説明

燃料燃焼装置

【課題】火炎の輝度が高く、燃焼安定性に優れ、燃焼排ガス中のCO濃度の低い燃料燃焼装置を提供する。
【解決手段】液化ガス燃料を噴霧する第1噴霧手段21および第2噴霧手段22を備え、第1噴霧手段21は、液化ガス燃料を噴出する複数の噴出部211と、複数の噴出部211と連通し液化ガス燃料の噴霧する方向に広がる略錐形状の空洞部212と、を有し、複数の噴出部211は、空洞部212に位置し、複数の噴出部211から噴出した液化ガス燃料は、空洞部212内において互いに衝突した後、空洞部212を介して外部に噴出し、第2噴霧手段22は、空洞部212を介すことなく液化ガス燃料を噴霧し、第1噴霧手段21および第2噴霧手段22から噴出した液化ガス燃料は、同時に燃焼して一つの火炎を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料燃焼装置に関する。詳しくは、液化ガス燃料を噴射、燃焼させるバーナなどの燃料燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重油などの液体燃料と、蒸気、空気などの噴霧媒体とを混合させ、噴霧媒体の圧力によって液体燃料を霧状に噴射させ、それに着火して燃焼をさせるバーナなどの燃料燃焼装置が知られている(例えば、特許文献1)。
これによれば、液体燃料が霧状に微細化され、燃焼空気と接する表面積が増大するので、効率のよい燃焼が可能となる。
このような燃料燃焼装置は、例えば、ボイラや加熱炉などに組み込まれ、生産工程で使われる蒸気や暖房・給湯用の蒸気を作り出す熱源機器として利用される。ボイラや加熱炉などは、例えば、バーナなどの燃料燃焼装置による燃焼で発生される熱を利用して水を蒸発させ、蒸気を作り出している。
【0003】
ところで、従来、燃料燃焼装置に用いられる燃料は重油が主であったが、最近では、排気ガスのクリーン化の観点からガス燃料に転換しつつある。輸送、貯蔵を容易にする目的で、ガス燃料を加圧し、液状化した液化ガス燃料としては、例えば、液化石油ガス(LPG:Liquefied Petroleum Gas)やジメチルエーテル(DME:Di−Methyl Ether)などが挙げられる。例えば、DMEは、液化しやすいなどのハンドリング性も備えているため、今後、ボイラおよび加熱炉の主要燃料となることが予想される。
【0004】
しかし、このような液化ガス燃料は、重油など従来の液体燃料と比較して火炎の輝度が低い。このため、特許文献1のような従来の燃料燃焼装置を用いて、液化ガス燃料を燃焼させた場合、燃焼空気の量を極端に絞った運転を実施しても重油のような橙色輝炎は発されず、青色の不輝炎を呈する。
このような燃料燃焼装置を、例えば、ボイラに適用した場合、ボイラの火炉における輻射伝熱量が低下するので、ボイラの設計仕様によっては能力が低下する。その結果、ボイラの負荷を、(例えば、60%程度に)低下させなければならず、ボイラの能力に余裕がない場合には、液化ガス燃料への転換が困難となるおそれがあった。
【0005】
そこで、このような課題を解決するため、例えば、特許文献2には、バーナチップの燃料の吐出孔側に、吐出孔と連通され、燃料の噴霧する方向に広がる略円錐台形状の空洞部が形成された筒状部材を配設したバーナが開示されている。
特許文献2に記載のバーナにおいて、吐出孔から吐出された燃料は、略円錐台形状の空洞部を介して拡散状態が調整され、擬似的な不完全燃焼状態を形成させて噴霧、燃焼されるので、火炎の輝度向上を図ることができる。
しかしながら、一般に、液化ガス燃料は圧力が高く、液化ガス燃料の噴射速度は、重油などの噴射速度よりも速い。このため、液化ガス燃料が十分に空気へ巻き込まれず、バーナの噴射孔付近で形成される火炎が不安定となり、安定的な燃焼が望めない場合があった。
【0006】
このような課題を解決するため、例えば、複数箇所から噴霧させた液化ガス燃料同士を衝突させる方法が考えられる。
このような方法によれば、噴霧された液化ガス燃料の粒子は、衝突により互いの運動量を打ち消しあうので、衝突後の液化ガス燃料の速度が低下する。噴射速度の低下により、安定的な燃焼を得ることができる。また、液化ガス燃料同士を衝突させることにより、液化ガス燃料の粒子は散乱され、周囲の空気を巻き込みやすくなる。したがって、液化ガス燃料の優れた燃焼安定性を実現できる。
【0007】
【特許文献1】特開2005−257170号公報
【特許文献2】特開2006−162095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献2に記載のバーナや、特許文献2に記載のバーナに液化ガス燃料同士を衝突させる機構を追加したバーナにおいては、擬似的な不完全燃焼状態が発生するため、燃焼排ガス中の一酸化炭素(CO)濃度が増加するおそれがあった。
【0009】
本発明の目的は、上述のような問題などを解決し、火炎の輝度が高く、燃焼安定性に優れ、燃焼排ガス中のCO濃度の低い燃料燃焼装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の燃料燃焼装置は、液化ガス燃料を燃焼させる燃料燃焼装置であって、前記液化ガス燃料を噴霧する燃料噴霧チップと、前記燃料噴霧チップに前記液化ガス燃料を供給する燃料供給手段と、を備え、前記燃料噴霧チップは、前記液化ガス燃料を噴霧する第1噴霧手段および第2噴霧手段を備え、前記第1噴霧手段は、前記液化ガス燃料を噴出する複数の噴出部と、前記複数の噴出部と連通され前記液化ガス燃料の噴霧する方向に広がる略錐形状の空洞部と、を有し、前記複数の噴出部は、前記空洞部に設けられ、前記複数の噴出部から噴出された前記液化ガス燃料は、前記空洞部内において互いに衝突された後、前記空洞部を介して外部に噴霧され、前記第2噴霧手段は、前記空洞部を介すことなく前記液化ガス燃料を噴霧し、前記第1噴霧手段および前記第2噴霧手段から噴霧された前記液化ガス燃料は、同時に燃焼されて一つの火炎を形成することを特徴とする。
【0011】
第1噴霧手段は、空洞部に設けられた複数の噴出部から液化ガス燃料を噴出する。このとき、液化ガス燃料は、減圧沸騰により噴霧状態で噴射され、噴射された液化ガス燃料同士は、空洞部内において互いに衝突される。
霧化した液化ガス燃料の粒子は、衝突により互いの運動量を打ち消しあい、略錘形状の空洞部で拡散するので、衝突後の液化ガス燃料の速度は減速される。この噴射速度の低下により、安定的な燃焼を得ることができる。また、液化ガス燃料同士を衝突させることにより、液化ガス燃料の粒子は散乱され、周囲の空気を巻き込みやすくなる。したがって、液化ガス燃料の優れた燃焼安定性を実現できる。
【0012】
ここで、第1噴霧手段の噴出部から噴出された液化ガス燃料は、略錐形状の空洞部を介して外部に噴霧され、液化ガス燃料の拡散状態が調整される。
拡散状態が調整された液化ガス燃料を燃焼させれば、擬似的な不完全燃焼状態が形成されるので、火炎の輝度向上を図ることができる。
また、空洞部の略錐形状の奥部で噴射された液化ガス燃料は、開放部に向かうにつれて緩やかに減圧されるので、液化ガス燃料の減圧沸騰による気化・膨張を緩やかに発生させることができる。したがって、噴出された液化ガス燃料が空洞部の開放部で急激に気化・膨張することがないので、安定した火炎を形成することができる。
【0013】
一方、第2噴霧手段は、空洞部を介すことなく液化ガス燃料を噴霧する。
したがって、第2噴霧手段から噴霧された液化ガス燃料を燃焼させた場合、火炎に十分な空気が供給され、不完全燃焼状態が形成される可能性が低いので、燃焼排ガス中のCO濃度を低く抑えることができる。
【0014】
すなわち、第1噴霧手段から噴霧された液化ガス燃料を燃焼させる場合、燃焼排ガス中のCO濃度が高めになるものの、火炎の輝度および燃焼安定性には優れる。第2噴霧手段から噴霧された液化ガス燃料を燃焼させる場合、火炎の輝度および燃焼安定性が不足するおそれがあるが、燃焼排ガス中のCO濃度を低く抑えることができる。
本発明の燃料燃焼装置は、このような第1噴霧手段および第2噴霧手段から噴霧された液化ガス燃料を、同時に燃焼させて一つの火炎を形成するので、第1噴霧手段と第2噴霧手段とのいずれか一つを用いる場合(つまり、従来の燃料燃焼装置や特許文献2に記載の燃料燃焼装置に液化ガス燃料同士を衝突させる機構を追加した燃料燃焼装置など)に比べて、燃焼排ガス中のCO濃度を低く抑えつつ、火炎の輝度および燃焼安定性を向上することができる。
【0015】
本発明において、前記燃料燃焼装置は、前記燃料噴霧チップから噴霧される前記液化ガス燃料の燃焼量を調整する調整手段を備え、前記調整手段は、前記第1噴霧手段から噴霧される前記液化ガス燃料の燃焼量を調整する第1調整手段と、前記第2噴霧手段から噴霧される前記液化ガス燃料の燃焼量を調整する第2調整手段と、を備えることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、第1噴霧手段による燃焼量および第2噴霧手段による燃焼量が、第1調整手段および第2調整手段によって、それぞれ別個に調整される。
したがって、第1噴霧手段による燃焼量と第2噴霧手段による燃焼量との比率を任意に設定することができ、火炎の輝度および燃焼安定性と燃焼排ガス中のCO濃度とのバランスのとれた最適な条件で液化ガス燃料を燃焼させることができる。
【0017】
本発明において、前記第1噴霧手段から噴霧される前記液化ガス燃料の燃焼量は、前記第1噴霧手段および前記第2噴霧手段から噴霧される前記液化ガス燃料の燃焼量合計に対し40質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、火炎の輝度および燃焼安定性と燃焼排ガス中のCO濃度とのバランスのとれた最適な条件で液化ガス燃料を燃焼させることができる。
ここで、第1噴霧手段による燃焼量が第1噴霧手段および第2噴霧手段による燃焼量合計に占める割合(以下、燃焼量率と略記する。)が、40質量%未満であると、火炎の輝度および燃焼安定性が低下するので好ましくない。燃焼量率が、70質量%を超えると、燃焼排ガス中のCO濃度が上昇するので好ましくない。
なお、燃焼量率は、45質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上60質量%以下であることが一層好ましい。
【0019】
本発明において、前記第1噴霧手段の前記複数の噴出部が前記液化ガス燃料を噴出する方向を示す複数の噴射軸は、前記空洞部内において互いに交差し、前記空洞部の略錐形状の軸は、前記複数の噴射軸の交差点を通ることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、各噴出部から空洞部内に噴出された液化ガス燃料は、各噴射軸に沿って進み、噴射軸の交差点において互いに衝突する。
したがって、比較的簡単な構成で、液化ガス燃料の衝突を実現することができる。
また、空洞部は、軸が各噴射軸の交差点を通る略錐形状を有することから、空洞部内部の気圧は、略錐形状の奥部から開放部に向かって徐々に低下し、開放部において炉内圧となる。
したがって、噴出された液化ガス燃料が空洞部の開放部で急激に気化・膨張することがないので、安定した火炎を形成することができる。
なお、上述したように、空洞部が、液化ガス燃料の拡散状態を調整し、擬似的な不完全燃焼状態を形成することはもちろんである。
【0021】
本発明において、前記複数の噴射軸は、60度以上120度以下の角度で互いに交差することが好ましい。
このような構成によれば、各噴出部から噴射された液化ガス燃料は、60度以上120度以下の角度で互いに衝突する。この角度で互いに衝突した液化ガス燃料は、衝突後、各噴出部を結ぶ線に沿う方向の速度が打ち消され、さらに、各噴出部を結ぶ線と直交する方向へ向かって減速されて噴出される。
【0022】
ここで、各噴出部の噴射軸の交差角度が60度より小さい場合、液化ガス燃料同士も60度より小さい角度で衝突することになる。すると、衝突時において、各噴出部を結ぶ線と直交する方向の液化ガス燃料の速度が大きすぎるため、この方向の減速効果が得られない。
一方、各噴出部の噴射軸の交差角度が120度より大きい場合、液化ガス燃料同士も120度より大きい角度で衝突することになる。すると、衝突後に、各噴出部を結ぶ線に直交する方向の液化ガス燃料の速度が不十分で、液化ガス燃料が空洞部の内壁に衝突して霧化不良(液だれ)が発生しやすくなる。
これに対し、本発明のように、60度以上120度以下の衝突角で液化ガス燃料同士を衝突させると、液化ガス燃料の速度を適切に減速させることができる。
したがって、より安定した火炎を形成することができ、液化ガス燃料の優れた燃焼安定性を実現できる。
【0023】
本発明において、前記空洞部の略錐形状は、前記空洞部の軸に対して15度以上30度以下の開き角を有することが好ましい。
ここで、開き角が15度未満の場合、液化ガス燃料が空洞部の内側面に干渉して霧化不良が発生しやすくなる。一方、開き角が30度を超える場合、液化ガス燃料の気化・膨張を緩やかに発生させることができない。
これに対し、開き角を15度以上30度以下に設定すると、衝突により散乱した液化ガス燃料が空洞部内面に干渉しにくくなる。また、空洞部内部の気圧を略錐状の奥部から開放部へ向けて徐々に低下させることができる。したがって、より安定した火炎を形成することができ、液化ガス燃料の優れた燃焼安定性を実現できる。
また、開き角が15度以上30度以下であれば、液化ガス燃料の拡散状態を適切に調整し、火炎の輝度向上を図ることができる。
【0024】
本発明において、前記噴出部は、断面略円形の孔部であり、前記孔部の個数Nと、前記孔部の孔径Dnと、前記空洞部の軸方向の長さLとは、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
{L/(Dn×N)}≧130 …(1)
このような構成によれば、燃料噴霧チップは、孔部の個数N、孔部の孔径Dn、および、空洞部の軸に沿う長さをLが、常に上式を成立させる寸法を有する。このように、孔部の個数Nおよび孔部の孔径Dnで表される液化ガス燃料の噴射規模に対し、空洞部の長さLを相対的に適切な寸法に設定することにより、空洞部が、液化ガス燃料の気化・膨張が緩やかに行われるための内部の気圧変化特性を達成することができる。従って、本発明の燃料噴霧チップは、より一層安定した火炎を形成することができ、液化ガス燃料の優れた燃焼安定性を実現できる。
また、このような構成によれば、液化ガス燃料の拡散状態を適切に調整し、火炎の輝度向上を図ることができる。
【0025】
本発明において、前記燃料噴霧チップに噴霧媒体を供給する噴霧媒体供給手段を備え、前記第2噴霧手段は、前記液化ガス燃料と前記噴霧媒体とを混合し前記液化ガス燃料と前記噴霧媒体との混合体を噴出する混合体噴出部と、前記混合体噴出部に前記噴霧媒体を供給する噴霧媒体供給通路と、前記混合体噴出部に前記液化ガス燃料を供給する燃料供給通路と、を備えることが好ましい。
【0026】
このような構成によれば、混合体噴出部において、噴霧媒体と液化ガス燃料とを混合し、霧化された液化ガス燃料を燃焼可能な状態で外部に噴出させることができる。
ここで、このような第2噴霧手段は、従来の燃料燃焼装置の燃料噴霧チップにも設けられていたものである。したがって、従来の燃料噴霧チップに第1噴霧手段を設けることで簡易に本発明の燃料噴霧チップを得ることができる。
【0027】
本発明において、前記第2噴霧手段の前記混合体噴出部は、前記第1噴霧手段の前記空洞部の軸を中心とする円周上の略均等の位置に複数設けられ、前記空洞部を取り囲んでいることが好ましい。
【0028】
このような構成によれば、第1噴霧手段により噴霧された液化ガス燃料を取り囲むように、第2噴霧手段から液化ガス燃料が噴霧される。
したがって、第1噴霧手段または第2噴霧手段から噴霧された液化燃料ガスを燃焼させれば、第1噴霧手段および第2噴霧手段から噴霧された液化ガス燃料を、同時に燃焼させ、一つの火炎を形成することができる。
また、混合体噴出部が、空洞部の軸を中心とする円周上の略均等の位置に設けられるので、火炎の位置によって輝度や燃焼排ガス中のCO濃度が異なることがなく、従来の燃料燃焼装置と同様の操作性を確保することができる。
【0029】
本発明において、前記第1噴霧手段の前記複数の噴出部は、前記空洞部の軸を中心とする円周上の略均等の位置に複数設けられ、前記第1噴霧手段の前記複数の噴出部のいずれかと前記第2噴霧手段の前記複数の混合体噴出部のいずれかとは、前記空洞部の軸を含む一つの平面上の前記空洞部の軸に対して同じ側に位置することがないことが好ましい。
【0030】
このような構成によれば、噴出部と混合体噴出部とが過度に近接することがなく、燃焼不良の発生を防止することができる。
噴出部と混合体噴出部とが近接して設けられた場合、液化ガス燃料の燃焼時に、噴出部から噴出された液化ガス燃料の流れと、混合体噴出部から噴出された液化ガス燃料の流れと、が干渉し、燃焼不良が発生する。
噴出部と混合体噴出部とが、空洞部の軸に対して均等に設けられ、軸を含む一つの平面上の同じ側に位置しなければ、噴出部と混合体噴出部との間に距離がとられるので、液化ガス燃料の流れの干渉、および、燃焼不良の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
[燃料燃焼装置の構成]
図1は、本実施形態の燃料燃焼装置1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、燃料燃焼装置1は、燃料噴霧チップ2を備えたバーナ3と、バーナ3に液化ガス燃料4を供給する燃料供給手段5と、バーナ3に噴霧媒体6を供給する噴霧媒体供給手段7と、を備える。
【0033】
燃料供給手段5は、液化ガス燃料4であるDMEを貯蔵する燃料貯蔵タンク51と、バーナ3と燃料貯蔵タンク51とを結ぶ配管52と、配管52に設けられ液化ガス燃料4の加圧を実施する加圧ポンプ53と、配管52のバーナ3と加圧ポンプ53との間の部分に設けられ液化ガス燃料4の流量を調整する流量調整弁54と、を備える。
噴霧媒体供給手段7は、噴霧媒体6である圧縮空気を貯蔵する噴霧媒体貯蔵タンク71と、バーナ3と噴霧媒体貯蔵タンク71とを結ぶ配管72と、配管72に設けられ噴霧媒体6の流量を調整する流量調整弁73と、を備える。
【0034】
[バーナの構成]
図2に、バーナ3の部分断面図を示す。以下の説明においては、図2の右側を先端側、左側を後端側とする。
図2に示すように、バーナ3は、バーナ本体31と、バーナ本体31の後端側に取り付けられるハンドル部32と、バーナ本体31の先端側に取り付けられる噴霧燃焼部33とを備える。
【0035】
バーナ本体31は、ガンボディー311と、ガンボディー311の先端側の側面(図2では右下)に設けられた燃料供給孔312と、ガンボディー311の後端側の側面(図2では左上)に設けられた噴霧媒体供給孔313とを備える。
燃料供給孔312には管55が螺合され、この管55にはユニオン56によって、燃料供給手段5の配管52が連結されている。
また、噴霧媒体供給孔313には管74が螺合され、この管74にはユニオン75によって、噴霧媒体供給手段7の配管72が連結されている。
【0036】
ガンボディー311の内部には、燃料供給孔312が設けられた部分よりも後端側、かつ、噴霧媒体供給孔313が設けられた部分よりも先端側、つまり、両供給孔312,313の中間の位置に略円筒形状のスリーブ314が設けられている。スリーブ314は、先端側の側面がガンボディー311の内壁と接するように形成されており、後端側に向かうにつれて略円筒形状の外径が減少するテーパ部314Aを備える。なお、スリーブ314の内径は一定で、スリーブ314の中心軸に沿って円形孔314Bが形成されている。
【0037】
テーパ部314Aの外壁と、ガンボディー311の内壁との間にはパッキン315が設けられる。パッキン315は、スリーブ314の外壁に螺合されるパッキン押さえ316を通じて先端側に付勢され、スリーブ314の外壁とガンボディー311の内壁との間の隙間を密封する。
【0038】
ハンドル部32は、パッキン321を介してガンボディー311に螺合されるプラグ322と、プラグ322に嵌合される略円柱形状のハンドルピン323と、一端がハンドルピン323の後端部323Aに、他端がプラグ322に取り付けられる線状の金属からなり、ハンドルピン323の周囲に螺旋状に形成されるハンドル324と、を備える。
このハンドル324を把持して操作することにより、バーナ3の位置や方向を変えることができる。
【0039】
噴霧燃焼部33は、ガンボディー311の内壁に接するように溶着される長尺円筒形状のアウターノズル331と、スリーブ314の円形孔314Bに挿入・溶着されアウターノズル331と同軸の長尺円筒形状であるインナーノズル332と、アウターノズル331先端の内壁に接するように溶着される略円筒形状のノズルボディー333と、インナーノズル332の先端部およびノズルボディー333の先端部に密着して当接される燃料噴霧チップ2と、ノズルボディー333先端の外壁と螺合され、その締付力によって燃料噴霧チップ2をインナーノズル332およびノズルボディー333に付勢させるキャップ334とを備える。
アウターノズル331の内壁とインナーノズル332の外壁との間には、断面円輪形状の空隙335が形成され、この空隙335と連続して、ノズルボディー333の内壁とインナーノズル332の外壁との間には、断面円輪形状の空隙336が形成されている。インナーノズル332は、円筒形状であるから、その中心軸に沿って円形孔332Aが形成されている。
【0040】
[燃料噴霧チップの構成]
図3に、図2の先端側からみた燃料噴霧チップ2を示す図を、図4に、図3のIV−IV断面図を、図5に、図3のV−V断面図を示す。
図3、図4および図5に示すように、燃料噴霧チップ2は、略円柱形状の部材であり、液化ガス燃料を噴霧する第1噴霧手段21および第2噴霧手段22と、噴霧される液化ガス燃料4の燃焼量を調整する調整手段23と、を備える。
調整手段23は、第1噴霧手段21から噴霧される液化ガス燃料4の燃焼量を調整する第1調整手段231と、第2噴霧手段22から噴霧される液化ガス燃料4の燃焼量を調整する第2調整手段232と、を備える。
【0041】
(1)第1噴霧手段の構成
図3および4に示すように、第1噴霧手段21は、液化ガス燃料4を噴出する複数の噴出部211と、複数の噴出部211と連通され液化ガス燃料4の噴霧する方向に広がる略錐形状の空洞部212と、噴出部211に液化ガス燃料4を供給する燃料供給通路213と、を備える。
【0042】
噴出部211は、空洞部212内の後端側に設けられた断面略円形の孔部211Aである。噴出部211は、空洞部212の軸212Aを中心とする円周上の略均等の位置に4つ設けられている。すなわち、噴出部211は、軸212Aを中心とし、90度おきに一つずつ設けられている。
空洞部212は、燃料噴霧チップ2の先端側の略中心部に設けられ、後端側ほど径の小さい略円錐台形状の外形を有する。この空洞部212の略円錐台形状の軸に対する開き角Xは、15度以上30度以下である。
【0043】
燃料供給通路213は、燃料噴霧チップ2の側面寄りに、燃料噴霧チップ2の軸と略平行に設けられた略円柱状の孔部である。
燃料供給通路213の後端側の端部は、ノズルボディー333の空隙336と連通されており、燃料供給通路213の先端側の端部は、噴出部211(孔部211A)と連通されている。孔部211Aは、液化ガス燃料4の供給量を制御するため、燃料供給通路213よりも細く形成されている。すなわち、孔部211Aは、第1調整手段231としても機能する。
【0044】
図4に示すように、複数(4つ)の噴出部211が液化ガス燃料4を噴出する方向を示す複数(4つ)の噴射軸211Bは、空洞部212内において互いに交差し、空洞部212の略円錐台形状の軸212Aは、複数の噴射軸211Bの交差点211Cを通る。
ここで、複数の噴射軸211Bのなす角Yは、60度以上120度以下である。
また、噴出部211の個数N(本実施形態では4)と、噴出部211の孔径Dnと、空洞部212の軸212A方向の長さLとは、以下の式(1)を満たす。
{L/(Dn×N)}≧130 …(1)
【0045】
(2)第2噴霧手段の構成
図3および5に示すように、第2噴霧手段22は、液化ガス燃料4と噴霧媒体6とを混合し液化ガス燃料4と噴霧媒体6との混合体を噴出する混合体噴出部221と、混合体噴出部221に噴霧媒体6を供給する噴霧媒体供給通路222と、混合体噴出部221に液化ガス燃料4を供給する燃料供給通路223と、を備える。
【0046】
混合体噴出部221は、第1噴霧手段21の空洞部212の軸212Aを中心とする円周上の略均等の位置に4つ設けられ、空洞部212を取り囲んでいる。すなわち、混合体噴出部221は、軸212Aを中心とし、90度おきに一つずつ設けられている。
噴霧媒体供給通路222は、燃料噴霧チップ2の中心部に燃料噴霧チップ2の軸と平行に設けられた略円柱状の孔部である。
噴霧媒体供給通路222の後端側の端部は、インナーノズル332の円形孔332Aと連通され、噴霧媒体供給通路222の先端側の端部は、混合体噴出部221と連通している。
【0047】
燃料供給通路223は、略円柱状の孔部223Aと、孔部223Aよりも径の細い孔部223Bと、を有する。
孔部223Aは、燃料噴霧チップ2の側面寄りに、燃料噴霧チップ2の軸と略平行に設けられている。孔部223Bは、この孔部223Aの先端側の端部と混合体噴出部221の側面とに開口を有し、孔部223Aと混合体噴出部221とを連通させる。
孔部223Aの先端側の端部は、孔部223Aよりも細い孔部223Bに連通している。この孔部223Bは、噴霧媒体6の供給量を制御し、第2調整手段232として機能する。
【0048】
図3に示すように、燃料供給通路213と燃料供給通路223とは、空洞部212の軸212Aを中心として、45度おきに、互いに交互に設けられている。
このため、噴出部211と混合体噴出部221ともまた、空洞部212の軸212Aを中心として、45度おきに、互いに交互に設けられている。
したがって、第1噴霧手段21の複数の噴出部211のいずれかと第2噴霧手段22の複数の混合体噴出部221のいずれかとは、空洞部212の軸212Aを含む一つの平面上の空洞部212の軸212Aに対して同じ側に位置することがない。
【0049】
[燃料燃焼装置の動作]
以上の構成からなる本発明の燃料燃焼装置1の動作の一例を、図1ないし図5を用いて説明する。
【0050】
図1に示すように、燃料燃焼装置1にあっては、燃料貯蔵タンク51から液化ガス燃料4であるDMEが、配管52Aを介して、加圧ポンプ53に送り出される。加圧ポンプ53により加圧された液化ガス燃料4は、配管52Bを介してバーナ3の燃料供給孔312に導入される。
バーナ3への液化ガス燃料4の流量は、流量調整弁54により調整される。
一方、噴霧媒体6である空気は、空気を貯蔵した噴霧媒体貯蔵タンク71から、配管72を介して、バーナ3の噴霧媒体供給孔313に導入される。
バーナ3への噴霧媒体6の流量は、流量調整弁73により調整される。
【0051】
図2に示すように、バーナ3において、燃料供給孔312から導入された液化ガス燃料4は、ガンボディ311の内部に流入される。その後、液化ガス燃料4は、噴霧燃焼部33の空隙335及び空隙336を通過して、燃料噴霧チップ2の燃料供給通路213および燃料供給通路223に流入される。
一方、噴霧媒体6である空気は、噴霧媒体供給孔313を通じてガンボディ311内に流入される。その後、スリーブ314の円形孔314B、インナーノズル332の円形孔332Aを順次通過して、燃料噴霧チップ2の噴霧媒体供給通路222に流入される。
【0052】
図4に示すように、燃料噴霧チップ2においては、燃料供給通路213より流入された液化ガス燃料4は、噴出部211を介して空洞部212内に噴出される。
噴出部211から空洞部212内に噴出された液化ガス燃料4は、各噴射軸211Bに沿って進み、噴射軸211Bの交差点211Cにおいて互いに衝突する。液化ガス燃料4の粒子は、衝突により互いの運動量を打ち消しあうので、衝突後の液化ガス燃料4の速度は減速される。
空洞部212の略円錐台形状の奥部で噴射、衝突された液化ガス燃料4は、その後、空洞部212の開放部に向かうにつれて緩やかに減圧されるとともに、拡散状態が調整され、外部に噴霧される。
【0053】
図5に示すように、燃料噴霧チップ2においては、噴霧媒体供給通路222より流入された噴霧媒体6は、混合体噴出部221に噴出される。
また、燃料供給通路223より流入された液化ガス燃料4は、孔部223Aおよび孔部223Bを通過して混合体噴出部221の側面に噴出される。ここで、混合体噴出部221にて噴霧媒体6と混合され、噴霧媒体6とともに外部に噴霧される。
【0054】
このようにして燃料噴霧チップ2の噴出部211および混合体噴出部221から噴霧された液化ガス燃料に着火することで、液化ガス燃料の燃焼を開始させる。
第1噴霧手段21の噴出部211および第2噴霧手段22の混合体噴出部221から噴霧された液化ガス燃料4は、同時に燃焼されて一つの火炎を形成する。
【0055】
このとき、第1調整手段231である孔部211Aの径を調整することにより、第1噴霧手段21から噴霧される液化ガス燃料4の燃焼量を調整する。同様に、第2調整手段232である孔部223Bの径を調整することにより、第2噴霧手段22から噴霧される液化ガス燃料4の燃焼量を調整する。
なお、第1噴霧手段21から噴霧される液化ガス燃料4の燃焼量は、第1噴霧手段21および第2噴霧手段22から噴霧される液化ガス燃料4の燃焼量合計に対し40質量%以上70質量%以下となるように調整することが好ましい。
【0056】
[実施形態の効果]
前記した実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
【0057】
第1噴霧手段21において、噴出部211から噴出された液化ガス燃料4は、減圧沸騰により噴霧状態で噴射され、空洞部内212において互いに衝突する。液化ガス燃料4の粒子は、衝突により互いの運動量を打ち消しあうので、衝突後の液化ガス燃料の速度は減速される。この噴射速度の低下により、安定的な燃焼を得ることができる。
【0058】
また、第1噴霧手段21においては、空洞部212によって拡散状態が調整された液化ガス燃料を燃焼させるので、擬似的な不完全燃焼状態が形成され、火炎の輝度向上を図ることができる。
空洞部212の略円錐台形状の奥部で噴射された液化ガス燃料4は、開放部に向かうにつれて緩やかに減圧されるので、液化ガス燃料4の減圧沸騰による気化・膨張を緩やかに発生させることができる。したがって、噴出された液化ガス燃料4が空洞部212の開放部で急激に気化・膨張することがないので、安定した火炎を形成することができる。
【0059】
第2噴霧手段22においては、空洞部212を介すことなく液化ガス燃料4を噴霧するので、燃焼空気との良好な混合が得られ、燃焼排ガス中のCO濃度を低く抑えることができる。
【0060】
すなわち、第1噴霧手段21から噴霧された液化ガス燃料4を燃焼させる場合、燃焼排ガス中のCO濃度が高めになるものの、火炎の輝度および燃焼安定性には優れる。第2噴霧手段22から噴霧された液化ガス燃料4を燃焼させる場合、火炎の輝度および燃焼安定性が不足するおそれがあるが、第1噴霧手段21による燃焼によって発生したCOを燃焼させる効果によって、火炎全体としてのCO濃度を低く抑えることができる。
本発明の燃料燃焼装置1は、このような第1噴霧手段21および第2噴霧手段22から噴霧された液化ガス燃料4を、同時に燃焼させて一つの火炎を形成するので、第1噴霧手段21と第2噴霧手段22とのいずれか一つを用いる場合(つまり、特許文献1に記載のような従来の燃料燃焼装置や、特許文献2に記載の燃料燃焼装置に液化ガス燃料同士を衝突させる機構を追加した燃料燃焼装置など)に比べて、燃焼排ガス中のCO濃度を低く抑えつつ、火炎の輝度および燃焼安定性を向上することができる。
【0061】
第1噴霧手段21による燃焼量および第2噴霧手段22による燃焼量を、第1調整手段231および第2調整手段232によって、それぞれ別個に調整できるので、第1噴霧手段21による燃焼量と第2噴霧手段22による燃焼量との比率を任意に設定することができ、火炎の輝度および燃焼安定性と燃焼排ガス中のCO濃度とのバランスのとれた最適な条件で液化ガス燃料4を燃焼させることができる。
【0062】
複数の噴出部211が液化ガス燃料4を噴出する方向を示す複数の噴射軸211Bを、空洞部212内において互いに交差させるだけの比較的簡単な構成により、液化ガス燃料4の衝突を実現することができる。
空洞部212は、軸212Aが各噴射軸211Bの交差点を通る略円錐台形状を有することから、空洞部212内部の気圧は、略円錐台形状の奥部から開放部に向かって徐々に低下し、開放部において炉内圧となる。
したがって、噴出された液化ガス燃料4が空洞部212の開放部で急激に気化・膨張することがないので、安定した火炎を形成することができる。
【0063】
第1噴霧手段21が、60度以上120度以下の衝突角で液化ガス燃料4同士を衝突させるので、液化ガス燃料4の速度を適切に減速させることができる。したがって、より安定した火炎を形成することができ、液化ガス燃料4の優れた燃焼安定性を実現できる。
【0064】
空洞部212の軸に対する開き角が15度以上30度以下なので、衝突により散乱した液化ガス燃料4が空洞部212内面に干渉しにくくなり、また、空洞部212内部の気圧を略円錐台形状の奥部から開放部へ向けて徐々に低下させることができる。したがって、より安定した火炎を形成することができ、液化ガス燃料の優れた燃焼安定性を実現できる。また、液化ガス燃料の拡散状態を適切に調整し、火炎の輝度向上を図ることができる。
【0065】
孔部211Aの個数Nと、孔部211Aの孔径Dnと、空洞部212の軸212A方向の長さLとが、上述した式(1)を満たすので、空洞部212が、液化ガス燃料4の気化・膨張が緩やかに行われるための内部の気圧変化特性を達成することができる。したがって、本発明の燃料噴霧チップ2は、より一層安定した火炎を形成することができ、液化ガス燃料4の優れた燃焼安定性を実現できる。また、液化ガス燃料4の拡散状態を適切に調整し、火炎の輝度向上を図ることができる。
【0066】
第2噴霧手段22において、液化ガス燃料4が噴霧媒体6とともに噴霧されるので、不完全燃焼を防ぐことができ、燃焼排ガス中のCO濃度を低く抑えることができる。
【0067】
第2噴霧手段22の混合体噴出部221において、噴霧媒体6と液化ガス燃料4とを混合し、霧化された液化ガス燃料4を燃焼可能な状態で外部に噴出させることができる。ここで、このような第2噴霧手段22は、従来の燃料燃焼装置1の燃料噴霧チップ2にも設けられていたものである。したがって、従来の燃料噴霧チップ2を第1噴霧手段21と第2噴霧手段22の両方を組み込んだ燃料噴霧チップ2に取り替えることで簡易に本発明の燃料燃焼装置1を得ることができる。
【0068】
第1噴霧手段21により噴霧された液化ガス燃料4を取り囲むように、第2噴霧手段22から液化ガス燃料4が噴霧されるので、第1噴霧手段21および第2噴霧手段22から噴霧された液化ガス燃料4を、同時に燃焼させ、一つの火炎を形成することができる。
また、混合体噴出部221が、空洞部212の軸212Aを中心とする円周上の略均等の位置に設けられるので、火炎の位置によって輝度や燃焼排ガス中のCO濃度が異なることがなく、従来の燃料燃焼装置1と同様の操作性を確保することができる。
【0069】
第1噴霧手段21の複数の噴出部211のいずれかと第2噴霧手段22の複数の混合体噴出部221のいずれかとは、空洞部212の軸212Aを含む一つの平面上の空洞部212の軸212Aに対して同じ側に位置することがないので、噴出部211と混合体噴出部221との間に距離がとられ、液化ガス燃料4の流れの干渉、および、燃焼不良の発生を防止することができる。
【0070】
[変形例]
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは、本発明に含まれるものである。
【0071】
本発明において、液化ガス燃料をDMEとしたが、これに限定されない。
例えば、ジエチルエーテル(DEE)、液化石油ガス(LPG)などを用いてもよい。
この場合でも、上述の実施形態と同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0072】
本発明において、噴霧媒体6を空気としたが、これに限定されない。
例えば、噴霧媒体6は、蒸気あるいは可燃ガスであってもよい。
この場合でも、混合体噴出部221において、液化ガス燃料4を霧化し、燃焼可能な状態で外部に噴出させることができる。
【0073】
本実施形態において、燃料噴霧チップ2が、第1調整手段231および第2調整手段232を備える構成を例示したが、これに限定されない。
例えば、バーナ本体31および噴霧燃焼部33が、燃料供給路213および燃料供給路223のそれぞれに液化ガス燃料4を供給する二つの配管と、この二つの配管内の液化ガス燃料4の流量をそれぞれ調整する二つの弁と、を備える構成としてもよい。
この場合でも、二つの弁が、第1調整手段231および第2調整手段232として作用するので、第1噴霧手段21による燃焼量と第2噴霧手段22による燃焼量との比率を任意に設定することができ、火炎の輝度および燃焼安定性と燃焼排ガス中のCO濃度とのバランスのとれた最適な条件で液化ガス燃料4を燃焼させることができる。
【0074】
その他、本発明の実施における具体的な構造および形状などは、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などとしてもよい。
【実施例1】
【0075】
実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。なお、本発明はこれらの実施例の記載内容に何ら制限されるものではない。
【0076】
上述の実施形態の燃料燃焼装置1を用い、噴霧媒体6を空気として、液化ガス燃料4であるDMEを燃焼させた。
この時、調整手段23により、第1噴霧手段21による燃焼量が第1噴霧手段21および第2噴霧手段22による燃焼量合計に占める割合(燃焼量率)を変化させ、各燃焼量率における燃焼排ガス中のCO濃度、燃焼排ガスの温度、輝炎発生の有無を評価した。
第1噴霧手段21および第2噴霧手段22による燃焼量合計は、280kg/hとした。これは、燃料燃焼装置1の最大燃焼量の約50%に相当する。
燃焼供給圧は、0.5MPaG以上1.4MPaG以下である。
噴出部211の孔部211Aの孔径Dn、および、混合体噴出部221の孔径は、0.5mm以上0.9mm以下である。
評価の結果を表1に、評価の基準を表2に示す。なお、輝炎発生の有無については火炎の色を目視で確認し、青いものを×、やや青いものを△、やや赤いものを○、赤いものを◎として比較評価した。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
表1から、燃焼量率35%、50%、65%が、火炎の輝度と燃焼排ガス中のCO濃度とのバランスのとれた最適な条件となっていることがわかる。
これに対し、燃焼量率75%、100%では、燃焼排ガス中のCO濃度が高い。また、燃焼量率0%、25%では、火炎の輝度が低下する。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、液化ガス燃料を噴射、燃焼させるバーナなどの燃料燃焼装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態に係る燃料燃焼装置の概略構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係る燃料燃焼装置のバーナの部分断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る燃料噴霧チップを先端側から見た図。
【図4】図3のIV−IV断面図。
【図5】図3のV−V断面図。
【符号の説明】
【0082】
1 燃料燃焼装置
2 燃料噴霧チップ
3 バーナ
4 液化ガス燃料
5 燃料供給手段
6 噴霧媒体
7 噴霧媒体供給手段
21 第1噴霧手段
22 第2噴霧手段
23 調整手段
211 噴出部
211B 噴射軸
211C 交差点
212 空洞部
212A 軸
222 噴霧媒体供給通路
223 燃料供給通路
231 第1調整手段
232 第2調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガス燃料を燃焼させる燃料燃焼装置であって、
前記液化ガス燃料を噴霧する燃料噴霧チップと、
前記燃料噴霧チップに前記液化ガス燃料を供給する燃料供給手段と、を備え、
前記燃料噴霧チップは、前記液化ガス燃料を噴霧する第1噴霧手段および第2噴霧手段を備え、
前記第1噴霧手段は、
前記液化ガス燃料を噴出する複数の噴出部と、
前記複数の噴出部と連通され前記液化ガス燃料の噴霧する方向に広がる略錐形状の空洞部と、を有し、
前記複数の噴出部は、前記空洞部に設けられ、
前記複数の噴出部から噴出された前記液化ガス燃料は、前記空洞部内において互いに衝突された後、前記空洞部を介して外部に噴霧され、
前記第2噴霧手段は、前記空洞部を介すことなく前記液化ガス燃料を噴霧し、
前記第1噴霧手段および前記第2噴霧手段から噴霧された前記液化ガス燃料は、同時に燃焼されて一つの火炎を形成する
ことを特徴とした燃料燃焼装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料燃焼装置であって、
前記燃料噴霧チップから噴霧される前記液化ガス燃料の燃焼量を調整する調整手段を備え、
前記調整手段は、
前記第1噴霧手段から噴霧される前記液化ガス燃料の燃焼量を調整する第1調整手段と、
前記第2噴霧手段から噴霧される前記液化ガス燃料の燃焼量を調整する第2調整手段と、を備える
ことを特徴とした燃料燃焼装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の燃料燃焼装置であって、
前記第1噴霧手段から噴霧される前記液化ガス燃料の燃焼量は、前記第1噴霧手段および前記第2噴霧手段から噴霧される前記液化ガス燃料の燃焼量合計に対し40質量%以上70質量%以下である
ことを特徴とした燃料燃焼装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の燃料燃焼装置であって、
前記第1噴霧手段の前記複数の噴出部が前記液化ガス燃料を噴出する方向を示す複数の噴射軸は、前記空洞部内において互いに交差し、
前記空洞部の略錐形状の軸は、前記複数の噴射軸の交差点を通る
ことを特徴とした燃料燃焼装置。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料燃焼装置であって、
前記複数の噴射軸は、60度以上120度以下の角度で互いに交差する
ことを特徴とした燃料燃焼装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の燃料燃焼装置であって、
前記空洞部の略錐形状は、前記空洞部の軸に対して15度以上30度以下の開き角を有する
ことを特徴とした燃料燃焼装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の燃料燃焼装置であって、
前記噴出部は、断面略円形の孔部であり、
前記孔部の個数Nと、前記孔部の孔径Dnと、前記空洞部の軸方向の長さLとは、以下の式(1)を満たす
ことを特徴とした燃料燃焼装置。
{L/(Dn×N)}≧130 …(1)
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の燃料燃焼装置であって、
前記燃料噴霧チップに噴霧媒体を供給する噴霧媒体供給手段を備え、
前記第2噴霧手段は、
前記液化ガス燃料と前記噴霧媒体とを混合し前記液化ガス燃料と前記噴霧媒体との混合体を噴出する混合体噴出部と、
前記混合体噴出部に前記噴霧媒体を供給する噴霧媒体供給通路と、
前記混合体噴出部に前記液化ガス燃料を供給する燃料供給通路と、を備える
ことを特徴とした燃料燃焼装置。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料燃焼装置であって、
前記第2噴霧手段の前記混合体噴出部は、
前記第1噴霧手段の前記空洞部の軸を中心とする円周上の略均等の位置に複数設けられ、
前記空洞部を取り囲んでいる
ことを特徴とした燃料燃焼装置。
【請求項10】
請求項9に記載の燃料燃焼装置であって、
前記第1噴霧手段の前記複数の噴出部は、前記空洞部の軸を中心とする円周上の略均等の位置に複数設けられ、
前記第1噴霧手段の前記複数の噴出部のいずれかと前記第2噴霧手段の前記複数の混合体噴出部のいずれかとは、前記空洞部の軸を含む一つの平面上の前記空洞部の軸に対して同じ側に位置することがない
ことを特徴とした燃料燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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