説明

燃料ガス製造装置

【課題】農業上生産される、動物の糞、野菜廃棄物等の農業生成有機物を腐敗、発酵等させて燃料ガスを従来のプラントより小規模に製造することが可能な燃料ガス製造装置を提供する。
【解決手段】収容タンク基部11、収容タンク上蓋部12及び摺動ストッパ13を有し農業生成有機物を収容する収容タンク1と、収容タンク1を投入側収容室6と排出側収容室7とに下方で分離する分離壁2と、投入側収容室6の底部近傍から収容タンク1の外部の投入口32に繋がる投入側接続管31を有する投入部3と、排出側収容室7の底部近傍から収容タンク1の外部の排出口42に繋がり、排出口42が分離壁2の上辺の高さと第1の高さとの間の所定の高さに位置する排出側接続管41を有する排出部4と、ガス取出し口5と、冬季等における収容タンク1内の冷却を緩和する凍結防止断熱カバー21と、1組の摺動ローラ22及びそのガイドレール23とを備える構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の糞、野菜廃棄物等の農業上生産又は発生する有機物(以下、農業生成有機物という。)を利用して、メタンガス等の燃料ガスを製造するガス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、類似の装置又は関連が考えられる装置として、例えば、ガスを生産するプラント規模のガス製造装置(例えば、特許文献1参照。)、生ゴミ処理装置(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【特許文献1】特開2002−327186号公報
【特許文献2】特開2005−319434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のガスの製造装置では、農業上生産される、動物の糞、野菜廃棄物等を利用してメタンガス等を製造する目的では、あまりに規模が大きく、小規模用途に適さないという問題を有していた。また、生ゴミ処理装置では、燃料ガスの製造を目的とするものではないため、燃料ガスの産出規模が小さすぎて利用が困難であった。
【0004】
以上の現状に鑑み、本発明の目的は、農業上生産される、動物の糞、野菜廃棄物等の農業生成有機物を腐敗、発酵等させて燃料ガスを従来のプラントより小規模に製造することが可能な燃料ガス製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を提供する。
請求項1に係る発明は、農業生成有機物を収容する収容タンクと、前記収容タンクを上方のガス占有空間を介して繋がった投入側収容室と排出側収容室とに下方で分離する分離壁と、前記投入側収容室の底部近傍から前記収容タンクの外部に繋がる投入側接続管とこれに接続され第1の高さに位置する投入口を有し、重力によって前記農業生成有機物を前記投入口から落下させる投入部と、前記排出側収容室の底部近傍から前記収容タンクの外部に繋がり、出口が前記分離壁の上辺の高さと前記第1の高さとの間の所定の高さに位置する排出側接続管を有する排出部と、前記収容タンク上に設けられ前記ガス占有空間に繋がるガス取出し口とを備え、前記投入側収容室側から押出された収容物が前記排出側収容室に入り、前記排出側収容室内の収容物のうちの流動性を有する所定の成分が前記排出部を介して外部に排出可能になっていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の燃料ガス製造装置において、少なくとも前記投入側収容室と前記排出側収容室の側壁及び底部に対応する前記収容タンクの外壁を覆う凍結防止断熱カバーを備える、ことを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の燃料ガス製造装置において、前記投入側収容室及び前記排出側収容室を内部に有する下方の収容タンク基部と、前記収容タンク基部の内部に上方から摺動可能に嵌合する収容タンク上蓋部とを有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、農業生成有機物を収容する収容タンクと、収容タンクを上方のガス占有空間を介して繋がった投入側収容室と排出側収容室とに下方で分離する分離壁と、投入側収容室の底部近傍から収容タンクの外部に繋がる投入側接続管とこれに接続され第1の高さに位置する投入口を有し、重力によって農業生成有機物を投入口から落下させる投入部と、排出側収容室の底部近傍から収容タンクの外部に繋がり、出口が分離壁の上辺の高さと第1の高さとの間の所定の高さに位置する排出側接続管を有する排出部と、収容タンク上に設けられガス占有空間に繋がるガス取出し口とを備え、投入側収容室側から押出された収容物が排出側収容室に入り、排出側収容室内の収容物のうちの流動性を有する所定の成分が排出部を介して外部に排出可能になっているため、農業上生産される、動物の糞、野菜廃棄物等の農業生成有機物を腐敗、発酵等させて燃料ガスを従来のプラントより小規模に製造することが可能な燃料ガス製造装置を実現することができる。また、農業生成有機物の自発的な分解を利用するため、維持、保守等の負担の軽減が可能である。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、上記請求項1の効果に加えて、少なくとも投入側収容室と排出側収容室の側壁及び底部に対応する収容タンクの外壁を覆う凍結防止断熱カバーを備えるため、冬季の低温環境下でも温度低下の影響を緩和することができる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、上記請求項1又は請求項2の効果に加えて、投入側収容室及び排出側収容室を内部に有する下方の収容タンク基部と、収容タンク基部の内部に上方から摺動可能に嵌合する収容タンク上蓋部とを有するため、ガス圧の上限を所定範囲内に限定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、実施例を示した図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明による燃料ガス製造装置の一実施例を模式的に示す断面図である。燃料ガス製造装置は、動物の糞、野菜廃棄物等の農業上生産又は発生する農業生成有機物を収容する収容タンク1と、収容タンク1を上方のガスによって占められる空間(以下、ガス占有空間という。)を介して繋がった投入側収容室6と排出側収容室7とに下方で分離する分離壁2と、投入側収容室6の底部近傍から収容タンク1の外部に繋がる投入側接続管31とこれに接続され第1の高さに位置する投入口32とを有し、重力によって農業生成有機物を投入口32から落下させる投入部3と、排出側収容室7の底部近傍から収容タンク1の外部の排出口42に繋がり、排出口42が分離壁2の上辺の高さと第1の高さとの間の所定の高さに位置する排出側接続管41を有する排出部4と、収容タンク1上に設けられガス占有空間に繋がるガス取出し口5とを備える。
【0012】
ここで、収容タンク1は、例えば、耐蝕性を有しかつ丈夫な金属、合金、樹脂、セラミック等からなり、投入側収容室6及び排出側収容室7を内部に有し筒状をなす下方の収容タンク基部11と、収容タンク基部11の内部に上方から摺動可能に嵌合する収容タンク上蓋部12と、収容タンク上蓋部12の下限の摺動位置を決定する摺動ストッパ13とを有し、収容タンク基部11と収容タンク上蓋部12とはこれらの摺動部を介して(必要であればグリース等を用いて)実質的に密閉されるようになっている。収容タンク基部11の外周には、断熱材からなり、冬季等における収容タンク1内の冷却を緩和する凍結防止断熱カバー21が設けられている。この凍結防止断熱カバー21は、少なくとも投入側収容室6と排出側収容室7の側壁及び底部に対応する収容タンク1の外壁を覆うように設けられている。
【0013】
また、収容タンク上蓋部12の上部の外側には、図1に示すように、収容タンク上蓋部12の摺動を容易にする1組の摺動ローラ22が設けられている。収容タンク1の直ぐ外側にはこれらの摺動ローラ22に対応して設けられ、摺動ローラ22をガイドするガイドレール23が設けられている。摺動ローラ22及びガイドレール23の数は、例えば、収容タンク基部11の水平断面の形状に応じて、円形の断面形状に関しては3つ、矩形の断面形状に関しては4つ等と決定される。このように摺動ローラ22及びガイドレール23を構成することによって、収容タンク1内のガス圧の変動に応じてガス占有空間を広げ又は狭くするように収容タンク上蓋部12を摺動させることが可能になる。
【0014】
次に、本発明による燃料ガス製造装置の作用について説明する。ここで、ガス取出し口5には製造された燃料ガスを外部に供給するためのガスホース等が接続されているものとし、また、必要であれば、排出側収容室7内に排出側接続管41の入口の高さ以上まで農業生成有機物等を入れておくものとする。まず、通常の使用状態では、投入部3の投入口32から投入された農業生成有機物が所定量、少なくとも収容タンク1の投入側収容室6側に収容されている。投入側収容室6内では農業生成有機物の腐敗、発酵等が継続的に進みメタンガス等の燃料ガスが発生し、ガス取出し口5を経て外部に供給される。
【0015】
この状態で、農業生成有機物が投入された場合、投入された農業生成有機物は、重力の作用で投入部3の出口、即ち投入側収容室6の底部近傍から収容タンク1に入り込む。その結果、既に投入側収容室6に収容されている収容物が上方に押し上げられ、農業生成有機物の分解量よりも投入量が上回った場合、収容物の表面高さが上昇し、所定の場合には収容物の一部が図1に矢印で示すように投入側収容室6側から押出されて分離壁2を越え、排出側収容室7側に溢れて入り込み、蓄積される。
【0016】
このようにして排出側収容室7に蓄積された収容物のうちの、液体、流動体等の流動性の高い例えばヘドロ状の所定の成分は、排出側接続管41を経て排出側収容室7から外部の排出口42に押出される。ここで、排出側収容室7に残った収容物は、さらに分解されることになる。また、農業生成有機物の分解量と燃料ガスの使用量等に応じて収容タンク1の内圧が決定され又は変化することになるが、この内圧が上昇する場合は、所定範囲内の内圧で収容タンク上蓋部12が上昇して内圧が自動的に略一定に保持されることになる。また、この内圧が所定値以下に下がった場合は、収容タンク上蓋部12が下降していき、最終的には、摺動ストッパ13に到達した位置で停止する。
【0017】
ここで、季節、地域に応じて外気温が変化するため、地域に応じて凍結防止断熱カバー21の断熱性を変えて適合させたり、冬季等に分解促進剤等を収容タンク1内に投入したりして、腐敗、発酵等による農業生成有機物の分解を促進するのでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による燃料ガス製造装置の一実施例を模式的に示す断面図である
【符号の説明】
【0019】
1 収容タンク
2 分離壁
3 投入部
4 排出部
5 ガス取出し口
6 投入側収容室
7 排出側収容室
11 収容タンク基部
12 収容タンク上蓋部
13 摺動ストッパ
21 凍結防止断熱カバー
22 摺動ローラ
23 ガイドレール
31 投入側接続管
32 投入口
41 排出側接続管
42 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業生成有機物を収容する収容タンクと、前記収容タンクを上方のガス占有空間を介して繋がった投入側収容室と排出側収容室とに下方で分離する分離壁と、前記投入側収容室の底部近傍から前記収容タンクの外部に繋がる投入側接続管とこれに接続され第1の高さに位置する投入口を有し、重力によって前記農業生成有機物を前記投入口から落下させる投入部と、前記排出側収容室の底部近傍から前記収容タンクの外部に繋がり、出口が前記分離壁の上辺の高さと前記第1の高さとの間の所定の高さに位置する排出側接続管を有する排出部と、前記収容タンク上に設けられ前記ガス占有空間に繋がるガス取出し口とを備え、
前記投入側収容室側から押出された収容物が前記排出側収容室に入り、前記排出側収容室内の収容物のうちの流動性を有する所定の成分が前記排出部を介して外部に排出可能になっていることを特徴とする燃料ガス製造装置。
【請求項2】
少なくとも前記投入側収容室と前記排出側収容室の側壁及び底部に対応する前記収容タンクの外壁を覆う凍結防止断熱カバーを備える、ことを特徴とする請求項1に記載の燃料ガス製造装置。
【請求項3】
前記収容タンクが、前記投入側収容室及び前記排出側収容室を内部に有する下方の収容タンク基部と、前記収容タンク基部の内部に上方から摺動可能に嵌合する収容タンク上蓋部とを有する、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料ガス製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−274173(P2008−274173A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121725(P2007−121725)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(500129328)
【Fターム(参考)】