燃料噴射制御用圧電素子の駆動制御装置
【目的】素子温度が上昇して圧電素子変位の応答時間が長くなってもその変位遅れを補償し、パイロット噴射を所定のタイミングで実行し、燃料噴射時期及び燃料噴射量の制御の精度向上を図る。
【構成】燃料噴射ポンプ1には圧電素子としてピエゾ素子30が取付けられ、同ピエゾ素子30は充放電により伸縮動作して高圧室15内の燃料圧力を調整し、燃料噴射ノズル4にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射を行わせる。また、ピエゾスピル弁23には前記ピエゾ素子30の温度を検出する熱電対77が取付けられている。CPUは、ディーゼルエンジン2の所定のクランク角を基準とした所定タイミングでのパイロット噴射を行うべく前記ピエゾ素子30の充放電タイミングを算出する。さらに、CPUは前記熱電対77により検出された温度が上昇するに従い、前記ピエゾ素子30の充放電タイミングを早める。
【構成】燃料噴射ポンプ1には圧電素子としてピエゾ素子30が取付けられ、同ピエゾ素子30は充放電により伸縮動作して高圧室15内の燃料圧力を調整し、燃料噴射ノズル4にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射を行わせる。また、ピエゾスピル弁23には前記ピエゾ素子30の温度を検出する熱電対77が取付けられている。CPUは、ディーゼルエンジン2の所定のクランク角を基準とした所定タイミングでのパイロット噴射を行うべく前記ピエゾ素子30の充放電タイミングを算出する。さらに、CPUは前記熱電対77により検出された温度が上昇するに従い、前記ピエゾ素子30の充放電タイミングを早める。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高圧燃料を燃料噴射弁に供給するための燃料噴射ポンプに設けられる燃料噴射制御用圧電素子の駆動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、圧縮着火を行うディーゼルエンジンの低速運転時や低負荷運転時においては、燃焼室に噴射された燃料が着火遅れにより爆発的に燃焼して、燃焼騒音や排気ガス中の窒素酸化物(NOX )が増大することがある。これに対しては、燃料の主噴射に先立ってパイロット噴射を行うことが有効とされている。このパイロット噴射は、その時々の噴射期間に噴射される全燃料噴射量のうちの一部を主噴射に先立って予備的に噴射させ、そのパイロット噴射による燃料を着火させて燃焼室内の温度を充分に高め、その後に続く主噴射の燃料着火を効果的に行わせるものである。
【0003】前記パイロット噴射を行うために、燃料噴射ポンプ内の高圧室と燃料室とがスピル通路にて連通され、そのスピル通路の途中にスピル弁が配設される。そして、プランジャの圧縮行程中にそのスピル弁が開閉制御されることにより、前記スピル通路を通って低圧側へ溢流する燃料量が調整されて、パイロット噴射とそれに続く主噴射が実行される。このスピル弁としては、近年圧電素子を用いたものが採用されている。すなわち、圧電素子は電荷が供給(充電)されると伸張し、電荷が放出(放電)されると収縮する性質を有するものであり、前記スピル弁ではこの圧電素子の伸縮動作により弁体を駆動してスピル通路を開閉するようにしている。
【0004】ところが、前記圧電素子は一般に温度が低くなるに従い静電容量が低下し、これにともない受容し得る電荷量が減少し、伸び量が減少してしまう。このため、前記のように温度が低くなると、良好な燃料噴射制御が行うことができなくなる。
【0005】そこで、このような問題に対処するものとして特開平1−187345号公報には、圧電素子の温度を温度センサで検出し、その検出された温度が低くなるに従い、圧電素子に印加する電圧を高くするようにした技術が開示されている。この技術によると、圧電素子に充電される電荷量を一定に保ち、一定の伸び量を得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来技術では圧電素子の温度が上昇した場合には、静電容量が増加するために、電荷量一定のもとではその静電容量の増加に応じて印加電圧が低下する。そして、この印加電圧の低下により充電時間が長くなり、圧電素子が所定の伸張量に達するのに要する時間が長くなる。その結果、圧電素子の変位遅れが生じ、パイロット噴射の開始タイミング及び終了タイミングが遅れてしまい、燃料噴射時期及び燃料噴射量の制御の精度が低下する。
【0007】本発明は前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、素子温度が上昇して圧電素子変位の応答時間が長くなってもその変位遅れを補償することが可能であり、パイロット噴射を所定のタイミングで実行し、燃料噴射時期及び燃料噴射量の制御の精度を向上できる燃料噴射制御用圧電素子の駆動制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は図1に示すように、ディーゼルエンジンM1の回転に基づくプランジャM2の往復動により高圧室M3内へ燃料を吸入及び加圧し、その高圧室M3で加圧された高圧燃料を燃料噴射弁M4に供給する燃料噴射ポンプM5に設けられるものであって、充放電により伸縮動作して前記高圧室M3内の燃料の圧力を調整し、前記燃料噴射弁M4にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射を行わせる燃料噴射制御用圧電素子M6と、前記ディーゼルエンジンM1の所定のクランク角を基準とした所定タイミングでのパイロット噴射を行うべく前記圧電素子M6の充放電タイミングを算出する基本タイミング算出手段M7と、前記圧電素子M6の温度を検出する素子温度検出センサM8と、前記素子温度検出センサM8により検出された温度が上昇するに従い、前記基本タイミング算出手段M7による圧電素子M6の充放電タイミングを早めるタイミング補正手段M9とを備えている。
【0009】
【作用】燃料噴射ポンプM5の作動時には、ディーゼルエンジンM1の回転に基づきプランジャM2が往復動し、その往復動により高圧室M3内へ燃料が吸入及び加圧される。そして、高圧室M3で加圧された高圧燃料は燃料噴射弁M4に供給される。この際、燃料噴射制御用圧電素子M6が充放電されて伸縮動作すると、前記高圧室M3内の燃料の圧力が調整され、前記燃料噴射弁M4にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射が行われる。
【0010】前記主噴射及びパイロット噴射の実行に際し基本タイミング算出手段M7は、前記ディーゼルエンジンM1の所定のクランク角を基準とした所定タイミングでパイロット噴射を行うために、前記圧電素子M6の充放電タイミングを算出する。このときの充放電タイミングは、前記圧電素子M6の温度に応じて補正される。すなわち、前記圧電素子M6の温度は素子温度検出センサM8によって検出され、この素子温度が上昇するに従い、タイミング補正手段M9は前記基本タイミング算出手段M7による圧電素子M6の充放電タイミングを早める。
【0011】従って、前記素子温度が上昇すると、圧電素子M6が所定の伸張量に達するまでに要する時間(圧電素子M6の応答時間)が増加するものの、その増加分は、前記のように充放電タイミングが早められることによって補償される。
【0012】
【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例を図面に基いて詳細に説明する。図2は、本実施例の燃料噴射制御用圧電素子の駆動制御装置が設けられた分配型燃料噴射ポンプ1と、その燃料噴射ポンプ1により燃料が供給される過給機付ディーゼルエンジン2の概略構成を示す図であり、図3は前記燃料噴射ポンプ1を拡大して示す図である。この燃料噴射ポンプ1は、ディーゼルエンジン2のクランク軸44にベルト等を介して駆動連結されたドライブプーリ3を備えている。そして、ドライブプーリ3の回転によって燃料噴射ポンプ1が駆動され、ディーゼルエンジン2の気筒(この場合は4気筒)毎に設けられた燃料噴射弁としての燃料噴射ノズル4に燃料が圧送されて燃料噴射を行う。
【0013】ドライブプーリ3にはドライブシャフト5が連結され、そのドライブシャフト5には、べーン式ポンプよりなる燃料フィードポンプ(図では90度展開されている)6と、円板状のパルサ7とが取付けられている。パルサ7の外周面には、ディーゼルエンジン2の気筒数と同数の欠歯(この場合4個)が等角度間隔で形成され、さらに隣接する欠歯間には14個ずつ(合計で56個)の突起が等角度間隔で形成されている。そして、前記ドライブシャフト5の基端部(図の右端部)は、図示しないカップリングを介してカムプレート8に接続されている。パルサ7とカムプレート8との間にはローラリング9が設けられ、そのローラリング9にはカムプレート8のカムフェイス8aに対向する複数のカムローラ10が取付けられている。そして、カムプレート8はスプリング11によって常にカムローラ10に付勢係合されている。
【0014】カムプレート8には燃料加圧用プランジャ12が一体回転可能に取付けられており、前記ドライブシャフト5の回転力がカップリングを介してカムプレート8に伝達されることにより、同カムプレート8及びプランジャ12が回転しながら図中左右方向へ往復駆動される。プランジャ12はポンプハウジング13に形成されたシリンダ14に嵌挿されており、これらのプランジャ12の先端面(図の右端面)とシリンダ14の内底面との間が高圧室15となっている。プランジャ12の先端側外周には、ディーゼルエンジン2の気筒数と同数の吸入溝16及び分配ポート17が形成されている。また、吸入溝16及び分配ポート17に対応して、ポンプハウジング13には吸入通路19及び分配通路18が形成されている。
【0015】そして、ドライブシャフト5の回転に基づき燃料フィードポンプ6が駆動されると、図示しない燃料タンクからの燃料が燃料供給ポート20を介して燃料室21内へ供給される。また、プランジャ12が図中左方向へ移動(復動)して高圧室15が減圧される吸入行程においては、吸入溝16の一つが吸入通路19と連通して、燃料室21から高圧室15へ燃料が導入される。一方、プランジャ12が図中右方向へ移動(往動)して高圧室15が加圧される圧縮行程においては、分配通路18から各気筒毎の燃料噴射ノズル4へ燃料が圧送されて噴射される。
【0016】前記ポンプハウジング13には、高圧室15と燃料室21とを連通させる燃料溢流用のスピル通路22が形成されている。スピル通路22の途中にはピエゾスピル弁23が設けられている。このピエゾスピル弁23は、前記高圧室15内の燃料の圧力を調整することにより、前記燃料噴射ノズル4にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射を行わせるためのものである。
【0017】ピエゾスピル弁23は上下動可能なバルブ24を備えており、このバルブ24は、弁座25に接触することにより同スピル通路22を閉塞(閉弁)し、同弁座25から離間することによりスピル通路22を開放(開弁)する。前記バルブ24を駆動してスピル通路22を開閉させるために、バルブ24の下側にはスプリング26の付勢力が作用し、同バルブ24の上側には燃料による圧力が作用するようになっている。すなわち、バルブ24の直下にはスプリング26が圧縮状態で配設されており、スピル通路22が開放されるようにスプリング26がバルブ24を常に上方へ付勢している。
【0018】また、バルブ24の上方には変圧室27が形成されており、この変圧室27内の燃料が小径の連通孔28を介し前記バルブ24を下方へ押圧している。前記変圧室27の容積を変えて、バルブ24上面に作用する燃料の押圧力を調整するために、その変圧室27の上側には、圧電素子としてのピエゾ素子30とピストン29とが配設され、同変圧室27の下側にスプリング31が配置されている。スプリング31はピストン29を常に上方へ付勢している。また、ピエゾ素子30は、PZT等からなる板状部材を複数枚積層した構造をなし、電圧が印加されて電荷が供給(充電)されると伸張してスプリング31の付勢力に抗しピストン29を下動させ、電荷が放出(放電)されると収縮してスプリング31の付勢力によるピストン29の上動を許容する。
【0019】さらに、前記変圧室27内の燃料がリークにより減少した場合においてもバルブ24の挙動を安定化させるために、変圧室27と高圧室15とがリセット通路32によって連通可能となっている。このリセット通路32の開閉は、プランジャ12の回転運動と往復運動とが所定のタイミングとなったときに行われる。このリセット通路32の開閉により、ピエゾ素子30が伸張する前に変圧室27に燃料が補充され、変圧室27内の初期圧力が一定にリセットされる。
【0020】ここで、前記ピエゾスピル弁23による燃料の噴射制御を図5〜図9に従って簡単に説明する。まず、図5はプランジャ12が同図の左方へ移動(復動)する燃料吸入行程を示しており、この状態ではプランジャ12の吸入溝16が吸入通路19と連通するとともに、分配ポート17が分配通路18から遮断されている。そして、ピエゾ素子30が収縮しバルブ24がスピル通路22を開放している。このため、燃料は吸入通路19から高圧室15内へ吸入され、さらにはリセット通路32を通って変圧室27に導かれる。
【0021】前記状態から、図6に示すようにプランジャ12が回転を伴って同図の右方へ移動(往動)すると、吸入通路19及びリセット通路32がともに遮断され、高圧室15内の燃料が加圧され始める。このときには、ピエゾ素子30はまだ収縮されたままであり、スピル通路22は開かれている。
【0022】図7に示すように、ピエゾ素子30に所定の電圧が印加されると、圧電効果によりピエゾ素子30が伸張する。これにより変圧室27内の燃料が加圧され、その燃料の押圧力がスプリング26の付勢力に打ち勝ってバルブ24を下動させ、スピル通路22を閉塞する。このとき、プランジャ12の往動で高圧室15が加圧されても、バルブ24の受圧面積差と変圧室27の圧力が高くなっていることで、バルブ24は閉弁し続ける。そして、図8に示すようにプランジャ12の分配ポート17が分配通路18と連通すると、燃料噴射ノズル4から燃料が噴射される(燃料噴射開始)。
【0023】所定の噴射量を得た時に、図9で示すようにピエゾ素子30の電荷が解除(ショート)されると、ピエゾ素子30は収縮し変圧室27の圧力が低下する。すると、スプリング26の付勢力によってバルブ24が上動し、スピル通路22が開放される。これにより、高圧室15内の高圧の燃料が燃料室21へ溢流され、噴射が終了する(燃料噴射終了)。
【0024】従って、ピエゾスピル弁23のピエゾ素子30に電圧を印加するタイミング、ピエゾ素子30の電荷を放出させるタイミングを調節することにより、パイロット噴射の開始時期及び終了時期、主噴射の開始時期及び終了時期を制御することが可能である。
【0025】図2に示すように、前記ポンプハウジング13の下側には、燃料噴射時期制御用のタイマ装置(図では90度展開されている)34が設けられている。タイマ装置34は、ドライブシャフト5の回転方向に対するローラリング9の位置を制御することにより、カムフェイス8aがカムローラ10に係合する時期、すなわちカムプレート8及びプランジャ12の往復動タイミングを制御するものである。
【0026】このタイマ装置34は油圧によって作動されるものであり、タイマハウジング35と、同タイマハウジング35内に嵌装されたタイマピストン36と、同じくタイマハウジング35内一側の低圧室37にてタイマピストン36を他側の加圧室38へ押圧付勢するタイマスプリング39等とから構成されている。そして、タイマピストン36はスライドピン40を介して前記ローラリング9に接続されている。
【0027】タイマハウジング35の加圧室38には、燃料フィードポンプ6により加圧された燃料が導入されるようになっている。そして、その燃料圧力とタイマスプリング39の付勢力との釣り合い関係によってタイマピストン36の位置が決定される。また、タイマピストン36の位置が決定されることによりローラリング9の位置が決定され、カムプレート8を介してプランジャ12の往復動タイミングが決定される。
【0028】タイマ装置34の燃料圧力を制御するために、加圧室38と低圧室37とを繋ぐ連通路42にはタイミングコントロールバルブ41が設けられている。タイミングコントロールバルブ41はデューティ制御された通電信号によって開閉制御される電磁弁であり、同タイミングコントロールバルブ41の開閉制御によって加圧室38内の燃料圧力が調整される。そして、その燃料圧力調整によってプランジャ12のリフトタイミングが制御され、各燃料噴射ノズル4からの燃料噴射時期が調整される。
【0029】なお、前記ローラリング9の上部には、電磁ピックアップコイルよりなる回転数センサ43が前記パルサ7の外周面に対向して取付けられている。この回転数センサ43はパルサ7の突起等が横切る際に、それらの通過を検出してエンジン回転数NEに相当するタイミング信号(エンジン回転パルス)を出力する。また、この回転数センサ43は前記ローラリング9と一体であるため、タイマ装置34の制御動作に関わりなく、プランジャリフトに対して一定のタイミングで基準となるタイミング信号を出力する。
【0030】次に、ディーゼルエンジン2について説明する。図2に示すように、このディーゼルエンジン2ではシリンダ45、ピストン46及びシリンダヘッド47によって各気筒毎に対応する主燃焼室48が形成されている。また、シリンダヘッド47には、同じく各気筒毎に対応して副燃焼室49が設けられており、これらの副燃焼室49は前記主燃焼室48に連通している。そして、各副燃焼室49に各燃料噴射ノズル4から噴射される燃料が供給される。なお、各副燃焼室49には、始動補助装置としての周知のグロープラグ50がそれぞれ取付けられている。
【0031】ディーゼルエンジン2の吸気管52にはターボチャージャ53のコンプレッサ54が配設され、排気管55にはターボチャージャ53のタービン56が配設されている。また、排気管55には過給圧を調節するウェイストゲートバルブ57が取付けられている。さらに、ディーゼルエンジン2には、排気管55内の排気の一部を吸気管52の吸入ポート58へ還流させるための還流管59が設けられている。還流管59の途中には排気の還流量を調節するEGRバルブ60が設けられ、このEGRバルブ60はバキュームスイッチングバルブ(VSV)61の制御によって開閉制御される。さらに、吸気管52の途中には、アクセルペダル62の踏込量に連動して開閉されるスロットルバルブ63が設けられている。また、そのスロットルバルブ63に平行してバイパス路64が形成され、その途中には、各種運転状態に応じアクチュエータ68によって開閉制御されるバイパス絞り弁65が設けられている。アクチュエータ68は、二つのVSV66,67の制御によって駆動される。
【0032】そして、上記ピエゾスピル弁23、タイミングコントロールバルブ41、グロープラグ50及び各VSV61,66,67は、電子制御装置(以下単に「ECU」という)71にそれぞれ電気的に接続され、同ECU71によってそれらの駆動タイミングが制御される。
【0033】前記ディーゼルエンジン2の運転状態を検出するセンサとしては、前記回転数センサ43に加えて以下のセンサが設けられている。すなわち、エアクリーナ69を介して吸気管52に吸い込まれる空気の吸気温度を検出する吸気温センサ72、スロットルバルブ63の開閉位置からディーゼルエンジン2の負荷に相当するアクセル開度を検出するアクセル開度センサ73、吸入ポート58内の吸入圧力を検出する吸気圧センサ74、ディーゼルエンジン2の冷却水温を検出する水温センサ75、ディーゼルエンジン2のクランク軸44の回転基準位置、例えば特定気筒の上死点に対するクランク軸44の回転位置を検出するクランク角センサ76が設けられている。
【0034】さらに、前記ピエゾスピル弁23には、素子温度検出手段としての熱電対77が装着され、この熱電対77は前記ピエゾ素子30の表面に当接して、そのピエゾ素子30の温度(素子温度T)を検出する。
【0035】前記ECU71には、上述した各センサ43,72〜77がそれぞれ接続されている。そして、ECU71は各センサ43,72〜77から出力される信号に基づいて、ピエゾスピル弁23、タイミングコントロールバルブ41、グロープラグ50及びVSV61,66,67等を好適に制御する。
【0036】次に、前述したECU71の構成について、図4のブロック図に従って説明する。ECU71は中央処理装置(CPU)81、所定の制御プログラム及びマップ等を予め記憶した読み出し専用メモリ(ROM)82、CPU81の演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)83、予め記憶されたデータを保存するバックアップRAM84等と、これら各部と入力ポート85及び出力ポート86等とをバス87によって接続した論理演算回路として構成されている。
【0037】CPU81は、ディーゼルエンジン2の所定のクランク角を基準とした所定タイミングでのパイロット噴射を行うべく前記ピエゾ素子30の充放電タイミングを算出する基本タイミング算出手段と、前記熱電対77により検出された温度が上昇するに従い、ピエゾ素子30の充放電タイミングを早めるタイミング補正手段とを構成している。
【0038】入力ポート85には、前記吸気温センサ72、アクセル開度センサ73、吸気圧センサ74、水温センサ75及び熱電対77がバッファ88,89,90,91,92、マルチプレクサ93及びA/D変換器94を介して接続されている。同じく、入力ポート85には、前記回転数センサ43及びクランク角センサ76が波形整形回路95を介して接続されている。そして、CPU81は入力ポート85を介して入力される各センサ43,72〜77等の検出信号を入力値として読み込む。また、出力ポート86には各駆動回路96,97,98,99,100,101を介してピエゾスピル弁23、タイミングコントロールバルブ41、グロープラグ50及びVSV61,66,67等が接続されている。
【0039】そして、CPU81は各センサ43,72〜77から読み込んだ入力値に基づき、ピエゾスピル弁23、タイミングコントロールバルブ41、グロープラグ50及びVSV61,66,67等を好適に制御する。
【0040】次に、前記のように構成された本実施例の作用及び効果について説明する。図10のフローチャートは、CPU81によって実行される各処理のうち、ピエゾ素子30の充放電タイミングを補正するために実行されるルーチンを示しており、所定時間毎の定時割り込みで実行される。
【0041】このルーチンへの移行に先立ち、CPU81はピエゾスピル弁23を駆動制御して高圧室15内の燃料の圧力を調整し、燃料噴射ノズル4にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射を行わせている。すなわち、CPU81はそのときのディーゼルエンジン2の運転状態に基づき、基準となるクランク角θ0 からパイロット噴射開始タイミングに相当するパイロット噴射開始指令角θ1 、パイロット噴射終了タイミングに相当するパイロット噴射終了指令角θ2 、主噴射開始タイミングに相当する主噴射開始指令角θ3 、及び主噴射終了タイミングに相当する主噴射終了指令角θ4 を算出する。そして、CPU81はこれらの指令角θ1 〜θ4 に基づき、駆動回路96を介してピエゾ素子30を充電又は放電させる。これにより、ピエゾスピル弁23が駆動され、パイロット噴射及び主噴射が実行される。
【0042】このような燃料噴射制御中に処理が図10のルーチンへ移行すると、CPU81はまずステップ101で、熱電対77によるそのときのピエゾ素子30の素子温度Tを読み込む。続いて、CPU81はステップ102で前記素子温度Tに対応する変位遅れΔtを算出する。この変位遅れΔtの算出は、ROM82に予め記憶されているマップを用いて行われる。このマップには、図11に示すように素子温度Tに対する変位遅れ(時間)Δtが規定されている。本実施例では、素子温度Tが低いときにはピエゾ素子30が短時間で所定の伸張量に達し、同素子温度Tが上昇するに従い、ピエゾ素子30が所定伸張量となるのに要する時間が長くなることから、素子温度Tが低いときには変位遅れΔtが小さく、同素子温度Tの上昇にともない変位遅れΔtが増加するようなマップが規定されている。
【0043】次に、CPU81はステップ103へ移行し、回転数センサ43によるそのときのエンジン回転数NEを読み込み、ステップ104で図12のマップを用い前記変位遅れΔtを角度に変換する。すなわち、パイロット噴射及び主噴射の開始・終了タイミングを算出するために、前記のように時間で定められた変位遅れΔtを角度変換する。このマップには、エンジン回転数NE毎に、変位遅れΔtに相当する角度Δθが予め規定されている。つまり、このマップでは同一変位遅れΔtであってもエンジン回転数NEに応じて角度Δθが異なっており、より詳しくはエンジン回転数NEの上昇に応じて角度Δθが大きくなるように規定されている。そして、CPU81は図12のマップを用い角度変換を行うとステップ105へ移行する。
【0044】ステップ105においてCPU81は、図1313に示すように、そのときのパイロット噴射開始指令角θ1a、パイロット噴射終了指令角θ2a、主噴射開始指令角θ3a及び主噴射終了指令角θ4aからそれぞれ前記角度Δθを減算して、各指令角θ1a〜θ4aを補正する。CPU81はこのにようにして求めた補正後のパイロット噴射開始指令角θ1b、パイロット噴射終了指令角θ2b、主噴射開始指令角θ3b及び主噴射終了指令角θ4bに基づきそれらの指令角θ1b〜θ4bに相当するタイミングで、駆動回路96を介してピエゾ素子30を充電又は放電させる。これにより、ピエゾスピル弁23が駆動され、パイロット噴射及び主噴射が実行される。
【0045】このように、本実施例ではピエゾスピル弁23に熱電対77を装着し、その熱電対77によって検出されたピエゾ素子30の素子温度Tに応じた変位遅れΔtをマップから求め(ステップ102)、その変位遅れΔtを角度Δθに変換し(テップ104)、その値をパイロット噴射及び主噴射を行うための指令角θ1a〜θ4aから減算するようにした(ステップ105)ので、この減算により変位遅れの影響を相殺することができる。
【0046】そのため、素子温度の低下に従って圧電素子への印加電圧を高くすることにより充電電荷を一定に保ち、一定の伸び量を得るようにした従来技術とは異なり、素子温度Tが上昇した場合には、ピエゾ素子30が所定の伸張量に達するまでに要する時間(圧電素子の応答時間)が増加するものの、本実施例ではその増加分を前記のように充放電タイミングを早めることによって補償できる。これにより、素子温度Tに左右されることなく安定したタイミングでパイロット噴射を行うことができ、排気エミッション上有利である。
【0047】また、本実施例では変位遅れΔtを角度に変換する際に、同一変位遅れΔtであってもエンジン回転数NEの上昇にともない角度Δθが大きくなるようなマップを用いたので、エンジン回転数NEの変動による角度Δθの変動も補償でき、従って、単に変位遅れΔtから角度変換した場合に比べ、燃料噴射時期等の制御の精度をさらに向上できる。
【0048】なお、本発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、例えば以下のように発明の趣旨から逸脱しない範囲で任意に変更してもよい。前記実施例では、ピエゾ素子30に熱電対77を接触させて、そのピエゾ素子30の素子温度Tを直接検出するようにしたが、このピエゾ素子30の近傍の燃料、例えば高圧室15内の燃料や変圧室27内の燃料の温度を検出して、これをピエゾ素子30の素子温度として代表させてもよい。
【0049】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、素子温度検出センサにより圧電素子の温度を検出し、その検出された温度が上昇するに従い、基本タイミング算出手段による圧電素子の充放電タイミングを早めるようにしたので、素子温度が上昇して圧電素子変位の応答時間が長くなってもその変位遅れを補償することができ、パイロット噴射を所定のタイミングで実行し、燃料噴射時期及び燃料噴射量の制御の精度を向上することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概念構成図である。
【図2】本発明を具体化した一実施例における燃料噴射ポンプ及びディーゼルエンジンの概略構成を示す図である。
【図3】図2における燃料噴射ポンプを拡大して示す図である。
【図4】一実施例におけるECUの構成を示すブロック図である。
【図5】一実施例において、プランジャが復動して高圧室内に燃料が吸入される状態を示す部分断面図である。
【図6】一実施例において、図5の状態からプランジャが往動して高圧室内の燃料が加圧される状態を示す部分断面図である。
【図7】一実施例において、図6の状態からピエゾ素子が伸張してスピル通路が閉塞された状態を示す部分断面図である。
【図8】一実施例において、燃料が噴射される状態を示す部分断面図である。
【図9】一実施例において、図8の状態からピエゾ素子が収縮して燃料噴射が終了する状態を示す部分断面図である。
【図10】一実施例において、噴射指令角補正処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】一実施例において、素子温度に対する変位遅れが定められたマップを示す図である。
【図12】一実施例において変位遅れを角度に変換するために、その変位遅れとエンジン回転数とに対する角度が定められたマップを示す図である。
【図13】一実施例においてピエゾスピル弁に出力される制御信号のタイミングチャートである。
【符号の説明】
1…燃料噴射ポンプ、2…ディーゼルエンジン、4…燃料噴射弁としての燃料噴射ノズル、12…プランジャ、15…高圧室、30…圧電素子としてのピエゾ素子、77…素子温度検出センサとしての熱電対、81…基本タイミング算出手段及びタイミング補正手段を構成するCPU、θ0 …基準となるクランク角
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高圧燃料を燃料噴射弁に供給するための燃料噴射ポンプに設けられる燃料噴射制御用圧電素子の駆動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、圧縮着火を行うディーゼルエンジンの低速運転時や低負荷運転時においては、燃焼室に噴射された燃料が着火遅れにより爆発的に燃焼して、燃焼騒音や排気ガス中の窒素酸化物(NOX )が増大することがある。これに対しては、燃料の主噴射に先立ってパイロット噴射を行うことが有効とされている。このパイロット噴射は、その時々の噴射期間に噴射される全燃料噴射量のうちの一部を主噴射に先立って予備的に噴射させ、そのパイロット噴射による燃料を着火させて燃焼室内の温度を充分に高め、その後に続く主噴射の燃料着火を効果的に行わせるものである。
【0003】前記パイロット噴射を行うために、燃料噴射ポンプ内の高圧室と燃料室とがスピル通路にて連通され、そのスピル通路の途中にスピル弁が配設される。そして、プランジャの圧縮行程中にそのスピル弁が開閉制御されることにより、前記スピル通路を通って低圧側へ溢流する燃料量が調整されて、パイロット噴射とそれに続く主噴射が実行される。このスピル弁としては、近年圧電素子を用いたものが採用されている。すなわち、圧電素子は電荷が供給(充電)されると伸張し、電荷が放出(放電)されると収縮する性質を有するものであり、前記スピル弁ではこの圧電素子の伸縮動作により弁体を駆動してスピル通路を開閉するようにしている。
【0004】ところが、前記圧電素子は一般に温度が低くなるに従い静電容量が低下し、これにともない受容し得る電荷量が減少し、伸び量が減少してしまう。このため、前記のように温度が低くなると、良好な燃料噴射制御が行うことができなくなる。
【0005】そこで、このような問題に対処するものとして特開平1−187345号公報には、圧電素子の温度を温度センサで検出し、その検出された温度が低くなるに従い、圧電素子に印加する電圧を高くするようにした技術が開示されている。この技術によると、圧電素子に充電される電荷量を一定に保ち、一定の伸び量を得ることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来技術では圧電素子の温度が上昇した場合には、静電容量が増加するために、電荷量一定のもとではその静電容量の増加に応じて印加電圧が低下する。そして、この印加電圧の低下により充電時間が長くなり、圧電素子が所定の伸張量に達するのに要する時間が長くなる。その結果、圧電素子の変位遅れが生じ、パイロット噴射の開始タイミング及び終了タイミングが遅れてしまい、燃料噴射時期及び燃料噴射量の制御の精度が低下する。
【0007】本発明は前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、素子温度が上昇して圧電素子変位の応答時間が長くなってもその変位遅れを補償することが可能であり、パイロット噴射を所定のタイミングで実行し、燃料噴射時期及び燃料噴射量の制御の精度を向上できる燃料噴射制御用圧電素子の駆動制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は図1に示すように、ディーゼルエンジンM1の回転に基づくプランジャM2の往復動により高圧室M3内へ燃料を吸入及び加圧し、その高圧室M3で加圧された高圧燃料を燃料噴射弁M4に供給する燃料噴射ポンプM5に設けられるものであって、充放電により伸縮動作して前記高圧室M3内の燃料の圧力を調整し、前記燃料噴射弁M4にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射を行わせる燃料噴射制御用圧電素子M6と、前記ディーゼルエンジンM1の所定のクランク角を基準とした所定タイミングでのパイロット噴射を行うべく前記圧電素子M6の充放電タイミングを算出する基本タイミング算出手段M7と、前記圧電素子M6の温度を検出する素子温度検出センサM8と、前記素子温度検出センサM8により検出された温度が上昇するに従い、前記基本タイミング算出手段M7による圧電素子M6の充放電タイミングを早めるタイミング補正手段M9とを備えている。
【0009】
【作用】燃料噴射ポンプM5の作動時には、ディーゼルエンジンM1の回転に基づきプランジャM2が往復動し、その往復動により高圧室M3内へ燃料が吸入及び加圧される。そして、高圧室M3で加圧された高圧燃料は燃料噴射弁M4に供給される。この際、燃料噴射制御用圧電素子M6が充放電されて伸縮動作すると、前記高圧室M3内の燃料の圧力が調整され、前記燃料噴射弁M4にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射が行われる。
【0010】前記主噴射及びパイロット噴射の実行に際し基本タイミング算出手段M7は、前記ディーゼルエンジンM1の所定のクランク角を基準とした所定タイミングでパイロット噴射を行うために、前記圧電素子M6の充放電タイミングを算出する。このときの充放電タイミングは、前記圧電素子M6の温度に応じて補正される。すなわち、前記圧電素子M6の温度は素子温度検出センサM8によって検出され、この素子温度が上昇するに従い、タイミング補正手段M9は前記基本タイミング算出手段M7による圧電素子M6の充放電タイミングを早める。
【0011】従って、前記素子温度が上昇すると、圧電素子M6が所定の伸張量に達するまでに要する時間(圧電素子M6の応答時間)が増加するものの、その増加分は、前記のように充放電タイミングが早められることによって補償される。
【0012】
【実施例】以下、本発明を具体化した一実施例を図面に基いて詳細に説明する。図2は、本実施例の燃料噴射制御用圧電素子の駆動制御装置が設けられた分配型燃料噴射ポンプ1と、その燃料噴射ポンプ1により燃料が供給される過給機付ディーゼルエンジン2の概略構成を示す図であり、図3は前記燃料噴射ポンプ1を拡大して示す図である。この燃料噴射ポンプ1は、ディーゼルエンジン2のクランク軸44にベルト等を介して駆動連結されたドライブプーリ3を備えている。そして、ドライブプーリ3の回転によって燃料噴射ポンプ1が駆動され、ディーゼルエンジン2の気筒(この場合は4気筒)毎に設けられた燃料噴射弁としての燃料噴射ノズル4に燃料が圧送されて燃料噴射を行う。
【0013】ドライブプーリ3にはドライブシャフト5が連結され、そのドライブシャフト5には、べーン式ポンプよりなる燃料フィードポンプ(図では90度展開されている)6と、円板状のパルサ7とが取付けられている。パルサ7の外周面には、ディーゼルエンジン2の気筒数と同数の欠歯(この場合4個)が等角度間隔で形成され、さらに隣接する欠歯間には14個ずつ(合計で56個)の突起が等角度間隔で形成されている。そして、前記ドライブシャフト5の基端部(図の右端部)は、図示しないカップリングを介してカムプレート8に接続されている。パルサ7とカムプレート8との間にはローラリング9が設けられ、そのローラリング9にはカムプレート8のカムフェイス8aに対向する複数のカムローラ10が取付けられている。そして、カムプレート8はスプリング11によって常にカムローラ10に付勢係合されている。
【0014】カムプレート8には燃料加圧用プランジャ12が一体回転可能に取付けられており、前記ドライブシャフト5の回転力がカップリングを介してカムプレート8に伝達されることにより、同カムプレート8及びプランジャ12が回転しながら図中左右方向へ往復駆動される。プランジャ12はポンプハウジング13に形成されたシリンダ14に嵌挿されており、これらのプランジャ12の先端面(図の右端面)とシリンダ14の内底面との間が高圧室15となっている。プランジャ12の先端側外周には、ディーゼルエンジン2の気筒数と同数の吸入溝16及び分配ポート17が形成されている。また、吸入溝16及び分配ポート17に対応して、ポンプハウジング13には吸入通路19及び分配通路18が形成されている。
【0015】そして、ドライブシャフト5の回転に基づき燃料フィードポンプ6が駆動されると、図示しない燃料タンクからの燃料が燃料供給ポート20を介して燃料室21内へ供給される。また、プランジャ12が図中左方向へ移動(復動)して高圧室15が減圧される吸入行程においては、吸入溝16の一つが吸入通路19と連通して、燃料室21から高圧室15へ燃料が導入される。一方、プランジャ12が図中右方向へ移動(往動)して高圧室15が加圧される圧縮行程においては、分配通路18から各気筒毎の燃料噴射ノズル4へ燃料が圧送されて噴射される。
【0016】前記ポンプハウジング13には、高圧室15と燃料室21とを連通させる燃料溢流用のスピル通路22が形成されている。スピル通路22の途中にはピエゾスピル弁23が設けられている。このピエゾスピル弁23は、前記高圧室15内の燃料の圧力を調整することにより、前記燃料噴射ノズル4にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射を行わせるためのものである。
【0017】ピエゾスピル弁23は上下動可能なバルブ24を備えており、このバルブ24は、弁座25に接触することにより同スピル通路22を閉塞(閉弁)し、同弁座25から離間することによりスピル通路22を開放(開弁)する。前記バルブ24を駆動してスピル通路22を開閉させるために、バルブ24の下側にはスプリング26の付勢力が作用し、同バルブ24の上側には燃料による圧力が作用するようになっている。すなわち、バルブ24の直下にはスプリング26が圧縮状態で配設されており、スピル通路22が開放されるようにスプリング26がバルブ24を常に上方へ付勢している。
【0018】また、バルブ24の上方には変圧室27が形成されており、この変圧室27内の燃料が小径の連通孔28を介し前記バルブ24を下方へ押圧している。前記変圧室27の容積を変えて、バルブ24上面に作用する燃料の押圧力を調整するために、その変圧室27の上側には、圧電素子としてのピエゾ素子30とピストン29とが配設され、同変圧室27の下側にスプリング31が配置されている。スプリング31はピストン29を常に上方へ付勢している。また、ピエゾ素子30は、PZT等からなる板状部材を複数枚積層した構造をなし、電圧が印加されて電荷が供給(充電)されると伸張してスプリング31の付勢力に抗しピストン29を下動させ、電荷が放出(放電)されると収縮してスプリング31の付勢力によるピストン29の上動を許容する。
【0019】さらに、前記変圧室27内の燃料がリークにより減少した場合においてもバルブ24の挙動を安定化させるために、変圧室27と高圧室15とがリセット通路32によって連通可能となっている。このリセット通路32の開閉は、プランジャ12の回転運動と往復運動とが所定のタイミングとなったときに行われる。このリセット通路32の開閉により、ピエゾ素子30が伸張する前に変圧室27に燃料が補充され、変圧室27内の初期圧力が一定にリセットされる。
【0020】ここで、前記ピエゾスピル弁23による燃料の噴射制御を図5〜図9に従って簡単に説明する。まず、図5はプランジャ12が同図の左方へ移動(復動)する燃料吸入行程を示しており、この状態ではプランジャ12の吸入溝16が吸入通路19と連通するとともに、分配ポート17が分配通路18から遮断されている。そして、ピエゾ素子30が収縮しバルブ24がスピル通路22を開放している。このため、燃料は吸入通路19から高圧室15内へ吸入され、さらにはリセット通路32を通って変圧室27に導かれる。
【0021】前記状態から、図6に示すようにプランジャ12が回転を伴って同図の右方へ移動(往動)すると、吸入通路19及びリセット通路32がともに遮断され、高圧室15内の燃料が加圧され始める。このときには、ピエゾ素子30はまだ収縮されたままであり、スピル通路22は開かれている。
【0022】図7に示すように、ピエゾ素子30に所定の電圧が印加されると、圧電効果によりピエゾ素子30が伸張する。これにより変圧室27内の燃料が加圧され、その燃料の押圧力がスプリング26の付勢力に打ち勝ってバルブ24を下動させ、スピル通路22を閉塞する。このとき、プランジャ12の往動で高圧室15が加圧されても、バルブ24の受圧面積差と変圧室27の圧力が高くなっていることで、バルブ24は閉弁し続ける。そして、図8に示すようにプランジャ12の分配ポート17が分配通路18と連通すると、燃料噴射ノズル4から燃料が噴射される(燃料噴射開始)。
【0023】所定の噴射量を得た時に、図9で示すようにピエゾ素子30の電荷が解除(ショート)されると、ピエゾ素子30は収縮し変圧室27の圧力が低下する。すると、スプリング26の付勢力によってバルブ24が上動し、スピル通路22が開放される。これにより、高圧室15内の高圧の燃料が燃料室21へ溢流され、噴射が終了する(燃料噴射終了)。
【0024】従って、ピエゾスピル弁23のピエゾ素子30に電圧を印加するタイミング、ピエゾ素子30の電荷を放出させるタイミングを調節することにより、パイロット噴射の開始時期及び終了時期、主噴射の開始時期及び終了時期を制御することが可能である。
【0025】図2に示すように、前記ポンプハウジング13の下側には、燃料噴射時期制御用のタイマ装置(図では90度展開されている)34が設けられている。タイマ装置34は、ドライブシャフト5の回転方向に対するローラリング9の位置を制御することにより、カムフェイス8aがカムローラ10に係合する時期、すなわちカムプレート8及びプランジャ12の往復動タイミングを制御するものである。
【0026】このタイマ装置34は油圧によって作動されるものであり、タイマハウジング35と、同タイマハウジング35内に嵌装されたタイマピストン36と、同じくタイマハウジング35内一側の低圧室37にてタイマピストン36を他側の加圧室38へ押圧付勢するタイマスプリング39等とから構成されている。そして、タイマピストン36はスライドピン40を介して前記ローラリング9に接続されている。
【0027】タイマハウジング35の加圧室38には、燃料フィードポンプ6により加圧された燃料が導入されるようになっている。そして、その燃料圧力とタイマスプリング39の付勢力との釣り合い関係によってタイマピストン36の位置が決定される。また、タイマピストン36の位置が決定されることによりローラリング9の位置が決定され、カムプレート8を介してプランジャ12の往復動タイミングが決定される。
【0028】タイマ装置34の燃料圧力を制御するために、加圧室38と低圧室37とを繋ぐ連通路42にはタイミングコントロールバルブ41が設けられている。タイミングコントロールバルブ41はデューティ制御された通電信号によって開閉制御される電磁弁であり、同タイミングコントロールバルブ41の開閉制御によって加圧室38内の燃料圧力が調整される。そして、その燃料圧力調整によってプランジャ12のリフトタイミングが制御され、各燃料噴射ノズル4からの燃料噴射時期が調整される。
【0029】なお、前記ローラリング9の上部には、電磁ピックアップコイルよりなる回転数センサ43が前記パルサ7の外周面に対向して取付けられている。この回転数センサ43はパルサ7の突起等が横切る際に、それらの通過を検出してエンジン回転数NEに相当するタイミング信号(エンジン回転パルス)を出力する。また、この回転数センサ43は前記ローラリング9と一体であるため、タイマ装置34の制御動作に関わりなく、プランジャリフトに対して一定のタイミングで基準となるタイミング信号を出力する。
【0030】次に、ディーゼルエンジン2について説明する。図2に示すように、このディーゼルエンジン2ではシリンダ45、ピストン46及びシリンダヘッド47によって各気筒毎に対応する主燃焼室48が形成されている。また、シリンダヘッド47には、同じく各気筒毎に対応して副燃焼室49が設けられており、これらの副燃焼室49は前記主燃焼室48に連通している。そして、各副燃焼室49に各燃料噴射ノズル4から噴射される燃料が供給される。なお、各副燃焼室49には、始動補助装置としての周知のグロープラグ50がそれぞれ取付けられている。
【0031】ディーゼルエンジン2の吸気管52にはターボチャージャ53のコンプレッサ54が配設され、排気管55にはターボチャージャ53のタービン56が配設されている。また、排気管55には過給圧を調節するウェイストゲートバルブ57が取付けられている。さらに、ディーゼルエンジン2には、排気管55内の排気の一部を吸気管52の吸入ポート58へ還流させるための還流管59が設けられている。還流管59の途中には排気の還流量を調節するEGRバルブ60が設けられ、このEGRバルブ60はバキュームスイッチングバルブ(VSV)61の制御によって開閉制御される。さらに、吸気管52の途中には、アクセルペダル62の踏込量に連動して開閉されるスロットルバルブ63が設けられている。また、そのスロットルバルブ63に平行してバイパス路64が形成され、その途中には、各種運転状態に応じアクチュエータ68によって開閉制御されるバイパス絞り弁65が設けられている。アクチュエータ68は、二つのVSV66,67の制御によって駆動される。
【0032】そして、上記ピエゾスピル弁23、タイミングコントロールバルブ41、グロープラグ50及び各VSV61,66,67は、電子制御装置(以下単に「ECU」という)71にそれぞれ電気的に接続され、同ECU71によってそれらの駆動タイミングが制御される。
【0033】前記ディーゼルエンジン2の運転状態を検出するセンサとしては、前記回転数センサ43に加えて以下のセンサが設けられている。すなわち、エアクリーナ69を介して吸気管52に吸い込まれる空気の吸気温度を検出する吸気温センサ72、スロットルバルブ63の開閉位置からディーゼルエンジン2の負荷に相当するアクセル開度を検出するアクセル開度センサ73、吸入ポート58内の吸入圧力を検出する吸気圧センサ74、ディーゼルエンジン2の冷却水温を検出する水温センサ75、ディーゼルエンジン2のクランク軸44の回転基準位置、例えば特定気筒の上死点に対するクランク軸44の回転位置を検出するクランク角センサ76が設けられている。
【0034】さらに、前記ピエゾスピル弁23には、素子温度検出手段としての熱電対77が装着され、この熱電対77は前記ピエゾ素子30の表面に当接して、そのピエゾ素子30の温度(素子温度T)を検出する。
【0035】前記ECU71には、上述した各センサ43,72〜77がそれぞれ接続されている。そして、ECU71は各センサ43,72〜77から出力される信号に基づいて、ピエゾスピル弁23、タイミングコントロールバルブ41、グロープラグ50及びVSV61,66,67等を好適に制御する。
【0036】次に、前述したECU71の構成について、図4のブロック図に従って説明する。ECU71は中央処理装置(CPU)81、所定の制御プログラム及びマップ等を予め記憶した読み出し専用メモリ(ROM)82、CPU81の演算結果等を一時記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)83、予め記憶されたデータを保存するバックアップRAM84等と、これら各部と入力ポート85及び出力ポート86等とをバス87によって接続した論理演算回路として構成されている。
【0037】CPU81は、ディーゼルエンジン2の所定のクランク角を基準とした所定タイミングでのパイロット噴射を行うべく前記ピエゾ素子30の充放電タイミングを算出する基本タイミング算出手段と、前記熱電対77により検出された温度が上昇するに従い、ピエゾ素子30の充放電タイミングを早めるタイミング補正手段とを構成している。
【0038】入力ポート85には、前記吸気温センサ72、アクセル開度センサ73、吸気圧センサ74、水温センサ75及び熱電対77がバッファ88,89,90,91,92、マルチプレクサ93及びA/D変換器94を介して接続されている。同じく、入力ポート85には、前記回転数センサ43及びクランク角センサ76が波形整形回路95を介して接続されている。そして、CPU81は入力ポート85を介して入力される各センサ43,72〜77等の検出信号を入力値として読み込む。また、出力ポート86には各駆動回路96,97,98,99,100,101を介してピエゾスピル弁23、タイミングコントロールバルブ41、グロープラグ50及びVSV61,66,67等が接続されている。
【0039】そして、CPU81は各センサ43,72〜77から読み込んだ入力値に基づき、ピエゾスピル弁23、タイミングコントロールバルブ41、グロープラグ50及びVSV61,66,67等を好適に制御する。
【0040】次に、前記のように構成された本実施例の作用及び効果について説明する。図10のフローチャートは、CPU81によって実行される各処理のうち、ピエゾ素子30の充放電タイミングを補正するために実行されるルーチンを示しており、所定時間毎の定時割り込みで実行される。
【0041】このルーチンへの移行に先立ち、CPU81はピエゾスピル弁23を駆動制御して高圧室15内の燃料の圧力を調整し、燃料噴射ノズル4にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射を行わせている。すなわち、CPU81はそのときのディーゼルエンジン2の運転状態に基づき、基準となるクランク角θ0 からパイロット噴射開始タイミングに相当するパイロット噴射開始指令角θ1 、パイロット噴射終了タイミングに相当するパイロット噴射終了指令角θ2 、主噴射開始タイミングに相当する主噴射開始指令角θ3 、及び主噴射終了タイミングに相当する主噴射終了指令角θ4 を算出する。そして、CPU81はこれらの指令角θ1 〜θ4 に基づき、駆動回路96を介してピエゾ素子30を充電又は放電させる。これにより、ピエゾスピル弁23が駆動され、パイロット噴射及び主噴射が実行される。
【0042】このような燃料噴射制御中に処理が図10のルーチンへ移行すると、CPU81はまずステップ101で、熱電対77によるそのときのピエゾ素子30の素子温度Tを読み込む。続いて、CPU81はステップ102で前記素子温度Tに対応する変位遅れΔtを算出する。この変位遅れΔtの算出は、ROM82に予め記憶されているマップを用いて行われる。このマップには、図11に示すように素子温度Tに対する変位遅れ(時間)Δtが規定されている。本実施例では、素子温度Tが低いときにはピエゾ素子30が短時間で所定の伸張量に達し、同素子温度Tが上昇するに従い、ピエゾ素子30が所定伸張量となるのに要する時間が長くなることから、素子温度Tが低いときには変位遅れΔtが小さく、同素子温度Tの上昇にともない変位遅れΔtが増加するようなマップが規定されている。
【0043】次に、CPU81はステップ103へ移行し、回転数センサ43によるそのときのエンジン回転数NEを読み込み、ステップ104で図12のマップを用い前記変位遅れΔtを角度に変換する。すなわち、パイロット噴射及び主噴射の開始・終了タイミングを算出するために、前記のように時間で定められた変位遅れΔtを角度変換する。このマップには、エンジン回転数NE毎に、変位遅れΔtに相当する角度Δθが予め規定されている。つまり、このマップでは同一変位遅れΔtであってもエンジン回転数NEに応じて角度Δθが異なっており、より詳しくはエンジン回転数NEの上昇に応じて角度Δθが大きくなるように規定されている。そして、CPU81は図12のマップを用い角度変換を行うとステップ105へ移行する。
【0044】ステップ105においてCPU81は、図1313に示すように、そのときのパイロット噴射開始指令角θ1a、パイロット噴射終了指令角θ2a、主噴射開始指令角θ3a及び主噴射終了指令角θ4aからそれぞれ前記角度Δθを減算して、各指令角θ1a〜θ4aを補正する。CPU81はこのにようにして求めた補正後のパイロット噴射開始指令角θ1b、パイロット噴射終了指令角θ2b、主噴射開始指令角θ3b及び主噴射終了指令角θ4bに基づきそれらの指令角θ1b〜θ4bに相当するタイミングで、駆動回路96を介してピエゾ素子30を充電又は放電させる。これにより、ピエゾスピル弁23が駆動され、パイロット噴射及び主噴射が実行される。
【0045】このように、本実施例ではピエゾスピル弁23に熱電対77を装着し、その熱電対77によって検出されたピエゾ素子30の素子温度Tに応じた変位遅れΔtをマップから求め(ステップ102)、その変位遅れΔtを角度Δθに変換し(テップ104)、その値をパイロット噴射及び主噴射を行うための指令角θ1a〜θ4aから減算するようにした(ステップ105)ので、この減算により変位遅れの影響を相殺することができる。
【0046】そのため、素子温度の低下に従って圧電素子への印加電圧を高くすることにより充電電荷を一定に保ち、一定の伸び量を得るようにした従来技術とは異なり、素子温度Tが上昇した場合には、ピエゾ素子30が所定の伸張量に達するまでに要する時間(圧電素子の応答時間)が増加するものの、本実施例ではその増加分を前記のように充放電タイミングを早めることによって補償できる。これにより、素子温度Tに左右されることなく安定したタイミングでパイロット噴射を行うことができ、排気エミッション上有利である。
【0047】また、本実施例では変位遅れΔtを角度に変換する際に、同一変位遅れΔtであってもエンジン回転数NEの上昇にともない角度Δθが大きくなるようなマップを用いたので、エンジン回転数NEの変動による角度Δθの変動も補償でき、従って、単に変位遅れΔtから角度変換した場合に比べ、燃料噴射時期等の制御の精度をさらに向上できる。
【0048】なお、本発明は前記実施例の構成に限定されるものではなく、例えば以下のように発明の趣旨から逸脱しない範囲で任意に変更してもよい。前記実施例では、ピエゾ素子30に熱電対77を接触させて、そのピエゾ素子30の素子温度Tを直接検出するようにしたが、このピエゾ素子30の近傍の燃料、例えば高圧室15内の燃料や変圧室27内の燃料の温度を検出して、これをピエゾ素子30の素子温度として代表させてもよい。
【0049】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、素子温度検出センサにより圧電素子の温度を検出し、その検出された温度が上昇するに従い、基本タイミング算出手段による圧電素子の充放電タイミングを早めるようにしたので、素子温度が上昇して圧電素子変位の応答時間が長くなってもその変位遅れを補償することができ、パイロット噴射を所定のタイミングで実行し、燃料噴射時期及び燃料噴射量の制御の精度を向上することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の概念構成図である。
【図2】本発明を具体化した一実施例における燃料噴射ポンプ及びディーゼルエンジンの概略構成を示す図である。
【図3】図2における燃料噴射ポンプを拡大して示す図である。
【図4】一実施例におけるECUの構成を示すブロック図である。
【図5】一実施例において、プランジャが復動して高圧室内に燃料が吸入される状態を示す部分断面図である。
【図6】一実施例において、図5の状態からプランジャが往動して高圧室内の燃料が加圧される状態を示す部分断面図である。
【図7】一実施例において、図6の状態からピエゾ素子が伸張してスピル通路が閉塞された状態を示す部分断面図である。
【図8】一実施例において、燃料が噴射される状態を示す部分断面図である。
【図9】一実施例において、図8の状態からピエゾ素子が収縮して燃料噴射が終了する状態を示す部分断面図である。
【図10】一実施例において、噴射指令角補正処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】一実施例において、素子温度に対する変位遅れが定められたマップを示す図である。
【図12】一実施例において変位遅れを角度に変換するために、その変位遅れとエンジン回転数とに対する角度が定められたマップを示す図である。
【図13】一実施例においてピエゾスピル弁に出力される制御信号のタイミングチャートである。
【符号の説明】
1…燃料噴射ポンプ、2…ディーゼルエンジン、4…燃料噴射弁としての燃料噴射ノズル、12…プランジャ、15…高圧室、30…圧電素子としてのピエゾ素子、77…素子温度検出センサとしての熱電対、81…基本タイミング算出手段及びタイミング補正手段を構成するCPU、θ0 …基準となるクランク角
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ディーゼルエンジンの回転に基づくプランジャの往復動により高圧室内へ燃料を吸入及び加圧し、その高圧室で加圧された高圧燃料を燃料噴射弁に供給する燃料噴射ポンプに設けられるものであって、充放電により伸縮動作して前記高圧室内の燃料の圧力を調整し、前記燃料噴射弁にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射を行わせる燃料噴射制御用圧電素子と、前記ディーゼルエンジンの所定のクランク角を基準とした所定タイミングでのパイロット噴射を行うべく前記圧電素子の充放電タイミングを算出する基本タイミング算出手段と、前記圧電素子の温度を検出する素子温度検出センサと、前記素子温度検出センサにより検出された温度が上昇するに従い、前記基本タイミング算出手段による圧電素子の充放電タイミングを早めるタイミング補正手段とを備えたことを特徴とする燃料噴射制御用圧電素子の駆動制御装置。
【請求項1】 ディーゼルエンジンの回転に基づくプランジャの往復動により高圧室内へ燃料を吸入及び加圧し、その高圧室で加圧された高圧燃料を燃料噴射弁に供給する燃料噴射ポンプに設けられるものであって、充放電により伸縮動作して前記高圧室内の燃料の圧力を調整し、前記燃料噴射弁にて主噴射及び同主噴射に先立つパイロット噴射を行わせる燃料噴射制御用圧電素子と、前記ディーゼルエンジンの所定のクランク角を基準とした所定タイミングでのパイロット噴射を行うべく前記圧電素子の充放電タイミングを算出する基本タイミング算出手段と、前記圧電素子の温度を検出する素子温度検出センサと、前記素子温度検出センサにより検出された温度が上昇するに従い、前記基本タイミング算出手段による圧電素子の充放電タイミングを早めるタイミング補正手段とを備えたことを特徴とする燃料噴射制御用圧電素子の駆動制御装置。
【図1】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図9】
【図11】
【図4】
【図10】
【図12】
【図13】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開平5−10154
【公開日】平成5年(1993)1月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−163162
【出願日】平成3年(1991)7月3日
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【公開日】平成5年(1993)1月19日
【国際特許分類】
【出願日】平成3年(1991)7月3日
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
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