説明

熱転写受容シートの製造方法

【課題】染料熱転写プリンターに適し、中空粒子を含有する中間層を設けた熱転写受容シートにおいて、異物や繊維等に起因する濃淡ムラや白抜けの印画欠陥を改善した、低コスト、高感度、高画質の熱転写受容シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 セルロースパルプを主成分とするシート状支持体の少なくとも一方の面に、中空粒子を含有する中間層、画像受容層を順次形成した熱転写受容シートの製造方法において、中間層塗工工程および/または画像受容層塗工工程の前に、JIS Z 0237に基づくプローブタックが2.45〜7.84Nである粘着シートを用いて、粘着面が外向きになるように貼り付けられたロール表面に、中間層形成前および/または画像受容形成前のシート状支持体の表面を接触させて通過させる工程を設けた熱転写受容シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写シートと重ね合わせ、サーマルヘッドにより、熱転写シート(以下、単にインクリボンとも称する。)の染料を熱転写して画像を形成する熱転写受容シートの製造方法に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、特に染料熱転写プリンターに適し、シート状支持体と画像受容層の間に、中空粒子を含む中間層を有する熱転写受容シート(以下、単に受容シートとも称する。)の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年サーマルプリンターが注目され、特に鮮明なフルカラー画像がプリント可能な染料熱転写プリンターが注目されている。染料熱転写プリンターは、インクリボンの染料を含む染料層と、受容シートの染料染着性樹脂を含む画像受容層(以下、単に受容層とも称する。)とを重ね合わせ、サーマルヘッドなどから供給される熱により、染料層の所要箇所の染料を所定濃度だけ受容層上に転写して画像を形成するものである。インクリボンは、イエロー、マゼンタおよびシアンの3色、あるいはこれにブラックを加えた4色の染料層領域を順次有する。フルカラー画像は、インクリボンの各色の染料を受容シートに順に繰り返し転写することによって得られる。このような染料熱転写方式のプリンターでは、受容シートが枚葉の状態で供給されるのが一般的である。
【0003】
染料熱転写方式は、コンピューターによるデジタル画像処理技術等の発達により、記録画像の画質等が格段に向上し、その市場を拡大している。またサーマルヘッドの温度制御技術の向上にともない、プリントシステムの高速、高感度化への要求が高まっている。そのためサーマルヘッド等の加熱デバイスの発熱量を、如何に効率よく画像形成に利用するかが重要な技術課題となっている。またプリンターの低価格化、構造の簡略化等が要望されており、サーマルヘッドによる印画圧の低下や、ヘッド高寿命化等も技術課題となっている。現在、A6サイズ1枚を30秒以内で印画可能なプリンターも発売されており、今後も更に印画の高速化への要求が高まることが予想される。
【0004】
一般に、高画質、高濃度の画像を効率良く形成するために、支持体上に染料染着性樹脂を主成分とする受容層を設けた受容シートが用いられるが、支持体用基材として、通常のフィルムを使用すると、平滑性に優れるものの、サーマルヘッドからの熱が基材に逃げて記録感度の不足を生じたり、またフィルムでは十分なクッション性がないことから、インクリボンと受容シートとの密着性が不足して、濃度ムラ等が発生する。
この様な問題を解決するために、支持体として発泡フィルムを紙類等の芯材層と貼り合わせた支持体(例えば、特許文献1参照。)、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂を主成分とし、ボイド(空隙)構造を含む2軸延伸フィルム(合成紙)を紙類等の芯材層と貼り合わせた支持体等が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。これらの支持体を使用した受容シートは断熱性、平滑性に優れるが、紙のような質感が無いことやコスト高になる等の欠点がある。
【0005】
また、紙類を受容シートの支持体として使用すると、フィルム同様に記録感度が不足し、フィルムよりクッション性は若干よいものの、紙の繊維の疎密ムラに起因するインクリボンと受容層との密着ムラによって、印画の濃淡ムラが発生する傾向がある。そこで、転写濃度等の改善のために、紙支持体と受容層との間に中空粒子を含有する中間層を設けた受容シートが開示されている(例えば、特許文献3、4参照。)。この受容シートは、中空粒子含有層の断熱性やクッション性の向上効果により感度は改善されるが、中空粒子の影響を受けて受容シート表面に凹凸を生じる傾向がある。
【0006】
受容シート表面の凹凸の改善に関しては、中間層に用いられる中空粒子の平均粒子径や中空率を規定して、特定の表面粗さや光沢度等を有する受容シートが提案されている(例えば、特許文献5、6参照。)。また基材上に気泡層及び受容層を含む樹脂層を形成してなる受容シートに対して気泡層及び/又は受容層に平滑化処理を施し、平滑性を向上させた受容シートが提案されている(例えば、特許文献7参照。)。しかし受容シートの支持体には、ゴミ、異物等が表面、あるいは裏面に存在して、中間層、受容層の未塗工部や、塗工層の凹みなどの欠陥が生じ、画像を記録する際に画像の印画欠陥となり、商品価値を著しく低下させるという問題がある。
【0007】
また、ゴミ、異物等を除去する目的で、例えば、粘着性のあるゴムロールを用いる方法(例えば、特許文献8、9、10参照。)や、クリーニングシートを使用する方法(例えば、特許文献11参照。)が開示されている。しかしながら、上記のような粘着性のあるゴムロールを用いた場合、通常の埃、チリなどの異物は除去できるが、特に紙を支持体として用いた場合に発生する異物、つまり、支持体の抄紙工程におけるプレスパートのフェルトから脱毛した繊維等は除去することができず、紙の表裏面に残って核となり、その後の塗工工程で未塗工部となったり、塗工層の凹みを発生させて印画欠陥を生じる原因となる。繊維等は、紙の原料に含まれるサイズ剤などの内添薬品の作用により、紙面に比較的強固に付着しているためと考えられる。塗工工程で、欠陥部分を塗膜でカバーすることも考えられるが、毛羽立った状態で付着しているものもあり、完全に覆い尽くすことは実際には困難である。
【0008】
【特許文献1】特開昭61−197282号公報(第1頁)
【特許文献2】特開昭62−198497号公報(第1頁)
【特許文献3】特開昭63−87286号公報(第1−2頁)
【特許文献4】特開平1−27996号公報(第1−3頁)
【特許文献5】特開平9−99651号公報(第2−5頁)
【特許文献6】特開2001−39043号公報(第2−3頁)
【特許文献7】特開平6−210968号公報(第2−4頁)
【特許文献8】特開2003−327349号公報(第2頁)
【特許文献9】特開2002−28596号公報(第2頁)
【特許文献10】特開平11−60849号公報(第2頁)
【特許文献11】特開2000−312862号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、従来の受容シートの製造方法における前述の問題点を解消し、特に中空粒子を含有する中間層を設けた受容シートにおいて、ゴミ、異物に起因する画像欠陥を改善した、低コスト、高感度、高画質の受容シートの製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の内容を包含する。
(1)セルロースパルプを主成分とするシート状支持体の少なくとも一方の面に、中空粒子を含有する中間層、画像受容層を順次形成した熱転写受容シートの製造方法において、中間層塗工工程および/または画像受容層塗工工程の前に、JIS Z 0237に基づくプローブタックが2.45〜7.84Nである粘着シートを用いて、粘着面が外向きになるように貼り付けられたロール表面に、中間層形成前および/または画像受容形成前のシート状支持体の表面を接触させて通過させる工程を設けたことを特徴とする熱転写受容シートの製造方法。
(2)前記粘着シートの、JIS Z 0237に基づく粘着力が、370〜1200N/mである(1)項に記載の熱転写受容シートの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法を用いて製造された受容シートは、染料熱転写プリンターに適し、支持体が紙であるという質感があり、また、中空粒子を含有する中間層を有し、濃淡ムラや白抜け等がなく、低コスト、高感度、高画質記録が可能であり、さらに、異物等による印画欠陥がない、極めて品質の優れた受容シートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明において、異物、繊維による印画欠陥をなくすべく鋭意検討の結果、JIS Z 0237に基づくプローブタックが、2.45〜7.84Nの範囲である粘着シートを用い、この粘着シートを粘着面が外向きになるように貼り付けたロール(粘着ロールとも言う。)の表面に、中間層形成前および/または画像受容形成前のシート状支持体の表面を接触させて通過させることにより、シート状支持体を損壊することなく、ほとんどの異物、繊維が除去でき、印画欠陥のない高感度、高画質の画像が得られることが判明した。プローブタックは、さらに好ましくは、2.9〜5.9Nの範囲である。粘着シートのプローブタックが2.45N未満では、粘着力が不十分でフェルト繊維などを完全に除去することができない。一方、プローブタックが7.84Nを超えると、フェルト繊維は十分に除去することができるが、粘着シートが紙と過度に接着して、紙支持体を層間剥離させたり、破損させるおそれがあり、安定して製造できない。
プローブタックは、直径5mmのSUS製プローブ、接触速さ5cm/sec、接触時間0.1sec、接触加重0.98N/cmの条件で、n=5で測定し、平均値を採用した。
【0013】
本発明において、粘着ロールを用いたシート状支持体表面のクリーニング処理は、中間層塗工工程および/または受容層塗工工程の前に行われ、例えば中間層塗工工程の前とし ては、シート状支持体製造工程(抄紙工程)でもよく、好ましくは抄紙工程の直後や、中間層塗工工程の直前に行われる。また、受容層塗工工程の前とは中間層塗工後が含まれ、必要によりバリア層等の形成後でもよく、好ましくは受容層塗工工程の直前に行われる。勿論、中間層、バリア層、および受容層等すべての層の形成前にクリーニング処理を施してもよい。粘着ロールとしては、ロール自体が粘着力を有する材質で形成されていてもよく、またロール上に直接粘着層を設けてもよい。
【0014】
上記プローブタックの強度は、粘着剤の種類や、粘着シートの粘着剤層の厚さや塗工量等によりコントロールされる。粘着剤の種類にもよるが、一般的に塗工量は1〜30g/mの範囲で調整するのが好ましく、5〜25g/mがより好ましい。粘着層の厚さは1〜30μmの範囲で調整するのが好ましく、5〜20μmがより好ましい。また、粘着剤にイソシアネート系架橋剤あるいは、エポキシ系架橋剤を適宜添加することでも調整できる。
本発明に用いる粘着剤は、プローブタックが2.45〜7.84Nであれば特に制約はなく、アクリル系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤など各種粘着剤を用いることができる。また、形態も溶剤型粘着剤、エマルジョン型粘着剤、ホットメルト型粘着剤等の各種形態の粘着剤を用いることができる。さらに粘着剤中に、タッキファイヤー、可塑剤、消泡剤、防腐剤など各種助剤を適宜添加することも可能である。
【0015】
本発明において、粘着シート表面を、シート状支持体の片面だけでなく両面に接触させることや、1回だけでなく数回繰り返すことにより、より完全に異物、繊維等を除去することができる。さらに、ペーパーロールに貼り付けた粘着シートを数本設置して、シート状支持体の両面に、それぞれ数回ずつ接触できるようにすることにより、より効率よく除去することが可能である。図1は、シート状支持体の両面に、粘着シートの粘着面が接触するように設置した例であり、ペーパーロールC、D、E、Fの各々の表面に、粘着面が外側になるように粘着シートが貼り付けられており、シート状支持体は、巻取りAから繰り出されて、その両面に2回ずつ接触する。
【0016】
具体的には、抄紙したシート状支持体に中間層を設ける際の塗工機において、塗工工程の直前のペーパーロールや、乾燥工程の直後のペーパーロールに粘着シートを貼り付け、シート状支持体を通過させることで、シート状支持体に付着した異物等を除去することができる。また、中間層上に受容層を設ける際の塗工機においても同様に、塗工工程の直前のペーパーロールや、乾燥工程の直後のペーパーロールに粘着シートを貼り付け、中間層を設けたシート状支持体を通過させることでシート状支持体に付着した異物等を除去することができる。その他、平滑化処理工程や、必要寸法に断裁する工程においても同様に設置することで異物等を完全に除去できる。
【0017】
さらに、本発明に用いられる粘着シートの、JIS Z 0237に基づく粘着力を370〜1200N/mの範囲にすることで、除去した異物を粘着シートに強固に付着させておくことができ、より好ましくは450〜850N/mの範囲である。粘着力が370N/m未満では、繊維が粘着シートから離れ、再びシート状支持体に取られてしまうことがある。また、1200N/mを超えると、一般にプローブタックも大きくなり、紙支持体の場合には、必要以上に強く接着して、紙を層間剥離させたり、破損したりしてしまうことがある。
【0018】
本発明に使用される粘着シート用の支持体としては、セルロースパルプを主成分とする紙類や合成樹脂フィルム等が使用される。例えば、上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙等の紙類、または、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂を主成分としたフィルムまたはシートや、ポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を主成分とする多孔質単層延伸フィルム又は多孔質多層延伸フィルム(例えば、合成紙)等、およびこれらのフィルム同士、又はこれらのフィルムと他のフィルム及び/又は紙等とを積層貼着させた積層体等が適宜用いられる。
【0019】
本発明の受容シートの層構成は、少なくともシート状支持体、中間層、受容層を有し、以下、これらの層について詳細に説明する。
(シート状支持体)
本発明のシート状支持体としては、セルロースパルプを主成分とする紙基材が用いられ、例えば上質紙、コート紙、アート紙、キャスト塗被紙、少なくとも一方にポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂層を設けたラミネート紙、合成樹脂含浸紙、エマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、熱膨張性粒子を含有する発泡紙、板紙等のセルロースパルプを主成分とする紙類が好ましい。
【0020】
本発明のシート状支持体としては、受容層が形成される第1の基材層、粘着剤層、離型剤層、第2の基材層を順次積層した構成でもよく、ラベルタイプ(いわゆるステッカー、シールタイプ)の構造を有するシート状支持体も勿論使用可能である。
【0021】
本発明で使用されるシート状支持体は100〜300μmの厚さを有することが好ましい。因みに、厚さが100μm未満であると、その機械的強度が不十分となり、且つそれから得られる受容シートの剛度が小さく、変形に対する反発力が不十分となり、印画の際に生じる受容シートのカールを十分に防止できない場合がある。また厚さが300μmを超えると、得られる受容シートの厚さが過大となるため、プリンターにおける受容シートの収容枚数の低下を招くことや、或いは所定の収容枚数を収容しようとすると、プリンターの容積増大を招き、プリンターのコンパクト化を困難にする等の問題を生ずることがある。
【0022】
(中間層)
本発明においては、セルロースパルプを主成分とするシート状支持体の少なくとも片面に中間層を形成する。中間層は、接着剤樹脂と中空粒子とを主成分として多孔質構造を有し、クッション性が高いため、シート状支持体として紙を使用した場合にも高感度の受容シートが得られる。
【0023】
中間層に中空粒子を含有させることにより、受容シートに適度の変形自由度を与え、プリンターヘッド形状及びインクリボン形状に対する受容シートの追従性及び密着性が向上するので、低エネルギー状態でも受容層に対するプリンターヘッドの熱効率が向上し、印画濃度を高め、画質を改善することができる。また高速プリンターの高エネルギー印加操作において、インクリボンに発生するリボンしわに起因する印画不良も同時に防止することができる。
【0024】
中間層に中空粒子を含有させることにより、受容シートの断熱性が向上し、それにより受容層に対するサーマルヘッドの熱効率が向上するので印画濃度が上昇し、画質も改善される。また受容シートがプリンターのサーマルヘッド及び搬送ロールによる高い圧力を受けても、受容シート内部でこの応力を吸収することが可能となる為、受容シートの搬送ロールによる印画面のスパイク痕や凹みの形成に対する抵抗性が改善される。
【0025】
本発明の中間層において使用される中空粒子は、重合体材料により形成されたシェルと、それにより包囲されている1個以上の中空部とからなるものであり、その中空粒子の平均粒子径は0.5〜10μmであり、好ましくは0.8〜8μmである。発泡中空粒子の平均粒子径が0.5μm未満の場合には、得られる中空粒子の体積中空率が低い為、断熱性、クッション性が概して低くなる為に、感度及び画質向上効果が十分に得られないことがある。また平均粒子径が10μmを超えると、得られる中間層面の平滑性が低下して、受容シート表面の凹凸が増加して、熱転写画像の均一性が不十分で、画質が劣ることがある。
【0026】
また、本発明で使用する発泡中空粒子の最大粒子径は25μm以下が好ましく、より好ましくは20μm以下である。発泡中空粒子の最大粒子径が25μmを超えると、熱転写画像において、粗大粒子に起因する印画の濃淡ムラや白抜けが発生して、画質が劣ることがある。中空粒子の製造方法については格別の制限はないが、下記(イ)、(ロ)のようにして製造されたものの中から選ぶことができる。
(イ)熱膨張性物質を含む熱可塑性重合体材料を熱膨張させて製造された発泡中空粒子。
(ロ)重合体形成性材料をシェル形成性用材料として用い、かつ揮発性液体を気孔形成用材料として用いて、マイクロカプセル重合方法により製造されたマイクロカプセルから、前記気孔形成用材料を揮発逃散させて得られたマイクロカプセル状中空粒子。
【0027】
また、中空粒子として、熱膨張性物質を含有する熱可塑性物質からなる粒子を未発泡状態で使用し、受容シートの製造時の加熱工程、例えば乾燥工程の熱により発泡させて、発泡中空粒子を形成することも考えられる。しかし上記のように、受容シートの製造工程中の加熱により熱膨張性物質を含有する熱可塑性物質を発泡させると、均一な粒子径に発泡させることが難しく、熱膨張後の粒子径を厳密に管理できないため、中間層の表面は凹凸の大きい表面となり、平滑性が劣ることがある。前記のような中間層を有する受容シートは受容層表面の凹凸も大きくなる為、熱転写された画像の均一性が低下して画質が劣ることがある。従って、本発明においては、予め熱膨張性物質を含有する熱可塑性物質からなる粒子を熱膨張させて製造された既発泡状態の中空粒子が好ましく用いられる。
【0028】
熱膨張性物質含有熱可塑性物質を熱膨張させて製造された既発泡状態の中空粒子は、例えば熱膨張性芯物質として、n−ブタン、i−ブタン、ペンタン、及び/又はネオペンタンのような揮発性低沸点炭化水素を熱可塑性材料中に内包し、熱可塑性材料として塩化ビニリデン、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル等の単独重合体或いは共重合体等をカプセルシェル(壁)材として用いて得られた粒子に予め加熱等の処理を施す事により、所定の粒子径に熱膨張させ、既発泡状態の中空粒子としたものである。
【0029】
また上記のような熱膨張性物質含有熱可塑性物質を熱膨張させて製造された発泡中空粒子は、一般に比重が小さい為、その取扱い作業性及び分散性を更に向上させることを目的として、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン等の無機粉体を、熱融着により発泡中空粒子表面に付着させ、表面が無機粉体により被覆されている発泡複合中空粒子も本発明に使用できる。
【0030】
本発明で使用する中空粒子において、最大粒子径が25μmを超える粗大粒子を含まないようにする為には、一般的に正規分布の状態を示す中空粒子製造においては、平均粒子径の設定値を調節することで対応することが可能である。また粒子の分級工程を設けることによって、確実に粗大粒子を含有しない中空粒子を得ることができる。
なお、中空粒子の粒子径は、粒度分布測定器(商品名:SALD2000、島津製作所製)を用いて測定した値である。
【0031】
本発明で使用される中空粒子の体積中空率は30〜97%が好ましく、より好ましくは45〜95%である。中空粒子の体積中空率が30%未満の場合には、受容シート全体の感度向上効果が十分に発揮されない。また体積中空率が97%を超えると、中間層の塗膜強度が低下し、中間層が傷付き易くなり、外観が悪化することがある。
【0032】
なお中空粒子の体積中空率とは粒子体積に対する中空部分の体積の割合を示したものであり、具体的には中空粒子と貧溶媒からなる中空粒子分散液の比重、前記分散液における中空粒子の質量分率及び中空粒子のシェル(壁)を形成する重合体樹脂の真比重、及び貧溶媒の比重から求めることができる。また中空粒子の平均粒子径や体積中空率については、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)による断面写真観察から求めることが可能である。
【0033】
中間層における中空粒子の配合量は、中間層全体の全固形分質量に対する中空粒子質量の比率で30〜75%の範囲が好ましく、35〜70%の範囲がより好ましい。中間層全体の全固形分質量に対する中空粒子の質量比率が30%未満では、中間層の断熱性や、クッション性が不十分となり、感度及び画質向上効果が十分に得られないことがある。また中空粒子の質量比率が75%を超えると、得られる中間層用塗工液の塗工性が低下して、塗膜強度が不十分となることがあり、所望の効果が得られないことがある。
【0034】
中間層が、所望の断熱性、クッション性等の性能を発揮する為には、中間層の膜厚は20〜90μmが好ましく、さらに好ましくは25〜85μmである。中間層の膜厚が20μm未満では断熱性やクッション性が不足し、感度及び画質向上効果が不十分なことがある。また膜厚が90μmを超えると、断熱性やクッション性の効果が飽和し、それ以上の性能が得られないばかりか、経済的にも不利となることがある。
【0035】
本発明の中間層は中空粒子と接着剤樹脂を含有する。本発明の中間層用塗工液は、中空粒子の耐溶剤性を考慮すると、水性系塗工液であることが好ましい。従って接着剤樹脂は水性、有機溶剤性の両者が使用可能であるが、水性系樹脂であることがより好ましい。使用される接着剤樹脂としては特に限定されず、例えばポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂及びその誘導体、カゼイン、デンプン誘導体等の親水性高分子樹脂が成膜性、耐熱性、可撓性の観点から好ましく使用される。また(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等の各種樹脂のエマルジョンが、低粘度高固形分の水系樹脂として使用される。なお中間層の塗膜強度、接着性、塗工性の面から中間層に使用される接着剤樹脂は、上記の親水性高分子樹脂と各種樹脂のエマルジョンを併用することが好ましい。
【0036】
中間層には、必要に応じて各種の添加剤、例えば帯電防止剤、無機顔料、有機顔料、樹脂の架橋剤、消泡剤、分散剤、有色染料、離型剤、滑剤等の1種或いは2種以上を適宜選択して使用してもよい。
【0037】
(バリア層)
本発明においては、必要により中間層上にバリア層が設けられてもよく、このバリア層上に受容層が設けられる。このバリア層は、受容層用塗工液の溶媒が概してトルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤であり、有機溶剤浸透による中間層の中空粒子の膨潤、溶解による破壊を防ぐための障壁として有効である。また、中間層表面は中間層の中空粒子に起因する凹凸がある為、その上に設ける受容層も表面に凹凸を有することがあり、得られる画像はこの凹凸により、白抜けや濃淡ムラが多く、画像均一性や解像力に問題の生ずることがある。この不具合を改善する為に、柔軟性、弾力性のある接着剤樹脂を含有するバリア層を設けることは画像品質向上に有効である。
【0038】
このバリア層に使用される接着剤樹脂としては、フィルム形成能に優れ、有機溶剤の浸透を防止し、弾力性、柔軟性のある樹脂が使用される。具体的には、ポリビニルアルコール、澱粉、変成澱粉、カゼイン等の水溶性高分子、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、或いはそれらを併用した樹脂から形成される。
【0039】
また前記の中間層及びバリア層中には隠蔽性や白色性の付与、受容シートの質感を改良するために、無機顔料として、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、二酸化珪素、酸化アルミニウム、タルク、カオリン、珪藻土、サチンホワイト等の白色無機顔料や蛍光染料等を含有させてもよい。
【0040】
バリア層の固形分塗工量は0.5〜10g/mの範囲が好ましく、更に好ましくは1〜8g/mの範囲である。因みにバリア層固形分塗工量が0.5g/m未満ではバリア層が中間層表面を完全に覆うことができないことがあり、有機溶剤の浸透防止効果が不十分になることがある。一方、バリア層固形分塗工量が10g/mを超えると、塗工効果が飽和して、不経済であるばかりでなく、バリア層の厚さが過大となることによって中間層の断熱効果やクッション性が十分に発揮されず、画像濃度の低下を招くことがある。
【0041】
(受容層)
本発明の受容シートにおいて、中間層上に直接にあるいはバリア層を介して受容層が設けられる。受容層それ自体は既知の染料熱転写受容層であってもよい。受容層を形成する樹脂としては、インクリボンから移行する染料に対する親和性が高く、従って染料染着性の良い樹脂が使用される。このような染料染着性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体系樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は使用する架橋剤に対して反応性を有する官能基(例えば水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基等の官能基)を有していることが好ましい。
【0042】
またプリントの際にサーマルヘッドでの加熱によって、受容層とインクリボンとが融着することを防止する為に、受容層中に、架橋剤、離型剤、滑り剤等の1種以上が添加剤として配合されていることが好ましい。また必要に応じて、上記の受容層中に蛍光染料、可塑剤、酸化防止剤、顔料、充填剤、紫外線吸収剤等、帯電防止剤等の1種以上を添加してもよい。これらの添加剤は塗工前に受容層の形成成分と混合されてもよいし、また受容層とは別の塗被層として受容層の上及び/又は下に塗工されていてもよい。
【0043】
受容層の固形分塗工量は1〜12g/mが好ましく、より好ましくは3〜10g/mの範囲である。因みに受容層の固形分塗工量が1g/m未満では、受容層がバリア層表面を完全に覆うことができない場合があり、画質の低下を招くことや、サーマルヘッドの加熱により、受容層とインクリボンとが接着してしまう融着トラブルが発生することがある。一方、固形分塗工量が12g/mを超えると、効果が飽和して不経済であるばかりでなく、受容層の塗膜強度が不足することや、塗膜厚さが過大になることにより、中間層の断熱効果が十分に発揮されず画像濃度の低下を招くことがある。
【0044】
(裏面層)
本発明の受容シートは、シート状支持体の裏面(受容層が設けられる側とは反対側の面)に裏面層が設けられていてもよい。裏面層は接着剤として有効な樹脂を主成分とし、架橋剤、導電剤、融着防止剤、無機及び/又は有機顔料等を含んでいてもよい。
【0045】
本発明の裏面層には、接着剤として有効な裏面層形成用樹脂が用いられる。この樹脂は裏面層とシート状支持体との接着強度向上、受容シートのプリント搬送性、受容層面の傷付き防止、受容層面と接触する裏面層への染料の移行防止に有効なものである。このような樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等、及びこれらの樹脂の反応硬化物を用いることができる。
【0046】
本発明の裏面層には、シート状支持体と裏面層との接着性を向上させるため、適宜ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物等の架橋剤を裏面層塗工液中へ配合してもよい。配合比率としては一般に裏面層全固形分に対して1〜30質量%程度が好ましい。
【0047】
本発明の裏面層には、プリント搬送性の向上、静電気防止の為に導電性高分子や導電性無機顔料等の導電剤が添加されていてもよい。導電性高分子としてはカチオン型、アニオン型、ノニオン型の導電性高分子化合物があり、カチオン型高分子化合物としては、例えばポリエチレンイミン、カチオン性モノマーを含むアクリル系重合体、カチオン変性アクリルアミド重合体、及びカチオン澱粉等が挙げられる。またアニオン型高分子化合物としてはポリアクリル酸塩、ポリスチレンスルホン酸塩、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。導電剤の配合比率は一般に裏面層の全固形分に対して5〜50質量%程度が好ましい。
【0048】
また導電性無機顔料としては、酸化物及び/又は硫化物などの化合物半導体顔料および前記化合物半導体顔料を被覆した無機顔料等が挙げられる。化合物半導体としては酸化銅(I)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭化珪素などが例示される。また化合物半導体を被覆した無機顔料としては、半導体酸化錫を被覆した酸化チタン及びチタン酸カリウム等があり、形状として針状、球状の導電性無機顔料が市販されている。
【0049】
本発明の裏面層には必要に応じて、有機または無機フィラーを摩擦係数調整剤として配合することができる。有機フィラーとしては、ナイロンフィラー、セルロースフィラー、尿素樹脂フィラー、スチレン樹脂フィラー、アクリル樹脂フィラー等を使用することができる。無機フィラーとしては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等を用いることができる。例えばナイロンフィラーの場合、平均粒子径は1〜15μm程度が好ましく、その配合量は粒子径にもよるが裏面層全固形分に対して2〜30質量%程度が好ましい。
【0050】
裏面層には必要に応じて、滑剤、離型剤等の融着防止剤を含有することも可能である。例えば、融着防止剤としては、非変性及び変性シリコーンオイル、シリコーンブロック共重合体及びシリコーンゴム等のシリコーン系化合物、リン酸エステル化合物、脂肪酸エステル化合物、フッ素化合物等が挙げられる。また従来公知の消泡剤、分散剤、有色顔料、蛍光染料、蛍光顔料、紫外線吸収剤等を適宜選択して使用してもよい。
【0051】
裏面層の固形分塗工量は0.3〜10g/mの範囲内にあることが好ましい。より好ましくは1〜8g/mである。裏面層固形分塗工量が0.3g/m未満であると、受容シートが擦れた時の傷付き防止性が十分に発揮されず、また塗工欠陥が発生し、表面電気抵抗値が上がる場合がある。一方固形分塗工量が10g/mを超えると、効果が飽和して不経済である。
【0052】
本発明において、中間層、受容層、裏面層、バリア層等の各塗工層は、常法に従って形成され、各々、所要成分を含む塗工液を調製し、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、リップコーター、及びスライドビードコーター等の公知のコーターを使用して、シート状支持体の所定の面上に塗工し、乾燥後、必要に応じて加熱キュアーして形成することができる。
【0053】
例えば、中間層の場合には、少なくとも中空粒子及び接着剤樹脂の所要成分を含む中間層用塗工液を、前記のような公知のコーターを使用して、常法に従ってシート状支持体上に塗工し、乾燥して形成することができる。
中間層を塗工する際に、成型面を使用してもよく、金属板、金属ドラム、プラスチックフィルム等の寸法安定性が良好でかつ高平滑な面を有するものを用いてもよい。また必要に応じて成型面から中間層を剥離することを容易にする為に、成型面にステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸系離型剤、ポリエチレンエマルジョン等のポリエチレン系離型剤、ワックス、シリコーン等の離型剤が塗工されていてもよい。
【0054】
本発明の受容シートの製造方法において、平滑化処理工程を含むことが好ましい。
平滑化処理は、一定のクリアランスを設けた、加熱ロールとプレスロールからなる一対のロール間に受容シートを通して受容シート表面の凹凸を減少させて平滑にするカレンダー処理を行うことが好ましい。この際、一対のロール間に熱と圧力を加えることができる。
平滑化処理は、シート状支持体表面、中間層表面、バリア層表面、受容層表面等のいずれでも良い。特に中間層表面、受容層表面に平滑化処理を施すことが好ましい。また平滑化処理は2種以上の表面に対して行うことも勿論可能である。
【0055】
平滑化処理に使用されるカレンダー装置やニップ圧、ニップ数、加熱ロール表面温度等の種々の処理条件については特に限定されるものではないが、使用されるカレンダー装置としては、例えばスーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー、マシンカレンダー等の一般に製紙業界で使用されているカレンダー装置を適宜使用できる。
【0056】
平滑化処理の好ましいニップ圧力条件としては、例えば0.2〜150MPaであり、より好ましくは0.3〜100MPaである。またニップ部での受容シートの滞留時間はプレスロールの硬さ、カレンダーの線圧、処理速度の影響が大きいが、5〜500m秒の範囲が好ましい。加熱ロールの温度条件としては、室温から、平滑化処理を行う塗工層の接着剤の融点以下の温度範囲が好ましく、例えば20〜150℃、更に好ましくは30〜120℃である。また加熱ロールの表面粗さは、JIS B 0601に基くRa値が0.01〜5μmであることが好ましく、更に好ましくは0.02〜1μmの範囲である。
【0057】
本発明の受容シートの製造方法において、前記平滑化処理工程に引続いて、直ちに加圧開放の状態で、加熱ロールに受容シートを接触させ加熱する厚さ復元処理工程を含んでいてもよい。受容シートは加熱ロールとプレスロールからなる一対のロール間で形成される加圧状態のニップ部を通すことで平滑化処理されると、平滑度は向上するが、受容シートの内部、特に中間層が圧縮されて厚さが減少する。この受容シートをニップ部通過後直ちに加圧開放の状態で加熱ロールと接触させると、特に中間層が膨張し、厚さが増加するため、中間層全体の密度が減少し、受容シートの印画濃度を高めることが可能となる。
【0058】
厚さ復元処理工程における加熱ロールの温度は、前記平滑化処理における加熱ロールの条件と同一でもよく、20〜150℃が好ましく、更に好ましくは30〜120℃の範囲である。また受容シートと加熱ロールとの接触時間は0.5秒以上が好ましく、更に好ましくは1秒以上である。
【実施例】
【0059】
下記実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において、特に断らない限り「%」及び「部」は、溶剤に関するものを除き、固形分の「質量%」及び「質量部」を示す。
【0060】
実施例1
〔粘着シートの作製〕
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム面上に、下記組成の粘着層用塗工液−1を固形分塗工量が10g/mとなるように塗工、乾燥して、粘着シートを作製した。プローブタックは、4.1N、粘着力は380N/mであった。
粘着層用塗工液−1
アクリル系粘着剤(商品名:AT191、サイデン化学製) 100部
イソシアネート硬化剤(商品名:AL、サイデン化学製) 1部
酢酸エチル 400部
【0061】
〔受容シートの作製〕
(中間層の形成)
中間層形成工程において、シート状支持体として160g/mの上質紙を用い、前記粘着シートの粘着層面を外向きにしてペーパーロールに貼り付け、粘着シートの表面に接触させて通紙後、下記組成の中間層用塗工液−1を固形分塗工量が12g/mとなるように塗工、乾燥して、上質紙上に中間層を形成した。
中間層用塗工液−1
アクリロニトリル及びアクリル酸エステルを主成分とする共重合体系発泡中空粒子
(体積中空率79%、平均粒子径3.6μm、最大粒子径19μm) 35部
ポリビニルアルコール(商品名:PVA205、クラレ製) 15部
スチレン−ブタジエンラテックス(商品名:PT1004、日本ゼオン製) 50部
水 200部
【0062】
(バリア層の形成)
中間層を塗布した支持体において、中間層上に下記組成のバリア層用塗工液−1を固形分塗工量が3g/mとなるように塗工、乾燥して、バリア層を形成した。
バリア層用塗工液−1
ポリビニルアルコール(商品名:PVA420、クラレ製) 100部
水 1000部
【0063】
(受容層の形成)
バリア層を塗布した支持体において、バリア層上に下記組成の受容層用塗工液−1を固形分塗工量が4g/mとなるように塗工、乾燥して、受容層を形成した。
受容層用塗工液−1
ポリエステル樹脂(商品名:バイロン200、東洋紡製) 100部
シリコーンオイル(商品名:KF393,信越化学工業製) 3部
ポリイソシアネート(商品名:タケネートD−140N、
三井化学ポリウレタン製) 5部
トルエン/メチルエチルケトン=1/1(質量比)混合液 400部
【0064】
(受容シートの形成)
受容層を塗布した支持体において、裏面側(受容層が形成されていない面)に下記組成の裏面層用塗工液−1を固形分塗工量が3g/mとなるように塗工、乾燥して裏面層を形成し、受容シートを作製した。
裏面層用塗工液−1
ポリビニルアセタール樹脂(商品名:エスレックKX−1、積水化学工業製) 40部
ポリアクリル酸エステル樹脂(商品名:ジュリマーAT613、日本純薬製) 20部
ナイロン樹脂粒子(商品名:MW330、神東塗料製) 10部
ステアリン酸亜鉛(商品名:Z−7−30、中京油脂製) 10部
カチオン型導電性樹脂(商品名:ケミスタット9800、三洋化成製) 20部
水/イソプロピルアルコール=2/3(質量比)混合液 400部
【0065】
実施例2
実施例1の粘着シートの作製において、粘着剤層用塗工液−1の代わりに、粘着剤層用塗工液−2を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作製した。得られた粘着シートのプローブタックは、6.1N、粘着力は1150N/mであった。
粘着層用塗工液−2
アクリル系粘着剤(商品名:OPT−1、東洋インキ製) 100部
イソシアネート硬化剤(商品名:BXX4867、東洋インキ製) 1部
酢酸エチル 400部
【0066】
実施例3
実施例1の中間層の形成において、図1に示すように、通紙する上質紙の両面にそれぞれ、2箇所ずつ粘着シートの粘着層面が接触するように配置された、合計4本のペーパーロールに粘着シートを貼り付けた粘着ロールの表面に順次、上質紙(シート状支持体)を接触させて通紙後、中間層を形成した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作製した。
【0067】
実施例4
実施例1の中間層、バリアー層、および受容層の各層を形成する工程の直前に、粘着層面を外向きにして粘着シートをペーパーロールに貼り付けた粘着ロールの表面に、各工程のシート状支持体の表面を接触させて通紙後、中間層、バリアー層、および受容層の各層を順次形成した以外は、実施例1と同様にして受容層シートを作製した。
【0068】
比較例1
実施例1の中間層の形成において、粘着シートを貼り付けずに、ペーパーロールの表面に上質紙(シート状支持体)を接触させて通紙した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作製した。
【0069】
比較例2
実施例1の中間層の形成において、粘着シートを貼り付けたペーパーロールの代わりに、粘着シートを貼り付けないで通常の粘着ロール(商品名:クリンタックH、金陽社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作製した。
【0070】
比較例3
実施例1の粘着シートの作製において、固形分塗工量を5g/mとなるように塗工、乾燥して、粘着シートを作製した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作製した。得られた粘着シートのプローブタックは、2.2N、粘着力は260N/mであった。
【0071】
評価
〔印画欠陥の頻度〕
上記の各実施例及び比較例で得られた受容シートを、10.2cm×15.2cm(Lサイズに相当)の大きさに切断して評価用とし、市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:DR100、ソニー社製)を用いて、グレー画像を50枚連続で印画し、印画欠陥の合計個数、および印画欠陥の合計面積を測定した。結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
表1から明らかなように、本発明の実施例で得られた受容シートは、印画欠陥の数、面積において極端に少なく極めて優れた受容シートであった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の方法により得られた受容シートは、染料熱転写プリンターに適し、支持体が紙であるという質感があり、また、中空粒子を含有する中間層を有し、濃淡ムラや白抜け等がなく、低コスト、高感度、高画質記録が可能であり、さらに、異物等による印画欠陥がない、極めて品質の優れた受容シートであり、染料熱転写プリンターによる画像形成に十分適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明におけるシート状支持体の異物を除去する工程の一例を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースパルプを主成分とするシート状支持体の少なくとも一方の面に、中空粒子を含有する中間層、画像受容層を順次形成した熱転写受容シートの製造方法において、中間層塗工工程および/または画像受容層塗工工程の前に、JIS Z 0237に基づくプローブタックが2.45〜7.84Nである粘着シートを用いて、粘着面が外向きになるように貼り付けられたロール表面に、中間層形成前および/または画像受容形成前のシート状支持体の表面を接触させて通過させる工程を設けたことを特徴とする熱転写受容シートの製造方法。
【請求項2】
前記粘着シートの、JIS Z 0237に基づく粘着力が、370〜1200N/mである請求項1に記載の熱転写受容シートの製造方法。



【図1】
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【公開番号】特開2007−313753(P2007−313753A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145795(P2006−145795)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】