説明

燃料供給量調整膜、配線回路基板および燃料電池

【課題】側面での燃料の染み出しを防止するとともに、電池要素への燃料の供給量を適切に調整することが可能な燃料供給量調整膜、配線回路基板および燃料電池を提供する。
【解決手段】FPC基板のベース絶縁層2は、燃料電池の燃料供給量調整膜として用いられる。FPC基板のベース絶縁層2は、複数の異方性貫通孔hを有する。異方性貫通孔hは、ベース絶縁層2の一面および他面に開口h1を有する。ベース絶縁層2の一面の開口h1と他面の開口h1とは、単一の連通路h2により分岐することなく連通している。連通路h2は、長軸とその長軸に直交する短軸とを特定可能な形状を有し、長軸はベース絶縁層2の一面および他面に所定の角度で交差する方向に延びる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給量調整膜ならびにそれを備えた配線回路基板および燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話等のモバイル機器には、小型でかつ高容量の電池が求められる。そこで、リチウム二次電池等の従来の電池に比べて、高エネルギー密度を得ることが可能な燃料電池の開発が進められている。燃料電池としては、例えば直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cells)がある。
【0003】
直接メタノール型燃料電池では、メタノールが触媒によって分解され、水素イオンが生成される。その水素イオンと空気中の酸素とを反応させることにより電力を発生させる。この場合、化学エネルギーを極めて効率よく電気エネルギーに変換することができ、非常に高いエネルギー密度を得ることができる。
【0004】
特許文献1には、電解質膜がアノードおよびカソードにより挟まれた燃料電池用単セルが記載されている。アノードの外側の表面には多孔質性のポリウレタンフォームからなる保持体が配置され、カソードの外側の表面には酸化剤透過層が配置される。メタノール等の燃料が保持体を透過してアノードに供給され、酸化剤が酸化剤透過層を透過してカソードに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−129588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の保持体は、高い吸液性を有するため、燃料電池の起電力の持続時間を向上させることができる。しかしながら、この燃料電池においては、保持体の側面での燃料の染み出しのため、燃料供給の損失が発生する。また、任意の透過性を有する保持体を作製することは困難である。そのため、保持体を通してアノードへの燃料の供給量を適切に調整することができない。
【0007】
本発明の目的は、側面での燃料の染み出しを防止するとともに、電池要素への燃料の供給量を適切に調整することが可能な燃料供給量調整膜、配線回路基板および燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)第1の発明に係る燃料供給量調整膜は、燃料電池に用いられる燃料供給量調整膜であって、複数の異方性貫通孔を有する絶縁層からなるものである。
【0009】
この燃料供給量調整膜は、燃料電池の電池要素に燃料を供給するために用いることができる。燃料は絶縁層の複数の異方性貫通孔を通して電池要素に供給される。この場合、燃料供給量調整膜の側面に燃料が染み出すことが防止される。そのため、燃料の損失を低減することが可能になる。また、複数の異方性貫通孔の孔径および空孔率を任意に設定することができる。そのため、燃料供給量調整膜の異方性貫通孔の孔径および空孔率を適切に設定することにより、電池要素への燃料の供給量を適切に調整することができる。
【0010】
(2)複数の異方性貫通孔の各々の孔径が0.01μm以上100μm以下であってもよい。
【0011】
複数の異方性貫通孔の各々の孔径が0.01μm以上であることにより、異方性貫通孔を通して電池要素に燃料を十分に供給することができる。これにより、燃料電池の出力を増加させることができる。また、複数の異方性貫通孔の各々の孔径が100μm以下であることにより、異方性貫通孔を通して電池要素に燃料が過剰に供給されることを防止することができる。
【0012】
(3)絶縁層における複数の異方性貫通孔の空孔率が1%以上90%以下であってもよい。
【0013】
絶縁層における複数の異方性貫通孔の空孔率が1%以上であることにより、異方性貫通孔を通して電池要素に燃料を十分に供給することができる。これにより、燃料電池の出力を増加させることができる。また、絶縁層における複数の異方性貫通孔の空孔率が90%以下であることにより、異方性貫通孔を通して電池要素に燃料が過剰に供給されることを防止することができる。
【0014】
(4)絶縁層の厚みが5μm以上500μm以下であってもよい。絶縁層の厚みが5μm以上であることにより、燃料供給量調整膜の耐久性が向上する。また、絶縁層の厚みが500μm以下であることにより、燃料供給量調整膜のフレキシブル性および取り扱い性が向上する。
【0015】
(5)第2の発明に係る配線回路基板は、第1の発明に係る燃料供給量調整膜と、燃料供給量調整膜上に設けられる所定のパターンを有する導体層とを備えるものである。
【0016】
この配線回路基板は、燃料電池の電池要素に燃料を供給するとともに電池要素の電力を外部に取り出すために用いることができる。電池要素の電力は導体層を通して外部に取り出される。
【0017】
燃料は燃料供給量調整膜の複数の異方性貫通孔を通して電池要素に供給される。この場合、燃料供給量調整膜の側面に燃料が染み出すことが防止される。そのため、燃料の損失を低減することが可能になる。また、複数の異方性貫通孔の孔径および空孔率を任意に設定することができる。そのため、燃料供給量調整膜の異方性貫通孔の孔径および空孔率を適切に設定することにより、電池要素への燃料の供給量を適切に調整することができる。
【0018】
(6)配線回路基板は、導体層の少なくとも一部を覆うように燃料供給量調整膜に形成される被覆層をさらに備えてもよい。この場合、導体層が燃料電池の燃料により腐食することが防止される。
【0019】
(7)第3の発明に係る燃料電池は、電池要素と、電池要素の電極として配置される第2の発明に係る配線回路基板と、電池要素および配線回路基板を収容する筺体とを備えるものである。
【0020】
この燃料電池においては、電池要素および上記の配線回路基板が筺体内に収容される。電池要素の電力は、配線回路基板の導体層を通して筺体の外部に取り出される。
【0021】
燃料は配線回路基板の複数の異方性貫通孔を通して電池要素に供給される。この場合、燃料供給量調整膜の側面に燃料が染み出すことが防止される。そのため、燃料の損失を低減することが可能になる。また、複数の異方性貫通孔の孔径および空孔率を任意に設定することができる。そのため、燃料供給量調整膜の異方性貫通孔の孔径および空孔率を適切に設定することにより、電池要素への燃料の供給量を適切に調整することができる。
【0022】
(8)第4の発明に係る燃料電池は、燃料極を有する電池要素と、電池要素の燃料極に接触する電極と、電極を介して電池要素の燃料極に対向するように配置される第1の発明に係る燃料供給量調整膜と、電池要素、電極および燃料供給量調整膜を収容する筺体とを備えるものである。
【0023】
この燃料電池においては、電池要素、電極および上記の燃料供給量調整膜が筺体内に収容される。電池要素の電力は、電極を通して筺体の外部に取り出される。燃料は燃料供給量調整膜の複数の異方性貫通孔を通して電池要素の燃料極に供給される。
【0024】
この場合、燃料供給量調整膜の側面に燃料が染み出すことが防止される。そのため、燃料の損失を低減することが可能になる。また、複数の異方性貫通孔の孔径および空孔率を任意に設定することができる。そのため、燃料供給量調整膜の異方性貫通孔の孔径および空孔率を適切に設定することにより、燃料極への燃料の供給量を適切に調整することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、燃料供給量調整膜の側面での燃料の染み出しを防止するとともに、燃料電池の電池要素への燃料の供給量を適切に調整することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施の形態に係るFPC基板の平面図および断面図である。
【図2】ベース絶縁層の模式的断面図である。
【図3】FPC基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図4】FPC基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図5】FPC基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図6】FPC基板を用いた燃料電池の外観斜視図である。
【図7】燃料電池内における作用を説明するための図である。
【図8】第2の実施の形態に係る燃料電池の断面図である。
【図9】第2の実施の形態におけるFPC基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【図10】第2の実施の形態におけるFPC基板の製造方法を説明するための工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[1]第1の実施の形態
以下、図面を参照しながら本発明の第1の実施の形態に係る燃料供給量調整膜およびそれを備えた配線回路基板について説明する。なお、本実施の形態では、配線回路基板の例として、屈曲性を有するフレキシブル配線回路基板について説明する。
【0028】
(1)フレキシブル配線回路基板の構成
図1(a)は第1の実施の形態に係るFPC基板の平面図であり、図1(b)は図1(a)のFPC基板のA−A線断面図である。
【0029】
図1(a)および図1(b)に示すように、FPC基板1は、例えば多孔質性の異方性貫通孔を有するPET(ポリエチレンテレフタレート)からなるベース絶縁層2を備える。これにより、ベース絶縁層2は通液性を有する。ベース絶縁層2は、燃料電池の燃料供給量調整膜として用いられる。ベース絶縁層2の材料としては、PETに代えて、多孔質性の異方性貫通孔を有するポリカーボネート、PI(ポリイミド)またはポリフッ化ビニリデン等の樹脂を用いることができる。
【0030】
図2は、ベース絶縁層2の模式的断面図である。図2(a)に示すように、ベース絶縁層2は一面および他面に開口h1を有し、ベース絶縁層2の一面の開口h1と他面の開口h1とは、単一の連通路h2により分岐することなく連通している。連通路h2は、点線で示す長軸と長軸に直交する短軸とを特定可能な形状を有し、長軸はベース絶縁層2の一面および他面に30度以上90度以下の角度で交差する方向に延びる。図2(b)に示すように、連通路h2が部分的に湾曲している場合には、点線で示す長軸の平均的な方向がベース絶縁層2の一面および他面に30度以上90度以下の角度で交差する方向であればよい。このような開口h1および連通路h2により、ベース絶縁層2に異方性貫通孔hが形成される。本実施の形態では、ベース絶縁層2は側面に開口を有しない。
【0031】
ベース絶縁層2の異方性貫通孔hは、例えば重イオンビームを照射してベース絶縁層2にイオントラックを形成し、イオントラックをエッチングすることにより形成される。異方性貫通孔hの孔径は、0.01μm以上100μm以下であり、0.01μm以上20μm以下であることが好ましい。また、ベース絶縁層2における異方性貫通孔hの空孔率は、1%以上90%以下に設定される。ベース絶縁層2の異方性貫通孔hは、レーザ光またはドリル等を用いて形成されてもよい。
【0032】
図1に戻り、ベース絶縁層2は、第1絶縁部2a、第2絶縁部2b、第3絶縁部2cおよび第4絶縁部2dからなる。第1絶縁部2aおよび第2絶縁部2bは、それぞれ矩形形状を有し、互いに隣接するように一体的に形成される。以下、第1絶縁部2aと第2絶縁部2bとの境界線に平行な辺を側辺と称し、第1絶縁部2aおよび第2絶縁部2bの側辺に垂直な一対の辺を端辺と称する。
【0033】
第3絶縁部2cは、第1絶縁部2aの1つの角部における側辺の一部から外方へ延びるように形成される。第4絶縁部2dは、第1絶縁部2aの上記角部の対角に位置する第2絶縁部2bの角部における側辺の一部から外方へ延びるように形成される。
【0034】
第1絶縁部2aと第2絶縁部2bとの境界線上にベース絶縁層2をほぼ二等分するように折曲部B1が設けられる。後述のように、ベース絶縁層2は、折曲部B1に沿って折曲可能である。折曲部B1は、例えば線状の浅い溝であってもよく、または、線状の印等でもよい。あるいは、折曲部B1でベース絶縁層2を折曲可能であれば、折曲部B1に特に何もなくてもよい。ベース絶縁層2を折曲部B1に沿って折曲する場合、第1絶縁部2aと第2絶縁部2bとが対向する。この場合、第3絶縁部2cと第4絶縁部2dとは対向しない。
【0035】
ベース絶縁層2の一面に、図1(b)の接着剤パターン7を介して、矩形の集電部3a,3b,3c,3d,3e,3f,3g,3h,3i,3j、接続導体部3k,3l,3m,3nおよび引き出し導体部3o,3pが形成される。集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pは例えば銅からなる。
【0036】
接着剤パターン7としては、例えばエポキシ樹脂系の接着剤、フェノール樹脂系の接着剤、ポリエステル樹脂系の接着剤、アクリル樹脂系の接着剤またはポリイミド系の接着剤等の任意の接着剤が用いられる。本実施の形態において、接着剤パターン7には光酸発生剤が添加される。これにより、接着剤パターン7は感光性を有する。
【0037】
集電部3a〜3jの各々は長方形状を有する。集電部3a〜3eは、第1絶縁部2aの端辺に沿って平行に延びかつ第1絶縁部2aの側辺方向に沿って設けられる。同様に、集電部3f〜3jは、第2絶縁部2bの端辺に沿って平行に延びかつ第2絶縁部2bの側辺方向に沿って設けられる。この場合、集電部3a〜3eと集電部3f〜3jとは、折曲部B1を中心として対称な位置に配置される。
【0038】
接続導体部3k〜3nは、折曲部B1をまたぐように第1絶縁部2aおよび第2絶縁部2bにわたって形成される。接続導体部3kは集電部3bと集電部3fとを電気的に接続し、接続導体部3lは集電部3cと集電部3gとを電気的に接続し、接続導体部3mは集電部3dと集電部3hとを電気的に接続し、接続導体部3nは集電部3eと集電部3iとを電気的に接続する。
【0039】
集電部3a〜3eの各々には、端辺方向に沿って複数(本例では4個)の開口H11が形成される。また、集電部3f〜3jの各々には、端辺方向に沿って複数(本例では4個)の開口H12が形成される。
【0040】
引き出し導体部3oは、集電部3aの外側の短辺から第3絶縁部2c上に直線状に延びるように形成される。引き出し導体部3pは、集電部3jの外側の短辺から第4絶縁部2d上に直線状に延びるように形成される。
【0041】
集電部3aおよび引き出し導体部3oの一部を覆うように、第1絶縁部2a上に被覆層6aが形成される。これにより、引き出し導体部3oの先端部は被覆層6aに覆われずに露出する。この露出した引き出し導体部3oの部分を、引き出し電極5aと称する。また、集電部3b〜3eをそれぞれ覆うように、第1絶縁部2a上に被覆層6b,6c,6d,6eが形成される。集電部3a〜3eの開口H11内において、被覆層6a〜6eは第1絶縁部2aの上面に接する。
【0042】
集電部3jおよび引き出し導体部3pの一部を覆うように、第2絶縁部2b上に被覆層6jが形成される。これにより、引き出し導体部3pの先端部は被覆層6jに覆われずに露出する。この露出した引き出し導体部3pの部分を、引き出し電極5bと称する。また、集電部3f〜3iをそれぞれ覆うように、第2絶縁部2b上に被覆層6f,6g,6h,6iが形成される。集電部3f〜3jの開口H12内において、被覆層6f〜6jは第2絶縁部2bの上面に接する。
【0043】
接続導体部3k〜3nをそれぞれ覆うように、第1絶縁部2a上および第2絶縁部2b上に被覆層6k,6l,6m,6nが形成される。被覆層6a〜6nは、導電材料を含有した樹脂組成物からなる。
【0044】
樹脂組成物として、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂もしくはアクリル樹脂、またはこれらの樹脂を2種類以上混合した樹脂を用いることができる。
【0045】
一方、導電材料として、例えばカーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、炭素繊維もしくは黒鉛等の炭素材料、銀、金(Au)もしくはナノ銀粒子等の金属粒子、またはポリチオフェンもしくはポリアニリン等の導電性高分子材料を用いることができ、またはこれらの材料を2種類以上混合した材料を用いることができる。導電材料の添加量は樹脂中に分散できる量であればよい。例えば、樹脂組成物100重量部に対して添加される導電材料は、1重量部以上90重量部以下であることが好ましく、10重量部以上70重量部以下であることがより好ましく、40重量部以上70重量部以下であることがさらに好ましい。
【0046】
(2)FPC基板の製造方法
次に、図1に示したFPC基板1の製造方法を説明する。図3、図4および図5は、FPC基板1の製造方法を説明するための工程断面図であり、各断面図は図1のA−A線における断面図に相当する。
【0047】
まず、図3(a)に示すように、キャリア層8と導体層30とからなる二層基材を用意する。キャリア層8としては、粘着剤層を有するPET等の樹脂または粘着剤層を有するステンレス等の金属薄膜を用いることができる。また、導体層30は例えば銅からなる。導体層30は、銀、金、チタン、白金またはそれら合金であってもよい。キャリア層8と導体層30とは、ラミネータにより貼り付けられていてもよいし、プレス機により圧着されていてもよい。キャリア層8と導体層30との圧着は、加温された状態または真空の状態で行われてもよい。または、キャリア層8および導体層30に代えて、例えば銅とPETとからなる2層CCL(Copper Clad Laminate:銅張積層板)が用いられてもよい。
【0048】
次に、図3(b)に示すように、任意の温度および圧力で導体層30上に例えば、感光性ドライフィルムレジスト等によりレジスト膜22を形成する。図3(c)に示すように、レジスト膜22を所定のパターンで露光した後、現像することによりエッチングレジストパターン22aを形成する。
【0049】
次に、図3(d)に示すように、塩化第二鉄を用いてエッチングレジストパターン22aから露出する導体層30の領域をエッチングにより除去する。続いて、図4(a)に示すように、エッチングレジストパターン22aを剥離液により除去する。これにより、キャリア層8上に集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3p(図1(a)参照)が形成される。また、集電部3a〜3eには複数の開口H11が形成され、集電部3f〜3jには複数の開口H12が形成される。
【0050】
スパッタリングまたは蒸着等の他の方法によりキャリア層8上に集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pを形成してもよい。また、ステンレス鋼からなるキャリア層8を用い、めっきによりキャリア層8上に集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pを形成してもよい。さらに、レーザ光または金型を用いて導体層30を集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pのパターンに打ち抜き、接着剤等を用いて打ち抜いたパターンをキャリア層8に接合してもよい。
【0051】
続いて、図4(b)に示すように、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pの上面(キャリア層8と接しない面)を含む全面に接着剤層前駆体7pを塗布する。次に、図4(c)に示すように、所定のマスクパターンを介して接着剤層前駆体7pを露光した後、現像することにより、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3p上に、所定のパターンを有する接着剤パターン7を形成する。
【0052】
ここで、接着剤層前駆体7pがネガ型の感光性を有する場合、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pの反転形状を有するマスクパターンを介して接着剤層前駆体7pを露光する。接着剤層前駆体7pがポジ型の感光性を有する場合、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pと同一形状を有するマスクパターンを介して接着剤層前駆体7pを露光する。
【0053】
また、接着剤層前駆体7pがポジ型の感光性を有する場合、接着剤層前駆体7pの下面(集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pと接する面)側から露光を行ってもよい。この場合、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pをマスクパターンとして用いることができるので、別途マスクパターンを用いなくてよい。これにより、FPC基板1の製造工程および製造コストを削減することができる。なお、PETからなるキャリア層8は露光光を透過するため、接着剤層前駆体7pの下面(集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pと接する面)側からの露光の妨げとならない。
【0054】
集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3p上を除く部分に塗布された接着剤層前駆体7pの部分を、薬液、レーザ光またはプラズマ処理により除去してもよい。この場合、接着剤層前駆体7pの露光時にマスクパターンを用いなくてよい。同様に、スクリーン印刷またはペーストディスペンサにより、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3p上のみに接着剤層前駆体7pを塗布してもよい。この場合も、接着剤層前駆体7pの露光時にマスクパターンを用いなくてよい。
【0055】
次に、図4(d)に示すように、接着剤パターン7を介してラミネータまたはプレス機により集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3p上に図2の異方性貫通孔hを有するベース絶縁層2を接合する。集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pとベース絶縁層2との接合は、加温された状態または真空の状態で行われてもよい。また、接合後、任意の温度、圧力および真空度で接着剤層7が硬化されてもよい。
【0056】
次に、図5(a)に示すように、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pからキャリア層8を剥離する。続いて、図5(b)に示すように、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pを覆うように、ベース絶縁層2上に塗布またはラミネートにより被覆層6a〜6n(図1(a)参照)を形成する。ここで、引き出し電極5a,5b(図1(a)参照)が被覆層6a,6jから露出する。なお、図5(b)および図5(c)の断面図は、図5(a)の断面図とは上下を逆にして示している。
【0057】
最後に、図5(c)に示すように、ベース絶縁層2を所定の形状に切断することにより、ベース絶縁層2、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3n、引き出し導体部3o,3pおよび被覆層6a〜6nを備えるFPC基板1が完成する。
【0058】
ベース絶縁層2の厚みは、5μm以上500μm以下であることが好ましい。ベース絶縁層2の厚みが5μm以上である場合、ベース絶縁層2の耐久性が向上する。また、ベース絶縁層2の厚みが500μm以下である場合、ベース絶縁層2のフレキシブル性および取り扱い性が向上する。
【0059】
集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pの厚みは1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上70μm以下であることがより好ましく、10μm以上50μm以下であることがさらに好ましい。厚みが1μm以上である場合、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nならびに引き出し導体部3o,3pの耐久性および抵抗等の電気特性が向上する。また、厚みが100μm以下である場合、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nならびに引き出し導体部3o,3pのフレキシブル性および取り扱い性が向上する。
【0060】
被覆層6a〜6nの厚みは1μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましく、15μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。厚みが1μm以上である場合、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pが被覆層6a〜6nから露出することが十分に防止される。また、腐食を防止するために集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pにバリア層を形成する場合でも、バリア層が集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pから脱落することを十分に防止することができる。また、厚みが100μm以下である場合、被覆層6a〜6nのフレキシブル性および取り扱い性が向上する。
【0061】
図3〜図5では、サブトラクティブ法によるFPC基板1の製造方法を示したが、これに限定されず、セミアディティブ法等の他の製造方法を用いてもよい。
【0062】
(3)FPC基板を用いた燃料電池
図6は、FPC基板1を用いた燃料電池100の外観斜視図である。図7は、燃料電池100内における作用を説明するための図であり、図6の燃料電池100のB−B線から見た断面図である。
【0063】
図6および図7に示すように、燃料電池100は直方体状のケーシング40を有する。図6では、ケーシング40を破線により示している。ケーシング40は、上面部41、下面部42、一方の側面部43および他方の側面部44を有する。図7には、残りの一対の側面部は図示されない。
【0064】
FPC基板1は、被覆層6a〜6nが形成された一面を内側にして図1の折曲部B1に沿って折曲された状態でケーシング40の上面部41および下面部42により狭持される。
【0065】
FPC基板1の引き出し電極5a,5bは、ケーシング40の一方の側面部43から外側に引き出される。引き出し電極5a,5bには、種々の外部回路の端子が電気的に接続される。
【0066】
ケーシング40内において、複数(本実施の形態では5個)の電極膜35が、折曲されたFPC基板1の被覆層6aと被覆層6fとの間、被覆層6bと被覆層6gとの間、被覆層6cと被覆層6hとの間、被覆層6dと被覆層6iとの間、および被覆層6eと被覆層6jとの間にそれぞれ配置される(図1(a)参照)。これにより、複数の電極膜35が直列接続される。
【0067】
各電極膜35は空気極35a、燃料極35bおよび電解質膜35cからなる。空気極35aは電解質膜35cの一面に形成され、燃料極35bは電解質膜35cの他面に形成される。複数の電極膜35の空気極35aはFPC基板1の被覆層6f〜6jにそれぞれ対向し、複数の電極膜35の燃料極35bはFPC基板1の被覆層6a〜6eにそれぞれ対向する。
【0068】
ケーシング40内の上面部41上には、集電部3f〜3jの複数の開口H12に対応するように複数の開口H41が形成される。電極膜35の空気極35aには、ケーシング40の複数の開口H41、ベース絶縁層2の異方性貫通孔h(図2参照)および集電部3f〜3jの複数の開口H12を通して空気が供給される。
【0069】
ケーシング40の下面部42には、ベース絶縁層2の第1絶縁部2a(図1(a)参照)に接するように燃料収容室50が設けられる。燃料収容室50には、燃料供給管51の一端が接続される。燃料供給管51の他端は、ケーシング40の他方の側面部44を通って外部の図示しない燃料供給部に接続される。燃料供給部から燃料供給管51を通して燃料収容室50内に燃料が供給される。各電極膜35の燃料極35bには、ベース絶縁層2の異方性貫通孔h(図2参照)および集電部3a〜3eの複数の開口H11を通して燃料が供給される。なお、本実施の形態では、燃料としてメタノールを用いる。
【0070】
上記の構成においては、複数の燃料極35bにおいて、メタノールが水素イオンと二酸化炭素とに分解され、電子が生成される。生成された電子は、FPC基板1の集電部3a(図1参照)から引き出し電極5aに導かれる。メタノールから分解された水素イオンは、電解質膜35cを透過して空気極35aに達する。複数の空気極35aにおいて、引き出し電極5bから集電部3jに導かれた電子を消費しつつ水素イオンと酸素とが反応し、水が生成される。このようにして、引き出し電極5a,5bに接続された外部回路に電力が供給される。
【0071】
(4)効果
本実施の形態において、ベース絶縁層2は、燃料電池100の燃料供給量調整膜として用いられる。メタノール等の燃料電池100の燃料が、FPC基板1のベース絶縁層2の異方性貫通孔hおよび集電部3a〜3eの複数の開口H11を通して電極膜35の燃料極35bに供給される。異方性貫通孔hはベース絶縁層2の一面から他面に分岐することなく連通しているため、ベース絶縁層2の側面にメタノールが染み出すことが防止される。これにより、燃料の損失を低減することが可能になる。
【0072】
また、ベース絶縁層2の異方性貫通孔hの形成時に異方性貫通孔hの孔径および空孔率を任意に設定することができる。そのため、ベース絶縁層2の異方性貫通孔hの孔径および空孔率を適切に設定することにより、燃料極35bへのメタノールの供給量を適切に調整することができる。
【0073】
上記のように、ベース絶縁層2の異方性貫通孔hの孔径は0.01μm以上に設定される。これにより、異方性貫通孔hを通して電極膜35の燃料極35bに燃料を十分に供給することができる。その結果、燃料電池100の出力を増加させることができる。
【0074】
また、異方性貫通孔hの孔径は100μm以下に設定される。これにより、異方性貫通孔hを通して電極膜35の燃料極35bに燃料が過剰に供給されることを防止することができる。過剰な燃料が電極膜35の燃料極35bに供給されると、その燃料は電解質膜35cを通過して空気極35aまで浸透する。この現象をクロスオーバと呼ぶ。燃料のクロスオーバを抑制することにより、燃料の損失の発生を防止するとともに、燃料電池100の出力を増加させることができる。
【0075】
上記のように、ベース絶縁層2の異方性貫通孔hの空孔率は1%以上に設定される。これにより、異方性貫通孔hを通して電極膜35の燃料極35bに燃料を十分に供給することができる。また、異方性貫通孔hの空孔率は90%以下に設定される。これにより、燃料のクロスオーバを抑制することができる。
【0076】
[2]第2の実施の形態
第2の実施の形態に係る燃料電池100について、第1の実施の形態に係る燃料電池100と異なる点を説明する。図8は、第2の実施の形態に係る燃料電池100の断面図である。なお、図8は、図6の燃料電池100のB−B線から見た断面図に相当する。
【0077】
図8に示すように、本実施の形態に燃料電池100は、FPC基板1が図1のベース絶縁層2に代えてベース絶縁層2Aを有する点および2つの燃料供給量調整膜2Bをさらに有する点を除いて、図7の燃料電池100と同様の構成を有する。
【0078】
燃料供給量調整膜2Bは、図2のベース絶縁層2と同様に、図2の異方性貫通孔hを有する。燃料供給量調整膜2Bの異方性貫通孔hの形成方法、異方性貫通孔hの孔径、燃料供給量調整膜2Bにおける異方性貫通孔hの空孔率および燃料供給量調整膜2Bの厚みは、図2のベース絶縁層2と同様である。
【0079】
ベース絶縁層2Aは、異方性貫通孔hを有さない点ならびに集電部3a〜3eの複数の開口H11に対応する複数の開口H1を有する点および集電部3f〜3jの複数の開口H12に対応する複数の開口H2を有する点を除いて、図1のベース絶縁層2と同様の構成を有する。
【0080】
図7の燃料電池100と同様に、本実施の形態に係る燃料電池100は、直方体状のケーシング40を有する。FPC基板1は、被覆層6a〜6nが形成された一面を内側にして図1の折曲部B1に沿って折曲された状態でケーシング40の上面部41および下面部42により狭持される。ここで、一方の燃料供給量調整膜2Bが、FPC基板1のベース絶縁層2Aとケーシング40の下面部42の燃料収容室50との間に配置される。また、他方の燃料供給量調整膜2Bが、FPC基板1のベース絶縁層2Aとケーシング40の上面部41との間に配置される。
【0081】
本実施の形態において、メタノール等の燃料電池100の燃料が、燃料供給量調整膜2Bの異方性貫通孔h、ベース絶縁層2Aの開口H1および集電部3a〜3eの開口H11を通して電極膜35の燃料極35bに供給される。異方性貫通孔hは燃料供給量調整膜2Bの一面から他面に分岐することなく連通しているため、燃料供給量調整膜2Bの側面にメタノールが染み出すことが防止される。これにより、燃料の損失を低減することが可能になる。
【0082】
また、燃料供給量調整膜2Bの異方性貫通孔hの形成時に異方性貫通孔hの孔径および空孔率を任意に設定することができる。そのため、燃料供給量調整膜2Bの異方性貫通孔hの孔径および空孔率を適切に設定することにより、燃料極35bへのメタノールの供給量を適切に調整することができる。
【0083】
上記のように、燃料供給量調整膜2Bの異方性貫通孔hの孔径は0.01μm以上に設定される。これにより、異方性貫通孔hを通して電極膜35の燃料極35bに燃料を十分に供給することができる。その結果、燃料電池100の出力を増加させることができる。
【0084】
また、異方性貫通孔hの孔径は100μm以下に設定される。これにより、異方性貫通孔hを通して電極膜35の燃料極35bに燃料が過剰に供給されることを防止することができる。その結果、燃料の損失の発生を防止するとともに、燃料電池100の出力を増加させることができる。
【0085】
上記のように、燃料供給量調整膜2Bの異方性貫通孔hの空孔率は1%以上に設定される。これにより、異方性貫通孔hを通して電極膜35の燃料極35bに燃料を十分に供給することができる。また、異方性貫通孔hの空孔率は90%以下に設定される。これにより、燃料のクロスオーバを抑制することができる。
【0086】
図9および図10は、第2の実施の形態におけるFPC基板1の製造方法を説明するための工程断面図であり、各断面図は図1のA−A線における断面図に相当する。
【0087】
まず、図9(a)に示すように、絶縁層20と導体層30とからなる2層CCLを用意する。絶縁層20は例えばPETからなり、導体層30は例えば銅からなる。次に、図9(b)に示すように、所定の温度および圧力で導体層30上に例えば、感光性ドライフィルムレジスト等によりレジスト膜22を形成する。図9(c)に示すように、レジスト膜22を所定のパターンで露光した後、現像することによりエッチングレジストパターン22aを形成する。
【0088】
次に、図9(d)に示すように、塩化第二鉄を用いてエッチングレジストパターン22aから露出する導体層30の領域をエッチングにより除去する。続いて、図10(a)に示すように、エッチングレジストパターン22aを剥離液により除去する。これにより、絶縁層20上に集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3p(図1(a)参照)が形成される。また、集電部3a〜3eには複数の開口H11が形成され、集電部3f〜3jには複数の開口H12が形成される。
【0089】
続いて、図10(b)に示すように、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pを覆うように絶縁層20上に塗布またはラミネートにより被覆膜60を形成する。その後、図10(c)に示すように、被覆膜60を所定のパターンで露光し、その後、現像することにより、被覆層6a〜6n(図1(a)参照)を形成する。ここで、引き出し電極5a,5b(図1(a)参照)が被覆層6a,6jから露出する。
【0090】
そして、図10(d)に示すように、絶縁層20に集電部3a〜3eの複数の開口H11に対応する複数の開口H1および集電部3f〜3jの複数の開口H12に対応する複数の開口H2を形成し、絶縁層20を所定の形状に切断する。これにより、ベース絶縁層2A、集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3n、引き出し導体部3o,3pおよび被覆層6a〜6nを備えるFPC基板1が完成する。
【0091】
本実施の形態におけるFPC基板1の製造時には、ベース絶縁層2Aに複数の異方性貫通孔hを形成する工程が不要となる。したがって、ベース絶縁層2Aの材料として、例えば銅とPETとからなる2層CCLを用いることができる。この場合、ベース絶縁層2Aと集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3p(図1参照)との間に接着剤層7(図7参照)を形成する工程が不要となる。したがって、FPC基板1とは別体の燃料供給量調整膜2Bを用いることにより、FPC基板1の製造が容易になる。
【0092】
[3]他の実施の形態
(1)第1の実施の形態において、FPC基板1のベース絶縁層2の全体に異方性貫通孔hが形成されるが、これに限定されない。燃料電池100の燃料収容室50と接するベース絶縁層2の部分(上記実施の形態においては、ベース絶縁層2の第1絶縁部2a)にのみ異方性貫通孔hが形成されていてもよい。
【0093】
(2)第2の実施の形態において、FPC基板1のベース絶縁層2Aとケーシング40の下面部42の燃料収容室50との間およびFPC基板1のベース絶縁層2Aとケーシング40の上面部41との間にそれぞれ燃料供給量調整膜2Bが配置されるが、これに限定されない。FPC基板1のベース絶縁層2Aとケーシング40の上面部41との間には燃料供給量調整膜2Bが配置されなくてもよい。
【0094】
(3)第1および第2の実施の形態において、FPC基板1は5対の集電部(集電部3a,3f、集電部3b,3g、集電部3c,3h、集電部3d,3iおよび集電部3e,3j)を有するが、これに限定されない。FPC基板1の集電部の数は2対以上であれば、4対以下であってもよいし、6対以上であってもよい。これにより、任意の数の電極膜35を直列接続することができる。
【0095】
また、FPC基板1が1対の集電部を有してもよい。この場合、接続導体部3k〜3nは設けられない。
【0096】
(4)燃料供給量調整膜は、異方性貫通孔のみを有することが好ましいが、燃料供給量調整膜が異方性貫通孔とともに異方性貫通孔とは異なる孔を有してもよい。例えば、燃料供給量調整膜が後述する等方性貫通孔を含んでもよい。この場合も、等方性貫通孔が燃料供給量調整膜の側面に開口しないことが好ましい。
【0097】
[4]実施例
(1)実施例および比較例
実施例1,2および比較例1では、以下の燃料供給量調整膜2Bを作製した。また、実施例3〜6および比較例2,3では、以下のFPC基板1を作製した。
【0098】
実施例1においては、異方性貫通孔hを有するPETフィルム(ion track technology for innovative products製)を用いて燃料供給量調整膜2Bを作製した。燃料供給量調整膜2Bの厚みは15μmであり、異方性貫通孔hの孔径は8μmである。
【0099】
実施例2においては、異方性貫通孔hを有するPIフィルム(ion track technology for innovative products製)を用いて燃料供給量調整膜2Bを作製した。燃料供給量調整膜2Bの厚みは17μmであり、異方性貫通孔hの孔径は8μmである。
【0100】
実施例3においては、第1の実施の形態と同様の方法により以下のFPC基板を作製した。まず、図3(a)に示す工程で、キャリア層8と導体層30とからなる二層基材を用意した。キャリア層8は粘着剤付きPETからなり、導体層30は銅箔からなる。次に、図3(b)に示す工程で、感光性のレジスト膜22をラミネータにより導体層30上に貼り合わせた。その後、図3(c)に示す工程で、露光および現像によりエッチングレジストパターン22aを形成した。
【0101】
次に、図3(d)に示す工程で、塩化第二鉄を用いて導体層30をエッチングすることにより導体層30を所定のパターンに形成した。続いて、図4(a)に示す工程で、エッチングレジストパターン22aを剥離液により除去した。その後、図4(b)に示す工程で、導体層30上にエポキシ系の接着剤層前駆体7pを塗布し、温度90℃で10分間乾燥させることにより接着剤層7を形成した。
【0102】
その後、異方性貫通孔hを有するPETフィルム(ion track technology for innovative products製)からなるベース絶縁層2に導体層30上の接着剤層7を温度120℃および圧力5MPaの条件で30分間接合し、温度120℃で120分間の硬化処理を行った。最後に、導体層30を覆うようにベース絶縁層2にカーボンインクからなる被覆膜60を印刷機により塗布し、温度110℃で60分間乾燥および硬化させた。このようにしてFPC基板1を作製した。ベース絶縁層2の厚みは15μm、異方性貫通孔hの孔径は8μmである。
【0103】
実施例4においては、ベース絶縁層2の厚みが17μmである点、および異方性貫通孔hの孔径が5μmである点を除いて、実施例3と同様の方法でFPC基板1を作製した。
【0104】
実施例5においては、ベース絶縁層2の厚みが15μmである点、および異方性貫通孔hの孔径が12μmである点を除いて、実施例3と同様の方法でFPC基板1を作製した。
【0105】
実施例6においては、異方性貫通孔hを有するPETからなるベース絶縁層2に代えて異方性貫通孔hを有するPIからなるベース絶縁層2を用いた点を除いて、実施例3と同様の方法でFPC基板1を作製した。ベース絶縁層2の厚みは17μmであり、異方性貫通孔hの孔径は3μmである。
【0106】
比較例1においては、等方性貫通孔を有するウレタンフォームを用いて燃料供給量調整膜2Bを作製した。燃料供給量調整膜2Bの厚みは15μmであり、等方性貫通孔の孔径は8μmである。等方性貫通孔は、ランダムな方向に延び、ランダムな方向に分岐している。
【0107】
比較例2においては、異方性貫通孔hを有するPETからなるベース絶縁層2に代えて等方性貫通孔を有する不織布からなるベース絶縁層2を用いた点を除いて、実施例3と同様の方法でFPC基板1を作製した。ベース絶縁層2の厚みは15μmであり、等方性貫通孔の孔径は8μmである。
【0108】
比較例3においては、異方性貫通孔hを有するPETからなるベース絶縁層2に代えて等方性貫通孔を有するウレタンフォームからなるベース絶縁層2を用いた点を除いて、実施例3と同様の方法でFPC基板1を作製した。ベース絶縁層2の厚みは15μmであり、等方性貫通孔の孔径は8μmである。
【0109】
(2)薬液の浸透試験
一定量の薬液を実施例1,2および比較例1の燃料供給量調整膜2Bならびに実施例3〜6および比較例2,3のFPC基板1のベース絶縁層2に滴下し、燃料供給量調整膜2Bおよびベース絶縁層2の側面からの薬液の染み出しを目視により観察した。ここで、薬液として、濃度100%のメタノール、濃度50%のメタノール水溶液および濃度10%のメタノール水溶液を用いた。燃料供給量調整膜2Bおよびベース絶縁層2の薬液の浸透試験の結果を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
実施例1〜6および比較例1〜3の結果から、異方性貫通孔hを有する燃料供給量調整膜2Bおよびベース絶縁層2の側面からは、薬液の染み出しが生じないことが確認された。
【0112】
[5]請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0113】
上記実施の形態においては、燃料電池100が燃料電池の例であり、ベース絶縁層2または燃料供給量調整膜2Bが絶縁層および燃料供給量調整膜の例であり、異方性貫通孔hが異方性貫通孔の例である。集電部3a〜3j、接続導体部3k〜3nおよび引き出し導体部3o,3pが導体層の例であり、被覆層6a〜6nが被覆層の例である。第1の実施の形態に係るFPC基板1が配線回路基板の例であり、第2の実施の形態に係るFPC基板1が電極の例である。電極膜35が電池要素の例であり、燃料極35bが燃料極の例であり、ケーシング40が筺体の例である。
【0114】
請求項の各構成要素として、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、種々の燃料供給量調整膜に有効に利用できる。
【符号の説明】
【0116】
1 FPC基板
2,2A ベース絶縁層
2B 燃料供給量調整膜
2a 第1絶縁部
2b 第2絶縁部
2c 第3絶縁部
2d 第4絶縁部
3a〜3j 集電部
3k〜3n 接続導体部
3o,3p 引き出し導体部
5a,5b 引き出し電極
6a〜6n 被覆層
7 接着剤層
7p 接着剤層前駆体
8 キャリア層
20 絶縁層
22 レジスト膜
22a エッチングレジスト
30 導体層
35 電極膜
35a 空気極
35b 燃料極
35c 電解質膜
40 ケーシング
41 上面部
42 下面部
43,44 側面部
50 燃料収容室
60 被覆膜
100 燃料電池
B1 折曲部
H1,H2,H11,H12,H41,h1 開口
h 異方性貫通孔
h2 連通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に用いられる燃料供給量調整膜であって、
複数の異方性貫通孔を有する絶縁層からなることを特徴とする燃料供給量調整膜。
【請求項2】
前記複数の異方性貫通孔の各々の孔径が0.01μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項1記載の燃料供給量調整膜。
【請求項3】
前記絶縁層における前記複数の異方性貫通孔の空孔率が1%以上90%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の燃料供給量調整膜。
【請求項4】
前記絶縁層の厚みが5μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の燃料供給量調整膜。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の燃料供給量調整膜と、
前記燃料供給量調整膜上に設けられる所定のパターンを有する導体層とを備えることを特徴とする配線回路基板。
【請求項6】
前記導体層の少なくとも一部を覆うように前記燃料供給量調整膜に形成される被覆層をさらに備えることを特徴とする請求項5記載の配線回路基板。
【請求項7】
電池要素と、
前記電池要素の電極として配置される請求項5または6記載の配線回路基板と、
前記電池要素および前記配線回路基板を収容する筺体とを備えることを特徴とする燃料電池。
【請求項8】
燃料極を有する電池要素と、
前記電池要素の前記燃料極に接触する電極と、
前記電極を介して前記電池要素の前記燃料極に対向するように配置される請求項1〜4のいずれかに記載の燃料供給量調整膜と、
前記電池要素、前記電極および前記燃料供給量調整膜を収容する筺体とを備えることを特徴とする燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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