説明

熱転写記録媒体、熱転写記録方法及び記録体

【課題】 本発明は、判読性が良好で高濃度であり、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れる画像を被転写体に形成し、被転写体との貼りつきを低減させることが可能な熱転写記録媒体及び該熱転写記録媒体を用いる熱転写記録方法並びに該熱転写記録方法を用いて画像が転写されている記録体を提供することを目的とする。
【解決手段】 熱転写記録媒体については、感熱転写層は、メタクリル酸グリシジルを含有するモノマーを重合させた樹脂及び熱溶融性物質を含有する。熱転写記録方法は、上記の熱転写記録媒体を用いて被転写体に画像を転写する。記録体は、上記の熱転写記録方法を用いて画像が転写されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写記録媒体、熱転写記録方法及び記録体に関する。
【背景技術】
【0002】
織物等の布を被転写体として用いて、熱転写記録方法により衣料の取扱表示用ラベルを作製する場合、十分な耐洗濯性が要求される。そこで、耐洗濯性を向上させるために、支持体上に、直接又はワックスを主成分とする剥離層を介して、着色剤及び融点80〜150℃のポリアミド樹脂を主成分とするインク層を設ける方法(特許文献1参照)、基材フィルムの片面に、剥離性及び保護膜形成性を有する抗張力150kg/cm以上のポリエチレン系エマルションの塗布層と、ビカット軟化点45℃以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体及び融点が80〜130℃で、かつ熱溶融開始温度が40〜70℃のワックスからなる熱転写層を積層する方法(特許文献2参照)、基材シート上に、親水性または水溶性熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂を設け、その上に、非水溶性熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂層を設ける方法(特許文献3参照)、支持体上に、銅フタノシアニン顔料、アゾ系顔料から選ばれる顔料である着色剤、ニトロセルロース及び溶融粘度低下物質を含有する熱転写インク層を設ける方法(特許文献4参照)等が知られている。しかしながら、これらの方法では、画像の判読性及び濃度の面で広汎な被転写体には対応できないこと、耐水洗濯性は良くなるが、耐ドライクリーニング性が悪くなること等の問題点がある。
【0003】
一方、ポリエステル樹脂、ナイロン、アセテート樹脂、綿等の織布を被転写体として用いて、熱転写記録方法により衣料の取扱表示用ラベルを作製する場合、織布のコート剤や剛度によっては、熱転写した後、織布と熱転写記録媒体とが貼りついてしまうという問題があった。そこで、この問題を改善するために、感熱転写層と基材の間の接着力を制御する離型層を、両者の間に設け、熱転写時の感熱転写層と基材の間の剥離性を向上させる方法が知られている。しかしながら、塗工層を一層多く設けなければならないので、コストが高くなる問題及び熱感度が低下する問題がある。なお、熱感度の低下を低減するために感熱転写層を薄層化すると、転写画像の濃度が低下する問題がある。
【特許文献1】特開平5−229262号公報
【特許文献2】特開平10−272899号公報
【特許文献3】特開平11−277993号公報
【特許文献4】特開2000−177254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、判読性が良好で高濃度であり、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れる画像を被転写体に形成し、被転写体との貼りつきを低減させることが可能な熱転写記録媒体、該熱転写記録媒体を用いる熱転写記録方法及び該熱転写記録方法を用いて画像が転写されている記録体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、基材上に感熱転写層が設けられている熱転写記録媒体において、前記感熱転写層は、メタクリル酸グリシジルを含有するモノマーを重合させた樹脂及び熱溶融性物質を含有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、前記感熱転写層は、メタクリル酸グリシジルを含有するモノマーを重合させた樹脂及び熱溶融性物質を含有するので、判読性が良好で高濃度であり、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れる画像を被転写体に形成し、被転写体との貼りつきを低減させることが可能な熱転写記録媒体を提供することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の熱転写記録媒体において、前記モノマーは、アクリロニトリル及びメタクリル酸アルキルの少なくとも一方をさらに含有することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、前記モノマーは、アクリロニトリル及びメタクリル酸アルキルの少なくとも一方をさらに含有するので、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性にさらに優れる画像を被転写体に形成することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の熱転写記録媒体において、前記メタクリル酸アルキルは、一般式
CH=C(CH)−COOC2n+1
で示される化合物であり、nは、1以上4以下の整数であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、前記メタクリル酸アルキルは、一般式
CH=C(CH)−COOC2n+1
で示される化合物であり、nは、1以上4以下の整数であるので、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性にさらに優れる画像を被転写体に形成することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱転写記録媒体において、前記熱溶融性物質は、分子量が800以下であるフェノール化合物を含有することを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、前記熱溶融性物質は、分子量が800以下であるフェノール化合物を含有するので、被転写体が粗面であっても、判読性が良好で高濃度である画像を形成することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の熱転写記録媒体において、前記フェノール化合物は、ビスフェノールA、ビスフェノールAの二量体及びビスフェノールAの三量体からなる群より選択される一種以上の化合物であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、前記フェノール化合物は、ビスフェノールA、ビスフェノールAの二量体及びビスフェノールAの三量体からなる群より選択される一種以上の化合物であるので、被転写体が粗面であっても、判読性が良好で高濃度である画像を形成することができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱転写記録媒体において、前記感熱転写層は、ニトロセルロース樹脂をさらに含有することを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、前記感熱転写層は、ニトロセルロース樹脂をさらに含有するので、塩素系溶剤を使用する場合の耐ドライクリーニング性にさらに優れる画像を被転写体に形成することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱転写記録媒体において、前記感熱転写層及び基材の間に離型層をさらに有することを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、前記感熱転写層及び基材の間に離型層をさらに有するので、被転写体との貼りつきを低減させることができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の熱転写記録媒体において、前記離型層は、溶解度パラメーターが9.0cal1/2cm−3/2以下であるポリオレフィン系ワックスを含有することを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、前記離型層は、溶解度パラメーターが9.0cal1/2cm−3/2以下であるポリオレフィン系ワックスを含有するので、被転写体との貼りつきをさらに低減させることができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、熱転写記録方法において、請求項1乃至8に記載の熱転写記録媒体を用いて被転写体に画像を転写することを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、請求項1乃至8に記載の熱転写記録媒体を用いて被転写体に画像を転写するので、判読性が良好で高濃度であり、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れる画像を被転写体に形成し、被転写体との貼りつきを低減させることが可能な熱転写記録方法を提供することができる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の熱転写記録方法において、前記被転写体は、ポリエステル樹脂、ナイロン、アセテート樹脂及び綿からなる群より選択される樹脂を含有する布であることを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の発明によれば、前記被転写体は、ポリエステル樹脂、ナイロン、アセテート樹脂及び綿からなる群より選択される樹脂を含有する布であるので、判読性が良好で高濃度であり、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れる画像を被転写体に形成し、被転写体との貼りつきを低減させることができる。
【0025】
請求項11に記載の発明は、記録体において、請求項9又は10に記載の熱転写記録方法を用いて画像が転写されていることを特徴とする。
【0026】
請求項11に記載の発明によれば、請求項9又は10に記載の熱転写記録方法を用いて画像が転写されているので、判読性が良好で高濃度であり、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れる画像が形成されている記録体を提供することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、判読性が良好で高濃度であり、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れる画像を被転写体に形成し、被転写体との貼りつきを低減させることが可能な熱転写記録媒体、該熱転写記録媒体を用いる熱転写記録方法及び該熱転写記録方法を用いて画像が転写されている記録体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0029】
本発明の熱転写記録媒体は、基材上に感熱転写層が設けられ、感熱転写層は、メタクリル酸グリシジルを含有するモノマーを重合させた樹脂及び熱溶融性物質を含有する。これにより、判読性が良好で高濃度であり、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れる画像を被転写体に形成し、被転写体との貼りつきを低減させることができる。基材としては、厚さが3μm以上10μm以下程度であるプラスチックフィルムを用いるのが一般的であり、プラスチックフィルムの材料としては、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン等が挙げられる。感熱転写層に用いられる着色剤としては、カーボンブラック、アゾ系染顔料等の無機顔料、有機染顔料等が挙げられるが、カーボンブラックが好ましい。
【0030】
本発明で用いられるモノマーは、アクリロニトリル及びメタクリル酸アルキルの少なくとも一方をさらに含有することが好ましい。ここで、メタクリル酸アルキルは、一般式
CH=C(CH)−COOC2n+1
で示される化合物であり、nは、1以上4以下の整数であることが好ましい。これにより、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性にさらに優れる画像を被転写体に形成することができる。すなわち、水、温水、ナフサ、パークレン、工業用ガソリン等で洗濯する際に画像が欠落しにくくなる。
【0031】
本発明で用いられる熱溶融性物質は、分子量が800以下であるフェノール化合物を含有することが好ましい。このようなフェノール化合物としては、1,5−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、4,4’−メチレンビス(オキシエチレンチオ)ジフェノール、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジ(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名:ビスフェノールA)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4−ベンジルオキシ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホン等が挙げられるが、ビスフェノールA、ビスフェノールAの二量体及びビスフェノールAの三量体からなる群より選択される一種以上の化合物であることが好ましい。これにより、被転写体が粗面であっても、判読性が良好で高濃度である画像を形成することができる。フェノール化合物の分子量が800より大きくなると、結晶性が低下し、塗布された感熱転写層がタック性を有してしまう。このため、熱転写記録媒体をロール状に巻き取ったりする際に、ブロッキングを起こす可能性がある。
【0032】
本発明の感熱転写層は、上記の熱溶融性物質を含有するため、サーマルヘッドにより熱を印加される際の溶融粘度が低下する。このため、被転写体が粗面であっても、繊維と繊維の間まで感熱転写層の成分が入り込み、画像パターンを忠実に反映することができる。また、繊維間に入り込んだ感熱転写層の成分が、繊維間の結着力を向上させるため、画像の強度を向上させることが可能となる。これらの現象は、熱溶融性物質が比較的低い温度でシャープに熱溶融するので、粘度が急激に低下し、効率良く繊維間に入り込むために可能となると考えられる。
【0033】
本発明で用いられる感熱転写層は、ニトロセルロース樹脂をさらに含有することが好ましい。これにより、塩素系溶剤を使用する場合の耐ドライクリーニング性にさらに優れる画像を被転写体に形成することができる。ニトロセルロース樹脂は、耐ドライクリーニング性、耐熱性等で優れた性質を有しているが、単独で用いると、サーマルヘッドにより印加される熱量では十分に溶融せず、熱溶融性物質と共に用いる必要がある。
【0034】
この他に、熱感度の向上、感熱転写層の基材からの脱落防止、分散性向上等の目的で、感熱転写層中にワックス、界面活性剤等の物質を添加してもよい。
【0035】
なお、感熱転写層は、原料組成物を適当な溶媒中に分散又は溶解させて作製した塗布液を、基材上に塗布し、乾燥することにより作製することができる。
【0036】
本発明においては、感熱転写層及び基材の間に離型層をさらに有することが好ましい。これにより、被転写体との貼りつきを低減させることができる。これは、熱転写する際の基材と感熱転写層の間の剥離性を向上させているためである。なお、離型層は、サーマルヘッドで加熱されると、熱溶融して低粘度液体となり、加熱された部分と加熱されていない部分の界面近傍で層が切れ易いように構成されている。さらに、離型層は、画像を転写した後、感熱転写層をバリアする効果があり、転写画像がスミアや洗濯時等の物理的衝撃に対して強くなるという効果がある。
【0037】
本発明で用いられる離型層は、溶解度パラメーターが9.0cal1/2cm−3/2以下であるポリオレフィン系ワックスを含有することが好ましい。これにより、被転写体との貼りつきをさらに低減させることができる。なお、溶解度パラメーターδは、式
δ=ρΣF/M
から算出される。ここで、ρは、樹脂の密度、Fは、樹脂の構成単位の分子凝集エネルギー定数、Mは、樹脂の構成単位の分子量であり、Σは、樹脂の構成単位に関する和を意味する。このようなポリオレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレン等が挙げられる。
【0038】
なお、離型層には、脱落防止、塗工性向上等のために、低粘度化剤となる樹脂を少量添加しても良く、この目的にはエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等が使用される。また、弾力性を持たせて、熱転写記録媒体と被転写体との密着性を向上させるために、離型層にイソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム等のゴム類を添加してもよい。
【0039】
なお、離型層を作製するために、ポリオレフィン系ワックスを用いる場合は、ワックスを有機溶媒で分散して離型層塗工液を作成し、塗工後の乾燥時にワックスの溶融開始温度より5℃高い温度以上、ワックスの融点より10℃高い温度以下の範囲内の温度で乾燥することが好ましい。これにより、ワックスの低分子量成分が溶融した状態で、ワックスの高分子量成分は溶融せずに粒子状となり、感熱転写層の塗工性に優れた、均一な離型層を形成することができる。ワックスの融点より10℃以上高い温度で乾燥すると、ワックスの溶融成分が増加し、感熱転写層を均一に塗布できなくなる。なお、離型層の厚さは、可能な限り薄い方が望ましいが、薄すぎるとバリア性が発現できないため、付着量は、通常0.1g/m以上3.0g/m以下であり、0.2g/m以上2.0g/m以下が好ましい。
【0040】
本発明の熱転写記録媒体は、さらなるバリア性付与のため、離型層及び感熱転写層の間に中間層をさらに有してもよく、中間層には公知の樹脂を使用することができる。ただし、中間層を設ける場合、熱転写記録媒体の厚さが増加するため、感熱転写層に効率的に熱が印加される範囲内であることが望ましい。
【0041】
また、画像を転写する際は、通常、熱転写記録媒体の基材の背面(感熱転写層が設けられていない側の面)からサーマルヘッド等で画像状に熱を印加するため、基材の背面に、耐熱性を向上させるために耐熱保護層を設けてもよいし、サーマルヘッド等との耐摩擦性を向上させるために滑性保護層を設けてもよい。さらに、基材の一部がサーマルヘッドに熱融着して、画像を傷つけたり、熱転写記録媒体の搬送を困難にしたりするスティッキングを低減するために、基材の背面にスティック防止層を設けてもよい。これらの背面層は、いずれも耐熱性高分子で形成される薄層であり、一層で上記の機能の二種以上を兼ねることもできる。このような背面層を形成するのに好適な樹脂としては、シリコン樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコンゴム、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリスルホン、シリコン含有ポリパラバン酸、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0042】
本発明の熱転写記録方法は、上記の熱転写記録媒体を用いて被転写体に画像を転写する。このため、判読性が良好で高濃度であり、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れる画像を被転写体に形成し、被転写体との貼りつきを低減させることができる。なお、被転写体は、ポリエステル樹脂、ナイロン、アセテート樹脂及び綿からなる群より選択される樹脂を含有する布であることが好ましい。具体的には、ポリエステル糸、アセテート糸、ナイロン糸又は綿からなる織布を使用することができ、例えば、ポリエステルサテン、アセテートサテン、ナイロンタフタ、平織り綿布等の織布が挙げられる。また、表面を樹脂でコートした布を用いることもできる。この他、耐洗紙、不織布等、一般的に用いられている布、紙、フィルムにも画像を転写することができる。
【0043】
本発明の記録体は、上記の熱転写記録方法を用いて画像が転写されている。このため、判読性が良好で高濃度であり、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れる画像が形成されている記録体を得ることができる。このような記録体は、衣料の取扱表示用ラベル等の用途に使用することができる。
【実施例】
【0044】
本実施例中の部数及び%は重量基準であり、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
溶解度パラメーターが7.9cal1/2cm−3/2であるポリエチレンワックス10部及びエチレン−酢酸ビニル共重合体1部をトルエン89部中で溶解させ、離型層塗布液(1)を作製した。次に、カーボンブラック5部、メタクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体5部及びビスフェノールA6部をメチルエチルケトン84部中で分散させ、感熱転写層塗布液(1)を作製した。
【0045】
基材として、厚さ4.5μmのポリエステルフィルムを用い、基材上に離型層塗布液(1)を塗布し、40℃で10秒乾燥させ、乾燥付着量約0.8g/mの離型層を設けた。さらに、その上に感熱転写層塗布液(1)を塗布し、70℃で10秒間乾燥させ、乾燥付着量約1.5g/mの感熱転写層を設けた。次に、基材の背面に、シリコンゴムの1%トルエン溶液を乾燥付着量0.02g/mになるように塗布し、50℃で10秒間乾燥して背面層を設け、熱転写記録媒体を作製した。
(実施例2)
カーボンブラック5部、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体3部、ニトロセルロース樹脂2部及びビスフェノールA6部をメチルエチルケトン84部中で分散させ、感熱転写層塗布液(2)を作製した。
【0046】
感熱転写層塗布液(1)を感熱転写層塗布液(2)に変更した以外は、実施例1と同様に、熱転写記録媒体を作製した。
(実施例3)
カルナバワックス5部、ポリエチレンワックス5部、エチレン−酢酸ビニル共重合体1部をトルエン89部中で溶解させ、離型層塗布液(2)を作製した。
【0047】
離型層塗布液(1)及び感熱転写層塗布液(1)をそれぞれ離型層塗布液(2)及び感熱転写層塗布液(2)に変更した以外は、実施例1と同様に、熱転写記録媒体を作製した。
(比較例1)
カーボンブラック4部及びアクリロニトリル−メタクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体12部をメチルエチルケトン84部中で分散させ、感熱転写層塗布液(3)を作製した。
【0048】
感熱転写層塗布液(1)を感熱転写層塗布液(3)に変更した以外は、実施例1と同様に、熱転写記録媒体を作製した。
(比較例2)
カーボンブラック5部、アクリロニトリル−メタクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体5部及び1,1’−ビフェニル−4,4’−ジオール6部をメチルエチルケトン84部中で分散させ、感熱転写層塗布液(4)を作製した。
【0049】
感熱転写層塗布液(1)を感熱転写層塗布液(4)に変更した以外は、実施例1と同様に、熱転写記録媒体を作製した。
(比較例3)
カーボンブラック5部、ポリメタクリル酸メチル5部及びビスフェノールA6部をメチルエチルケトン84部中で分散させ、感熱転写層塗布液(5)を作製した。
【0050】
感熱転写層塗布液(1)を感熱転写層塗布液(5)に変更した以外は、実施例1と同様に、熱転写記録媒体を作製した。
(評価方法及び結果)
実施例1乃至3及び比較例1乃至3で作製した熱転写記録媒体を用い、ライン型薄膜サーマルヘッドを有する熱転写プリンターI−4308(DATAMAX社製)で印字速度101.6mm/秒、ドット密度12本/mmの条件で、被転写体のポリエステルサテン布T−3030(タカオカ社製)に、6ポイント以上8ポイント以下の文字及び太さ0.2mmの横罫線の印字を行った。
【0051】
このようにして印字された文字の判読性、ベタ部濃度、貼りつき、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性の評価を行った。
【0052】
判読性は、目視で文字の欠けを評価し、6ポイントの文字がきれいに印字されており判読できるものを◎、7ポイントの文字がきれいに印字されており判読できるもの○、8ポイントの文字がきれいに印字されており判読できるものを△、8ポイントの文字が判読できないものを×として判定した。
【0053】
ベタ部濃度は、マクベス反射濃度計を用いて濃度を測定することにより、評価した。なお、通常の使用上、問題の無い濃度は1.0以上である。
【0054】
貼りつきは、7ポイントの文字及び太さ0.2mmの横罫線で評価し、印字後に被転写体と熱転写記録媒体が完全に剥離された状態であるものを○、印字後に被転写体と熱転写記録媒体が軽く貼りついた状態であるものを△、印字後に被転写体の表面層が熱転写記録媒体に接着し、剥がれない状態を×として判定した。
【0055】
耐水洗濯性は、JIS L−0844 A−5に規定されている方法を5回行い、耐ドライクリーニング性は、JIS L−0860に規定されている方法を5回行うことにより評価した。ただし、クリーニング溶剤には塩素系溶剤を使用し、40℃で行った。耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性は、マクベス反射濃度計を用いて、それぞれ水洗濯後及びドライクリーニング後のベタ部濃度を測定することにより、評価した。なお、通常の使用上、問題の無い洗濯後の濃度は、0.7以上である。
【0056】
以上の評価結果を表1に示した。
【0057】
【表1】

表1から、本発明の熱転写記録媒体は、判読性が良好で高濃度であり、耐水洗濯性及び耐ドライクリーニング性に優れる画像を被転写体に形成し、被転写体との貼りつきを低減させることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に感熱転写層が設けられている熱転写記録媒体において、
前記感熱転写層は、メタクリル酸グリシジルを含有するモノマーを重合させた樹脂及び熱溶融性物質を含有することを特徴とする熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記モノマーは、アクリロニトリル及びメタクリル酸アルキルの少なくとも一方をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記メタクリル酸アルキルは、一般式
CH=C(CH)−COOC2n+1
で示される化合物であり、
nは、1以上4以下の整数であることを特徴とする請求項2に記載の熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記熱溶融性物質は、分子量が800以下であるフェノール化合物を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱転写記録媒体。
【請求項5】
前記フェノール化合物は、ビスフェノールA、ビスフェノールAの二量体及びビスフェノールAの三量体からなる群より選択される一種以上の化合物であることを特徴とする請求項4に記載の熱転写記録媒体。
【請求項6】
前記感熱転写層は、ニトロセルロース樹脂をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱転写記録媒体。
【請求項7】
前記感熱転写層及び基材の間に離型層をさらに有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱転写記録媒体。
【請求項8】
前記離型層は、溶解度パラメーターが9.0cal1/2cm−3/2以下であるポリオレフィン系ワックスを含有することを特徴とする請求項7に記載の熱転写記録媒体。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載の熱転写記録媒体を用いて被転写体に画像を転写することを特徴とする熱転写記録方法。
【請求項10】
前記被転写体は、ポリエステル樹脂、ナイロン、アセテート樹脂及び綿からなる群より選択される樹脂を含有する布であることを特徴とする請求項9に記載の熱転写記録方法。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の熱転写記録方法を用いて画像が転写されていることを特徴とする記録体。

【公開番号】特開2006−82298(P2006−82298A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267448(P2004−267448)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】