説明

燃料タンクの不活性ガス供給システム

【課題】起こり得る問題を考慮に入れた燃料タンクの不活性ガス供給システムを提供する。
【解決手段】チューブ144と、チューブの開口部154と、そして開口部に装着されるバルブ156と、を備える。チューブは、不活性ガスを燃料タンク内へ送給するように構成される。バルブは、開口部から流出する不活性ガスの量を、開口部に対する燃料の液位に応じて制御するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は概して輸送手段に関するものであり、特に輸送手段の燃料タンクに使用される不活性ガスシステムに関するものである。更に具体的には、本開示は、航空機の燃料タンク内の不活性ガスを管理する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
輸送手段の燃料タンクは燃料を貯留し、この燃料を使用して輸送手段のエンジンを動作させる。燃料は酸素または空気の混入下で可燃性になる。燃料を使用すると、燃料の液位が低下する。燃料の液位のこの低下によって、燃料タンクの燃料の液位よりも上方の空間のサイズが大きくなる。燃料よりも上方の空間は、空気及び燃料蒸気を含む可能性がある。この空間は、「目減り分(ullage)」と表記することができる。
【0003】
燃料タンクの安全性は、不活性ガスシステムを使用することにより確保することができる。不活性ガスシステムは、不活性ガスを生成し、そして供給して、燃料タンク内の酸素含有量を低下させることができる。具体的には、燃料タンクの燃料の液面よりも上方の空間は、不活性ガスで充填される。
【0004】
不活性ガスが、酸素を含む空気の代わりに燃料タンク内で充填される。不活性ガスは更に、燃料蒸気及び他の要素の代わりに充填される。このプロセスは「不活性化(inerting)」と呼ばれる。不活性ガスによって、この空間内の酸素含有量が、点火(iginition)、デトネーション(detonation:爆轟)、またはデフラグレーション(deflagration:爆燃)を含む燃焼イベントの可能性が低くなるように低下する。燃焼イベントは、燃料の燃焼、燃料蒸気の燃焼、または燃料及び燃料蒸気の両方の燃焼とすることができる。
【0005】
不活性ガスは、不活性ガスシステムを使用して導入される。しかしながら、これらのシステムは、不活性ガスシステムの供給システムの効率を利用する所望の場合よりも複雑になり、かつ重量が重くなる可能性がある。
【0006】
従って、上に説明した問題のうちの少なくとも幾つかの問題だけでなく、起こり得る他の問題を考慮に入れた方法及び装置を有することができれば有利である。
【発明の概要】
【0007】
1つの有利な実施形態では、装置は、チューブと、チューブの開口部と、そして開口部に装着されるバルブと、を備える。チューブは、不活性ガスを燃料タンク内へ送給するように構成される。バルブは、開口部から流出する不活性ガスの量を、開口部に対する燃料の液位に応じて制御するように構成される。
【0008】
別の有利な実施形態では、燃料タンクシステムは、燃料タンクと、不活性ガスシステムと、そしてバルブシステムと、を備える。不活性ガスシステムは開口部群を有し、これらの開口部は、不活性ガスが燃料タンクシステム内で、これらの開口部を通って燃料タンクに流入するように構成される。バルブシステムは、開口部群から燃料タンクに流入する不活性ガスの量を、燃料タンク内の燃料の液位に応じて制御するように構成される。
【0009】
更に別の有利な実施形態では、燃料タンク内の不活性ガスを管理する方法が提供される。不活性ガスは、燃料タンク内を延びるチューブに送り込まれる。チューブは開口部群を有する。開口部群から流出する不活性ガスの量は、バルブシステムを使用して、開口部群に対する燃料の液位に応じて制御される。
【0010】
更に別の有利な実施形態では、1つの装置が開示され、該装置は:不活性ガスを燃料タンク内へ送給するように構成されるチューブと;チューブの開口部と;そして開口部に装着されるバルブと、を備え、該バルブは、開口部から流出する不活性ガスの量を、開口部に対する燃料の液位に応じて制御するように構成される。
【0011】
好適には、開口部から流出する不活性ガスの量を、開口部に対する燃料の液位に応じて制御するように構成される際に、バルブは、燃料の液位に関して選択される液位に達するときに開口部を閉じるように構成され、燃料の液位に関して選択される液位は、開口部よりも下方の第1液位、開口部の位置の第2液位、及び開口部よりも上方の第3液位のうちの1つの液位として選択される。
【0012】
好適には、燃料タンクは、航空機の翼内に配置され、翼は、正の上反角及び負の上反角のうちの一方の上反角を有する。
【0013】
好適には、チューブは、複数の開口部を形成するように開口部の他に設けられる多数の開口部と;そして複数の開口部のうちの多数の開口部に装着される多数のバルブと、を備え、チューブは、翼の付け根と翼の翼端との間に配置され、そして燃料タンクは、複数の貯留室を備え、複数の開口部は、複数の貯留室の少なくとも一部に位置する。
【0014】
好適には、バルブは:チューブに接続されるように構成され、かつチューブの周りを回転して開口部を、円筒部分の位置に応じて開き、そして閉じるように構成される円筒部分と、そして円筒部分に接続される浮遊構造と、を備え、浮遊構造は、燃料内で浮力を生じるように構成され、燃料の液位が開口部よりも選択された高さだけ低くなるときに、浮遊構造によって、円筒部分が回転して、開口部を閉じるようになる。
【0015】
好適には、装置は更に、不活性ガス発生器を備え、該不活性ガス発生器は、不活性ガスをチューブに所望流量で送り込むように構成され、不活性ガスは、窒素、ネオン、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、ラドン、六フッ化硫黄、二酸化炭素、及び低酸素濃度の空気のうちの1つとして選択され、そして燃料タンクは、移動プラットフォーム、静止プラットフォーム、陸上構造物、水上構造物、宇宙構造物、車両、航空機、水上艦、戦車、人員運搬車、列車、宇宙船、宇宙ステーション、衛星、潜水艦、自動車、発電所、橋梁、ダム、製造工場、及び建造物のうちの1つとして選択されるプラットフォーム内に配置される。
【0016】
更に別の有利な実施形態では、燃料タンクシステムが開示され、該燃料タンクシステムは:燃料タンクと、開口部群を有する不活性ガスシステムであって、これらの開口部が、不活性ガスが燃料タンクシステム内で、これらの開口部を通って燃料タンクに流入するように構成される、不活性ガスシステムと、そして開口部群から燃料タンクに流入する不活性ガスの量を、燃料タンク内の燃料の液位に応じて制御するように構成されるバルブシステムと、を備える。
【0017】
好適には、燃料タンクシステムは更に、航空機の翼を備え、燃料タンクは、翼内に配置され、そして不活性ガスシステムは、複数の開口部を有するチューブを含み、そしてバルブシステムは、複数の開口部に装着される複数のバルブを備える。
【0018】
また、好適には、複数のバルブのうちの1つのバルブは:チューブに接続されるように構成され、かつチューブの周りを回転して開口部群を、円筒部分の位置に応じて開き、そして閉じるように構成される円筒部分と、そして円筒部分に接続される浮遊構造と、を備え、該浮遊構造は、燃料内で浮力を生じるように構成される。
【0019】
更にもう一つの有利な実施形態では、燃料タンク内の不活性ガスを管理する方法が開示され、該方法は:不活性ガスを、燃料タンク内を延びるチューブに送り込むステップであって、チューブが開口部群を有する、送り込むステップと、そして開口部群から流出する不活性ガスの量を、バルブシステムを使用して、開口部群に対する燃料の液位に応じて制御するステップと、を含み、開口部群から流出する不活性ガスの量を、バルブシステムを使用して、開口部群に対する燃料の液位に応じて制御するステップは:燃料の液位に関して選択される液位に達するときに、開口部群のうちの1つの開口部を、バルブシステムのバルブで閉じるステップを含み、そして燃料の液位に関して選択される液位に達するときに、開口部群のうちの開口部を、バルブシステムのバルブで閉じるステップは:燃料の液位に関して選択される液位が、開口部よりも下方の第1液位、開口部の位置の第2液位、及び開口部よりも上方の第3液位のうちの1つの液位であるときに、開口部群のうちの開口部を、バルブシステムのバルブで閉じるステップを含む。
【0020】
特徴、機能、及び利点は、本開示の種々の実施形態において個別に実現することができる、または更に他の実施形態において組み合わせることができ、これらの実施形態では、更なる詳細は、以下の説明及び図面を参照しながら理解することができる。
【0021】
有利な実施形態に固有であると考えられる新規な特徴は、添付の請求項に説明されている。しかしながら、有利な実施形態だけでなく、これらの実施形態の好適な使用態様、別の目的、及び利点は、本開示の有利な実施形態に関する以下の詳細な説明を参照しながら、添付の図面と併せて一読することにより最も深く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、有利な実施形態による燃料移送環境(fuel movement environment)のブロック図を示している。
【図2】図2は、プラットフォームの図であり、このプラットフォーム内に、不活性ガスシステムを有利な実施形態に従って配置することができる。
【図3】図3は、有利な実施形態による翼内の不活性ガス供給システムの一部の図である。
【図4】図4は、有利な実施形態による図3の切断線4−4に沿って切断したときの、不活性ガス供給システムの一部を含む翼の断面図を示している。
【図5】図5は、有利な実施形態によるバルブの図である。
【図6】図6は、有利な実施形態によるバルブの側面図を示している。
【図7】図7は、有利な実施形態によるチューブに装着されるバルブの図である。
【図8】図8は、有利な実施形態による図7の切断線8−8に沿って切断したときの、不活性ガス供給システムのチューブの開口部に対するバルブの断面図を示している。
【図9】図9は、有利な実施形態による部分開き位置にあるバルブの図である。
【図10】図10は、有利な実施形態による開き位置にあるバルブの図である。
【図11】図11は、有利な実施形態による不活性ガス供給システムのバルブの図である。
【図12】図12は、有利な実施形態による不活性ガス供給システムのチューブに接続されるバルブの図である。
【図13】図13は、有利な実施形態によるチューブに装着されるバルブの図である。
【図14】図14は、図13の切断線14−14に沿って切断したときの、不活性ガス供給システムのチューブに接続されるバルブの断面図を示しており、バルブは、有利な実施形態による閉じ位置にある様子が示されている。
【図15】図15は、有利な実施形態による部分開き位置にあるバルブの図である。
【図16】図16は、有利な実施形態による閉じ位置にあるバルブの図である。
【図17】図17は、有利な実施形態による燃料タンク内の不活性ガスを管理するプロセスのフローチャートの図である。
【図18】図18は、有利な実施形態による航空機製造及び整備方法の図である。
【図19】図19は、有利な実施形態を実現することができる航空機の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
異なる有利な実施形態では、1つ以上の異なる注意事項を認識し、そして考慮に入れる。例えば、異なる有利な実施形態では、不活性ガス供給システムを実現することができる1つの方法が、燃料タンク内に位置する開口部群を有するチューブ群を使用することにより行なわれることを認識し、そして考慮に入れる。不活性ガス発生器を使用して不活性ガスを、チューブを通して送り込むことができる。不活性ガスは燃料タンクに、チューブの開口部を通って流入することができる。このように、不活性ガスを、燃料の液位よりも上方の空間に位置する可能性がある酸素の代わりに充填することができる。
【0024】
異なる有利な実施形態では、複数の開口部を使用する場合、チューブの長さに沿って流れが分岐し、そして圧力損失が発生することを認識し、そして考慮に入れる。その結果、不活性ガス発生器は、所望量の不活性ガスを供給して空気を、燃料の液位よりも上方にあるタンク内の空間から除去するために望ましい大きさよりも大きくなる虞がある。
【0025】
異なる有利な実施形態では、翼内の燃料タンクが仕切り板により形成される複数の貯留室を持つことができることを認識し、そして考慮に入れる。これらの仕切り板は、リブ(rib)のような構造とすることができる。翼の幾何学構造によって、これらの貯留室のうちの幾つかの貯留室が、空間を流体の液位よりも上方に持つようになるとともに、他の貯留室は空間を持たないようになる。更に、これらの異なる構成要素群は、これらの構成要素の間の連通が制限される可能性がある。その結果、異なる有利な実施形態では、これらの空間が、空気、燃料蒸気、及び他の要素を含む可能性があることを認識し、そして考慮に入れる。異なる有利な実施形態では、これらの空間の位置によって、燃料タンクを不活性化することが、所望の場合よりも難しくなることを認識し、そして考慮に入れる。その結果、燃料タンクに導入される不活性ガスの流量を増やす必要がある。
【0026】
異なる有利な実施形態では更に、多くの航空機が、正または負の上反角が付いた翼を有することを認識し、そして考慮に入れる。例えば、正の上反角が付いた翼とは、航空機の水平飛行時の翼の翼端が、翼の付け根よりも高い様子を指している。異なる有利な実施形態では、不活性ガス供給システムが、チューブ群の経路を、燃料がエンジンによって消費されるにつれて燃料液面位置が変化することを考慮に入れて決定する必要があることを認識し、そして考慮に入れる。
【0027】
従って、異なる有利な実施形態は、燃料タンクへの不活性ガスの導入を管理する方法及び装置を提供する。1つの有利な実施形態では、装置は、不活性ガスを燃料タンクに送り込むように構成されるチューブを備える。開口部を当該チューブに設ける。バルブは当該開口部に装着される。当該バルブは、燃料タンク内に位置する開口部から流出する不活性ガスの量を、開口部に対する燃料の液位に応じて制御するように構成される。
【0028】
まず、図1を参照するに、燃料管理環境(fuel management environment)のブロック図が、有利な実施形態に従って描かれている。この例示的な例では、燃料管理環境100はプラットフォーム102を備える。この例示的な例では、プラットフォーム102は燃料タンクシステム104を含む。プラットフォーム102は種々の形態を採ることができる。例えば、これらには限定されないが、プラットフォーム102は、輸送手段106の形態、具体的には航空機108の形態を採ることができる。
【0029】
プラットフォーム102が航空機108の形態を採る場合、燃料タンク群112は、翼群110内に、かつ燃料タンクシステム104内に設けることができる。
【0030】
燃料タンク群112は燃料114を貯留する。空間群116は、燃料114の液位118よりも上方に形成される。別の表現をすると、空間群116は、燃料タンク群112内の燃料114の液位118よりも上方に位置する容積部とすることができる。これらの例示的な例では、空間群116は、目減り分(ullage)120と表記することができる。目減り分120には、燃料タンク群112の目減り分120に含まれることが望ましくない空気、酸素、燃料蒸気、及び/又は他の要素が含まれる可能性がある。
【0031】
1つの例示的な例では、燃料タンク112は、仕切り板群124を含むことができ、これらの仕切り板は、燃料タンク122内の貯留室群126を構成する。仕切り板群124は、翼128内の種々の構造とすることができる。例えば、仕切り板群124は、翼128内のリブ、スパー(桁)、及び/又は他の構造により形成することができる。
【0032】
仕切り板群124によって、燃料114は、貯留室群126の間で流れることができる。燃料114のこの流れは、仕切り板群124によって減らすことができる、または制限することができる。別の表現をすると、燃料114の流れは、仕切り板群124を設けない場合と同じように自由になるということがないようにする必要がある。
【0033】
更に、燃料タンク122が配置される翼128は上反角130を有することができる。上反角130は正または負とすることができる。例えば、上反角130が正の上反角である場合、翼128の翼端132は、水平飛行時には、翼128の付け根134よりも高くなるように位置する。上反角130が負の上反角である場合、翼128の翼端132は、水平飛行時には、翼128の付け根134よりも低くなるように位置する。翼128の付け根134は、これらの例示的な例では、翼128のうち、航空機の胴体に接続される部分である。
【0034】
不活性ガスシステム136は、不活性ガス138を翼128に供給することができる。具体的には、不活性ガス138を貯留室群126に供給すると、不活性ガス138が貯留室群126内の空間116に含まれるようになって、燃料114または燃料蒸気147の燃焼が起こる可能性を低くすることができる。具体的には、不活性ガス138は、燃料114の燃焼の可能性を高める可能性がある空気、酸素、燃料蒸気147、及び/又は他の要素の代わりに充填することができる。
【0035】
これらの例示的な例では、不活性ガスシステム136は、不活性ガス発生器140と、そしてガス供給システム141と、を備える。図示のように、ガス供給システム141は、多数のチューブ142を含む。多数のチューブ142のうちの1つ以上のチューブは、これらの例示的な例では、燃料タンク122内に設けることができる。例えば、多数のチューブ142のうちのチューブ144は、燃料タンク122内の貯留室群126の少なくとも一部を通るように延設することができる。
【0036】
チューブ144に使用される材料は、特定の実施形態によって変えることができる。例えば、当該材料は、アルミニウム、スチール、プラスチック、複合材料、ポリカーボネート、及び/又は他の適切な材料のうちの1つとして選択することができる。材料の選択に影響する因子として、重量、荷重、及びコストを挙げることができる。
【0037】
これらの例示的な例では、チューブ144は開口部群146を有する。不活性ガス138は、チューブ144を通って流れ、そして燃料タンク122に開口部群146を通って流入する。
【0038】
これらの例示的な例では、不活性ガス138は、燃料タンク122内の燃料114、燃料蒸気147、または燃料114及び燃料蒸気147の両方に対する非反応性ガスとして選択することができる。別の表現をすると、不活性ガス138は、燃料114、燃料蒸気147、または燃料114及び燃料蒸気147の両方が、燃料タンク122内で点火する可能性を低くすることができるガスとして選択される。不活性ガス138は、窒素、ネオン、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、ラドン、六フッ化硫黄、二酸化炭素、低酸素濃度の空気、及び/又は他の適切なガスのうちの1つとして選択することができる。
【0039】
これらの例示的な例では、バルブシステム148は、多数のチューブ142に装着される。具体的には、バルブシステム148は、当該システムを通過して燃料タンク122に不活性ガスシステム136から流入する不活性ガス138の量150を制御する。バルブシステム148は、開口部群146に装着される多数のバルブ152を備える。開口部群146のうちの幾つか、または全ての開口部には、これらの例示的な例では、多数のバルブ152を装着することができる。
【0040】
例えば、バルブシステム148のバルブ156は、開口部群146のうちの開口部154に装着することができる。バルブ156は、開口部154から流出する不活性ガス138の量150を、開口部154に対する燃料114の液位118に応じて制御するように構成される。これらの例示的な例では、バルブ156は、開口部154を通って流れる不活性ガス138の量150を、異なる増分量で変化させることができる。別の表現をすると、開口バルブ156は、開口部154を完全に閉じるのではなく、開口部154を部分的に閉じることができる。
【0041】
燃料114の液位118よりも上方に位置する開口部群146の一部158を閉じて、不活性ガス138が、開口部群146の一部158を通って流出しないようにする。このようにして、不活性ガス138の流量160は、燃料タンク122内の所望の液面位置に合わせて、所望の流量161に増やす、または管理することができる。
【0042】
これらの例示的な例では、開口部群146の一部158とは、開口部群146の複数開口部のうちの幾つかの開口部を閉じることができることを意味する。更に、幾つかの例示的な例では、開口部群146の一部158とは、開口部群146の複数開口部のうちの幾つかの開口部を部分的に閉じることができることを意味する。
【0043】
このようにして、不活性ガスシステム136では、開口部群146が燃料114の液位118よりも上方に位置する可能性がある状況を考慮に入れる。この状況は、正の上反角130の場合に起こり得る。不活性ガス138が、燃料114の液位118よりも上方に位置する開口部群146の一部158に導入される場合、不活性ガス138は貯留室群126を通って流れて翼端132に達し、そして空間群116を不活性化するのではなく、排気される可能性がある。しかしながら、バルブシステム148の場合、当該状況を軽減する、または回避することができる。
【0044】
その結果、不活性ガス発生器140は、燃料タンク122内の空間群116を不活性化するように流量160を所望流量で発生させるために、さほど多量のガスを発生する必要はない。従って、バルブシステム148を不活性ガスシステム136に使用する場合、より小型の、及び/又はより軽量の不活性ガス発生器を用いて、不活性ガス発生器140を実現することができる。
【0045】
図1の燃料管理環境100は、有利な実施形態を実現することができる態様に物理的な、または構造上の制約があることを示すために図示しているのではない。図示される構成要素群の他に、そして/または代わりに、他の構成要素群を使用してもよい。幾つかの構成要素は不要とすることができる。また、ブロック群を提示して、幾つかの機能的構成要素を示している。これらのブロックのうちの1つ以上のブロックは、有利な実施形態において実現される場合に、組み合わせることができる、そして/または異なるブロックに分割することができる。
【0046】
例えば、プラットフォーム102を、航空機108の形態の輸送手段106であるとして説明してきたが、プラットフォーム102は、特定の実施形態によって異なるが、他の形態を採ることができる。例えば、プラットフォーム102は、移動プラットフォーム、静止プラットフォーム、陸上構造物、水上構造物、宇宙構造物、航空機、水上艦、戦車、人員運搬車、列車、宇宙船、宇宙ステーション、衛星、潜水艦、自動車、発電所、橋梁、ダム、製造工場、建造物、外板パネル、エンジン、ガスパイプラインの一部、及び/又は他の適切な対象物のうちの1つとして選択することができる。
【0047】
次に、図2を参照するに、不活性ガスシステムを実現することができるプラットフォームの図が、有利な実施形態に従って描かれている。この例示的な例では、航空機200は、図1の航空機108の実施形態の一例である。航空機200は、航空機200の胴体206に取り付けられる翼202及び翼204を有する。また、航空機200は更に、翼202に取り付けられエンジン208と、そして翼204に取り付けられるエンジン210と、を含む。航空機200は更に、尾翼部212を含む。尾翼部212は、垂直尾翼214と、水平尾翼216と、そして水平尾翼218と、を有する。
【0048】
これらの例示的な例では、図1の不活性ガスシステム136の多数のチューブ142は、航空機200の翼202及び翼204内に配置することができる。航空機200の不活性ガスシステムは、図1のブロック形式で示す不活性ガスシステム136を使用して実現することができる。
【0049】
次に、図3を参照するに、翼内の不活性ガスシステムの一部の図が、有利な実施形態に従って描かれている。図示のように、図2の航空機200の翼202は、翼端300と、そして付け根302と、を有する。付け根302は、翼202のうち、胴体206に接続される部分である。更に、翼202は、前縁304と、そして後縁306と、を有する。
【0050】
この図示の例では、翼202は、露出図として示されているので、翼202内の燃料タンク308を見ることができる。燃料タンク308は、複数の貯留室310により構成される。複数の貯留室310は、この例示的な例では、仕切り板群312により形成される。仕切り板群312は、この例示的な例では、翼202の下側外板313から略垂直に延設される。
【0051】
例えば、貯留室314は、仕切り板316及び仕切り板318により形成される。貯留室320は、仕切り板322及び仕切り板324により形成される。この例示的な例では、翼202は正の上反角を有する。別の表現をすると、貯留室314は、貯留室320よりも付け根302に、翼202の長さ分だけ延びる水平面に沿って近接して位置する。更に、貯留室320は、貯留室314よりも翼端300に近接して位置する。これらの位置により、貯留室314は、これらの例示的な例では、貯留室320よりも低い位置を有する。
【0052】
この例示的な例では、ガス供給システム327のチューブ326が描かれている。ガス供給システム327は、図1にブロック形式で図示される不活性ガスシステム136のガス供給システム141の物理形態の一例である。具体的には、チューブ326は、図1にブロック形式で示される多数のチューブ142のうちのチューブ144の一例である。
【0053】
チューブ326は、付け根302から翼端300に向かって延びている。開口部群331をチューブ326に設ける。これらの例示的な例では、開口部群331は、開口部332、開口部333、開口部334、開口部335、開口部336、開口部337、開口部338、開口部339、及び開口部340を含む。
【0054】
これらの開口部は、複数の貯留室が310のうちの貯留室314,320,341,342,343,344,345,346,及び347に配置される。更に、バルブシステム348は、開口部332,333,334,335,336,337,338,339,340にそれぞれ接続されるバルブ349,350,351,352,353,354,355,356,及び357を含む。この例示的な例では、チューブ326の位置は、不活性ガスがこれらの開口部から燃料タンク308に流入するように配置される。
【0055】
図示のように、燃料358は、燃料タンク308の部分359に配置される。燃料358は、燃料タンク308の部分360には配置されない。部分360は、これらの例では、目減り部分である。これらの例示的な例では、燃料液面362は、部分359と部分360との境界である。
【0056】
これらの例示的な例では、不活性ガスは、燃料タンク308の開口部群に導入され、これらの開口部は、部分359に配置される、または部分359の燃料358よりも上方の或る距離に配置される。
【0057】
次に、図4を参照するに、不活性ガス供給システムの一部を含む翼の断面図が有利な実施形態に従って描かれている。この図示の例では、翼202は、図3の切断線4−4に沿って切断されたときの断面図として示されている。翼202のこの図は、正の上反角を有する翼202の図である。
【0058】
この図では、燃料タンク308内の燃料358の液位406を示している。空間群404は、燃料358の液位406よりも上方に位置する空間である。空間群404は、燃料タンク308の目減り分を構成する。この例示的な例では、燃料358の液位406によって、バルブシステム348はチューブ326の開口部群の或る部分を閉じ状態にするとともに、開口部群の別の部分を開き状態にする。開口部群のうちの閉じ状態にある部分は、開口部群に対する燃料358の液位406によって異なる。
【0059】
これらの例示的な例では、これらの開口部は、液位406がこれらの開口部よりも低い或る高さになるときに閉じる。更に、これらの開口部は、液位406がこれらの開口部よりも低い或る高さになるときに部分的に閉じることができる。
【0060】
勿論、他の例示的な例では、これらの開口部は、液位406が開口部群の高さになる、開口部群よりも上方の或る液位になる、または1つの開口部の高さに略等しくなる場合に閉じることができる。開口部群が開く場合、及び閉じる場合の選択は、特定の実施形態によって異なる。
【0061】
次に、図5を参照するに、バルブの図が、有利な実施形態に従って描かれている。この例示的な例では、バルブ349の斜視図が詳細に描かれている。バルブ349は、円筒部分500と、平板部材502と、平板部材503と、そして浮遊構造504と、を備える。
【0062】
バルブ349は、特定の実施形態によって異なるが、異なる材料により作製することができる。例えば、バルブ349は、プラスチック、金属、複合材料、及び/又は他の適切な材料のうちの少なくとも1つにより構成することができる。本明細書において使用されるように、「at least one of」というフレーズは、複数のアイテムを列挙して使用される場合に、列挙されるこれらのアイテムのうちの1つ以上のアイテムの異なる組み合わせを用いることができ、そして列挙されるアイテムの中の各アイテムの1つだけで済ませることができることを意味する。例えば、「at least one of item A, item B, and item C」は、例えばこれらには限定されないが、「item A(アイテムA)」または「item A and item B(アイテムA及びアイテムB)」を含むことができる。この例は更に、「item A, item B, and item C(アイテムA、アイテムB、及びアイテムC)」または「item B and item C(アイテムB及びアイテムC)」を含むことができる。
【0063】
バルブ349が金属を含む場合、当該金属は、例えばアルミニウム、チタン、及び/又はスチールとすることができる。1種類よりも多くの種類の材料を使用する場合、異なる材料をバルブ349の異なる部分に用いることができる。
【0064】
円筒部分500は、図3のチューブの周りに配置される、またはチューブ326を収容するように構成される。図示のように、円筒部分500は流路506を有し、この流路506は、円筒部分500の端部508から端部510まで延びている。開口部509が端部508に設けられ、そして開口部511が端部510に設けられる。この例示的な例では、円筒部分500は更に、開口部512を有し、この開口部512は流路506に連通している。
【0065】
これらの例示的な例では、浮遊構造504に関して選択される材料は、これらの例示的な例において、燃料内で浮力を有するように構成される材料である。幾つかの例示的な例では、当該材料は、材料自体が燃料内で浮力を有していなくてもよいが、内部がガスまたは液体で充填されて、結果的に、浮遊構造504が燃料内で浮力を生じるようにする必要がある。
【0066】
これらの例示的な例では、開口部512は、図3のバルブ349が装着される装着先のチューブ326の開口部332に対向するように、または一致するように移動することができるように構成される。開口部512から、チューブ326の開口部332の全て、または一部が露出するようになって、不活性ガスをチューブ326の開口部332から流出させることができる。
【0067】
次に、図6を参照するに、バルブの側面図が、有利な実施形態に従って描かれている。この例示的な例では、バルブ349は、端部508から眺めた様子が示されている。
【0068】
次に、図7を参照するに、チューブに装着された状態のバルブの図が、有利な実施形態に従って描かれている。この図では、バルブ349を装着した状態のチューブ326の斜視図が描かれている。
【0069】
この例示的な例では、開口部512から、チューブ326の開口部332(この図には示されない)が露出していない。この位置では、バルブ349が開口部332を閉じることにより、チューブ326内の不活性ガスは開口部332から流出しない。開口部332は、この例では、閉じ状態にある。バルブ349は、燃料358の図4の液位406が浮遊構造504よりも下方になる場合にこの閉じ位置にある。
【0070】
この図では、タブ700がチューブ326の表面702から延出している。タブ700は、バルブ349の動きを拘束する、または制限する。
【0071】
次に、図8を参照するに、不活性ガス供給システムにおけるチューブの開口部に対するバルブの断面図が、有利な実施形態に従って描かれている。この例示的な例では、バルブ349が装着された状態のチューブ326の断面図が描かれている。この断面は、図7の切断線8−8に沿って切断したときのものである。この例示的な例から分かるように、バルブ349は閉じ位置にあるので、開口部332はバルブ349の開口部512とは連通していない。図から分かるように、燃料358の液位406は、浮遊構造504よりも下方になっている。
【0072】
次に、図9を参照するに、部分開き位置にあるバルブの図が、有利な実施形態に従って描かれている。この例示的な例では、燃料358の液位406は、浮遊構造504よりも高くなっている。
【0073】
この例示的な例から分かるように、浮遊構造504は燃料358に部分的に浸っている。燃料が上昇すると、浮遊構造504は燃料358内で浮力を生じる。浮遊構造504は、バルブ349が矢印900の方向に回転するように構成される。
【0074】
この回転により、開口部512が開口部332の一部に対向するようになる。この例示的な例から分かるように、開口部332が部分的に露出して、不活性ガスを開口部332から流出させることができる。この例では、開口部332は部分開き状態にある。
【0075】
次に、図10を参照するに、開き位置にあるバルブの図が、有利な実施形態に従って描かれている。この例示的な例では、燃料358の液位406は、チューブ326よりも高くなっている。燃料358がこの液位になる場合、バルブ349は全開位置にある。この時点では、開口部332の全てが、開口部512に一致する、または対向する。その結果、開口部332が全開になる。この例示的な例から分かるように、タブ700によってバルブ349の回転量が制限される。勿論、特定の実施形態によって異なるが、タブ700は、チューブ326から削除してもよい。
【0076】
例えば、図11では、開き位置にあるバルブの図が、有利な実施形態に従って描かれている。この例示的な例では、バルブ1100は、図3のチューブ326に装着された状態のバルブ349の代わりに使用することができるバルブの一例である。
【0077】
この例示的な例では、バルブ1100は、回転可能部材1102と、浮遊構造1104と、そして突出部1106と、を備える。浮遊構造1104は、回転可能部材1102の端部1108に装着される。突出部1106は、回転可能部材1102の端部1110に装着される。バルブ1100は更に、コネクタ1114を含む。コネクタ1114は、回転可能部材1102をチューブ326に接続する。回転可能部材1102は、矢印1116の方向に回転することができる。突出部1106によってガスを、この図に示す開き位置にあるときに、開口部332から流出させることができる。
【0078】
浮遊構造1104は、この例示的な例では、燃料358内で浮くことにより、燃料358の燃料液面362が、開口部332から或る選択距離以内の高さの液位を持つときに開口部332の開き位置を維持する。
【0079】
次に、図12を参照するに、閉じ位置にあるバルブの図が、有利な実施形態に従って描かれている。図示のように、燃料358の燃料液面362は、図11よりも低い液位を有する。この例示的な例では、燃料液面362が低くなると、バルブ1100が閉じ位置に移行する。この閉じ位置では、突出部1106が開口部332を覆うことにより、不活性ガスが開口部332から流出するのを防止する、または開口部332から流出する不活性ガスを少なくする。
【0080】
バルブ1100の図は、図1にブロック形式で示すバルブ156の別の実施形態の一例である。勿論、特定の実施形態によって異なるが、他のバルブを使用してもよい。更に他の例示的な例では、バルブは、燃料の液位を検出する検出器を使用してアクチュエータに取り付けることができ、このアクチュエータはバルブを、検出される燃料の液位に応じて開閉させる。
【0081】
次に、図13を参照するに、チューブに装着されるバルブの図が、有利な実施形態に従って描かれている。この図では、バルブ1302を装着した状態のチューブ1300の斜視図を見ることができる。
【0082】
図示のように、チューブ1300は、図1にブロック形式で示すチューブ144の一例である。バルブ1302は、図1にブロック形式で示すバルブ156の1つの実施形態の一例である。バルブ1302及びチューブ1300は、翼202内の燃料タンク308に、図3のガス供給システム327の一部として使用することができる。
【0083】
この例示的な例では、バルブ1302は、円筒部分1304と、平板部材1306と、そして浮遊構造1308と、を備える。バルブ1302は、燃料1310の液位1312が浮遊構造1308よりも下方にあるときに閉じ位置になる。図示のように、開口部1314は、バルブ1302が閉じ位置にあるときに、ガスの流れを殆ど阻止するように構成される。
【0084】
この図では、タブ1318が、チューブ1300の表面1320から円筒部分1304の開口部1322を通って延出している。タブ1318は、バルブ1302の矢印1324の方向の動きを制限することができる。更に詳細には、開口部1322の動きは、タブ1318によって制限することができる。
【0085】
次に、図14を参照するに、図13の切断線14−14に沿って切断したときの不活性ガス供給システムのチューブに接続されるバルブの断面図が、有利な実施形態に従って描かれている。この例示的な例では、バルブ1302を装着した状態のチューブ1300の断面図が描かれている。この図では、燃料1310の液位1312は浮遊構造1308よりも下方になっている。
【0086】
この例示的な例から分かるように、バルブ1302は、閉じ位置にあるので、円筒部分1304の開口部1314は、チューブ1300の開口部1400と連通していない。従って、ガスは、バルブ1302がこの位置にあるときは、開口部1400を通って流れることができない。
【0087】
図示のように、円筒部分1304は、移動すると、開口部1314が、バルブ1302が装着される装着先のチューブ1300の開口部1400に対向する、または一致することができるように構成される。開口部1314の一部、及び開口部1400の一部が互いに対向すると、不活性ガスは、開口部1400及び開口部1314を通って流れることができる。このように、開口部1314から、チューブ1300の開口部1400の全て、または一部が露出するようになって、不活性ガスがチューブ1300の開口部1400から流出することができる。
【0088】
次に、図15を参照するに、部分開き位置にあるバルブの図が、有利な実施形態に従って描かれている。この例示的な例では、燃料1310の液位1312は、チューブ1300よりも高くなっている。
【0089】
この例示的な例から分かるように、浮遊構造1308は燃料1310に部分的に浸っている。燃料1310の液位1312が上昇すると、浮遊構造1308は燃料1310内で浮力を生じる。浮遊構造1308は、バルブ1302が矢印1500の方向に回転して動くように構成される。
【0090】
この回転により、開口部1314が開口部1400の一部に対向するようになる。この例示的な例から分かるように、開口部1400が部分的に露出して、不活性ガスを開口部1400から流出させることができる。この例では、開口部1400は部分開き状態にある。
【0091】
次に、図16を参照するに、開き位置にあるバルブの図が、有利な実施形態に従って描かれている。この例示的な例では、燃料1310の液位1312は、チューブ1300の開口部1400よりも上方にある。燃料1310がこの液位になる場合、バルブ1302は閉じ位置にある。この例示的な例から分かるように、タブ1318によってバルブ1302の回転量が制限される。勿論、特定の実施形態によって異なるが、タブ1318は、チューブ1300から削除してもよい。
【0092】
この図に示されるように、バルブ1302は、燃料1310の液位1312がチューブ1300よりも上方にあるときに閉じる。これにより、図2の翼202が、チューブ1300への逆流を起こし易い形状を有する場合に、チューブ1300への燃料1310の不所望な逆流を防止することができる。
【0093】
図3〜16の不活性ガス供給システムの図は、図1にブロック形式で示す不活性ガスシステム136の1つの実施形態の一例である。不活性ガスシステムの異なる構成要素は、異なる有利な実施形態を実現することができる態様に物理的な、または構造上の制約があることを示すために図示されているのではない。図3〜16に示す異なる構成要素は、図1の構成要素群と組み合わせることができる、図1の構成要素群に使用することができる、またはこれらの2つの構成の組み合わせとすることができる。更に、これらの図に示す構成要素群のうちの幾つかの構成要素は、図1にブロック形式で示す構成要素群を物理的構造として実現することができる様子を示す例示的な例とすることができる。
【0094】
例えば、他の例示的な例では、タブ700はチューブ326から削除してもよい。更に別の例示的な例として、他の種類のバルブを、バルブ349の他に、そして/またはバルブ349の代わりに使用することができる。
【0095】
次に、図17を参照するに、燃料タンク内の不活性ガスを管理するプロセスのフローチャートの図が、有利な実施形態に従って描かれている。図17に示すプロセスは、図1のプラットフォーム102において実行することができる。具体的には、図17に示す操作は、図1の不活性ガスシステム136を使用して実行することができる。
【0096】
当該プロセスは、不活性ガスを、航空機の燃料タンク内に延びるチューブに送り込む(操作1700)ことから始まる。当該チューブは、不活性ガスが燃料タンクに流入するときに通過する開口部群を有する。
【0097】
当該プロセスでは、開口部群から流出する不活性ガスの量を、バルブシステムを使用して、開口部群に対する燃料の液位に応じて制御し(操作1702)、当該プロセスは操作1700に戻る。このプロセスは、不活性ガスがチューブに送り込まれている間は継続する。
【0098】
これらの例示的な例では、開口部群から流出する不活性ガスを、バルブシステムを使用して制御するとは、開口部群のうちの幾つかの開口部が、他の開口部群が閉じている状態で開く、または部分的に開くことができることを意味する。このようにして、或る量の不活性ガスが開口部群から流出する現象が発生して、不活性ガスが、空間が燃料の液位よりも上方に生じる領域に送り込まれるようになる。この空間は、空気及び蒸気が滞留する空間である。このようにして、不活性ガスを更に効率的に使用して、燃料タンク内の燃料が、燃料が存在しない空間内で燃焼する可能性を低下させることができる。
【0099】
異なる有利な実施形態によって、より軽量の、またはより小型の不活性ガス発生器を使用して、不活性ガスの所望の流れを実現することができる。その結果、不活性ガスは、燃料液面がチューブから特定の垂直距離の位置にあるときにのみ供給することができる。不活性ガスの供給に対するこの種類の制御は、正または負の上反角を有する航空機の燃料タンクに特に有用となり得る。勿論、この供給システムは、上に説明した通り、航空機の他に、他の種類のプラットフォームにおいて使用することができる。
【0100】
本開示の有利な実施形態については、図18に示す航空機製造及び整備方法1800、及び図19に示す航空機1900に関連して説明することができる。まず、図18を参照するに、航空機製造及び整備方法の図が有利な実施形態に従って描かれている。製造前段階では、航空機製造及び整備方法1800において、図19の航空機1900の仕様決定及び設計1802、及び材料調達1804を行なうことができる。
【0101】
製造段階では、図19の航空機1900の部品及びサブアセンブリ製造1806、及びシステム統合1808が行なわれる。その後、図19の航空機1900は、証明書発行及び機体引き渡し1810を経て、供用1812される。顧客が供用1812している間、図19の航空機1900は、日常的なメンテナンス及び整備1814を行うようにスケジューリングされ、このメンテナンス及び整備1814は、改修、再構成、改装、及び他のメンテナンスまたは整備を含むことができる。
【0102】
航空機製造及び整備方法1800のプロセス群の各プロセスは、システムインテグレータ、サードパーティ、及び/又はオペレータによって行なうことができるか、または実行することができる。これらの例では、オペレータは顧客とすることができる。この説明を進めるために、システムインテグレータとして、これらには限定されないが、何れかの数の航空機製造業者、及び航空機大手システムサブコントラクタを挙げることができ;サードパーティとして、これらには限定されないが、何れかの数のベンダー、サブコントラクタ、及びサプライヤーを挙げることができ;そしてオペレータは、航空会社、リース会社、軍隊、航空機整備機関などとすることができる。
【0103】
次に、図19を参照するに、有利な実施形態を実現することができる航空機の図が描かれている。この例では、航空機1900は、図18の航空機製造及び整備方法1800により製造され、そして複数のシステム1904を搭載した機体1902と、そして機内1906と、を含むことができる。システム群1904の例として、推進システム1908、電気システム1910、油圧システム1912、及び環境システム1914のうちの1つ以上を挙げることができる。何れかの数の他のシステムを含めてもよい。航空宇宙用の例を示しているが、異なる有利な実施形態は、自動車産業のような他の産業に適用することができる。
【0104】
本明細書において具体化される装置及び方法は、図18の航空機製造及び整備方法1800の種々の段階のうちの少なくとも1つの段階において用いることができる。1つの例示的な例では、図18の部品及びサブアセンブリ製造1806において製造される部品群またはサブアセンブリ群は、航空機1900を図18において供用1812している状態で製造される部品群またはサブアセンブリ群と同様の方法で組み立てる、または製造することができる。
【0105】
更に別の例として、1つ以上の装置実施形態、方法実施形態、またはこれらの組み合わせは、図18の部品及びサブアセンブリ製造1806、及びシステム統合1808のような製造段階において利用することができる。1つ以上の装置実施形態、方法実施形態、またはこれらの組み合わせは、航空機1900を供用1812している状態で、そして/または航空機1900に、図18のメンテナンス及び整備1814が施されている状態で利用することができる。
【0106】
例えば、不活性ガスシステム136は航空機1900に、部品及びサブアセンブリ製造1806中に、メンテナンス及び整備1814中に、または他の適切な段階において設置することができる。これらの例示的な例では、不活性ガスシステムが現時点で航空機に設置されている場合、不活性ガスシステムは、メンテナンス及び整備1814中に取り替える、またはアップグレードすることができる。例えば、現時点で設置されている不活性ガスシステムは、有利な実施形態による不活性ガスシステム内のチューブ群に装着されるバルブシステム148を有することができる。
【0107】
異なる有利な実施形態に関する記載を提示して、例示及び説明を行なってきたが、当該記載を網羅的に行なおうとしているのではない、または当該記載を開示される構成の実施形態に限定しようとしているのではない。多くの変形及び変更が存在することは、この技術分野の当業者には明らかであろう。更に、異なる有利な実施形態は、他の有利な実施形態とは異なる利点を提供することができる。選択される実施形態または実施形態群は、これらの実施形態の原理、実際の用途を最も良く説明するために、そしてこの技術分野の他の当業者が、想定される特定の使用に適合するように種々の変形を加えた種々の実施形態の開示内容を理解することができるように選択され、そして記載されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガス(138)を燃料タンク(122)内へ送給するように構成されるチューブ(144)と、
チューブ(144)の開口部(154)と、
開口部(154)に装着されるバルブ(156)とを備え、バルブ(156)は、開口部(154)から流出する不活性ガス(138)の量(150)を、開口部(154)に対する燃料(114)の液位(118)に応じて制御するように構成される、装置。
【請求項2】
開口部(154)から流出する不活性ガス(138)の量(150)を、開口部(154)に対する燃料(114)の液位(118)に応じて制御するように構成される際に、バルブ(156)は、燃料(114)の液位(118)に関して選択される液位に達するときに開口部(154)を閉じるように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
燃料(114)の液位(118)に関して選択される液位は、開口部(154)よりも下方の第1液位、開口部(154)の位置の第2液位、及び開口部(154)よりも上方の第3液位のうちの1つの液位として選択される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
燃料タンク(122)は、航空機(108)の翼(128)内に配置される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
翼(128)は、正の上反角、及び負の上反角のうちの一方の上反角を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
チューブ(144)は、複数の開口部を形成するように開口部(154)の他に設けられる多数の開口部(146)と、そして複数の開口部のうちの多数の開口部(146)に装着される多数のバルブ(152)とを備え、そしてチューブ(144)は、翼(128)の付け根(134)部分から翼(128)の翼端(132)に向かって延びる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
燃料タンク(122)は、複数の貯留室(126)を備え、複数の開口部は、複数の貯留室(126)の少なくとも一部に位置する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
バルブ(156)は、
チューブ(144)に接続されるように構成され、かつチューブ(144)の周りを回転して、円筒部分(500)の位置に応じて、開口部(154)を開き、そして閉じるように構成される円筒部分(500)と、
円筒部分(500)に接続され燃料(114)内で浮力を生じるように構成される浮遊構造(504)と
を備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
燃料(114)の液位(118)が開口部(154)よりも選択された高さだけ低くなるときに、浮遊構造(504)によって、円筒部分(500)が回転して、開口部(154)を閉じるようになる、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
更に、
不活性ガス発生器(140)を備え、不活性ガス発生器(140)は、不活性ガス(138)をチューブ(144)に所望流量(161)で送り込むように構成される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
不活性ガス(138)は、窒素、ネオン、アルゴン、ヘリウム、クリプトン、キセノン、ラドン、六フッ化硫黄、二酸化炭素、及び低酸素濃度の空気のうちの1つとして選択される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
燃料タンク(122)は、移動プラットフォーム、静止プラットフォーム、陸上構造物、水上構造物、宇宙構造物、車両、航空機、水上艦、戦車、人員運搬車、列車、宇宙船、宇宙ステーション、衛星、潜水艦、自動車、発電所、橋梁、ダム、製造工場、及び建造物のうちの1つとして選択されるプラットフォーム内に配置される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
燃料タンク(122)内の不活性ガス(138)を管理する方法であって、方法は、
不活性ガス(138)を、燃料タンク(122)内を延びるチューブ(144)に送り込むステップであって、チューブ(144)が開口部群(146)を有するステップと、
バルブシステム(148)を使用して、開口部群(146)に対する燃料(114)の液位(118)に応じて、開口部群(146)から流出する(128)不活性ガス(138)の量(150)を制御するステップと
を含む、方法。
【請求項14】
バルブシステム(148)を使用して、開口部群(146)に対する燃料(114)の液位(118)に応じて、開口部群(146)から流出する(128)不活性ガス(138)の量(150)を制御するステップは、
燃料(114)の液位(118)に関して選択される液位(118)に達するときに、開口部群(146)のうちの1つの開口部(154)を、バルブシステム(148)のバルブ(156)で閉じるステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
燃料(114)の液位(118)に関して選択される液位(118)に達するときに、開口部群(146)のうちの開口部(154)を、バルブシステム(148)のバルブ(156)で閉じるステップは、
燃料(114)の液位(118)に関して選択される液位(118)が、開口部(154)よりも下方の第1液位(118)、開口部(154)の位置の第2液位(118)、及び開口部(154)よりも上方の第3液位(118)のうちの1つの液位であるときに、開口部群(146)のうちの開口部(154)を、バルブシステム(148)のバルブ(156)で閉じるステップを含む、請求項13又は14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−43638(P2013−43638A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−181836(P2012−181836)
【出願日】平成24年8月20日(2012.8.20)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company