説明

熱転写受容シート

【課題】環境変動による反りが小さく、プリター内で紙詰まりや重送等が無く、印画走行性に優れ、また裏プリント時に、裏面塗工層とインクリボンとの融着が無く、走行性も良好な熱転写受容シートを提供する。
【解決手段】セルロースパルプを主成分とするシート状支持体の一面に、中空粒子を含有する中間層、画像受容層を順次形成し、前記支持体の他の面に裏面層を設けた熱転写受容シートにおいて、前記裏面層が、ガラス転移点(Tg)45℃以下のアクリル系樹脂を主成分とし、かつ平均粒径5〜22μmの樹脂フィラーを含有し、裏面層表面のJIS P 8119に基づくベック平滑度が100秒以下である熱転写受容シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料熱転写方式のプリンター等に用いられる熱転写受容シート(以下、「受容シート」と記す。)に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は種々の環境においてカールがなく、白紙の反りがわずかであって、裏面の裏プリント適性が良好な受容シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
染料熱転写方式は、インクリボンと受容シートを重ね合わせ、プリンターのサーマルヘッドなどの加熱手段から供給される熱により、インクリボン上の昇華性染料を受容シートの受容層(単に、受容層とも記す。)上に転写した後、両者を分離して受容シートの受容層上に画像を形成するものである。最近、高速で高感度のプリントシステムが求められており、サーマルヘッドの加熱デバイスの発熱量を、如何に効率よく画像形成に利用するかが重要な技術課題であり、受容シートの支持体には、高い断熱性が要求されている。
【0003】
また、熱転写方式の普及に伴ってランニングコストの低減が求められている。かかる観点から、本発明者らは受容シートの支持体として、従来用いられてきたプラスチックフィルムに代わりに、セルロースパルプを原料とする紙基材を用いて、断熱性を付与するために、中空粒子を含有する中間層を設けた後に、受容層を積層する方法が注目されている。
【0004】
紙基材を支持体とする受容シートは、コストが比較的安く、中間層を設けることで十分高濃度な画像を形成できる一方で、環境水分を吸湿しやすく、湿度変動によるシートの反り、いわゆるカールが発生し易い。受容シートの片面には、中間層、および受容層等の塗工層が設けられるが、この様な塗工層は一般に水分の吸湿が紙に比較して極めて僅かであり、紙基材との吸湿度合いの差がカール発生の要因となる。つまり高湿環境では紙基材が水分を吸湿して膨張しようとするため、受容層面側にいわゆるトップカールが発生し、低湿環境では紙基材が縮小しようとするため、受容層とは反対の面側にいわゆるバックカールが発生する。
【0005】
プリント走行性改善など種々の目的で、受容シートの裏面(中間層や受容層とは反対の面)側に、裏面層を設けることが行われている。例えば、裏面層形成用の樹脂について、ポリビニルアセタール樹脂とガラス転移点50℃以上のアクリル樹脂を併用する方法(例えば、特許文献1参照。)が開示されているが、これらは非染着性の改善や静電防止等を主な目的とするもので、カール防止性は必ずしも十分でない。カール矯正に効果のある裏面層とするためには、製膜性の良好な樹脂を塗工し、高弾性な皮膜を形成することが必要となる。
【0006】
また、熱転写記録方式の高速、高感度化が進められ、サーマルヘッドから受容シートへの印画熱量の増加にとともに、裏プリント不良が発生し易い傾向になっている。裏プリント不良とは、熱転写プリンターに受容シートを装着する際、受容シートの表裏を間違えて装着して印画した場合に、サーマルヘッドの熱でインクリボンと受容シート裏面が融着し、紙詰まりが発生する問題である。受容シートの裏面には、裏プリント時にもインクリボンと裏面層が融着することなく排紙されるために、融着防止性を具備することが求められる。
【0007】
受容シート裏面層に裏プリント適性を付与するために、各種のフィラーを添加することが知られている。フィラーの添加により裏面層の滑りをよくし、裏プリント時にサーマルヘッドの熱でインクリボンと受容シート裏面が融着するのを防止することができる。フィラーとしては、有機あるいは無機の微粉末、微粒子、微粒子エマルジョンなどが提案されている。
【0008】
例えば、プリント走行性やキズつき防止等を目的として、裏面層に同種の樹脂とフィラーを用い、フィラーが露出せず樹脂に覆われるようにする方法(例えば、特許文献2参照。)、裏面層に粒径0.5〜30μmの有機フィラーを含有させて、表面粗さを0.3〜3.0μmにする方法(例えば、特許文献3参照。)等、が提案されている。しかし、紙支持体特有の高湿度環境下におけるカール防止に関しては、何も示されていない。
【0009】
また、裏面層に平均粒径2〜6μmと8〜15μmの球状粒子を含有させる方法(例えば、特許文献4参照。)が提案されている。しかし、実施例で示されているようなポリビニルアルコールは、一般に高湿環境で吸湿する性質があり、通常の紙支持体ではカール防止効果が極端に低くなってしまう欠点があった。さらに、裏面層に、ポリビニルアセタール樹脂とポリアクリル酸エステル樹脂とモース硬度1〜4の粒子とを使用する方法(例えば、特許文献5参照。)が提案されているが、一般にフィラーとしては硬過ぎるため、受容シート同士を重ね合せたときに、裏面層に接する受容層がフィラーにより傷つけられ、出力画像が劣る欠点があった。
【0010】
カール防止性能を向上させる方法として、裏面層にアクリルポリオール樹脂およびフィラーを使用する方法(例えば、特許文献6参照。)が提案されているが、支持体としてポリエステルフィルムが用いられており、アクリルポリオール自体は耐水性が十分でない欠点があった。また、紙基材の裏面に塩化ビニリデン樹脂等の水蒸気バリヤ層を設ける方法(例えば、特許文献7参照。)が開示されているが、環境に配慮する観点から、塩素系樹脂は問題がある。
【0011】
【特許文献1】特開平4−161383号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平8−25814号公報(第2頁)
【特許文献3】特開平9−123623号公報(第2頁)
【特許文献4】特開平7−137464号公報(第4頁)
【特許文献5】特開平6−239036号公報(第2頁)
【特許文献6】特開平8−118822号公報(第2頁)
【特許文献7】特開平11−34516号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、受容シートとして、裏プリントした際に裏面層とインクリボンの融着がないこと、および環境湿度変動に伴うカールのないことが求められている。
本発明は、特に紙基材を支持体とする受容シートにおいて、幅広い環境下でカール防止性、および裏プリント適性を備えた裏面層を有する受容シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)セルロースパルプを主成分とするシート状支持体の一面に、中空粒子を含有する中間層、画像受容層を順次形成し、前記支持体の他の面に裏面層を設けた熱転写受容シートにおいて、前記裏面層が、ガラス転移点(Tg)45℃以下のアクリル系樹脂を主成分とし、かつ平均粒径5〜22μmの樹脂フィラーを含有し、裏面層表面のJIS P 8119に基づくベック平滑度が100秒以下であることを特徴とする熱転写受容シート。
(2)前記樹脂フィラーの含有量が、裏面層の全固形分に対して2質量%以上である(1)項に記載の熱転写受容シート。
(3)前記樹脂フィラーの主成分が、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、デンプン、シリコーン樹脂、およびナイロン樹脂から選択される少なくとも1種である(1)項または(2)項に記載の熱転写受容シート。
(4)前記中間層と画像受容層の間に、さらに膨潤性無機層状化合物を含むバリア層が形成され、該膨潤性無機層状化合物の粒子平均長径が、0.5〜100μmであり、かつアスペクト比(層状化合物の粒子平均長径/厚さの比)が5〜5000である(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。
【発明の効果】
【0014】
本発明の受容シートは、環境変動による反りが小さく、プリンター内で紙詰まりや重送等が無く、印画走行性に優れた受容シートであり、また裏プリント時に、裏面塗工層とインクリボンとの融着が無く、走行性も良好な受容シートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
セルロースパルプを主成分とする紙基材を、シート状支持体とする受容シートにおいて、環境湿度変動によるカール防止に関して鋭意検討した結果、裏面層に使用される接着剤のガラス転移点(Tg)が、受容シートのカールに大きな影響を及ぼすことが判明した。
【0016】
一般にアクリル酸系樹脂は、耐熱性、耐水性に優れ、裏面層用接着剤としても使用されているが、本発明の裏面層には、Tg45℃以下のアクリル系樹脂を接着剤として含有することが重要である。アクリル系樹脂のTgは、30℃以下がより好ましく、さらに好ましくは−10〜30℃である。アクリル系樹脂のTgが45℃を超えると、裏面層塗工時に製膜性が不十分となり、高弾性で強靭な皮膜を形成することが困難であり、皮膜がもつカール防止効果が十分に発現されない問題がある。一方、Tgが低過ぎると、受容シート同士を重ね合わせて裏面層面と受容層面とが接した際、ブロッキングが発生しやすいことがある。
【0017】
本発明のアクリル系樹脂は、各種アクリル酸エステル系モノマーを主成分として合成された重合体であり、係るモノマーとしては、アクリル酸エステル、メタクリル酸などの各種アクリル酸エステル系モノマーから適宜選択され、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどが挙げられる。また、本発明のアクリル系樹脂には反応性基を導入することができる。反応性基としては、例えば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基などが例示される。
【0018】
アクリル系樹脂のTg調節については、適当な学術文献、例えば、高分子学会偏「高分子の物性II、高分子実験学講座4」、共立出版、p51(1959)に記載の各種モノマーのTgを選択して、Fox式(1/Tg=Σwi/Tgi。式中、「wi」は各成分の質量分率;「Tgi」は各成分のTgを表わす)により、所望のTgを有するアクリル系樹脂を適宜設計することが可能である。
【0019】
本発明のアクリル系樹脂の具体例としては、昭和高分子製の商品名ポリゾールAT731(メタクリル酸エステル共重合体、Tg0℃)、日本純薬製の商品名AT510(アクリル酸エステル共重合体、Tg28℃)、SEK301(メタクリル酸エステル重合体エマルジョン、Tg18℃)、ET410(アクリル酸エステル共重合体、Tg44℃)、および中央理化製の商品名FK420(アクリル共重合体、Tg40℃)等が挙げられる。
なお、本発明のアクリル系樹脂のガラス転移点(Tg)は、JIS K 7121に規定される方法に従って、示差熱走査型熱量計(商品名:SSC5200、セイコー電子工業社製)を用いて測定される値である。
【0020】
本発明において、裏プリント時の裏面層とインクリボンの融着を防止するために、裏面層は平均粒径5〜22μmの樹脂フィラーを含有する。樹脂フィラーの平均粒径は、好ましくは8〜20μmであり、より好ましくは8〜15μmである。平均粒径が5μm未満であると、裏面層の滑り性が不足して裏プリント時の融着防止が不十分となり、22μmを超えると、受容シート同士を重ね合わせた場合、裏面層に接した受容層に大粒径フィラーの押し跡がついて、印画画像に悪影響する。
【0021】
裏面層における樹脂フィラーの含有量は、裏面層の全固形分に対して2質量%以上必要であり、好ましくは2〜20質量%である。樹脂フィラーの添加量が2質量%未満では、滑り性が不十分なことがある。一方、樹脂フィラーの添加量が過剰な場合には、裏面層中のアクリル系樹脂の比率が低下するので、皮膜がもつカール防止効果が十分に発現されないことがある。
なお、樹脂フィラーの平均粒径は、粒径測定器(商品名:SALD2000、島津製作所)を使用して測定される。
【0022】
前記樹脂フィラーの組成としては、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、デンプン、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、フッ素系樹脂(例えば、4フッ化エチレン樹脂)、ベンゾグアナミン樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂などが挙げられる。中でも、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、デンプン、シリコーン樹脂、およびナイロン樹脂等からなるフィラーを使用することが好ましく、特に、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、デンプン、シリコーン樹脂等からなるフィラーを使用することが好ましい。
【0023】
本発明の裏面塗工層では、本発明の効果を損なわない限り、接着剤として本発明で特定するアクリル系樹脂以外にも公知の樹脂を併用することができる。このような樹脂として、従来から広く使用されている樹脂を任意に使用することができ、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フェノキシ樹脂、およびセルロース誘導体樹脂等のような有機溶剤溶解性樹脂、或はポリビニルアルコール樹脂、およびデンプン等のような水溶性樹脂が挙げられ、これらの樹脂を単独であるいは2種以上を適宜選択して用いることができる。また、これら樹脂の反応硬化物を用いることもできる。
【0024】
本発明の裏面層には必要に応じて、各種添加剤を含有させることができる。高級脂肪酸塩やシリコーンオイルなどの離型剤、酸化チタンなどの無機フィラー、消泡剤、分散剤、架橋剤、有色顔料、蛍光染料、蛍光顔料、紫外線吸収剤などを適宜選択して使用してもよい。
【0025】
裏面塗工層の固形分塗工量は1〜10g/mの範囲が好ましく、より好ましくは2〜8g/mである。1g/m未満では、裏面塗工層がシート状支持体表面を完全に覆うことができず、塗膜欠陥が発生しやすいことがある。10g/mを超えると、裏面塗工層の塗膜強度が不足することがあり、コストを上昇させ、経済的にも不利となる。
【0026】
裏面層表面の平滑度については、JIS P 8119に基づく、ベック平滑度が100秒以下であることが必要であり、5〜50秒の範囲が好ましく、5〜30秒の範囲がより好ましい。裏面層表面のベック平滑度が100秒を超えると、受容シート同士を重ね合わせて裏面層が受容層に接した際に、受容層に傷がつき易くなり、印画白ぬけが発生することがある。
【0027】
本発明に用いられるシート状支持体としては、セルロースパルプを主成分とする紙基材が用いられ、例えば上質紙、コート紙、アート紙、キャスト塗被紙、少なくとも一方にポリオレフィン樹脂などの熱可塑性樹脂層を設けたラミネート紙、合成樹脂含浸紙、エマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、熱膨張性粒子を含有する発泡紙等が挙げられる。
【0028】
印画濃度や画質などの印画品位を向上させるために、シート状支持体と受容層の間に、中空粒子を含有する中間層が設けられる。中空粒子としては、平均粒径が0.5〜10μm、かつ体積空隙率が75〜95%のものが好ましく、中間層の厚さは、20〜90μmが好ましい。中空粒子の平均粒径や体積空隙率については、小角X線散乱測定装置(商品名:RU−200、リガク社製)等を用いて、バリア層の断面写真から求めることも可能である。
【0029】
本発明のシート状支持体の厚さは、100〜300μmが好ましい。厚さが100μm未満ではその機械的強度が不十分となることがあり、300μmを超えると、得られる受容シートの厚さが過大となり、プリンターの受容シート収納枚数の低下を招くことがある。
【0030】
本発明に用いられる受容層は、インクリボンから移行する染料を染着することが可能な染料染着性樹脂を主成分として形成される。このような染料染着性樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、セルロースアセテート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などの中から選ばれた1種以上を用いることができる。
【0031】
受容層には必要に応じて添加剤を添加することが可能で、例えばアミノ変性もしくはヒドロキシ変性シリコーンオイル、アクリルシリコーン樹脂などのシリコーン系樹脂、シリコーンオイル、および脂肪酸エステル化合物等の離型剤、イソシアネート系化合物およびエポキシ系化合物等の架橋剤、フタル酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、トリメリット酸エステル系、りん酸エステル系、エポキシ系、及びポリエステル系等の可塑剤、紫外線吸収剤などを含有させてもよい。
【0032】
受容層の固形分塗工量は1〜12g/mが好ましい。1g/m未満では、受容層が中間層の表面を完全に覆うことができず、画質の低下を招くことがある。12g/mを超えると、受容層の接着強度が低下したり、中間層の断熱効果が十分に発揮されず、画像濃度の低下を招くことがある。
【0033】
本発明では、受容層と中間層の間にバリア層を設けることが好ましい。バリア層には公知の接着剤やその他の添加物が使用され、接着剤としてはポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、あるいはこれらの塩などが好ましく使用され、2種以上を併用して使用してもよい。バリア層の固形分塗工量は、0.2〜5g/mの範囲が好ましく、0.2g/m未満ではバリア層としての接着効果やバリアー性が不足することがあり、一方5g/mを超えるとブロッキング等の操業性悪化を招くことがある。
【0034】
バリアー性向上等のために、バリア層は、膨潤性無機層状化合物を含有するのが好ましい。膨潤性無機層状化合物としては、例えばナトリウム四ケイ素雲母、カリウム四ケイ素雲母、ナトリウムヘクトライト等が好ましく使用される。膨潤性無機層状化合物の、粒子平均長径は0.5〜100μmが好ましく、アスペクト比(層状化合物の粒子平均長径/厚さの比)は5〜5000であることが好ましく、より好ましくは100〜5000である。
ここで、アスペクト比(Z)とは、Z=L/aなる関係で示されるものであり、Lは膨潤性無機層状化合物の水中での粒子平均長径(レーザー回折法で測定。堀場製作所製粒度分布計LA−910を使用、体積分布50%のメジアン径)であり、aは膨潤性無機層状化合物の厚みである。また、アスペクト比は、バリア層塗工シートの断面観察(断面写真)より測定した厚みから算出することも可能である。
【0035】
本発明の受容シートの受容層、裏面層、その他の被覆層は、バーコーター、グラビアコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、カーテンコーター、ダイコーター、リップコーター、およびスライドビードコーターなどのコーターを用いて、それぞれの層を形成するための塗工液(塗布液)を塗工し、乾燥して形成することができる。
【実施例】
【0036】
下記実施例により、本発明を詳細に説明するが、勿論本発明はこれによって限定されるものではない。尚、実施例において、「部」および「%」は、特に断らない限り、溶剤に関するものを除いて、すべて固形分の「質量部」および「質量%」を意味する。
【0037】
実施例1
(中間層塗工シートの作成)
発泡済み中空粒子(主成分:ポリアクリロニトリル、平均粒径5.4μm、体積空隙率75%)の水分散液(固形分濃度30%)70部、ポリビニルアルコール(商品名:PVA217、クラレ製)の水溶解液(固形分濃度10%)15部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:L−1537、固形分濃度50%、旭化成製)15部を混合攪拌し、中間層用塗工液を得た。次いで、支持体としてアート紙(商品名:OK金藤N、坪量186g/m、王子製紙製)を用い、一方の面に、ダイコーターを使用して乾燥後の塗工量が20g/mとなるように、塗工、乾燥して、中間層塗工シートを作成した。
【0038】
(バリア層塗工シートの作成)
膨潤性無機層状化合物ナトリウム四珪素雲母の水分散液(粒子平均長径6.3μm、アスペクト比2700、5%水分散液)100部に、ポリビニルアルコール(商品名:PVA105、重合度約500、クラレ製)の水溶解液(固形分濃度10%)100部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:L−1537、固形分濃度50%、旭化成製)4部を混合攪拌し、バリア層用塗工液を得た。次いで、前記中間層塗工シートの中間層上に、メイヤーバーコーターを用い、乾燥後の塗工量が3g/mとなるように、バリア層用塗工液を塗工、乾燥してバリア層塗工シートを作成した。
【0039】
(裏面層塗工シートの作成)
アクリル酸エステル共重合体(商品名:AT731、昭和高分子製、Tg0℃、固形分濃度50%)70部、アクリル樹脂フィラー(商品名:MA1013、日本触媒製、平均粒径13μm)10部、ポリスチレンスルホン酸ソーダ(商品名:CS6120、三洋化成製)10部、ステアリン酸亜鉛(商品名:Z−8−36、固形分濃度30%、中京油脂製)10部を混合攪拌し、裏面層用塗工液を得た。次いで、前記バリア層塗工シートの裏面に、メイヤーバーコーターを用い、乾燥後の塗工量が5g/mとなるように、裏面層用塗工液を塗工、乾燥して、裏面層塗工シートを作成した。
【0040】
(受容シートの作成)
ポリエステル樹脂(商品名:バイロン200、東洋紡製)100部、シリコーンオイル(商品名:KF393、信越化学製)2部、イソシアネート化合物(商品名:タケネートD−110N、武田薬品製)6部をトルエン/メチルエチルケトン=1/1(質量比)の混合溶媒200部に溶解し、混合攪拌して受容層用塗工液を得た。次いで、前記裏面層塗工シートのバリア層上に、グラビアコーターを用い、乾燥後の塗工量が6g/mとなるように、受容層塗液を塗工、乾燥して受容シートを得た。
【0041】
実施例2
実施例1の裏面層塗工シートの作成において、アクリル酸エステル共重合体(商品名:AT731、昭和高分子製、Tg0℃、固形分濃度50%)70部およびアクリル樹脂フィラー(商品名:MA1013、日本触媒製、平均粒径13μm)10部の代わりに、アクリル酸エステル共重合体(商品名:AT510、日本純薬製、Tg28℃、固形分濃度30%)70部、シリコーンパウダー(商品名:KPM601、信越化学製、平均粒径12μm)10部を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
【0042】
実施例3
実施例1の裏面層塗工シートの作成において、アクリル酸エステル共重合体(商品名:AT731、昭和高分子製、Tg0℃、固形分濃度50%)70部およびアクリル樹脂フィラー(商品名:MA1013、日本触媒製、平均粒径13μm)10部の代わりに、アクリル酸エステル共重合体(商品名:SEK301、日本純薬製、Tg18℃、固形分濃度40%)65部、ポリエチレンエマルジョン(商品名:SNコート950、サンノプコ製、平均粒径10μm)15部を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
【0043】
実施例4
実施例1のバリア層塗工シートの作成において、膨潤性無機層状化合物ナトリウム四珪素雲母の水分散液100部およびスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス4部の代わりに、スチレン−マレイン酸エステル共重合体(商品名:ポリマロン1360、荒川化学製、固形分濃度35%)100部を用いた。さらに裏面層塗工シートの作成において、アクリル酸エステル共重合体(商品名:AT731、昭和高分子製、Tg0℃、固形分濃度50%)70部、アクリル樹脂フィラー(商品名:MA1013、日本触媒製、平均粒径13μm)10部の代わりに、アクリル酸エステル共重合体(商品名:ET410、日本純薬製、Tg44℃、固形分濃度30%)75部、デンプン粒子(商品名:AS225、平均粒径13μm)5部を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
【0044】
実施例5
実施例1のバリア層を塗工せず、裏面層塗工シートの作成において、アクリル酸エステル共重合体(商品名:AT731、昭和高分子製、Tg0℃、固形分濃度50%)70部、アクリル樹脂フィラー(商品名:MA1013、日本触媒製、平均粒径13μm)10部の代わりに、アクリル酸エステル共重合体(商品名:FK420、中央理化製、Tg40、固形分濃度45%)77部、ナイロン樹脂フィラー(商品名:オルガソール、elf atochem社製、平均粒径20μm)3部を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
【0045】
比較例1
実施例1の裏面層塗工シートの作成において、アクリル酸エステル共重合体(商品名:AT731、昭和高分子製、Tg0℃、固形分濃度50%)70部およびアクリル樹脂フィラー(商品名:MA1013、日本触媒製、平均粒径13μm)10部の代わりに、アクリル酸エステル共重合体(商品名:AT550、昭和高分子製、Tg50℃、固形分濃度45%)80部を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
【0046】
比較例2
実施例1の裏面層塗工シートの作成においてアクリル樹脂フィラー(商品名:MA1013、日本触媒製、平均粒径13μm)10部の代わりに、シリコーン樹脂フィラー(商品名:トスパール145、東芝シリコーン、平均粒径4.5μm)10部を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
【0047】
比較例3
実施例1の裏面層塗工シートの作成においてアクリル樹脂フィラー(商品名:MA1013、日本触媒製、平均粒径13μm)10部の代わりに、ベンゾグアナミン樹脂粒子(平均25μm)10部を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
【0048】
比較例4
実施例1の裏面層塗工シートの作成において、アクリル酸エステル共重合体(商品名:AT731、昭和高分子製、Tg0℃、固形分濃度50%)70部およびアクリル樹脂フィラー(商品名:MA1013、日本触媒製、平均粒径1μm)10部の代わりに、アクリル酸エステル共重合体(商品名:SA203、中央理化製、Tg17℃、固形分濃度41%)70部、高級脂肪酸塩のステアリン酸カルシウム(商品名:C−104−HS、サンノプコ社製、平均粒径5μm)10部を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
【0049】
評価
上記各実施例および比較例で得られた受容シートについて、下記項目の品質評価を行なった。評価結果を表1に示す。
【0050】
〔受容シートの反り、印画走行性〕
(イ)高湿環境下
受容シートを定型はがきの大きさ(100mm×148mm)にカットし、20℃、90%RH環境下で、水平面上に3時間放置後、受容シート四隅の、水平面からの浮きを測定して平均値を算出してカールデータとした。同様な環境条件で受容シートを、昇華熱転写ビデオプリンター(商品名:NV−AP1、松下電器産業社製)に10枚セットして、黒ベタ画像を印画し、受容シートの走行性を評価した。
(ロ)低湿環境下
次に、20℃、10%RH環境下で、前記と同様にして受容シートのカールを測定し、また、受容シートの走行性を評価した。
<評価基準>
◎:高湿・低湿環境下で、受容シートのバックカールもしくはトップカールが3mm以下であり、反りは殆どなく、印画走行性および排紙性も優れている。
○:高湿・低湿環境下で、受容シートのバックカールもしくはトップカールが3mmを超え5mm以下で、反りは僅かであり、印画走行性および排紙性も良好である。
△:高湿・低湿環境下で、受容シートのバックカールもしくはトップカールが5mmを超え10mm以下で、反りは若干あるが、印画走行性は問題なく、排紙もスムーズであり、実用上は問題ない。
×:高湿・低湿のいずれかの環境下で、トップカールもしくはバックカールが10mmを超えており、印画時に反りによる走行不良が発生し、実用上問題がある。
【0051】
〔裏プリント適性〕
受容シートを昇華熱転写ビデオプリンター(商品名:NV−AP1、松下電器産業社製)に、通常とは表裏逆向きに10枚セットし、23℃、50%RH環境下、黒ベタ画像を印画し、受容シートの裏プリント適性を以下の基準で評価した。
<評価基準>
○:裏面塗工層とインクリボンの融着が全く無く、正常に排紙される。
△:裏面塗工層とインクリボンがわずかに融着するが、問題なく排紙され、実用レベルである。
×:裏面塗工層とインクリボンが融着し、プリンター内部でジャミングおよびリボン切れのトラブルが発生し、実用上問題がある。
【0052】
〔受容層面の凹凸〕
得られた受容シートの受容層表面の凹凸について、下記基準により目視にて評価した。
<評価基準>
○:凹凸は全くなく、外観は優れている。
△:凹凸は僅かにあるが、実用には問題がない。
×:凹凸が目立ち、外観不良。
【0053】
【表1】

表1の結果から、実施例1〜5の受容シートは、環境が変化しても反りが小さく、印画走行性が良好であり、裏プリント適性も問題がなく、印画画像も良好であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の受容シートは、環境変動による反りが小さく、プリンター内での紙詰まりや重送が起こりにくく、印画走行性に優れ、また裏プリント時の裏面塗工層とインクリボンとの融着が無く、裏面の走行性も良好な受容シートであり、幅広い環境下で利用可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースパルプを主成分とするシート状支持体の一面に、中空粒子を含有する中間層、画像受容層を順次形成し、前記支持体の他の面に裏面層を設けた熱転写受容シートにおいて、前記裏面層が、ガラス転移点(Tg)45℃以下のアクリル系樹脂を主成分とし、かつ平均粒径5〜22μmの樹脂フィラーを含有し、裏面層表面のJIS P 8119に基づくベック平滑度が100秒以下であることを特徴とする熱転写受容シート。
【請求項2】
前記樹脂フィラーの含有量が、裏面層の全固形分に対して2質量%以上である請求項1に記載の熱転写受容シート。
【請求項3】
前記樹脂フィラーの主成分が、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、デンプン、シリコーン樹脂、およびナイロン樹脂から選択される少なくとも1種である請求項1または2に記載の熱転写受容シート。
【請求項4】
前記中間層と画像受容層の間に、さらに膨潤性無機層状化合物を含むバリア層が形成され、該膨潤性無機層状化合物の粒子平均長径が、0.5〜100μmであり、かつアスペクト比(層状化合物の粒子平均長径/厚さの比)が5〜5000である請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写受容シート。