説明

燃料蒸気分離器

船舶用エンジンの燃料供給システムにおいて、燃料蒸気の回収のために、およびエンジンが傾いた際の燃料流出を防止するために使用される、燃料蒸気分離器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.技術分野
この発明は、船舶用エンジンの燃料供給システムにおいて、燃料蒸気の回収のために、およびエンジンが傾いた際の燃料流出を防止するために使用される、燃料蒸気分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
2.考察
小型の船舶用船外エンジンは通常、取外し可能であり、船の船尾に取付けられる。これらのエンジンは典型的には、船の缶またはタンクから液体燃料を吸引して引込む統合燃料システムを含む。吸気システムを介してエンジンにより燃焼されるべき蒸気を凝縮または回収するために、燃料は蒸気分離器ユニットを経由する。蒸気分離器の燃料は、燃料噴射システムに高圧で供給される。より大型の船舶用船内エンジンまたは船内/船外エンジンも、典型的には、燃料を吸引して引込み、蒸気分離ユニットを経由して蒸気を捕らえ、捕らえた蒸気をエンジンにより燃焼して、船の閉鎖区域における燃料蒸気の蓄積を防止する、統合燃料システムを含む。
【0003】
船上の燃料蒸気は、特に閉鎖融室において問題である、と海洋産業は長い間、認識してきた。燃料流出を防止するために、船舶安全規格は、タンクとエンジンとの間を経由する燃料が、自動車業界でよく行なわれるように圧力をかけて供給されるのではなく、真空下で吸引されることを、長い間要求してきた。したがって、燃料は、万一燃料ラインが破裂した場合に船への燃料流出を防止するために、タンクから負の圧力で引抜かれている。しかしながら、燃料は低圧では、特にエンジン近傍の高温、および船が波を越えていく際の震動状態と組合さると、容易に蒸発する。放出を防止するために、またはエンジン近傍での蒸気の制御不能な燃焼の可能性を防止するために蒸気を捕らえること以上に、もしエンジンに供給された燃料内に蒸気があれば、蒸気閉塞として公知の状態が起こり得る。
【0004】
蒸気分離器は、上述の蒸気の問題に対処するよう設計されている。蒸気分離器の中には、燃料噴射器の燃料レールからの加熱された燃料を戻して、燃料レールに存在する蒸気を再度液化させてから、燃料を高圧ポンプに再度導入し、噴射器システムの燃料レールに供給するものもある。いくつかの船外モータでは、蒸気は蒸気分離器によって大気に放出され得るが、融室内に閉鎖されたエンジンでは、燃料蒸気は真空ライン接続を通してエンジン燃料取入システムに供給され、エンジン内部で制御されたやり方で燃焼される。
【0005】
蒸気分離器は、多くの船舶用途では、分離器での燃料レベルが予め定められたレベルを上回るたびにベントラインを自動的に閉じるためのフロート作動弁を有する蒸気ベントバルブを含む。このフロート弁は、液体流体が、燃料蒸気だけをエンジンに供給するよう設計された真空ラインを通って、エンジンの吸気口へと供給されることを防止する。加えて、このフロート機構はまた、特に取外し可能な船外モータ用に、エンジンが傾いた場合に液体燃料が蒸気ベントから流れ出ないようにベントラインを閉じるよう設計されている。
【0006】
先行技術の燃料蒸気ベントバルブ構成は一般に、ニードル弁に接続された蒸気ラインのすぐ下で液体燃料によって支持されている浮力フロートであり、ニードル弁は、液体燃料がフロートを持上げると閉じる。典型的な先行技術のニードルベントバルブシステム200を図1に示す。これらのニードル弁200は、ピボットピン204上で通常担持されたフロート202を含み、フロートのピボットの回転軸はエンジン取付ブラケットのピボット軸に対して平行に配向されており、支柱が水から出た状態の船外モータなどでのような傾いた状態へとエンジンが回転されるたびに、フロートがニードル弁208でベント通路206を閉じるようになっている。エンジンが傾いた際に通路を閉じることは、エンジンが止まった場合、および傾いた場合に液体燃料が蒸気分離器を通って流れることを防止し、または、それが動作中に液体燃料が蒸気ベントバルブの蒸気部分を通ってエンジンの吸気口へと流れることを防止する。
【0007】
多くの船舶用船外エンジンはしばしば、使用後に手動で船から取外され、格納されるよう構成されている。エンジンを取外した場合、ユーザは通常、トレーラー、車両の貨物区域、またはおそらくピックアップトラックの荷台にエンジンを置く際に、支柱およびチラーアームを保護するために、エンジンを横にしておく。船舶用エンジンが横にして置かれると、ベントバルブ機構のピボット軸はエンジンとはもはや整列しておらず、多くの場合、フロート弁がニードル弁を適正に閉じず、またはニードル弁が後で運搬中にずれて、液体燃料が蒸気分離器の蒸気出口を通ってエンジン、エンジン融室、またはエンジンが格納された区域へと漏れるようになる場合がある。したがって、従来にない方向におけるエンジンの傾きにベント制御装置が対処できる、改良された燃料蒸気分離器が望ましい。また、液体燃料が存在していても、弁またはフロートが動かされる波打つ状態といった振動または揺れにより、エンジン動作中に固体燃料が蒸気出口を通って放出されないようにし、それにより液体燃料が蒸気出口へとはねかかるようにする、蒸気分離器を有することが望ましい。蒸気出口が吸気口に接続されているシステムでは、蒸気出口への液体燃料のはねかかりにより、液体燃料がエンジンの吸気口に供給されるようになって、燃料が多すぎる状態を引起し、通常、エンジンの失速をもたらす。したがって、振動による瞬間的な放出を防止し、また、蒸気が蒸気分離器を通って放出されるときの制御を可能にすることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
自動車用途では、船舶用途において過度の蒸気を生み出す要因が一般に存在しないため、蒸気分離器は使用されない。さらに、車両は典型的には、車両の閉鎖区域における燃料蒸気の蓄積に関する懸念が少ない。自動車の排出システムの中には、「ロールオーバー」ベントバルブを燃料タンク内に取入れたものもあるが、これらは、蒸気回収キャニスタへの開いたベントラインを単に保護する、排出システムの受動構成である。自動車のエンジンは、ロールオーバーベントバルブが機能しなくなったり、または取外されたとしても、影響を受けずに、かつ中断することなく、動作し続けるであろう。これに対し、蒸気ベントバルブがエンジンの能動部品である船舶システムでは、故障または不具合はエンジンを全く機能させなくする可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
上述の事項に鑑み、この発明は、船舶用エンジンのための燃料供給システムを含む。燃料供給システムは、大量の液体燃料および燃料蒸気を回収するための閉鎖された内部チャンバを有する蒸気分離器を含む。吸引ポンプが、負のポンプ圧力をかけて、液体燃料を遠隔の燃料タンクから内部チャンバへと運ぶ。高圧ポンプが、正の圧力をかけて、液体燃料を内部チャンバからエンジンの燃料噴射システムへと運ぶ。船舶上では通常、規則により、加圧された燃料ラインは18インチよりも長くなってはならないため、この高圧燃料ポンプは、エンジン上の吸気口または噴射器の近傍に位置している。蒸気分離器は、内部チャンバにおいて捕らえられた燃料蒸気を逃がすために内部チャンバと連通するベントバルブ装置を含む。ベントバルブ装置は、逃がし通路が通過する閉鎖された上端を含む。ニードル弁がばね上に配置されており、ベント通路を作動的に密封するよう、ばねにより付勢されている。液体燃料が存在する場合を感知するサーミスタ回路、およびリレーに、磁気コイルが取付けられてもよい。液体燃料が存在しないことをサーミスタが感知すると、それは、ニードル弁を開ける磁気コイルにパワーを供給するリレーを切換えてもよい。磁気コイルはさらに、磁気コイルをオフおよびオンに切換えるようにリレーを制御する、エンジン制御モジュールなどの制御モジュールによって制御されてもよい。
【0010】
このシステムは、エンジンパワーがオフの場合でも燃料の漏れを防止するよう設計されている。たとえば、エンジンが動作していない場合といった、パワーがオフの場合、ばねはニードル弁を、蒸気の逃げおよび液体燃料の漏れを防止する閉鎖位置へと付勢する。液体燃料が存在すると感知され、パワーが供給中の場合、たとえばエンジンが動作中の場合、または車両の点火装置がオンにされた場合には、このシステムはニードル弁を閉じたままにする。なぜならパワーはコイルには供給されていないためである。燃料がなく、パワーがオンの場合、パワーはコイルに供給されてもよく、ニードル弁を開くようにする。振動によってニードル弁が開くこと、または燃料が一時的にサーミスタと接触しなくなることを防止するために、サーミスタ回路は、磁気コイルをオンにしてニードル弁を開くことにより蒸気を放出する前に、たとえば1/2秒〜1秒、またはそれ以上の遅延を有するよう、プログラムされてもよく、その結果、振動または波に由来する、蒸気ベントを介した燃料の不測の放出を防止する。さらに、エンジンがオフの場合などに閉鎖位置へと付勢されることにより、船外モータが運搬される際の燃料の漏れ、およびエンジンがオフの場合の蒸気の逃げが防止される。
【0011】
この発明に従った燃料供給システムは、船舶用エンジンの蒸気分離器のための一方向ベントバルブ装置を提供することにより、先行技術の短所および欠点を克服し、それはまた、蒸気分離器からの燃料蒸気の放出のタイミングの制御も可能にする。
【0012】
この発明の利用可能性のさらなる範囲が、以下の詳細な説明、請求項、および図面から明らかとなるであろう。しかしながら、この発明の精神および範囲内のさまざまな変更および修正が当業者には明らかとなるため、詳細な説明および特定の例は、この発明の好ましい実施例を示すものの、例示のためにのみ与えられていることが理解されるべきである。
【0013】
発明の簡単な説明
この発明は、以下に挙げる詳細な説明、添付された請求項、および添付図面からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】先行技術のベント制御装置の断面図である。
【図2】典型的な船舶用船外エンジンの側面図である。
【図3】船舶用船外エンジンのための燃料供給システムの概略図である。
【図4】ニードル弁が開放位置にある、この発明に従った船舶用蒸気分離器の断面図である。
【図5】閉鎖位置にある船舶用弁蒸気分離器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施例の詳細な説明
エンジン12のための蒸気分離器28をおおまかに図示する。図1は、船の船尾14に取付けられた船舶用船外エンジン12を示しているが、エンジン12はいかなる船舶用エンジンであってもよい。図2に示すような小型の船舶用船外エンジン12は通常、エンジン12が運搬および/または保守のために船から迅速に取外せるように、ブラケット16上に取付けられている。ブラケット16は、浅水条件での進水および操作を容易にするよう、プロペラ18が水から出るよう振り上げられた状態で、モータヘッドが船へ向かって回転されるようにする、傾斜構成を含む。一例として、モータ12は、使用条件と非使用条件との間で、およびトリム制御のため、軸Aを中心として枢動されてもよい。エンジン12は船外モータとして図2に示されているが、この発明の蒸気分離器28は、船の融室内に永続的に取付けられた船内/船外エンジンまたは船内エンジンに容易に適用されてもよい。
【0016】
船舶用エンジン12は、図3に概して22として示すエンジン搭載燃料システムによって、燃料タンク20から液体燃料を引出す。燃料タンク20はより小型の燃料タンクとして図2に示されているが、あらゆるサイズ構成または形状を含むあらゆる種類の燃料タンクがこの発明で使用されてもよいことが容易に認識されるはずである。燃料タンク20および供給ライン24を除き、船舶用エンジンの燃料システム22は一般に、高圧燃料ラインが18インチよりも長くなってはならないといった規則を満たすよう、エンジンのできるだけ近傍に部品が位置するように、エンジン12と完全に統合されている。図2に示す例示的な船外モータ12については、エンジン12が船から取外される際、燃料システム22はエンジン12とともに取外されてもよいが、燃料タンク20および燃料ライン24は船にとどまってもよく、または別個に取外されてもよい。しかしながら、いくつかの例では、燃料タンク20もエンジン12とともに取外されてもよい。
【0017】
図3に示すように、低圧燃料供給ポンプ26または揚力ポンプは、典型的には、供給ライン24を通してタンク20から燃料を引く。燃料は、概して図3および4に28として示す蒸気分離器へと供給される。蒸気分離器28は、入ってくる低い燃料圧力、燃料の正常な蒸発、高温のエンジン近傍にあることによる蒸発、および、ある状況下でエンジンから戻ってきた高温の攪拌された燃料からの蒸発によって生じた蒸気を回収し、放出する。高圧ポンプ30は、図4に示すような蒸気分離器28に接続されてもよく、燃料噴射器システム32などを通してエンジンの気筒に燃料を圧力をかけて送り込む。いくつかの他の実施例では、高圧ポンプ30は蒸気分離器に直接接続されていなくてもよい。未使用の燃料は、戻りライン34を介して蒸気分離器28に戻されてもよい。しかしながら、いくつかの実施例では、燃料は蒸気分離器に戻されず、システムは戻りラインを含まない。蒸気分離器28はさらにベント装置36を含み、それには、船外エンジンを含む多くの船舶用エンジンのために、エンジン吸気システムとの接続用の真空接合部38が設けられている。燃料蒸気がエンジンの吸気口を通って循環されるよう、真空はベントライン40において負の圧力を作り出す。
【0018】
例示的な蒸気分離器28を図4に示すが、当業者であれば、蒸気分離器28のサイズ、形状および構成が、間隔、配置およびエンジン要件に依存して変わり得ることを容易に認識するであろう。図4に示す例示的な蒸気分離器28は、一体型の高圧燃料ポンプ30を含む。高圧燃料ポンプ30は、燃料取入口42と、燃料噴射器システム32と連通する出口44とを含む。電力がワイヤ46を通って高圧ポンプ30に供給される。図4には示されていないものの、揚力ポンプ26または低圧燃料ポンプも、蒸気分離器28と一体化して含まれてもよい。いくつかの実施例では、シュレーダー(Schrader)弁などの弁76が、高圧ポンプ30の上部に設けられて、出口圧力の圧力検査を可能にする。
【0019】
蒸気分離器28は、高圧ポンプ30と流体連通している、中空の内部チャンバ50を形成する中空の略円筒形のハウジング48も含む。蒸気出口68を有する壁アセンブリ52が円筒形のハウジング48に結合されており、図示された実施例では、壁52の周囲をハウジング48に押付けて密封し、液密および気密を作り出すOリング54を含んでいる。もちろん、燃料を保有し、ベントバルブ装置36を保持するための中空の内部チャンバ50を組立て、または作り出すために、さまざまな他の構成が使用されてもよい。
【0020】
図4に示すように、ハウジング48は、燃料取入口78を有する壁アセンブリにも結合されてもよい。もちろん、この壁アセンブリ56は、ハウジング48と一体的に形成されてもよい。しかしながら、図4に示すように、液体または蒸気の漏れを防止するために、Oリングシール58がハウジング48と壁アセンブリ56との接合部を密封してもよい。蒸気分離器28はまた、エンジン12への取付用の取付フランジ60を含んでいてもよい。取付フランジ60はあらゆるサイズ、形状、または構成で作られてもよいが、図4には、振動からの切離しを提供するために開口部62内に位置付けられたゴム製グロメット64を含む開口部62を有するものとして図示されている。
【0021】
蒸気分離器28は、ベントバルブ装置36を含む。ベントバルブ装置36は、ニードル弁96を蒸気逃がし通路84の弁座85に押付けるように動かすための、ばね98といった付勢要素を含む。ベントバルブ36はさらに、ニードル弁96および付勢要素98を包囲する筐体を有するよう構成されてもよい。付勢要素98は典型的には、ニードル97が図5に閉鎖位置で示される際、弁座85に押付けるようにニードル弁96を付勢する。ニードル弁96は、ニードル弁96の周囲のコイル94が、図5に示すような付勢された閉鎖位置から、図3に示すような開放位置へとニードル弁96を動かすよう、磁気材料から形成されていてもよい。開放位置では、燃料蒸気は、蒸気逃がし通路84を通って蒸気出口68から逃がされてもよい。ベントバルブ36はさらに、コイル94を制御する制御モジュール(図示せず)と連通し得る燃料レベル検出器110を含む。いくつかの実施例では、燃料レベル検出器110は、必要に応じてコイル94をオンおよびオフに切換えるリレー(図示せず)に接続されている。燃料レベル検出器110は典型的には、単純なサーミスタ回路システムであり、液体流体の不測の放出を防止するよう、コイル94を作動させる前の時間遅延を含んでいてもよい。このため、蒸気バルブ装置36は、付勢要素98に取付けられえたフロートアセンブリを必要とはしない。さらに、付勢要素がフロートを開放位置に付勢するか、または、燃料がない場合にはフロートを支持できないために液体燃料がある場合にのみ閉鎖に向けて付勢する先行技術とは異なり、この発明では、付勢要素は、燃料がない場合でも弁を閉鎖位置に付勢する。
【0022】
排出および圧力解放のため、シュレーダー弁などの弁76が、燃料入口チャネルの端に位置付けられてもよい。低圧ポンプ26用の燃料入口78は、壁アセンブリ56を通って延びており、典型的には壁アセンブリ56の中空部分74を通って、内部チャンバ50と連通する。いくつかの実施例では、蒸発を最小限に抑えるために、冷却流体を循環させ、チャンバ50内に含まれる燃料を冷却させるための熱交換器として機能するよう、冷却コイル80がオプションでチャンバ50内に位置付けられてもよい。
【0023】
蒸気分離器28の容易な組立を可能にするために、バルブベント装置36は、すべての部品を包囲する筐体(図示せず)を含んでいてもよい。この筐体は、蒸気分離器28の壁アセンブリ52の空洞への挿入による容易な組立を可能にする。
【0024】
付勢要素98は、燃料がない場合でも、図5に示すような閉鎖位置にニードル弁96を保ち、特に、ニードル弁96の先95を弁座85に押付ける。付勢要素98は通常、ニードル弁を閉鎖位置へと付勢するため、エンジン12が動作していない場合、および電気がコイル94に流れていない場合、ニードル弁は弁座85に押付けられて閉鎖位置に保たれる。エンジン12が動作中で、パワーが燃料レベル検出器110に供給される場合、燃料レベルが燃料レベル検出器110よりも高い限り、ニードル弁96は、図5に示すような閉鎖位置のままとなる。しかしながら、燃料レベルが燃料レベル検出器110を下回る場合、ニードル弁はコイル94により、図3に示すような開放位置へと動かされかもしれない。振動、または波の作用、もしくは船の動きなどにより、燃料が一時的に燃料レベル検出器110と接触しなくなる場合に、コイル94がニードル弁96を開くことを防止するために、時間遅延が燃料レベル検出器回路110に含まれてもよい。たとえば、大きな波を含む水条件では、船は前後に激しく揺れ、燃料レベルがベントバルブ装置36の上部近くにあっても、蒸気分離器28の燃料レベルが燃料レベル検出器110と断続的に接触しなくなる場合があり得る。この断続的な接触により、もし時間遅延が使用できず、燃料レベル検出器110が低い燃料レベルを検出するたびにコイル94がニードル弁96を開けるならば、時として、液体燃料が蒸気出口68から漏れてエンジン吸気システムに入るおそれがあり、エンジンの失速をもたらす可能性がある。これは、波立つ条件といった水条件では特に厄介であり、したがって、燃料レベル検出器110は典型的には、ニードル弁96が開いた場合に蒸気のみが通路68を通って逃げることを確実にするよう、燃料レベルが実際には燃料レベル検出器110よりも低いことを確実にする時間遅延を含む。
【0025】
前述の考察は、この発明の例示的な実施例を開示し、説明している。当業者であれば、そのような考察から、ならびに添付図面および請求項から、請求項によって定義されるようなこの発明の真の精神および公平な範囲から逸脱することなく、さまざまな変更、修正、および変形がそれになされ得ることを容易に認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶用エンジンのための蒸気分離器であって、前記蒸気分離器は、
付勢要素と、
弁座を含む弁出口と、
前記付勢要素と前記弁出口との間のニードル弁とを備え、前記付勢要素は、前記弁座に押付けるように前記ニードル弁を付勢するよう構成されており、前記蒸気分離器はさらに、
前記弁座に対して前記ニードル弁を動かすための磁場を生成可能なコイルと、
前記コイルに電気的に結合された燃料レベル検出器回路とを備え、前記燃料レベル検出器回路は、低い燃料レベル状態を感知すると前記コイルを作動させるよう構成されている、蒸気分離器。
【請求項2】
低い燃料レベル状態を感知するとコイルの作動を遅延させるタイミング回路をさらに含む、請求項1に記載の蒸気分離器。
【請求項3】
前記コイルへのパワーを制御するための制御回路をさらに含む、請求項1に記載の蒸気分離器。
【請求項4】
船舶用エンジンのための蒸気分離器であって、前記蒸気分離器は、
付勢要素と、
弁座を含む弁出口と、
前記付勢要素と前記弁出口との間のニードル弁とを備え、前記付勢要素は、前記弁座に押付けるように前記ニードル弁を付勢するよう構成されており、前記蒸気分離器はさらに、
前記弁座に対して前記ニードル弁を動かすための磁場を生成可能なコイルと、
前記コイルへのパワーを制御するための制御回路と、
前記制御回路と連通するサーミスタとを備え、前記サーミスタが液体燃料を感知すると、前記制御回路は、パワーが前記コイルに供給されることを防止する、蒸気分離器。
【請求項5】
船舶用エンジンがオフの場合、前記ニードル弁は閉鎖位置へと付勢される、請求項1に記載の蒸気分離器。
【請求項6】
船舶用エンジンは、バッテリおよび交流電源のうちの少なくとも1つを有するパワーシステムを含み、前記蒸気分離器は制御回路をさらに含み、パワーシステムによって前記制御回路にパワーが供給されない場合、前記ニードル弁は前記付勢要素によって閉鎖位置へと付勢される、請求項1に記載の蒸気分離器。
【請求項7】
船舶用エンジンのための蒸気分離器であって、前記蒸気分離器は、
付勢要素と、
弁座を含む弁出口と、
前記付勢要素と前記弁出口との間のニードル弁とを備え、前記付勢要素は、前記弁座に押付けるように前記ニードル弁を付勢するよう構成されており、前記蒸気分離器はさらに、
前記弁座に対して前記ニードル弁を動かすための磁場を生成可能なコイルを備え、
船舶用エンジンは、バッテリおよび交流電源のうちの少なくとも1つを有するパワーシステムを含み、前記蒸気分離器は、液体燃料を感知するためのサーミスタを有する制御回路をさらに含み、パワーシステムによって前記制御回路にパワーが供給され、かつ前記サーミスタが液体燃料を検知した場合、前記制御回路はパワーが前記コイルに達することを防止し、前記ニードル弁は付勢された閉鎖位置にとどまる、蒸気分離器。
【請求項8】
船舶用エンジンのための蒸気分離器であって、前記蒸気分離器は、
付勢要素と、
弁座を含む弁出口と、
前記付勢要素と前記弁出口との間のニードル弁とを備え、前記付勢要素は、前記弁座に押付けるように前記ニードル弁を付勢するよう構成されており、前記蒸気分離器はさらに、
前記弁座に対して前記ニードル弁を動かすための磁場を生成可能なコイルを備え、
船舶用エンジンは、バッテリおよび交流電源のうちの少なくとも1つを有するパワーシステムを含み、前記蒸気分離器は、液体燃料を感知するためのサーミスタを有する制御回路をさらに含み、パワーシステムによって前記制御回路にパワーが供給され、かつ前記サーミスタが液体燃料を検知しなかった場合、前記制御回路はパワーがパワーシステムから前記コイルに流れるようにし、前記コイルは前記ニードル弁を開放位置へと動かす、蒸気分離器。
【請求項9】
前記制御回路は、前記サーミスタが液体燃料を感知しない限り、前記ニードル弁を開放位置に保つよう構成されている、請求項8に記載の蒸気分離器。
【請求項10】
前記制御回路は、ある特定された期間が経過するまで前記サーミスタが液体を感知しない場合、パワーが前記コイルに供給されることを防止するタイミング遅延を含む、請求項8に記載の蒸気分離器。
【請求項11】
前記コイルを制御するための制御回路をさらに含み、前記制御回路はエンジン管理制御機能も提供する、請求項1に記載の蒸気分離器。
【請求項12】
船舶用エンジンのための燃料供給システムであって、前記燃料供給システムは、
大量の液体燃料および燃料蒸気を回収するための実質的に閉鎖された内部チャンバを有する蒸気分離器と、
前記蒸気分離器の前記内部チャンバと連通するベントバルブ装置とを含み、前記ベントバルブ装置は、付勢要素と、弁座を含む弁出口と、前記付勢要素と前記弁出口との間のニードル弁とを備え、前記付勢要素は、前記弁座に押付けるように前記ニードル弁を付勢するよう構成されており、前記ベントバルブ装置はさらに、前記弁座に対して前記ニードル弁を動かすための磁場を生成可能なコイルを備え、前記燃料供給システムはさらに、
燃料レベル検出器および制御回路を含み、前記燃料レベル検出器が前記蒸気分離器内の液体燃料を検出すると、前記制御回路は前記コイルへのパワーの供給を中断する、燃料供給システム。
【請求項13】
蒸気分離器内に液体燃料がないことを前記燃料レベル検出器が検出すると、前記制御回路はパワーが前記コイルに通るようにし、パワーを受けた前記コイルは前記ニードル弁を開放位置へと動かす、請求項12に記載の燃料供給システム。
【請求項14】
パワーシステムを有する船舶用エンジンのための蒸気分離器であって、前記蒸気分離器は、
付勢要素と、
弁座を含む弁出口と、
前記付勢要素と前記弁出口との間のニードル弁とを備え、前記付勢要素は、前記弁座に押付けるように前記ニードル弁を閉鎖位置に付勢するよう構成されており、前記蒸気分離器はさらに、
前記弁座に対して前記ニードル弁を開放位置へと動かすための磁場を生成可能なコイルを備え、
前記蒸気分離器は、パワーシステムがパワーを供給しておらず、かつニードル弁が閉鎖位置にある非パワー動作状態と、パワーシステムがパワーを供給中であり、かつニードル弁が閉鎖位置にあるパワーオン/燃料検出状態と、パワーシステムがパワーを供給中であり、かつニードル弁が開放位置にあるパワーオン/燃料非検出状態とを含む、少なくとも3つの動作状態を有しており、前記蒸気分離器はさらに、
蒸気分離器に燃料がないことを燃料レベル検出器が感知した後、ある設定された期間の間、ニードルが開放位置へと動くことを防止するタイミング遅延回路を含む制御回路を備え、前記パワーシステムがパワーを供給中、前記制御回路は、燃料レベル検出器によって燃料が検出されない場合にのみ、蒸気弁分離器における燃料の存在に関して燃料レベル検出器から入力を受けて、ニードルを開放位置へと動かす、蒸気分離器。
【請求項15】
船舶用エンジンがオフの場合、前記ニードル弁は閉鎖位置へと付勢される、請求項1に記載の蒸気分離器。
【請求項16】
船舶用エンジンは、バッテリおよび交流電源のうちの少なくとも1つを有するパワーシステムを含み、前記蒸気分離器は制御回路をさらに含み、パワーシステムによって前記制御回路にパワーが供給されない場合、前記ニードル弁は前記付勢要素によって閉鎖位置へと付勢される、請求項1に記載の蒸気分離器。
【請求項17】
前記コイルを制御するための制御回路をさらに含み、前記制御回路はエンジン管理制御機能も提供する、請求項1に記載の蒸気分離器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−539393(P2010−539393A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525991(P2010−525991)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/076969
【国際公開番号】WO2009/039345
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)