説明

燃料材および燃料材の製造方法

本発明は、燃料材(1)および燃料材(1)を製造する方法に関する。燃料材(1)は、核分裂リアクタ内において用いられるように構成される。燃料材(1)は、第1の材料からなるコア(2)と、第2の材料からなる層(3)と、を含む。層(3)は、前記コア(2)を少なくとも部分的に包囲する。第1の材料は、核分裂物質を含む。コア(2)と層(3)との間に中間層(4)を含む。燃料材(1)は、中間層(4)は、コア(2)から層(3)への第1の材料の濃度の減少およびコア(2)から層(3)への第2の材料の濃度の増加を含む材料勾配を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核分裂リアクタ(原子炉)で使用されるように構成され、第1の材料からなるコアと、第2の材料からなる層とを含み、層は、コアを少なくとも部分的に包囲し、第1の材料は、核分裂物質を含む燃料材に関する。
【0002】
本発明は、また、上記に係る燃料材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
核分裂リアクタのための核燃料は、U−235のような核分裂物質を含む燃料材を備える。燃料材は、外側周囲(outer surrounding)からの相互作用から保護される必要がある。沸騰水型原子炉および圧力水型原子炉における燃料材は、低中性子吸収核断面積を有するジルコニウム合金の耐食性被覆チューブで完全に包囲される。被覆チューブの機能は、燃料材を包囲することであり、それにより外側周囲と核分裂物質との間の相互作用を保護する。相互作用は、燃料材と外側周囲との反応、または、例えば、燃料材で形成されるガス状物質が燃料材から外側周囲へ流れ出るような物質の外側周囲の汚染を含みうる。
【0004】
商用核分裂リアクタでの燃料材は、通常、UOの円筒状ペレットを含み、核分裂物質U−235の濃度は、5%以下であり、残留組成物はU−238である。包囲された燃料材を有する被覆チューブは、その後リアクタコアに挿入されかつ放射される燃料材内に配置され、燃料材は、エネルギーおよび中性子を生成する。燃料材は、通常、新たな燃料材により置き換えられるまで、4から6年間放射される。放射は、いくつかの燃料サイクルに分けられる。燃料サイクルの期間は、通常、約1年であるが、2年であってもよい。
【0005】
核分裂物質の濃度が放射の開始時に最も高くなるため、放射しない燃料材は、第1のサイクル中に、その後の燃料サイクルと比べて、より高い生成されたパワーを有する。安全のために、燃料材の生成されたパワーは、あるレベルを超えないように制限される。生成されたパワーを制限するために、中性子を吸収する中性子吸収体が使用される。それにより、核分裂プロセスが軽減され、生成されたパワーが低減される。中性子吸収体は、燃料材または燃料材の周囲に混合され、燃料材におけるパワーの局所的な低減を提供する。第1の燃料サイクル中に生成されるパワーを制限し、次の燃料サイクル中に生成されるパワーを制限しないために、いわゆる燃焼性中性子吸収体が使用され、これは、それらがより低い中性子吸収性能を有する物質へ変化するのと同時に中性子を吸収する機能を有する。燃焼性中性子吸収材料の例は、ガドリニウムおよびボロンである。燃焼性中性子吸収体を用いることにより、燃料材の生成されたパワーは、第1の燃料サイクル中に制限されるが、次のサイクル中での生成されたパワーでの燃焼性中性子吸収体からのパワーは、小さいまたはごくわずかである。
【0006】
中性子吸収体を有する燃料材は、中性子吸収材料を燃料材に混合する、または燃料材の表面上の層として中性子吸収材料を加えることにより、製造されうる。中性子吸収材料の混合は、特定の中性子吸収体でのみ可能である。燃料材の表面上へ中性子吸収材料を塗布する既知の方法は、真空を必要とする繊細なプロセスを含み、高額である。吸収材料の層を有する他の問題は、中性子吸収材料の層が燃料材の表面に残存することが確実なことである。燃料要素の放射中に、高い温度が燃料材内で生じる。例えば、沸騰水型原子炉および圧力水型原子炉における1500℃までの温度が通常動作状態での燃料材で生じる。燃料サイクル間での室温から高温への遷移は、異なる熱特性および弾性特性を有する材料間でのストレスを生成し、中性子吸収材料の層は、クラックおよびはがれが生じうる。中性子吸収材料の層は、また、燃料棒の導入時または導入前に剥離または磨耗しうる。燃料材上の中性子吸収材料の層が全体的にまたは部分的に欠損した場合、または中性子吸収材料が燃料棒内に置換された場合、例えば、リアクタの動作中に、燃料材内の生成されたパワーは、影響を受け、これは、生成されたパワーが局所的に許容値を超えうるという結果をもたらす。リアクタを停止し、かつ欠損した燃料材を燃料材と交換する必要があり、これは、エネルギー生成の損失および燃料材を修復する費用の面で非常に大きな損失をもたらす。
【0007】
燃料材は、被覆チューブの漏洩において、沸騰水型原子炉および圧力水型原子炉の軽水のような外側周囲と接触する状態となりうる。外側周囲は、いわゆる燃料破損した箇所で燃料材と反応し、ここで、燃料材の材料は、リアクタの外側周囲を汚染し、燃料材の機能が無くなるまたは劣化する。小規模な燃料損失では、外側周囲は、主に核分裂処理中に形成されるガスにより汚染される。外側周囲の汚染は、リアクタでメンテナンス作業者が、メンテナンス作業で、増加した放射線量に露出されることを招く。また、リアクタを停止し、燃料材を漏洩している被覆チューブと取り替える必要がある。燃料欠損は、動作停止時にエネルギーの生成が止まる点、および欠損した燃料材を修復する費用の点で非常に大きな費用がかかることを招く。
【0008】
さらなるストレージについての、燃焼済み(burned out)の核燃料の処理についての技術は特許文献1に開示されている。特許文献1において、燃焼済みの核燃料は、冷間静水圧成形法(CIP)によって圧力が掛けられたアルミニウムおよびボロンの粉末で処理され、次いで、プラズマ焼結によって共に焼結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1249844号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は改良された特性を有する中性子吸収材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本課題は、請求項1の特徴付けられた部分において規定された特徴を含む、最初に規定された要素でもって達成されうる。
【0012】
中性子吸収材は、コアと層との間にある中間層により上述の目的を達成する。中間層は、第1の材料および第2の材料の混合物を含むか、それから成る。
【0013】
燃料材は、エネルギーおよび中性子を生成するように構成される構成要素に関する。燃料材は、エネルギーおよび中性子を生成する機能を有するコアと、コアを少なくとも部分的に包囲する層と、を含む。燃料材のコアは、核分裂物質を含む第1の材料からなる。核分裂物質は、核分裂リアクタ内で連鎖反応を維持する特性を有する材料に関する。燃料材の核分裂物質は、燃料材が高温になり、リアクタの動作中に放射された際に、エネルギーおよび中性子を生成する。燃料材の層は、第2の材料からなる。
【0014】
中間層は、第1の材料から第2の材料への特性の遷移を提供するコアと層との間の層である。中間層は、第1の材料と第2の材料との濃度の段階的または漸次的な遷移を含む。中間層は、材料勾配を有し、これは、中間層の中における第1の材料および第2の材料の濃度がゼロよりも大きいことを意味する。材料勾配は、コアおよび層と比較した場合の濃度変化を含む。材料勾配は、第1および第2の材料が均質(homogenous)の混合物を含むことができる。材料勾配はまた、第1の材料と第2の材料との濃度の間の比の、中間層内での変化を含むことができる。それにより、材料勾配は、燃料材の良い材料特性を得るために、第1および第2の材料の、例えば、温度の広がり(expansion)に関して、それらの物質特性に基づいて調整可能である。材料勾配により、コア内の第1の材料と層内の第2の材料との間に遷移が形成されて、層とコアとの間に強い接着を提供する。中間層における材料勾配により、第1の材料と第2の材料との間の熱および可撓性の差から形成される、燃料材における内部ストレスが減少する。それにより、層のコアに対する接着が改善して、燃料材に対して改善された機能性を提供する。
【0015】
本発明の実施形態によれば、材料勾配は、コアから層への第1の材料の濃度の連続的な減少、および、コアから層への第2の材料の濃度の連続的な上昇を含む。それにより、材料勾配は、第1の材料から第2の材料へ(逆もまた然り)の特性の漸次的な遷移を提供するように構成される。
【0016】
本発明の実施形態によれば、燃料材は、焼結により製造されて、第1の材料と第2の材料と共に良好に焼結する燃料材を提供する。焼結は、圧力を加える、および/または温度を上昇させることを含み得るか、または組み合わされ得る。焼結方法は、焼結された材の複数の物質特性、例えば粒子サイズおよび孔隙率(porosity)などが広範囲の範囲内で制御可能であることを保証するものである。
【0017】
本発明の実施形態によれば、第1の材料は、少なくともU、Pu、Th、U、U、U、Pu、Pu、Pu、Th、Th、Th、およびそれらの混合物の群より選択される少なくとも1つの物質、ならびにとり得るバランスからなる。
【0018】
本発明の実施形態によれば、層は、中性子を吸収するように構成される。中性子吸収能力をもって、これに関連し、核分裂リアクタのための適切な中性子スペクトルに亘る、中性子を捕捉しそれによりリアクタの反応性を減少させる材料の能力が理解される。したがって、燃料材の生成されたパワーが減少されうる。
【0019】
本発明の実施形態によれば、第2の材料は、少なくともHf、B、ZrB、In、Cd、Hg、Ag、Gd、Er、B、B、B、およびそれらの混合物の群より選択される少なくとも1つの物質、ならびにとり得るバランスからなる。この群からの物質は、燃料材にとって好ましい中性子吸収特性を有する。本発明の範囲内で、BCのようなBの層とUOのコア、ZrBの層とUOのコア等のように、これらの層の中性子吸収物質のいずれかと、上述したコアの物質とを組み合わせることが可能である。
【0020】
本発明の実施形態によれば、層は、外側周囲からコアを保護するように構成される。それにより、燃料材のコアは、外側周囲との相互作用から保護される。よって、燃料材と外側周囲との間の接触関係が低減される。燃料材の層の保護機能は、外側周囲に対する被覆チューブの保護への余剰を提供する。それに替えて、燃料材の余剰な保護は、被覆チューブの保護特性を、例えば被覆チューブの材料の厚さを減少させることにより、低減するようにできる。被覆チューブの保護効果は、代替的に、層の保護により完全に置き換えられうる。それにより、燃料材のコアから外側周囲への改善された熱伝導が得られ、これは、核分裂リアクタの出力パワーの増加をもたらす。
【0021】
外側周囲は、燃料材の周囲を含み、主として減速媒体および冷却媒体を含む。反応操作において、外側周囲は、燃料材に接触して反応する反応環境を含む。
【0022】
コアの保護は、外側周囲に、例えば、第1の材料により汚染されない、軽水核分裂リアクタの減速体をもたらす。汚染から外側周囲を保護することにより、リアクタでのメンテナンス作業におけるメンテナンス作業者の放射線への露出が低減される。リアクタ停止のための費用およびリーク燃料材の置換のための費用もまた、回避できる。
【0023】
本発明の実施形態によれば、層は、実質的に、ガス状の物質、少なくともヘリウムに対して不透過である。層がガスに対して実質的に不透過であるため、燃料材に形成されるガス状の物質は、燃料材の内部に維持されうる。それにより、燃料材において形成されるガス状の物質によって外側周囲が汚染されることはない。
【0024】
本発明の実施形態によれば、層は、実質的に、核分裂リアクタの環境内において耐食性である。実質的に耐食性であるので、層は化学的に不活性であり、または実質的に化学的に不活性であり、それによる保護の効果は、核分裂リアクタ内における外側周囲に曝された場合にも維持されることがわかる。層が耐食性であることにより、コアは外側周囲によって影響を受けずに保護される。それにより、燃料材の完全性および機能が保証される。
【0025】
本発明の実施形態によれば、燃料材の層における孔隙率(porosity)の細孔容積(pore volume)は、コアにおける孔隙率の細孔容積より非常に少ない。コアの孔隙率は、材料構造内での形成されたガスを少なくとも部分的に維持するために用いられる。層のより低い孔隙率により、層の所望され得る材料特性、例えば高い密度等が達成されて、これにより、外側周囲からコアを保護し、かつ、コア内に形成されたガス状の物質が燃料材から逃げないようにする別個の効果を層に提供する。それにより、燃料材の完全性および機能が保証され、第1の材料またはコア内に形成されたガス状の物質によって外側周囲が汚染されるリスクが低減される。
【0026】
本発明の実施形態によれば、燃料材の層は、金属材料およびセラミック材料のうちの少なくとも1つを含む。これらの群からの特定の材料は、リアクタ環境内において特に適切である性質を有する。例えば、特定のセラミック材料、例えば、SiCは、高い耐食性、高い硬度を有し、熱に対しても耐久性がある。例えば、特定の金属材料、例えばZrは、高い耐食性および首尾良い機械的特性を有する。
【0027】
本発明の実施形態によれば、中性子吸収材の層は、Ti、Zr、Al、Fe、Cr、Ni、SiC、SiN、ZrO2、Alおよびそれらの混合物の群より選択される少なくとも1つの物質、ならびにとり得るバランスからなる。この群からの物質は、燃料材の層にとって好ましい特性を有する。
【0028】
本発明の実施形態によれば、層は、コアを完全に包囲する。それによって、コアは、外部環境から完全に保護かつ分離される。
【0029】
本発明の目的はまた、燃料材を製造するための方法を提供することである。
【0030】
この目的は請求項14に規定された方法により達成される。
【0031】
このような方法は、第2の材料が第1の材料を少なくとも部分的に包囲するような仕方で、第1の材料および第2の材料をツールのスペースに供給する工程と、第1の材料および第2の材料を共に、燃料材に焼結する工程と、を含み、中間層は、コアと層との間に形成され、中間層は、コアから層への第1の材料の濃度の減少およびコアから層への第2の材料の濃度の増加を含む材料勾配を有する。上記方法のためのツールはツール部分を含み、スペースは、焼結のための材料で充填されるように構成される。
【0032】
本発明の実施形態によれば、第1の材料および第2の材料を供給する工程において、スペースの内側部分とスペースの外側部分との間に中間ゾーンが形成され、中間ゾーンは、スペースの内側部分からスペースの外側部分への第1の材料の濃度の減少、および、スペースの内側部分からスペースの外側部分への第2の材料の濃度の増加を含む。中間ゾーンは、第1および第2の材料からなる、スペースの内側部分とスペースの外側部分との間の領域を含む。中間ゾーンは、材料勾配を含み、これは、第1および第2の材料が段階的にまたは次第に、互いに移動されることを意味する。スペースへ材料が供給された後に、第1の材料は、層、コアおよび中間層が形成されるような仕方で、焼結される第2の材料と接合される。
【0033】
本発明の実施形態によれば、上記第1および上記第2の材料は、共にもたらされて上記中間ゾーンを形成するような仕方で、上記スペースは振動される。第1の材料および第2の材料が、焼結前、スペースに供給された後、スペースは振動される。それにより、第1の材料および第2の材料の材料勾配は、スペースの内側部分とスペースの外側部分との間に生じる。
【0034】
本発明の実施形態によれば、上記第1の材料は粉末形状で供給される。粉末形状での物質により、固体の状態における材料は、小さな粒子サイズで多数の粒子を含むと理解される。粉末は、可能であれば、またフリーフロー(free flowing)であってよく、これは、粉末が機械的なストレスに曝された場合に、容易に変形されることを意味する。それにより、粉末は、焼結のために、ツールのスペースを満たす。粉末形状の材料を用いることによって、本方法は、中間ゾーンが形成された場合に容易にされる。
【0035】
本発明の実施形態によれば、第2の材料は粉末形状にて供給される。
【0036】
本発明の実施形態によれば、上記スペースは、上記内側部分を備える内側パイプによって分けられ、上記スペースは、上記外側部分を備える外側パイプによって分けられ、上記外側パイプと上記内側パイプとの間に中間部分が形成される。中間部分における材料は、焼結後、燃料材の中間層を形成する。外側部分は第2の材料が供給されるように構成され、焼結後、中性子吸収材の層を形成する。中間部分は、焼結後、中性子吸収材の中間層を形成する。
【0037】
本発明の実施形態によれば、中間に位置する部分は、中間ゾーンを生成する第1の材料および第2の材料の混合物が供給される。中間部分における材料は、焼結後、中性子吸収材の中間層を形成する。
【0038】
本発明の実施形態によれば、上記中間部分は、少なくとも中間のパイプの分割部分(division)に分けられ、上記分割部分は、上記第1の材料の濃度と上記第2の材料の濃度との間で異なる比率の混合物が供給される。2つ以上の分割部分に、スペースの中間部分を分割することによって、分割部分における第1および第2の材料の材(component)は、焼結後、形成された中間層は、層とコアとの首尾良い接着を提供する材料勾配を得るように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明はここで、本発明の異なる実施形態の記載によってより綿密に説明され、かつ添付の図面を参照して説明される。
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る燃料材の、側面から見た場合における断面を示す。
【図2】図2は、燃料材の断面の物質濃度の異なる例を有する図を示す。
【図3】図3は、燃料材の断面の物質濃度の異なる例を有する図を示す。
【図4】図4は、燃料材の断面の物質濃度の異なる例を有する図を示す。
【図5】図5は、燃料材の断面の物質濃度の異なる例を有する図を示す。
【図6】図6は、燃料材を包囲する燃料ロッドの一例の斜視図を示す。
【図7】図7は、焼結のための物質を供給するためのツールの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、側面から見た断面図において、本発明の一実施形態に係る燃料材1の一例を開示しており、以下では、材(コンポーネント)として示す。図1の材1は円筒形状を有し、シリンダの底の中心は0(ゼロ)にあり、シリンダの外皮表面は、x軸に沿ったRにある。材1の他の形状もまた可能であり、例えば矩形、方形、球状等である。
【0041】
材1は、核分裂リアクタで使用されるように構成され、第1の材料からなるコア2、および第2の材料からなる層3を備える。材のコア2は、核分裂リアクタ内で核反応が維持されるような手法によりエネルギーおよび中性子を生成するように構成された核分裂材料を含む。材の層3は、図1に開示された例においては、耐食性およびガス状の物質への不浸透性のような、その保護特性により、コア2を完全に包囲しており、かつ外側周囲(outer surrounding)からコア2を保護する。層3は中性子吸収機能も有し、材の生成されたエネルギーが減少する。好ましくは、層3の中性子吸収物質は、ボロンまたはガドリニウムのような可燃中性子吸収体からなる。
【0042】
材1は、中間層4がコア2と層3との間において形成されるような方法で焼結により製造される。中間層4は、第1の材料および第2の材料の両方を含む。中間層4は、コア2から層3へは第1の材料の濃度が減少して、コア2から層3へは第2の材料の濃度が増加する材料勾配を有する。中間層4は、コア2と層3との間の遷移を形成し、こうして第1の材料の物質特性は第2の材料の特性へと遷移し、逆もまた然りである。それによりコア2と層3との間の首尾良い接着が得られる。
【0043】
図2から図5は、中性子吸収材の断面の物質濃度の例を開示する。図におけるx軸は寸法の軸であり、ここで0は材の中心を示し、Rは材の外周を示す。図のy軸は、材の、第1の材料および第2の材料についての物質濃度を百分率で示しており、ここで第1の材料はAで示しかつ点線で示され、第2の材料はBで示しかつ実線で示される。図において、コア2、中間層4、および層3は図のx軸に沿って指定されている。
【0044】
図2は、中性子吸収材内の物質濃度のバリエーションの一例を示しており、ここで、コア2と層3との間の中間層4は、コアから層へ第1の材料の濃度が段階的に減少し、かつ、コアから層へ第2の材料の濃度が段階的に増加する材料勾配を有する。図2に示される例において、コア2から中間層4への第1の材料の濃度の減少は段階的に生じ、第1の材料の濃度は、コア2中において実質的に100%から、中間層4において実質的に50%に減少する。第1の材料の濃度は、中間層4内では一定である。さらに、中間層4から層3への第1の材料の濃度の減少は段階的に生じ、実質的に50%から実質的に0%となる。逆に、コア2から中間層4へは、第2の材料の濃度が段階的に増加し、ここで第2の材料の濃度は、コア2においてほぼ0%から中間層4において実質的に50%に増加する。第2の材料の濃度は中間層4内において一定である。さらに、中間層4から層3への、第2の材料の濃度の増加は、段階的に生じて、実質的に50%から実質的に100%となる。
【0045】
図3は、図2と同様に、燃料材内の物質濃度の段階的なバリエーションの一例であり、違いは、中間層4が2つの濃度エリア、すなわち第1の濃度エリア41および第2の濃度エリア42を含んでおり、第1の材料と第2の材料とは異なる濃度である。第1の材料および第2の材料の濃度は、第1の濃度エリア41および第2の濃度エリア42内で一定である。図3の例において、コア2から中間層4への第1の材料の濃度の減少は、段階的に生じており、ここで第1の材料の濃度は、コア2内において、実質的に100%から、中間層4の第1の濃度エリア41内において実質的に70%に減少する。中間層4内において、第1の濃度エリア41から第2の濃度エリア42への第1の材料の濃度の段階的な減少が生じて、実質的に70%から実質的に30%となる。中間層4から層3への第2の濃度エリア42からの第1の材料の濃度の段階的な減少が生じ、実質的に30%から実質的に0%となる。逆に、コア2から中間層4へは、第2の材料の濃度の増加が生じる。
【0046】
図4は、中性子吸収材内の物質濃度の一例を開示しており、ここでコア2と層3との間の中間層4は、コア2から層3へ、第1の材料の濃度の連続的な減少、ならびに、コア2から層3へ、第2の材料の濃度の連続的な増加を含む材料勾配を有する。中間層4内において、コア2から層3へ、第1の材料の濃度は、実質的に100%から実質的に0%へ、一定した比率で減少する。逆に、中間層4内において、第2の材料の濃度は、コア2から層3へと、実質的に0%から実質的に100%へと上昇する。
【0047】
図5は、燃料材内における物質濃度のバリエーションの1つの例を開示し、ここでコア2と層3との間の中間層4は、コア2から層3への第1の材料の濃度の連続した減少、ならびにコア2から層3への第2の材料の濃度の連続した増加を含む材料勾配を含む。図5の例において、コア2から中間層4への第1の材料の濃度の減少は連続的な仕方で生じる。中間層4内において、第1の材料の濃度の漸次的な減少が生じ、実質的に100%から実質的に0%となる。コア2と層3との間の遷移は、例えば、非線形の仕方で生じ得る。逆に、コア2から、第2の材料の濃度の増加が生じる。開示された例において、中間層4は材の主たる部分を形成し、他方でコア2および層3は材の少ない部分を形成する。
【0048】
図6は、本明細書に記載の型の燃料材1を包囲する被覆チューブ10を有する燃料ロッドの一例の斜視図を開示する。燃料ロッドの被覆チューブ10は、部分的にカットされることにより示される内側部を含む。燃料材1を包囲する複数の被覆チューブ10は、固定具に配置され、かつ燃料アセンブリを形成し、図示しないが、核分裂リアクタ内に照射されるように構成される。被覆チューブ10は、ジルコニウム合金のような低中性子吸収断面を有する耐食性合金からなる。被覆チューブ10の機能は、燃料材1を包囲することであり、それにより、内側と燃料材のコア2における核分裂物質との相互作用を防ぐ。被覆チューブ10は、材1と被覆チューブ10との間の熱伝導性能を増加させることを目的として、ヘリウムのようなガスで加圧されうる。
【0049】
図7は、燃料材の製造のためのツールの一例の断面を開示する。開示されたツールは、燃料材を製造するための任意の適切な焼結方法において用いられることができる。本発明のために用いることができる適切な焼結方法の例は、大気圧かつ上昇した温度にて焼結する従来の焼結技術、冷間静水圧成形法(CIP)、熱間静水圧成形法(HIP)、放電プラズマ焼結等である。
【0050】
本方法のためのツールはツール部分を備えており、焼結のための材料が供給されるためにスペースが配置されている。ツール部分は周囲要素91を備える。周囲要素91は上述のスペースを包囲する。ツールのスペースは、内側部分99を生成する内側パイプ98によって分けられ、この内側部分99において、第1の材料が供給され、これは、焼結後、材のコア2を形成する。ツールのスペースはまた、外側部分93を形成する外側パイプ94によって分けられ、この外側部分93において、第2の材料が供給され、これは、焼結後、材の層3を形成する。外側パイプ94と内側パイプ98との間には、中間部分95が形成され、この中間部分95の間には、第1の材料と第2の材料とが供給可能であり、これらは、焼結後、材の中間層4を形成する。このようなツールの構成により、例えば、図2における物質濃度のバリエーションを有する材が達成可能である。
【0051】
図7における例において、中間部分95は、中間パイプ96の分割部分(division)に分けられる。中間部分95内の分割部分は、第1の材料の濃度と第2の材料の濃度との間で異なる比率の混合物が供給される。混合物は、例えば図3に示されるように、焼結後に形成された層3が、コア2から層3への、第1の材料の濃度の減少、ならびに、コア2から層3への、第2の材料の濃度の増加を含む材料勾配を得るような方法にて構成可能である。
【0052】
第1および第2の材料の上述の変動(vibration)により、図4および図5に示されるように、物質濃度のバリエーションは、図7に示されているツールの配置構成によって達成可能である。
【0053】
本発明の一実施形態において、図7に開示されたパイプ94、96、98は、ツールのスペースから引き出され、ツールのスペース内の材料が燃料材に共に焼結される前に、電極は、電源100に接続され、かつ電流は、ツールのスペース内の供給された材料を介して導通する。あるいは、ツールのスペース内の材料は、共に焼結する前に、さらに、ツールのスペースを振動させることによって共にもたらされてもよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、図7に開示されたパイプ94、96、98は、焼結方法の間に蒸発する材料を含む。それにより、パイプ94、96、98は、中性子吸収材のセラミック組成物に影響を与えることなく、焼結方法の間、ツールのスペース内に残すことができる。
【0055】
本発明の一実施形態において、図7に開示されたパイプ94、96、98は、ツールのスペースの底に対して距離が形成されるように配置される。それにより、第2の材料は、第1の材料を完全に包囲するように、ツールのスペースに供給可能である。
【0056】
本発明は開示された実施形態に限定されず、特許請求の範囲の請求項の範囲内において修正および変更可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の材料からなるコア(2)と、第2の材料からなる層(3)と、を含み、前記層(3)は、前記コア(2)を少なくとも部分的に包囲し、前記第1の材料は、核分裂物質を含む、核分裂リアクタ内において用いられるように構成される燃料材(1)であって、前記燃料材(1)は、前記コア(2)と前記層(3)との間に中間層(4)を含み、前記中間層(4)は、前記コア(2)から前記層(3)への前記第1の材料の濃度の減少および前記コア(2)から前記層(3)への前記第2の材料の濃度の増加を含む材料勾配を有することを特徴とする燃料材(1)。
【請求項2】
前記材料勾配は、前記コア(2)から前記層(3)への前記第1の材料の濃度の連続的な減少および前記コア(2)から前記層(3)への前記第2の材料の濃度の連続的な増加を含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料材(1)。
【請求項3】
前記燃料材(1)は、焼結により製造されることを特徴とする請求項1または2に記載の燃料材(1)。
【請求項4】
前記第1の材料は、少なくともU、Pu、Th、U、U、U、Pu、Pu、Pu、Th、Th、Th、およびそれらの混合物の群より選択される少なくとも1つの物質、ならびにとり得るバランスからなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の燃料材(1)。
【請求項5】
前記層(3)は、中性子を吸収するように構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の燃料材(1)。
【請求項6】
前記第2の材料は、少なくともHf、B、ZrB、In、Cd、Hg、Ag、Gd、Er、B、B、B、およびそれらの混合物の群より選択される少なくとも1つの物質、ならびにとり得るバランスからなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料材(1)。
【請求項7】
前記層(3)は、外側周囲から前記コア(2)を保護するように構成されることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料材(1)。
【請求項8】
前記層(3)は、ガス状の物質、少なくともヘリウムに対して実質的に不浸透性であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料材(1)。
【請求項9】
前記層(3)は、核分裂リアクタの環境内において、実質的に耐食性であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の燃料材(1)。
【請求項10】
前記層(3)は、ゼロ以上の全細孔容積を有する孔隙率を有し、前記コア(2)は、ゼロより大きい全細孔容積を有する孔隙率を有し、前記層(3)における孔隙率の細孔容積は、前記コア(2)における孔隙率の細孔容積より著しく低いことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の燃料材(1)。
【請求項11】
前記層(3)は、金属材料およびセラミック材料のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の燃料材(1)。
【請求項12】
前記層(3)は、Ti、Zr、Al、Fe、Cr、Ni、SiC、SiN、ZrO2、Alおよびそれらの混合物の群より選択される少なくとも1つの物質、ならびにとり得るバランスからなることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の燃料材(1)。
【請求項13】
前記層(3)は、前記コア(2)を完全に包囲することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の燃料材(1)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の燃料材を製造する方法であって、前記第2の材料が前記第1の材料を少なくとも部分的に包囲するような仕方で、前記第1の材料および前記第2の材料をツールのスペースに供給する工程と、前記第1の材料および前記第2の材料を共に、前記燃料材に焼結する工程と、を含み、前記中間層は、前記コアと前記層との間に形成され、前記中間層は、前記コアから前記層への前記第1の材料の濃度の減少および前記コアから前記層への前記第2の材料の濃度の増加を含む材料勾配を有する、方法。
【請求項15】
前記第1の材料および第2の材料を供給する工程において、前記スペースの内側部分と前記スペースの外側部分との間に中間ゾーンが形成され、前記中間ゾーンは、前記スペースの内側部分から前記スペースの外側部分への前記第1の材料の濃度の減少、および、前記スペースの内側部分から前記スペースの外側部分への前記第2の材料の濃度の増加を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1および前記第2の材料は、共にもたらされて前記中間ゾーンを形成するような仕方で、前記スペースは振動される請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−521494(P2013−521494A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556039(P2012−556039)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【国際出願番号】PCT/SE2011/050204
【国際公開番号】WO2011/108975
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(504446548)ウェスティングハウス エレクトリック スウェーデン アーベー (26)