説明

燃料支持金具及び原子炉における冷却材流れを調整する方法

【課題】原子炉の燃料支持金具及び燃料支持金具を使用して原子炉における流体流れを調整する方法を提供する。
【解決手段】燃料支持金具36は複数のルーメン46及び複数の燃料支持金具開口部44を含み、各燃料支持金具開口部44は、燃料集合体の下部タイプレートを受入れるような大きさに形成される。各ルーメン46は異なる燃料支持金具開口部44に流体結合される。少なくとも1つのルーメン46は、少なくとも1つの他のルーメン46における流体流れの減衰とは異なる態様で流体流れを減衰するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は原子炉に関し、特に、燃料集合体を支持する燃料支持金具及びそれに関連して燃料集合体に対する冷却材流れを調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この節における説明は本発明の開示に関連する背景情報を提供するにすぎず、従来技術を構成しない場合もある。
【0003】
原子炉圧力容器(RPV)はほぼ円筒形の形状を有し、例えば、ボトムヘッド及び取外し可能なトップヘッドにより両端部において閉鎖される。RPV内部において、炉心支持板から離間してトップガイドが配置される。炉心シュラウド又はシュラウドは炉心支持板を取囲み、シュラウド支持構造により支持される。特に、炉心シュラウドはほぼ円筒形の形状を有し、炉心支持板及びトップガイドの双方を取囲む。トップガイドはいくつかの開口部を含み、それらの開口部に燃料集合体が挿入される。燃料集合体は炉心支持板により支持される。炉心支持板は、複数のビームにより支持される平坦な板を含む。
【0004】
原子炉の炉心は、炉心の動作の計画に影響を及ぼす異なる特性をそれぞれ有する複数の個別の燃料集合体を含む。例えば、原子炉の炉心は、通常、異なる特性を有する数百の個別の燃料集合体を有し、各燃料束は複数の燃料棒を有する。燃料集合体は、燃料集合体の相互作用が法規制及び原子炉設計の指針及び制約の条件を満たすように炉心の内部に配列される。更に、炉心の配列は、炉心を新たな燃料要素で再生する必要が生じるまでに炉心が生成するエネルギーの量であるサイクルエネルギーを決定する。炉心の装荷配列は炉心サイクルエネルギーを最適化するのが好ましい。
【0005】
炉心サイクルは1回目の炉心燃料交換から2回目の炉心燃料交換までと定められる。動作サイクルの進行中、炉心のエネルギー能力を定義する過剰反応度は多様な方法で制御される。特に、未使用燃料はガドリニア等の可燃性毒物を含有する。初期可燃性毒物の量は、ユーティリティ及び米国原子力規制委員会(NRC)により設定される設計士の制約により通常は判定される。可燃性毒物は過剰反応度の全てではないが大半を制御する。第2の方法は炉心内部において制御棒を操作する方法である。制御棒は過剰反応度を制御する。特に、炉心は、安全な運転停止を保証し、最大出力ピーク係数を制御するための一次メカニズムを構成する制御棒を含む。利用可能な制御棒の総数は炉心の大きさ及び構造ごとに異なるが、通常、50〜250個である。制御棒の位置、すなわち完全に挿入された位置、完全に引抜かれた位置又はその間のいずれかの位置は、過剰反応度を制御する必要度及び最大炉心出力ピーク係数などの他の動作制約条件に適合する必要度に基づいて判定される。
【0006】
炉心を冷却するために、冷却材が炉心に導入される。冷却材はエネルギー生成のための作業流体である蒸気に変換され、核反応における中性子源を補助する。通常の冷却材流れは、わずかにサブクールされた冷却材が単相流れとして燃料集合体に流入する。流れは燃料支持金具に垂直上向きに接近し、次に、水平に方向転換して、燃料集合体を支持する燃料支持金具の入口に入る。その後、流れは燃料支持金具のオリフィスを通過して、燃料集合体への冷却材分配を助けるための圧力降下を引起こす。その後、流れは垂直に方向転換し、燃料集合体の下部タイプレートに流入し、燃料集合体の個々の燃料棒の周囲に分配される。
【0007】
周知の原子炉は炉心内部に複数の燃料支持金具オリフィス領域を含んでいた。すなわち、周囲に沿って1つ、中心付近に1つのオリフィス領域を含んでいた。周辺領域は炉心の周囲に沿った全ての燃料配置場所を含み、中心領域は残りの配置場所を含む。燃料支持金具オリフィスは、周辺領域における燃料集合体への流量を中心領域の燃料要素ごとの流量の約半分に制限するように設計される。周辺の流量をそのように2分の1に制限することにより、非常に低出力の周辺燃料要素で冷却材流れを飽和できていたが、他の高出力領域の場合よりはるかに低い出口品質及び平均ボイドを維持していた。この不均一な出口品質及び平均ボイドは蒸気分離の効率を低下し、核減速を発生する可能性がある。
【0008】
また、燃料集合体の構造を変化することにより、冷却材流れを調整できることも周知である。例えば、各燃料集合体がほぼ一定の流量を有する主冷却材流路及び入口を有することは周知である。しかし、燃料集合体は、特定の燃料集合体における冷却材流れを調整するために変化自在である1つ以上の二次冷却材流路を更に含むことができる。場合によっては、3種類の燃料集合体が3つの異なる二次冷却材流れを供給することも可能である。そのような各燃料集合体は所望の冷却材流れを供給するように炉心に配置できる。例えば、3つの異なる燃料集合体が3つ以上の炉心領域に配置されていた。3つの異なる燃料集合体の位置及び炉心内部における領域の配置に基づいて、各領域において各燃料集合体を通過する冷却材の流れを各他の領域において燃料集合体を通過する冷却材の流れとは異なるものにすることができる。しかし、そのためには、種類の異なる燃料集合体及び/又はタイプレートを製造し且つそれらの構造の異なる燃料集合体を管理することが必要である。他の方法は、流量を制限することが意図される燃料集合体の下部タイプレートに流量制限装置を装着することを含んでいた。下部タイプレートのそのような流量制限装置は流量調整の1つの方法を提供するが、多くの場合、流量制限装置を下部タイプレートに装着するために追加の管理手順及び製造手順が必要とされる。
【特許文献1】米国特許第5,241,570号公報
【特許文献2】米国特許第5,473,645号公報
【特許文献3】米国特許第5,570,399号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0185334号公報
【特許文献5】米国特許第6,929,810号公報
【特許文献6】米国特許第6,813,327号公報
【発明の開示】
【0009】
発明者は、原子炉の燃料集合体に流入する冷却材の流れを調整するための改良された燃料支持金具及びその使用方法を考案することに成功した。多様な構造の燃料集合体は、単一の燃料支持金具の内部で燃料集合体ごとに調整された冷却材流れを提供するか、あるいは異なる燃料支持金具の間で調整された冷却材流れの多様な異なる組合せを提供することができる。従って、燃料支持金具及びその使用方法は、炉心全体にわたり燃料集合体ごとに流体流れを調整することにより、新たな改良された炉心設計の可能性を提供できる。
【0010】
1つの面によれば、原子炉の燃料支持金具は複数の燃料支持金具開口部を含む。各燃料支持金具開口部は、燃料集合体の下部タイプレート及び複数のルーメンを受入れるような大きさに形成される。各ルーメンは異なる燃料支持金具開口部に流体結合され、少なくとも1つのルーメンは、少なくとも1つの他のルーメンにおける流体流れの減衰とは異なる態様で流体流れを減衰するように構成される。
【0011】
別の面によれば、原子炉の燃料支持金具は、炉心内部に複数の燃料集合体を装着する手段と、装着する手段により装着された燃料集合体のうち少なくとも1つに減衰された流体流れを選択的に供給する手段とを含む。
【0012】
更に別の面によれば、原子炉の燃料支持金具は、炉心支持板の装着穴に挿入するように構成された外側寸法を有する本体を含む。空洞部は制御棒を受入れるような大きさに形成される。複数の燃料支持金具開口部及び複数のルーメンも含まれる。各燃料支持金具開口部は燃料集合体の下部タイプレートを受入れるような大きさに形成され、各ルーメンは異なる燃料支持金具開口部に流体結合される。各ルーメンを規定する内面の少なくとも一部の周囲に取付け具が更に含まれ、ルーメンのうち1つを通過する流体の流れを少なくとも1つの他のルーメンと比較して減衰するように構成された少なくとも1つの流量制御部材も含まれる。少なくとも1つの流量制御部材は1つ以上のルーメンの内部に配置されるような大きさに形成され、取付け具によりルーメンの内部に少なくとも部分的に固着される。
【0013】
更に別の面によれば、原子炉の炉心内部における流体の流れを調整する方法は、炉心に燃料支持金具を設置することを含む。燃料支持金具は、各々が関連するルーメンを含む複数の燃料支持金具開口部を有する。各燃料支持金具開口部は、燃料集合体の下部タイプレートを受入れるような大きさに形成される。各ルーメンは、関連する開口部により受入れられた燃料集合体へ流体を送り出すように構成される。少なくとも1つのルーメンは、そのルーメンを通過する流体の流れを少なくとも1つの他のルーメンを通過する流体の流れと比較して減衰するように構成される。方法は、燃料支持金具の各開口部に燃料集合体の下部タイプレートを挿入することを更に含む。
【0014】
更に別の面によれば、原子炉を構成する方法は、原子炉内部における複数の燃料集合体の各々に対する流体流れを識別することと、識別された燃料集合体の流体流れの各々に対して燃料支持金具流体流れを指定することとを含む。
【0015】
本発明の更に別の面のうち一部は以下の説明から明らかになり、以下の説明の中で指摘されるであろう。開示内容の種々の面は個別に実現されてもよく、あるいは互いに組合わせて実現されてもよいことを理解すべきである。また、詳細な説明及び図面はいくつかの実施形態を示すが、単に例示を目的としており、開示内容の範囲を限定するものと解釈されてはならないことも理解すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面において、対応する図中符号は一貫して同様の又は対応する部分及び特徴を示すことを理解すべきである。
【0017】
以下の説明は単なる例示であり、本発明の開示内容、あるいは開示内容の適用又は使用を限定することを意図されていない。
【0018】
いくつかの実施形態においては、原子炉の燃料支持金具は複数の燃料支持金具開口部を含む。各燃料支持金具開口部は燃料集合体の下部タイプレートを受入れるような大きさに形成される。燃料支持金具は複数のルーメンを含み、各ルーメンは異なる開口部に流体結合される。本明細書中で説明されるように、ルーメンは、一般に、細長い流路を有する導管又は内部空間又は空洞部である。ルーメンは、流体流れを受入れる入口にも流体結合される。ルーメンのうち1つ以上は、入口で受入れられた流体流れを燃料支持金具の別のルーメンにおける流体流れとは異なる態様で減衰するか、又は原子炉内部の他の燃料支持金具のルーメンとは異なる態様で減衰するような大きさに形成される。例えば、第1のルーメンは総流体流量の約50%未満である第1の流量減衰を実行し、第2のルーメンは約50%を超える第2の流量減衰を実行することができる。
【0019】
別の実施形態においては、ルーメンの内部に取外し自在又は永久的に配置及び保持される流体減衰装置を受入れ且つ有するようにルーメンを構成できる。燃料支持金具ルーメン構造により形成されるか又はルーメン内部に流体減衰装置が配置されるかに関わらず、燃料支持金具の各ルーメンは、ルーメンごとに減衰の態様をカスタマイズすることにより、関連する燃料集合体及び下部タイプレートに対して同一又は異なる流量を供給できる。
【0020】
ルーメンは任意の構造又は形状であってもよく、いくつかの好適な実施形態においては、各ルーメンは、燃料支持金具開口部から下部プレナム及び/又は制御棒案内管より流体が受入れられる下部開口部に至るまで複数の屈曲、角部及び湾曲をほぼ含まない。更に、燃料支持金具の1つ以上のルーメンの横断面面積は、燃料支持金具開口部から下部開口部に向かって徐々に減少してもよい。面積をそのように徐々に減少することにより、ルーメンの流体流れを減衰するために望まれる又は指定される場合を除いて、ルーメン内部における乱流又は圧力上昇を減少できる。しかし、1つ以上のルーメンの横断面面積は、燃料支持金具開口部と下部開口部との間で一度大きく減少することも可能である。1箇所の大きな面積縮小は、流体流れを不必要に妨害することなく、流体の非対称性を増大することなく、あるいは不必要な又は望ましくない圧力上昇を追加することなく開口の大きさを整合できる。このことは図面を参照することにより更によく理解できる。
【0021】
図1に示される動作環境の例によってわかるように、従来の沸騰水型軽水炉(BWR)は原子炉圧力容器10及び炉心シュラウド12を有する。炉心シュラウド12は原子炉圧力容器10の中に同心に配置され、炉心シュラウド12と原子炉圧力容器10との間に環状領域、すなわちダウンカマーアニュラス14が規定される。炉心シュラウド12は核燃料炉心13を取囲むステンレス鋼の円筒である。特に、炉心シュラウド12は、シュラウドヘッド(図示せず)を支持するシュラウドヘッドフランジ12a;上端部がシュラウドヘッドフランジ12aに溶接されている円筒形の上部シュラウド壁12b;上部シュラウド壁12bの底端部に溶接された環状トップガイド支持リング12c;トップガイド支持リング12cに溶接された円筒形の中央シュラウド壁溶接構体12d;及び中央シュラウド壁12の底部及び下部シュラウド壁12の上部に溶接された環状炉心支持板支持リング12eを具備する。図1に示されるように、炉心シュラウド12は複数のシュラウド支持脚部16により垂直に支持される。各シュラウド支持脚部16は原子炉圧力容器10のボトムヘッド17に溶接される。炉心シュラウド12は環状シュラウド支持板18により側方から支持される。シュラウド支持板18は内径において炉心シュラウド12に溶接され、外径においては原子炉圧力容器10に溶接される。シュラウド支持板18は、複数のジェットポンプ構体(図示せず)のディフューザと流体連通する複数の円形ジェットポンプ開口部20を有する。
【0022】
BWRの燃料炉心13は、複数の列を成して配列された多数の直立する平行な燃料束集合体22から構成される。各燃料集合体22は、ジルコニウム系合金から製造された燃料チャンネルの内側に燃料棒の列を含む。燃料束集合体の各列は上部においてトップガイド24により支持され、底部においては炉心支持板26及びその下方に位置する支持構造27により支持される。炉心支持板26は原子炉を炉心13と下部プレナム15とに分割する。炉心トップガイド24は燃料集合体22の上部を側方から支持し、炉心支持板26は燃料集合体の底部を側方から支持する。この側方支持は、燃料集合体22の間の制御棒ブレード29を含めて制御棒28の垂直方向の移動を可能にするように、各列における正しい燃料チャンネル間隔を維持する。
【0023】
原子炉の出力レベルは、燃料束集合体22が静止状態に保持される間に炉心13の内部で制御棒28を上下に位置決めすることにより維持又は調整される。各制御棒28は、直角に配置された4つのウィング又は制御棒ブレード29から構成される十字形の横断面を有する。各制御棒ブレード29は1つの列を成して溶接された多数の平行な管から構成され、各々の管は中性子吸収材料が充填されたカプセルの積重ね構造を含む。各制御棒28は制御棒案内管30により支持されながら、関連する制御棒駆動機構33により上昇又は下降される。制御棒駆動機構33は、その上部において、スパッドにより制御棒28の底部のソケットに取外し自在に結合可能である。
【0024】
核分裂速度及び核分裂密度を制御し、正規の動作状態又は事故状態から原子炉を停止するための適切な過剰負反応度を提供するために、制御棒駆動機構33はBWR内部において制御棒28を位置決めするために使用される。各制御棒駆動機構33は、スタブ管34に溶接された制御棒駆動機構ハウジング32の中に垂直に装着される。スタブ管34は原子炉圧力容器10のボトムヘッド17に溶接される。制御棒駆動機構33は機械的にラッチされる複動油圧シリンダである。制御棒駆動機構33は、正規の原子炉動作に際しては制御された低速で制御棒28を挿入するか又は引抜き、原子炉の迅速な停止を必要とする緊急事態の場合には急速に制御棒28を挿入すること(スクラム)ができる。
【0025】
制御棒駆動機構ハウジング32は、制御棒案内管30の下部フランジにボルト留めされた上部フランジを有する。各制御棒案内管30は関連する制御棒駆動機構ハウジング32の上部に配置され、制御棒駆動機構ハウジング32により垂直に支持される。制御棒案内管30の最上部は炉心支持板26の対応する円形の開口部の中へ貫入する。140を超える数の制御棒案内管30が炉心支持板26の同じ数の円形の炉心支持板開口部35に貫入していてもよく、各炉心支持板開口部35は制御棒案内管30の外径よりわずかに大きい直径を有する。
【0026】
制御棒駆動機構ハウジング32及び制御棒案内管30は、(1)制御棒駆動機構33及び制御棒28をそれぞれ収納する機能及び(2)燃料集合体22において燃料の重量を支える機能という2つの機能を有する。燃料の重量は、制御棒案内管30の上部に配置された燃料支持金具36のオリフィスにおいて反動される。制御棒案内管30及び制御棒駆動機構ハウジング32は、燃料の重量を支持するコラムとして作用する。
【0027】
原子炉の動作中、下部プレナム15の中の水は制御棒案内管30のポート38に流入する。水は制御棒案内管30の内部を搬送されるか又は下部プレナム15へ直接搬送され、下部プレナム15から燃料支持金具36の入口を経て燃料集合体22に流体を供給するため又は結合された制御棒案内管30から燃料支持金具ルーメン46の中へ流体を供給するために、ルーメン46に流体結合された入口に流入する。1つ以上のルーメン46における流体の流れは、燃料支持金具36の他のルーメン46とは異なる態様で減衰される。各ルーメン46は流体流れ(減衰されるか否かに関わらず)を燃料集合体22の下部タイプレート57が配置されている燃料支持金具開口部44に供給する。水は入口に流入し、ルーメン46を通過する間に、流れはルーメン46の構造により調整されるか又はルーメン46の内部に配置された流量制御部材58により調整される。ルーメン46を通過した後、調整された流れは燃料支持金具36の開口部を通り、燃料集合体22の下部タイプレート57まで上昇し続ける。水は燃料集合体22及び炉心13の内部で上昇し続け、その大部分の量は蒸気に変換される。蒸気は電気エネルギーの生成に使用される。
【0028】
燃料支持金具36の一実施形態が図2に示される。燃料支持金具36は本体40を含む。本体40は、炉心支持板26の炉心支持板開口部35に挿入するための外側寸法を有する下方部分42を有する。燃料支持金具開口部44は本体40の上方部分48においてルーメン46に結合される。燃料支持金具36を炉心支持板26に保持するために、燃料支持金具36の外面にある1つ以上のフランジ50、あるいは他の寸法構造又は外側構造は、炉心支持板開口部35の周囲で炉心支持板26と圧縮係合する。燃料支持金具36は、制御棒案内管30に結合するため又はルーメン46及び燃料支持金具36を終端するための下端部52を下方部分42に含む。これは、制御棒案内管30から流体流れを受入れることを更に含んでもよい。図示されてはいないが、周知であるように、燃料支持金具36は下方部分42の外面に沿って入口(図示せず)を更に含んでもよい。入口は、下端部52にあるオリフィスから流体流れを受入れる代わりに又はオリフィスから流体流れを受入れるのに加えて、下部プレナム15から流体流れを直接受け入れるためにルーメン46に結合される。
【0029】
燃料支持金具36は、制御棒28を受入れるような大きさに形成された空洞部54を含む。空洞部54は任意の形状であってよいが、一般に、4つの制御棒ブレード29を有する制御棒28の十字形の形状に対応するような十字形の形状である。
【0030】
各燃料支持金具開口部44はルーメン46に結合され、燃料支持金具36の2つ以上のルーメン46を通過する流体の流れはそれぞれ異なる。例えば、図2に示されるように、4つの燃料支持金具開口部44の各々は燃料集合体22と境を接するという点ではほぼ同等である。しかし、結合される各ルーメン46は異なっていてもよい。図示されるように、ルーメン46Aは係合取付け具47を含む。係合取付け具47はリップ又は突起部として別個に形成されてもよいし、あるいは図2に示されるように燃料支持金具開口部44の正方形の形状からほぼ円形のルーメン46Aへの係合を可能にしてもよい。図示されるように、ルーメン46Aは燃料支持金具開口部44の幅と等しい直径を有する。ルーメン46Bは同一の大きさ及び形状を有する燃料支持金具開口部44Bに結合されるが、ルーメン46Bの直径は面取りによって縮小されている。従って、ルーメン46Aにより燃料支持金具開口部44Aに供給される流体の流量と比較して、ルーメン46Bにより燃料支持金具開口部44Bに供給される流体の流量は少ない。同様に、ルーメン46Cの直径は相当に小さく、そのため、ルーメン46A及びルーメン46Bと比較して、ルーメン46Cが燃料支持金具開口部44Cに供給する流体の流量は相当に減少される。図2は、一例として、燃料支持金具開口部44及び/又はルーメン46の内部に配置できるフィルタ56を更に含む。そのようなフィルタ56はルーメン46を通過する流体の流れを減衰し、ルーメン46の内部で流体の流れを再配分し且つ/又は燃料集合体22の燃料支持金具開口部44に塵芥が侵入するのを阻止するか、あるいは原子炉の停止中又は燃料交換中に燃料集合体22を新たな場所に配置換えする場合に燃料集合体22からルーメン46の中へ逆流する塵芥を減少することができる。フィルタ56は燃料支持金具開口部44又は燃料支持金具36のルーメン46に永久的に装着されてもよいし、あるいは燃料交換作業中に取外し自在であってもよい。
【0031】
更に、2つ以上の減衰された流体流れを供給するために、1つ以上のルーメン46に他の流量制御部材を配置することも可能である。次に図3A及び図3Bを参照すると、燃料支持金具36のルーメン46の中に1つ以上の流量制御部材58(図3Aに58A、58B及び58Cとして示される)を配置又は装着できる。それらの流量制御部材58は燃料支持金具36の製造中に成形又は製造されてもよく、いくつかの実施形態においては燃料支持金具36の固定付属構造であってもよい。
【0032】
流量制御部材58が取外し可能な板又はスペーサなどの取外し可能な部材である場合、ルーメン又は開口部に部材を固定することにより、流量制御部材58を所定の場所に保持できる。図3A及び図3Bに示される各ルーメン46は異なる流体流量特性を有する。図示されるように、1つのルーメンは完全に開放されており、燃料支持金具36のルーメンに対する流れは無制限であるか又は少なくとも最大限である。第2のルーメン46は、流体の流れを大幅に減衰する1つの小さなオリフィスを有する流量制御部材58Aを含む。第3のルーメン46は、複数の大きなオリフィスを有する流量制御部材58Bを含み、流体流れを適度に減衰すると共に、ルーメン46の内部で流体流れを再配分し、その流れを燃料支持金具開口部44に供給し、従って、結合されている燃料集合体22に供給する。第4のルーメン46は、流量制御部材58Bと比較して数は多いが小さなオリフィスを有する流量制御部材58Cを含み、ルーメン46から燃料支持金具開口部44に至るまで異なる量で流体流れを減衰し、異なる態様で流体流れを再配分する。各流量制御部材58は、2つ以上の異なる減衰を伴う任意の所望の減衰構造を有するように設計されてもよい。例えば、1つの流量制御部材58は、ルーメン46の直径より小さい(いくつかの実施形態においては著しく小さい)任意の直径のオリフィスを有してもよい。燃料支持金具36の一実施形態においては、複数のオリフィスがルーメン46の直径又は幅の約10分の1である直径を有するか、又は1つのオリフィスがルーメン46の幅又は直径の10〜90%の直径を有してもよい。
【0033】
係合取付け具47は、燃料支持金具開口部44及び/又は各ルーメン46を規定する内面の全て又は一部に沿っていてもよい。係合取付け具47は流量制御部材58をルーメン46の内部に少なくとも部分的に固着するように構成されてもよい。前述のように、係合取付け具47は、ルーメン46を規定する内面の一部から延出するリップであってもよいし、あるいは燃料支持金具開口部44、ルーメン46、又は燃料支持金具開口部44とルーメン46との係合部における形状の変化であってもよい。係合取付け具47は、例えば、ルーメンの直径の段階的縮小、ルーメン46の幅又は直径の一時的縮小、ルーメンを規定する内面の一部から延出する1つ以上のタブを含んでもよい。
【0034】
動作中、本明細書中で説明される燃料支持金具36の1つ以上の実施形態は、燃料支持金具36により支持される2つ以上の燃料集合体22に対して異なる流体流れを供給する。図4に示されるように、燃料支持金具36は2つの燃料集合体22A及び22Bを支持する。燃料集合体22Aは燃料支持金具開口部44Aに装着され、ルーメン46Aに流体結合される。第1の減衰流体流れを供給するための複数の小さなオリフィスを有する流量制御部材58Aがルーメン46Aに配置される。燃料集合体22Bは燃料支持金具開口部44Bに装着され、ルーメン46Bに流体結合される。第2の燃料集合体22Bに第2の減衰流体流れを供給するために、数は少ないが大きなオリフィスを有する流量制御部材58Bがルーメン46Bに配置される。本実施形態においては、第1の減衰流れは第2の減衰流れより少ない。
【0035】
次に図5を参照すると、一実施形態の動作中、原子炉炉心内部における流体の流れを調整する方法は、プロセス60におけるように炉心に燃料支持金具を設置することを含む。燃料支持金具は、各々が関連するルーメンを含む複数の燃料支持金具開口部を有する。各燃料支持金具開口部は燃料集合体の下部タイプレートを受入れるような大きさに形成される。各ルーメンは、関連する開口部により受入れられた燃料集合体へ流体を送り出すように構成される。少なくとも1つのルーメンは、別のルーメンを通過する流体流れと比較してルーメンを通過する流体を減衰するように構成される。プロセス62において、燃料集合体の下部タイプレートは燃料支持金具の各開口部に挿入される。更に、いくつかの実施形態においては、プロセス64のように、下部タイプレートを各開口部に挿入する前に、流体流れを減衰するために取外し可能な流量制御部材をルーメンの内部に配置できる。プロセス66に示されるように、第1の流量制御部材の減衰とは異なる減衰を提供するために、同一の燃料支持金具の異なるルーメンに異なる流量制御部材を配置できる。
【0036】
次に図6を参照すると、別の実施形態においては、原子炉を構成する方法は、プロセス68のように、原子炉内部の複数の燃料集合体の各々に対して流体流れを識別することを含む。方法は、プロセス70のように、識別された燃料集合体流体流れの各々に対して燃料支持金具流体流れを指定することを更に含む。これは、プロセス72のように、異なる所定の流体流れを伴うルーメンを有する複数の燃料支持金具の中から1つの燃料支持金具を選択することを更に含むことができる。この選択は、プロセス70の1つ以上の燃料支持金具流体流れの指定に応答していてもよい。
【0037】
方法は、プロセス74のように、指定に応答して2つ以上の燃料支持金具36の各々に対して流量制御部材を選択することを更に含んでもよい。これは、各々が異なる所定の流体流量を有する複数の流量制御部材の中から選択することを含んでもよい。プロセス76のように、燃料集合体を燃料支持金具ルーメンに設置する前に、1つ以上の燃料支持金具36により規定される異なるルーメンに各流量制御部材を挿入できる。
【0038】
他の実施形態においては、方法は、プロセス78のように、指定に応答して、各々が異なる所定の流体流量を有する複数の流量制御部材の中から1つの流量制御部材を選択することを含んでもよい。その後、プロセス80のように、燃料集合体を燃料支持金具ルーメンに設置する前に、燃料支持金具により規定されるルーメンに流量制御部材を挿入できる。
【0039】
従って、本明細書中で説明される燃料支持金具36の適用並びに使用及び動作の方法は、炉心において燃料集合体ごとにカスタマイズされた流体流れ構造を提供できる。その一例が図7に示される。炉心の四分の一82のレイアウトは複数の燃料集合体22を含む。各燃料支持金具36の各ルーメン46の内部における流体減衰仕様によって、燃料支持金具36により受入れられるカスタマイズされた流体流れを有するように炉心内部の各燃料集合体22を設計できる。本明細書中で表現されるように、本実施形態において1から9の数字により示される通りの異なる流量を有するように各燃料集合体22を設計できる。当然、どの燃料集合体22においても、燃料支持金具36及びルーメン46により受入れられる流体流れは任意の所定の量又は値を有することが可能であり、流量は1〜9のみに限定されない。いくつかの例においては、流量は0まで減少してもよく、また、約1.5Mlb/hr‐ftの高さ又は約0.40Mlb/hr‐ft(例えば、1平方フィート当たり毎時数千ポンドの流体質量)の低さであってもよく、更には約0.70Mlb/hr‐ftにまでなってもよい。前述のように、各燃料支持金具36は複数の燃料集合体22及び複数の減衰された流体流れを支持でき、従って、燃料支持金具36及びそのルーメン46から関連する燃料集合体22に至る複数の流体流量を支持できる。
【0040】
要素又は特徴及び/又は実施形態を説明する場合、「1つの(a、an)」、「その(the)」及び「前記(said)」などの冠詞は、それらの要素又は特徴が1つ以上存在することを意味することが意図される。「具備する(comprising)」、「含む(including)」及び「有する(having)」などの用語は包括的であり、特定して記載された要素又は特徴以外に追加の要素又は特徴が存在してもよいことを意味する。
【0041】
開示内容の範囲を逸脱せずに、上述の実施形態及び実現例に対して種々の変更を実施できることは当業者には認識されるであろう。従って、以上の説明中に含まれる事項又は添付の図面に示される事項は全て例示であり、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0042】
更に、本明細書中で説明されるプロセス又はステップは説明又は図示される特定の順序での実行を必ず必要とすると解釈されてはならないことを理解すべきである。また、追加又は代わりのプロセス又はステップが採用されてもよいことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】いくつかの実施形態に適する原子炉動作環境を示した切取り側面図である。
【図2】4つの燃料集合体を支持し、一実施形態に従って異なる流体流れ減衰を有する少なくとも2つのルーメンを有する燃料支持金具を示した平面斜視図である。
【図3A】別の実施形態に従って異なる流体流れ減衰を有する複数のルーメンを有する燃料支持金具を示した平面斜視図である。
【図3B】図3Aの燃料支持金具を示した底面斜視図である。
【図4】2つの燃料集合体が一実施形態による燃料支持金具の燃料支持金具開口部のうち2つに配置されている状態で炉心支持板に設置され且つ制御棒案内管に結合された燃料支持金具を示した切取り側面図である。
【図5】一実施形態に従って複数の異なる流体流れ減衰を有する燃料支持金具を使用して、原子炉の炉心内部における流体の流れを調整する方法を示したフローチャートである。
【図6】一実施形態に従って複数の流体流れ減衰を有する燃料支持金具によって原子炉を構成する方法を示したフローチャートである。
【図7】一実施形態に従って複数の流体流れ減衰を有する燃料支持金具により可能になる燃料集合体ごとの流体流れを示した原子炉の炉心の四分の一を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0044】
10…原子炉圧力容器、13…炉心、22…燃料集合体、26…炉心支持板、28…制御棒、30…制御棒案内管、35…炉心支持板開口部、36…燃料支持金具、40…燃料支持金具本体、44…燃料支持金具開口部、46…ルーメン、50…燃料支持金具のフランジ、56…燃料支持金具開口部のフィルタ、57…下部タイプレート、58…ルーメンの流量制御部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉(10)の燃料支持金具(36)において、
各々が燃料集合体(22)の下部タイプレート(57)を受入れるような大きさに形成された複数の燃料支持金具開口部(44)と;
各々が異なる燃料支持金具開口部(44)に結合された複数のルーメン(46)とを具備し、少なくとも1つのルーメン(46)は、少なくとも1つの他のルーメン(46)における流体流れの減衰とは異なる態様で流体流れを減衰するように構成される燃料支持金具(36)。
【請求項2】
炉心支持板(26)の装着穴(35)に挿入するための外側寸法を有する本体(40)と、前記炉心支持板(26)と係合する外面にある少なくとも1つのフランジ(50)と、制御棒(28)を受入れるような大きさに形成された空洞部(54)と、前記制御棒空洞部(54)の一部を規定する下端部(52)と、前記下端部(52)の周囲にあり且つ各々が1つのルーメン(46)に流体結合される複数の下部開口部とを更に具備する請求項1記載の燃料支持金具(36)。
【請求項3】
各ルーメン(46)は2つ以上の燃料支持金具開口部(44)及び2つ以上の下部開口部により流体結合され、各ルーメン(46)は、a)前記燃料支持金具開口部(44)から前記下部開口部に至るまで複数の屈曲、角部及び湾曲をほぼ含まない構成、b)前記燃料支持金具開口部(44)から前記下部開口部に至るまでルーメン(46)の横断面面積が徐々に減少する構成及びc)前記燃料支持金具開口部(44)と前記下部開口部との間でルーメン(46)の横断面面積が一度大幅に減少する構成より成る群から選択された1つの構成を含む請求項2記載の燃料支持金具(36)。
【請求項4】
別個のルーメン(46)に配置された1つ以上の流量制御部材(58)を更に具備し、各流量制御部材は、その流量制御部材(58)が配置されるルーメン(46)を通過する流体の流れを減衰するように構成され、前記流量制御部材(58)は前記ルーメン(46)及び各ルーメン(46)を規定する内面の少なくとも一部にある取付け具(47)と取外し自在に係合し、前記取付け具(47)は前記流量制御部材(58)を前記ルーメン(46)の内部に少なくとも部分的に固着するように構成される請求項1記載の燃料支持金具(36)。
【請求項5】
各燃料支持金具開口部(44)はほぼ正方形の形状を有し、各ルーメン(46)はほぼ円形の形状を有し、前記流量制御部材(58)は、前記燃料支持金具開口部(44)の内部に位置決めされるような大きさのほぼ正方形の形状を有し、前記取付け具(47)は、ほぼ正方形の形状からほぼ円形の形状へ段階的に遷移する形状に形成される請求項4記載の燃料支持金具(36)。
【請求項6】
前記流量制御部材(58)は、フィルタ(56)及び流体の流れを減衰するように構成された1つ以上のオリフィスを有する板より成る群から選択される請求項4記載の燃料支持金具(36)。
【請求項7】
前記燃料支持金具開口部(44)、前記ルーメン(46)、前記取付け具(47)及び前記流量制御部材(58)は、前記流量制御部材(58)が前記燃料支持金具開口部(44)に挿入される際に前記燃料集合体(22)の前記下部タイプレート(57)と前記取付け具(47)との間に前記流量制御部材(58)を固着するような大きさに形成される請求項4記載の燃料支持金具(36)。
【請求項8】
各々が流体流れの異なる減衰を有する複数の流量制御部材(58)を更に具備し、第1の流量制御部材(58)は第1の流れ減衰を有し、第2の流量制御部材(58)は前記第1の流れ減衰とは異なる第2の流れ減衰を有し、前記第1の流量制御部材(58)は第1のルーメン(46)の内部に配置され、前記第2の流量制御部材(58)は第2のルーメン(46)の内部に配置される請求項4記載の燃料支持金具(36)。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−157942(P2008−157942A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−326685(P2007−326685)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(301068310)グローバル・ニュークリア・フュエル・アメリカズ・エルエルシー (56)