説明

熱転写受容シート

【課題】染料熱転写シートとの離型性が良好で、かつラミネート保護層転写性に優れ、高濃度で耐光性に優れた印画画像が得られる、写真用途などに利用可能な熱転写受容シートを提供する。
【解決手段】シート状支持体と、このシート状支持体の少なくとも一面上に、画像受容層を有する熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、下記(A)〜(C)を含む重合成分から合成されたポリウレタン樹脂を含有し、更に、前記画像受容層上に離型剤を主成分として含有する離型層を有することを特徴とする熱転写受容シート。
(A)90質量%以上が脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートから成るポリイソシアネート。
(B)50質量%以上が芳香族ジオールから成るポリオール。
(C)低分子量ポリアミン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料染着性熱可塑性樹脂を主成分とする画像受容層を有する熱転写受容シートに関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、印画走行性が良好で、画像の鮮明性に優れ、画像の耐光性が良好で、かつラミネート保護層の転写性に優れた熱転写受容シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
染料熱転写方式は、染料層を有する染料熱転写シートと、この染料を受容する画像受容層を有する熱転写受容シートを用い、染料層と画像受容層を重ね合わせ、加熱により染料を画像受容層上に転写して画像を形成する。加熱はサーマルヘッドで行われ、多色の色ドットによりフルカラー画像を形成する。染料を用いているため画像は鮮明で透明性が高く、写真用途に利用可能な高品質画像が得られる。
【0003】
画像受容層を形成する樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂等の染着性熱可塑性樹脂が提案されている。一般には、前記染着性熱可塑性樹脂を、水や有機溶媒に溶解あるいは分散させて画像受容層塗工液を作成し、これをシート状支持体に塗布、乾燥して熱転写受容シートを形成する方法により、製品化が行なわれている。
【0004】
従来、高い印画濃度を得るために、前記染料染着性熱可塑性樹脂の中から、特に染着性の高い樹脂を選択すると、染着性の高い樹脂は一般に軟化点が低い為、印画時にサーマルヘッドの熱によって、画像受容層の一部が剥がれて染料熱転写シートに貼り付いたり、染料熱転写シートが画像受容層と貼り付いたまま剥がれなくなる等の現象、所謂「融着」が発生し、画像に欠陥が発生する、シートが排紙されない等の問題が生じていた。
【0005】
特許文献1及び2では高い印画濃度と熱転写シートの剥離性を両立した画像受容層用樹脂としてウレタン樹脂が提案されている。しかし、特許文献1及び2に示されたウレタン樹脂を画像受容層に用いた熱転写受容シートは、十分な印画画像の耐光性が得られるものではなく、耐光性のより優れた印画画像が得られる熱転写受容シートが求められている。
更に近年、プリンターの高速化に伴い、印画時の画像受容層は、より短時間で、より高い印加エネルギーを与えられ、高温状態の画像受容層から染料熱転写シートが、高速で剥離されるようになってきている。そのため、高速プリンターでは融着が発生し易く、より離型性の良い熱転写受容シートが求められている。
また、熱転写プリンターは、画像形成後、画像の保存性を高める為にラミネート保護層を画像受容層の上に転写する方式が一般的である。染料熱転写シートと画像受容層の融着を回避するために、画像受容層に離型剤を添加すると、ラミネート保護層の転写不良が発生し、印画画像の保存性が低下する、光沢斑が発生するなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−337968号公報(第1〜3頁)
【特許文献2】特開平10−337969号公報(第1〜2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の欠点を解消し、染料熱転写シートとの離型性が良好で、かつラミネート保護層転写性に優れ、高濃度で耐光性に優れた印画画像が得られる、写真用途などに利用可能な熱転写受容シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の各発明を包含する。
(1)シート状支持体と、このシート状支持体の少なくとも一面上に、画像受容層を有する熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、下記(A)〜(C)を含む重合成分から合成されたポリウレタン樹脂を含有し、更に、前記画像受容層上に離型剤を主成分として含有する離型層を有することを特徴とする熱転写受容シート。
(A)90質量%以上が脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートから成るポリイソシアネート。
(B)50質量%以上が芳香族ジオールから成るポリオール。
(C)低分子量ポリアミン化合物。
(2)前記ポリウレタン樹脂合成時の前記(A)と前記(B)の配合比率が、前記(A)が有するイソシアネート基と、前記(B)が有するヒドロキシル基とのモル比で、100:40〜100:90の範囲である(1)の熱転写受容シート。
(3)前記ポリウレタン樹脂が、更に、下記(D)を含有した重合成分から合成されたものであり、且つカルボキシル基の含有比率が前記ポリウレタン樹脂100質量%に対して0.3〜6質量%である(1)または(2)の熱転写受容シート。
(D)カルボキシルアルキル基を側鎖として有するジオール。
(4)前記離型剤が、分子内にポリシロキサンを有する樹脂である(1)〜(3)の熱転写受容シート。
(5)前記離型層の塗工量が0.01〜2g/mである(1)〜(4)の熱転写受容シート。
(6)前記画像受容層がカルボジイミド化合物を含有する(1)〜(5)の熱転写受容シート。
(7)前記シート状支持体と前記画像受容層との間に中空粒子を含有する下塗り層が設けられた(1)〜(6)の熱転写受容シート。
(8)前記画像受容層と前記離型層とを含む2層以上の層が、同時多層塗工により形成された層である(1)〜(7)の熱転写受容シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、染料熱転写シートとの離型性が良好で、かつラミネート保護層の転写性に優れ、高濃度で耐光性に優れた印画画像が得られる熱転写受容シートが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について、更に詳細に説明する。
(シート状支持体)
本発明の熱転写受容シートに用いるシート状支持体としては、セルロースパルプを主成分とする紙類や合成樹脂シート類が使用される。例えば、紙類としては上質紙(酸性紙、中性紙)、中質紙、コート紙、アート紙、グラシン紙、樹脂ラミネート紙などが挙げられる。
合成樹脂を主成分としたシート類としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
多孔質延伸シート類としてはポリオレフィン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂を主成分とした、例えば合成紙、多孔質ポリエステルシートなどが挙げられる。これらの材料を単体で使用してもよいし、多孔質延伸シート同士、多孔質延伸シートと、他のシート類及び/又は紙類とを積層貼着させた積層体シートとしてもよい。
また、シート状支持体としては、画像受容層が形成される第一の基材層、粘着剤層、離型剤層、第二の基材層を順次積層した構成でもよく、いわゆるラベルタイプ(ステッカー、シールタイプとも称される)の構造を有するシート状支持体も勿論使用可能である。
上記シート状支持体の中でも、セルロースパルプを主成分とする紙類が好ましい。得られる熱転写受容シートの風合いが印画紙に近く、低コスト的であり環境負荷も少ない。
【0011】
(画像受容層)
本発明は、シート状支持体の少なくとも一方の面に画像受容層を形成してなる熱転写受容シートにおいて、上記画像受容層が、分子中に特定の組成を有するポリウレタン樹脂を含むことを特徴とするものである。
【0012】
(ポリウレタン樹脂)
本発明において、使用するポリウレタン樹脂の合成方法は特に限定されるものではないが、一般的に原材料としてポリイソシアネートとポリオールより得られるウレタンプレポリマーを合成した後、低分子量ポリアミン化合物を用いて、前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長して得られる。
【0013】
(ウレタンプレポリマー)
ポリウレタン樹脂の中間原料として用いられるウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールの重縮合によって合成される。本発明では、ポリイソシアネートとポリオールの比率が原材料のイソシアネート基:ヒドロキシル基のモル比率において100:40〜100:90の範囲で合成することが好ましく、より好ましくは、100:55〜100:85の範囲、更により好ましくは、100:60〜100:70の範囲で合成することが好ましい。ポリイソシアネートに対するポリオールの比率が、40未満になると合成されたポリウレタン樹脂の結晶領域が過多となり、染色性が低下し、熱転写印画された印画物の発色濃度が低下する。また90を超えると、合成されたポリウレタン樹脂の非晶領域が過多となり、得られる画像受容層の耐熱性が低下し、印画時に染料熱転写シートとの融着や画像受容層の剥がれなどの障害が発生しやすくなる。また、熱転写印画された印画物の経時滲みが発生し印画物の保存性を損なう。
【0014】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートは、低分子量ポリアミン化合物と結合してポリウレタン樹脂中に硬質ブロックを形成する。また硬質ブロックは他の分子鎖の硬質ブロックと電気的あるいは、化学的結合により結晶領域を形成する。この結晶領域が、ポリウレタン樹脂に耐熱性を付与している。
ポリイソシアネートは、主に脂環式系、脂肪族系、芳香族系に分類されるが、このうち芳香族ポリイソシアネートをポリウレタン樹脂の原料として使用すると、画像の耐光性を著しく低下させる。芳香族ポリイソシアネートが、画像の耐光性を低下させる原因は、明らかではないが、前記ポリイソシアネートの芳香環が規則的に配列した硬質ブロックが、染料分子の画像受容層内部への浸透を妨げ、紫外線の影響を受けやすい画像受容層表層部に染料が偏在化する傾向にあるためと推測される。
【0015】
本発明は、ウレタンプレポリマーの合成に使用されるポリイソシアネート100質量%中、脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートを90質量%以上含有することを特徴とし、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは、98質量%以上含有することを特徴とするものである。脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートの含有量が90質量%未満であると得られる熱転写受容シートに熱転写された印画物の耐光性が著しく低下する。また、脂肪族ポリイソシアネートの含有量は、ウレタンプレポリマーの合成に使用されるポリイソシアネートの20質量%以下の範囲に調整することが好ましい。脂肪族ポリイソシアネートの含有量が20質量%を超えると得られるポリウレタン樹脂の耐熱性が低下し、染料熱転写シートと熱転写受容シートの剥離性が低下する或いは印画物の滲みが悪化するなどの問題が発生し易くなる。
【0016】
本発明で使用できる脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレントリイソシアネートなどが挙げられ、この中でもヘキサメチレンジイソシアネートが好ましく用いられる。
本発明で使用できる脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、トリイソシアネートシクロヘキサンなどが挙げられ、この中でもイソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネートが好ましく用いられる。本発明で使用できる脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートは前記例示に限定されるものではなく、単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。
【0017】
また、前記脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートの他に本発明の効果を損なわない程度の範囲で芳香族ポリイソシアネートを用いることも可能である。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートなどや、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリイソシアネートメチルベンゼンなどのポリイソシアネートなど芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられ、これらは単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。
【0018】
(ポリオール)
前記ポリイソシアネートとともにウレタンプレポリマーを形成するポリオールは、ポリウレタン樹脂中に軟質ブロックを形成する。軟質ブロックは、画像受容層の染着性に寄与している。本発明で使用するポリウレタン樹脂は、ポリオール成分として全ポリオール成分100質量%に対して芳香族ポリオールを50質量%以上含有することを特徴とし、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80%質量以上含有することが好ましい。芳香族ポリオールが50質量%未満の場合、得られる画像受容層の染着性が低下し、高感度の熱転写受容シートが得られない、或いは、画像受容層の耐熱性が低下し、染料熱転写シートの融着や画像受容層剥がれ等の障害が発生する。
【0019】
本発明で使用可能な芳香族ポリオールとしては、例えばポリエチレンテレフタレートジオール、ポリエチレンイソフタレートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペートジオール等の芳香族ポリエステルポリオール、芳香族ポリエステルのポリエチレンオキサイド付加物やエチレンオキサイド付加物が挙げられ、これらは単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。
【0020】
また、本発明の効果を妨げない範囲で芳香族ポリオール以外のポリオールを併用することも可能である。芳香族ポリオール以外のポリオールとしては、例えば、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリエチレンサクシネートジオール、ポリブチレンサクシネートジオール、ポリエチレンセバケートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオールなどのポリエステルポリオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、ポリ(ヘキサメチレン−1,4−シクロヘキサンジメチレン)カーボネートジオールなどのポリカーボネートポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、アクリルポリオールなどが挙げられ、これらは単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。
【0021】
また低分子量ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1、4−ブタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられ、これらは単独で使用することも、2種類以上を併用することも可能である。
【0022】
(ポリアミン化合物)
本発明で使用するポリウレタン樹脂は、前記ウレタンプレポリマーを合成した後、低分子量ポリアミン化合物を用いて、前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長して得られる。低分子量ポリアミン化合物は、ポリイソシアネートとともにポリウレタン樹脂中の硬質ブロックを形成する。前述のとおり、結晶性領域に芳香族成分が多く含まれると画像受容層に熱転写された染料の耐光性が低下すため低分子量ポリアミン化合物は非芳香族であることが好ましい。
【0023】
本発明で使用可能な低分子量ポリアミン化合物としては、例えばヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジ(アミノシクロヘキシル)メタン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、トリエチレンテトラミン等の低分子量ポリアミン等が挙げられ、これらは単独で使用することも、2種以上を併用することも可能である。
【0024】
本発明のポリウレタン樹脂の合成方法は、特に限定されるものではなく、各種公知の方法、反応触媒、反応抑止剤を用いて合成される。
本発明のポリウレタン樹脂は、溶剤可溶型であっても自己乳化型や分散剤を用いた強制乳化型などの水分散型であってもよい。近年では、環境への配慮から水分散型を使用することが好ましく、水分散型のなかでも自己乳化型は、塗工時の成膜性が良好で均一な画像受容層が得られるため好ましい。
【0025】
ポリウレタン樹脂の自己乳化又は、強制乳化の方法は、特に限定されるものではなく、各種公知の方法が使用可能であるが、原料としてカルボキシルアルキルを側鎖として有するジオールを添加することによってポリウレタン樹脂にカルボキシル基を導入し、親水化する方法が好ましい。前記カルボキシルアルキルを側鎖として有するジオールに由来するカルボキシル基の含有比率は、前記ポリウレタン樹脂100質量%に対して0.3〜6質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%、更に好ましくは2.5〜4質量%である。カルボキシル基の含有比率が0.3質量%未満では、ポリウレタン樹脂が塗工液中で不安定となり、塗工乾燥工程で塗り斑が発生し、印画画質が低下する場合がある。また、カルボキシル基の含有比率が6質量%を超えると得られる画像受容層の耐水性が劣り、印画物を高温高湿環境に保存したときに印画物の滲みが発生する或いは保存性が低下する危険がある。
【0026】
本発明で使用されるポリウレタン樹脂のガラス転移温度の下限値は、好ましくは−30℃、より好ましくは、−10℃、更により好ましくは0℃である。ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が−30℃未満の場合には、画像受容層と染料熱転写シートとの融着が発生し易い。また本発明で使用されるポリウレタン樹脂のガラス転移温度の上限値は、好ましくは60℃、より好ましくは50℃、更により好ましくは40℃である。ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が60℃を超えると画像受容層の染着性が劣り十分な印画濃度が得られず、いずれも好ましくない。
本発明では、ガラス転移温度は、ISO−11359−2に準じて測定される。
(樹脂のガラス転移温度測定例)
測定機器:動的粘弾性測定装置DMS6100型(セイコーインスツルメンツ社製)
駆動周波数:10Hz
測定モード:引張モード
チャック間距離:20mm
昇温速度:5℃/min
樹脂の粘弾性/温度特性の測定結果から、粘弾性/温度グラフを作成し、tanδのピーク値としてガラス転移温度を求めた。
【0027】
(架橋剤)
本発明の画像受容層で使用されるポリウレタン樹脂は、塗工後、架橋剤によって架橋されていることが好ましい。本発明の画像受容層に使用される架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、チタンキレート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤などが挙げられる。
画像受容層にカルボキシル基を有するポリウレタン樹脂を使用する場合に、カルボジイミド系架橋剤を画像受容層中に添加することは、カルボキシル基とカルボジイミド系架橋剤とが架橋して画像受容層の耐熱性を上げ、染料熱転写シートとの融着を防止する効果が特に高く、好ましい。
カルボジイミド系架橋剤の含有比率は、画像受容層で使用される樹脂100質量%に対して0.5〜40質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
画像受容層の塗工量は、0.5〜10g/mが好ましい。画像受容層の塗工量が、0.5g/m未満では、充分な印画画質や画像耐光性が得られない場合があり、10g/
を越えると、シート状支持体の断熱効果が発揮できず、充分な印画濃度得られない場合がある。
【0028】
(離型層)
本発明の離型層は、画像受容層上、且つ熱転写受容シートの最表層に形成され、離型剤を主成分として含有するものである。
本発明の離型層は、画像受容層中に離型剤を含有させた場合と比べ、画像受容層の耐熱強度を損なうことなく、染料熱転写シートの離型性が得られるため、染料熱転写シートとの融着防止効果が高い。また、離型層を設けず、離型剤含有型の画像受容層を使用した場合、塗工時の塗料濃度、乾燥条件によって、画像受容層表面にブリードアウトする離型剤の量が変化し、染料熱転写シートの離型性やラミネート保護層の転写性が変動する。その為、製造条件を精密に制御する装置及び労力が必要である。これに対し、本発明の熱転写受容シートは、製造条件の影響を受け難く、染料熱転写シートの離型性やラミネート保護層の転写性を一定の範囲に維持して製造することが容易である。
本発明の離型層に含有される離型剤としては、ワックス類、フッ素化合物、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、高級脂肪酸、高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、顔料、微粒子等、各種公知の離型剤を用いることができるが、分子内にポリシロキサンセグメントを有する樹脂が好ましく用いられる。
【0029】
ワックス類、フッ素化合物、シリコーンオイル等、画像受容層樹脂との親和性の小さい離型剤を離型層に使用した場合、イエロー、マゼンダ、シアンを印画していくと、1色印画毎に、画像受容層表面の離型剤が染料熱転写シートに奪われて減少し、3色目のシアン印画時に良好な離型性を維持できなくなり、融着を引き起こす場合がある。
分子内にポリシロキサンセグメントを有する樹脂は、共重合した樹脂が隣接する画像受容層との接着性に寄与するため、離型剤が、画像受容層表面に固定され、このような問題が発生しない。
更に、分子内にポリシロキサンセグメントと官能基を有する樹脂を含有する離型層を用いることが、画像受容層との接着性を高めるために好ましく、分子内にポリシロキサンセグメントとをカルボキシル基を有する樹脂を含有する離型層と、カルボジイミド系架橋剤を含有する画像受容層とを組み合わせて用いると、離型剤のカルボキシル基が画像受容層表面のカルボジイミド系架橋剤と架橋反応し、離型剤を画像受容層表面に強く固定できるため、特に好ましい。
【0030】
また、塗工乾燥時に有害な有機溶媒の大気中への放出を極力抑えるため、離型剤は、水系溶媒分散性であることが好ましい。尚、水系溶媒分散性とは、水溶性及び水分散性の他、高濃度では特定の有機溶媒のみに溶解するものであっても、樹脂の有機溶媒溶解物を水中に低濃度で分散可能なものも含む。
分子内にポリシロキサンセグメントを有する樹脂は、ポリシロキサンのモノマー材料と共重合樹脂のモノマー材料を共重合させる際に、重合完了後の樹脂にカルボニル基、スルホニル基、水酸基を付与するモノマー材料を添加する方法等各種公知の製法により、水溶性又は水分散性にすることができる。ポリマーにカルボニル基、スルホニル基、水酸基を付与するモノマー材料の例としては、ジメチロールプロピオン酸、5−スルホイソフタル酸などが挙げられる。或いは、分子内にポリシロキサンセグメントを有する樹脂は、ポリシロキサンのモノマー材料、共重合樹脂のモノマー材料および重合開始剤の混合物を、界面活性剤を用いて水中に乳化し、重合反応に必要な温度をかけて共重合エマルジョンを作成する方法等により水分散性とすることができる。
【0031】
市販の分子内にポリシロキサンセグメントを有する樹脂としては、サイマックUS450(東亞合成株式会社製、水分散性)、US480(東亞合成株式会社製、水分散性)等があげられる。
市販品としては、X−22−8053(信越化学工業株式会社製、イソプロピルアルコール溶解品、水系溶媒分散性)、X−24−798A(信越化学工業株式会社製、イソプロピルアルコール溶解品、水系溶媒分散性)などが挙げられる。
本発明で使用される離型層の固形分塗工量は、0.01〜2g/mが好ましく、より好ましくは0.03〜1g/mである。0.01g/m未満では、印画時に染料熱転写シートとの離型性が不十分となり、融着することがある。2g/mを超えると、離型層に染着した染料が離型層中に拡散し、画像の滲みが顕著となる場合がある。
【0032】
(下塗り層)
中空粒子を含有する下塗り層は、断熱性とクッション性を付与できるので、画像鮮明性や画像均一性を向上できる。
下塗り層で使用される中空粒子の壁を形成する材料としてアクリルニトリル、塩化ビニリデン、スチレンアクリル酸エステルの重合体などが挙げられる。それら中空粒子の製造方法としては、樹脂粒子中にブタンガスを封入したマイクロカプセルを、加熱発泡させる方式や、エマルジョン重合方式などが挙げられる。
中空粒子の粒径は、0.1〜10μmが好ましい。中空粒子の粒径が0.1μm未満では、中空粒子の壁が薄くなって耐熱性が不足し、塗工乾燥工程で壊れやすい。また10μmを超えると、得られた熱転写受容シートの表面凹凸が大きくなり画像均一性が劣る場合がある。
中空粒子の体積中空率は、50〜90%が好ましい。中空粒子の体積中空率が50%未満では断熱性とクッション性を付与する効果が不十分な場合がある。90%を超えると、中空粒子の壁が薄くなり、耐久性が低下することがある。
下塗り層の塗工量は、1〜30g/mが好ましい。下塗り層の塗工量が、1g/m未満では、充分な断熱性とクッション性が期待できず、30g/mを越えると、コストが増大する割に得られる効果が小さい。
【0033】
(中間層)
画像受容層に染着した染料が、下塗り層やシート状支持体に移動しないようにバリアすることによって、画像のにじみを防止する目的や、下塗り層の凹凸を埋めて平滑な面を得る目的で、下塗り層と画像受容層の間に、更に中間層を設けることも可能である。
【0034】
(裏面層)
本発明における熱転写受容シートではシート状支持体の画像受容層が設けられていない側の面(裏面)上に、適宜、裏面層を設けることができる。
裏面層の目的は、走行性向上、静電気防止、熱転写受容シート相互の擦れによる熱転写受容シート表面の傷つき防止、熱転写受容シートを重ね置きしたときの裏面への染料移行防止などである。裏面層は接着成分としての樹脂と、必要に応じて顔料や添加剤を含有する。
【0035】
上記各塗工層には、一般の塗被紙製造において使用される濡れ剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、着色剤、帯電防止剤、防腐剤などの各種助剤が適宜添加できる。
本発明の熱転写受容シートの画像受容層や、離型層、中間層その他の塗工層は、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ゲートロールコーター、ダイコーター、カーテンコーター、及びスライドビードコーター等の公知のコーターを使用して、所定の塗工液を塗工、乾燥して形成することができる。
本発明の離型層は、最適塗工量が最適塗工量が0.01〜2g/mである。このような低塗工量の層を画像受容層の上に塗工する場合、単層毎に塗工、乾燥を行う逐次塗工方式では、離型層が均一に形成されず、塗工斑が発生し、所望の離型性やラミネート保護層の転写性が得られない場合や、印画斑や印画濃度低下が発生する場合がある。本発明の離型層と画像受容層の2層は、同時多層塗工方式を用いて形成することが好ましい。同時多層塗工方式により低塗工量でも均一な離型層を形成することができる。また、離型層および画像受容層と共に、中間層や下塗り層を同時多層塗工方式のより形成することも、均一な塗膜形成、効率化等の点から好ましい。
【0036】
(カレンダー処理)
本発明においては、熱転写受容シートにカレンダー処理を施してもよい。カレンダー処理により、得られる熱転写受容シート表面の凹凸を減少させ、均一な画像を得ることができるため、好ましく用いられる。カレンダー処理は、いずれの段階で行ってもよい。カレンダー処理に使用されるカレンダー装置は、スーパーカレンダー、ソフトカレンダー、グロスカレンダー、クリアランスカレンダーなどの一般に製紙業界で使用されているカレンダー装置を適宜使用できる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。また、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示し、固形分量である。
【0038】
実施例
〔ポリウレタン樹脂合成例UP1〜UP5〕
以下の方法により、ポリイソシアネートとポリオールより得られるウレタンプレポリマーを合成した後、低分子量ポリアミン化合物を用いて、前記ウレタンプレポリマーを鎖伸長してポリウレタン樹脂UP1〜UP5を合成した。
攪拌機、環流冷却管、温度計及び窒素吹き込み管を備えた4ツ口フラスコに、表1に示したポリオール成分と2,2−ジメチロールブタン酸を表1に示した仕込み量加え、更に、ジブチル錫ジラウレート0.001g、及び、メチルエチルケトン120gを加え、均一に混合した。次いで、これに、表1に示したイソシアネート成分を表1に示した仕込み量加え、80℃で5時間反応させてプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を得た。
得られたプレポリマーのメチルエチルケトン溶液を30℃まで冷却し、トリエチルアミンを表1に示した仕込み量加えて中和した後、水403gを徐々に加えて、乳化分散させた。この乳化分散液に、エチレンジアミンの20質量%水溶液を表1に示した仕込み量(固形分換算)添加して2時間攪拌した。これを、減圧条件下で、2時間かけて50℃まで昇温しながら、脱溶剤を行い、不揮発分が約39質量%のポリウレタン樹脂のエマルジョンを得た。なお、本発明においてポリウレタン樹脂のエマルジョンの不揮発分とは、水分散物を105℃で3時間乾燥させた後の残存重量率を意味する。
【0039】
ポリウレタン樹脂UP1〜UP5の合成に使用したポリイソシアネート、ポリオール、低分子量ポリアミン化合物およびカルボキシルアルキルを側鎖として有するジオールの種類、ポリイソシアネート成分中の脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートおよび芳香族ポリイソシアネートの含有比率(質量比率)、プレポリマー中のポリイソシアネートとポリオールの比率(イソシアネート基:ヒドロキシル基のモル比率)および合成で得られたポリウレタン樹脂に対するカルボキシル基の含有比率は、表2のとおりであった。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
<実施例1>
〔熱転写受容シートの作製〕
シート状支持体として、厚さ150μmのアート紙(商品名:OK金藤N、王子製紙製、坪量174.4g/m)を使用した。前記シート状支持体の片面に、下記組成の下塗り層塗工液A−1、下記組成の画像受容層塗工液B−1、下記組成の離型層用塗工液C−1を、以下の固形分塗工量となるように、スライドビードコーターを用いて3層同時に塗工、乾燥し熱転写受容シートを作成した。
下塗り層固形分塗工量 :15g/m
画像受容層固形分塗工量 :3g/m
離型層固形分塗工量 :0.1g/m
【0043】
〔下塗り層塗工液A−1の調製〕
アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを主成分とする既発泡中空粒子 50部
(平均粒子径3.2μm、体積中空率76%)
ポリビニルアルコール 10部
(商品名:PVA205、クラレ製)
塩化ビニル酢酸ビニル共重合体エマルジョン 30部
(商品名:ビニブラン603、日信化学製、Tg:60℃)
カルボジイミド系架橋剤 10部
(商品名:カルボジライトE−02、日清紡社製)
水 200部
〔画像受容層塗工液B−1の調製〕
前記合成例のポリウレタン樹脂UP1 90部
カルボジイミド系架橋剤 10部
(商品名:カルボジライトE−02、日清紡社製)
水 300部
〔離型層用塗工液C−1〕
水系溶媒分散性ポリシロキサングラフトアクリル樹脂 99部
(商品名:X−22−8053、信越化学工業株式会社製、
分子内にカルボキシル基含有、イソプロピルアルコール溶解品)
濡れ剤 (商品名:ノプコウエット50、サンノプコ会社製) 1部
固形分濃度が1%となるように調整水を加え、離型層用塗工液C1を調製した。
【0044】
<実施例2>
実施例1の画像受容層塗工液B−1の調製においてポリウレタン樹脂UP1の代わりに前記合成例のポリウレタン樹脂UP2を用いた以外は実施例1と同様にして、熱転写受容シートを得た。
<実施例3>
実施例1の画像受容層塗工液B−1の調製においてポリウレタン樹脂UP1の代わりに前記合成例のポリウレタン樹脂UP3を用いた以外は実施例1と同様にして、熱転写受容シートを得た。
【0045】
<実施例4>
実施例1の離型層塗工液C−1の代わりに、下記組成の離型層塗工液C−2を用いた以外は実施例1と同様にして、熱転写受容シートを得た。
〔離型層用塗工液C−1〕
水系溶媒分散性ポリシロキサングラフトアクリル樹脂 99部
(商品名X−24−798A、信越化学工業株式会社製、
カルボキシル基非含有、イソプロピルアルコール溶解品)
濡れ剤(商品名:ノプコウエット50、サンノプコ会社製) 1部
固形分濃度が0.5%となるように調整水を加え、離型層用塗工液C1を調製した。
【0046】
<実施例5>
〔熱転写受容シートの作製〕
シート状支持体として、厚さ150μmのアート紙(商品名:OK金藤N、王子製紙製、坪量174.4g/m)を使用した。前記シート状支持体の片面に前記下塗り層塗工液A−1を、固形分塗工量が15g/m となるように塗工、乾燥して下塗り層を形成し、前記下塗り層上に前記画像受容層塗工液B−1を、固形分塗工量3g/mとなるように塗工、乾燥して画像受容層を形成し、さらに、前記画像受容層上に、前記離型層用塗工液C−1を、固形分塗工量が0.1g/m になるように塗工、乾燥し熱転写受容シートを作成した。
【0047】
<比較例1>
実施例1画像受容層塗工液B−1の代わりに、下記組成の画像受容層塗工液B−2を用い、離型層を設けなかった以外は実施例1と同様にして、熱転写受容シートを得た。
〔画像受容層塗工液B−2の調製〕
前記合成例のポリウレタン樹脂UP1 88部
カルボジイミド系架橋剤 10部
(商品名:カルボジライトE−02、日清紡社製)
水系溶媒分散性ポリシロキサングラフトアクリル樹脂 2部
(商品名:X−22−8053、信越化学工業株式会社製、
分子内にカルボキシル基含有、イソプロピルアルコール溶解品)
水 300部
【0048】
<比較例2>
実施例1の画像受容層塗工液B−1の調製においてポリウレタン樹脂UP1の代わりに前記合成例のポリウレタン樹脂UP4を用いた以外は実施例1と同様にして、熱転写受容シートを得た。
<比較例3>
実施例1の画像受容層塗工液B−1の調製においてポリウレタン樹脂UP1の代わりに前記合成例のポリウレタン樹脂UP5を用いた以外は実施例1と同様にして、熱転写受容シートを得た。
【0049】
(評価)
上記各実施例および比較例で調製した塗工液、および得られた熱転写受容シートについて、下記試験を行った。得られた結果を表3に示す。
【0050】
〔染料熱転写シートとの離型性〕
昇華型染料熱転写シート(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用いた。45℃環境下で、熱転写受容シートに、黒ベタ画像を10枚連続で印画した。染料熱転写シートとの離型性を以下の基準で評価した。
◎:熱転写受容シート表面と染料熱転写シートとの融着が全くなく、10枚連続して正常に排紙され、実用には全く問題がない。
○:熱転写受容シート表面と染料熱転写シートとの軽い融着により若干騒音は生じるが、10枚とも排紙され、実用可能である。
×:熱転写受容シート表面と染料熱転写シートとが融着を生じ、正常に排紙されないものがあり、実用には適さない。
【0051】
〔ラミネート保護層転写性〕
得られた熱転写受容シートの画像受容層上に、熱転写試験機(商品名:TH−PMI2、大倉電機社製)を使用して、印加エネルギーを可変させて、昇華型染料熱転写シート(商品名:UP−540、ソニー社製)のラミネート保護層部を転写し、ラミネート保護層が転写出来る最小エネルギーを求めた。
◎:ラミネート保護層転写最小エネルギーが0.6mJ/dot未満であり、高速プリンターで使用しても全く問題ない。
○:ラミネート保護層転写最小エネルギーが0.6〜1.1mJ/dotであり、高速プリンターで使用可能である。
×:ラミネート保護層転写最小エネルギーが1.1mJ/dotを超えており、高速プリンターには適さない。
【0052】
〔画像耐光性〕
昇華型染料熱転写シート(商品名:UP−540、ソニー社製)を装着した市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:UP−50、ソニー社製)を用い、常温にて熱転写受容シートに、黒ベタ印画を行った。得られた黒ベタ画像印画物を、Xeフェードメーターで13,000kJ/mの積算照度になるまで処理した。
画像の耐光性試験前及び試験後の色調をJIS Z 8721に準拠して、色差計(グレタグ社)を用いて測定した。測定値は、JIS Z 8729に基づき、L表色系で記録し、JIS Z 8730に基づく方法で処理前後の色差(ΔE)を算出し、耐光性を評価した。
◎:ΔEが7未満であり、実用には全く問題ない。
○:ΔEが7以上13未満であり、実用可能である。
×:ΔEが13以上であり、実用には適さない。
【0053】
〔画像濃度〕
市販の熱転写ビデオプリンター(商品名:DPP−SV55、ソニー社製)を用いて、サーマルヘッドでコントロールされた加熱を施すことにより、熱転写受容シートに、黒ベタ画像を作成した。得られた黒ベタ画像について、マクベス反射濃度計(商品名:RD−914、Kollmorgen社製)を用いて、その反射濃度を測定し、印画濃度を評価した。
◎:印画濃度が1.9以上であり、実用には全く問題ない。
○:印画濃度が1.7以上1.9未満であり、実用可能である。
×:印画濃度が1.7未満であり、実用には適さない。
【0054】
【表3】

表3から明らかなように、実施例1〜5の熱転写受容シートは、染料熱転写シートとの離型性が良好で、かつラミネート保護層の転写性に優れ、高濃度で耐光性に優れた印画画像が得られる熱転写受容シートである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、染料熱転写シートとの離型性が良好で、かつラミネート保護層の転写性に優れ、高濃度で耐光性に優れた印画画像が得られる熱転写プリンター用受容シートが得られ、産業界に寄与するところは大である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状支持体と、このシート状支持体の少なくとも一面上に、画像受容層を有する熱転写受容シートにおいて、前記画像受容層が、下記(A)〜(C)を含む重合成分から合成されたポリウレタン樹脂を含有し、更に、前記画像受容層上に離型剤を主成分として含有する離型層を有することを特徴とする熱転写受容シート。
(A)90質量%以上が脂環式ポリイソシアネート及び/又は脂肪族ポリイソシアネートから成るポリイソシアネート。
(B)50質量%以上が芳香族ジオールから成るポリオール。
(C)低分子量ポリアミン化合物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂合成時の前記(A)と前記(B)の配合比率が、前記(A)が有するイソシアネート基と、前記(B)が有するヒドロキシル基とのモル比で、100:40〜100:90の範囲である請求項1に記載の熱転写受容シート。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂が、更に、下記(D)を含有した重合成分から合成されたものであり、且つカルボキシル基の含有比率が前記ポリウレタン樹脂100質量%に対して0.3〜6質量%である請求項1または2に記載の熱転写受容シート。
(D)カルボキシルアルキル基を側鎖として有するジオール。
【請求項4】
前記離型剤が、分子内にポリシロキサンを有する樹脂である請求項1〜3に記載のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。
【請求項5】
前記離型層の塗工量が0.01〜2g/mである請求項1〜4のいずれか1項に記載のいずれか1項に熱転写受容シート。
【請求項6】
前記画像受容層がカルボジイミド化合物を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のいずれか1項に熱転写受容シート。
【請求項7】
前記シート状支持体と前記画像受容層との間に中空粒子を含有する下塗り層が設けられた請求項1〜6のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。
【請求項8】
前記画像受容層と前記離型層とを含む2層以上の層が、同時多層塗工により形成された層である請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱転写受容シート。

【公開番号】特開2010−253892(P2010−253892A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109647(P2009−109647)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】