説明

熱転写記録媒体および熱転写記録方法

【課題】 汎用的に用いられている被転写体に高感度で鮮明な転写画像が得られ、その転写画像は耐摩擦性、耐薬品性に優れた熱転写記録媒体、および該熱転写記録媒体を用いた熱転写記録方法を提供する。
【解決手段】 基材上に感熱転写層を有する熱転写記録媒体において、該感熱転写層は、分子量4000以上15000以下の飽和ポリエステル樹脂(A)および分子量300以上1000以下の飽和ポリエステル樹脂(B)を含有し、これら飽和ポリエステル(A)及び(B)の前記感熱転写層における組成比が前記飽和ポリエステル樹脂(A)は1重量%以上20重量%以下、前記飽和ポリエステル樹脂(B)は1重量%以上40重量%未満であり、さらに前記感熱転写層にポリオレフィン系ワックスを含有することを特徴とする熱転写記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写記録媒体および熱転写記録方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物流ラベル・定格銘板などの画像を熱転写による方法で形成する場合には、転写の対象とする紙、フィルムなどによって画像形成の際、大量の印字エネルギーを必要とすることがある。また、画像欠けが発生したり、画像の濃度が薄くなることがある。また、物流ラベルや定格銘板などに用いられるラベルは、該ラベルが貼り付けられた状態で摩擦や熱、薬品に耐えられなければならないため、画像は堅牢性を有することが必要であるが、従来の熱転写記録媒体では、少ない印字エネルギーで鮮明な画像を形成でき、かつ画像の堅牢性を具備させることが不可能であるといった問題点があった。
【0003】
従来、少ない印字エネルギーで画像を形成する(以下、高感度)技術として、分子量の低いエステルオリゴマーを転写層の主成分とする方法(特許文献1)、樹脂に比べ溶融性に優れたワックスを用いる方法(特許文献2)、流動性のある樹脂を転写層の主成分とする方法(特許文献3)などの熱転写記録媒体に関する技術が知られている。
【0004】
また、堅牢性を具備した薄膜を転写させる技術として、被転写体に接着させるための層を設ける方法(特許文献4)、堅牢な樹脂と軟化点の低い材料を混合する方法(特許文献5)、特に耐熱性に優れるポリイミドを用いる方法(特許文献6)などが従来から知られている。
【0005】
しかしながら、前者の方法では特に対象となる被転写体を限定することはないが、被転写体、印字環境によっては印字画像の鮮明性、耐久性の点で対応できないことがある。後者の方法については、被転写体が限定されてしまうことがあり汎用性がない。また、堅牢性を求めるあまり、低速でしか印字できないことがあるなどの問題点があり、従来から知られているワックスを主成分とした熱転写記録媒体と同等の熱感度を具備させることが困難であった。
【0006】
熱感度と堅牢性を両立させる方法として、従来、画像の堅牢性を持たせる樹脂と低エネルギーで転写させるための低分子量樹脂(特許文献5)または低分子量化合物を配合させる方法(特許文献7)が知られているが、低分子量樹脂については、堅牢性は持たせられるが、熱感度は一般のワックスを主体とした熱転写記録媒体に比べるとまだ劣っており、低分子量化合物については、ワックスを主体とした熱転写記録媒体とほぼ同じレベルの熱感度が得られるが、堅牢性の点で、特に耐摩擦性、耐薬品性について他の従来技術と比べると劣ることがある。
【0007】
【特許文献1】特公平4−034957号公報
【特許文献2】特開昭59−215891号公報
【特許文献3】特開2000−025342号公報
【特許文献4】特開2001−001654号公報
【特許文献5】特許第2692330号明細書
【特許文献6】特開昭63−045090号公報
【特許文献7】特開平10−181221号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、汎用的に用いられている被転写体に高感度で鮮明な転写画像が得られ、しかもその転写画像は耐摩擦性、耐薬品性に優れた熱転写記録媒体、および該熱転写記録媒体を用いる熱転写記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、上記課題は本発明の(1)〜(6)によって解決される。
(1)「基材上に感熱転写層を有する熱転写記録媒体において、該感熱転写層は、分子量4000以上15000以下の飽和ポリエステル樹脂(A)および分子量300以上1000以下の飽和ポリエステル樹脂(B)を含有し、これら飽和ポリエステル(A)及び(B)の前記感熱転写層における組成比が前記飽和ポリエステル樹脂(A)は1重量%以上20重量%以下、前記飽和ポリエステル樹脂(B)は1重量%以上40重量%未満であり、さらに前記感熱転写層にポリオレフィン系ワックスを含有することを特徴とする熱転写記録媒体」;
(2)「前記飽和ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移点が60℃以上100℃以下であることを特徴とする前記(1)に記載の熱転写記録媒体」;
(3)「前記ポリオレフィンワックスが、ポリエチレンワックスまたは酸化ポリエチレンワックスの少なくとも一種類以上であることを特徴とする前記(1)又は(2)に記載の熱転写記録媒体」;
(4)「前記感熱転写層と前記基材との間に離型層を有し、該離型層は、溶解度パラメータが9.0cal1/2cm−3/2以下のポリオレフィン系ワックスを含むことを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体」;
(5)「前記ポリオレフィン系ワックスは、融点が100℃以下であることを特徴とする前記(4)に記載の熱転写記録媒体」;
(6)「前記(1)乃至(5)のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体から被転写体に画像を転写することを特徴とする熱転写記録方法」。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、汎用的に用いられている被転写体に高感度で鮮明な転写画像が得られ、しかもその転写画像は耐摩擦性、耐薬品性に優れた熱転写記録媒体を提供することができる。
また本発明により、該熱転写記録媒体を用い、前記優れた転写画像が得られる熱転写記録方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明で使用される被転写体としては、ポリエステルフィルム、ポリオレフィン系フィルム、コート紙、ポリスチレンフィルム、合成紙など一般的に用いられている紙、フィルムが挙げられる。
【0012】
本発明の熱転写記録媒体は、基材上に感熱転写層を有するものであり、基材には厚さ3μm〜10μm程度のプラスチックフィルムを支持体として用いるのが一般的である。支持体材料を具体的に示すと、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン等である。なお、本発明では支持体の材料としてこれらに限定されない。
【0013】
感熱転写層であるインク層(以下、インク層ということもある)の着色剤としては、カーボンブラック、アゾ系染顔料、ランブラック、アニリンブラック、ファーネスブラック、マグネタイト、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、マラカイトグリーン、ジスアゾイエロー、ピグメントレッド、ピグメントイエロー、ピグメントブルーなど公知の染顔料等の一般的に用いられている無機顔料や有機染顔料等を使用することができる。本発明は着色剤の材料をこれらに限定しないが、この中でも、カーボンブラックが特に好ましい。
【0014】
本発明に用いるインク層の主成分としては、飽和ポリエステル樹脂を用いる。ここで、飽和ポリエステル樹脂とは、酸成分としてアジピン酸、セバシン酸、マレイン酸などの脂肪族カルボン酸、およびテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸を、グリコール成分としてエチレングリコール、ネオペンチレングリコール、ブチレングリコール、プロピレングリコールなどを含むモノマーを用いて合成された樹脂であって、一種類のカルボン酸とグリコールのみが重合した単独重合体であってもよく、二種類以上のカルボン酸とグリコールが重合した共重合体であってもよく、これらの単独重合体及び共重合体の分子の一部または全部が架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよい。また、カルボン酸成分は、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸がよく、グリコール成分は、好ましくはエチレングリコールまたはネオペンチレングリコールである。このとき、グリコール成分としてエチレングリコールに代表される短鎖のグリコール成分を主成分として用いることによって、層の凝集が密になり、耐摩擦性・耐薬品性をさらに向上させることができる。カルボン酸成分にはスルホン酸などの極性基をつけることもできる。これによって転写した画像は摩擦時の画像の堅牢性にすぐれる。これらのポリエステル樹脂以外の樹脂を用いたときには、転写画像がエタノール、イソプロピルアルコールなどの薬品や、摩擦をすることによって画像が欠落してしまう可能性があるし、また、樹脂のSP(溶解度パラメータ)値が一般的に用いられる被転写体のSP値と大きく離れている場合、接着性が発現しないので、画像を形成すること自体が困難となる。
【0015】
単に着色剤及び飽和ポリエステル樹脂を含むインク層では、少ない熱エネルギーによってインクを転写し、粗面に画像を形成させることが困難であるため、粗面な転写体に高感度で鮮明な転写画像を得るために、前記飽和ポリエステル樹脂の分子量をコントロールすることが必要である。画像の堅牢性を付与するためには、高分子量の樹脂を用いればよいが、高分子であればあるほど熱感度は劣る傾向がある。公知の技術では、低分子量の熱溶融性物質を含有させるものもあるが、薬品の種類によっては耐薬品性が低下したり、熱転写記録媒体としての転写層が弱くなったりして剥落してしまうことがある。
【0016】
本発明の熱転写記録媒体は、その感熱転写層においては、高分子量の飽和ポリエステル樹脂(A)と低分子量の飽和ポリエステル樹脂(B)をバランスよく混合させ、さらに耐摩擦性を持たせる目的で滑性をもつポリオレフィン系ワックスを導入することによって、高感度で耐薬品性・耐摩擦性を持たせることができる。
【0017】
即ち、該高分子量の飽和ポリエステル樹脂(A)の分子量は4000以上15000以下、好ましくは4000以上9000以下である。また該低分子量の飽和ポリエステル樹脂(B)の分子量は300以上1000以下、好ましくは600以上1000以下である。
該飽和ポリエステル樹脂(A)の分子量が4000未満では、耐薬品性が悪くなり、15000を超えると画像の転写性が悪くなる。また該飽和ポリエステル樹脂(B)の分子量が300未満では細かい文字のつぶれ(熱を加えていないところが脱落する)が起こり、1000を超えると画像の転写性が悪くなる。
【0018】
また、感熱転写層中の飽和ポリエステル樹脂(A)の含有量は1重量%以上20重量%以下、飽和ポリエステル樹脂(B)の含有量は1重量%以上40重量%未満である。
該飽和ポリエステル樹脂(A)の含有量が1重量%未満であると画像の耐久性(耐摩擦性・耐薬品性)が大きく劣化し、画像の保存性も悪くなり、20重量%を超えると細かい文字の再現性が悪く、かすれたりすることがある。また飽和ポリエステル樹脂(B)の含有量が1重量%未満であると画像の転写性が悪くなり、40重量%以上であるとリボン保存時にブロッキングが発生したり、細かい文字のつぶれが発生することがある。
【0019】
さらに飽和ポリエステル樹脂(A)のガラス転移点は60℃以上100℃以下のものが好ましい。該ガラス転移点が60℃未満では画像耐久性が劣り、100℃を超えると画像の転写性が悪くなる。
【0020】
本発明の熱転写記録媒体においては、以上の条件を満たすことにより、低エネルギーで画像を転写させることが可能(転写性が良くなり)となり、その画像は細かい文字を再現可能であり、さらに画像の耐久性(耐摩擦性・耐薬品性)が優れる。すなわち画像の転写性、画像耐久性といった背反の課題を解決することができる。
【0021】
また本発明の熱転写記録媒体は、その感熱転写層にポリオレフィン系ワックスを含有させる。
該ポリオレフィン系ワックスを含有させることにより、転写画像の表面をなめらかにし、摩擦や薬品に耐久できる効果を付与することができる。
該ポリオレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス等が好ましい。
該ポリオレフィン系ワックスの含有量は、感熱転写層の全固形量に対して1重量%以上20重量%以下が好ましい。20重量%を超えると熱感度が低下することがある。
【0022】
また、ガソリンなどの溶剤を使った耐性をさらに向上する目的で、感熱転写層に第二の成分として、感熱転写層に通常用いる公知の各種樹脂を添加することができる。
これらの樹脂は特に耐摩擦性、耐薬品性などで優れた品質を有しているが、従来の熱転写プリンタによって印加される熱量では不足である場合もあり、感度を阻害しない程度の添加が望ましい。
【0023】
以上のほか、感度向上や支持体からのインク層脱落防止や分散性向上等の目的で、感熱転写層中に種々の物質(ポリオレフィン系ワックス以外のワックス、界面活性剤等)を添加してもよいが、熱感度および耐久性を低下させない範囲の添加が望ましい。
該感熱転写層の厚みは、1.0μm〜5.0μmが好ましく、より好ましくは1.0μm〜2.0μmである。
【0024】
本発明の熱転写記録媒体は、前記した感熱転写層形成材料を、適当な溶媒中に分散させるかまたは溶解させ、好ましくは溶解させた塗布液を、基材としての支持体上に塗布、乾燥して層を作製すればよい。
【0025】
本発明において支持体と感熱転写層との間に離型層を設けることができるが、離型層は印字の際に支持体と感熱転写層との剥離性をよくするもので、サーマルヘッドで加熱されると熱溶融して低粘度の液体となり、加熱部分と非加熱部分の界面近傍で層が切れ易いように構成することが好ましい。さらに離型層は画像形成後、感熱転写層をバリアする効果があり、スミアや洗浄時などの物理的衝撃に耐えうるという効果がある。
【0026】
離型層の熱溶融性ワックス層の熱溶融性ワックスとしては、SP(溶解度パラメータ)が9.0cal1/2cm−3/2以下のポリオレフィン系ワックスを用いることが望ましい。
溶解度パラメータδは、ポリオレフィンの分子凝集エネルギー定数Fを用いてδ=ρΣF/M(ρ:ワックスの密度(gcm−3)、M:ポリオレフィンの平均分子量)の式で簡便に算出できる。なお、上式におけるΣは、ワックスのポリオレフィンが、変性ポリオレフィンのように、複数種のオレフィン構成単位から構成されている場合に、各々のオレフィン構成単位からなるポリオレフィンのFに、ワックスのポリオレフィンの分子における各々のオレフィン構成単位の存在率を乗じて和をとることを意味する。つまり、Fはポリマーの中の原子・官能基に固有の値であり、ワックスのポリオレフィンの分子を構成する各原子・官能基に関してFの和を求めることで、分子のSPを求めることができる。これによって、基材との接着性を低下させ、容易に転写させることができる。
具体的なSP(溶解度パラメータ)が9.0cal1/2cm−3/2以下のポリオレフィン系ワックスとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレンなどが挙げられる。
【0027】
離型層には、脱落防止、層塗工性向上等のために低粘度化剤となる樹脂を少量添加しても良く、この目的にはエチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−エチルアクリレート共重合体等が使用される。
【0028】
また、離型層に弾力性を持たせて熱転写記録媒体と被転写体との密着性を向上させるために、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム等のゴム類を添加してもよい。
【0029】
離型層を作成するために、ポリオレフィンのような合成ワックスを用いる場合は、化合物が単一素材であることから、これらワックスを有機溶媒で分散し離型層塗工液を作成し、塗工後の乾燥時に使用ワックスの溶融開始温度より5℃高く、使用ワックスの融点より10℃低い範囲内の温度で乾燥することで、使用ワックスの一部分(低分子量分)が溶解した状態となり、分子量の大きい部分は粒子状となり、均一でインク層の塗工性に優れた層形成を行なうことが可能となる。使用ワックスの融点より10℃以上高い温度で乾燥すると、ワックスの溶解分が増し、その上に塗布するインク層塗布液が均一に塗布が出来なくなる。
【0030】
また、ポリオレフィン系ワックスの融点が100℃を超えると、転写の際に多くの熱エネルギーがかかってしまい、熱転写記録媒体として感度が下がるということになるので、融点は100℃以下であることが好ましい。該ポリオレフィン系ワックスとして具体的なものとしては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸変性ポリエチレン、酸変性ポリプロピレンなどを低分子量化したものが挙げられる。
【0031】
なお、離型層の厚みは可能な限り薄い方が望ましいが、薄すぎるとバリア性が発現できないことから、一般的には付着量は、0.1g/m〜3.0g/m、好ましくは0.2g/m〜2.0g/mとして形成される。
【0032】
また、さらなるバリア性付与のため、離型層とインク層の間に中間層を設けてもよく、この中間層においては主に公知の樹脂を使用することができる。ただし、中間層を設ける場合、全体のインク面の厚みが増えることになるため、サーマルヘッドによって効率的にインク層に熱が印加されるのを阻害しない範囲での適用が望ましい。
【0033】
本発明の熱転写記録方法は、前記本発明の熱転写記録媒体の感熱転写層(インク層)と被転写体とを重ねて、熱転写記録媒体の支持体の裏面(インク層が形成されている面と反対側の面)からサーマルヘッド等で画像に合わせて熱を印加して画像を被転写体に転写することにより行なう。
【0034】
本発明の熱転写記録媒体は、支持体の裏面に、熱転写記録の際の高熱に耐性を持つ層(耐熱保護層)やサーマルヘッド等との摩擦に耐性を持つ層(滑性保護層)を必要に応じて設けることができる。
また、支持体の裏面の一部がサーマルヘッドに熱融着し、これが転写画像を傷つけたり熱転写記録媒体の搬送を困難にしたりする現像(この現像をスティッキングという)も発生するから、これを防止する層(スティック防止層)を設けることができる。
【0035】
これらの背面層は、いずれも耐熱性高分子で形成される薄層であり、一つの層で二種以上の層を兼用することもできる。以上に記載した背面層の形成に好適な重合体を例示すると、ケイ素樹脂、ポリジメチルシロキサン、シリコーンゴム、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリスルホン、シリコン含有ポリパラバン酸、アセトアセチル基含有ポリビニルアルコール等が挙げられる。
これらの背面層の厚みは、0.01μm〜0.7μmであることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお「部」は「重量部」を示す。
【0037】
実施例及び比較例で用いた飽和ポリエステル(A)、(A)、(A)及び(B)、(B)の原料モノマー成分を下記に示す。
飽和ポリエステル(A)、(A)、(A
酸成分:イソフタル酸、テレフタル酸及びアジピン酸からなる3成分を含む
グリコール成分:エチレングリコール及びネオペンチレングリコールからな
る2成分を含む
飽和ポリエステル(B)、(B
酸成分:イソフタル酸及びテレフタル酸からなる2成分を含む
グリコール成分:エチレングリコール及びネオペンチレングリコールからな
る2成分を含む
なお、飽和ポリエステル(A)、(A)、(A)、また(B)、(B)は、同様のモノマー成分組成で重合度が異なる。
【0038】
[実施例1]
まず、下記組成の離型層形成用塗布液を4.5μm厚のポリエステルフィルム(支持体)上に塗布し、60℃で10秒乾燥して乾燥付着量約0.8g/mの離型層を設け、その上に下記組成のインク層形成用塗布液を塗布し、70℃で10秒分間乾燥して乾燥付着量約1.5g/mのインク層を設けた。次に、インク層を設けた側と反対側の支持体面に、シリコーンゴムの1%トルエン溶液を乾燥付着量0.02g/mになるように塗布し、80℃で10秒間乾燥して背面層を設け、本発明の熱転写記録媒体を作製した。
【0039】
(離型層形成用塗布液の組成)
ポリエチレンワックス
(溶融開始温度55℃、融点105℃、溶解度パラメータ7.9) 9部
エチレン−酢酸ビニル共重合体 1部
トルエン 90部
【0040】
(インク層形成用塗布液の組成)
カーボンブラック 5部
飽和ポリエステル樹脂(A
(分子量8000、ガラス転移点45℃) 3部
飽和ポリエステル樹脂(B
(分子量950、ガラス転移点36℃) 6部
ポリエチレンワックス(融点105℃) 6部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0041】
[実施例2]
実施例1と同様に離型層、背面層を形成し、該離型層の上に下記組成のインク層形成用塗布液を塗布し、70℃で10秒分間乾燥して乾燥付着量約1.5g/mのインク層を設け、本発明の熱転写記録媒体を作成した。
【0042】
(インク層形成用塗布液の組成)
カーボンブラック 5部
飽和ポリエステル樹脂(A
(分子量8000、ガラス転移点60℃) 3部
飽和ポリエステル樹脂(B
(分子量950、ガラス転移点36℃) 6部
ポリエチレンワックス(融点105℃) 6部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0043】
[実施例3]
実施例1と同様に支持体裏面に背面層を形成し、支持体表面上に下記組成の離型層形成用塗布液を塗布し、60℃で10秒乾燥して乾燥付着量約0.8g/mの離型層を設けその上に下記組成のインク層形成用塗布液を塗布し、70℃で10秒分間乾燥して乾燥付着量約1.5g/mのインク層を設け、本発明の熱転写記録媒体を作製した。
【0044】
(離型層形成用塗布液の組成)
ポリエチレンワックス
(溶融開始温度55℃、融点90℃、溶解度パラメータ7.9) 9部
エチレン−酢酸ビニル共重合体 1部
トルエン 90部
【0045】
(インク層形成用塗布液の組成)
カーボンブラック 5部
飽和ポリエステル樹脂(A
(分子量8000、ガラス転移点60℃) 3部
飽和ポリエステル樹脂(B
(分子量950、ガラス転移点36℃) 6部
ポリエチレンワックス(融点105℃) 6部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0046】
[比較例1]
実施例1と同様に、支持体(ポリエステルフィルム)上に離型層を設け、その上に下記組成のインク層形成用塗布液を塗布し、70℃で10秒分間乾燥して乾燥付着量約1.5g/mのインク層を設けた。背面層は実施例1と同様に設け、比較の熱転写記録媒体を作製した。
【0047】
(インク層形成用塗布液の組成)
カーボンブラック 5部
飽和ポリエステル樹脂(A
(分子量8000、ガラス転移点60℃) 15部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0048】
[比較例2]
実施例1と同様に、支持体(ポリエステルフィルム)上に離型層を設け、その上に下記組成のインク層形成用塗布液を塗布し、70℃で10秒分間乾燥して乾燥付着量約1.5g/mのインク層を設けた。背面層は実施例1と同様に設け、比較の熱転写記録媒体を作製した。
【0049】
(インク層形成用塗布液の組成)
カーボンブラック 5部
飽和ポリエステル樹脂(A
(分子量8000、ガラス転移点60℃) 10部
飽和ポリエステル樹脂(B
(分子量950、ガラス転移点36℃) 5部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0050】
[比較例3]
実施例1と同様に、支持体(ポリエステルフィルム)上に離型層を設け、その上に下記組成のインク層形成用塗布液を塗布し、70℃で10秒分間乾燥して乾燥付着量約1.5g/mのインク層を設けた。背面層は実施例1と同様に設け、比較の熱転写記録媒体を作製した。
【0051】
(インク層形成用塗布液の組成)
カーボンブラック 5部
飽和ポリエステル樹脂(A
(分子量8000、ガラス転移点60℃) 4部
飽和ポリエステル樹脂(B
(分子量950、ガラス転移点36℃) 11部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0052】
比較例4
実施例1と同様に、支持体(ポリエステルフィルム)上に離型層を設け、その上に下記組成のインク層形成用塗布液を塗布し、70℃で10秒分間乾燥して乾燥付着量約1.5g/mのインク層を設けた。背面層は実施例1と同様に設け、比較の熱転写記録媒体を作製した。
【0053】
(インク層形成用塗布液の組成)
カーボンブラック 5部
飽和ポリエステル樹脂(A
(分子量18000、ガラス転移点84℃) 3部
飽和ポリエステル樹脂(B
(分子量950、ガラス転移点36℃) 6部
ポリエチレンワックス(融点105℃) 6部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0054】
比較例5
実施例1と同様に、支持体(ポリエステルフィルム)上に離型層を設け、その上に下記組成のインク層形成用塗布液を塗布し、70℃で10秒分間乾燥して乾燥付着量約1.5g/mのインク層を設けた。背面層は実施例1と同様に設け、比較の熱転写記録媒体を作製した。
【0055】
(インク層形成用塗布液の組成)
カーボンブラック 5部
飽和ポリエステル樹脂(A
(分子量8000、ガラス転移点60℃) 3部
飽和ポリエステル樹脂(B
(分子量2000、ガラス転移点40℃) 6部
ポリエチレンワックス(融点105℃) 6部
メチルエチルケトン(MEK) 80部
【0056】
以上のようにして作製した熱転写記録媒体の実施例1〜3と比較例1〜5を被転写体として白色ポリエステルフィルム(リンテック製LVIPシリーズ)に熱転写プリンタ(ライン型薄膜サーマルヘッド・DATAAMAX社製I−4308・印字速度101.6mm/sec・ドット密度12本/mm)を用いて画像が形成できる最小の印字エネルギー目盛によって5〜6ポイント文字の印字を行なった。印字試験で転写された文字の判読性とベタ印字部にて転写性の評価を行ない、また、熱転写記録画像について下記の耐摩擦性、耐薬品性の評価試験を行なった。その結果を表1に示した。
【0057】
【表1】

【0058】
(評価試験方法)
熱感度目盛:5ポイント漢字が判読できる最小の印字エネルギーの目安として、DATAMAX社製熱転写プリンタの濃度目盛(最小−30〜最大+30)を測定し、転写性の評価を行なった。
【0059】
判読性(解像度):目視で判定し、5ポイントおよび6ポイント漢字「電」がつぶれずに印字されており判読できるものを○、5ポイントおよび6ポイント漢字「電」がつぶれて印字されており判読できないものを×とし、解像度の評価を行なった。
【0060】
耐摩擦性:シャープペンのペン先(金属製)にて、加重40グラムで画像上を往復して摩擦し、画像が欠けるまでの回数を記した。
耐薬品性:濃度95%のエチルアルコールを含ませた綿布を加重1000g、面積10cmの面で画像上を往復して摩擦し、画像が欠けるまでの回数を記した。
【0061】
表1から、実施例1では、解像度、転写性が良好な結果を示しており、実施例2〜3では、耐摩擦性、耐薬品性がさらに優れ、実施例3は、転写性がさらに優れることが分かる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に感熱転写層を有する熱転写記録媒体において、該感熱転写層は、分子量4000以上15000以下の飽和ポリエステル樹脂(A)および分子量300以上1000以下の飽和ポリエステル樹脂(B)を含有し、これら飽和ポリエステル(A)及び(B)の前記感熱転写層における組成比が前記飽和ポリエステル樹脂(A)は1重量%以上20重量%以下、前記飽和ポリエステル樹脂(B)は1重量%以上40重量%未満であり、さらに前記感熱転写層にポリオレフィン系ワックスを含有することを特徴とする熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記飽和ポリエステル樹脂(A)は、ガラス転移点が60℃以上100℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記ポリオレフィンワックスが、ポリエチレンワックスまたは酸化ポリエチレンワックスの少なくとも一種類以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記感熱転写層と前記基材との間に離型層を有し、該離型層は、溶解度パラメータが9.0cal1/2cm−3/2以下のポリオレフィン系ワックスを含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系ワックスは、融点が100℃以下であることを特徴とする請求項4に記載の熱転写記録媒体。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の熱転写記録媒体から被転写体に画像を転写することを特徴とする熱転写記録方法。


【公開番号】特開2006−82229(P2006−82229A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266247(P2004−266247)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】