説明

熱転写受容シート

【課題】印画濃度が高く、鮮明で耐光性の高い印画画像が得られ、印画物を高温高湿度環境に置いても画像滲みが極めて少ない、画像保存性に優れた熱転写受容シートを提供する。
【解決手段】シート状支持体と、このシート状支持体の少なくとも一面上に、バリア層、画像受容層を積層してなる熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、特定の重合成分から合成されたポリウレタン樹脂を含有し、前記バリア層が、アスペクト比(顔料の粒子平均長径/厚さの比)5〜5000である無機顔料を含有する熱転写受容シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の熱転写受容シートは、印画濃度が高く、鮮明で耐光性の良好な印画画像が得られ、印画物を高温高湿度環境に置いても画像滲みが極めて少ない、画像保存性に優れた熱転写受容シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
染料熱転写方式は、染料層を有する染料熱転写シート(以下、「インクリボン」ともいう)と、この染料を受容する画像受容層(以下、「受容層」ともいう。)を有する熱転写受容シート(以下、「受容シート」ともいう)を用い、染料層と受容層を重ね合わせ、加熱により染料を受容層上に転写して画像を形成する。加熱はサーマルヘッドで行われ、多色の色ドットによりフルカラー画像を形成する。染料を用いているため画像は鮮明で透明性が高く、写真用途に利用可能な高品質画像が得られる。
【0003】
受容層を形成する樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂等の染着性熱可塑性樹脂が提案されている。一般には、このような熱可塑性樹脂を、水や有機溶媒に溶解あるいは分散させて受容層塗工液を作成し、これをシート状支持体に塗布、乾燥して受容シートを形成する方法により、製品化が行なわれている。
【0004】
塩化ビニル系樹脂は、耐水性が高く、受容層に使用するとその印画物は、高温高湿環境での画像保存性に優れるが、使用する染料によっては、耐光性が著しく低下する問題がある。また、アクリル系樹脂やポリエステル系樹脂は受容層の離型性および熱転写性保護層との接着性の両立が難しいという問題がある。セルロース系樹脂は、受容層の離型性は良好であるが、印画濃度が低く、高温高湿環境での画像の滲みが大きいという問題がある。
また、ポリウレタン系樹脂に関しては、熱転写記録用樹脂の例として芳香族成分を5〜90重量部含有するウレタン樹脂が提案されている。(特許文献1)
しかし、ウレタン樹脂を用いた受容層は、高い印画濃度が得られるが、印画物を高湿環境に置くと、画像滲みが発生する問題があり、芳香族成分の含有比率の制御だけでは、発色濃度との画像滲みのバランスをとることが困難である。
【0005】
また特許文献2では、非芳香族系ポリイソシアネートとポリオールから合成されるウレタン樹脂が提案されている。しかし、芳香族成分を一定量以上含まないウレタン樹脂は、染着性が乏しく高速の熱転写印画には適さない。更に特許文献2では、脂肪族系のポリオールの使用を提案しているが、脂肪族ポリオールは、耐熱性が低く、印画物を高温環境に置くと、画像滲みが発生する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−337968号公報(第1〜3頁)
【特許文献2】特開平10−337969号公報(第1〜2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上記従来技術の欠点を改良し、高速印画時においても、印画濃度が高く、鮮明で耐光性の良好な印画画像が得られ、印画物を高温高湿度環境に置いても画像滲みが極めて少ない、画像保存性に優れた熱転写受容シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)シート状支持体と、このシート状支持体の少なくとも一面上に、バリア層、画像受容層が順次積層された熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、下記(A)〜(C)を含む重合成分から合成されたポリウレタン樹脂を含有し、前記バリア層が、アスペクト比(顔料の粒子平均長径/厚さの比)5〜5000の無機顔料を含有することを特徴とする熱転写受容シート。
(A)90質量%以上が脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートから成るポリイソシアネート。
(B)50質量%以上が芳香族ジオールから成るポリオール。
(C)低分子量ポリアミン化合物。
(2)前記ポリウレタン樹脂合成時の前記(A)と前記(B)の配合比率が、前記(A)が有するイソシアネート基と、前記(B)が有するヒドロキシル基とのモル比で、100:40〜100:90の範囲である(1)の熱転写受容シート。
(3)前記ポリウレタン樹脂が、更に、下記(D)を含有した重合成分から合成されたものであり、且つカルボキシル基の含有率が前記ポリウレタン樹脂100質量%に対して0.3〜6質量%である(1)または(2)に記載の熱転写受容シート。
(D)カルボキシルアルキル基を側鎖として有するジオール。
(4)前記無機顔料が膨潤性無機層状化合物である(1)〜(3)に記載の熱転写受容シート。
(5)前記バリア層中に、ポリビニルアルコール誘導体を含有する(1)〜(4)に記載の熱転写受容シート。
(6)前記バリア層が、前記ポリビニルアルコール誘導体100質量%に対して、前記無機顔料1〜100質量%を含有する(5)に記載の熱転写受容シート。
(7)前記ポリビニルアルコール誘導体が、シラノール変性ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体から選ばれる少なくとも1種である(5)〜(6)に記載の熱転写受容シート。
(8)前記シート状支持体とバリア層の間に、中空粒子を含有する中間層がさらに設けられた(1)〜(7)に記載の熱転写受容シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、印画濃度が高く、鮮明で耐光性の良好な印画画像が得られ、印画物を高温高湿度環境に置いても画像滲みが無い、画像保存性に優れた熱転写受容シートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
(シート状支持体)
本発明の受容シートに用いられるシート状支持体としては、セルロースパルプを主成分とする紙類や合成樹脂シート類が使用される。例えば、紙類としては上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙などが挙げられる。
合成樹脂を主成分としたシート類としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
多孔質延伸シート類としてはポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を主成分とした、例えば合成紙、多孔質ポリエステルシートなどが挙げられる。これらの材料を単体で使用してもよいし、多孔質延伸シート同士、多孔質延伸シートと他のシート類及び/又は紙類などとを積層貼着させた積層体シートとしてもよい。
また、シート状支持体としては、受容層が形成される第一の基材層、粘着剤層、離型剤層、第二の基材層を順次積層した構成でもよく、いわゆるラベルタイプ(ステッカー、シールタイプとも称される)の構造を有するシート状支持体も勿論使用可能である。
上記シート状支持体の中でも、セルロースパルプを主成分とする紙類が好ましい。得られる受容シートの風合いが印画紙に近く、低コスト的であり環境負荷も少ない。
【0011】
(画像受容層)
本発明の画像受容層は、ポリイソシアネート、ポリオール及び低分子量ポリアミン化合物を含む重合成分から合成されたポリウレタン樹脂を含有する。
【0012】
(ポリウレタン樹脂)
本発明において、使用するポリウレタン樹脂の合成方法は特に限定されるものではないが、一般的に原材料としてポリイソシアネートとポリオールより得られるウレタンプレポリマーを合成した後、低分子量ポリアミン化合物を用いて、前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長して得られる。
【0013】
(ウレタンプレポリマー)
ポリウレタン樹脂の中間原料として用いられるウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールの重縮合によって合成される。本発明では、ポリイソシアネートとポリオールの比率が原材料のイソシアネート基:ヒドロキシル基のモル比率において100:40〜100:90の範囲で合成することが好ましく、より好ましくは、100:55〜100:85の範囲、更により好ましくは、100:60〜100:70の範囲で合成することが好ましい。ポリイソシアネートに対するポリオールの比率が、40未満になると合成されたポリウレタン樹脂の結晶領域が過多となり、染色性が低下し、熱転写印画された印画物の発色濃度が低下する。また90を超えると、合成されたポリウレタン樹脂の非晶領域が過多となり、得られる受容層の耐熱性が低下し、印画時に染料リボンとの融着や受容層剥がれなどの障害が発生しやすくなる。また、熱転写印画された印画物の経時滲みが発生し印画物の保存性を損なう。
【0014】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートは、低分子量ポリアミン化合物と結合してポリウレタン樹脂中に硬質ブロックを形成する。また硬質ブロックは他の分子鎖の硬質ブロックと電気的あるいは、化学的結合により結晶領域を形成する。この結晶領域が、ポリウレタン樹脂に耐熱性を付与している。
ポリイソシアネートは、主に脂環式系、脂肪族系、芳香族系に分類されるが、このうち芳香族ポリイソシアネートをポリウレタン樹脂の原料として使用すると、画像の耐光性を著しく低下させる。芳香族ポリイソシアネートが、画像の耐光性を低下させる原因は、明らかではないが、前記ポリイソシアネートの芳香環が規則的に配列した硬質ブロックが、染料分子の画像受容層内部への浸透を妨げ、紫外線の影響を受けやすい画像受容層表層部に染料が偏在化する傾向にあるためと推測される。
【0015】
本発明は、ウレタンプレポリマーの合成に使用されるポリイソシアネート100質量%中、脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートを90質量%以上含有することを特徴とし、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは、98質量%以上含有することを特徴とするものである。脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートの含有量が90質量%未満であると得られる熱転写受容シートに熱転写された印画物の耐光性が著しく低下する。また、脂肪族ポリイソシアネートの含有量は、ウレタンプレポリマーの合成に使用されるポリイソシアネートの20質量%以下の範囲に調整することが好ましい。脂肪族ポリイソシアネートの含有量が20質量%を超えると得られるポリウレタン樹脂の耐熱性が低下し、染料熱転写シートと受容シートの剥離性が低下する或いは印画物の滲みが悪化するなどの問題が発生し易くなる。
【0016】
本発明で使用できる脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネートなどが挙げられ、この中でもヘキサメチレンジイソシアネートが好ましく用いられる。
本発明で使用できる脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、トリイソシアネートシクロヘキサンなどが挙げられ、この中でもイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートが好ましく用いられる。本発明で使用できる脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートは前記例示に限定されるものではなく、単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。
【0017】
また、前記脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートの他に本発明の効果を損なわない程度の範囲で芳香族ポリイソシアネートを用いることも可能である。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどや、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリイソシアネートメチルベンゼンなどのポリイソシアネートなど芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられ、これらは単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。
【0018】
(ポリオール)
前記ポリイソシアネートとともにウレタンプレポリマーを形成するポリオールは、ポリウレタン樹脂中に軟質ブロックを形成する。軟質ブロックは、画像受容層の染着性に寄与している。本発明で使用するポリウレタン樹脂は、ポリオール成分として全ポリオール成分100質量%に対して芳香族ポリオールを50質量%以上含有することを特徴とし、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80%質量以上含有することが好ましい。芳香族ポリオールが50質量%未満の場合、得られる画像受容層の染着性が低下し、高感度の熱転写受容シートが得られない、或いは、画像受容層の耐熱性が低下し、染料リボンの融着や受容層剥がれ等の障害が発生する。
【0019】
本発明で使用可能な芳香族ポリオールとしては、例えばポリエチレンテレフタレートジオール、ポリエチレンイソフタレートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペートジオール等の芳香族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルのポリエチレンオキサイド付加物やエチレンオキサイド付加物が挙げられ、これらは単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。
【0020】
また、本発明の効果を妨げない範囲で芳香族ポリオール以外のポリオールを併用することも可能である。芳香族ポリオール以外のポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオールなどのポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、ポリ(ヘキサメチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン)カーボネートジオールなどのポリカーボネートポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられ、これらは単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。
【0021】
また低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられ、これらは単独で使用することも、2種類以上を併用することも可能である。
【0022】
(ポリアミン化合物)
本発明で使用するポリウレタン樹脂は、前記ウレタンプレポリマーを合成した後、低分子量ポリアミン化合物を用いて、前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長して得られる。低分子量ポリアミン化合物は、ポリイソシアネートとともにポリウレタン樹脂中の硬質ブロックを形成する。前述のとおり、結晶性領域に芳香族成分が多く含まれると受容層に熱転写された染料の耐光性が低下すため低分子量ポリアミン化合物は非芳香族であることが好ましい。
【0023】
本発明で使用可能な低分子量ポリアミン化合物としては、例えばヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジ(アミノシクロヘキシル)メタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、トリエチレンテトラミン等の低分子量ポリアミン等が挙げられ、これらは単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。
【0024】
本発明のポリウレタン樹脂の合成方法は、特に限定されるものではなく、各種公知の方法、反応触媒、反応抑止剤を用いて合成される。
本発明のウレタン樹脂は、溶剤可溶型であっても自己乳化型や分散剤を用いた強制乳化型などの水分散型であってもよい。近年では、環境への配慮から水分散型を使用することが好ましく、水分散型のなかでも自己乳化型は、塗工時の成膜性が良好で均一な画像受容層が得られるため好ましい。
【0025】
ポリウレタン樹脂の自己乳化又は、強制乳化の方法は、特に限定されるものではなく、各種公知の方法が使用可能であるが、原料としてカルボキシルアルキルを側鎖として有するジオールを添加することによってポリウレタン樹脂にカルボキシル基を導入し、親水化する方法が好ましい。前記カルボキシルアルキルを側鎖として有するジオールに由来するカルボキシル基の含有比率は、前記ポリウレタン樹脂100質量%に対して0.3〜6質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは2.5〜4質量%である。カルボキシル基の含有比率が0.3質量%未満では、ポリウレタン樹脂が塗工液中で不安定となり、塗工乾燥工程で塗り斑が発生し、印画画質が低下する場合がある。また、カルボキシル基の含有比率が6質量%を超えると得られる受容層の耐水性が劣り、印画物を高温高湿環境に保存した場合、印画物の滲みが発生する或いは保存性が低下する危険がある。
【0026】
本発明で使用されるポリウレタン樹脂のガラス転移温度の下限値は、好ましくは−30℃、より好ましくは、−10℃、更により好ましくは0℃である。ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が−30℃未満の場合には、画像受容層と染料熱転写シートとの融着が発生し易い。また本発明で使用されるポリウレタン樹脂のガラス転移温度の上限値は、好ましくは60℃、より好ましくは50℃、更により好ましくは40℃である。ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が60℃を超えると画像受容層の染着性が劣り十分な印画濃度が得られず、いずれも好ましくない。
尚、前記ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、ISO−11359−2に準じて測定されたものである。
(ポリウレタン樹脂のガラス転移温度測定例)
測定機器:動的粘弾性測定装置DMS6100型(セイコーインスツルメンツ社製)
駆動周波数:10Hz
測定モード:引張モード
チャック間距離:20mm
昇温速度:5℃/min
樹脂の粘弾性/温度特性の測定結果から、粘弾性/温度グラフを作成し、tanδのピーク値としてガラス転移温度を求めた。
【0027】
画像受容層の塗工量は、0.5〜10g/m2が好ましい。画像受容層の塗工量が、0.5g/m2未満では、充分な印画画質や画像耐光性が得られない場合があり、10g/m2を越えると、シート状支持体の断熱効果が発揮できず、充分な印画濃度得られない場合がある。
【0028】
(架橋剤)
本発明の受容層で使用される染着性樹脂は、塗工後、架橋剤によって架橋されていることが好ましい。本発明の受容層に使用される架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、チタンキレート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤などが挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤は、ポリウレタン樹脂のカルボキシル基と反応性が良好なため特に好ましい。カルボジイミド系架橋剤の含有比率は、受容層で使用される樹脂100質量%に対して0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
【0029】
(離型剤)
本発明の画像受容層は、従来公知の離型剤を含有することもできる。本発明の画像受容層に使用される離型剤としては、ワックス類、親水基含有シリコーンオイル、シリコーンオイルエマルジョン、ポリシロキサンセグメント含有水系樹脂等が好ましい。
(その他添加剤)
本発明の画像受容層には、必要に応じ、従来公知の界面活性剤、増粘剤、消泡剤、顔料などを本発明の効果を損なわない範囲で使用することも可能である。
【0030】
(バリア層)
本発明のバリア層は、アスペクト比( 顔料の粒子平均長径/ 厚さの比)5〜5000である無機顔料を含有することを特徴とする。
本発明のバリア層は、アスペクト比の高い無機顔料が折り重なって、染料が透過しない層を形成するものであり、画像受容層に染着した染料が、シート状支持体中に拡散することを防止し、染料拡散により生じる画像滲みを防止するものである。
【0031】
アスペクト比(Z)とはZ=L/aなる関係で示されるものであり、Lは無機顔料の水中での粒子平均長径(レーザー回折法で測定。堀場製作所製粒度分布計LA−910を使用、体積分布50%のメジアン径)であり、aは無機顔料の厚みである。厚みは、バリア層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)による写真観察によって求めた値である
【0032】
本発明のバリア層に使用される無機顔料は、アスペクト比が5〜5000のものが用いられ、好ましくは100〜5000、より好ましくは300〜5000である。アスペクト比が5未満では、染料の透過を防止する効果が少なく、画像滲みを防ぐことができない。一方、アスペクト比が5000を超えると、バリア層の可撓性が無くなり、プリンターの通紙方法によっては、印画中、バリア層にひび割れが生じ、印画画質が低下する場合がある。
【0033】
本発明のバリア層で使用される無機顔料の粒子平均長径は、一般には0.1〜20μmの範囲であり、好ましくは0.3〜18μmであり、0.5〜16μmがより好ましい。粒子平均長径が0.1μm未満になると、アスペクト比が小さくなると共に、中間層上に平行に敷き詰めることが困難になり、画像滲みを完全には防止できない。粒子平均長径が20μmを超えて大きくなると、バリア層から無機顔料が突き出てしまい、バリア層の表面に凹凸が発生し、受容層表面の平滑度が低下して画質が悪化する場合がある。
【0034】
本発明のバリア層に使用される無機顔料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、ホワイトカーボン、ゼオライト、膨潤性無機層状化合物等の中から、アスペクト比が5〜5000の範囲のものを選択して使用できる。これらの中でも、高アスペクト比の形状が容易に得られることから、膨潤性無機層状化合物が好ましい。
【0035】
(膨潤性無機層状化合物)
本発明のバリア層に好ましく使用される膨潤性無機層状化合物の具体例としては、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物、粘土系鉱物(例えば合成マイカ、合成スメクタイト)等を挙げることができる。
【0036】
グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、ハイドロタルサイト類化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物は、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有する化合物ないし物質であり、ここで層状構造とは、原子が共有結合等によって強く結合して密に配列した面が、ファン・デル・ワールス力等の弱い結合力によって略平行に積み重なった構造をいう。
【0037】
「カルコゲン化物」とは、IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)及び/又はVI族(Mo,W)元素のジカルコゲン化物であって、式MX2(Mは上記元素、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を示す。)で表わされるものをいう。
粘土系鉱物は、一般に、シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした八面体層を両側から狭みこむ3層構造を有するタイプに分類される。前者の2層構造タイプとしては、カオリナイト族、アンチゴライト族等を挙げることができ、後者の3層構造タイプとしては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
【0038】
粘土系鉱物として、具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、マーガライト、タルク、バーミキュライト、ザンソフィライト、緑泥石等を挙げることができる。その他の例については、白水晴雄著、「粘土鉱物学」、1988年、(株)朝倉書店などの文献を参照することができる。
【0039】
本発明のバリア層で使用される膨潤性無機層状化合物としては、粘土系鉱物の中でも、好ましくはスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等が使用される。スメクタイト族としては、例えば、モンモリロナイト、ハイデライト、ノントロナイト、サポナイト、鉄サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等がより好ましく使用される。
【0040】
これら膨潤性無機層状化合物は天然品(粘土系鉱物)以外にも、合成品、加工処理品(例えばシランカップリング剤の表面処理品)のいずれであってもよく、例えば、合成スメクタイトとしては、式Na0.1〜1.0Mg2.4〜2.9Li0.0〜0.6Si3.5〜4.09.0〜10.6(OH及び/又はF)1.5〜2.5で示されるものが挙げられる。
また、合成スメクタイトや合成マイカの製造方法には、水熱反応法(特開平6−345419号公報参照)、固相反応法、熔融法(特開平5−270815号公報参照)の3つの合成方法がある。
【0041】
合成膨潤性無機層状化合物としては、例えば、フッ素金雲母(KMg3AlSi310F、熔融法又は固相反応法)、カリウム四珪素雲母(KMg2.5Si4102、熔融法)、ナトリウム四珪素雲母(NaMg2.5Si4102、熔融法)、ナトリウムテニオライト(NaMg2LiSi4102、熔融法)、リチウムテニオライト(LiMg2LiSi4102、熔融法)などの合成マイカ、或はナトリウムヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si4.010(OH又はF)2、水熱反応法又は熔融法)、リチウムヘクトライト(Na0.33Mg2.67Li0.33Si4.010(OH又はF)2、水熱反応法又は熔融法)、サポナイト(Na0.33Mg2.67AlSi4.010(OH)2、水熱反応法)などの合成スメクタイトが挙げられる。
【0042】
前記の膨潤性無機層状化合物の中でも、ナトリウム四珪素雲母、ナトリウムテニオライト、リチウムテニオライト等の合成マイカ、ナトリウムヘクトライト、リチウムヘクトライト、サポナイト等の合成スメクタイト、及びモンモリロナイト等の天然スメクタイトがより好ましく使用される。これらの中でもナトリウム四珪素雲母が特に好ましく、熔融合成法により、所望の粒子径、アスペクト比、結晶性のものが得られる。
【0043】
粘土鉱物の市販品としては、例えば、一般にナトリウムベンナイトと呼ばれる天然のベントナイトや、クニピア(:商品名、天然モンモリロナイト、クニミネ工業製)、スメクトン(:商品名、水熱反応法合成スメクタイト、クニミネ工業社製)、ビーガム(:商品名、バンダービルト社製)、ラポナイト(:商品名、ラポルテ社製)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(:商品名、3種類とも熔融法合成マイカ、ナトリウム四珪素雲母、トピー工業製)、ベンゲル(:商品名、豊順洋行社製)等を挙げることができ、これらは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
本発明で好ましく使用される膨潤性無機層状化合物は、水中で容易に膨潤、へき開及び分散する膨潤性無機層状化合物である。膨潤性無機層状化合物の溶媒への「膨潤・へき開」性の程度は、「膨潤・へき開」試験により評価することができる。膨潤性無機層状化合物の膨潤性は、約5ml/2g以上が好ましく、より好ましくは約20ml/2g以上である。
【0045】
膨潤性無機層状化合物の膨潤力は具体的には、例えばクニピア(膨潤力:65ml/2g以上)、スメクトン(膨潤力:60ml/2g以上)、DMクリーンA、DMA−350、Na−Ts(膨潤力:30ml/2g以上)、ME−100(:商品名、コープケミカル社製、膨潤力:20ml/2g以上)及びベンゲル(膨潤力:38ml/2g以上)である。
【0046】
膨潤性試験を詳述する。試験容器として100mlメスシリンダーを用い、溶媒100mlに対して、膨潤性無機層状化合物2gをゆっくり加えて静置した後、23℃、24hr後の膨潤性無機層状化合物分散層と上澄み層との界面の目盛から、膨潤性無機層状化合物分散層の体積を読む。この数値(ml/2g)が大きい程、膨潤性が高く好ましい。溶媒としては、好ましくは水が使用される。
【0047】
一方、該膨潤性無機層状化合物のへき開性は、約5ml以上が好ましく、より好ましくは約20ml以上である。へき開測定用の溶媒としては、膨潤性無機層状化合物の密度より小さい密度を有する溶媒が使用され、好ましくは、水が用いられる。
【0048】
へき開性試験を詳述する。膨潤溶媒1,500mlに、膨潤性無機層状化合物30gをゆっくり加え、分散機(商品名:デスパーMH−L、浅田鉄工(株)製、羽根径52mm、回転数3100rpm、容器容量3L、底面−羽根間の距離28mm)にて周速8.5m/secで90分間分散した後(溶媒の温度:23℃)、分散液100mlをとり、メスシリンダーに入れて60分静置後、膨潤性無機層状化合物分散層と上澄み層との界面から、膨潤性無機層状化合物分散層の体積を読む。この数値(ml)が大きい程、該膨潤性無機層状化合物のへき開性が高く好ましい。
【0049】
本発明において、バリア層は、ポリビニルアルコール誘導体を含有することが好ましい。ポリビニルアルコール誘導体は、塗料中での無機顔料、特に該膨潤性無機層状化合物の分散性が良好で、塗工時の成膜性に優れ、均一なバリア層が得られる。
ポリビニルアルコール誘導体としては、完全鹸化型ポリビニルアルコール(鹸化度97〜100%)、部分鹸化型ポリビニルアルコール(鹸化度76〜97%未満)、シラノール変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、メルカプト基含有ポリビニルアルコール等の中から1種類以上を選択して使用できる。
上記ポリビニルアルコール誘導体の中でも、完全鹸化ポリビニルアルコール、部分鹸化ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体等が好ましく使用され、耐溶剤バリア性及び染料移行防止性、可撓性、塗工適性等において優れる。
更に、シラノール変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体をバリア層に使用すると、耐水性の高いバリア層が得られ、バリア層上に水系塗料により画像受容層を形成する場合、バリア層が受容層塗料に溶解することがなく、均一な画像受容層が得られる。
【0050】
シラノール変性ポリビニルアルコールは、従来公知の合成方法で製造可能であり、ビニルトリメトキシシランと酢酸ビニルをメタノール中などで共重合し、次いで水酸化ナトリウムを触媒とするメタノリシスによって酢酸ビニルを鹸化して目的の重合物を得ることができる。シラノール変性ポリビニルアルコールとしては、鹸化度85%以上、分子中のシラノール基の含有量が単量体単位として、0.05〜3モル%が好ましい。
【0051】
シラノール変性ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体を含有して調製されたバリア層用塗工液の粘度は、適度に低い方が好ましく、無機顔料が均一に分散されるため、鮮明な画像が得られる。重合度としては、200〜2000が好ましい。
【0052】
また本発明の効果を妨げない範囲で、各種の水溶性樹脂及び水分散性樹脂などの水性高分子化合物を適宜併用することも可能である。併用可能な水溶性樹脂としては、デンプン、変性デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、イソブチレン− 無水マレイン酸共重合体塩、スチレン− 無水マレイン酸共重合体塩、スチレン−アクリル酸共重合体塩、エチレン−アクリル酸共重合体塩等の樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂などが挙げられ、また水分散性樹脂としては、スチレン−ブタジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステル樹脂系ラテックス、メタアクリル酸エステル系共重合体ラテックス、エチレン− 酢酸ビニル共重合体ラテックス、ポリエステルポリウレタンアイオノマー、ポリエーテルポリウレタンアイオノマーなどが挙げられる。
【0053】
バリア層における無機顔料の固形分配合量は、ポリビニルアルコール誘導体100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。1質量部未満では染料の透過を防止する効果が少なく、画像滲みを十分に防止できないことがあり、一方100質量部を超えるとバリア層の接着強度が不足することがある。
【0054】
バリア層の塗工量は、0.5〜10g/m2が好ましい。バリア層の塗工量が、0.5g/m2未満では、充分な画像滲み防止効果が発揮できないことがあり、10g/m2を越えると、シート状支持体の断熱効果が発揮できず、充分な印画濃度得られない場合がある。
【0055】
(中間層)
シート状支持体とバリア層の間に、中空粒子を含有する中間層を設けることができる。中空粒子を含有する中間層は、断熱性とクッション性を付与できるので、画像鮮明性や画像均一性を向上できる。中間層で使用される中空粒子の材質、製造方法は特に限定されないが、具体的には、中空粒子の壁を形成する材料としてアクリルニトリル、塩化ビニリデン、スチレンアクリル酸エステルの重合体などが挙げられる。
それら中空粒子の製造方法としては、樹脂粒子中にブタンガスを封入したマイクロカプセルを、加熱発泡させる方式や、エマルジョン重合方式などが挙げられる。
中間層の塗工量は、1〜30g/m2が好ましい。中間層の塗工量が、1g/m2未満では、充分な断熱性とクッション性が期待できず、30g/m2を越えると、コストが増大する割に得られる効果が小さい。
中空粒子の粒径は、0.1〜10μmが好ましい。中空粒子の粒径が0.1μm未満では、中空粒子の壁が薄くなって耐熱性が不足し、塗工乾燥工程で壊れやすい。また10μmを超えると、得られた受容シートの表面凹凸が大きくなり画像均一性が劣る場合がある。
中空粒子の体積中空率は、50〜90%が好ましい。中空粒子の体積中空率が50%未満では断熱性とクッション性を付与する効果が不十分な場合がある。90%を超えると、中空粒子の壁が薄くなり、耐久性が低下することがある。
【0056】
(裏面層)
シート状支持体の画像受容層が設けられていない側の面(裏面)上には、適宜、裏面層を設けることができる。
裏面層の目的は、走行性向上、静電気防止、受容シート相互の擦れによる受容層の傷つき防止、受容シートを重ね置きしたときの裏面への染料移行防止などである。裏面層は、その目的に応じて、樹脂、顔料、帯電防止剤等を含有する。
【0057】
(カレンダー処理)
受容シートにカレンダー処理を施してもよい。カレンダー処理により、得られる受容シート表面の凹凸を減少させ、均一な画像を得ることができる。カレンダー処理は、いずれの段階で行ってもよい。カレンダー処理に使用されるカレンダー装置は、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー、クリアランスカレンダーなどの一般に製紙業界で使用されているカレンダー装置を適宜使用できる。
【0058】
上記各塗工層には、一般の塗被紙製造において使用される濡れ剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤などの各種助剤が適宜添加される。
【実施例】
【0059】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示し、固形分量である。
【0060】
実施例
〔ポリウレタン樹脂合成例UP1〜UP5〕
以下の方法により、ポリイソシアネートとポリオールより得られるウレタンプレポリマーを合成した後、低分子量ポリアミン化合物を用いて、前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長してポリウレタン樹脂UP1〜UP5を合成した。
攪拌機、環流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、表1に示したポリオール成分と2,2−ジメチロールブタン酸を表1に示した仕込み量加え、更に、ジブチル錫ジラウレート0.001g、及び、メチルエチルケトン120gを加え、均一に混合した。次いで、これに、表1に示したイソシアネート成分を表1に示した仕込み量加え、80℃で5時間反応させてプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
得られたプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を30℃まで冷却し、トリエチルアミンを表1に示した仕込み量加えて中和した後、水403gを徐々に加えて、乳化分散させた。この乳化分散液に、エチレンジアミンの20質量%水溶液を表1に示した仕込み量(固形分換算)添加して2時間攪拌した。これを、減圧条件下で、2時間かけて50℃まで昇温しながら、脱溶剤を行い、不揮発分が約39質量%のポリウレタン樹脂のエマルジョンを得た。なお、本発明においてポリウレタン樹脂のエマルジョンの不揮発分とは、水分散物を105℃で3時間乾燥させた後の残存重量率を意味する。
【0061】
ポリウレタン樹脂UP1〜UP5の合成に使用したポリイソシアネート、ポリオール、低分子量ポリアミン化合物およびカルボキシルアルキルを側鎖として有するジオールの種類、ポリイソシアネート成分中の脂環式ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートの含有比率(質量比率)、プレポリマー中のポリイソシアネートとポリオールの比率(イソシアネート基:ヒドロキシル基のモル比率)および合成で得られたポリウレタン樹脂に対するカルボキシル基の含有比率は、表2のとおりであった。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
実施例1
(シート状支持体及び中間層の形成)
シート状支持体として、厚さ150μmのアート紙(商品名:OK金藤N、王子製紙製、坪量174.4g/m2)を使用した。前記シート状支持体の片面に下記組成の中間層用塗工液を、固形分塗工量が10g/m2となるように塗工、乾燥して中間層を形成した。
(中間層塗工液の調製)
下記組成の材料を攪拌して中間層塗工液を調製した。
アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを主成分
とする共重合体からなる既発泡中空粒子 45部
(平均粒子径3.2μm、体積中空率85%)
ポリビニルアルコール 10部
(商品名:PVA205、クラレ製)
スチレン−ブタジエン共重合体樹脂分散物 45部
(商品名:0695、JSR製、Tg−4℃)
水 200部
(受容シートの作製)
下記調製方法により得られたバリア層塗工液B1を、上記中間層上に固形分塗工量が1.5g/m2となるように塗工、乾燥して、バリア層を形成した。次に受容層塗工液R1を、バリア層の上に固形分塗工量が3g/m2となるように塗工、乾燥して、受容シートを得た。
(バリア層塗工液B1の調製)
膨潤性合成マイカ 10部
( 商品名;NTS−10、トピー工業製、
主成分: ナトリウム4 珪素雲母、粒子平均長径12μm 、アスペクト比2400)
シラノール変性ポリビニルアルコール 100部
(商品名:R2105、クラレ製、重合度500)
水 1100部
(受容層塗工液R1の調製)
前記合成例のポリウレタン樹脂UP1 88部
カルボジイミド系架橋剤 10部
(商品名:カルボジライトE−02、日清紡社製)
ポリシロキサングラフトアクリル樹脂 2部
(商品名:US450、東亞合成製)
水 300部
【0065】
<実施例2>
実施例1の受容層塗工液R1の調製においてポリウレタン樹脂UP1の代わりに前記合成例のポリウレタン樹脂UP2を用いた以外は実施例1と同様にして、受容シートを得た。
<実施例3>
実施例1の受容層塗工液R1の調製においてポリウレタン樹脂UP1の代わりに前記合成例のポリウレタン樹脂UP3を用いた以外は実施例1と同様にして、受容シートを得た。
【0066】
<実施例4>
受容シートの作製においてバリア層塗工液B1の代わりに下記方法により得られたバリア層塗工液B2を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
(バリア層塗工液B2の調製)
膨潤性合成マイカ 10部
(商品名;NTS−10、トピー工業製、
主成分: ナトリウム4 珪素雲母、粒子平均長径12μm 、アスペクト比2400)
エチレン−ビニルアルコール共重合体 100部
(商品名:RS4105、クラレ製、重合度500)
水 1100部
【0067】
<実施例5>
受容シートの作製においてバリア層塗工液B1の代わりに下記方法により得られたバリア層塗工液B3を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
(バリア層塗工液B3の調製)
デラミカオリン 10部
(商品名:アストラプレート 、ヒューバ社製、
粒子平均長径1μm 、アスペクト比40)
シラノール変性ポリビニルアルコール 100部
(商品名:R2105、クラレ製、重合度500)
水 1100部
【0068】
<実施例6>
受容シートの作製においてバリア層塗工液B1の代わりに下記方法により得られたバリア層塗工液B4を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
(バリア層塗工液B4の調製)
膨潤性合成マイカ 10部
(商品名;NTS−10 、トピー工業製、
主成分: ナトリウム4 珪素雲母、粒子平均長径12μm 、アスペクト比2400)
完全鹸化ポリビニルアルコール 100部
(商品名:PVA117 、クラレ製、重合度1700)
水 1100部
【0069】
<比較例1>
実施例1の受容層塗工液R1の調製においてポリウレタン樹脂UP1の代わりに前記合成例のポリウレタン樹脂UP4を用いた以外は実施例1と同様にして、受容シートを得た。
<比較例2>
実施例1の受容層塗工液R1の調製においてポリウレタン樹脂UP1の代わりに前記合成例のポリウレタン樹脂UP5を用いた以外は実施例1と同様にして、受容シートを得た。
【0070】
<比較例3>
受容シートの作製においてバリア層塗工液B1の代わりに下記方法により得られたバリア層塗工液B5を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
(バリア層塗工液B5の調製)
エチレン−ビニルアルコール共重合体 100部
(商品名:RS4103、クラレ製)
水 1100部
【0071】
<比較例4>
受容シートの作製においてバリア層塗工液B1の代わりに下記方法により得られたバリア層塗工液B6を用いた以外は、実施例1と同様にして受容シートを得た。
(バリア層塗工液B6の調製)
重質炭酸カルシウム 10部
(商品名;ソフトン2200、備北粉化工業製、粒子平均長径1μm、アスペクト比2)
シラノール変性ポリビニルアルコール 100部
(商品名:R2105 、クラレ製、重合度500)
水 1100部
【0072】
〔評価〕
上記各実施例および比較例で得られた受容シートについて、下記試験を行った。得られ
た結果を表3に示す。
〔画像濃度〕
昇華型染料熱転写シート(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用い、常温環境下で、受容シートに、黒ベタ画像を印画した。マクベス反射濃度計RD914を用いて、黒ベタ画像の印画濃度を測定した。受容シートの画像鮮明性を以下の基準で評価した。
◎:黒ベタの印画濃度が2.2以上あり、高感度受容シートとして問題なく使用できる。
○:黒ベタの印画濃度が2.0以上2.2未満であり、実用上問題なく使用できる。
△:黒ベタの印画濃度が1.7以上2.0未満であり、実用可能である。
×:黒ベタの印画濃度が1.7未満であり、実用には適さない。
【0073】
〔画像鮮明性〕
昇華型染料熱転写シート(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用い、常温環境下で、受容シートに、マクベス反射濃度計RD914で測定したときの画像濃度が0.6〜0.7となるように画像を印画し、画像のドット再現性を以下の基準で目視評価した。
◎:ドット抜けがなく鮮明性に優れる。
○:僅かにドット抜けが見られるが、実用上問題なく使用できる。
△:ドット抜けは見られるが、実用可能である。
×:ドット抜けが目立ち、実用には適さない。
【0074】
〔画像滲み〕
昇華型染料熱転写シート(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用い、常温環境下で黒細線を印画した。印画物を40℃75%RH環境に48時間置いた後、黒細線の滲みを以下の基準で評価した。
◎:黒細線は拡大鏡観察でも全く滲みが見られず、実用には全く問題ない。
○:黒細線は拡大鏡観察でわずかに滲みがみられるが、実用可能である。
△:黒細線は目視観察でわずかに滲みがみられるが、実用可能である。
×:黒細線の目視観察で滲みがはっきりと観察され、実用には適さない。
【0075】
〔画像耐光性〕
昇華型染料熱転写シート(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用い、常温にて黒ベタ印画を行った。得られた黒ベタ画像印画物を、Xeフェードメーターで10,000kJ/mの積算照度になるまで処理した。
画像の耐光性試験前及び試験後の色調をJIS Z 8721に準拠して、色差計(グレタグ社)を用いて測定した。測定値は、JIS Z 8729に基づき、L表色系で記録し、JIS Z 8730に基づく方法で処理前後の色差(ΔE)を算出し、耐光性を評価した。
◎:ΔEが7未満であり、実用には全く問題ない。
○:ΔEが7以上10未満であり、実用可能である。
△:ΔEが10以上13未満であり、実用可能である。
×:ΔEが13以上であり、実用には適さない。
【0076】
【表3】

表3から明らかなように、実施例1〜7の熱転写受容シートは、印画濃度が高く、画像の鮮明性、画像の耐光性に優れ、高温高湿度環境での画像滲みが極めて少ない、優れた熱転写受容シートである。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、印画濃度が高く、鮮明で耐光性の良好な印画画像が得られ、印画物を高温高湿度環境に置いても画像滲みが極めて少ない、画像保存性に優れた熱転写受容シートを提供することができ、実用上極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状支持体と、このシート状支持体の少なくとも一面上に、バリア層、画像受容層が順次積層された熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、下記(A)〜(C)を含む重合成分から合成されたポリウレタン樹脂を含有し、前記バリア層が、アスペクト比(顔料の粒子平均長径/厚さの比)5〜5000の無機顔料を含有することを特徴とする熱転写受容シート。
(A)90質量%以上が脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートから成るポリイソシアネート。
(B)50質量%以上が芳香族ジオールから成るポリオール。
(C)低分子量ポリアミン化合物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂合成時の前記(A)と前記(B)の配合比率が、前記(A)が有するイソシアネート基と、前記(B)が有するヒドロキシル基とのモル比で、100:40〜100:90の範囲である請求項1に記載の熱転写受容シート。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂が、更に、下記(D)を含有した重合成分から合成されたものであり、且つカルボキシル基の含有率が前記ポリウレタン樹脂100質量%に対して0.3〜6質量%である請求項1または2に記載の熱転写受容シート。
(D)カルボキシルアルキル基を側鎖として有するジオール。
【請求項4】
前記無機顔料が膨潤性無機層状化合物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。
【請求項5】
前記バリア層中に、ポリビニルアルコール誘導体を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。
【請求項6】
前記バリア層が、前記ポリビニルアルコール誘導体100質量%に対して、前記無機顔料1〜100質量%を含有する請求項5に記載の熱転写受容シート。
【請求項7】
前記ポリビニルアルコール誘導体が、シラノール変性ポリビニルアルコール及びエチレン−ビニルアルコール共重合体から選ばれる少なくとも1種である請求項5〜6のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。
【請求項8】
前記シート状支持体とバリア層の間に、中空粒子を含有する中間層がさらに設けられた請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。

【公開番号】特開2010−253759(P2010−253759A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105078(P2009−105078)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】