説明

熱転写受容シート

【課題】
印画濃度が高く、画像均一性に優れ、画像の滲みがなく、金属光沢を有する熱転写受容シートを提供する。
【解決手段】
シート状支持体の少なくとも一面に、中空粒子を含有する中間層、画像受容層が順次積層された熱転写受容シートにおいて、中間層と画像受容層の間に、さらに直接蒸着法で形成された金属蒸着層を設ける。画像受容層が、ブチラール化度70〜80mol%で、かつ分子量15000〜35000であるポリビニルブチラール樹脂を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写受容シートに関するものである。更に詳しくは、印画濃度が高く、画像均一性に優れ、画像の滲みがなく、金属光沢を有する熱転写受容シート(以下、単に「受容シート」ともいう)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、フルカラー画像がプリント可能な染料熱転写プリンターが注目を浴びている。染料熱転写プリンターは、インクシートの染料を含む染料層と、受容シートの染料染着性樹脂を含む画像受容層(以下、単に「受容層」ともいう)とを重ねあわせ、サーマルヘッド等から供給される熱により、インクシート染料層の所要個所の染料を所定濃度だけ受容層に転写して画像を形成するものである。インクシートは、イエロー、マゼンタ及びシアンの3色、あるいはこれにブラックを加えた4色の染料層、および必要に応じて透明ラミネート層(透明保護層)からなる。フルカラー画像は、インクシートの各色の染料を受容シートに順に繰り返し転写することによって得られる。染料熱転写方式は高画質な画像記録が可能であること、また、昨今のデジタルカメラの普及に伴い、デジタルプリント可能な方式として、銀塩写真からの置き換えが進みつつある。
熱転写印画は、サーマルヘッドと受容シートを接触させ、サーマルヘッドから供給される熱により染料を転写させる接触型の印画方式であり、受容シートには断熱性とクッション性が必要である。従来のフィルム基材は、発泡ポリエステルや発泡ポリプロピレンなど空隙のあるものを使用することで、断熱性とクッション性を付与していた。しかし、紙支持体では断熱性とクッション性が不足する問題がある。
この問題を解決するために、紙支持体、中空粒子を含有する中間層、染料バリア層、受容層の順に積層してなる受容シートの提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。この提案では、中空粒子を含有する嵩高で柔らかい中間層を形成することで、紙支持体であっても受容シートに必要なクッション性と断熱性を付与することが可能となる。染料バリア層としては染料染着性の低い樹脂と、特定の粒子平均長径とアスペクト比を有する膨潤性無機層状化合物とを含有するバリア層を、中間層上に形成する提案がされている。このバリア層は、層状化合物の迂回効果により染料をバリアするものだが、充分な迂回効果を付与するためには、バリア層の厚さを厚くする、無機層状化合物の含有量を増やすなどの必要がある。バリア層の層厚アップや無機化合物の増配により、中間層の断熱性とクッション性が損なわれ、印画濃度不足や画質低下を招く問題があった。また、バリア層の可とう性低下により、折り曲げた箇所にヒビが発生しやすくなり、バリア層にヒビが入った箇所の染料バリア性が極端に低下して滲みが発生するなど画像耐久性が充分でなかった。
一方、膜厚が薄くてもバリア性が良好な金属蒸着層を利用した受容シート、具体的には、紙支持体と受容層の間に金属蒸着層を形成してなる受容シートの提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。しかし、受容シートの断熱性やクッション性が不足しているため印画濃度や画質が劣る問題があった。また、受容層と金属蒸着層の密着性が不足して剥がれたり、金属蒸着層が経時で酸化して白濁したりする問題があった。
さらに、紙支持体、接着剤層、金属蒸着層、アンカー層、受容層を積層した構成からなる受容シートの提案がなされている(例えば、特許文献3参照)。フィルムに金属蒸着層、接着剤層を積層した「蒸着用フィルム」をあらかじめ作成し、これを紙支持体に重ねて転写する方法で金属蒸着層を形成するものである。紙支持体と受容層の間に、樹脂を主成分とする接着剤層およびアンカー層が形成されているが、断熱性・クッション性は充分とはいえず、印画濃度や画質が劣る問題があった。
【特許文献1】特開平6−227159号公報(第2頁)
【特許文献2】特開平2−25392号公報(第1頁)
【特許文献3】特開2000−351265号公報(第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の問題を解決し、印画濃度が高く、画像均一性に優れ、画像の滲みがなく、金属光沢を有する熱転写受容シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、下記の技術的事項を基礎として構成される本発明に至ったのである。
【0005】
即ち、
(1)シート状支持体の少なくとも一面に、中空粒子を含有する中間層、画像受容層が順次積層された熱転写受容シートにおいて、中間層と画像受容層の間に、さらに直接蒸着法で形成された金属蒸着層を有することを特徴とする熱転写受容シート。
(2)金属蒸着層が、直接蒸着法で形成され、金属蒸着層の厚さが300〜600Åである(1)に記載の熱転写受容シ−ト。
(3)前記画像受容層が、ブチラール化度70〜80mol%で、かつ分子量15000〜35000であるポリビニルブチラール樹脂を含有する(1)または(2)に記載の熱転写受容シ−ト。
(4)前記画像受容層が、トリルトリアゾール化合物を0.1〜5質量%含有する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の熱転写受容シ−ト。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、印画濃度が高く、画像均一性に優れ、画像の滲みがなく、金属光沢を有する熱転写受容シ−トを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0008】
(シート状支持体)
シート状支持体としては、セルロースパルプを主成分とする紙類や合成樹脂シート類が使用される。例えば、紙類としては上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙などが挙げられる。合成樹脂を主成分としたシート類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。また多孔質延伸シート類としてはポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を主成分とした、例えば合成紙、多孔質ポリエステルシートなど。積層体類としては、多孔質延伸シート同士、多孔質延伸シートと他のシート及び/又は紙等とを積層貼着させたシートなどが挙げられる。
【0009】
シート状支持体の受容層面側の平滑度は、50秒以上が好ましい。50秒未満では、得られた受容シートの平滑性が不足し、画像均一性が損なわれる場合がある。なお平滑度は、シート表面の平滑性の指標である。一定条件下で基準面と試験片表面との間を流れる空気の流量を測定することで得られ、J.TAPPI紙パルプ試験方法No.5(王研式平滑度)に規定されている。
【0010】
(中間層)
中間層は中空粒子を含有することにより、受容シートに断熱性とクッション性を付与できる。受容シート表面に適度の変形自由度が与えられ、サーマルヘッド形状及びインクリボン形状に対する受容シートの追従性、密着性等が向上するので、低エネルギー状態でも受容層に対するサーマルヘッドの熱効率が向上し、印画される画像の印画濃度を高め、画質を改善することができる。
【0011】
中空粒子は、重合体材料により形成されたシェルと、それにより包囲されている1個以
上の中空(気孔)部とからなるものである。一般に中空粒子の製造方法に、例えば下記のようなものがある。
(A)熱膨張性物質を含む熱可塑性重合体材料を加熱発泡させて製造された発泡性中空粒子。
(B)重合体形成性材料をシェル形成性用材料として用い、水などの揮発性液体を気孔形
成用材料として用いて、マイクロカプセル重合方法により製造されたマイクロカプセルか
ら、揮発性液体を揮発逃散させて得られたマイクロカプセル状中空粒子。
【0012】
発泡性中空粒子は、発泡性中空粒子の使用方法としては、未発泡状態で中間層塗料成分として使用し、受容シート製造工程での加熱乾燥時の熱により発泡させ、中空粒子を含む中間層を形成することも可能である。しかし、受容シートの製造工程中の加熱により熱膨張性物質を含有する熱可塑性粒子を発泡させると、均一な粒子径に発泡させることが難しく、十分に平坦な中間層が得られないことがあり、このため熱転写された画像の均一性が不十分になることがある。従って、本発明における発泡性中空粒子は、予め熱膨張性物質を含有する熱可塑性粒子を熱膨張させて製造された既発泡中空粒子が好ましく用いられる。
【0013】
既発泡中空粒子は、例えば熱膨張性芯物質として、n−ブタン、i−ブタン、ペンタン、及び/又はネオペンタンのような揮発性低沸点炭化水素を熱可塑性重合体材料中に内包し、熱可塑性重合体材料として塩化ビニリデン、塩化ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の単独重合体或いはこれらの共重合体等を、シェル(壁)材として用いて得られた粒子に予め加熱等の処理を施すことにより、所定の粒子径に熱膨張させて得られるものである。
【0014】
また上記のような既発泡中空粒子は、一般に比重が小さいため、分散性等を向上させ、取扱い作業性改善を目的として、炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン等の無機粉体を、熱融着により既発泡中空粒子表面に付着させ、表面が無機粉体により被覆されている既発泡複合中空粒子等も本発明に用いることができる。
【0015】
マイクロカプセル状の中空粒子は、マイクロカプセル形成重合法により得られ、重合体形成性材料(シェル形成材料)をシェル(壁)として、芯部に揮発性液体(気孔形成用材料)を含有するマイクロカプセルを乾燥して、気孔形成用材料を揮発逃散させ、中空芯部を形成させたものである。重合体形成性材料としては、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、メラミン樹脂等の硬い樹脂が好ましく使用され、揮発性液体としては、例えば水等が使用される。
【0016】
中間層で用いられる中空粒子(発泡性中空粒子、およびマイクロカプセル状中空粒子等)の平均粒子径は0.4〜20μmが好ましく、より好ましくは2〜15μmである。中空粒子の平均粒子径が0.4μm未満の場合には、中空粒子の体積中空率が概して低いため、受容シートのクッション性が十分に発揮されないことがある。また平均粒子径が20μmを超えると、得られる中間層面の平滑性が低下し、熱転写画像の均一性が不良となり、画像鮮明性が不十分になることがある。
中間層の中空粒子は、径の異なる2種以上を使用してもよい。大粒径中空粒子の間に、小粒径中空粒子が充填されることで、中間層が補強され耐圧縮性が強化される。
またこの構造によって中間層表面の凹凸が減少し、金属蒸着層が均一に形成される。
なお中空粒子の平均粒子径は、一般的な粒径測定装置を使用して測定可能であり、例えばレーザー回折式粒度分布測定機(商品名:SALD2000、島津製作所製)等を用いて測定される。また中間層の断面写真から求めることも可能である。
【0017】
中間層で用いられる中空粒子(発泡性中空粒子、およびマイクロカプセル状中空粒子等)
の体積中空率は50〜97%が好ましく、より好ましくは55〜95%である。中空粒子
の体積中空率が50%未満の場合には受容シートのクッション性が十分でない。また体積中空率が97%を超えると、中間層の塗膜強度が低下し、中間層が傷付き易くなり、外観が悪化することがある。
【0018】
なお、中空粒子の体積中空率は、粒子体積に対する中空部分の体積の割合を示したものであり、具体的には中空粒子と貧溶媒からなる中空粒子分散液の比重、前記分散液における中空粒子の質量分率及び中空粒子のシェル(壁)を形成する重合体樹脂の真比重、及び貧溶媒の比重から求めることができる。貧溶媒とは、中空粒子の壁を形成する樹脂を溶解及び/又は膨潤させない溶媒であり、例えば水、イソプロピルアルコール等が挙げられる。また中空粒子の体積中空率については、例えば小角X線散乱測定装置(商品名:RU−200、リガク社製)等を用いて中間層の断面写真から求めることも可能である。
本発明においては、中間層形成後、直接蒸着法により金属蒸着を実施する。中空粒子の壁厚は、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上がより好ましい。0.1μm未満では、中間層が真空に曝された際、中空粒子が潰れてしまい、得られる受容シートのクッション性が不足する場合がある。
【0019】
中間層全固形分に対する、中空粒子の質量比率は10〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜70質量%である。中空粒子の質量比率が10質量%未満では、受容シートのクッション性が十分でないことがあり、また中空粒子の質量比率が80質量%を超えると、中間層用塗工液の塗工性が悪化して、良好な塗工面が得られないことや、また中間層の塗膜強度が低下することがある。
【0020】
中間層は、主成分として中空粒子と結着樹脂を含有する。使用される結着樹脂については、例えばポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂及びその誘導体、カゼイン、デンプン誘導体等の水溶性樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂等の各種樹脂の水分散性樹脂などが使用される。これらの樹脂の中でも、ポリビニルアルコール系樹脂は、形成される塗膜の強度が高いこと、支持体との密着性が良好であること、中空粒子の中間層塗料中での分散安定性を向上させることから好ましく使用される。また、中間層の樹脂としては、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂などの染料染着性樹脂も好ましく使用される。受容層に染着した染料がアルミ蒸着層を一部通過して、中間層に達した場合にも、染料との親和性の高い染着性樹脂が存在することにより、染料の拡散防止効果が高い。中間層の結着樹脂は水溶性樹脂と水分散性樹脂を併用することも可能である。
【0021】
中間層は必要に応じて、各種の添加剤、例えば無機顔料、有機顔料、樹脂の架橋剤、帯電防止剤、消泡剤、分散剤、有色染料等の1種或いは2種以上を適宜選択して使用してもよい。
【0022】
中間層の厚さは、10〜100μmが好ましく、かつ中間層に含まれる中空粒子の平均粒子径の3倍以上の厚さであることが好ましい。中間層が、断熱性、クッション性などの所望の性能を発揮するための厚さは10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは15〜85μmである。中間層の厚さが10μm未満では、受容シートのクッション性が十分でないことがある。また厚さが100μmを超えると、得られる受容シート全体の厚さが過大となり、プリンターにおける受容シート収容枚数の低下を招き、あるいは所定枚数を収容しようとすると、プリンターの容積増大を招き、プリンターのコンパクト化を困難にする等の問題が生じることがある。
【0023】
また中間層の厚さは、中間層に含有される中空粒子の平均粒子径の3倍以上の厚さであることが好ましく、更に好ましくは4倍以上の厚さである。中間層の厚さが中間層に含有される中空粒子の平均粒子径の3倍未満の厚さであると、粗大中空粒子が中間層面から突出し、金属蒸着面の均一性が低下し、染料バリア性が低下して画像滲みが発生する場合がある。
【0024】
中間層の平滑性は、得られる受容シートの金属光沢に影響する。金属蒸着を施す面の凹凸形状がほぼそのまま金属蒸着面の形状となり、金属光沢の外観を決めるからである。中間層の凹凸が比較的多い場合には、マットな金属光沢が得られる。中間層の平滑性が高いと、鏡面に近い金属光沢が得られる。中間層の平滑度は100〜10万秒が好ましい。100秒未満ではアルミ蒸着層が均一に形成されず、染料バリア性が不足する場合がある。10万秒を超えても、得られる金属光沢は高くならない。
所望の金属光沢を得るために、中間層の平滑性をコントロールすることが好ましく、そのためにカレンダー処理やキャスト処理など公知の方法が可能である。
【0025】
(金属蒸着層)
本発明において、中間層と受容層の間に、金属蒸着層を形成する。この金属蒸着層は、受容層に染着した染料が中間層に移行するのを遮断する効果がある。さらに、金属蒸着層によって、受容シートに金属光沢を付与でき、メタリック調の画像が得られる。このようなメタリック調画像は意匠性が高く、また、偽造防止の効果も期待できる。
【0026】
受容シートに金属蒸着層を形成する方法としては、転写法と直接法があるが、本発明では、直接法によって中間層表面に金属蒸着層を形成する。直接法は、中間層と蒸着層の間の接着剤層を要しないため、中間層のクッション性や断熱性を損なわない。その結果、印画濃度が高く、均一性が良好な画像を得ることができる。また、製造工程が少なく、高価なフィルム基材を要しないなどの理由で、コストメリットも大きい。
【0027】
直接法によって中間層表面に金属蒸着層を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、化学蒸着法などが挙げられるが、本発明では、真空中で連続蒸着を行う真空蒸着法が好ましい。
真空蒸着法は金属を溶融加熱して原子を蒸発させ、基材に付着させる方法である。蒸着は真空中で行われる。真空中のほうが金属の蒸着温度が低くなること、金属が酸化されずに容易に蒸発すること、蒸発した金属原子が空気分子に妨げられることなく、基材に直進し付着できることなどの理由による。金属を加熱する方法は、電子ビーム加熱・抵抗加熱・アーク加熱など公知の方法が可能である。真空蒸着法は、溶融過熱されて蒸発した金属原子が、高エネルギー状態となって中間層に蒸着するため、蒸着層と中間層との密着性が良好である。また他の金属蒸着層形成方法に比べて、均一にかつ比較的高速に蒸着層が形成できる利点がある。また連続的に蒸着層を形成できるので、長尺の巻取にも連続的に蒸着層形成が可能である。
【0028】
金属蒸着層の金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、スズ、ニッケル、銅、チタンなどが挙げられる。中でもアルミニウムは沸点が低いので、蒸着温度が比較的低くても均一な蒸着層を形成しやすい。またコスト面でも有利という利点がある。
【0029】
真空蒸着工程として以下の例を挙げる。
シート状支持体に、中空粒子を含有する中間層を形成する。以下これを蒸着用基材とする。蒸着用基材は、蒸着前処理として、水分が1〜3質量%となるよう乾燥させる。蒸着装置の真空蒸着室に入れたときに、水蒸気によって真空度が低下するのを防止するためである。乾燥処理した蒸着用基材は、長尺の巻取の状態で真空蒸着装置の前室に装着される。前室から繰り出した蒸着用基材は、必要に応じて前室内で再度乾燥されて、真空蒸着室内に入る。真空蒸着室内では真空中で金属を溶融加熱して蒸発させており、その中を通過しながら、連続的に金属蒸着が行われ、金属蒸着層が形成される。真空蒸着室を通過する際、蒸着用基材は、蒸発する金属から出る熱と、高温の金属溶融液からの放射熱で、熱を受ける。温度上昇を防止するために、蒸着用基材をクーリングロールに当て冷却しながら、金属を蒸着する。金属蒸着された基材は蒸着装置内の後室にすすむ。蒸着工程が終了したら、巻取を蒸着装置より取り出し、水分が4〜10質量%となるように調湿する。
【0030】
金属蒸着層の厚さは、真空蒸着室を通過する基材の通過速度によって所望の厚さにコントロールできる。ゆっくり通過させると、蒸着層を厚くできる。
形成する金属蒸着層の厚さは、300〜600Åが好ましく、350〜550Åがより好ましい。300Å未満では、染料バリア性が不足して画像耐久性が劣る場合や、金属光沢が不足して外観不良となる場合がある。600Åを超えると、金属蒸着層の可とう性が低下し、折り曲げたときにヒビがはいってバリア性が著しく低下する場合がある。金属蒸着層の厚さは蛍光X線による測定など、公知の方法で測定が可能である。
金属蒸着層は、空気中の酸素に曝されると速やかに酸化され、表面にごく薄い金属酸化膜を形成する。この金属膜が高いバリア性を有するといわれている。しかし、金属蒸着層を長時間空気に曝しておくと、酸化がさらにすすみ、経時で金属光沢が低下する場合がある。金属蒸着層を形成した基材を蒸着装置から取り出し空気に曝しはじめてから、金属蒸着層面に受容層を形成する工程までの時間は、7日以内が好ましく、3日以内がさらに好ましい。
【0031】
(画像受容層)
金属蒸着層上に受容層が設けられる。受容層自体は、既知の染料熱転写受容層であってもよい。受容層を形成する樹脂としては、インクリボンから移行する染料に対する親和性が高く、従って染料染着性の良好な樹脂が使用される。このような染料染着性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、セルロースアセテートブチレート等のセルロース誘導体系樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂、活性エネルギー線硬化樹脂等が挙げられる。
【0032】
中でも、染色性が良好な上に、金属蒸着層との接着性が良好なこと、金属蒸着層の防食に効果があること、塗膜の透明性が高いことなどから、ポリビニルブチラール樹脂が好ましく用いられる。
ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコールの水酸基をブチルアルデヒドでブチラール化して得られ、疎水性部であるブチラール成分と、親水性部である残水酸基成分を併せもつ構造である。受容層に用いられるポリビニルブチラールのブチラール化度は70〜80mol%が好ましい。70mol%未満では、親水性が高くなり、防湿性が低下する。金属蒸着層の防食の効果が不足して金属光沢が低下する場合がある。80mol%を超えると疎水性が高くなり、接着性が低下して金属蒸着層と受容層の間で剥がれが発生する場合がある。
【0033】
なお、ブチラール化度は、核磁気共鳴スペクトルなど公知の方法で測定が可能である。受容層に用いられるポリビニルブチラール樹脂の分子量は、15000〜35000が好ましい。15000未満では、可とう性が不足して耐折り曲げ性が低下して受容シートの折り曲げた箇所にヒビが発生する場合がある。35000を超えると、接着性が低下して金属蒸着層と受容層の間で剥がれが発生する場合がある。
【0034】
受容層には、金属蒸着層の防食剤として、トリルトリアゾール化合物を添加することが好ましい。トリルトリアゾール化合物は、窒素を含む環状化合物で、金属の酸化を防止することで、金属の腐食を抑制する働きがある。受容層樹脂中での分散性が良好で、層中に均一に分散することから、ムラのない防食効果を発揮する。また、少量で効果が高いので、受容層樹脂の染料染着性を損なうことがない。
【0035】
トリルトリアゾール化合物としては、トリルトリアゾール、トリルトリアゾールナトリウム塩、トリルトリアゾールカリウム塩、N,N-ジ(2−エチルヘキシル)アミノメチルトリルトリアゾールなどが例示できる。
受容層に含有するトリルトリアゾール化合物は、0.1〜5質量%が好ましく、0.3〜2質量%がより好ましい。0.1質量%未満では、防食効果が不足する場合がある。5質量%を超えると、受容層の耐熱性が低下し、印画時に受容層がべたつき、受容シートとインクリボンと貼り付いてしまう場合がある。
【0036】
その他に、受容層には必要に応じ透明の着色剤などを添加することができる。例えば金属蒸着層が銀色光沢の外観を持ち、受容層を黄色に着色した場合、受容シートとしては金色外観とすることができ、意匠性や偽造防止効果を高めることが可能である。また、不透明の白色着色剤などを用いて着色することで、金属光沢を隠蔽し、金属光沢の無い通常の写真画像を得ることももちろん可能である。
【0037】
プリントの際にサーマルヘッドでの加熱によって、受容層とインクリボンとが融着することを防止するために、受容層中に、架橋剤、離型剤、滑り剤等の1種以上が添加剤として配合されていることが好ましい。さらに必要に応じて、上記の受容層中に蛍光染料、可塑剤、酸化防止剤、顔料、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤等の1種以上を添加してもよい。これらの添加剤は塗工前に受容層の形成成分と混合されてもよいし、また受容層とは別の塗被層として受容層の上及び/又は下に塗工されていてもよい。
【0038】
受容層の形成は、染料染着性樹脂及び架橋剤、離型剤等の必要な添加剤等を、適宜、有機溶剤あるいは水等に溶解もしくは分散して受容層用塗工液を調製し、公知のコーターを使用して、金属蒸着層に、塗工、乾燥し、更に必要に応じて加熱キュアーして形成することができる。また、前記染料染着性樹脂及び架橋剤、離型剤等の必要な添加剤等を、無溶剤の受容層用塗料として調製し、塗工、あるいは熱溶融して塗工することも可能である。
【0039】
受容層の固形分塗工量は0.1〜12g/m、より好ましくは1〜10g/mの範囲である。因みに受容層の固形分塗工量が0.1g/m未満では、受容層が低密度層或いはバリア層表面を完全に覆うことができないことがあり、画質の低下を招くことや、サーマルヘッドでの加熱により、受容層とインクリボンとが接着してしまう融着トラブルが発生することがある。一方、固形分塗工量が12g/mを超えると、塗工効果が飽和して不経済であるばかりでなく、受容層の塗膜強度が不足し、塗膜厚さが過大になることにより中間層の断熱効果が十分に発揮されず、画像濃度の低下を招くことがある。
【0040】
(裏面層)
シート状支持体の裏面(受容層が設けられる側とは反対側の面)に高分子樹脂と有機及び/又は無機フィラーとを主成分とする裏面層が設けてもよい。裏面層を設けることによって、裏面層とシート状支持体との接着強度向上、受容シートのプリント搬送性、受容層面への傷付き防止、受容層面と接触する裏面層への染料の移行防止性を向上させることが可能となる。
裏面層に使用される高分子樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂等、及びこれらの樹脂の反応硬化物を用いることができる。また裏面層には、シート状支持体あるいは裏面基材層と裏面層との接着性を向上させるため、適宜ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物等の架橋剤を含有してもよい。
【0041】
裏面層は、有機または無機フィラーを摩擦係数調整剤として配合することが好ましい。有機フィラーとしては、ナイロンフィラー、セルロースフィラー、尿素樹脂フィラー、スチレン樹脂フィラー、アクリル樹脂フィラー等を使用することができる。無機フィラーとしては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、タルク、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等を使用することができる。
【0042】
裏面層には、プリント搬送性の向上、静電気防止のために導電性高分子や導電性無機顔料等の導電剤が添加されていてもよい。導電性高分子としては、アニオン型、ノニオン型、カチオン型等の導電性高分子が用いられるが、その中でもカチオン型導電性高分子化合物(例えばポリエチレンイミン、カチオン性モノマーを含むアクリル系重合体、カチオン変性アクリルアミド重合体、及びカチオン澱粉等)が好ましく用いられる。
【0043】
裏面層には必要に応じて離型剤、滑剤等の融着防止剤を含有してもよい。例えば離型剤としては、非変性及び変性シリコーンオイル、シリコーンブロック共重合体及びシリコーンゴム等のシリコーン系化合物、滑剤としてはリン酸エステル化合物、脂肪酸エステル化合物、フッ素化合物等が挙げられる。また従来公知の消泡剤、分散剤、有色顔料、蛍光染料、蛍光顔料、紫外線吸収剤等を適宜選択して使用してもよい。
【0044】
裏面層の固形分塗工量は、0.3〜10g/mの範囲内が好ましい。更に好ましくは1〜8g/mである。裏面層固形分塗工量が0.3g/m未満であると受容シートが擦れた時の傷付き防止性が十分に発揮されないことがあり、また受容シートの走行性不良が発生するおそれがある。一方、固形分塗工量が10g/mを超えると効果が飽和して不経済である。
【0045】
本発明において、中間層、受容層、裏面層、及びその他の塗工層は、常法に従って形成され、各々、所要成分を含む塗工液を調製し、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、リップコーター、及びスライドビードコーターなど公知のコーターを使用して、シート状支持体上あるいは所定の塗工層上に塗工し、乾燥して形成することができる。
【0046】
本発明において、各塗工層形成後のいずれかにおいてカレンダー処理を施してもよく、受容シート表面の凹凸を更に減少させ、平滑化する事が可能である。カレンダー処理に使用されるカレンダー装置やニップ圧、ニップ数、金属ロールの表面温度等については特に限定されるものではないが、カレンダー処理を施す際の圧力条件は、0.5〜150MPaであることが好ましく、更に好ましくは1〜100MPaである。温度条件としては、20〜150℃が好ましく、更に好ましくは30〜120℃である。カレンダー装置としては、例えばスーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー等の一般に製紙業界で使用されているカレンダー装置を適宜使用できる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の部及び%は特に断らない限り、水を除いた固形分であり、それぞれ質量部及び質量%を示す。
【0048】
<実施例1>
(シート状支持体Aの作成)
水温20℃でカナディアン・スタンダード・フリーネス300CCに叩解した晒広葉樹クラフトパルプ100部に対して、0.4部のポリアクリルアミド(商品名:ポリストロン117、荒川化学社製)、1.0部の重曹、1.2部のカチオン化デンプン(商品名:Cato−2、日本エヌエスシー社製)、1.0部のアルキルケテンダイマー系サイズ剤(商品名:SPK903、荒川化学社製)、および0.3部のポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン(商品名:WS−525、日本PMC社製)を添加し、得られたパルプスラリーから、坪量180g/mの原紙を製造した。
更にこの原紙にサイズプレスとして、カルボキシル基変性PVAと塩化ナトリウムとを重量比2:1で水に溶解して調製された5%サイズ液を塗工量が1.5g/mになるように塗工、乾燥し、更にカレンダー処理して、シート状支持体Aを得た。得られたシート状支持体Aは、厚さが170μmであった。
【0049】
(中間層基材Aの作成)
シート状支持体A上に、下記組成の中間層塗工液Aを、塗工量が20g/mになるように塗工、乾燥した後、グロスカレンダーにて平滑化処理を行い、中間層基材Aを得た。
中間層塗工液A
アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを主成分とする共重合体からなる
既発泡中空粒子(平均粒子径3.2μm、体積中空率85%) 45部
ポリビニルアルコール(商品名:PVA205、クラレ製) 10部
ポリブタジエン樹脂(商品名:LX111、Tg=−80℃、日本ゼオン製) 45部
水 200部
【0050】
(金属蒸着層基材Aの作成)
中間層基材Aを、水分2%となるように乾燥処理したのち、その乾燥状態を維持したまま、長尺の巻取の形態で金属蒸着装置にセットした。
金属蒸着装置内の蒸着室は、10―2Paの真空とし、金属アルミニウムを1200℃で加熱溶融して蒸発させた。中間層基材を通過させて、中間層上に連続的に金属蒸着層を形成した。金属蒸着装置から巻き取りを取り出し、水分が5質量%となるように調湿した。得られた金属蒸着層基材Aは、金属蒸着層の厚さが蛍光X線で560Åであった。
【0051】
(受容シートAの作成)
前記金属蒸着層基材Aに、下記組成の受容層塗工液Aを、塗工量が2g/mになるように塗工、乾燥した後、グロスカレンダーにて平滑化処理を行い、受容シートAを得た。
受容層塗工液A
ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BL−5、積水化学製、ブチラール化度77mol%、分子量32000、Tg62℃) 100部
シリコーンオイル(商品名:KF393、信越化学製) 2部
イソシアネート化合物(商品名:タケネートD−110N、武田薬品製) 6部
エタノール/メチルエチルケトン=1/1(質量比)の混合溶媒 300部
【0052】
<実施例2>
(受容シートBの作成)
受容層塗工液として、下記組成の受容層塗工液Bを用いた以外は、実施例1と同様に受容シートを作成した。
受容層塗工液B
ポリビニルブチラール樹脂(商品名:BL−10、積水化学製、ブチラール化度71mol%、分子量15000、Tg50℃) 100部
トリルトリアゾール(商品名:TTA、大和化成製、融点80℃) 1部
シリコーンオイル(商品名:KF393、信越化学製) 2部
イソシアネート化合物(商品名:タケネートD−110N、武田薬品製) 6部
エタノール/メチルエチルケトン=1/1(質量比)の混合溶媒 300部
【0053】
<実施例3>
(中間層基材Bの作成)
アート紙(商品名:OK金藤N、坪量186g/m、王子製紙製)に、下記組成の中間層塗工液Bを、塗工量が10g/mになるように塗工、乾燥した後、グロスカレンダーにて平滑化処理を行い、中間層基材Bを得た。
中間層塗工液B
アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを主成分とする共重合体からなる
既発泡中空粒子(平均粒子径3.2μm、体積中空率85%) 37部
マイクロカプセル型中空粒子(商品名:ローペークHP−1055、
ロームアンドハース製、平均粒子径1.0μm、体積中空率55%) 8部
ポリビニルアルコール(商品名:PVA205、クラレ製) 10部
ポリブタジエン樹脂(商品名:LX111、Tg=−80℃、日本ゼオン製) 45部
水 200部
【0054】
(金属蒸着層基材Bの作成)
中間層基材Bを用い、実施例1と同様に金属蒸着基材Bを作成した。得られた金属蒸着基材Bは、金属蒸着層の厚さが蛍光X線で350Åであった。
【0055】
(受容シートCの作成)
上記金属蒸着層基材Bに、下記組成の受容層塗工液Cを、塗工量が3g/mになるように塗工、乾燥した後、グロスカレンダーにて平滑化処理を行い、受容シートCを得た。
受容層塗工液C
ポリエステル樹脂(商品名:バイロン200、東洋紡製、Tg67℃) 100部
シリコーンオイル(商品名:KF393、信越化学製) 2部
イソシアネート化合物(商品名:タケネートD−110N、武田薬品製) 6部
トルエン/メチルエチルケトン=1/1(質量比)の混合溶媒 300部
【0056】
<比較例1>
実施例1において、金属蒸着層基材Aを形成しない以外は、実施例1と同様にして受容シートを作製した。
【0057】
評価
上記の各実施例及び比較例で得られた受容シートについて、それぞれ下記の方法により
評価を行い、得られた結果を表1に示す。
【0058】
「印画濃度」
市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−DR100、ソニー社製)を用いて、厚さ6μmのポリエステルフィルムの上にイエロー、マゼンタ、シアン3色それぞれの昇華性染料をバインダーと共に含むインク層を設けたインクシートを順次に受容シートに接触させ、サーマルヘッドで段階的にコントロールされた加熱を施す事により、所定の画像を受容シートに熱転写させ、各色の中間調の単色及び色重ねの画像をプリントした。受容シート上に転写された印加エネルギー別の記録画像について、マクベス反射濃度計(商品名:RD−914、Kollmorgen社製)を用いて、その反射濃度を測定した。印加エネルギーの低い方から15ステップ目に相当する高階調部の濃度を印画濃度として表1に表示した。
【0059】
「画像均一性」
更に光学濃度(黒)が0.3に相当する階調部分の記録画像の均一性を、濃淡むら及び白抜けの有無について目視評価した。評価結果の良好なものを○、わずかに濃淡ムラや白ヌケがあるが、実用上問題ないものを△、濃淡むら及び白抜けの欠陥の著しいものを×と表示した。
【0060】
「画像の滲み」
市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−DR100、ソニー社製)を用いて、厚さ6μmのポリエステルフィルムの上にイエロー、マゼンタ、シアン3色それぞれの昇華性染料をバインダーと共に含むインク層を設けたインクシートを順次に受容シートに接触させ、サーマルヘッドで段階的にコントロールされた加熱を施す事により、所定の画像を受容シートに熱転写させ、黒色及び、青色の細線の画像をプリントした。次いで、この細線印画したシートを、温度35℃、相対湿度95%の環境下で、2週間放置した。画像の滲み率は下記(1)式に従って算出した。
滲み率=(放置後の細線の太さ)/(放置前の細線の太さ)×100 (1)
【0061】
滲み率が110%未満を◎、110%以上130%未満を○、130%以上を×として評価した。
【0062】
「金属光沢の外観」
市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−DR100、ソニー社製)を用いて、厚さ6μmのポリエステルフィルムの上にイエロー、マゼンタ、シアン3色それぞれの昇華性染料をバインダーと共に含むインク層を設けたインクシートを順次に受容シートに接触させ、サーマルヘッドで段階的にコントロールされた加熱を施す事により、所定の画像を受容シートに熱転写させ、各色の中間調の単色及び色重ねの画像をプリントした。
上記の条件で得られた画像について、目視にて金属光沢感、外観を調べた。
金属光沢があり、外観良好であるものを○、金属光沢がなく、外観不良であるものを×として評価した。
【0063】
「受容層剥がれ」
得られた受容シートの受容層面に粘着テープ(ニチバン製、#204)を貼り、1秒に50mmの速度で剥がしたときの外観を目視評価した。受容層の剥がれが全くなく良好なものを◎、わずかに剥がれがあるが実用上問題ないものを○、剥がれが著しく、実用上問題となるものを×として評価した。
【0064】
【表1】

表1から明らかなように、本発明の熱転写受容シートは、印画濃度が高く、画像均一性に優れ、画像の滲みがなく、金属光沢の外観に優れた熱転写受容シートである。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明により、印画濃度が高く、画像均一性に優れ、画像の滲みがなく、金属光沢のある写真画像の形成を可能とする熱転写受容シートを提供することができ、実用上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状支持体の少なくとも一面に、中空粒子を含有する中間層、画像受容層が順次積層された熱転写受容シートにおいて、中間層と画像受容層の間に、金属蒸着層を有することを特徴とする熱転写受容シート。
【請求項2】
金属蒸着層が、直接蒸着法で形成され、金属蒸着層の厚さが300〜600Åである請求項1に記載の熱転写受容シ−ト。
【請求項3】
前記画像受容層が、ブチラール化度70〜80mol%で、かつ分子量15000〜35000であるポリビニルブチラール樹脂を含有する請求項1または2に記載の熱転写受容シ−ト。
【請求項4】
前記画像受容層が、トリルトリアゾール化合物を0.1〜5質量%含有する請求項1〜
3のいずれか1項に記載の熱転写受容シ−ト。

【公開番号】特開2009−154399(P2009−154399A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335445(P2007−335445)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】