説明

熱転写受容シート

【課題】高速印画時においても、受容層面へのインクリボンの保護層転写性が良好で、インクリボンからの剥離性能に優れ、かつ記録濃度が高く、さらに画像の耐光性に優れた熱転写受容シートを提供する。
【解決手段】シート状支持体と、このシート状支持体の少なくとも一面上に形成された画像受容層とを有する熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、多価カルボン酸全成分の75モル%以上がイソフタル酸である多価カルボン酸成分と、脂肪族多価アルコール及び/又は脂環族多価アルコールを主成分とする多価アルコール成分とを重縮合したポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂、1分子中に加水分解性アルコキシシリル基とエポキシ基を併せ有する化合物を含有する熱転写受容シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料染着性熱可塑性樹脂を主成分とする画像受容層(以下、単に受容層とも言う。)を有する熱転写受容シート(以下、単に受容シートとも言う。)に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は記録濃度が高く、かつ画像の耐光性が良好で、高速印画時においてもインクシート(以下、インクリボンとも言う。)の染料層からの剥離性、及びインクリボンの転写型ラミネート層(以下、単に保護層とも言う。)との接着性に優れる受容シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
染料熱転写方式は、インクリボンと受容シートとを重ね合わせ、サーマルヘッドなどから供給される熱によりインクリボン染料層部の昇華性染料を受容シートの受容層上に転写した後、両者を剥離して画像を形成するものである。受容層に用いられる染料染着性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂等が、また離型剤としてシリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、脂肪酸系離型剤などが提案されてきた。
【0003】
近年、耐光性や耐脂性といった画像の保存性を向上させるために、インクリボン上の3色または4色の染料を順次転写した後、保護層を設ける「オーバーラミネート」方式が主流になってきた。この方式では、受容層はインクリボンの染料層表面に対しては剥離性を有し、インクリボンの保護層表面に対しては接着性を有するという、相反する物性を実現する必要がある。剥離性と接着性の両立は、受容層中の染料染着性熱可塑性樹脂として塩化ビニル系樹脂やセルロース系樹脂を用いることで対応可能であったが、塩化ビニル系樹脂は廃棄燃焼時にダイオキシンが発生し易いという点で近年使用が敬遠されてきており、またセルロース系樹脂は記録濃度が低いため、近年のプリンター高速化には対応出来なかった。セルロース系樹脂の記録濃度を上げるためには可塑剤等の使用が提案されてきたが、高温高湿下で印画画像を保存すると画像が滲んだり、長期間保存すると可塑剤がブリードアウトし、正常に画像を記録出来なくなることがあった。
【0004】
一方記録濃度が高い染料染着性樹脂としては、従来、ポリエステル樹脂が使われてきた(例えば、特許文献1〜5参照。)が、例えば、高い印画濃度を得る為にガラス転移温度の低いポリエステル樹脂を使用すると、受容層の耐熱性が低下し、プリンターの設計条件によっては受容層がインクリボンに融着する障害が発生するという問題があった。近年、プリンターの高速化が進んでいる為、印画後、より短時間でインクリボンと受容層が剥離される傾向にあり、受容層の耐熱性が重要となってきているとともに、より低エネルギーで高い記録濃度が得られる受容層が求められている。
【0005】
また、ポリエステル樹脂を用いた場合には、受容層のインクリボンからの剥離性および熱転写性保護層との接着性の両立が難しいという問題がある。ポリエステル樹脂は、通常イソシアネート等の硬化剤を用いることによって耐熱性を得ているが、熱転写性保護層と化学結合可能な分子構造部位が少なくなり、硬化剤を多量に用いてポリエステル樹脂の官能基を硬化剤との架橋に使用してしまうと熱転写性保護層との接着性が得られない。一方、熱転写性保護層との接着性を得る為に硬化剤使用量を抑えると十分な耐熱性が得られない。
【0006】
従来、飽和ポリエステル樹脂は、高い印画濃度が得られる染料染着性樹脂であるが、受容層の耐熱性が低く、高エネルギー印画で受容層の一部が融着して印画濃度が低下するヤケ現象が発生したり、保護層との接着性が悪く、保護層を転写しにくいという欠点がある。このような欠点を補う為、酪酸酢酸セルロース(セルロースアセテートブチレート、CABとも称される。)を併用する等の提案がなされているが、これらは相溶性が悪く、均一な塗工液を得ることが困難であり、印画濃度を著しく低下させる等の問題があった。
【0007】
また、受容層がインクリボンに融着する障害を回避する為、分岐構造を有するポリエステル樹脂を使用することによって受容層の耐熱性を上げることが提案されている(例えば、特許文献6参照。)。然しながら、近年プリンターの高速化が進み、前記のような分岐構造による耐熱性向上は、染料の染着性が損われて印画濃度が低下する問題がある。また印画濃度を向上させる方法として芳香族を主成分とするポリエステル樹脂が提案されている(例えば、特許文献7参照。)が、耐光性が著しく低下するという欠点がある。
【0008】
【特許文献1】特開昭57−107885号公報(第1頁)
【特許文献2】特開平5−581号公報(第2頁)
【特許文献3】特開平5−64978号公報(第2頁)
【特許文献4】特開平5−238167号公報(第2頁)
【特許文献5】特開2003−200668号公報(第2頁)
【特許文献6】特開平2−112991号公報(第1頁)
【特許文献7】特開平2−34392号公報(第1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を改良し、高速印画時においても、受容層面へのインクリボンの保護層転写性が良好で、インクリボンからの剥離性能に優れ、かつ記録濃度が高く耐光性の良い受容シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)シート状支持体と、このシート状支持体の少なくとも一面上に形成された画像受容層とを有する熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、多価カルボン酸全成分の75モル%以上がイソフタル酸である多価カルボン酸成分と、脂肪族多価アルコール及び/又は脂環族多価アルコールを主成分とする多価アルコール成分とを重縮合したポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂を含有することを特徴とする熱転写受容シート。
(2)前記ポリエステル樹脂とウレタン樹脂の含有量の質量比率が、40/60〜95/5である(1)項に記載の熱転写受容シート。
【0011】
(3)前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が30〜90℃であり、かつウレタン樹脂のガラス転移温度が−50〜40℃である(1)項又は(2)項に記載の熱転写受容シート。
(4)前記画像受容層上に、さらにシリコーングラフト共重合樹脂を含有するオーバーコート層を有し、オーバーコート層の塗工量が1〜25mg/mである(1)項〜(3)項のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。
(5)前記画像受容層が、1分子中に加水分解性アルコキシシリル基とエポキシ基を併せ有する化合物で架橋されている(1)項〜(4)項のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。
【発明の効果】
【0012】
本発明の受容シートは、高い印画濃度と良好な耐光性を保ちながら、インクリボンからの剥離性に優れ、且つインクリボンの保護層転写性が良好な受容シートであり、昇華熱転写方式を初めとする各種の熱転写方式のフルカラープリンターに有用なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(受容層)
本発明は、シート状支持体の少なくとも一方の面に受容層を形成してなる受容シートにおいて、受容層が、分子中に特定の組成を有するポリエステル樹脂、およびウレタン樹脂を含むことを特徴とするものである。
本発明の受容層で使用するポリエステル樹脂は、多価カルボン酸成分と多価アルコール成分の重縮合により合成される。
【0014】
(多価カルボン酸成分)
本発明の受容層で用いられるポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の多価カルボン酸全成分中に、イソフタル酸成分を75モル%以上含むことを特徴とするものであり、より好ましくは、多価カルボン酸全成分中に、イソフタル酸を85〜100モル%含む。イソフタル酸成分が75モル%未満では、得られるポリエステル樹脂の耐光性が低下することがある。
【0015】
また本発明で使用する多価カルボン酸成分中には、本発明の効果を損なわない範囲で脂環族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、或いはイソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸を用いることも可能である。脂環族ジカルボン酸としては、分子構造の基本骨格として、分子中に脂環族環を少なくとも1個有するものが挙げられる。脂環族環として、具体的には、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、デカリン環、ノルボルナン環、アダマンタン環等が好ましい。
【0016】
脂環族ジカルボン酸の具体例としては、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−t−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジメチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジエチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジプロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,3−ジブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−エチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−3−プロピル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−エチル−3−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−メチル−3−t−ブチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びそのアルキル誘導体、
【0017】
また、2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−エチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−プロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジメチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジエチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジプロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,4−ジブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジメチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジエチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジプロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3,8−ジブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−エチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−プロピル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−メチル−4−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸、3−エチル−4−ブチル−2,6−デカリンジカルボン酸等の2,6−デカリンジカルボン酸及びそのアルキル誘導体、
【0018】
また、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、2,3−ノルボルナンジカルボン酸、アダマンタンジカルボン酸、ジメチルアダマンタンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、4,4’−カルボキシメチルシクロヘキサン、4,4’−カルボキシエチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0019】
イソフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸としては、分子構造の基本骨格として、芳香族環が1個のもの、またビフェニル、ジフェニルメタン、ビベンジル、スチルベン等の形態で独立した芳香族環を骨格中に2個〜3個有するもの、またインデン、テトラリン等の芳香族環に、5員又は6員の他の炭素環の縮合環を有するもの等を使用することができる。該芳香族ジカルボン酸の炭素数は、通常8〜30の範囲であり、好ましくは8〜20、より好ましくは8〜15の範囲である。
【0020】
芳香族ジカルボン酸の具体例としては、テレフタル酸、フタル酸、P−キシリレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルプロパンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸等が挙げられる。
【0021】
また、上記多価カルボン酸と同様に用いられる同カルボン酸の誘導体としては、上記ジカルボン酸のエステル化合物、酸無水物、酸ハロゲン化物などが挙げられる。これらの中では、エステル化合物、酸無水物が好ましく、エステル化合物としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、アミル、ヘキシルなどの炭素数が1〜6の低級アルキル基を含むエステル化合物が特に好ましい。
【0022】
本発明のポリエステル樹脂の多価酸成分としては、本発明の効果を損なわない範囲で、上述の脂環族及び芳香族ジカルボン酸以外に、必要に応じて脂肪族ジカルボン酸等を含有してもよい。脂肪族ジカルボン酸としては、直鎖状又は分岐状の脂肪族ジカルボン酸及びそれらのエステル化合物、酸ハロゲン化物、酸無水物等の誘導体が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソセバシン酸、ブラシル酸、ドデカンジカルボン酸、ポリアルケニルコハク酸等の脂肪族飽和ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸、重合脂肪酸のダイマー酸、水添ダイマー酸などが挙げられる。これらの中でも、アジピン酸、セバシン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸が好ましく用いられる。
【0023】
本発明においては、多価カルボン酸成分として、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエステル樹脂の分岐構造形成、ガラス転移温度上昇のために、3価以上のカルボン酸を含有させることができる。3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、例えば、トリメリット酸、トリカルバリル酸、カンホロン酸、トリメシン酸、1,2,5−ナフタレントリカルボン酸、2,3,6−ナフタレントリカルボン酸、1,8,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、重合脂肪酸のトリマー酸などの3価以上のカルボン酸やこれらのエステル化合物及び酸無水物などが挙げられる。該化合物の含有量は、全カルボン酸成分中の0.5〜10モル%が好ましく、より好ましくは1〜7モル%である。
【0024】
また本発明で使用する多価カルボン酸成分中には、本発明の効果を損なわない範囲で、蟻酸、酢酸、酪酸、2−メチルプロパン酸、吉草酸、イソオクチル酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリル酸、イソステアリル酸、アラキン酸、リノール酸、オレイン酸、エライジン酸、トール脂肪酸等の1価カルボン酸及び/又はこれらのエステル化合物を含有してもよい。これらの化合物の含有量としては、多価カルボン酸成分中に、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下の範囲である。
【0025】
(多価アルコール成分)
本発明の受容層で用いられるポリエステル樹脂は、多価アルコール成分として、脂環族多価アルコール及び/又は脂肪族多価アルコールを主成分として含むことを特徴としており、耐光性等の点でより優れる。脂環族多価アルコール及び/又は脂肪族多価アルコールの合計含有量は、多価アルコール全成分中に、50〜100モル%が好ましい。
脂環族や脂肪族の多価アルコールとしては、主に脂環族グリコール類、脂肪族グリコール類が好ましく使用され、これらは1種単独で用いてもよく、または2種以上を適宜に組み合わせて使用してもよい。
【0026】
脂環族グリコールとしては、具体的には1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添BIS−A(水素化ビスフェノールA)、1,2−シクロペンタンジオール、1,4−シクロオクタンジオール、2,5−ノルボルナンジオール、アダマンタンジオール等が挙げられる。これらのうちで、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添BISA等が好ましく使用される。
【0027】
脂肪族グリコール類等が挙げられ、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。これらのうちで、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール等が好ましく使用される。
【0028】
また、上記グリコール成分に加えて3価以上の多価アルコールを添加して縮重合することも可能である。3価以上のアルコール化合物の具体例としては、グリセリン、ジグリセロール、ポリグリセロール等のグリセロール化合物、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等のメチロール化合物が挙げられる。これらの化合物の含有量は、全アルコール成分中の0.5〜10モル%が好ましく、より好ましくは1〜7モル%である。3価以上の多価アルコール成分の全アルコール成分に対する含有量が10モル%を超えると、得られるポリエステル樹脂の架橋によるゲル化が顕著となり、樹脂の溶解性が劣ることがある。一方、0.5モル%未満では、得られるポリエステル樹脂の分岐構造が少なく、十分な耐熱性向上効果が得られないことがある。
【0029】
上記の原料より合成される本発明のポリエステル樹脂の分子量は特に限定されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算数平均分子量で3000〜50000の範囲であることが好ましく、より好ましくは5000〜30000の範囲である。数平均分子量が3000未満の場合には、染料受容層とインクリボンとの融着が発生することがあり、一方、数平均分子量が50000を超えると、有機溶剤に溶解して使用する場合にポリエステル樹脂含有塗工液の粘度が上昇して、塗布面の平滑性が劣ることがある。
【0030】
さらに、本発明で使用されるポリエステル樹脂のガラス転移温度は、30〜90℃であることが好ましく、より好ましくは40〜80℃である。ポリエステル樹脂のガラス転移温度が30℃未満の場合には、受容層とインクリボンとの融着が発生することがあり、一方、ガラス転移温度が90℃を超えると受容層の染着性が劣り、十分な印画濃度が得られないことがある。ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、主に多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分中の芳香族成分、脂環族成分、脂肪族成分等の配合比率により適宜調整される。なお本発明のガラス転移温度(℃)は、JIS K 7121に準拠して求められる値である。
【0031】
本発明の受容層で使用されるポリエステル樹脂は、塗工方法、製造設備によって、有機溶剤溶解型、エマルジョン、水溶性のいずれかの形態から選択可能である。
【0032】
さらに、本発明は受容層中にウレタン樹脂を含有せしめることを特徴とするものであり、印画物の耐光性を更に改善することが可能である。ポリエステル樹脂とウレタン樹脂の含有量の質量比率(ポリエステル樹脂/ウレタン樹脂)は、40/60〜95/5の範囲が好ましく、より好ましくは50/50〜90/10の範囲である。ポリエステル樹脂とウレタン樹脂の含有量の質量比率が40/60未満では、高温高湿環境下での印画物の保存性が低下することがある。一方95/5を超えると、印画物の耐光性が不足することがある。ウレタン樹脂の使用量は、受容層全固形分100質量部に対して10〜50質量部がより好ましく、15〜40質量部がさらに好ましい。
【0033】
本発明の受容層で使用されるウレタン樹脂は、ポリエステル、ポリカーボネート、長鎖ポリエーテル、イソシアネート、及びグリコール成分等より合成されるものであるが、ポリアクリル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等から選ばれる1種、又は2種以上のプレポリマーと共重合していてもよく、特にポリアクリルプレポリマーと共重合したポリウレタン樹脂は、耐光性に優れ、本発明の使用材料として好ましい。
受容層に用いられるウレタン樹脂の形態としては前記ポリエステル樹脂同様、有機溶剤溶解型、エマルジョン、水溶性の中から塗工方法、製造設備によって適宜選択される。
【0034】
本発明の受容層に用いられるウレタン樹脂のガラス転移温度は、−50〜40℃の範囲が好ましく、より好ましくは−40〜30℃のウレタン樹脂が用いられる。ウレタン樹脂のガラス転移温度が−50℃未満の場合は、受容層の耐熱性が低下し、インクリボンからの剥離性が悪化することがある。また、ウレタン樹脂のガラス転移温度が40℃を超えると印画物の耐光性が不十分となることがある。ウレタン樹脂のガラス転移温度は、合成材料であるポリエステル、長鎖ポリエーテル、イソシアネート、及びグリコール成分等の種類と配合比率により適宜調整される。
【0035】
さらに本発明は、受容層上に中にシリコーングラフト共重合樹脂を含むオーバーコート層を設けることが好ましい。前記オーバーコート層を設けることによって、インクリボンからの剥離性により優れ、且つインクリボンの保護層転写性が良好な受容シートを得ることが可能となる。シリコーングラフト共重合樹脂の例としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等にシリコーンをグラフト重合したものが挙げられる。前記オーバーコート層の塗布量は、1〜25mg/mが好ましく、より好ましくは2〜20mg/m、更に好ましくは4〜10mg/mである。オーバーコート層の塗布量が2mg/m未満では、インクリボンからの剥離性の改善効果が不十分なことがあり、一方、20mg/mを超えると保護層転写性に問題が生じる場合がある。
【0036】
さらに本発明は、受容層に架橋剤として、1分子中に加水分解性アルコキシシリル基とエポキシ基を併せ有する化合物(以下、アルコキシシリル基エポキシ基含有化合物という)を含有することが好ましい。エポキシ化合物を、アミノ基・カルボキシル基など活性水素を有する重合体樹脂成分に架橋剤として配合したような組成物では、常温で容易に硬化がすすみ、耐候性・耐熱性にすぐれた硬化物を与えることが知られている。一方、加水分解性アルコキシシリル基は、加水分解されシラノール基の脱水縮合反応によりシロキサン結合を生成する。ケイ素と酸素が交互に結合したシロキサン結合は、結合エネルギーが大きいため耐熱性に優れている特長がある。
受容シートの受容層中に架橋剤として、本発明のアルコキシシリル基エポキシ基含有化合物を配合した場合、受容層中の染着性樹脂を架橋させるとともに、自己架橋でシロキサン結合を生成することから、受容層全体の耐熱性を著しく向上させ、その結果インクリボンからの剥離性に優れた受容シートを得ることが可能である。
本発明のアルコキシシリル基エポキシ基含有化合物としては、アルコキシシリル基とエポキシ基を両方有するビニル系重合体や、エポキシ基を有するシランカップリング剤などが挙げられる。
前記アルコキシシリル基とエポキシ基を両方有するビニル系重合体を得るには公知の方法が適用でき、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどの加水分解性アルコキシシリル基を有するビニル系単量体と、アリルグリシジルエーテル、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジルフマレート、ジメチルグリシジルマレートなどのエポキシ基含有ビニル系単量体を用いて、溶液ラジカル共重合などの方法で得ることができる。前記エポキシ含有シランカップリング剤としては、3―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3―グリシドキシプロピルメチルシエトキシシラン、3―グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
本発明のアルコキシシリル基としては、特に限定されるものではないが、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t―ブトキシ基、ペンチルオキシ基、オクチルオキシ基など、加水分解されやすい反応性基であるアルコキシ基がケイ素原子にひとつ以上結合しているものが挙げられる。ケイ素原子にはアルコキシ基以外にアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アミノオキシ基、フェノキシ基などが結合していてもよい。
アルコキシシリル基エポキシ基含有化合物の、受容層への配合量は、受容層中に0.1〜10質量%の範囲が好ましく、0.2〜8質量%がより好ましい。0.1質量%未満では、剥離性改善の効果が少なく、10質量%を超えると、染着性樹脂の染料染着性を損ない印画濃度が低下する問題が生じる場合がある。
また本発明の性能を損なわない程度の配合量で、インクリボンからの剥離性向上等のために、受容層中に公知の離型性物質を含有せしめることも可能である。特に限定されるものではないが、具体的には、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メタクリル酸変性シリコーンオイル等の変性シリコーンオイルや、パラフィンワックス、ポリエチレン、フルオロカーボン等の炭化水素系、ステアリン酸等の脂肪酸系、脂肪族アミド系、エステル系、アルコール系、金属石鹸系、天然ワックス系の離型性物質が挙げられる。これら離型性物質は受容層の染料染着性樹脂100質量部に対し、0.1〜20質量部の範囲で配合されることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0037】
さらに剥離性を向上させるために、シリル基含有重合体樹脂以外の公知の架橋剤を併用することも可能である。たとえばポリイソシアネート化合物、エポキシ、オキサゾリン、カルボジイミド、有機金属化合物等の架橋剤により染料染着性樹脂を架橋させることも可能である。これら架橋剤は染料染着性樹脂の官能基数1に対し、架橋剤の官能基数0.1〜1,000程度になるように配合されることが好ましい。
【0038】
またポリエステル樹脂及びウレタン樹脂の他に、適宜公知の染料染着性樹脂が併用されてもよい。特に限定されるものではないが、例えば、酪酸酢酸セルロース、ポリビニルホルマール、ポリアセタール、ポリビニルブチラール等のポリアセタール系樹脂、ビスフェノールA(BPA)型エポキシ樹脂、水添BPA型エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、スチレン−アクリルニトリル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピルセルロース、硝酸セルロース、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂等の樹脂のうち1種或は2種以上を併用することも可能である。
【0039】
また染着性をコントロールする目的等で、可塑剤を使用することも可能である。可塑剤としてはフタル酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、エポキシ系、ポリエステル系等、公知のものが使用でき、1種又は2種以上を併用することも可能である。可塑剤の配合量としては、受容層の染料染着性樹脂100質量部に対して1〜50質量部程度が好ましく、ブリードアウトの兼ね合いから、1〜30質量部の配合がより好ましく用いられる。
【0040】
さらに耐光性を向上させるために、紫外線吸収剤(以下、UVAと称する。)、もしくはヒンダードアミン系光安定化剤(以下、HALSと称する。)、酸化防止剤を単独、もしくは併用することも可能である。UVAとしては、一般に、ベンゾトリアゾール系UVA、トリアジン系UVA、蓚酸アニリド系UVA、ベンゾフェノン系UVAが知られているが、特にベンゾトリアゾール系は他のUVAと比較して、吸収波長域が広く、また高波長側に極大吸収ピークを持ち、また吸光度も大きいことからHALSと併用したときに特に優れた効果が得られるため好ましく用いられる。配合量としては受容層の染料染着性樹脂100質量部に対して、1〜70質量部が配合され、特にUVA投入量と効果の兼合いから、1〜40質量部の配合が好ましく用いられる。HALSは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン骨格を有する化合物であり、この骨格を有するものであれば特に限定されるものではない。HALSは受容層の熱可塑性樹脂100質量部に対して、1〜70質量部が配合され、特にHALS投入量と効果の兼合いから、1〜40質量部の配合が好ましく用いられる。
【0041】
受容層の固形分塗工量は、好ましくは1〜12g/m程度であり、より好ましくは2〜10g/mの範囲で調節される。因みに、受容層の固形分塗工量が1g/m未満では、受容層が支持体表面を完全に覆うことができず、画質の低下を招いたり、サーマルヘッドの加熱により受容層とインクリボンが接着してしまう融着トラブルが発生することがある。一方、受容層の固形分塗工量が12g/mを超えると効果が飽和して不経済であるばかりでなく、受容層の強度が不足したり、受容層の厚みが増し支持体の断熱効果が十分に発揮されず、画像濃度が低下することがある。
【0042】
(シート状支持体)
本発明における受容シートの支持体としては、セルロースパルプを主成分とする紙類や合成樹脂フィルム等が使用される。例えば、上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙等の紙類、または、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂を主成分としたフィルムまたはシートや、ポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を主成分とする多孔質単層延伸フィルム又は多孔質多層延伸フィルム(例えば、合成紙)等、およびこれらのフィルム同士、又はこれらのフィルムと他のフィルム及び/又は紙等とを積層貼着させた積層体等が適宜用いられる。
【0043】
また支持体の基材表層(受容層側の基材)としては、特に限定するものではないが、印画された画像の均一性や階調性の点から、ポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を主成分とする多孔質単層延伸フィルム又は多孔質多層延伸フィルム(例えば、合成紙)が好ましく使用される。
さらに、静電気の防止、白色度向上のために、シート状支持体と受容層との間に、各種公知の導電剤や、白色顔料、蛍光染料等を含む塗工層を設けることも可能である。
【0044】
本発明においては、上記シート状支持体の中でも、セルロースパルプを主成分とする紙類が、コスト的にも有利であり、得られる受容シートの風合いが銀塩写真用の印画紙に近いこと等から、好ましく使用される。紙支持体を使用する場合には、該支持体上に中空粒子を含有する中間層を設けることが好ましい。中間層で使用される中空粒子の材質、製造方法は特に限定されるものではないが、具体的には、中空粒子の壁を形成する材料としてアクリルニトリル、塩化ビニリデン、スチレンアクリル酸エステル等の単独重合体、それらの共重合体、それらの単独重合体混合物が挙げられる。それら中空粒子の製造方法としては、樹脂粒子中にブタンガスを封入し、加熱発泡させる方法や、エマルジョン重合方式などが挙げられる。
【0045】
(バリア層)
中空粒子を有する中間層と受容層との間には、バリア層が設けられることが好ましい。一般に、受容層用塗工液の溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤が使用されるため、バリア層は、有機溶剤浸透による中間層の中空粒子の膨潤、溶解による、中空粒子の変形、破壊を防ぐための障壁として有効である。
【0046】
バリア層に使用される樹脂としては、フィルム形成能に優れ、有機溶剤の浸透を防止し、弾力性、柔軟性のある樹脂が使用される。具体的には、デンプン、変性デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体塩、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩、スチレン−アクリル酸共重合体塩、エチレン−アクリル酸共重合体塩、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂等の水溶性樹脂が使用される。またスチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステル樹脂系ラテックス、メタアクリル酸エステル系共重合樹脂ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体ラテックス、ポリエステルポリウレタンアイオノマー、ポリエーテルポリウレタンアイオノマーなどの水分散性樹脂も使用することができる。上記の樹脂の中でも、水溶性樹脂が好ましく使用される。また上記の樹脂は単独で使用してもよく、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0047】
さらに、バリア層には各種の顔料が含有されてもよく、好ましくは膨潤性無機層状化合物が使用され、塗工用溶剤の浸透防止ばかりでなく、熱転写染着画像のニジミ防止等においても優れた効果が得られる。膨潤性無機層状化合物としては、例えば、フッ素金雲母、カリウム四珪素雲母、ナトリウム四珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライトなどの合成マイカ、或はナトリウムヘクトライト、リチウムヘクトライト、サポナイトなどの合成スメクタイトがより好ましく使用される。これらの中でもナトリウム四珪素雲母が特に好ましく、熔融合成法により、所望の粒子径、アスペクト比、結晶性のものが得られる。
【0048】
(裏面層)
本発明の受容シートにおいて、受容層に対し反対の面(裏面)上に、走行性向上、静電気の防止、受容シート相互の擦れによる受容層の損傷防止、さらにはプリントした受容シートを重ね置きしたとき、受容層からそれに接触隣接する受容シート裏面への染料移行の防止などを目的として裏面層が形成されていてもよい。裏面層には接着成分としての樹脂と帯電防止処理のために各種の導電剤を添加することができる。この導電剤としては、カチオン系ポリマーを用いることが好ましい。カチオン系ポリマーとしては、一般的にポリエチレンイミンや、カチオン性モノマーを含むアクリル系重合体、カチオン変性アクリルアミド系重合体およびカチオン澱粉等を用いることができる。
【0049】
本発明において、受容シートにカレンダー処理を施してもよく、受容層表面の凹凸を減少させ、平滑化する事も可能である。カレンダー処理は、例えば紙類を支持体として使用した場合には、中間層、バリア層あるいは受容層塗工後のいずれの段階で行ってもよい。カレンダー処理に使用されるカレンダー装置やニップ圧、ニップ数、金属ロールの表面温度等については特に限定されるものではないが、カレンダー処理を施す際の圧力条件としては、0.5〜50MPaが好ましく、より好ましくは1〜30MPaである。温度条件は20〜150℃が好ましく、更に好ましくは30〜130℃である。カレンダー装置としては、例えばスーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー、クリアランスカレンダー等の一般に製紙業界で使用されているカレンダー装置を適宜使用できる。
【実施例】
【0050】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、勿論本発明はこれによって限定されるものではない。特に断らない限り、実施例中の「部」および「%」は、すべて「質量部」および「質量%」を示し、溶剤に関するものを除き固形分量である。
「ポリエステル樹脂の製造」
下記表1に示す多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を用いて、公知の方法により各々のポリエステル樹脂(エマルジョン)を合成した。
【0051】
【表1】

実施例1
「中間層の形成」
シート状支持体として、厚さ150μmのアート紙(商品名:OK金藤N、174.4g/m、王子製紙製)を使用し、その片面に下記組成の中間層用塗工液−1を、乾燥後の膜厚が51μmになるように塗工、乾燥して中間層を形成した。
中間層用塗工液−1
アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを主成分とする共重合体からなる既発泡中空粒子(平均粒子径3.2μm、体積中空率76%) 50部
ポリビニルアルコール(商品名:PVA205、クラレ製) 10部
スチレン−ブタジエンラテックス(商品名:PT1004、日本ゼオン製) 40部
水 250部
【0052】
「バリア層及び受容層の形成」
更に上記中間層上に下記組成のバリア層用塗工液−1を、固形分塗工量が2g/mになるように塗工、乾燥してバリア層を形成し、更に上記バリア層上に、下記組成の受容層用塗工液−Aを固形分塗工量が5g/mになるように塗工、乾燥し、受容層を形成した。
バリア層用塗工液−1
膨潤性無機層状化合物(ナトリウム4珪素雲母、粒子平均長径6.3μm、アスペクト比2700) 30部
ポリビニルアルコール(商品名:PVA105、クラレ製) 50部
スチレン−ブタジエンラテックス(商品名:L−1537、旭化成製) 20部
水 1100部
受容層用塗工液−A
ポリエステル樹脂エマルジョンA 80部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー1200、日華化学製、
ガラス転移温度:−20℃) 20部
ポリイソシアネート(商品名:NKアシストIS−70S、日華化学製) 2部
【0053】
「裏面層の形成」
次にシート状支持体の受容層を設けた側とは反対側の面上に下記組成の裏面層用塗工液−1を、乾燥後の固形分塗工量が3g/mになるように塗工、乾燥して裏面層を形成し、その後50℃で4日間熱処理を行った。更に、各塗工層を形成したシート状支持体の表面平滑化のために、カレンダー処理(ロール表面温度78℃、ニップ圧2.5MPa)を行った。
裏面層用塗工液−1
ポリビニルアセタール樹脂(商品名:エスレックKX−1、積水化学工業製)40部
ポリアクリル酸エステル樹脂(商品名:ジュリマーAT613、日本純薬製)20部
ナイロン樹脂粒子(商品名:MW330、神東塗料製) 10部
ステアリン酸亜鉛(商品名:Z−7−30、中京油脂製) 10部
カチオン型導電性樹脂(商品名:ケミスタット9800、三洋化成製) 20部
水/イソプロピルアルコール=2/3(質量比)混合液 400部
【0054】
「オーバーコート層の形成」
更に上記シート状支持体の受容層上に下記組成のオーバーコート層用塗工液−1を、固形分塗工量が3mg/mになるように塗工、乾燥してオーバーコート層を形成し、受容シートを作成した。
オーバーコート層用塗工液−1
シリコーングラフトアクリル樹脂(商品名:X22−8053、
信越化学工業製) 1部
イソプロパノール 100部
【0055】
実施例2
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Bを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−B
ポリエステル樹脂エマルジョンA 80部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー700、日華化学製、
ガラス転移温度:−40℃) 20部
ポリイソシアネート(商品名:NKアシストIS−70S、日華化学製) 2部
【0056】
実施例3
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Cを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−C
ポリエステル樹脂エマルジョンA 80部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー1700、日華化学製、
ガラス転移温度:20℃) 20部
ポリイソシアネート(商品名:NKアシストIS−70S、日華化学製) 2部
【0057】
実施例4
実施例1の受容層用塗工液−Aにおいて、ポリエステル樹脂エマルジョンAの代りにポリエステル樹脂エマルジョンBを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
【0058】
実施例5
実施例1の受容層用塗工液−Aにおいて、ポリエステル樹脂エマルジョンAの代りにポリエステル樹脂エマルジョンCを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
【0059】
実施例6
実施例1のオーバーコート層の形成において、オーバーコート層の固形分塗工量が15mg/mになるように塗工、乾燥してオーバーコート層を形成した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
【0060】
実施例7
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Dを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−D
ポリエステル樹脂エマルジョンA 80部
ウレタン樹脂(商品名:エバファノールAPC−55、日華化学製、
ガラス転移温度:−50℃) 20部
ポリイソシアネート(商品名:NKアシストIS−70S、日華化学製) 2部
【0061】
実施例8
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Eを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−E
ポリエステル樹脂エマルジョンA 80部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー5500、日華化学製、
ガラス転移温度:40℃) 20部
ポリイソシアネート(商品名:NKアシストIS−70S、日華化学製) 2部
【0062】
実施例9
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Fを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−F
ポリエステル樹脂エマルジョンA 60部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー1200、日華化学製、
ガラス転移温度:−20℃) 40部
ポリイソシアネート(商品名:NKアシストIS−70S、日華化学製) 2部
【0063】
実施例10
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Gを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−G
ポリエステル樹脂エマルジョンA 40部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー1200、日華化学製、
ガラス転移温度:−20℃) 60部
ポリイソシアネート(商品名:NKアシストIS−70S、日華化学製) 2部
【0064】
実施例11
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Hを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−H
ポリエステル樹脂エマルジョンA 95部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー1200、日華化学製、
ガラス転移温度:−20℃) 5部
ポリイソシアネート(商品名:NKアシストIS−70S、日華化学製) 2部
【0065】
実施例12
実施例1のオーバーコート層の形成において、オーバーコート層の固形分塗工量が1mg/mになるように塗工、乾燥してオーバーコート層を形成した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
【0066】
実施例13
実施例1のオーバーコート層の形成において、オーバーコート層の固形分塗工量が25mg/mになるように塗工、乾燥してオーバーコート層を形成した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
実施例14
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Iを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−I
ポリエステル樹脂エマルジョンA 80部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー1200、日華化学製、
ガラス転移温度:−20℃) 20部
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM-403、信越化学工業製)
0.5部
実施例15
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Jを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−J
ポリエステル樹脂エマルジョンA 80部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー1200、日華化学製、
ガラス転移温度:−20℃) 20部
加水分解性アルコキシシリル基およびエポキシ基含有ビニル系共重合体樹脂(商品名:WSA-950、大日本インキ化学工業製) 8部
【0067】
比較例1
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Kを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−K
ポリエステル樹脂エマルジョンD 65部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー1700、日華化学製、
ガラス転移温度:20℃) 45部
ポリイソシアネート(商品名:NKアシストIS−70S、日華化学製) 2部
【0068】
比較例2
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Lを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−L
ポリエステル樹脂エマルジョンE 65部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー1700、日華化学製、
ガラス転移温度:20℃) 45部
ポリイソシアネート(商品名:NKアシストIS−70S、日華化学製) 2部
【0069】
比較例3
受容層用塗工液−Aの代りに受容層用塗工液−Mを用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
受容層用塗工液−M
ポリエステル樹脂エマルジョンF 65部
ウレタン樹脂(商品名:ネオステッカー1700、日華化学製、
ガラス転移温度:20℃) 45部
ポリイソシアネート(商品名:NKアシストIS−70S、日華化学製) 2部
【0070】
比較例4
オーバーコート層の形成(実施例1)を省略した以外は、比較例1と同様にして受容シートを作成した。
【0071】
評価
上記各実施例および比較例で得られた受容シートについて、下記試験を行った。得られた結果を表2に示す。
【0072】
〔印画濃度試験〕
得られた受容シートに、昇華型熱転写インクリボン(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用いて、20℃環境下で黒ベタ画像を印画し、反射濃度計(商品名:マクベスRD−914、グレタグ社製)を用いて印画濃度を測定した。印画濃度を5点測定し、それらの平均値が2.1以上の濃度であれば実用上問題の無いレベルである。
【0073】
〔耐光性試験〕
上記印画物を、Xeフェードメーターで10,000kJ/mの積算照度になるまで処理した。JIS Z 8721に準拠して、色差計(グレタグ社)を用いて測定した。測定値は、JIS Z 8729に基づき、L*a*b*表色系で記録し、JIS Z 8730に基づく方法で処理前後の色差(ΔE)を算出した。色差が13以内であれば、実用上問題の無いレベルである。
【0074】
〔インクリボン剥離性試験〕
得られた受容シートに、昇華型熱転写インクリボン(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用いて、50℃環境下で、黒ベタ画像を10枚連続で印画した。その際、印画適性として受容シート表面とインクリボンとの融着状況、およびプリンターからの受容シートの排紙性等について、以下の基準で評価し、リボン剥離性として表2に示した。
◎:受容シート表面とインクリボンとの融着が全くなく、100枚連続して正常に排紙され、高温環境でも実用に問題が無い。
○:受容シート表面とインクリボンとの融着が全くなく、10枚連続して正常に排紙され、実用には全く問題がない。
△:受容シート表面とインクリボンとの軽い融着により若干騒音は生じるが、10枚とも排紙され、実用可能である。
×:受容シート表面とインクリボンとが融着を生じ、正常に排紙されないものがあり、実用には適さない。
【0075】
〔保護層転写性試験〕
得られた受容シートの受容層上に、熱転写試験機(商品名:TH−PMI2、大倉電機社製)を使用して、印加エネルギーを可変させて、昇華型熱転写インクリボン(商品名:UP−540、ソニー社製)の保護層部を転写し、保護層が転写出来る最小エネルギーを求めた。この保護層転写性試験において、保護層転写最小エネルギーが1mJ/dot以下であれば、実用上問題ない転写性レベルである。
【0076】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の受容シートは、保護層転写性及びインクリボンからの剥離性に優れ、かつ印画濃度が高く、さらに画像の耐光性に優れ、昇華熱転写方式を初めとする各種の熱転写方式のフルカラープリンターに有用なものであって、産業界に寄与するところは大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状支持体と、このシート状支持体の少なくとも一面上に形成された画像受容層とを有する熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、多価カルボン酸全成分の75モル%以上がイソフタル酸である多価カルボン酸成分と、脂肪族多価アルコール及び/又は脂環族多価アルコールを主成分とする多価アルコール成分とを重縮合したポリエステル樹脂、及びウレタン樹脂を含有することを特徴とする熱転写受容シート。
【請求項2】
前記ポリエステル樹脂とウレタン樹脂の含有量の質量比率が、40/60〜95/5である請求項1に記載の熱転写受容シート。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂のガラス転移温度が30〜90℃であり、かつウレタン樹脂のガラス転移温度が−50〜40℃である請求項1又は2に記載の熱転写受容シート。
【請求項4】
前記画像受容層上に、さらにシリコーングラフト共重合樹脂を含有するオーバーコート層を有し、オーバーコート層の塗工量が1〜25mg/mである請求項1〜3のいずれかに記載の熱転写受容シート。
【請求項5】
前記画像受容層が、1分子中に加水分解性アルコキシシリル基とエポキシ基を併せ有する化合物で架橋されている請求項1〜4のいずれかに記載の熱転写受容シート。