説明

熱電手段及びその手段を有する織物タイプの構造体

【課題】温度差を電気に変換するための織物タイプの構造体を提供する。
【解決手段】細長い物体の形状を有し、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する少なくとも1つの変換器を表面に有し、織られ又は編まれ得る熱電手段60を有する。厚さ方向の温度差を電気に変換する構造体体は、織物用の繊維8と、前記熱電手段60と、接続手段7とを織り交ぜることによって形成されるアセンブリを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物に適用されるエネルギー再生システムの分野に関する。それは、温度差を電気に変換するための織物タイプの構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子的手段に関連する機能が組み込まれた織物が存在する。それらの機能は、温度、大気圧または湿度などのセンサによって、若しくは検出器によって、環境についての情報を収集すること、又は、生理的パラメータ(心拍、体温、または血圧など)を測定することを含む。
【0003】
現在、電子的機能が組み込まれたそれらの織物は、エネルギー源としてリチウム蓄電池を使用するので、そのリチウム蓄電池は、このタイプの織物が組み込まれたアセンブリの中に装備されなければならない。
【0004】
従って、これらの織物の主たる欠点は、それらが完全には自給自足ではないことである。
【0005】
この欠点を克服するために、織物構造体の中に、ワイヤの形で熱電変換器を組み込むことが、既に提案されている。
【0006】
知られているように、熱電変換器は、ゼーベック効果を使って熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。この原理は、次のようなものである。性質の違う2つの導体から成る閉回路において、2つの接合部の間に温度差が維持されると、電流が流れる。
【0007】
熱電変換器は、性質が違う2つの導体の、複数のペアで構成される。1つのペアの2つの導体は直列接続されており、導体の全てのペアは、電気的に直列接続され、且つ熱的に並列接続されている。この構成は、導体を通って流れる熱の流れを最適化し、そしてその電気抵抗を最適化することを可能にする。
【0008】
本明細書の全文において、用語「熱電構造体」は、温度差を電気に変換するための構造体を意味するものとする。
【0009】
異なる性質の2つの導体が組み込まれている熱電構造体は、既に知られている。これらの導体は、織られ又は編まれていてもよい。織る又は編むことによって、性質の異なる2つの導体を接続し、したがって、導体のペア即ち熱電対を生成することが可能である。
【0010】
一般に、これらの導体は金属および/または合金でできた線状体であり、それらを織る又は編むことが困難である。
【0011】
ある種の構造体は、導体間での電気的絶縁性を確実にするために、エポキシ樹脂の基板を含む。
【0012】
何れの場合にも、熱電対は電気的に直列接続されている。
【0013】
織ること又は編むことを利用することは、使用され得る材料のタイプを、線状体であり且つ十分に柔軟であるものに制限する。
【0014】
また、これらの構造体の幾つかは、それら2つの端部の間の温度差のみを、それはその構造体の平面におけるものであり、且つ、厚さ方向に渡るものではないが、変換することができる。従って、それらは、構造体が衣類を作成するのに使用される場合、人体によって放出される全ての熱を探査することができない。
【0015】
さらに、金属材料または合金でできた線を使用することは、これらの材質自体の性能が低いので、得られたその構造体の熱電的な性能を必ず制限する。何れの場合においても、その構造の性質を最適化することは、機織機または編機の特性、即ち、線の直径、構造体の厚さ、及び、線の間隔もしくは網目の大きさに課される特性によって制限される。
【0016】
最終的に、絶縁基板が使用される場合、得られたその構造体は比較的硬い。従って、それは織物の特性を持たず、特に衣類を製造するのに直接使用され得ない。
【0017】
織ること又は編むことによっては得られない他の構造体も知られている。
【0018】
特に、ゼーベック効果を使用し、2枚の板またはシートから成り、それらの間に熱電対列が配置された熱電エネルギー発生機について、言及することができる。それらの板またはシートは、硬い又は軟らかいことができる。その熱電対列は、ポリイミドのシート、その上で複数の熱電対が直列に接続されているのだが、で形成され得、そして、このシートは、波形になるように形成されている。
【0019】
この熱的発生機は、織られること又は編まれることができないので、それは、電子的機能を内在する構造体中に、必ず付加される。衣類を扱う場合、そのデザイン及びその最終的な外観は、そのような熱的発電機の厚さが約3mmと比較的大きい限り、修正される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、従来技術の解によって示された欠点を軽減することである。
【0021】
特に、本発明は熱電構造体に関し、それは、織物の表面、望ましくは衣類を直接製造し、及び、最適化された熱電パフォーマンスを直接実現するのに使用され得る。
【課題を解決するための手段】
【0022】
したがって、本発明の1つの主題は、厚さ方向の、又は2つの表面の間の温度差を、電気に変換するための構造体であり、前記構造体は、織物用の繊維と、熱電手段と、電気的な接続手段とを織り交ぜることによって形成されるアセンブリを備えており、前記熱電手段が、それぞれ独立に、前記構造体における前記熱電手段の位置に依らずに、熱エネルギーを電気に変換することができる。
【0023】
望ましくは、前記織物用の繊維は、誘電体の繊維である。
【0024】
本発明は、構造体としてアセンブルされる前に、熱電機能を示す熱電手段を使用することを基本とする。このことによって、電力供給が必要な電気手段によって要求される特性に従って、前記構造体の熱電性能が容易に最適化される。
【0025】
従って、これらの熱電手段は、前もって製造された後、機織機を用いて本発明に係る構造体に組み込まれる。
【0026】
よって、本発明は、細長い物体の形状を有し、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する少なくとも1つの変換器を表面に有し、織られ又は編まれ得る熱電手段に関する。
【0027】
望ましくは、少なくとも1つの前記変換器は、少なくとも2つの電気的な接合部を画定するために、異なる性質の複数の電気的な導体を備え、2つの前記接合部は、前記導体の反対側の端部に配置され、複数の前記導体を電気的に並列に接続し、少なくとも2つの前記接合部が、前記物体の何れかの側面上に、前記物体の長手方向に沿って配置される。
【0028】
さらに、前記物体は、柔軟な断熱性の支持体を含み、前記支持体の上に、少なくとも1つの前記変換器が折り曲げられて、固定される。
【0029】
前記支持体(5)は略長方形の断面のテープの形であり、前記変換器(3)は略U字型であることができる。
【0030】
有利な一つの実施の形態においては、少なくとも1つの前記変換器は、電気的に直列接続され、熱的に並列接続された複数の熱電対を備え、前記熱電対は、電気絶縁性の基板の上に配置され、前記基板は、前記熱電対を横切る方向に折り曲げられる。
【0031】
前記基板は、ポリマーシート、または、望ましくはポリイミド、ポリエチレン若しくはポリエステルのシートである。
【0032】
望ましい実施の形態では、前記熱電対は、Bi、Sb、Bi2Te3、Bi及びTeをベースとする合金、Sb及びTeをベースとする合金、Bi及びSeをベースとする合金、又は、Si/SiGe超格子などの熱電材料の薄膜形状である。
【0033】
前記支持体は、織物用の繊維、及び/又は、ポリマー材、望ましくはポリイミド、ポリエチレン、ポリアミド若しくはポリエステルから選択された材質で形成されたテープ状である。
【0034】
前記変換器は、前記基板の2つの面の各々の上に接続部を有することができる。
【0035】
添付された図面と共に後述の説明を読めば、本発明がよりよく理解され、その利点および特徴がより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
種々の図で共通する要素は、同じ参照符号で示されるであろう。
【0037】
最初に図1を参照すると、これは、電気的に接続された導体の3つのペア1を備えた熱電変換機を示している。各ペアは、性質が異なる2つの電気導体10、11を有している。
【0038】
図1に示されたように、あるペア1の2つの導体10、11は、電気的に直列に接続されており、そのペア1も電気的に直列に接続されている。変換機内を流れる電流は、模式的にIで示されている。
【0039】
最終的に、それらの導体のペアは、熱的に並列に接続されている。図1に示された例において、熱的変換機の高温面20および低温面の間に温度差が存在し、矢印Fによって示された熱流束がその熱的変換機を通る。
【0040】
そのような変換機の効率は、変換機の2つの面の間に加えられた温度差に、直接に比例する。
【0041】
さて、図2を参照すると、これは、本発明に係る熱電手段3の製造における第1ステップを示している。
【0042】
図2は柔軟な基板30を示しており、その基板は略平面状で細長く、その上に導体または熱電対のペア4が形成されており、各々は異なる2つの導体40、41を備えている。それらは、その基板の長手方向に略垂直な方向に伸びている。
【0043】
各ペアの導体40、41、および全てのペア4は、基板の長手方向の面31、32の各々に沿って配置された接合部33、31によって、電気的に直列に接続されている。2つの面31、32の間に温度差が加えられると、2つの端子35、36の間に電流が生成される。
【0044】
導体は、機械的マスク、又は、フォトリソグラフィ及びエッチング技術を使用して製造されてもよい。
【0045】
さらに、薄膜の形態に製造された導体のペアは、熱的に並列に接続されている。
【0046】
もし、熱流束が、面31から面32に向かって熱電手段中を、その2つの面の間に温度差が生じるように、通るならば、面31は高温面と呼ばれ、面32は低温面と呼ばれる。同様に、接合部33は高温接合部と呼ばれ、接合部34は低温接合部と呼ばれる。
【0047】
一般に、熱電手段3のゼーベック電圧Uは、接続された熱電対の数、及び、熱電手段の各面31、32の間の、又は、導体の各端部における接合部33、34の間の温度差に依存する。
=nSpairΔT
ここで、Uはデバイスのゼーベック電圧であり、nは接続された熱電対の数であり、Spairは選択された熱電対の係数であり、ΔTは、導体の各ペア4の端部における接合部33、34の間の温度差である。
【0048】
よって、ある温度差に関しては、接続された熱電対の数および性質のみが、望ましい電圧を定めることができる。
【0049】
最終的に、導体の断面積/長さの比を最適化することによって、それらの抵抗を最初に最適化することができる。
【0050】
図3は、図2(図3A)に示された熱的発電機シートであり、本発明に係る熱電手段60を得るために、支持体5の周りに折り曲げられ、それに固定された、この同じシート3を示す斜視図である。
【0051】
図3に示された例において、支持体5は、織られたテープ又は微小繊維の形状をしている。この支持体は、糸の形状であり得る。支持体が省略され得ることも明らかである。この場合、基板は、それ自体を支持するU形状の構造体にとって十分な剛性があればよい。
【0052】
「微小繊維」の用語は、織物分野において周知であり、フィルムを細長く切ること又は直接紡ぐことによって得られる、幅よりも厚さが薄い、連続的な幅の狭い一片として定義され得る。
【0053】
全ての場合において、支持体は、絶縁性且つ柔軟性があり、細長い形状である。
【0054】
図4は、本発明に係る熱電手段の一実施形態を示す。2つの熱的発電機シート3は、折り曲げられ、絶縁性の支持体5に一体に結合されている。
【0055】
実際には、図4に示された熱電手段61は、図3に示された手段60で製造され得る。このためには、支持体5の周りに別のシート3を、第1の熱的発電機シートに対しする支持体5の長手方向の中央軸に関して対称に、折り曲げて接着するだけでよい。
【0056】
よって、熱電手段61は、それぞれの先端部と尾部とが近接されて、又は、支持体5の長手方向の中央軸に関して対称に配置されている、2つの熱的発電機シート3a及び3bを備えている。金属50の堆積は、2つのシート3a及び3bの間の電気的接続を提供するように、支持体5の上に形成され得る。
【0057】
表面を最適化する別の方法は、一方の面上に、直列又は並列に接続された電気的手段を重ねることにある。それらの間の絶縁は、基板によって提供される。
【0058】
最後に、各基板表面の上に、熱電手段を形成することも考えられる。
【0059】
この実施の形態では、実用的な表面は、導体の対の数を増大させることによって最適化される。
【0060】
第一に、導体を製造するために使用され得る熱電材料に関しては、熱電発電機または熱電冷却機の熱電効率は、無次元の係数ZTに直接依存していることが、もう一度思い出されるべきである。標準感度と呼ばれるこの係数は、S2σT/Kに等しい。ここで、Sはゼーベック係数、σは電気伝導度、Kは熱伝導度、Tは基板温度である。
【0061】
高い効率のために、高いZT係数の材料が要求され、従って、電流がその材料を通過するとき、ジュール熱を最小にするためには、高い電気伝導度が要求され、発電機または冷却機のホットパーツおよびコールドパーツの間の熱的ブリッジ現象を低減するためには、低い熱伝導度が要求され、熱を電流に最適に変換するためには、高いゼーベック係数が要求される。
【0062】
標準感度が高いほど、装置の性能は高くなる。よって、堆積させる材料の選択が、選択された構造体(薄いフィルム又は超格子)とともに、標準感度ZTを、従って電気的性能を定めるであろう。
【0063】
現在では、最良の熱電材料は、ある温度範囲で約1のZT値を有している。
【0064】
種々の研究が示しているように、柔軟な基板の上に形成され得る熱電材料の性質は非常に広い。即ち、金属及び合金であっても、Bi、Sb、Bi2Te3やSi/SiGe超格子などの最良の性能を有する熱電材料であってもよい。材料の選択は、費用、要求される毒性基準、および、望ましい電気的性能によって成されるであろう。
【0065】
本発明は、300Kで最良の熱電性能を有しているBixTey、SbxTey及びBixSeyタイプや、SiGeや、生体適合性材料や、希土類のスクッテルダイトのような、任意のタイプの熱電材料を使用することを可能にする。
【0066】
超格子を形成することを考えることも可能である。それは、超格子の量子サイズ効果によって、結晶格子中のフォノンの寄与を大きく低減させ、力率S2σを増大させることができる。よって、Bi2Te3/Sb2Se3超格子(標準感度が約3である)、Pb/PbTeSe超格子(「量子ドット」、標準感度が約2である)、Si/Ge(標準感度が約3である)、または、n−Si/SiGe及びp−B4/B9C超格子を考えることが可能である。
【0067】
通常、用語「超格子」は、とても薄い連続する膜(厚さが10nm未満)の積層体を含み、用語「量子ドット」は、別の材料中のナノスケールの凝集体を含む。
【0068】
熱電材料に類似するバンド構造を有する半導体のナノ粒子(ナノ含有物)が、堆積に組み込まれ得る。これらは、標準感度ZTを増大させ、従って熱的発電機の性能を増大させる効果を有する。よって、GeまたはSiGe堆積に関して、SiまたはSiGe含有物が組み込まれ得る(または、逆にGeナノ粒子がシリコンの母体に組み込まれ得る)。母体および含有物質は、nドープまたはpドープされ得る。一般に、ドーパントの集中は、考えられる材料の種々の組み合わせに関して、最適化されるであろう。
【0069】
PbSe、PbSeTeまたはSb2Te3を組み込んだSiGe、PbTeまたはBi2Te3タイプの「ホスト」材料も可能である。別の考えられる材料は、PbSnまたはPbTeSeSn合金である。HgCdTe、BiまたはBiSbのようなIII−V族の材料も、使用され得る。
【0070】
薄膜は、スパッタ、蒸着もしくはPECVDなどの堆積技術によって、または、印刷(インクジェット、グラビア印刷、フレキソ印刷)もしくはスクリーン印刷技術によって形成されるであろう。
【0071】
図2を参照して示されたように、基板30は、ほぼ平面であり且つ柔軟である。それは、厚さが薄く、熱伝導度および電気伝導度が低いことも望ましい。
【0072】
採用された堆積技術および目的の応用に依存して、高い熱的および化学的安定性も必要であり得る。
【0073】
最も望ましい基板は、高分子で、例えば、ポリイミドのシート(例えば、商品名Kapton(登録商標)で販売されている)で形成される。その理由は、この材料は、応用の広範な選択に関して、全ての必要な性質の、一意の組み合わせを有するからである。しかし、ポリエステル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはポリカーボネートなどの他の材料も、紙でさえも基板として考えられる。
【0074】
導体間の電気的接続を形成する材料は、接触抵抗を最小にするために高い電気伝導度を有し、良好な熱的結合を保証するために高い熱伝導度を有している。
【0075】
熱的発電機シートの支持体5に関して、その厚さ及びその性質の選択は、得られた熱電手段の2つの面の間の熱傾斜を保証する。
【0076】
望ましくは、支持体は、断面が長方形の微小繊維またはテープである。微小繊維の幅および厚さは、約100ミクロンから1ミリメートルまで変わり得る。厚さの選択は、
【0077】
【数1】

で知られる所望の温度差に依存する。ここで、Φは織物を通る熱流束であり、eは微小繊維の厚さであり、λは微小繊維の熱伝導度である。
【0078】
テープまたは糸状体の長さは、織物の所望の寸法によって定められるであろう。多数の熱エレメントをアセンブルして、最終的に所望の電圧を得るために、糸状体/微小繊維の全長が使用され得る。
【0079】
直列接続される熱エレメントの数を、従って電圧を増大させるために、そして最終的に有効な出力密度を増大させるために、図4に示されたように、幾つかの熱的発電機シートの積層体を考えることも可能である。熱電材料を形成するために使用される基板が非常に薄いという事実は、微小繊維の厚さを、従って、本発明に係る熱電手段のサイズを、ごく僅かに修正することを可能とする。
【0080】
さて、本発明に係る熱電構造体の一例を示す図5を参照して説明する。
【0081】
この構造体は、図3Bに示された手段60のような熱電手段、伝導ワイヤ7、および絶縁性の糸状体8で製造される。よって、この構造体は、これらの様々なエレメントを織り交ぜることによって形成されたアセンブリで構成されている。
【0082】
実際には、このアセンブリは、機織機または編機によって直接製造される。よって、その構造体の全ての構成要素は、同時に織られ又は編まれる。
【0083】
通常金属ワイヤである伝導ワイヤ7は、熱電手段60を並列接続するために使用される。このために、伝導ワイヤ7及び熱電手段60の間の接触が、構造体9の2つの面の間で交互に成される。
【0084】
本発明に係る構造体のゼーベック電圧は、熱電手段60の上で直列接続された熱電対の数によって決まる。さらに、本発明に係る構造体の電気抵抗は、熱電手段60を並列接続することによって、最適化され得る。
【0085】
望ましい応用が電流Iを要求するならば、並列接続され、且つ抵抗rを有する熱電手段の数xは、
x=rI/US
である。ここで、USは構造体のゼーベック電圧である。
【0086】
図6は、図5の構造体に対応する電気回路を示している。各熱電手段60は、抵抗rを有する。それらは全て電気的に並列接続されており、5US=rIである。
【0087】
機械的整合性を持って本発明に係る構造体を提供するのは、織物の糸状体8及び接続ワイヤ7である。糸状体8は、熱電手段60の間の絶縁をも提供する。
【0088】
本発明に係る熱電構造体の望ましい実施の形態が、以下に示される。
【0089】
これは、基板上に熱電対を形成するために、n−またはp−型のBi2Te3をベースとする熱電合金を使用する。このペアの熱電特性は、λ=1.5W/mK、ρ=2.5mΩcm、および、S=400μmV/K である。よって、厚さ25μm、幅1mm、長さ1mの織物に関しては、500μm離して、1000の500μm幅の熱エレメントを、即ち、500の熱電対を接続することができる。4つの熱的発電機シートの積層体は、1.3℃の温度差ΔTに関して、1Vの電圧を生成することができるであろう。
【0090】
10mAの電流を得るには、370の織物を並列に接続することが必要である。このことは、機織機または編機(例えば、RACHEL TRAMERモードの)を使用して実現されるであろう。
【0091】
本発明によって提供される利点は非常に多いということが分かるであろう。
【0092】
第1に、本発明は、それらが最終の構造体にアセンブルされる前であっても熱エネルギーを電気に変換する熱電手段を、製造することを可能にする。
【0093】
さらに、本発明によれば、熱電構造体は、織物用の繊維と、熱電手段と、接続用の繊維とを、同時に織ること又は編むことによって得られ得る。
【0094】
得られた構造体によって、その2つの面の間の温度差を利用することが可能になる。よって、得られた構造体の活性面は、それで生成された衣類の表面と同じ大きさの面積を有している。最終的に、生成される電気エネルギーは意義深く、人体から放出される全ての熱を利用することが可能である。
【0095】
電気的接続は、伝導ワイヤによって、簡単に成される。これによって、構造体の熱電特性は、応用に応じて最適化され得る。
【0096】
さらに、本発明に係る構造体の全体的効率は、非常に高性能の熱電材料を用いることによって、増大され得る。
【0097】
最後に、本発明に係る構造体は、曲げ易く、通気性があり、対象物に沿い(型成形可能、注入可能)且つ衣服を生成できるという、織物としての側面を保有し、その厚さは、大面積および電気材料の適切な選択によって補償されるので、小さくあり得る。
【0098】
この構造体は、エネルギーを再生するために、外気よりも高温の任意の装置(ボイラー、配管など)の代わりとしても使用され得る。
【0099】
前記構造体は、熱電性を有し、所望の形(例えば飛行機の翼)に容易に適用される混合物を得るために、別の硬化性材料(例えば、樹脂)と結合され得る。
【0100】
特許請求の範囲に記載された、技術的特徴に言及する参照符号は、特許請求の範囲の理解を容易にすることのみを目的とするものであって、その範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、ゼーベック効果を説明する熱電変換機を、模式的に示している。
【図2】図2は、本発明に係る熱電手段の製造における1つのステップを示している。
【図3】図3は、本発明に係る熱電手段の製造における別のステップを示している。
【図4】図4は、本発明に係る熱電手段の一実施形態を示している。
【図5】図5は、本発明に係る構造体の一例を示している。
【図6】図6は、図5に示された構造体を表す電気回路である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織られ又は編まれることができ、
細長い物体の形状を有し、
少なくとも1つの面上に、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する少なくとも1つの変換器(3)を備え、
少なくとも1つの前記変換器が、U字形の構造体を形成するように折り曲げられることを特徴とする熱電手段(60、61)。
【請求項2】
少なくとも1つの前記変換器(3)が、少なくとも2つの電気的な接合部(33、34)を画定するために、異なる性質の複数の電気的な導体(40、41)を備え、
2つの前記接合部が、前記導体の反対側の端部に配置され、複数の前記導体を電気的に並列に接続し、
少なくとも2つの前記接合部が、前記物体の何れかの側面上に、前記物体の長手方向に沿って配置される請求項1に記載の熱電手段。
【請求項3】
柔軟な断熱性の支持体(5)を備え、
前記支持体の上に、少なくとも1つの前記変換器(3)が折り曲げられて、固定される請求項1又は2に記載の熱電手段。
【請求項4】
前記支持体(5)が、略長方形の断面のテープの形状であり、
前記変換器(3)が、略U字型である請求項3に記載の熱電手段。
【請求項5】
少なくとも1つの前記変換器(3)が、電気的に直列接続され、熱的に並列接続された複数の熱電対(4)を備え、
前記熱電対が、電気絶縁性の基板(30)の上に配置され、
前記基板が、前記熱電対(4)を横切る方向に折り曲げられる請求項1〜4の何れか1項に記載の熱電手段。
【請求項6】
前記基板(30)が、ポリマーシート、または、望ましくはポリイミド、ポリエチレン若しくはポリエステルのシートである請求項5に記載の熱電手段。
【請求項7】
前記熱電対が、Bi、Sb、Bi2Te3、Bi及びTeをベースとする合金、Sb及びTeをベースとする合金、Bi及びSeをベースとする合金、又は、Si/SiGe超格子などの熱電材料の薄膜形状である請求項5又は6に記載の熱電手段。
【請求項8】
前記支持体(5)が、織物用の繊維、及び/又は、ポリマー材、望ましくはポリイミド、ポリエチレン、ポリアミド若しくはポリエステルから選択された材質で形成されたテープ状である請求項5〜7の何れか1項に記載の熱電手段。
【請求項9】
前記変換器が、前記基板(30)の2つの面の各々の上に接続部を有する請求項5〜8の何れか1項に記載の熱電手段。
【請求項10】
厚さ方向の温度差を電気に変換するための構造体であって、
織物用の繊維(8)と、請求項1〜9の何れか1項に記載された複数の熱電手段(60、61)と、電気的な接続手段(7)とを織り交ぜることによって形成されるアセンブリを備え、
前記熱電手段が、それぞれ独立に、前記構造体における前記熱電手段の位置に依らずに、熱エネルギーを電気に変換することができる構造体。
【請求項11】
前記織物用の繊維が、誘電体の繊維である請求項10に記載の構造体。
【請求項12】
前記熱電手段(60、61)が前記接続手段(7)によって並列に接続される請求項10又は11に記載の構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−100643(P2009−100643A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−188320(P2008−188320)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(506423291)コミサリア ア レネルジィ アトミーク (85)
【Fターム(参考)】