説明

熱電対用補償導線の収容箱

【課題】ビニールシースの溶融を防止する熱電対用補償導線の収容箱を提供する。
【解決手段】収容箱10は、感温部を設けた熱電対に接続し、金属シース1aで被覆された複数の第1補償導線1が略束ねられて導入されると共に、これらの第1補償導線1に接続し、ビニールシース2aで被覆された複数の第2補償導線2が導出される。収容箱10は、略水平状態に配置された布線バー4を内部に備える。金属シース1aとビニールシース2aが互いに隔離するように、複数のビニールシース2aが布線バー4に繋留される。収容箱10は、金属シース1aとビニールシース2aの接触が回避され、ビニールシース2aの溶融を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電対用補償導線の収容箱に関する。特に、金属シースとビニールシースとで接続された複数の熱電対用補償導線が予長をもつように収容される収容箱の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所などでは、複数の円筒状の燃焼器をボイラーに設置している。そして、これらの燃焼器を監視又は温度制御するために、燃焼器の温度を測定する熱電対を各燃焼器に取り付けている。この熱電対は、感温部に接続した一対の補償導線を屈曲容易な金属シースで被覆している。
【0003】
金属シースで被覆された複数の補償導線は、耐熱絶縁材を充填した金属パイプの内部を通過するように束ねられ、ボイラーを熱的に遮断する隔壁を介して、収容箱の内部に導入されている。
【0004】
収容箱の内部では、金属シースで被覆された補償導線が筒状の中継コネクタ(スリーブ)を介して、ビニールシースで被覆された補償導線に接続(結線)されている。又、耐熱性のビニールシースで被覆された複数の補償導線は、予長をもつように収容箱の内部に環状(ループ)に収容されている。そして、ビニールシースで被覆された補償導線は、収容箱から引き出され(導出され)、監視盤又は制御盤に接続されている。
【0005】
上述したような熱電対用補償導線としては、十分な耐熱絶縁性を有すると共に、高度の耐湿絶縁安定性を有する複層絶縁層を備える熱電対用補償導線が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1による熱電対用補償導線は、第1絶縁層で被覆された一対の補償導線が第2絶縁層で被覆された熱電対用補償導線であって、第1及び第2絶縁層が耐熱有機繊維及び/又はセラミック繊維で形成され、第2絶縁層が防湿性塗料で塗布処理され、雰囲気温度28℃、相対湿度95%の空気雰囲気中285h加湿試験後、及び360℃雰囲気中7h加熱試験後の500V絶縁抵抗計による、補償導線と補償導線との間の絶縁抵抗値がそれぞれ50MΩ/m以上を示すことを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−111417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した既存の収容箱の内部では、金属シースと耐熱性のビニールシース(耐熱温度90度)とが接触するように、複数の熱電対用補償導線が密集して収容されている。このため、ボイラーから熱伝導されて加温した金属シースが時間をかけて徐々にビニールシースを溶融するという、不測の事態が発生していた。
【0009】
ビニールシースで被覆された補償導線を特許文献1による高性能な熱電対用補償導線に交換すれば、上述した不測の事態を回避できると予想される。しかし、特許文献1による熱電対用補償導線は、高価であると想定されるので、比較的安価な既存のビニールシースを交換することが好ましい。
【0010】
既存のビニールシースで被覆された熱電対用補償導線を利用できると共に、既存の収容箱の内部構造を改善して、ビニールシースの溶融が防止できれば、熱電対用補償導線の寿命が延びて好ましい。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0011】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、金属シースとビニールシースとで接続された複数の熱電対用補償導線を収容する収容箱であって、ビニールシースの溶融を防止する熱電対用補償導線の収容箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、金属シースとビニールシースとで接続された複数の熱電対用補償導線を収容する収容箱であって、金属シースとビニールシースが隔離されるように、ビニールシースを繋留する棒状の布線バーを収容箱の内部に配置することにより、これらの課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな熱電対用補償導線の収容箱を発明するに至った。
【0013】
(1)本発明による熱電対用補償導線の収容箱は、感温部を設けた熱電対に接続し、金属シースで被覆された複数の第1補償導線が略束ねられて導入されると共に、これらの第1補償導線に接続し、ビニールシースで被覆された複数の第2補償導線が導出される収容箱であって、前記金属シースと前記ビニールシースが互いに隔離するように、複数の前記ビニールシースを繋留する棒状の布線バーを内部に備える。
【0014】
(2)前記布線バーを略水平状態に配置していることが好ましい。
【0015】
(3)本発明による熱電対用補償導線の収容箱は、前記ビニールシースを前記布線バーに繋留する結束バンドを有することが好ましい。
【0016】
(4)布線バーの外周は、熱伝導が困難に絶縁被覆されていることが好ましい。
【0017】
(5)前記第1補償導線の終端と前記第2補償導線の始端とは、筒状のスリーブで接続されていてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明による熱電対用補償導線の収容箱は、金属シースとビニールシースが隔離されるように、複数のビニールシースを繋留する布線バーを収容箱の内部に水平状態で配置しているので、既存のビニールシースで被覆された熱電対用補償導線を利用できると共に、ビニールシースの溶融が防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による熱電対用補償導線の収容箱の構成を示す斜視図である。
【図2】前記実施形態による熱電対用補償導線の収容箱の構成を示す縦断面図である。
【図3】前記実施形態による熱電対用補償導線の収容箱の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[熱電対用補償導線の収容箱の構成]
最初に、本発明の一実施形態による熱電対用補償導線の収容箱の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による熱電対用補償導線の収容箱の構成を示す斜視図である。図2は、前記実施形態による熱電対用補償導線の収容箱の構成を示す縦断面図である。図3は、前記実施形態による熱電対用補償導線の収容箱の構成を示す平面図である。
【0021】
図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態による熱電対用補償導線の収容箱(以下、収容箱と略称する)10は、上面が開口した略直方体のフレーム11と上面板12を備えて構成されている。通常は、フレーム11の上面を上面板12が覆っている。上面板12を取り外すと、フレーム11の内部を点検、又は保守できる。
【0022】
図1から図3を参照すると、フレーム11の一側面には、短尺の導入管13を取り付けている。導入管13は、フレーム11の内側及び外側に突出するように配置されている。又、フレーム11の底面には、短尺の導出管14を取り付けている。導出管14は、フレーム11の内側及び外側に突出するように配置されている。
【0023】
図1から図3を参照すると、金属シース1aで被覆された複数の第1補償導線1が略束ねられた状態で、導入管13を貫通している。導入管13の内部には、例えば、熱伝導性が良好なシリコーンゴムが充填されている。これにより、導入管13の内部で第1補償導線1が容易に移動しないように保持でき、金属シース1aへの伝熱を外部に熱伝導して放熱できる。
【0024】
図1から図3を参照すると、複数の第1補償導線1は、フレーム11の外部に出線している。これらの第1補償導線1は、熱伝導性が良好なテープを螺旋状に巻回することで、束ねられている。そして、第1補償導線1の束は、隔壁Wを貫通して、図示しないボイラーに配設されている。又、第1補償導線1の始端側は、図示しない感温部を設けた熱電対に接続している。
【0025】
一方、図1から図3を参照すると、フレーム11の内部に導入された第1補償導線の終端には、筒状のスリーブ3を接続している。又、スリーブ3には、ビニールシース2aで被覆された第2補償導線2を接続している。つまり、第1補償導線1の終端と第2補償導線2の始端とは、スリーブ3で接続されている。
【0026】
図1から図3を参照すると、実施形態による収容箱10は、棒状の布線バー4をフレーム11の内部に備えている。布線バー4は、導入管13と対向するように、略水平状態に配置されている。布線バー4の外周は、熱伝導が困難な絶縁材4aで被覆されている。
【0027】
図1から図3を参照すると、複数の第2補償導線2は、隣接するビニールシース2a・2aが互いに隔離するように、配線フォームが形成されている。又、金属シース1aとビニールシース2aが互いに隔離するように、配線フォームが形成されている。そして、布線バー4には、これらのビニールシース2aが繋留されている。つまり、第1補償導線1及び第2補償導線2は、予長をもつようにフレーム11の内部に収容されている。
【0028】
又、実施形態による収容箱10は、金属シース1aとビニールシース2aが水平方向にも鉛直方向にも隔離されるように、ビニールシース2aを繋留する棒状の布線バー4をフレーム11の内部に水平状態で配置している。
【0029】
図1から図3を参照すると、ビニールシース2aは、結束バンド5で布線バー4に繋留されている。結束バンド5は、市販の合成樹脂製の結束バンドを用いることができる。そして、これらの第2補償導線2は、収束されて、導出管14から導出している。
【0030】
図2を参照すると、フレーム11は、グレーチング床FLに設置されている。そして、グレーチング床FLに設けた開口から、複数の第2補償導線2が導出されている。これらの第2補償導線2の終端は、図示しない監視盤又は制御盤に接続されている。このように、ボイラーに設けた熱電対が補償導線を介して、監視盤又は制御盤に接続され、ボイラーが監視又は温度制御されている。
【0031】
[熱電対用補償導線の収容箱の作用]
次に、実施形態による収容箱10の作用及び効果を説明する。図1から図3を参照すると、従来は、ビニールシース2aで被覆された複数の第2補償導線2は、予長をもつようにフレーム11の内部に環状に収容されていた。
【0032】
又、従来は、金属シース1aとビニールシース2aとが接触するように、複数の第1補償導線1及び第2補償導線2が密集して収容されていた。このため、ボイラーから熱伝導されて加温した金属シース1aが時間をかけて徐々にビニールシース2aを溶融するという、不測の事態が発生していた。
【0033】
図1から図3を参照すると、実施形態による収容箱10は、上述した事態を防止するものであって、金属シース1aとビニールシース2aが隔離されるように、複数のビニールシース2aを繋留する布線バー4をフレーム11の内部に水平状態で配置している。したがって、実施形態による収容箱10は、金属シース1aとビニールシース2aの接触が回避され、ビニールシース2aの溶融を防止できる。
【0034】
又、図1から図3を参照すると、実施形態による収容箱10は、ビニールシース2aで被覆された第2補償導線2を特許文献1に開示された高価な熱電対用補償導線に交換することなく、耐熱温度が90度程度の安価な第2補償導線2に交換したので、交換費用を削減できた。
【0035】
図1から図3を参照すると、結束バンド5は、バンドの一端に繋留孔が設けられ、繋留孔にバンドの他端を通して結束することができる。バンドには、複数の戻り止め歯が形成され、繋留孔を通過したバンドは逆方向に戻らないように構成されている。実施形態による収容箱10は、このような結束バンド5を使用することにより、第2補償導線2を適宜な締結力で布線バー4に繋留でき、布線作業が効率化できる。
【0036】
図1から図3を参照すると、実施形態による収容箱10は、布線バー4の外周を熱伝導が困難な絶縁材4aで被覆しているので、隣接するビニールシース2a同士の伝熱が回避できる。又、実施形態による収容箱10は、第1補償導線1の終端と第2補償導線2の始端とがスリーブ3で接続されているので、スリーブ3を分解して、第2補償導線2を容易に交換できる。
【0037】
実施形態による収容箱10は、金属シース1aとビニールシース2aとを隔離して、布線及び収容しているので、ボイラー監視用及びボイラー制御用の熱電対用補償導線を健全に維持できる。実施形態による収容箱10は、ビニールシース2aを溶融するという事態を回避できる。
【0038】
本発明は、ビニールシースの溶融に起因する熱電対用補償導線の損傷を回避でき、熱電対用補償導線の交換によるボイラーの稼動停止を未然に回避できる。
【符号の説明】
【0039】
1 第1補償導線
1a 金属シース
2 第2補償導線
2a ビニールシース
4 布線バー
10 収容箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感温部を設けた熱電対に接続し、金属シースで被覆された複数の第1補償導線が略束ねられて導入されると共に、これらの第1補償導線に接続し、ビニールシースで被覆された複数の第2補償導線が導出される収容箱であって、
前記金属シースと前記ビニールシースが互いに隔離するように、複数の前記ビニールシースを繋留する棒状の布線バーを内部に備える熱電対用補償導線の収容箱。
【請求項2】
前記布線バーを略水平状態に配置している請求項1記載の熱電対用補償導線の収容箱。
【請求項3】
前記ビニールシースを前記布線バーに繋留する結束バンドを有する請求項1又は2記載の熱電対用補償導線の収容箱。
【請求項4】
前記布線バーの外周は、熱伝導が困難に絶縁被覆されている請求項1から3のいずれかに記載の熱電対用補償導線の収容箱。
【請求項5】
前記第1補償導線の終端と前記第2補償導線の始端とは、筒状のスリーブで接続されている請求項1から4のいずれかに記載の熱電対用補償導線の収容箱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−57972(P2012−57972A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198930(P2010−198930)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(596133119)中電プラント株式会社 (101)