説明

熱転写記録媒体

【課題】熱転写時に抜けや濃淡ムラ、印画シワ等、画像の不均一性の欠陥のない熱転写記録媒体の提供を目的とする。
【解決手段】支持体の一方の面に、少なくとも染料とバインダー樹脂とポリエチレンワックスフィラーおよびシリコーンフィラーを含有してなる熱転写層と、他方の面に、少なくとも耐熱滑性層が設けられた熱転写記録媒体であって、前記ポリエチレンワックスフィラーおよびシリコーンフィラーの総含有量が、前記バインダー樹脂に対して0.5〜6重量%であり、且つ、ポリエチレンワックスフィラーの粒径をR、シリコーンフィラーの粒径をrとしたとき、その粒径比[r/R]が0.5〜2であることを特徴とする熱転写記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被熱転写体上に文字または画像を形成するための熱転写層を有する熱転写記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、文字または画像等を被転写体に形成する方式として、昇華型熱転写方式または溶融型熱転写方式等が採用されている。例えば、昇華型熱転写方式の場合、支持体上に染料やバインダー等を含む熱転写層等を設けた熱転写記録媒体の熱転写層表面と、他の支持体上に染料を受容する受容層を設けた被熱転写体の受容層表面とを互いに重ね合わせ、熱転写記録媒体の熱転写層を設けていない面から、文字または画像情報により温度制御されたサーマルヘッド等により加熱することで、熱転写層中の染料を昇華させ、受容層へ移行させることで、所望の文字または画像を形成する。
【0003】
一方、溶融型熱転写方式の場合、支持体上に顔料やワックス等を含む熱溶融性の熱転写層を設けた熱転写記録媒体の熱転写層表面と、他の支持体上に受容層を設けた被熱転写体の受容層表面とを互いに重ね合わせ、サーマルヘッド等により加熱することで、熱転写層を融着させ、受容層へ移行させることで、所望の文字または画像を形成する。上記の方式のうち、昇華型熱転写方式は、文字や図表などのモノクロプリントや、デジタルカメラ画像またはコンピューターグラフィックス画像などのカラープリントに広く採用されている。
【0004】
しかしながら、昇華型熱転写方式の場合、熱転写時に熱転写記録媒体と被熱転写体(受像シート)との密着が不十分であると、抜けや濃淡ムラ等、画像の不均一性を生じることがある。
【0005】
また熱転写時に、熱転写層表面と被熱転写体の受容層表面を重ね合わせたときに、熱転写層表面と被熱転写体の受容層表面が滑り、その結果、熱転写記録媒体が伸びて、印画シワが発生し、重大な欠陥となることがある。
【0006】
上記のような問題を解決するために、多くの方法が提案されている。例えば、特許文献1では、熱転写層にマイクロパウダーポリエチレンワックスを含有することで、被熱転写体(受像シート)の表面との滑り性及び剥離性が良好で、且つ保存性能の良い熱転写記録媒体を得ることができ、またさらに、画像品質を良化させると記載されている。また特許文献2では、マゼンタの熱転写層にポリエチレンワックス粒子を含有することで、肌色再現性(広い再現域を備え、かつ澄んだ色が得られること)に優れた熱転写記録媒体を得ることができ、またさらに印画シワを防止することができると記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1の提案では、ポリエチレンワックスフィラーにより生じた熱転写層表面の凹凸が、被熱転写体との密着力を低下させ、印画物に抜けが生じるという問題がある。また、特許文献2の提案では、ポリエチレンワックスフィラーにより生じた熱転写層表面の凹凸が、被熱転写体との密着力を低下させ、印画物に抜けが生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−40171号公報
【特許文献2】特開平7−40668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、熱転写時に抜けや濃淡ムラ、印画シワ等、画像の不均一性の欠陥のない熱転写記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る発明は、支持体の一方の面に、少なくとも染料とバインダー樹脂とポリエチレンワックスフィラーおよびシリコーンフィラーを含有してなる熱転写層と、他方の面に、少なくとも耐熱滑性層が設けられた熱転写記録媒体であって、前記ポリエチレンワックスフィラーおよびシリコーンフィラーの総含有量が、前記バインダー樹脂に対して0.5〜6重量%であり、且つ、ポリエチレンワックスフィラーの粒径をR、シリコーンフィラーの粒径をrとしたとき、その粒径比[r/R]が0.5〜2であることを特徴とする熱転写記録媒体である。
【0011】
また、本発明の請求項2に係る発明は、ポリエチレンワックスフィラーの重量基準の配合量をM、シリコーンフィラーの重量基準の配合量をmとしたとき、その配合量比[m/M]が0.35〜3であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録媒体である。
【0012】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記熱転写層が架橋剤を含有し、前記バインダー樹脂の重量基準の配合比をB、架橋剤の重量基準の配合量をbとしたとき、その配合量比[b/B]が0.05〜0.2であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱転写記録媒体である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法を用いることにより、熱転写記録媒体において、熱転写時に抜けや濃淡ムラ、印画シワ等、画像の不均一性の欠陥を防ぐことができるという効果を発現する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の熱転写記録媒体の一実施形態の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。図1は熱転写記録媒体1の断面図である。熱転写記録媒体1は、支持体2と熱転写層3と耐熱滑性層4からなる。支持体2は、従来から熱転写記録媒体の基材として使用されているものと同等なものを使用することができ、機械的強度、柔軟性、耐熱性などを有することが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリイミド、ナイロン、ポリ塩化ビニリデン等のプラスチックフィルム、コンデンサーペーパー、パラフィン紙等の紙類を挙げることができるが、特に好ましいのはポリエチレンテレフタレートである。支持体2の厚みは2〜25μm、より好ましくは2〜12μmである。
【0016】
耐熱滑性層4は、支持体2の熱転写層3の反対側の面に設けられ、サーマルヘッドの熱による支持体2の熱収縮や、サーマルヘッドとの摩擦による支持体2の破断を防止する。耐熱滑性層に用いられる材料としては、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル樹脂、ポリウレタン系樹脂が挙げられる。耐熱性を向上させる目的で、架橋剤を併用してもよい。また、滑性を向上させる目的でシリコーンオイル等の滑剤等を併用してもよく、上記樹脂をシリコーン変性等したものを使用してもよい。
【0017】
支持体2と耐熱滑性層4又は熱転写層3との間の密着性を向上させるために、支持体2
の一方又は両方の面に易接着層を設けてもよい。易接着層に用いられる材料としては、支持体2と耐熱滑性層4又は熱転写層3の両方と親和性があるものが適当であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0018】
易接着層の厚みはサーマルヘッドからの熱転写層への熱の移動を妨げない程度の厚みがよく、0.01〜1μm、より好ましくは0.05〜0.5μmである。易接着層は支持体上に公知の塗布方法で塗液を塗布することで形成することができる。また、プラスチックフィルムの場合、プラスチックフィルムを成膜する過程で同時に形成してもよい。また、易接着層を設けないで、支持体2の一方又は両方の面の表面粗さを調整することで密着性を向上させてもよい。
【0019】
熱転写層3は、熱転写記録媒体1の熱転写層3の反対側の面からサーマルヘッドにより加熱することで、熱転写層3に含まれる成分が被熱転写体(受像層)上に移行(転写)する機能を持つ。本発明の熱転写層は、特に昇華性熱転写層のことを指す。
【0020】
熱転写層3は、少なくとも染料、バインダー樹脂、フィラーを含有する。前記染料としては、特に昇華性染料が好ましく、従来公知のものを用いることができる。具体的には、イエローとしては、カヤセットイエローAG、カヤセットイエローTDN、PYT52、プラストイエロー8040、ホロンブリリアントイエローS6GLPI等が挙げられる。マゼンタとしては、カヤセットレッドB、カヤセットレッド130、セレスレッド7B、マクロレックスレッドバイオレットR、C.I.ディスパースレッド60等を挙げられる。シアンとしては、カヤセットブルー714、セレスブルーGN、MSブルー50、TSD−44、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
熱転写層3に用いる前記バインダー樹脂としては、従来公知のものが使用でき、ガラス転移温度50℃以上が好ましい。例えば、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、スチレン−アクリルニトリル共重合樹脂、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリカーボネート等の耐熱性、染料移行性等に優れた樹脂が使用できる。また、より耐熱性、染料移行性に優れた樹脂として、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。ガラス転移温度が50℃以下であると、熱転写時に熱転写層3が被熱転写体に融着しやすくなり、熱転写記録媒体の保存性に問題が生じる。また、熱転写層3に含まれる昇華性染料とバインダー樹脂との比率は、100:50〜100:300が好ましい。
【0022】
また、熱転写層3に用いる前記フィラーとしては、ポリエチレンワックスフィラーとシリコーンフィラーを併用するのが好ましい。ポリエチレンワックスフィラーおよびシリコーンフィラーとしては、公知のものが使用でき、特に限定されない。ポリエチレンワックスフィラーとシリコーンフィラーを併用することで、熱転写時に抜けや濃淡ムラ等、画像の不均一性の欠陥を防ぐことができる。
【0023】
ポリエチレンワックスフィラーは熱転写時に画像の濃淡ムラを防ぐことができるが、過剰の添加では抜けが生じやすくなるため、単独での使用は好ましくない。一方、シリコーンフィラーも、特に抜け、濃淡ムラ等、画像の不均一性を防ぐことができるが、単独使用での効果は十分とはいえない。発明者等は鋭意努力の結果、エチレンワックスフィラーとシリコーンフィラーの併用により、上記の問題が解決できることを見出した。
【0024】
上記効果を得るために、具体的には、ポリエチレンワックスフィラーとシリコーンフィラーの粒径比[r/R]は0.5〜2であることが好ましい。これ以外の範囲では、凹凸
が大きくなるため、粒径大きい粒子のみの特性が顕著になり、抜けや濃淡ムラ等、画像の不均一性の欠陥を十分に防ぐことができない。
【0025】
前記バインダー樹脂に対し、ポリエチレンワックスフィラーおよびシリコーンフィラーの総量が0.5〜6重量%であることが好ましい。0.5重量%未満では、抜けや濃淡ムラ、画像の不均一性等の欠陥を防ぐことはできるが、その効果は十分ではない。6重量%を超えると、塗布外観に面荒れが生じ、所望の濃度の印画物を得ることが難しい。
【0026】
上記ポリエチレンワックスフィラーの配合量をM、シリコーンフィラーの配合量をmとしたとき、その配合量比[m/M]は0.35〜3であることが好ましい。なお、配合量は重量基準である。これ以外の範囲では、添加量の多い粒子の特性が顕著になり、抜けや濃淡ムラ等、画像の不均一性の欠陥を十分に防ぐことができない。
【0027】
上記ポリエチレンワックスフィラーおよびシリコーンフィラーにおいて、粒径は0.1μm〜5μmであることが好ましい。粒径が0.1μm未満では、画像の不均一性の欠陥を十分に防ぐことができず、5μmを超えると、サーマルヘッドの磨耗やフィラーの脱落による印字物の品質低下が生じ易い。
【0028】
前記熱転写層は耐熱性を向上させる目的で架橋剤を併用してもよい。架橋剤を含有させることで耐熱性が向上し、熱転写記録媒体の変形を防止できる。昇華性染料、バインダー樹脂との組み合わせで熱転写層3に用いる架橋剤としては、従来公知のものが使用できる。より耐熱性に優れた架橋剤としてはポリイソシアネートが挙げられ、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系のポリオール樹脂やセルロース系樹脂、アセタール樹脂等の組合せで用いられる。バインダー樹脂の配合量をB、架橋剤の配合量をbとしたとき、配合量比[b/B]は0.05〜0.20であることが好ましい。なお、配合量は重量基準である。配合量比が0.05未満では耐熱性に欠けるため、熱転写時に熱転写記録媒体が変形することで、印画シワが発生する。また配合量比が0.20を超えると、印画濃度が下がるという問題が発生する。
【0029】
以上の熱転写層3は、離型剤を含有してもよい。離型剤を含有させることで、印画時の熱転写層と受容層との間の貼り付きが防止できる。離型剤としては、例えば、シリコーン系、フッ素系、リン酸エステル系、といった各種オイルや界面活性剤が挙げられるが、特に、シリコーン系又はフッ素系のオイルや界面活性剤が好ましい。
【0030】
具体的には、シリコーン系として、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等のストレートシリコーンオイル、アミノ変性、エポキシ変性、カルビノール変性、メルカプト変性、カルボキシル変性、メタクリル変性、ポリエーテル変性、フェノール変性、片末端反応性・異種官能基変性等の反応性変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性、アラルキル変性、フロロアルキル変性、長鎖アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、フェニル変性等の非反応性変性シリコーンオイル等が挙げられる。また、フッ素系としては、フルオロアルキル基またはパーフルオロアルキル基を含有する界面活性剤が挙げられる。
【0031】
離型剤は前記熱転写層に対して、重量比0.004〜0.065が好ましい。重量比が0.004未満では、印画時に受容層と貼り付きが生じやすくなり、貼り付きにより熱シワが酷くなるため、結果として転写ムラが生じる。一方、重量比が0.065を超えると、受容層との滑り性は向上するものの、染料の移行を阻害し、転写ムラが生じたり、所望の濃度の印画物を得ることが難しい。
【0032】
また、熱転写層3には、必要に応じて、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等を添加してもよく、これらの機能を有した層を積層してもよい。
【0033】
熱転写層3は、熱転写層を形成する塗液をバーコート、ブレードコート、エアナイフコート、グラビアコート、ロールコート等のウェットコーティング法によって支持体2上に塗布し、乾燥して熱転写層を形成する。
【0034】
被熱転写体は、支持体及び受容層からなる。この支持体には機械的強度、柔軟性、耐熱性などが要求され、熱転写記録媒体の基材と同等なものを使用することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルや、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリサルファン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミドフィルムなどのプラスチックフィルム、上質紙、コート紙、合成紙などの紙基材等が挙げられる。支持体の厚みには特に限定はないが、一般的には25〜250μm、より好ましくは75〜200μmである。
【0035】
また、受容層としては、熱転写層に昇華性染料を用いる場合には、例えば、染着性を有するブチラール樹脂、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリカプロラクトン、ポリビニルアセタール、エポキシ、ケトン、或いはこれらの変性樹脂やブレンド品などの熱可塑性樹脂や、これらの架橋生成物等を使用することができる。これらは単独でも2種以上を混合してもよい。
【0036】
前記受像層の膜厚は、薄すぎると画像の反射濃度が低下し、十分な画像を形成することが困難になる。一方、厚すぎると色のにじみ等の画像品位の低下が生じる。従って、一般的には1〜30μm、好ましくは3〜10μmとする。この場合の受像層には、画像形成時の熱転写記体への熱融着を防止する目的で、種々の離型剤を含有させることが好ましい。
【0037】
上記離型剤としては、公知の離型剤を適宜選択して使用することができる。例えば、シリコーン系、フッ素系、リン酸エステル系、といった各種オイルや、界面活性剤や、金属酸化物、シリカ、等の各種粒子等が使用でき、中でも、シリコーンオイルを使用することが好ましい。また、その添加量は、受像層の構成条件により異なるが、一般的には、1〜30重量%で配合することが好ましい。
【実施例】
【0038】
以下、実施例について詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0039】
<実施例1>
下記組成の熱転写層用インキ組成物を調製し、裏面に耐熱滑性処理を施した厚み4.5μmのポリエチレンテレフタレートフイルムに、乾燥後の熱転写層の膜厚が1.0μmになるように塗布及び乾燥して本発明の熱転写記録媒体を得た。フィラーの粒径比[r/R]とは、ポリエチレンワックスフィラーの粒径Rに対するシリコーンフィラーの粒径rの比である。フィラーの配合比[m/M]とは、ポリエチレンワックスフィラーの配合量Mに対するシリコーンフィラーの配合量mの比である。
【0040】
<染料>
・C.I.ソルベントブルー63 2.5重量部
・C.I.ソルベントブルー36 2.5重量部
<バインダー樹脂>
・ポリビニルアセタール樹脂 5重量部
<フィラー> 0.15重量部
・ポリエチレンワックスフィラー(興洋化学社製、CE−121)
粒径R 2.7μm
・シリコーンフィラー(信越シリコーン社製、KMP−701)
粒径r 3.5μm
・フィラーの粒径比[r/R] 1.30
・フィラーの配合量比[m/M] 1
<その他>
・架橋剤 0.50重量部
・離型剤 0.055重量部
・メチルエチルケトン 60重量部
・トルエン 30重量部
【0041】
次に、基材シートとして発泡ポリプロピレンフィルム(厚み:50μm)/接着樹脂層/コート紙(塗布量:108g/m2)/接着樹脂層/発泡ポリプロピレンフィルム(厚み:50μm)を用い、この片方の面に下記の受容層用インキを乾燥後の膜厚が4μmとなるように塗布、乾燥を行い、その後45℃で1週間エージングを行い、受容層付きの被熱転写体を得た。
【0042】
〔受容層用インキ〕
・塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体 50.0重量部
(日信化学工業社製、ソルバインA)
・シリコーンオイル 2.0重量部
(信越化学工業社製、KF393)
・メチルエチルケトン 25.0重量部
・トルエン 25.0重量部
【0043】
<実施例2>
熱転写層用インキ組成物のうち、フィラーを0.075重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0044】
<実施例3>
熱転写層用インキ組成物のうち、フィラーを0.225重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0045】
<実施例4>
熱転写層用インキ組成物のうち、フィラーを0.025重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0046】
<実施例5>
熱転写層用インキ組成物のうち、フィラーを0.300重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0047】
<実施例6>
熱転写層用インキ組成物のうち、粒径r(シリコーンフィラー、信越シリコーン社製、KMP−590)を2.0μmとし、粒径比[r/R]を0.74とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0048】
<実施例7>
熱転写層用インキ組成物のうち、粒径R(ポリエチレンワックスフィラー、興洋化学社
製、UN−8)を2.0μmとし、粒径比[r/R]を1.75とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0049】
<実施例8>
熱転写層用インキ組成物のうち、架橋剤配合量を0とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0050】
<実施例9>
熱転写層用インキ組成物のうち、架橋剤配合量を0、フィラーの配合量を0.075重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0051】
<実施例10>
熱転写層用インキ組成物のうち、架橋剤配合量を0、フィラーの配合量を0.225重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0052】
<実施例11>
熱転写層用インキ組成物のうち、架橋剤配合量を0、フィラーの配合量を0.025重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0053】
<実施例12>
熱転写層用インキ組成物のうち、架橋剤配合量を0、フィラーの配合量を0.300重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0054】
<実施例13>
熱転写層用インキ組成物のうち、架橋剤配合量を0.25とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0055】
<実施例14>
熱転写層用インキ組成物のうち、架橋剤配合量を1.00重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0056】
<実施例15>
熱転写層用インキ組成物のうち、架橋剤配合量を1.50重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0057】
<実施例16>
熱転写層用インキ組成物のうち、フィラーの配合比[m/M]を0.3とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0058】
<実施例17>
熱転写層用インキ組成物のうち、フィラーの配合比[m/M]を3.3とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0059】
<比較例1>
熱転写層用インキ組成物のうち、フィラーを0重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0060】
<比較例2>
熱転写層用インキ組成物のうち、フィラーを0.4重量部とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0061】
<比較例3>
熱転写層用インキ組成物のうち、フィラーをシリコーンフィラーのみとした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0062】
<比較例4>
熱転写層用インキ組成物のうち、フィラーをポリエチレンワックスフィラーのみとした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0063】
<比較例5>
熱転写層用インキ組成物のうち、粒径r(シリコーンフィラー、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、XC99−A8808)を0.7μmとし、フィラーの粒径比[r/R]を0.26とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0064】
<比較例6>
熱転写層用インキ組成物のうち、粒径R(ポリエチレンワックスフィラー、興洋化学社製、CE−155)を0.9μmとし、フィラーの粒径比[r/R]を3.89とした以外は、実施例1と同様にして熱転写記録媒体を得た。
【0065】
〔評価項目〕
実施例1〜17及び比較例1〜6で得られた熱転写記録媒体と、実施例1で得られた被熱転写体を用いて、常温条件下で熱転写を行い、熱転写時の状況と被熱転写体上の画像について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
・印画物抜け
得られた画像に抜けが生じるか否かを目視にて確認した。抜けが生じない場合は○、生じる場合は×、多少生じるが、実用上問題のない程度の場合は△で評価した。
【0067】
・濃淡ムラ
得られた画像に濃淡ムラが生じるか否かを目視にて確認した。濃淡ムラが生じない場合は○、大きく生じる場合は×、多少生じるが、実用上問題のない程度の場合は△で評価した。
【0068】
・印画シワ
得られた画像に印画シワが生じるか否かを目視にて確認した。印画シワが生じない場合は○、大きく生じる場合は×、印画シワは生じないが、熱転写記録媒体の変形、伸びが大きい場合は△で評価した。
【0069】
【表1】

【0070】
<比較評価>
実施例1〜7からは、ポリエチレンワックスフィラーとシリコーンフィラーの粒径比[r/R]が0.5〜2であり、かつ架橋剤を、バインダー樹脂に対し、0.1の配合比で含有することで、熱転写時に抜けや濃淡ムラ、印画シワ等、画像の不均一性の欠陥を防ぐことができた。なかでも、バインダー樹脂に対し、ポリエチレンワックスフィラーおよびシリコーンフィラーが1〜5重量%含まれている場合、その効果が特に大きいことが確認された。
【0071】
実施例8〜12からは、ポリエチレンワックスフィラーとシリコーンフィラーの粒径比
[r/R]が0.5〜2であり、かつ架橋剤が含有しないことで、熱転写時に抜けや濃淡ムラ、印画シワ等、画像の不均一性の欠陥を防ぐことができた。架橋剤が含有されないことで、印画シワは生じないが、熱転写記録媒体の変形、伸びが大きいことが確認された。
【0072】
実施例13、14からは、架橋剤を、バインダー樹脂に対し、0.05〜0.2の配合比で含有することで、塗布外観に抜け等の欠陥がなく、熱転写時に抜けや濃淡ムラ、印画シワ等、画像の不均一性の欠陥を防げることが確認された。
【0073】
実施例15からは、架橋剤を、バインダー樹脂に対し、配合比が0.2を超えることで、抜けや濃淡ムラが、実用上の問題のない範囲で発生することが確認された。
【0074】
実施例16、17からは、配合比が0.35〜3を超えることで、抜けや濃淡ムラが、実用上の問題のない範囲で発生することが確認された。
【0075】
比較例1からは、フィラーを添加しないことで、抜けが発生することが確認された。
【0076】
比較例2からは、フィラーが、バインダー樹脂に対し、6重量%以上含まれることで、抜けおよび濃淡ムラが発生することが確認された。
【0077】
比較例3からは、シリコーンのみの添加で、濃淡ムラが発生することが確認された。
【0078】
比較例4からは、ポリエチレンワックスのみの添加で、抜けが発生することが確認された。
【0079】
比較例5からは、ポリエチレンワックスフィラーとシリコーンフィラーの粒径比[r/R]が0.5より小さくなることで、抜けが発生することが確認された。
【0080】
比較例6からは、ポリエチレンワックスフィラーとシリコーンフィラーの粒径比[r/R]が2を超えることで、濃淡ムラが発生することが確認された。
【0081】
以上の結果から、実施例1〜17で得られた本発明品は、いずれも熱転写時に抜けや濃淡ムラ、印画シワ等の発生を防止することができた。一方、比較例1〜6で得られた比較例品は、熱転写時の抜け、濃淡ムラ、印画シワ等の少なくともいずれか一つに不良が生じた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の熱転写記録媒体は、文字や図表などのモノクロプリントや、デジタルカメラ画像またはコンピューターグラフィックス画像などのカラープリントに広く採用される。
【符号の説明】
【0083】
1…熱転写記録媒体
2…支持体
3…熱転写層
4…耐熱滑性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の一方の面に、少なくとも染料とバインダー樹脂とポリエチレンワックスフィラーおよびシリコーンフィラーを含有してなる熱転写層と、他方の面に、少なくとも耐熱滑性層が設けられた熱転写記録媒体であって、前記ポリエチレンワックスフィラーおよびシリコーンフィラーの総含有量が、前記バインダー樹脂に対して0.5〜6重量%であり、且つ、ポリエチレンワックスフィラーの粒径をR、シリコーンフィラーの粒径をrとしたとき、その粒径比[r/R]が0.5〜2であることを特徴とする熱転写記録媒体。
【請求項2】
ポリエチレンワックスフィラーの重量基準の配合量をM、シリコーンフィラーの重量基準の配合量をmとしたとき、その配合量比[m/M]が0.35〜3であることを特徴とする請求項1に記載の熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記熱転写層が架橋剤を含有し、前記バインダー樹脂の重量基準の配合比をB、架橋剤の重量基準の配合量をbとしたとき、その配合量比[b/B]が0.05〜0.2であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱転写記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2012−176583(P2012−176583A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41613(P2011−41613)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】