説明

熱転写受容シート

【課題】高湿環境での画像の滲みや染料の裏抜けがなく、且つ画像耐光性が良好な高画質熱転写受容シートを提供する。
【解決手段】シート状支持体の少なくとも一面上に、中間層、および画像受容層を順次積層した熱転写受容シートにおいて、該中間層が水溶性又は水分散性樹脂と、親水性部を有する架橋反応物を含有し、該架橋剤の親水性部が、アルキレングリコール基を含有し、架橋反応基としてカルボジイミド基又はイソシアネート基を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料熱転写方式の画像印画において使用される熱転写受容シートに関するものであり、更に詳しくは、高湿環境での画像の滲みがなく、且つ画像耐光性が良好な高画質熱転写受容シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
染料熱転写方式は、染料層を有する染料熱転写シート(以下単に、「インクリボン」ともいう)と、この染料を受容する画像受容層を有する熱転写受容シート(以下単に、「受容シート」ともいう)を用い、染料層と画像受容層を重ね合わせ、加熱により染料を画像受容層上に転写して画像を形成する方式である。加熱はサーマルヘッドで行われ、多色の色ドットによりフルカラー画像を形成する。染料を用いているため画像は鮮明で透明性が高く、写真用途に利用可能な高品質画像が得られる。
【0003】
染料熱転写方式では、加熱により染料が画像受容層に転写して、画像が形成される。転写された画像の耐光保存性は、受容層の樹脂組成に大きく依存することが知られている。画像の耐光保存性の良好な樹脂としてウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が挙げられる。しかし、これら樹脂に染着している染料は、高湿環境で樹脂内を移動しやすい性質をもつ。このため、印画した受容シートを高湿環境などに置くと、画像受容層に染着していた染料が隣接するシート状支持体中に拡散し、その結果画像の滲みが発生する問題があった。
【0004】
前記画像の滲みを防止する方法として染色バリア性を持つ樹脂(染色性の低い樹脂)を用いた中間層が提案されている(特許文献1)。
基材が染料を透過、拡散しやすい紙などの場合には、染色バリア性の中間層によって、ある程度の画像の滲み改善効果は認められる。
しかし、受容層から隣接層への染料拡散を防止しても、受容層内で染料が拡散すれば、画像の滲みは、完全には防止できない。特に画像の耐光性の良好な樹脂は、受容層内での染料拡散が顕著なものが多い。
【0005】
また、従来、熱転写受容シートの製造には、シート状基材上に、有機溶剤に溶かした樹脂を塗工して層を形成する方法が一般的であった。しかし、有機溶剤系塗料の塗工乾燥により形成された層の中には、溶剤が残留し、画像滲みを引き起こす、或いは保存性を低下させる問題があった。一方、水系樹脂を使用する場合、水系塗料は表面張力が高く、塗工ムラや斑点状の未塗工部が発生する問題がある。均一な層を成膜させるために中間層塗料にポリエチレングリコール等の成膜助剤を多量に添加すると、中間層の染料バリア性が低下し、滲み防止効果が損なわれる問題があった。
【0006】
シート状支持体と画像受容層の間に形成する中間層に、塩化ビニル系樹脂と水溶性樹脂を含有する熱転写受容シートが提案されており、塩化ビニル系樹脂とポリビニルアルコールを含有する中間層を形成し、その上に有機溶剤を溶媒とする画像受容層を形成する例が示されている(特許文献2)。しかし、ポリビニルアルコールを中間層に添加した場合、中間層の耐水性が低下して、水溶性樹脂の受容層塗料を塗工することができなかった。また、溶剤系塗料を用いて受容層を形成した場合でも、ポリビニルアルコールは、染料を透過しやすいため、ポリビニルアルコールを含有する中間層は、画像滲みを防止することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−90680号公報(第2頁)
【特許文献2】特開平8−175033号公報(第2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、画像ムラのない印画画像が得られ、高湿環境での画像の滲みがなく、且つ画像耐光性が良好な熱転写受容シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記(1)〜(4)を包含する。
(1)シート状支持体の少なくとも一面上に、中間層、および画像受容層を順次積層した熱転写受容シートにおいて、該中間層が、水溶性又は水分散性樹脂と、親水性部を有する架橋剤との架橋反応物を含有し、該架橋剤が親水性部として、アルキレングリコール基を有し、且つ、架橋反応基としてカルボジイミド基又はイソシアネート基を有するものであることを特徴とする熱転写受容シート。
(2)前記水溶性又は水分散性樹脂が、染色性を有する樹脂である(1)に記載の熱転写受容シート。
(3)前記水溶性又は水分散性樹脂が、ハロゲン基を有する樹脂である(1)〜(2)に記載の熱転写受容シート。
(4)前記シート状支持体と中間層との間に、中空粒子を含有する下塗り層を設けた(1)〜(3)に記載の熱転写受容シート。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、環境汚染や残留溶剤などの問題がない水系塗工により、高湿環境での画像の滲みがなく、且つ画像耐光性が良好な高画質熱転写受容シートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(シート状支持体)
シート状支持体としては、セルロースパルプを主成分とする紙類や合成樹脂シート類が使用される。例えば、紙類としては上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙などが挙げられる。合成樹脂を主成分としたシート類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。また多孔質延伸シート類としてはポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を主成分とした、例えば合成紙、多孔質ポリエステルシートなどが挙げられる。積層体類としては、多孔質延伸シート同士、多孔質延伸シートと他のシート及び/又は紙類等とを積層貼着させたシート状支持体などが挙げられる。
【0012】
更に前記シ−ト状支持体上に、中空粒子と接着成分を含有する下塗り層を形成することが好ましい。熱転写方式の印画は、サーマルヘッドからの加熱により行われ、サーマルヘッドと受容シートの密着性が良好なことが要求される。下塗り層を有する受容シートは、クッション性があり、サーマルヘッドとの密着性が向上し、印画の際により均一な画像を得ることができる。下塗り層で使用される中空粒子の壁を形成する材料としてアクリロニトリル、塩化ビニリデン、スチレンアクリル酸エステルの重合体等が好ましく使用される。中空粒子の製造方法としては、樹脂粒子中にブタンガス等の発泡剤を封入し、加熱発泡させる方式や、エマルジョン重合方式などが挙げられる。加熱発泡させる方式としては、中空粒子を予め過熱処理によって発泡させた既発泡中空粒子を用いる場合と、未発泡の粒子を含有した下塗り層を塗工などにより形成した後、乾燥工程などの加熱処理によって下塗り層中に中空構造を形成する場合がある。中空粒子の中空率や粒子径を一定に制御することが容易な点から本発明では、既発泡粒子を用いることが好ましい。
【0013】
(中間層)
本発明で使用される中間層は、水溶性又は水分散性樹脂を含有する。
本発明での中間層で使用する水溶性又は水分散性樹脂は、染色性を有することが好ましい。中間層で使用される水溶性又は水分散性樹脂の染色性が低い場合、画像受容層に染着した染料は、画像受容層から中間層へ移動せず、染料が拡散しやすい基材中への染料の移動は、防止できるが、画像受容層に閉じ込められた染料が画像受容層内で水平方向に拡散し、滲みが発生する。このため、中間層に用いる樹脂として、染色性を持ち、且つ滲みの少ない樹脂を使用することによって、画像受容層中で拡散する染料を中間層中に移動させて定着することができる。この中間層に用いる染色性である水溶性又は水分散性樹脂の例として、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル・アクリル酸共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリル・スチレン共重合樹脂、オレフィン系樹脂などが挙げられる。
【0014】
本発明の中間層で使用する水溶性又は水分散性樹脂としては、JIS−K7121に準拠して測定されたガラス転移温度30℃〜100℃が好ましく、40℃〜90℃がより好ましい、ガラス転移温度30℃未満では、中間層の染料定着効果が少なく、滲み防止効果が得られない場合がある。また、ガラス転移温度が100℃を超えると水溶性又は水分散性樹脂の成膜性が低下し、均一な中間層が形成されず、画像受容層の塗工性や、印画画質が悪化する場合がある。
【0015】
また、本発明の中間層で使用する水溶性又は水分散性樹脂は、ハロゲン基を有することが好ましい、ハロゲン基は、昇華熱転写方式で使用される染料を吸着する効果が高い。ハロゲン基を有する樹脂は、染色性が高く且つ一度吸着した染料を再拡散し難いため、滲み防止効果が高い。
ハロゲン基を有する樹脂の例としては、塩化ビニル・アクリル酸共重合体、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、フルオロオレフィン・アルキルビニルエステル共重合体、特開平9−40879号公報記載の臭素化エポキシ樹脂とジエタノールアミンの反応物などが挙げられる。
【0016】
本発明の中間層の形成には、アルキレングリコール基を有する親水性部、およびカルボジイミド基又はイソシアネート基を有する架橋反応基を有する架橋剤を用いる。
本発明で使用可能な架橋剤は、カルボジイミド基を有する架橋剤として、商品名カルボジライトE−01、同E−02、同SV−02、同V−02、同V−04(日清紡社製)、イソシアネート基を有する架橋剤として商品名NKアシストIS70N、同IS100N(日華化学社製)などがある。
本発明における中間層用塗料は、架橋剤の親水性部にアルキレングリコール基を有することによって、塗工性が良好であり、最低造膜温度の高いエマルジョンやガラス転移温度の高い水溶性樹脂を用いた場合でも良好な成膜性を有する。
中間層塗料に、アルキレングリコール基などの親水部のみを有する化合物を用いた場合、成膜性が改善する場合はあるが、耐水性が低くなるため高湿度環境での滲みが悪化する。
本発明の架橋剤は、塗工乾燥工程後、樹脂と架橋剤が反応し、親水性部が固定されるため、高温高湿環境下でも、中間層が膨潤することがなく、良好な滲み防止効果が保たれる。
親水性部のアルキレングリコール基としては、エチレングリコール基又はプロピレングリコール基が好ましく、ポリエチレングリコール基、ポリプロピレングリコール基、又は、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合構造を持つアルキレングリコールから選ばれ、炭素数6〜60であることが更に好ましい。炭素数6未満では、塗料の成膜性が低下し、均一な中間層が形成できない場合があり、炭素数が60を超えると滲み防止効果が低下する場合がある。
【0017】
中間層で使用される水溶性又は水分散性樹脂と架橋剤の比率は、水溶性又は水分散性樹脂固形分100質量部に対して架橋剤0.1〜60質量部が好ましく、0.5〜40質量部がより好ましい。0.1質量部未満では、塗料の成膜性改善効果が少なく、画質が低下する場合がある。また、60質量部を超えると滲み防止効果が低下する場合がある。
中間層の塗工量は、0.5〜8g/mが好ましく、より好ましくは0.5〜5g/mである。0.5g/m未満では、画像の滲み防止効果が不十分な場合がある。8g/mを超えると、印画濃度が低下する場合がある。
【0018】
(画像受容層)
本発明の画像受容層で使用される染着性樹脂としては、染料に対する親和性が高く、染料染着性の良好な熱可塑性樹脂を使用する。
上記樹脂としては、例えば、塩化ビニル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル化合物モノマーとベンゾトリアゾール骨格及び/又はベンゾフェノン骨格を有するモノマーとの共重合樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの熱可塑性樹脂は単独で使用してもよいし、また二種以上を併用して使用してもよい。
上記の中でも、印画された画像の耐光性に優れることからアクリル系樹脂、ビニル化合物モノマーとベンゾトリアゾール骨格及び/又はベンゾフェノン骨格を有するモノマーとの共重合樹脂、ウレタン系樹脂が好ましく、ウレタン系樹脂が特に好ましい。ウレタン系樹脂は中間層との密着性が良好であり、分子内に結晶領域を持つため、高温(高速)印画時にも受容層剥がれ(インクリボンと受容層樹脂が高温で貼り付き、インクリボンを剥がす際に受容層樹脂も中間層から剥がれてしまう現象)が発生しにくい。
【0019】
(アクリル樹脂)
本発明の画像受容層で好ましく使用されるアクリル樹脂は、印画された画像の耐光性に優れる点から、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート又はフェノキシアルキル(メタ)アクリレートを分子構造中に含むことが好ましく、フェノキシアルキル(メタ)アクリレートの重合体であることが特に好ましい。前記分子構造は、単量体、重合体、他の樹脂とのブロック重合体、グラフト重合体で受容層中に含有することができる。
【0020】
(ビニル化合物モノマーとベンゾトリアゾール骨格及び/又はベンゾフェノン骨格を有するモノマーとの共重合樹脂)
本発明の画像受容層で好ましく使用されるビニル化合物モノマーとベンゾトリアゾール骨格又はベンゾフェノン骨格を有するモノマーとの共重合樹脂は、2−ヒドロキシベンゾフェノン及び/又は2−ヒドロキシベンゾトリアゾールと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体が好ましく、乳化共重合体が更に好ましい。
本発明で使用可能なビニル化合物モノマーとベンゾトリアゾール骨格及び/又はベンゾフェノン骨格を有するモノマーとの共重合樹脂としては、商品名ULS−700、
ULS−1700、ULS−1683、ULS―1685(一方社油脂製)或いは商品名シャインガードBZ−24、同BZ−07、BZ−08、BZ−24(センカ製)などがある
【0021】
(ウレタン樹脂)
本発明の画像受容層でウレタン樹脂を使用する場合、ウレタン樹脂のガラス転移温度は、−20〜30℃が好ましい。ウレタン樹脂のガラス転移温度が−20℃未満では、画像の滲みを防ぐことができない場合がある。画像受容層で使用されるウレタン樹脂のガラス転移温度が30℃を超えると印画画像の耐光性が低下するため、画像受容層で使用されるウレタン樹脂のガラス転移温度は、−20〜30℃が好ましい。尚、ガラス転移温度は、ISO−11359−2に準拠して測定された値である。
【0022】
熱転写方式の印画においては、受容シートの画像受容層とインクリボンの染料層を重ね合わせてサーマルヘッドで加熱した後、画像受容層からインクリボンを剥がす工程があり、画像受容層には、インクリボンとの離型性も要求される。このため、画像受容層には、インクリボンとの融着を防止し、印画走行性を向上する目的で離型剤を添加することが好ましい。添加する離型剤としては、シリコーンオイル、ポリシロキサングラフトアクリル樹脂、ワックス類、フッ素化合物などが挙げられる。
【0023】
画像受容層には架橋剤を添加して耐熱性を向上させることが好ましい。架橋剤としては、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物、有機チタンキレート化合物が好ましい。これら架橋剤の中でも、耐熱性向上の効果が高く、印画時のリボン融着などの走行性の問題が発生しにくい点や、水性塗料中での安定性の点で、カルボジイミド系架橋剤が好ましい。カルボジイミド系架橋剤の添加量は、画像受容層に含有される樹脂100質量部に対しカルボジイミド系架橋剤が1〜30質量部となるようにすることが好ましく、3〜25質量部がより好ましい。1質量部未満では、充分な架橋の効果が得られず、印画走行不良が発生する場合がある。30質量部を超えると、樹脂の染着性を硬化剤が阻害して印画画像の濃度が低下する場合がある。
【0024】
画像受容層の塗工量は、0.5〜4g/mが好ましく、より好ましくは0.5〜3g/mである。0.5g/m未満では、画像の耐光性が劣る場合がある。4g/mを超えると、中間層へ染料が移行せず、画像受容層中で染料が拡散してしまう場合があり、画像の滲みが発生する場合がある。
【0025】
(塗工方法)
上記各塗工層には、一般の塗被紙製造において使用される濡れ剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。
受容層、中間層、その他の塗工層は、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、及びスライドビードコーター等の公知のコーターを使用して、所定の塗工液を各層毎、或いは2層以上を同時に塗工、乾燥して形成することができる。
【0026】
(カレンダー処理)
受容シートにカレンダー処理を施すことにより画質が向上する。これは、得られた受容シート表面の凹凸を減少させ、均一な画像を得るためである。カレンダー処理は、中間層、バリア層、受容層塗工後のいずれの段階で行ってもよい。カレンダー処理に使用されるカレンダー装置は、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー、クリアランスカレンダー等の一般に製紙業界で使用されているカレンダー装置を適宜使用できる。更にカレンダー装置の熱ロールによって受容層表面温度を受容層樹脂のガラス転移温度付近まで加熱することにより、受容層表面を軟化させ平滑化を促進し受容シートの画質を更に向上することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。特に断らない限り、実施例中の「部」および「%」は、すべて「質量部」および「質量%」を示し、溶剤に関するものを除き固形分量である。Tgはガラス転移温度であることを示す。
【0028】
(下塗り塗工液の調製))
下記組成の材料を攪拌して下塗り層塗工液を調製した。
アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを主成分
とする共重合体からなる既発泡中空粒子 45部
(平均粒子径3.2μm、体積中空率85%)
ポリビニルアルコール 10部
(商品名:PVA205、クラレ製)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 45部
(商品名:ビニブラン603、日信化学製、
塩化ビニル/酢酸ビニル=70/30、Tg64℃)
水 200部
【0029】
(中間層塗工液の調製)
下記組成の材料を攪拌して中間層塗工液B−1〜B−15を調製した。
(中間層塗工液B−1)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 100部
(商品名:ビニブラン603、日信化学製、Tg64℃)
アルキレングリコール基を有するカルボジイミド系架橋剤 5部
(商品名:カルボジライトE−01、日清紡製)
水 270部
(中間層塗工液B−2)
塩化ビニルアクリル共重合体樹脂分散物 100部
(商品名:ビニブラン690、日信化学製、Tg54℃)
アルキレングリコール基を有するカルボジイミド系架橋剤 5部
(商品名:カルボジライトE−01、日清紡製)
水 270部
(中間層塗工液B−3)
塩化ビニルエチレン共重合体樹脂分散物 100部
(商品名:スミエリート1320、スミカケムテックス製、Tg38℃)
アルキレングリコール基を有するカルボジイミド系架橋剤 5部
(商品名:カルボジライトE−01、日清紡製)
水 270部
【0030】
(中間層塗工液B−4)
フルオロオレフィン系樹脂分散物 100部
(商品名:ルミフロンFE4200、旭硝子製、Tg38℃)
アルキレングリコール基を有するカルボジイミド系架橋剤 5部
(商品名:カルボジライトE−01、日清紡製)
水 270部
(中間層塗工液B−5)
ポリエステル樹脂分散物 100部
(商品名:MD−1200、東洋紡製、Tg67℃)
アルキレングリコール基を有するカルボジイミド系架橋剤 5部
(商品名:カルボジライトE−01、日清紡製)
水 270部
(中間層塗工液B−6)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 100部
(商品名:ビニブラン603、日信化学製、Tg64℃)
アルキレングリコール基を有するイソシアネート系架橋剤 5部
(商品名:IS70N、日華化学製)
水 270部
【0031】
(中間層塗工液B−7)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂 100部
(商品名:VAGH、ユニオンカーバイト製、Tg67℃)
イソシアネート系架橋剤 5部
(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン製)
トルエン 150部
メチルエチルケトン 120部
(中間層塗工液B−8)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 105部
(商品名:ビニブラン603、日信化学製、Tg64℃)
水 270部
(中間層塗工液B−9)
スチレンアクリル共重合体樹脂分散物 100部
(商品名:ポリマロン326、荒川化学製、Tg50℃)
シラノール変性ポリビニルアルコール水溶液 5部
(商品名:R2105、クラレ製)
水 270部
【0032】
(中間層塗工液B−10)
ポリエステル樹脂分散物 100部
(商品名:MD−1200、東洋紡製、Tg67℃)
エチレンポリビニールアルコール共重合体水溶液 5部
(商品名:RS4105、クラレ製)
水 270部
(中間層塗工液B−11)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 100部
(商品名:ビニブラン603、日信化学製、Tg64℃)
平均分子量1000のポリエチレングリコール
エチレンオキシドとプロピレンオキシドのランダム共重合体 5部
(商品名:アルコックスEP−20、明成化学製)
水 270部
(中間層塗工液B−12)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 100部
(商品名:ビニブラン603、日信化学製、Tg64℃)
オキサゾリン系架橋剤 5部
(商品名:NKアシストOX、日清紡製)
水 270部
【0033】
(中間層塗工液B−13)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 100部
(商品名:ビニブラン603、日信化学製、Tg64℃)
アルキレングリコール基を有するカルボジイミド系架橋剤 0.1部
(商品名:カルボジライトE−01、日清紡製)
水 270部
(中間層塗工液B−14)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 100部
(商品名:ビニブラン603、日信化学製、Tg64℃)
アルキレングリコール基を有するカルボジイミド系架橋剤 40部
(商品名:カルボジライトE−01、日清紡製)
水 270部
(中間層塗工液B−15)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 100部
(商品名:ビニブラン603、日信化学製、Tg64℃)
アルキレングリコール基を有するカルボジイミド系架橋剤 60部
(商品名:カルボジライトE−01、日清紡製)
水 270部
【0034】
(画像受容層用樹脂の合成)
(アクリル樹脂M−1の合成)
攪拌機と温度調節機を備えた耐圧反応容器に、トルエン300部、酢酸エチル100部を仕込み、125℃まで昇温した状態で、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレート500部と、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート50部およびトルエン 50部からなる重合開始剤溶液を添加し8時間攪拌した。その後、反応容器から溶液を取り出し、メタノールを添加して反応生成物を析出させ、ろ過洗浄した。
反応生成物100部にトルエン40部を加えて溶解し、アニオン系界面活性剤(旭電化社製、商品名:EC‐1361E)15gを添加し、70℃に加温した水に攪拌しながら添加して、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレートの重合物(アクリル樹脂M−1)のエマルジョンを得た。アクリル樹脂M−1のJIS−K7121に準拠して測定されたガラス転移温度は、30℃であった。
【0035】
(画像受容層塗工液の調製)
下記組成の材料を攪拌して画像受容層塗工液C−1〜C−6を調製した。
(画像受容層塗工液C−1)
ウレタン樹脂 97部
(商品名:ネオステッカー#1200、日華化学製、ガラス転移温度:−20℃)
会合型ウレタン系増粘剤(商品名:ネオステッカーN、日華化学製) 1部
スルホン酸系界面活性剤 2部
水 200部
(画像受容層塗工液C−2)
前記合成例で作製したアクリル樹脂M−1(ガラス転移温度:30℃) 97部
会合型ウレタン系増粘剤(商品名:ネオステッカーN、日華化学製) 1部
スルホン酸系界面活性剤 2部
水 200部
(画像受容層塗工液C−3)
アクリル酸エステルとベンゾトリアゾール骨格を有するモノマーとの共重合樹脂
97部
(商品名:ULS−1700、一方社油脂製、ガラス転移温度:−30℃)
会合型ウレタン系増粘剤(商品名:ネオステッカーN、日華化学製) 1部
スルホン酸系界面活性剤 2部
水 200部
【0036】
実施例1
(シート状支持体)
シート状支持体として、厚さ150μmのアート紙(商品名:OK金藤N、王子製紙製、坪量174.4g/m)を用いた。
(下塗り層の形成)
前記シート状支持体の上に、前記下塗り層塗工液A−1を、固形分塗工量が20g/mとなるように塗工、乾燥した、下塗り層を形成した。
(中間層の形成)
前記下塗り層の上に、前記中間層塗工液B−1を、固形分塗工量が2g/mとなるように塗工、乾燥した、中間層を形成した。
(受容シートの作製)
前記中間層の上に、前記受容層塗工液C−1を、固形分塗工量が2g/mとなるように塗工、乾燥し、熱カレンダーによる平滑化処理を実施し、受容シートを得た。
【0037】
実施例2
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−2を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
実施例3
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−3を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
実施例4
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−4を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
実施例5
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−5を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
【0038】
実施例6
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−6を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
実施例7
実施例1において、画像受容層用塗工液C−1の代りに、画像受容層層塗工液C−2を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
実施例8
実施例1において、画像受容層用塗工液C−1の代りに、画像受容層層塗工液C−3を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
実施例9
実施例1において、シート状支持体として、微細空孔を有するポリプロピレンフィルム(商品名:FPG200、ユポコーポレーション製、厚さ:250μm)を用い、下塗り層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
【0039】
実施例10
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−13を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
実施例11
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−14を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
実施例12
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−15を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
【0040】
比較例1
実施例1において、中間層を設けなかった以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
比較例2
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−7を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
比較例3
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−8を使用し、画像受容層用塗工液C−1の代りに、画像受容層層塗工液C−7を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
比較例4
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−9を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
【0041】
比較例5
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−10を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
比較例6
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−11を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
比較例7
実施例1において、中間層用塗工液B−1の代りに、中間層塗工液B−12を使用した以外は、実施例1と同様にして受容シートを作成した。
【0042】
(評価)
(成膜性)
上記各実施例および比較例の中間層塗工性および画像受容層塗工性を以下の基準で評価した。得られた結果を表1に示す。
◎:塗工欠陥は見当たらず、実用上問題ない。
○:塗りムラがわずかにあるが、実用上問題ない。
△:塗りムラが少し見られるが、実用可能である。
×:塗りムラが著しく、又は斑点状の未塗工部が発生し、実用には適さない。
【0043】
上記各実施例および比較例で得られた受容シートについて、下記の品質試験を行った。得られた結果を表1に示す。
(画像滲み)
昇華型熱転写インクリボン(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用い、約500μmの太さの黒細線を印画した。印画物を高湿環境(45℃95%RH)に2日間置いた。処理前後の黒細線の太さを画像解析装置で測定した。測定値より、下記計算式によって画像滲み率を計算し、結果を表1に示した。
画像滲み率は、20%未満であれば実用上問題ない。
画像滲み率〔%〕=(処理後の黒細線太さ)÷(処理前の黒細線太さ)×100
【0044】
(画像耐光性試験)
昇華型熱転写インクリボン(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用い、常温にて黒ベタ印画を行った。得られた黒ベタ画像印画物を、Xeフェードメーターで10,000kJ/mの積算照度になるまで処理した。
画像の耐光性試験前及び試験後の色調をJIS Z 8721に準拠して、色差計(グレタグ社)を用いて測定した。測定値は、JIS Z 8729に基づき、L*a*b*表色系で記録し、JIS Z 8730に基づく方法で処理前後の色差(ΔE*)を算出し、耐光性を評価した。
◎:ΔE*が5未満であり、実用には全く問題ない。
○:ΔE*が5以上8未満であり、実用可能である。
△:ΔE*が8以上13未満であり、実用可能である。
×:ΔE*が13以上であり、実用には適さない。
【0045】
(画質)
昇華型熱転写インクリボン(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用い、得られた受容シートにグレーベタ画像を10枚印画した。10枚全てにつき、画質を目視で評価し、結果を表1に示した。
◎:10枚とも白抜けは見当たらず、実用上問題ない。
○:微細な白抜けがわずかにあるが、実用上問題ない。
△:白抜けが少しにあるが、実用上問題ない。実用可能である。
×:白抜けが目立ち、実用には適さない。
【0046】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明による熱転写受容シートは、高湿環境での画像の滲みがなく、且つ画像耐光性が良好で高画質なものが得られ、実用上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状支持体の少なくとも一面上に、中間層、および画像受容層を順次積層した熱転写受容シートにおいて、該中間層が、水溶性又は水分散性樹脂と、親水性部を有する架橋剤との架橋反応物を含有し、該架橋剤が親水性部として、アルキレングリコール基を有し、且つ、架橋反応基としてカルボジイミド基又はイソシアネート基を有するものであることを特徴とする熱転写受容シート。
【請求項2】
前記水溶性又は水分散性樹脂が、染色性を有する樹脂である請求項1に記載の熱転写受容シート。
【請求項3】
前記水溶性又は水分散性樹脂が、ハロゲン基を有する樹脂である請求項1〜2いずれか1項に記載の熱転写受容シート。
【請求項4】
前記シート状支持体と中間層との間に、中空粒子を含有する下塗り層を設けた請求項1〜3いずれか1項に記載の熱転写受容シート。