから入力された分を加味したエンコーダパルスの積算値に基づいて、前記インクリボン供給機構12により、実際に転写部10位置に移送されたインクリボン2〜9が、何れのインクリボン2…等であるかが特定される。
【0025】
そして、Step5では、退避位置のサーマルヘッド14を伸長位置に進出させるための駆動指令信号と、伸長位置のスライダを待避位置に待避させるための駆動指令信号とが、ドライバユニット25a,26aにそれぞれ出力される。
【0026】
これにより、対応するソレノイド25,26が動作して、転写部10に選択的に移送されたインクリボン2〜9のリボン本体2b等が、サーマルヘッド14に押されて転写部10に位置する中間転写フィルム15の被印刷面15aに、インク保持面2aを圧接させる。
【0027】
更に、スライダによって支持されたプーリ13が、転写部10に位置するインクリボン2…等の巻き取り側軸部材2cに圧接される。
【0028】
Step6では、外部記憶装置21aに記憶されているそれぞれの回転速度(回転トルク)で、DCサーボモータ33,43を回転させる駆動指令信号が、ドライバユニット32,42に出力されて、中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aと、巻取側ロール19bとが、それぞれ正転方向に回転駆動させる。
【0029】
これにより、正転した中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bに巻き取られる中間転写フィルム15が主走査方向に移動し、これに同期して転写部10のインクリボン2〜9が、中間転写フィルム15の移動速度と同じ速度で正方向に移動する。
【0030】
また、転写部10のインクリボン2〜9の巻取側軸部材2cが、前記プーリ13と共に正転することで、正方向に移動する転写部10に位置する何れかのインクリボン2〜9のリボン本体2b等に張力が付与される。
【0031】
更に、Step7では、中間転写フィルム15に圧接させたインクリボン2〜9の熱転写性インクの種類に対応する画像パターンのデータが、外部記憶装置21aから読み出されて、サーマルヘッド14のドライバユニット14aに、出力される。
【0032】
これにより、前記サーマルヘッド14は、加熱状態となり、インクリボン2のインク保持面2aから、中間転写フィルム15の被印刷面15aに、熱転写性インクが、画像パターンとして熱転写される。
【0033】
次に、Step8では、DCサーボモータ33を停止させる駆動指令信号が、ドライバユニット32に出力されると共に、Step9では、伸長位置のサーマルヘッド14を、退避位置に退避させるための駆動指令信号が、ドライバユニット26aに出力される。
【0034】
これにより、中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bの正転が停止すると共に、伸長状態のサーマルヘッド14が、待避状態に移行して、中間転写フィルム15の被印刷面15aから、リボン本体2bが、離間する。
【0035】
この時点では、前記巻取側軸部材2cに圧接されたプーリ13が、DCサーボモータ53の動力を受けて巻取側軸部材2cを正転させている。
【0036】
このため、中間転写フィルム15から離れたリボン本体2bは、繰出側軸部材2dとの間に弛みが、発生することがないように、前記巻取側軸部材2cに巻き取られる。
【0037】
続いて、Step10では、DCサーボモータ53を停止させる駆動指令信号が、ドライバユニット52に出力されると、Step11では、伸長位置のスライダをスライダ駆動装置によって、退避位置に退避させるための駆動指令信号が、ドライバユニット26aに出力される。
【0038】
これにより、転写部10の巻取側軸部材2cとプーリ13との正転が停止し、続いて、ソレノイド26の動作の終了によりプーリ13が、転写部10の巻取側軸部材2cから離間する。
【0039】
次に、Step12では、RAMの転写カウンタのカウント値Mが最大値である「8」に達したか否かが、確認される。
【0040】
「8」に達していない場合(N)は、Step13に進み、転写カウンタのカウント値Mが「8」に達した場合(Y)は、次のStep15に進む。
【0041】
Step13では、処理の開始から停止するまでの間にDCサーボモータ43を回転させた分に等しい回転量だけ、DCサーボモータ33を回転させる駆動指令信号を、ドライバユニット32に出力することにより、中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aを逆転させる。
【0042】
これにより、逆転した中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aに巻き戻される中間転写フィルム15が、主走査方向dの逆方向に移動し、インク種類別転写処理の開始時点の位置まで中間転写フィルム15が巻き戻される。
【0043】
そして、Step14では、転写部10に移送されたと特定されたインクリボン2〜9の巻取側軸部材2cに巻回されたリボン本体2b等の巻回量の最新値が割り出される。割り出された最新値は、外部記憶装置21aに記憶される。
【0044】
この最新値は、Step2からStep13までの一連の処理が行われている間に、DCサーボモータ53のエンコーダ53aから入力されたエンコーダパルスを用いて割り出すことができる。
【0045】
即ち、入力されたエンコーダパルスを用いて、Step4において実際に転写部10に移送されたと特定されたインクリボン2〜9の何れかに関するエンコーダ33aからのエンコーダパルスの積算値を更新し、更新後の積算値から、転写部10の巻取側軸部材2cに巻回されたインクリボン2〜9の巻回量の最新値を割り出すことができる。
【0046】
最新値が割り出されて外部記憶装置21aに記憶させたならば、ステップStep2へ戻る。
【0047】
また、Step12において、転写カウンタのカウント値Mが「8」に達した場合は、次のStep15に進み、中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bに巻回された中間転写フィルム15の巻回量と、転写部10に移送されたと特定されたインクリボン2〜9の巻取側軸部材2cに巻回されたインクリボン2…等の巻回量との、各最新値が割り出される。
【0048】
そして、割り出された各最新値は、外部記憶装置21aに記憶される。
【0049】
これらの最新値は、Step2からStep12までの一連の処理が行われている間に、各DCサーボモータ43のエンコーダ43aから、それぞれ入力されたエンコーダパルスを用いて割り出すことができる。
【0050】
即ち、各エンコーダ33a,43aからのエンコーダパルスの積算値と、Step4において実際に、転写部10に移送されたと特定されたインクリボン供給機構12に関する、エンコーダ23aからのエンコーダパルスの積算値とが、それぞれ更新される。
【0051】
そして、更新後の各積算値から、中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bに巻回された中間転写フィルム15の巻回量と、転写部10の巻取側ロール19bとに、巻回されたインクリボン2〜9の巻回量との、各最新値が、割り出される。
【0052】
各最新値を割り出して外部記憶装置21aに記憶させたならば、Step16で、一連のインク種類別転写処理が終了する。
【0053】
このように構成された従来の熱転写印刷ユニット1では、その前提として予め、複数の種類(色、及び、つや消し/有り)の熱転写性インクの画像パターンP1,P2,P3が、図10中、M=1,M=2,M=3に示すように、一旦、前記中間転写フィルム15に重ねられて熱転写される。
【0054】
そして、重ねられた複数種類の熱転写性インクの画像パターンP1,P2,P3が、前記中間転写フィルム15から最終の被印刷物である文字板に、同時にインク層として圧着転写されることで、所望のカラー画像の画像パターンが、被印刷物上の所望の位置に転写印刷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2008−39964号公報
【特許文献2】特公平8−5199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0056】
このように構成された従来の文字板の印刷構造では、印刷層を積層する際に、プラテンロール16の外周面16aに対して、中間転写フィルム15が動いたり、或いは、中間転写フィルム15に皺が寄ることにより、各インク層同士の相対位置が、移動して、画像パターンP1,P2,P3の重複部分等に印刷位置ズレが発生する可能性があった。
【0057】
そこで、この発明は、印刷層を積層して印刷する際にも、印刷ズレを減少させることが出来る熱転写印刷方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0058】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、プラテンロールの外周面に装着されたフィルム材に印刷層を形成する際に、該プラテンロール方向へ、該フィルム材を押圧しながら、熱転写性インクを加熱して、該フィルム材の被印刷面に、印刷意匠部を熱転写するサーマルヘッドを有する熱転写印刷方法であって、前記サーマルヘッドを非加熱状態で、前記フィルム材へ押圧する工程を有する熱転写印刷方法を特徴としている。
【0059】
また、請求項2に記載されたものは、前記サーマルヘッドを非加熱状態で、前記フィルム材を押圧する工程は、熱転写によって印刷意匠部が形成される被印刷面を有する中間転写フィルムに、該サーマルヘッドを非加熱で、当接させることにより、前記フィルム材をプラテンロールの外周面方向へ圧接させて行われる請求項1記載の熱転写印刷方法を特徴としている。
【0060】
更に、請求項3に記載されたものは、前記サーマルヘッドを非加熱状態として、被印刷面を有するフィルム材又は、熱転写される印刷意匠部を有する中間転写フィルムを押圧する工程と、熱を与えながら前記フィルム材又は、中間転写フィルムへ熱転写を行う熱転写工程とが、同一のサーマルヘッドを用いて行われる請求項1又は2記載の熱転写印刷方法を特徴としている。
【発明の効果】
【0061】
このように構成された請求項1記載のものは、前記サーマルヘッドを非加熱状態で、前記フィルム材へ押圧する工程によって、前記フィルム材は、前記プラテンロールの外周面に圧接されて、該外周面との間の隙間を減少させる。
【0062】
このため、前記フィルム材は、前記プラテンロールの外周面形状に倣い、該フィルム材の被印刷面に、前記印刷意匠部が熱転写される際に、前記各印刷層間の印刷ズレを減少させることが出来る。
【0063】
また、請求項2に記載されたものは、前記サーマルヘッドを非加熱状態で、前記フィルム材に対して押圧する工程が、熱転写によって印刷意匠部が形成される被印刷面を有する中間転写フィルムに、非加熱状態の該サーマルヘッドを当接させることにより行われる。
【0064】
このため、該中間転写フィルムが、前記プラテンロールの外周面方向へ圧接されることにより倣い、この中間転写フィルムの各印刷層間の印刷ズレが減少する。
【0065】
従って、該中間転写フィルムの印刷層が、そのまま転写されることにより、転写された先の印刷意匠部の外観品質を向上させることが出来る。
【0066】
更に、請求項3に記載されたものは、前記熱転写工程で、熱転写に使用されるサーマルヘッドを用いて、非加熱状態とすることにより、前記フィルム材又は、中間転写フィルムを押圧することにより、前記プラテンロールの外周面に圧接させて倣わせることが出来る。
【0067】
このため、熱転写工程に用いるサーマルヘッドと、同一のサーマルヘッドを用いることが出来るので、別途、各印刷層間の位置ヅレを減少させるための位置決め機構等を設ける必要が無く、製造コストの増大を抑制しつつ、印刷ズレを減少させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】この発明の実施の形態の熱転写印刷方法で用いる熱転写印刷ユニットの要部の構成を説明する模式的な側面図である。
【図2】この発明の実施の形態の熱転写印刷方法により印刷される中間転写フィルムで、M=1は、中間転写フィルムを、プラテンロールに倣わせる非加熱工程までの正面図、M=2は、被印刷面に第一印刷層を熱転写した様子を説明する正面図、M=3は、第一印刷層の上から第二印刷層を熱転写した様子を説明する正面図、M=4は、第二印刷層の上から第三印刷層を熱転写した様子を説明する正面図である。
【図3】この発明の実施の形態の熱転写印刷方法で、印刷工程を説明するフローチャートの一部である。
【図4】この発明の実施の形態の熱転写印刷方法を用いた印刷工程を説明し、図3中Aから連続するフローチャートの一部である。
【図5】この発明の実施の形態の熱転写印刷方法を用いた印刷工程を説明し、図4中Bから連続するフローチャートの一部である。
【図6】この発明の実施の形態の熱転写印刷方法に用いられる熱転写印刷ユニットの制御部の構成を説明する要部のブロック図である。
【図7】従来例の熱転写印刷方法で用いる熱転写印刷ユニットの要部の構成を説明する模式的な側面図である。
【図8】従来例の熱転写印刷方法で用いる熱転写印刷ユニットの一部の構成を説明し、インクリボンカートリッジの模式的な拡大側面図である。
【図9】従来例の熱転写印刷方法が適用された印刷工程を説明するフローチャートである。
【図10】従来例の熱転写印刷方法によって印刷される中間転写フィルムで、M=1は、被印刷面に第一印刷層を熱転写した様子を説明する正面図、M=2は、第一印刷層の上から第二印刷層を熱転写した様子を説明する正面図、M=3は、第二印刷層の上から第3印刷層を熱転写した様子を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
次に、図面に基づいて、この発明を実施するための実施の形態の熱転写印刷方法について、図1乃至図6を用いて説明する。
【0070】
なお、前記従来と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0071】
まず、この実施の形態の熱転写印刷方法が適用される熱転写印刷ユニット100の構成について説明する。
【0072】
この熱転写印刷ユニット100は、自動車の表示装置に用いられる文字板等、母材となる透過性又は半透過性の文字板基材に対して、後工程で転写される印刷意匠部としての絵図を、フィルム材としての中間転写フィルムの被印刷面に、複数の熱転写インクが積層された印刷層として、予め前工程で印刷する際に用いられるものである。
【0073】
図1に示すように、この実施の形態の熱転写印刷ユニット100は、主に、サーマルヘッド14と、被印刷面15aを有する中間転写フィルム15を装着するプラテンロール16が設けられた中間転写フィルム供給機構19と、このプラテンロール16に支持される中間転写フィルム15と、前記サーマルヘッド14との間に設けられた転写部10の位置に、複数のインクリボン2〜9のうち、何れか一つを供給するインクリボン供給機構112とを有して構成されている。
【0074】
このうち、前記インクリボン供給機構112には、複数のインクリボン2〜9が支持されていて、これらのインクリボン2…等を、回転により、順次、転写部10の位置に供給する環状のリボン支持部材11が設けられている。
【0075】
このリボン支持部材11は、円環状を呈する外側面を有して、この外側面の周方向aに沿って、所定の間隔を有して各インクリボン2〜9が、個別に配列されている。
【0076】
これらの各インクリボン2〜9は、従来の図8に示すインクカートリッジと略同様に、それぞれ異なる種類(異なる色彩等)の熱転写性インクが、各インク保持面2a…等に塗布されている各リボン本体2b…等を有している。
【0077】
また、これらの各リボン本体2b…の各端部が、各々所定量、図8中に示すように、一対の巻取側軸部材2c,及び繰出側軸部材2dによって、ロール状に巻き取られて格納された状態で、前記リボン支持部材11に各々装着されている。
【0078】
そして、これらの巻取側軸部材2c,及び繰出側軸部材2dの回動に応じて、これらのリボン本体2bが、ロール状に巻き取られた位置から引き出されて、前記インク保持面2aが、被印刷物として、熱転写によって印刷意匠部が形成される中間転写フィルム15の被印刷面15a側に、近接するように露出されて、図1中実線で示す様に、所定の張力で張設されるように構成されている。
【0079】
また、このインクリボン供給機構112には、DCサーボモータ23が設けられている。 このDCサーボモータ23は、図6に示す制御装置20に、ドライバユニット22を介して接続されていて、前記リボン支持部材11が、このDCサーボモータ23の回転駆動に応じて、回転するように構成されている。
【0080】
そして、このインクリボン供給機構112では、前記リボン支持部材11の周方向aに沿って、装着された前記インクリボン2〜9を回動移動させることにより、何れか一つを選択的に、転写部10の位置へ移送可能としている。
【0081】
また、前記中間転写フィルム供給機構19のプラテンロール16は、その外周面16aの形状を略円筒形状としている。
【0082】
この外周面16aには、被印刷物としての中間転写フィルム15が、周方向cに沿って巻付けられていて、前記転写部10の位置では、前記何れかのインクリボン2…等のインク保持面2aに対向するように、前記中間転写フィルム15の被印刷面15aが裏面側から支持される構成としている。
【0083】
このプラテンロール16の外周面16aに巻付けられた前記中間転写フィルム15は、この中間転写フィルム15の長手方向である主走査方向d(図2中に示す矢印d方向)に、送り移動及び戻し移動されるように構成されている。
【0084】
すなわち、この中間転写フィルム供給機構19には、繰出側ロール19aによって、送り出された中間転写フィルム15を、前記プラテンロール16の外周面16aのうち、約3/4周に渡り、巻付ける一対のガイドローラ19c,19dが設けられている。
【0085】
この実施の形態のガイドローラ19c,19dは、相互に近接する方向へ向けて、所定の張力が、付与されている。
【0086】
また、この中間転写フィルム供給機構19には、前記転写部10位置を通過した中間転写フィルム15が、前記ガイドローラ19cを通過した後、巻取られる巻取側ロール19bが設けられている。
【0087】
このうち、繰出側ロール19aは、図6に示すDCサーボモータ33の回転軸に連結されていて、所望の回転速度(回転トルク)で、正方向及び逆方向へ回転駆動可能に構成されている。
【0088】
また、前記巻取側ロール19bは、DCサーボモータ43の回転軸に連結されていて、所望の回転速度(回転トルク)で、正方向及び逆方向へ回転駆動可能に構成されている。
【0089】
これらのDCサーボモータ33,43は、ドライバユニット32,42を介して制御装置20に接続されている。
【0090】
この制御装置20には、マイクロコンピュータ21が設けられていて、外部記憶装置21aに記憶された回転速度(回転トルク)及び回転量に応じて、各駆動指令信号が生成されると共に、この駆動指令信号が、前記各ドライバユニット32,42に出力されて、中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aと、巻取側ロール19bとをそれぞれ正,逆回転させる。
【0091】
これらの繰出側ロール19aと、巻取側ロール19bとを各々回転駆動させるDCサーボモータ33及び43には、エンコーダ33a及び43aが設けられている。
【0092】
これらのエンコーダ33a及び43aは、前記DCサーボモータ33及び43の回転数及び回転角度を検出可能であると共に、検出された回転数及び回転角度を、回転数検出信号及び回転角度検出信号として、前記制御装置20のマイクロコンピュータ21に送出するように構成されている。
【0093】
そして、これらの繰出側ロール19a,及び巻取側ロール19bの回転駆動により、前記中間転写フィルム15の所望の被印刷面15aが、前記転写部10の位置まで移動されるように構成されている。
【0094】
この熱転写印刷ユニット100には、サーマルヘッド14が設けられていて、図1中矢印b方向に沿って、直線状に摺動駆動されることにより、図1中二点鎖線位置である退避位置のサーマルヘッド14を、図1中実線位置である伸長位置との間で、往復移動可能に構成されている。
【0095】
また、このサーマルヘッド14は、図6に示すように、ドライバユニット14aを介して、前記制御装置20のマイクロコンピュータ21に接続されていて、このマイクロコンピュータ21の制御信号に応じて、加熱状態及び非加熱状態に切り替え可能となるように構成されている。
【0096】
そして、このサーマルヘッド14によって、所望の色彩の前記インクリボン2〜9のうち、何れかのリボン本体2b等が、前記中間転写フィルム15の被印刷面15aに押圧されるように構成されている。
【0097】
更に、この熱転写印刷ユニット100の転写部10には、スライダ装置のプーリ13が、設けられている。
【0098】
このプーリ13には、図6中に示すDCサーボモータ53によって、スライド駆動されて、伸張及び待避させることにより、前記巻取側軸部材2cへの圧接力を調整可能な図示省略のスライダ装置が設けられている。
【0099】
また、このDCサーボモータ53は、エンコーダ53aによって、回転数及び回転角度が検出可能であると共に、ドライバユニット52を介して、制御装置20のマイクロコンピュータ21に接続されている。
【0100】
そして、このプーリ13をスライド駆動させることにより、この転写部10に対向する位置に送り込まれた前記中間転写フィルム15の被印刷面15a方向に対して、前記何れかのインクリボン2…等が、所望の張力に調整されて、前記インク保持面2aを、前記被印刷面15aに対して、略平行に張設するように構成されている。
【0101】
このため、このサーマルヘッド14の摺動駆動により、前記転写部10に対向する位置に存在するプラテンロール16の外周面16a方向に沿って装着された中間転写フィルム15の方向に、前記転写部10に位置するインクリボン2のリボン本体2bが、平行状態を維持したまま、押し出される。
【0102】
そして、図1中実線で示す様に、このリボン本体2bのインク保持面2aが、この中間転写フィルム15の被印刷面15aに圧接されるように構成されている。
【0103】
また、このサーマルヘッド14は、前記インクリボン2…等を押圧している状態で、接続されているドライバユニット14aに与えられた印字信号に応じて、画像パターンの形状に加熱可能となるように構成されている。
【0104】
更に、この実施の形態の制御装置20には、図6に示す様なマイクロコンピュータ21が設けられている。
【0105】
このマイクロコンピュータ21は、主に、CPU、ROM、RAM等から構成されて、このマイクロコンピュータ21に接続されるストレージデバイス又は、外部記憶装置21a若しくは、通信手段を介して接続された図示省略の他のホストコンピュータから送られてくる画像パターンのデータに応じて、この画像パターンを熱転写印刷するための駆動指令信号及び印字信号が、生成されるように構成されている。
【0106】
このマイクロコンピュータ21には、各ドライバユニット22,32,42,52が接続されて、前記各駆動指令信号を各々出力するように構成されている。
【0107】
これらの各ドライバユニット22,32,42,52には、DCサーボモータ23,33,43,53が接続されている。
【0108】
そして、これらの前記各ドライバユニット22,32,42,52は、各駆動指令信号によって指定された回転速度(回転トルク)のバイナリ値に応じたデューティー比を有するパルス状の駆動信号を、各DCサーボモータ23,33,43,53に出力するように構成されている。
【0109】
これらの各ドライバユニット22,32,42,52によって回転駆動されるDCサーボモータ23,33,43,53には、各々エンコーダ23a,33a,43a,53aが内蔵されている。
【0110】
これらの各エンコーダ23a,33a,43a,53aによって、各DCサーボモータ23,33,43,53の各回転数、回転方向、回転角度(回転方向の位相)及び回転速度(回転トルク)が、モニタリングされることにより、前記マイクロコンピュータ21に、フィードバック信号が、出力されるように構成されている。
【0111】
また、前記マイクロコンピュータ21には、前記ドライバユニット14aを介して、前記サーマルヘッド14が接続されている。
【0112】
そして、このドライバユニット14aには、前記マイクロコンピュータ21から、印字指令信号が出力されると共に、このドライバユニット14aでは、印字指令信号のON,OFFに応じて、サーマルヘッド14を加熱状態又は非加熱状態とする温度制御信号が生成されて、サーマルヘッド14に出力されるように構成されている。
【0113】
更に、このマイクロコンピュータ21には、ドライバユニット25aを介してソレノイド25が接続されている。
【0114】
このドライバユニット25aは、前記マイクロコンピュータ21からの駆動指令信号に応じて、このソレノイド25のコイルに出力される励磁電流を生成するように構成されている。
【0115】
そして、前記ドライバユニット25aから、前記ソレノイド25に対して、この励磁電流が出力されることにより、前記サーマルヘッド14を、前記プラテンロール16方向へ進出させて、伸張位置まで移動させるように構成されている。
【0116】
また、このマイクロコンピュータ21には、ドライバユニット26aを介してソレノイド26が接続されている。
【0117】
このドライバユニット26aは、前記マイクロコンピュータ21からの駆動指令信号に応じて、このソレノイド26のコイルに出力される励磁電流を生成するように構成されている。
【0118】
そして、前記ドライバユニット26aから、前記ソレノイド26に対して、この励磁電流が出力されることにより、前記サーマルヘッド14を、前記プラテンロール16から、離間する方向へ移動させて、待避位置となるように構成されている。
【0119】
次に、この実施の形態の熱転写印刷方法の作用効果について、説明する。
【0120】
このように構成された実施の形態の熱転写印刷ユニット100を用いて熱転写印刷方法を行う場合、まず、前記中間転写フィルム供給機構19に中間転写フィルム15が装着される。
【0121】
すなわち、前記中間転写フィルム15は、被印刷面15a側が、前記サーマルヘッド14に対向するように、前記プラテンロール16の外周面16aに沿って、約3/4周に亘り、巻付けられる。
【0122】
この中間転写フィルム15は、前記各ガイドローラ19c,19dによって、ガイドされながら、前記繰出側ロール19a,及び巻取側ロール19bに巻き取られて、前記中間転写フィルム供給機構19への装着が、概略完了する。
【0123】
この状態では、この帯状のインクリボン2〜9は、選択的に転写部10に移送されると、前記転写部10に配置されたサーマルヘッド14が、この転写部10に位置する何れかのインクリボン2…等のインク保持面2aを、前記転写部10に対峙した中間転写フィルム15の被印刷面15a方向に押圧することが可能となる。
【0124】
この際、前記サーマルヘッド14は加熱されている加熱状態、又は、非加熱状態で、前記インクリボン2のインク保持面2aを、プラテンロール16の外周面16aとの間に位置する中間転写フィルム15に圧接させることができる。
【0125】
このため、インク保持面2aに保持されている熱転写性インクのうち、加熱された部分が、前記中間転写フィルム15の被印刷面15aに熱転写されて、所望の文字若しくは、絵図を、描画可能となる。
【0126】
この実施の形態の熱転写印刷ユニット100は、従来と略同様に、他種類、例えば、前記各インクリボン2〜9のリボン本体2b等のインク保持面2a等には、それぞれ異なる種類の熱転写性インクが塗布されている。
【0127】
具体的には、つや消しのシアン(cyan)、マゼンタ(magenta)、イエロー(yellow)、ブラック(key plate)の各色の熱転写性インクと、つや有りのシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色の熱転写性インクとが、それぞれ1色ずつ、前記インク保持面2a等に塗布されている。
【0128】
なお、各インクリボン2〜9の長手方向と直交する幅方向の寸法は、中間転写フィルム15の主走査方向dと直交する副走査方向の寸法(中間転写フィルム15の幅方向寸法w:図2参照)とほぼ等しい。
【0129】
このため、中間転写フィルム15の副走査方向の全幅に亘って各インクリボン2〜9の熱転写性インクを熱転写することができる。
【0130】
次に、図3乃至図5に示すフローチャートを用いて、この実施の形態の熱転写印刷ユニット100を用いた熱転写印刷方法によって、転写される印刷意匠部としての絵図を、中間転写フィルム15の被印刷面15aに積層して、印刷層を形成する工程について説明する。
【0131】
まず、Step101で、インク種類別転写処理が、開始されると、Step102では、RAMの転写カウンタのカウント値M(初期値は「0」)が、「1」インクリメントされる。
【0132】
そして、次に、Step103では、図6に示す様な前記制御装置20に設けられたマイクロコンピュータ21から、前記ドライバユニット22に、駆動指令信号が、出力される。
【0133】
前記ドライバユニット22では、各駆動指令信号によって指定された回転速度(回転トルク)のバイナリ値に応じたデューティー比を有するパルス状の駆動信号が、DCサーボモータ23に出力される。
【0134】
このDCサーボモータ23の回転駆動により、インクリボン供給機構のリボン支持部材11に装着されている何れかのインクリボン2〜9のうち、転写カウンタのカウント値Mに対応して、熱転写に用いる一つが、前記転写部10の位置まで、移送される。
【0135】
次に、Step104では、被印刷物の印刷位置特定処理の間に、DCサーボモータ23のエンコーダ23aから、前記マイクロコンピュータ21に、フィードバック入力された分を加味したエンコーダパルスの積算値に基づいて、前記インクリボン供給機構112により、実際に転写部10位置に移送されたインクリボン2〜9が、何れかのインクリボン2…等であるかが特定される。
【0136】
そして、Step105では、退避位置のサーマルヘッド14を伸長位置に進出させるための駆動指令信号が、ドライバユニット25aに、また、伸長位置のスライダを待避位置に待避させるための駆動指令信号が、ドライバユニット26aにそれぞれ出力される。
【0137】
これにより、対応するソレノイド25,26が動作して、転写部10に選択的に移送されたインクリボン2〜9のリボン本体2b等が、伸長状態に移行するサーマルヘッド14に押される。
【0138】
サーマルヘッド14に押圧されたインクリボン2のインク保持面2aは、転写部10に位置する中間転写フィルム15の被印刷面15aに、圧接されるか、若しくは、サーマルヘッド14が、待避状態に移行することにより、前記被印刷面15aから、前記リボン本体2bが離間される状態となる。
【0139】
更に、前記マイクロコンピュータ21から、ドライバユニット52に、図示省略のスライダ駆動装置のスライダ伸長用又はスライダ待避用の駆動指令信号が出力される。
【0140】
このドライバユニット52では、スライダ伸長用の駆動指令信号が、前記スライダをスライド移動させて伸長させる出力信号に変換されて、DCサーボモータ53に送られることにより、ここでは、スライダが伸長される。
【0141】
このため、支持されたプーリ13が、転写部10に位置するインクリボン2…等の巻取側軸部材2cに圧接される。
【0142】
Step106では、外部記憶装置21aに記憶されているそれぞれの回転速度(回転トルク)で、DCサーボモータ33,43を回転させる駆動指令信号を、ドライバユニット32,42に出力して、中間転写フィルム供給機構19の巻取側軸部材2cとプーリ13とをそれぞれ正転させる。
【0143】
これにより、正転した中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bに巻き取られる中間転写フィルム15が、前記プラテンロール16の外周面16aと共に、主走査方向dに移動し、これに同期して、転写部10に位置するインクリボン2…等のリボン本体2bが、中間転写フィルム15の移動速度と同じ速度で正方向に移動する。
【0144】
また、前記巻取側軸部材2cが、前記プーリ13と共に正転することで、正方向に移動するリボン本体2bに張力が付与される。
【0145】
この張力は、繰出側ロール19aや巻取側ロール19bの構造上の個体差、及び、インクリボン2〜9の熱転写性インクの熱転写特性の違いに応じて可変可能で、前記転写部10に位置するインクリボン2…等に適した固有のものすることが出来る。
【0146】
更に、Step107では、中間転写フィルム15に圧接されたインクリボン2…等の熱転写性インクが、転写されないように、形状レスデータが、前記外部記憶装置21aから読み出されて、サーマルヘッド14のドライバユニット14aに出力される。
【0147】
これにより、前記サーマルヘッド14は、非加熱状態で、リボン本体2bのインク保持面2aを、中間転写フィルム15の被印刷面15aに押圧する。
【0148】
このため、前記中間転写フィルム15は、前記プラテンロール16の外周面16aに圧接されて、この中間転写フィルム15の背面側と、プラテンロール16の外周面16aとの間の隙間を減少させることが出来る。
【0149】
よって、前記中間転写フィルム15は、前記プラテンロール16の外周面16aの湾曲した円筒形状に倣い、前記熱転写インクによる中間転写フィルム15の被印刷面15aへの熱転写印刷の位置精度を向上させることができる。
【0150】
次に、Step108では、DCサーボモータ33を停止させる駆動指令信号が、ドライバユニット32に出力されると共に、Step109では、伸長位置のサーマルヘッド14を、退避位置に退避させるための駆動指令信号が、ドライバユニット26aに出力される。
【0151】
これにより、中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bの正転が停止すると共に、ソレノイド25の動作によって、サーマルヘッド14により、押圧されていた被印刷面15aを圧接するリボン本体2bが、ソレノイド26の動作によって、サーマルヘッド14の待避動作と共に、中間転写フィルム15から離間する。
【0152】
この時点では、転写部10の巻取側軸部材2cに圧接されたプーリ13が、DCサーボモータ33,43の動力を受けて巻取側軸部材2cを正転させている。
【0153】
このため、中間転写フィルム15から離れたインクリボン2〜9は、繰出側軸部材2dとの間に弛みが無くなるように、前記巻取側軸部材2cに巻き取られる。
【0154】
続いて、Step110では、DCサーボモータ53を停止させる駆動指令信号が、ドライバユニット52に出力される。
【0155】
そして、Step111では、伸長位置のスライダを退避位置に退避させるための駆動指令信号が、ドライバユニット26aに出力される。
【0156】
これにより、前記巻取側軸部材2cとプーリ13との正転が停止し、続いて、ソレノイド26の動作に伴って、プーリ13が、前記巻取側軸部材2cから離間する。
【0157】
次に、Step112では、処理の開始から停止するまでの間にDCサーボモータ43を回転させた分に等しい回転量だけ、DCサーボモータ33を回転させる駆動指令信号が、ドライバユニット32に出力されることにより、中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aを逆転させる。
【0158】
これにより、逆転した中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aに巻き戻される中間転写フィルム15が、主走査方向dの逆方向に移動し、インク種類別転写処理の開始時点の位置まで、中間転写フィルム15が巻き戻される。
【0159】
図4中Aに示すStep113では、前記転写部10に移送されたと特定されたインクリボン2の巻取側軸部材2cに巻回されたリボン本体2b等の巻回量の最新値が割り出される。割り出された最新値が、外部記憶装置21aに記憶される。
【0160】
この最新値は、Step102からStep113までの一連の処理が行われている間に、DCサーボモータ53のエンコーダ53aから出力されたエンコーダパルスを用いて割り出すことができる。
【0161】
即ち、入力されたエンコーダパルスを用いて、Step104において実際に転写部10に移送されたと特定されたインクリボン2〜9の何れかに関するエンコーダ33aからのエンコーダパルスの積算値が更新される。
【0162】
そして、更新後の積算値から、転写部10の巻取側軸部材2cに巻回されたインクリボン2〜9の巻回量の最新値を割り出すことができる。
【0163】
最新値が割り出されて外部記憶装置21aに記憶させたならば、ステップStep114へ進み、転写カウンタのカウント値Mを「1」にセットする。
【0164】
また、各エンコーダ33a,43aからのエンコーダパルスの積算値と、Step104において実際に、転写部10に移送されたと特定されたインクリボン供給機構112に関する、エンコーダ23aからのエンコーダパルスの積算値とが、それぞれ更新される。
【0165】
そして、更新後の各積算値から、中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bに巻回された中間転写フィルム15の巻回量と、転写部10の巻取側軸部材2cとに、巻回されたインクリボン2〜9の巻回量とが用いられて、各最新値が、割り出される。
【0166】
各最新値を割り出して外部記憶装置21aに記憶させたならば、Step115で、図6に示す前記制御装置20に設けられたマイクロコンピュータ21から、前記ドライバユニット22に、駆動指令信号が、出力される。
【0167】
前記ドライバユニット22では、各駆動指令信号によって指定された回転速度(回転トルク)のバイナリ値に応じたデューティー比を有するパルス状の駆動信号が、DCサーボモータ23に出力される。
【0168】
このDCサーボモータ23の回転駆動により、インクリボン供給機構のリボン支持部材11に装着されている何れかのインクリボン2〜9のうち、転写カウンタのカウント値Mに対応して、熱転写に用いる一つが、前記転写部10の位置まで、移送される。
【0169】
次に、Step116では、被印刷物の印刷位置特定処理の間に、DCサーボモータ23のエンコーダ23aから、前記マイクロコンピュータ21に、フィードバック入力された分を加味したエンコーダパルスの積算値に基づいて、前記インクリボン供給機構112により、実際に転写部10位置に移送されたインクリボン2〜9が、何れかのインクリボン2…等であるかが特定される。
【0170】
そして、Step117では、退避位置のサーマルヘッド14を伸長位置に進出させるための駆動指令信号が、ドライバユニット25aに、また、伸長位置のスライダを待避位置に待避させるための駆動指令信号が、ドライバユニット26aにそれぞれ出力される。
【0171】
これにより、対応するソレノイド25,26が動作して、転写部10に選択的に移送されたインクリボン2〜9のリボン本体2b等が、伸長状態に移行するサーマルヘッド14に押される。
【0172】
サーマルヘッド14に押圧されたインクリボン2のインク保持面2aは、転写部10に位置する中間転写フィルム15の被印刷面15aに、圧接されるか、若しくは、サーマルヘッド14が、待避状態に移行することにより、前記被印刷面15aから、前記リボン本体2bが離間される状態となる。
【0173】
更に、前記マイクロコンピュータ21から、ドライバユニット52に、図示省略のスライダ駆動装置のスライダ伸長用又はスライダ待避用の駆動指令信号が出力される。
【0174】
ここでは、このドライバユニット52から、スライダ伸長用の駆動指令信号が、前記スライダをスライド移動させて伸長させる出力信号に変換されて、DCサーボモータ53に送られる。
【0175】
この出力信号によって、スライダが伸長すると支持されたプーリ13が、転写部10に位置するインクリボン2…等の巻取側軸部材2cに圧接される。
【0176】
Step118では、外部記憶装置21aに記憶されているそれぞれの回転速度(回転トルク)で、DCサーボモータ33,43を回転させる駆動指令信号を、ドライバユニット32,42に出力して、中間転写フィルム供給機構19の巻取側軸部材2cとプーリ13とをそれぞれ正転させる。
【0177】
これにより、正転した中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bに巻き取られる中間転写フィルム15が、前記プラテンロール16の外周面16aと共に、主走査方向dに移動し、これに同期して、転写部10に位置するインクリボン2…等のリボン本体2bが、中間転写フィルム15の移動速度と同じ速度で正方向に移動する。
【0178】
また、前記巻取側軸部材2cが、前記プーリ13と共に正転することで、正方向に移動するリボン本体2bに張力が付与される。
【0179】
この張力は、繰出側ロール19aや巻取側ロール19bの構造上の個体差、及び、インクリボン2〜9の熱転写性インクの熱転写特性の違いに応じて可変可能で、前記転写部10に位置するインクリボン2…等に適した固有のものすることが出来る。
【0180】
更に、Step119では、中間転写フィルム15に圧接されたインクリボン2…等の熱転写性インクが、転写されるように、画像パターンデータが、前記外部記憶装置21aから読み出されて、サーマルヘッド14のドライバユニット14aに出力される。
【0181】
これにより、前記サーマルヘッド14は、加熱状態で、前記リボン本体2bのインク保持面2aが、図2中M=1に示されるような中間転写フィルム15の被印刷面15aに押圧される。
【0182】
この際、前記中間転写フィルム15は、前記プラテンロール16の外周面16aに圧接されていて、この中間転写フィルム15の背面側と、プラテンロール16の外周面16aとの間の隙間が減少している。
【0183】
よって、前記中間転写フィルム15は、前記プラテンロール16の外周面16aの湾曲した円筒形状に倣い、前記熱転写インクによる中間転写フィルム15の被印刷面15aへの熱転写印刷が行われる中間転写フィルム15の被印刷面15aが固定される位置の精度が良好である。
【0184】
前記中間転写フィルム15が、前記プラテンロール16の外周面16aと共に、主走査方向dに移動し、これに同期して、転写部10に位置するインクリボン2…等のリボン本体2bが、中間転写フィルム15の移動速度と同じ速度で正方向に移動しながら、前記サーマルヘッド14によって、加熱された熱転写インクは、図2中M=2に示すように、所望の画像パターンP1となって、転写印刷される。
【0185】
次に、Step120では、DCサーボモータ33を停止させる駆動指令信号が、ドライバユニット32に出力されると共に、Step121では、伸長位置のサーマルヘッド14を、退避位置に退避させるための駆動指令信号が、ドライバユニット26aに出力される。
【0186】
これにより、中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bの正転が停止すると共に、前記ソレノイド25の動作によって、サーマルヘッド14で押圧されていたリボン本体2bのインク保持面2aが、中間転写フィルム15の被印刷面15aから、このソレノイド26の待避動作によって、離間する。
【0187】
この時点では、転写部10の巻取側軸部材2cに圧接されたプーリ13が、DCサーボモータ33,43の動力を受けて巻取側軸部材2cを正転させている。
【0188】
このため、中間転写フィルム15から離れたインクリボン2〜9は、繰出側軸部材2dとの間に弛みが無くなるように、前記巻取側軸部材2cに巻き取られる。
【0189】
続いて、Step122では、DCサーボモータ53を停止させる駆動指令信号が、ドライバユニット52に出力される。
【0190】
そして、Step123では、伸長位置のスライダを退避位置に退避させるための駆動指令信号をドライバユニット26aに出力される。
【0191】
これにより、前記巻取側軸部材2cとプーリ13との正転が停止し、続いて、ソレノイド26の動作に伴って、プーリ13が、前記巻取側軸部材2cから離間する。
【0192】
次に、Step124では、処理の開始から停止するまでの間にDCサーボモータ43を回転させた分に等しい回転量だけ、DCサーボモータ33を回転させる駆動指令信号が、ドライバユニット32に出力されることにより、中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aを逆転させる。
【0193】
これにより、逆転した中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aに巻き戻される中間転写フィルム15が、主走査方向dの逆方向に移動し、インク種類別転写処理の開始時点の位置まで、中間転写フィルム15が巻き戻される。
【0194】
図5中Bに示すStep125では、前記転写部10に移送されたと特定されたインクリボン2の巻取側軸部材2cに巻回されたリボン本体2b等の巻回量の最新値が割り出される。割り出された最新値が、外部記憶装置21aに記憶される。
【0195】
この最新値は、Step114からStep125までの一連の処理が行われている間に、DCサーボモータ53のエンコーダ53aから出力されたエンコーダパルスを用いて割り出すことができる。
【0196】
即ち、入力されたエンコーダパルスを用いて、Step116において実際に転写部10に移送されたと特定されたインクリボン2〜9の何れかに関するエンコーダ33aからのエンコーダパルスの積算値が更新される。
【0197】
そして、更新後の積算値から、転写部10の巻取側軸部材2cに巻回されたインクリボン2〜9の巻回量の最新値を割り出すことができる。
【0198】
最新値が割り出されて外部記憶装置21aに記憶させたならば、ステップStep114へ進み、転写カウンタのカウント値Mが、「1」インクリメントされる。
【0199】
また、各エンコーダ33a,43aからのエンコーダパルスの積算値と、Step116において実際に、転写部10に移送されたと特定されたインクリボン供給機構112に関する、エンコーダ23aからのエンコーダパルスの積算値とが、それぞれ更新される。
【0200】
そして、更新後の各積算値から、中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bに巻回された中間転写フィルム15の巻回量と、転写部10の巻取側ロール19bとに、巻回されたインクリボン2〜9の巻回量との、各最新値が、割り出される。
【0201】
各最新値を割り出して外部記憶装置21aに記憶させたならば、Step127で、図6に示す前記制御装置20に設けられたマイクロコンピュータ21から、前記ドライバユニット22に、駆動指令信号が、出力される。
【0202】
前記ドライバユニット22では、各駆動指令信号によって指定された回転速度(回転トルク)のバイナリ値に応じたデューティー比を有するパルス状の駆動信号が、DCサーボモータ23に出力される。
【0203】
このDCサーボモータ23の回転駆動により、インクリボン供給機構のリボン支持部材11に装着されている何れかのインクリボン2〜9のうち、転写カウンタのカウント値Mに対応して、熱転写に用いる一つが、前記転写部10の位置まで、移送される。
【0204】
次に、Step128では、被印刷物の印刷位置特定処理の間に、DCサーボモータ23のエンコーダ23aから、前記マイクロコンピュータ21に、フィードバック入力された分を加味したエンコーダパルスの積算値に基づいて、前記インクリボン供給機構112により、実際に転写部10位置に移送されたインクリボン2〜9が、何れかのインクリボン2…等であるかが特定される。
【0205】
そして、Step129では、退避位置のサーマルヘッド14を伸長位置に進出させるための駆動指令信号が、ドライバユニット25aに、また、伸長位置のスライダを待避位置に待避させるための駆動指令信号が、ドライバユニット26aにそれぞれ出力される。
【0206】
これにより、対応するソレノイド25,26が動作して、転写部10に選択的に移送されたインクリボン2〜9のリボン本体2b等が、伸長状態に移行するサーマルヘッド14に押圧される。
【0207】
サーマルヘッド14に押圧されたインクリボン2のインク保持面2aは、転写部10に位置する中間転写フィルム15の被印刷面15aに、圧接されるか、若しくは、サーマルヘッド14が、待避状態に移行することにより、前記被印刷面15aから、前記リボン本体2bが離間される状態となる。
【0208】
更に、前記マイクロコンピュータ21から、ドライバユニット52に、図示省略のスライダ駆動装置のスライダ伸長用又はスライダ待避用の駆動指令信号が出力される。
【0209】
このドライバユニット52では、スライダ待避用の駆動指令信号が、前記スライダをスライド移動させて、待避させる出力信号に変換されて、DCサーボモータ53に送られることにより、スライダが待避位置に戻る。
【0210】
このため、支持されたプーリ13が、転写部10に位置するインクリボン2…等の巻取側軸部材2cに圧接される。
【0211】
Step130では、外部記憶装置21aに記憶されているそれぞれの回転速度(回転トルク)で、DCサーボモータ33,43を回転させる駆動指令信号を、ドライバユニット32,42に出力して、中間転写フィルム供給機構19の巻取側軸部材2cとプーリ13とをそれぞれ正転させる。
【0212】
これにより、正転した中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bに巻き取られる中間転写フィルム15が、前記プラテンロール16の外周面16aと共に、主走査方向dに移動し、これに同期して、転写部10に位置するインクリボン2…等のリボン本体2bが、中間転写フィルム15の移動速度と同じ速度で正方向に移動する。
【0213】
また、前記巻取側軸部材2cが、前記プーリ13と共に正転することで、正方向に移動するリボン本体2bに張力が付与される。
【0214】
この張力は、繰出側ロール19aや巻取側ロール19bの構造上の個体差、及び、インクリボン2〜9の熱転写性インクの熱転写特性の違いに応じて可変可能で、前記転写部10に位置するインクリボン2…等に適した固有のものすることが出来る。
【0215】
更に、Step131では、中間転写フィルム15に圧接されたインクリボン2…等の熱転写性インクが、転写されるように、画像パターンデータが、前記外部記憶装置21aから読み出されて、サーマルヘッド14のドライバユニット14aに出力される。
【0216】
これにより、前記サーマルヘッド14は、加熱状態で、前記リボン本体2bのインク保持面2aが、図2中M=2に示される意匠を有する中間転写フィルム15の被印刷面15aに押圧される。
【0217】
この際、前記中間転写フィルム15は、前記プラテンロール16の外周面16aに圧接されていて、この中間転写フィルム15の背面側と、プラテンロール16の外周面16aとの間の隙間が減少していて、前記繰出側ロール19a及び巻取側ロール19bの回転駆動が、複数回行われても、最初に前記プラテンロール16の外周面16aに倣った位置から、前記中間転写フィルム15が移動してしまう可能性が少ない。
【0218】
よって、前記中間転写フィルム15は、前記プラテンロール16の外周面16aの湾曲した円筒形状に倣い、前記熱転写インクによる中間転写フィルム15の被印刷面15aへの熱転写印刷が行われる中間転写フィルム15の被印刷面15aが固定された位置の精度保たれる。
【0219】
従って、前記中間転写フィルム15が、前記プラテンロール16の外周面16aと共に、主走査方向dに移動し、これに同期して、転写部10に位置するインクリボン2…等のリボン本体2bが、中間転写フィルム15の移動速度と同じ速度で正方向に移動しながら、前記サーマルヘッド14によって、加熱された熱転写インクは、図2中M=3…M=4に示すように、所望の画像パターンP2…P3となって、正確に重ねられた転写印刷が施される。
【0220】
次に、Step132では、DCサーボモータ33を停止させる駆動指令信号が、ドライバユニット32に出力されると共に、Step133では、伸長位置のサーマルヘッド14を、退避位置に退避させるための駆動指令信号が、ドライバユニット26aに出力される。
【0221】
これにより、中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bの正転が停止すると共に、ソレノイド25の動作によって、サーマルヘッド14により、押圧されて、被印刷面15aに圧接されていたリボン本体2bが、前記サーマルヘッド14の待避と共に、中間転写フィルム15から離間する。
【0222】
この時点では、転写部10の巻取側軸部材2dに圧接されたプーリ13が、DCサーボモータ33,43の動力を受けて巻取側軸部材2cを正転させている。
【0223】
このため、中間転写フィルム15から離れたインクリボン2〜9は、繰出側軸部材2dとの間に弛みが無くなるように、前記巻取側軸部材2cに巻き取られる。
【0224】
続いて、Step134では、DCサーボモータ53を停止させる駆動指令信号が、ドライバユニット52に出力される。
【0225】
そして、Step135では、伸長位置のスライダを退避位置に退避させるための駆動指令信号がドライバユニット26aに出力される。
【0226】
これにより、前記巻取側軸部材2cとプーリ13との正転が停止し、続いて、ソレノイド26の動作に伴って、プーリ13が、前記巻取側軸部材2cから離間する。
【0227】
次に、処理の開始から停止するまでの間にDCサーボモータ43を回転させた分に等しい回転量だけ、DCサーボモータ33を回転させる駆動指令信号が、ドライバユニット32に出力されることにより、中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aを逆転させる。
【0228】
これにより、逆転した中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aに巻き戻される中間転写フィルム15が、主走査方向dの逆方向に移動し、インク種類別転写処理の開始時点の位置まで、中間転写フィルム15が巻き戻される。
【0229】
Step136では、前記制御装置20に設けられたRAMの転写カウンタのカウント値Mが、最大値である「8」に達したか否かが、確認される。
【0230】
「8」に達していない場合(N)は、Step126に戻り、転写カウンタのカウント値Mが「8」に達した場合(Y)は、次のStep139に進む。
【0231】
Step139では、中間転写フィルム供給機構19の巻取側ロール19bに巻回された中間転写フィルム15の巻回量と、転写部10に移送されたと特定されたインクリボン2〜9の巻取側軸部材2cに巻回されたインクリボン2…等の巻回量との、各最新値が割り出される。
【0232】
そして、割り出された各最新値は、前記Step113と同様に最深値に更新されながら、随時、外部記憶装置21aに記憶される。
【0233】
前記Step136で、前記制御装置20に設けられたRAMの転写カウンタのカウント値Mが、最大値である「8」に達していない場合(N)、Step126に戻る前に、Step137では、処理の開始から停止するまでの間にDCサーボモータ43を回転させた分に等しい回転量だけ、DCサーボモータ33を回転させる駆動指令信号を、ドライバユニット32に出力することにより、中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aを逆転させる。
【0234】
これにより、逆転した中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19aに巻き戻される中間転写フィルム15が、主走査方向dの逆方向に移動し、インク種類別転写処理の開始時点の位置まで中間転写フィルム15が巻き戻される。
【0235】
また、Step138では、転写部10に移送されたと特定されたインクリボン2〜9の巻取側軸部材2cに巻回されたリボン本体2b等の巻回量の最新値が割り出される。割り出された最新値は、外部記憶装置21aに記憶される。
【0236】
そして、Step126に戻り、異なるインクリボン2〜9が用いられて、複数種類の熱転写性インクの画像パターンP1,P2,P3が、重ねられながら、熱転写される。
【0237】
このように構成された従来の熱転写印刷ユニット100では、その前提として予め、複数の種類(色、及び、つや消し/有り)の熱転写性インクの画像パターンP1,P2,P3が、図2中、M=1,M=2,M=3に示すように、一旦、前記中間転写フィルム15の被印刷面15aに重ねられて熱転写される。
【0238】
そして、複数種類の熱転写性インクの画像パターンP1,P2,P3が、重ねられると、図2中M=4に示す様な外観を有して、転写される印刷意匠部となり、前記中間転写フィルム15から最終の被印刷物である文字板に、インク層として圧着転写されることで、所望のカラー画像の画像パターンが、被印刷物上に、転写印刷される。
【0239】
上述してきた様に、この実施の形態の熱転写印刷方法では、前記サーマルヘッド14を非加熱状態で、前記中間転写フィルム15へ押圧する工程によって、前記中間転写フィルム15は、前記プラテンロール16の外周面16aに圧接されて、この中間転写フィルム15の背面側と、外周面16aとの間の隙間を減少させることができる。
【0240】
このため、前記中間転写フィルム15は、前記プラテンロール16の外周面16aの湾曲した円筒形状に倣い、前記熱転写インクによる中間転写フィルム15の被印刷面15aへの熱転写印刷の位置精度を向上させることができる。
【0241】
また、前記サーマルヘッド14を非加熱状態で、フィルム材に対して押圧する工程が、熱転写によって印刷意匠部が形成される被印刷面15aを有する中間転写フィルム15に、非加熱状態のサーマルヘッド14を当接させながら、前記中間転写フィルム供給機構19の繰出側ロール19a及び巻取側ロール19bを、回転駆動させて転写される工程を用いて行われる。
【0242】
各印刷層を構成する絵図P1,P2,P3は、中間転写フィルム15の厚さ方向寸法に比して充分に薄い印刷層を形成しているので、前記サーマルヘッド14によって、押圧される前記中間転写フィルム15は、毎回、略同一のスライド方向bの進出寸法で、略同一の押圧力が与えられて、前記外周面16aに押しつけられる。
【0243】
しかも、この実施の形態では、略同一厚さ寸法の前記インクリボン2のリボン本体2b…等を、加熱転写印刷時と同様に、非加熱状態でも、サーマルヘッド14によって、前記中間転写フィルム15と共に、外周面16aに押しつけている。
【0244】
このため、更に、位置を調整する条件が、各熱転写印刷回で同一となり、中間転写フィルム15が、前記プラテンロール16の外周面16a方向へ圧接されることにより倣った状態に保持されて、若しくは、毎回戻されて、この中間転写フィルム15の各印刷層を構成する熱転写性インクの画像パターンP1,P2,P3間の印刷ズレを、更に減少させることができる。
【0245】
従って、中間転写フィルム15の印刷層によって形成された位置精度の良好な画像パターンP1,P2,P3が、文字板等の被印刷物上に、そのまま、転写印刷される。
【0246】
このため、転写された先の文字板上の印刷意匠部の外観品質を更に、向上させることが出来る。
【0247】
更に、前記熱転写工程で、熱転写に使用されるサーマルヘッド14が用いられて、非加熱状態とすることにより、前記中間転写フィルム15が押圧されることにより、前記プラテンロール16の外周面16aに圧接させて倣わせることが出来る。
【0248】
このため、熱転写工程に用いるサーマルヘッド14と、同一のサーマルヘッド14を伸長及び待避させる差異に、通電状態か否かを切り替えて、加熱状態又は非加熱状態とするだけで、そのまま用いることが出来る。
【0249】
従って、別途、各印刷層間の位置ヅレを減少させるための位置決め機構や治具等を設ける必要が無く、製造コストの増大を抑制しつつ、印刷ズレを減少させることが出来る。
【0250】
他の構成、及び作用効果については、前記従来例と同様であるので、説明を省略する。
【0251】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態の熱転写印刷方法を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態の熱転写印刷方法に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0252】
例えば、前記実施の形態では、スピードメータ等の車両用計器の文字板に、熱転写印刷を施した熱転写印刷方法を示して説明してきたが、適用分野は、特にこれに限らず、例えば、タコメータ、補助表示メータ等の各種メータ装置単体若しくはこれらを組み合わせたコンビネーションメータ装置の文字板や、センタディスプレイ装置、サイドモニタ装置、バックモニタ装置の表示面に用いられて、少なくとも一部に意匠面を有する被印刷部材であれば、形状、数量及び材質や或いは、印画内容が特に限定されるものではない。
【0253】
また、この実施の形態では、前記転写部10が、プラテンロール16に対向する位置に配置されているが、特にこの構成に限らず、熱転写可能であれば、リボン支持部材11及びプラテンロール16等の数量、形状、大きさ及び材質が、どのようなものであっても良い。
【0254】
更に、この実施の形態の熱転写印刷ユニット100は、自動車の表示装置に用いられる文字板等、母材となる透過性の透明フィルム母材に対して、転写される印刷意匠部としての絵図を、フィルム材としての中間転写フィルムの被印刷面に、複数の熱転写インクが積層された印刷層として、予め印刷するものを示して印刷する工程を中心に説明して来たが、特にこれに限らず、例えば、熱転写インク若しくは、その他のインクを加熱して、母材としてのフィルム材の被印刷面に、直接、最終印刷物としての印刷意匠部となるように熱転写する等、サーマルヘッドを非加熱状態で用いる工程を有するものであれば、直接又は間接的にであるかや、或いは、サーマルヘッドを非加熱状態で用いる工程の順序が、特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0255】
この実施の形態の熱転写印刷方法は、車両の運転席近傍に配置されるスピードメータ、タコメータ等の車両用計器の文字板等、バックライト透過型の文字板に限らず、車両情報、車両周辺情報を表示する表示装置や、車載される各種計器機器に用いられると共に、車載以外でも、複数の印刷層が積層される熱転写印刷方法であれば、どのような印刷物に用いてもよいものである。
【符号の説明】
【0256】
100 熱転写印刷ユニット
14 サーマルヘッド
15 中間転写フィルム(フィルム材)
15a 被印刷面
16 プラテンロール
16a 外周面
P1,P2,P3 絵図(印刷意匠部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンロールの外周面に装着されたフィルム材に印刷層を形成する際に、該プラテンロール方向へ、該フィルム材を押圧しながら、熱転写性インクを加熱して、該フィルム材の被印刷面に、印刷意匠部を熱転写するサーマルヘッドを有する熱転写印刷方法であって、前記サーマルヘッドを非加熱状態で、前記フィルム材へ押圧する工程を有することを特徴とする熱転写印刷方法。
【請求項2】
前記サーマルヘッドを非加熱状態で、前記フィルム材を押圧する工程は、熱転写によって印刷意匠部が形成される被印刷面を有する中間転写フィルムに、該サーマルヘッドを非加熱で、当接させることにより、前記フィルム材をプラテンロールの外周面方向へ圧接させて行われることを特徴とする請求項1記載の熱転写印刷方法。
【請求項3】
前記サーマルヘッドを非加熱状態として、被印刷面を有するフィルム材又は、熱転写される印刷意匠部を有する中間転写フィルムを押圧する工程と、熱を与えながら前記フィルム材又は、中間転写フィルムへ熱転写を行う熱転写工程とが、同一のサーマルヘッドを用いて行われることを特徴とする請求項1又は2記載の熱転写印刷方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図10】
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