説明

燃料集合体のガンマ線測定方法および装置

【課題】燃料集合体の回転方向の位置決めを人為的に正確に行わなくても、位置決め誤差に伴う測定誤差の増大を自動的に抑制することができる燃料集合体のガンマ線測定方法および装置を提供する。また、本発明の他の目的は、小型で持ち運びが容易な燃料集合体のガンマ線測定装置を提供する。
【解決手段】燃料集合体11の中心軸と交差する外側方にガンマ線検出器を配置して、燃料集合体から放出されるガンマ線を測定する方法において、ガンマ線検出器12,13を、燃料集合体の中心軸を含み、かつその燃料集合体が左右対称となるように想定された想定平面から相互に等間隔離れた位置に少なくとも一対配置し、この対を成すガンマ線検出器の信号を合成した一つの信号に基づいて計数を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は燃料集合体のガンマ線測定技術に係り、特に燃料集合体の回転方向が正確に位置決めされていない場合でも測定精度の低下を抑制することができる燃料集合体のガンマ線測定方法およびその方法を実施する簡易な測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】燃料集合体のガンマ線測定が必要な場合として、原子炉の停止中に炉心から取り出されたいわゆる照射燃料集合体から放出されているランタン140などからのガンマ線の強度の軸方向分布を測定して、運転サイクル終了前の出力分布を求め、設計手法の検証を行ったり、使用済みとなった燃料集合体(使用済燃料集合体)をある期間冷却した後、セシウム137やセシウム134などから放出されているガンマ線を測定して燃焼度分布、プルトニウム濃度分布、冷却期間などのいわゆる燃焼特性パラメータを求める場合が良く知られている。
【0003】この他に、まだ知られていないが、ウランにプルトニウムを添加した混合酸化物燃料(ΜOX燃料)を燃料工場から出荷する前や、原子力発電所で受け入れる場合の未照射ΜOX燃料集合体の同定にもガンマ線測定法が適用できる可能性がある。
【0004】照射燃料集合体や使用済燃料集合体は非常に強いガンマ線を放出しているので、通常は水中に保管されており、したがって測定は通常水中で行われる。未照射MOX燃料集合体の場合には、簡単なガンマ線遮蔽を施すことによって人間が接近できる程度にガンマ線レベルを低下させることが可能であるため、空気中での測定は十分可能になる。
【0005】原子炉の停止中に行われる出力分布の測定については、短期間に大量のデータを能率良く取得しなければならないので、NaΙシンチレーション検出器を検出器容器に収納し、燃料集合体との間に大掛かりなコリメータを配置して、燃料集合体の特定の軸方向高さからのガンマ線を測定する方法が知られている。
【0006】このような測定は特定の原子炉で行われ、しかも高い精度が要求されるため、測定装置は一般に大掛かりなものとなっている。また、この場合の測定に際しては、燃料集合体の位置決めにも正確を期する必要があるため、燃料集合体の軸心回りの回転位置を正確に決めた後に測定しなければならない。
【0007】一方、使用済燃料集合体を再処理工場で受け入れる場合には、燃料集合体の同定や臨界安全性確保の観点から、燃焼度測定装置が使用されている。但し、この場合にも高い測定精度が要求されることと、常設装置とするために、測定装置が大掛かりなものとなっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明では、若干測定精度は落としても、小形化して持ち運びが容易な燃料集合体のガンマ線測定方法および装置を開発することを狙っている。主な用途は、燃焼度クレジット(Burnup Credit :BUC)を採用して原子力発電所の使用済燃料集合体を能率良く輸送容器や燃料ラックに収納する際に使用する小型簡易燃焼度モニタの一部とする用途である。その他の用途としては、MOX燃料集合体の発送、受け入れ検査時のガンマ線測定装置とする用途が考えられる。
【0009】このような用途の場合には通常、既存の発電所が対象となるため、必要な場合だけ所定の場所に設置し、使用しない場合には容易に片付けできる必要がある。このような要請に対して上記従来の装置は大掛かりすぎて、既存の発電所で手軽に利用することは困難である。また、燃料集合体の正確な回転方向位置決めを行うためには、燃料集合体を燃料準備機等に搭載して回転させ、位置決め設定を正確に行う必要があり、それだけ測定準備の時間が過分に必要となる。
【0010】図8および図9によって、燃料集合体の回転方向位置決めがの重要性について説明する。
【0011】図8は、n行n列(n×n)の正方形の断面を持つ燃料集合体1(現在、BWR燃料では8×8、ΡWR燃料では14×14、15×15,17×17が代表的)から放出されるガンマ線を、ある程度離れた位置に設置されているガンマ線検出器(以下、単に検出器ともいう)2で測定する場合を示している。図示の例では、垂直に配置した燃料集合体1の外側の面が検出器2の正面を向いておらず、垂直な燃料集合体1の軸心cに対してθだけずれている(回転している)。
【0012】この場合、燃料集合体1内のガンマ線強度分布が一様であるとする。θが変化するに連れて、検出器2のガンマ線計数率は図9に示すように変化する。
【0013】即ち、図9は横軸に回転角度θを表し、縦軸にガンマ計数率(任意単位)を表しており、この場合の特性線Qをみると、θが0°あるいは90°のときに計数率は最小となり、θが少し変化すると計数率は急に増大する。θ=45°付近では、θが少し変化した場合の計数率の変化は小さいが、それでも計数率は変化し、θが45°を中心として5〜10°ずれたときが最大値となる。
【0014】この現象は、燃料集合体1の燃料棒がガンマ線の遮蔽体となるため、燃料集合体1の内部から放出されるガンマ線が燃料集合体1の表面付近の燃料棒に遮蔽され、外へ出て来て検出器2へ到達できるか否かという観点から理解できる特性である。換言すると、燃料集合体1の内部が検出器位置からどの程度の範囲で捉えられるかという観点から、おおよその理解ができる特性である。
【0015】従来では、θ=0°での測定例が多いが、θ=35°、あるいは45°の例もある。回転方向の正確な位置決めができれば、いずれの角度でも差支えないとも考えられるが、燃料棒には必ず若干の曲りや水平方向の位置ずれがあり、これが数学的な正確さで保持されているという保証は無いため、回転方向泣置決めをいくら正確にしてもθ=0°付近の設定は計数率が小さいことから一般には好適とはいえない。
【0016】本発明は、これらの課題を解決するためになされたものであり、その目的は、燃料集合体の回転方向の位置決めを人為的に正確に行わなくても(特にθ=0°としても)、位置決め誤差に伴う測定誤差の増大を自動的に抑制することができる燃料集合体のガンマ線測定方法および装置を提供することにある。
【0017】また、本発明の他の目的は、小型で持ち運びが容易な燃料集合体のガンマ線測定装置を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、燃料集合体の中心軸と交差する外側方にガンマ線検出器を配置して、前記燃料集合体から放出されるガンマ線を測定する方法において、前記ガンマ線検出器を、前記燃料集合体の中心軸を含み、かつその燃料集合体が左右対称となるように想定された想定平面から相互に等間隔離れた位置に少なくとも一対配置し、この対を成すガンマ線検出器の信号を合成した一つの信号に基づいて計数を行うことを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定方法を提供する。
【0019】このような本発明は、燃料集合体が所定の角度からずれた場合、対をなす一方のガンマ線検出器の実効感度が増大する場合には、他方の検出器の実効感度は低下するので、両者の平均値(単純平均値に限らず、加重平均値を含む)が、ほぼ一定に保つことができるという知見に基づいてなされたものである。この場合、後述するように、想定平面からの距離は等しくするが、対をなす検出器は燃料集合体の軸方向には同じ高さに限定する必要は必ずしもなく、実用的にはたとえば±5cmなどと若干のずれがあっても差支えないことが多いと判定された。
【0020】また想定平面からの距離は無制限のものではなく、n×n型燃料集合体の場合には、図9で示したように、角度に換算して、0°付近では±15〜20°程度、また45°付近では±5°程度もしくは±15〜20°程度が適当であると考えられる。つまり、本発明では計数率の増大分と減少分とがおおよそ等しくなるように角度を選定することが望ましい。
【0021】本発明によれば、燃料集合体の回転方向の位置決めを人為的に正確に行わなくても(特にθ=0°としても)、位置決め誤差に伴う測定誤差の増大を自動的に抑制することができる。
【0022】請求項2記載の発明では、請求項1記載の燃料集合体のガンマ線測定方法において、前記想定平面を挟んで特性のほぼ等しいガンマ線検出器を鏡面対称に配置することを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定方法を提供する。
【0023】本発明によれば、測定誤差の抑制が、より効果的なものとなる。
【0024】請求項3記載の発明では、請求項1または2記載の燃料集合体のガンマ線測定方法において、前記想定平面は、燃料集合体の側面と直交する平面とすることを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定方法を提供する。
【0025】燃料集合体の面に正面から向かって測定する場合に、水平方向回転に伴う誤差の発生は従来の設計では大きな誤差を招くが、本発明の方法によれば、その誤差は著しく抑制できる。図9を用いて具体的に説明すると、0°を挟んで例えば±15°程度の角度となるように対をなす検出器を配置することである。燃料集合体の回転方向位置決めが不正確の場合、対の一方の検出器の計数率が増大すれば、他の一方の検出器の計数率は減少し、計数率の平均値はほぼ一定に保たれることが埋解できる。
【0026】請求項4記載の発明では、ガンマ線遮蔽体の中に鏡面対称となるごとく少なくとも一対配置した特性のほぼ等しい小型のガンマ線検出器を使用し、それぞれのガンマ線検出器はガンマ線を導くスリットを介して燃料集合体の側面に対向させ、そのスリットを含めたガンマ線検出器の実効感度を一定の比率に設定し、前記対を成すガンマ線検出器の信号を演算合成して一つの信号として処理することを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定方法を提供する。
【0027】本発明の方法によれば、燃料集合体の回転方向位置決めが不正確の場合でも、それに伴う誤差を大幅に抑制できる小型のガンマ線の測定ができる。
【0028】請求項5記載の発明では、請求項4記載の燃料集合体のガンマ線測定方法において、スリットを含めたガンマ線検出器の実効感度を等しくし、対を成すガンマ線検出器の信号を加算して処理することを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定方法を提供する。
【0029】請求項6記載の発明では、ガンマ線遮蔽体の中に特性のほぼ等しい小型ガンマ線検出器の対を鏡面対称となるごとく少なくとも一対配置し、それぞれのガンマ線検出器へガンマ線を導くスリットを設け、スリットを含めたガンマ線検出器の実効感度を一定の比率となるごとく構成し、対を成すガンマ線検出器の信号を演算合成して一つの信号として処理する手段を設けたことを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置を提供する。
【0030】請求項7記載の発明では、請求項6記載の燃料集合体のガンマ線測定装置において、スリットを含めたガンマ線検出器の実効感度が等しい、対を成すガンマ線検出器の信号を加算して処理する手段を有することを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置を提供する。
【0031】請求項8記載の発明では、請求項6または7記載の燃料集合体のガンマ線測定装置において、小型ガンマ線検出器はCd−Τe半導体検出器またはCd−Τeに添加物を添加した半導体検出器であることを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置を提供する。
【0032】このような半導体検出器は1mm3 から1cm3 程度の非常に小さなものであり、しかも常温で使用できるので、従来から良く使われてきている液体窒素の温度で冷却しなければならないGe半導体と異なり、著しく小形化することができる。冷却することにより特性は改良されるが、電気的に容易に冷却できる範囲は−30度程度であり、最近非常に小型のものが開発されている。図10は5年程度冷却された軽水炉使用済燃料集合体からのガンマ線スペクトルの測定例を示している。662keV のガンマ線ピークはCs−137からのものであり、796KeVのピークはCs−134からのものである。
【0033】請求項9記載の発明では、各検出器に共通のガンマ線アブソーバ、水排除体、エアボックス、共通スリットのうちの少なくとも一つのものを、ガンマ線遮蔽体の中に特性のほぼ等しい小型ガンマ線検出器の対を鏡面対称となるごとく少なくとも一対配置し、それぞれのガンマ線検出器へガンマ線を導くスリットを設けて構成された検出器容器に着脱可能に装着し、対を成すガンマ線検出器の実効感度を一定の比率もしくは等しく設定し、対を成すガンマ線検出器の信号を合成して一つの信号として処理する手段を備えたことを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置を提供する。
【0034】本発明によれば、通常水密に構成された検出器容器を開放しなくても、各ガンマ線検出器に共通に燃料集合体からのガンマ線強度を調節できる。ガンマ線アブソーバはガンマ線強度の調節と、低いエネルギーの不必要なガンマ線を効果的に抑制するのに使用される。水排除体は、水によるガンマ線の散乱による不必要な散乱ガンマ線の検出器への侵入を抑制するために使用される。エアボックスは水によるガンマ線の散乱による不必要な散乱ガンマ線の検出器への侵入を抑制するためだけでなく、必要なガンマ線を案内する機能も有している。共通スリットは通常ガンマ線スペクトルには影響を与えず、比例的にガンマ線強度を調節するのに用いられる。小型ガンマ線検出器の対は、一つの小さな検出器容器に正確に位置決めして収納できるので、全体的に小型の装置となり、燃料集合体の回転方向位置決め精度誤差に基づく計数率誤差を最小限に抑制することができる。この結果、図9で示した0°方向にガンマ線測定装置を設定しても、回転方向位置ずれ誤差の影響はほとんど生じることがなく、正確な測定が可能となる。
【0035】請求項10記載の発明では、検出器容器、コリメータ、およびガンマ線アブソーバまたは水排除体を備え、前記検出器容器はガンマ線遮蔽体の中に特性のほぼ等しい小型のガンマ線検出器の対を鏡面対称となるごとく少なくとも一対配置するとともに、その各ガンマ線検出器へガンマ線を導くスリットを設けて構成され、前記コリメータは前記各ガンマ線検出器に共通のものとし、前記コリメータと前記検出器容器との間に前記各ガンマ線検出器に共通のガンマ線アブソーバ、または水排除体を着脱可能に配置し、対をなすガンマ線検出器の実効感度を一定の比率もしくは等しく設定し、かつ前記各ガンマ線検出器の信号を合成して一つの信号として処理する手段を備えたことを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置を提供する。
【0036】本発明によれば、請求項9記載の装置にさらにコリメータが追加されているので、燃料集合体の特定の位置(高さ)からのガンマ線をより精度良く測定することができる。
【0037】請求項11記載の発明では、請求項10の燃料集合体のガンマ線測定装置において、前記コリメータの先端に、エアボックス、アブソーバあるいはスリットを着脱可能に配置したことを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置を提供する。
【0038】本発明によれば、検出器容器とコリメータとの間、およびコリメータの先端に着脱容易にエアボックス、ガンマ線アブソーバ、あるいはスリットが配置されるので、極めて融通の効く、燃料集合体の回転方向位置決め精度を要求しない小型の燃料集合体ガンマ線測定装置が得られる。
【0039】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る燃料集合体のガンマ線測定方法および装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0040】図1は本発明の一実施形態として基本的な構成例を示した平面図である。この図1に示すように、燃料棒(図示せず)をn×nの正方形に配列して構成した横断面正方形の燃料集合体11の側面が、一対のガンマ線検出器12,13側に向けて垂直に配置してある。この燃料集合体11の軸芯Cを通り、かつ一つの側面と直交する垂直な平面S−S(この平面S−Sの角度をθ=0°と定義する)に対して、各検出器12,13がそれぞれ対称に角度θだけ横方向にずれて配置されている。
【0041】図2は、図1における角度θが変化した場合の検出器の計数率の変化を示したものである。ここで燃料集合体11内部のガンマ線強度分布は一様であるとする。実験や解析計算を実際に行ってみると、θ=0°のとき計数率は最低となり、±35°付近で最大となり、45°では最大値より若干低下することが分かった。この現象は、燃料集合体11の内部から放出されているガンマ線が燃料集合体11の外周付近の燃料にどの程度遮蔽されるかが検出器12,13から臨む角度によって異なるために起こるものである。
【0042】本実施形態の最大の特徴は、図2に示したように、角度θによって計数率が大幅に変化しても、燃料集合体11の中心軸Cを通り垂直平面S−Sに対して左右に対称に角度θの傾きをもって設定された一対のガンマ線検出器12,13の計数率の平均値は、燃料集合体11の設定角度が所定の角度から若干ずれても殆ど変化しない点にある。即ち、燃料集合体11が図1の時計方向に若干ずれた(回転した)状態でガンマ線の計測を行った場合を考える。この場合、図2において0°の左側の検出器13の計数率は低下し、右側の検出器12の計数率は増大する。両者を平均すると、平均計数率は角度設定ずれによって殆ど変化しないことが容易に理解できる。
【0043】平面S−Sが45°回転して燃料集合体11の対角線を通る場合でも同様であるが、もともと計数率の変化があまり大きくないため、0°の場合ほど顕著なメリットとはならないが、一定の効果は認められる。θの値が燃料集合体11の設定ずれ角度よりも小さいと、検出器12,13の計数率が共に増大したり、ともに減少する場合があり、このような状態では、本発明の効果は発生しない。即ち、燃料集合体11の予想される回転方向ずれ角度よりθの値は大きく設定すべきである。
【0044】回転方向ずれの角度は10°程度であれば容易に気付くことができるので、0°方向の場合にはθの値は15〜20°程度が現実的であろう。±45度方向の場合には10°程度以内に計数率の最大値が現れるため、θの値は相殺効果が現れる角度、例えば5°程度、または15°以上とすべきである。
【0045】ガンマ線検出器12,13が非常に小型で燃料集合体11の近傍に設置できる場合には、一つの検出器容器の中に収納でき、非常にコンパクトなガンマ線測定装置が設計できることになる。
【0046】本実施形態において、小型なガンマ線検出器12は、Cd−Τe半導体検出器、またはCd−Τeに添加物として、例えばZnを使用した半導体検出器が適用されている。
【0047】図3および図4は、本実施形態によるガンマ線測定装置の基本的な構成を示す横断面図および縦断面図である。なお、これらの図において、ガンマ線は図の左側から右側へ進むものとする。
【0048】このガンマ線測定装置では、検出器容器14の内側に一対の小型なガンマ線検出器12a,12bが中心平面(S−S)平面に対しで対称にそれぞれ角度θで配置されている。検出器12a,12bのガンマ線入側(図3,4の左側)前方には、鉛などのガンマ線遮蔽体15をくりぬいてスリット16(16a,16b)が形成されている。いずれのスリット16もその幅は燃料集合体11の幅を見込んで余りある角度に設定される。つまり、いずれのスリット16も燃料集合体11を0°からθだけずれた角度でガンマ線の入射幅を見込んでいる。そして、燃料集合体11の回転方向位置決めが所定角度からずれていた場合には、前述したように、一方の検出器12aの計数率が増大していれば他方の検出器12bの計数率は低下するので、両者の平均値はほぼ一定となる。スリット16の長さ(深さ、奥行き)は5cm程度以上が望ましい。なお、スリット16が長くなると、コリメータの機能が強化されるが、重量が増大する。
【0049】検出器12には前置増幅器(Pre-Amplifier )17(17a,17b)が接続されている。検出器12と前置増幅器17とは近接しているほど電気信号の劣化が生じにくいので、本実施形態では両者が直接連結されている。なお、前置増幅器17は、ガンマ線遮蔽体15の内部に収納されて劣化防止が図られている。この前置増幅器17からの電気信号は、検出器容器14に形成したケーブルスペース18からケーブル引き出し口19を経由して、図示しない水上の計測装置へ導かれ、その計測装置において計測値の平均操作なども含めた処埋がオンラインで行われるようになっている。なお、処理はオフラインとしても良い。
【0050】一方、検出器容器14の内部でスリット16の先端部には、例えば5mm厚程度の内部アブソーバ20が配置されており、低エネルギーで計測不要なガンマ線の検出器12への入射を抑制している。なお、検出器12の周りにも、遮蔽体15等から放出される特性のX線を遮蔽するために、CdやCuのシート21を巻き付けておくことが望ましい。
【0051】また、検出器容器14の外側で、ガンマ線入射側の部位には、外部アブソーバ22がホルダ23を介して着脱可能に設けられ、ロープ24等で吊り下げることにより昇降可能とされている。これにより、ガンマ線入射強度が過大な場合にはこの外部アブソーバ22をスリット16部に配置し、ガンマ線入射強度が小さい場合にはロープ24を介して外部アブソーバ22をガンマ線の通路から外れる位置に引上げることができる。
【0052】なお、外部アブソーバ11に代えて、後述するガンマ線調節部材としての簡易スリット(検出器容器を水中に沈めたまま容易に着脱できるもの)や、エアボックスを着脱する構成としてもよい。
【0053】また、検出器容器14の荷重は天井部に連結した吊り棒25を介して水上で保持されるようになっている。さらに、検出器12の検出器容器14内部への挿入あるいは取り出し、またはケーブルを検出器容器14から取り出したりケーブルだけ引き抜く等の作業を円滑に行えるように、検出器容器14には着脱可能なフランジ26が設けられるとともに、検出器12の後方を遮蔽するための後方遮蔽体27およびそのストッパ28等が配置されている。
【0054】なお、本実施形態では、通常の水中使用を考慮して検出器容器14を水密構造としているが、ΜOX新燃料の同定のための測定のように、空気中での測定のみを行う場合には、水密度構造とする必要はない。
【0055】次に、図5および図6は、図3および図4に示した検出器容器14にコリメータ29やエアボックス30を取り付けた構成を示す一部断面平面図および一部断面側面図である。
【0056】この構成の装置は、より高度の測定が行える実用的な測定装置である。コリメータ29は一定長さの水密なケース31を有し、このケース31の先端部および末端部に、鉛あるいはタングステンなどのガンマ線遮蔽体で構成されたスリット部材32(32a,32b)が配置され、これによりガンマ線透過用のスリット33(33a,33b)が形成されている。なお、スリット部材32は上下方向の板状のものであり、両端位置に介在したスペーサ34によってスリット33としての隙間が形成されている。なお、コリメータ29のケース31が短尺な場合には、全長に亘る長さのスリットを設けてもよい。
【0057】このようなコリメータ29を検出器容器14の前方に結合することにより、燃料集合体11の必要な位置(高さ)からのガンマ線を明確に区分して測定することができるとともに、不必要な散乱ガンマ線が検出器12へ導かれるのを防止することができる。
【0058】なお、コリメータ29のケース31の末端側は、結合部材35(35a,35b)および介在板36を介してボルトなどにより検出器容器14と一体的に結合されている。この結合部の構成については後に説明する。
【0059】一方、エアボックス30は水中測定の際にコリメータ29の機能を補助するものである。即ち、測定装置については、全体構成をできるだけ小型化したいという有望が強い。このため、前記のコリメータ29もなるべく短尺な構成とした場合、そのコリメータ29のみでは測定機能が不足することも予想される。そこで、本実施形態ではコリメータ29にエアボックス30を着脱自在に取り付けられるようにしている。このエアボックス30は、コリメータ29の前端に係合突起37を介して着脱自在に取付けられ、エアボックス30内は空洞38とされている。空洞38は、コリメータ29のスリット33の前方を全体的に覆う大きさに設定されている。そして、エアボックス30上にアイボルト39が設けられ、ロープ40で吊上げることができるようになっている。
【0060】このようなエアボックス30は、燃料集合体11の軸方向ガンマ線位置分解能についてはスリット33を有するコリメータ29より劣るが、水中では浮力のため非常に軽くて取扱いが容易という特徴がある。このエアボックス30の着脱操作は、上方からロープ40を介して行われ、コリメータ29の先端に設けられた係合突起37に係合することで行える。
【0061】次に、前述した結合部材35および介在板36等について図7も参照して説明する。これら結合部材35および介在板36は図6に示すように、縦枠状の構成を有し、前後に並ぶ2つの縦長空間を有している。この空間に前後1対のガンマ線調節部材41,42が、上下移動自在に装着されている。
【0062】図7(A)は、例えば前側空間(コリメータ側)に装着されるガンマ線調節部材41の一構成例を示している。このガンマ線調節部材41は縦長な孔を有する本体41aの下側に鉛遮蔽体(アブソーバ)43が挿入され、孔の上側は空洞44となっていて、アブソーバ兼水排除体とされている。アブソーバ43は押えスペーサ45で孔内に固定されている。また、本体41aの上下端部にはストッパ46,47が取り付けてあり、本体41aは、これら上下端のストッパ46,47が引掛かるまで結合部材35a内で上下方向に移動できるようになっている。上端のストッパ46にはアイボルト48を介して吊上げ用のロープ49が連結されており、このロープ49を引き上げると本体41aが上側へ移動し、アブソーバ43がガンマ線通路に介在し、ガンマ線強度を抑える。また、ロープ49を緩めると重力により上側のストッパ46が引掛かるまで下方向へ移動し、ガンマ線の通路からアブソーバ43が取り去られる。
【0063】ガンマ線調節部材41,42は、この実施形態では前後に2組準備されているので、ガンマ線通路のガンマ線は3段階に渡って調節することができる。なお、空洞44を水が占めると、水のガンマ線散乱により不必要なエネルギーの低いガンマ線成分が増大するので、水の介在は好ましいものではない。しかし、5cm程度以内の水の介在は深刻な問題を起こすほどでもないこともある。
【0064】また、図7(B),(C),(D)は、後方配置のガンマ線調節部材42として適用されるアブソーバ42a、水排除体42b、および簡易スリット42cの例を示したものである。いずれも上部にアイボルト50が取り付けられており、アイボルト50の孔にロープ51を取付けて水面上から簡単に操作できるようになっている。これらアブソーバ42a、水排除体42b、および簡易スリット42cの外形は、図4に示したものと略同一であり、外部アブソーバ22として、あるいはその代用として使用できるように設計されている。図7(B)のアブソーバ42aは、本体52aの厚み方向の一部にだけアブソーバ53が挿入され、スペーサ54で保持されている例である。同図(C)の水排除体42bは、本体52bに空洞55のみが形成され、同図(D)の簡易スリット42cは、本体52cの上下にアブソーバ56,57が設けられ、中間部にスリット58が形成されている。
【0065】なお、以上の実施形態説明では、ガンマ線検出器12の対は一組の場合に付いてのみ説明したが、複数対にすることもできる。また、Cd−Te半導体検出器を用いた場合に付いて説明したが、小型の検出器であれば他の各種検出器が適用でき、例えばイオンチェンバーのようにスペクトルを測定しない場合でも差支えない。
【0066】さらに、液体窒素を蒸発させながら使用するための液体窒素容器(ジュワービン)を用いないGe半導体検出器も適用でき、この場合にはCd−Τeの場合ほどの小形化は期待できないまでも、優れたガンマ線スペクトルが得られ、特にMOX新燃料の同定測定などには効果が期待できる。
【0067】また、エアボックスの先端にアブソーバ兼水排除体やスリットを追加してもよく、さらにコリメータを廃止して、エアボックスのみを有する構成としたり、あるいはエアボックスを廃止して、スリットとすることも可能である。
【0068】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、燃料集合体の中心軸を含み、該燃料集合体が左右対称となるように想定された想定平面から相互に等間隔離れて、少なくとも一対のガンマ線検出器を配置して、対を成すガンマ線検出器の信号を合成して一つの信号として処理するので、燃料集合体の回転方向位置決め精度が悪くても安定した計数率が得られ、精度の良い測定が行える。
【0069】また、小型のガンマ線検出器対を用いることにより、検出器対を一つの検出器容器に収納できるため、非常にコンパクトなガンマ線測定装置が得られる。複数の検出器を離間配置するため、燃料集合体の近傍に検出器を配置しても、燃料集合体の軸方向と直角方向(断面方向)のうちの局所的な部分の強調されたデータではなく、より平均的な値が得られる。
【0070】さらに、コリメータ、エアボックス、アブソーバ、水排除体、スリット等、小型で操作性に優れた装置を提供したので、小型で精度良い測定を簡便に行うことができ、使用済燃料集合体の簡易燃焼度測定、ガンマ線測定、ΜOX新燃料集合体の同定測定などに有効なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるガンマ線測定方法の一実施形態を説明するための概念図。
【図2】図1の作用説明図。
【図3】本発明による測定装置の一実施形態を示す横断面図。
【図4】図3に対応する縦断面図。
【図5】図3に示した測定装置を用いた応用装置の構成を示す横断面図。
【図6】図5に対応する縦断面図。
【図7】(A)〜(D)は前記実施形態におけるガンマ線調節部材の構成例を示したもので、(A)はアブソーバ兼水排除体、(B)はアブソーバ、(C)は水排除体、(D)は簡易スリットを示す図である。
【図8】燃料集合体の水平方向位置決めが不正確な場合いに生じるガンマ線計数率の変化を示す図で、本発明の基本問題を提供する図。
【図9】図8の作用説明図。
【図10】小型ガンマ線検出器を用いて測定した水中におかれた使用済燃料集合体からのガンマ線スペクトルの例を示す図。
【符号の説明】
11 燃料集合体
12,13 一対のガンマ線検出器
14,16 スリット
17(17a,17b) 前置増幅器
18 ケーブルスペース
19 ケーブル引き出し口
20 内部アブソーバ
21 シート
22 外部アブソーバ
23 ホルダ
24 ロープ
25 吊り棒
26 フランジ
27 後方遮蔽体
28 ストッパ
29 コリメータ
30 エアボックス
31 ケース
32(32a,32b) スリット部材
33(33a,33b) スリット(ガンマ線透過用)
34 スペーサ
35(35a,35b) 結合部材
36 介在板
37 係合突起
38 空洞
39 アイボルト
40 ロープ
41,42 1対のガンマ線調節部材
41a 本体
42a アブソーバ
42b 水排除体
42c 簡易スリット
43 鉛遮蔽体(アブソーバ)
44 空洞
45 スペーサ
46.47 ストッパ
48 アイボルト
49 ロープ
50 アイボルト
51 ロープ
52a,52b,52c 本体
53 アブソーバ
54 スペーサ
55 空洞
56,57 アブソーバ
58 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃料集合体の中心軸と交差する外側方にガンマ線検出器を配置して、前記燃料集合体から放出されるガンマ線を測定する方法において、前記ガンマ線検出器を、前記燃料集合体の中心軸を含み、かつその燃料集合体が左右対称となるように想定された想定平面から相互に等間隔離れた位置に少なくとも一対配置し、この対を成すガンマ線検出器の信号を合成した一つの信号に基づいて計数を行うことを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定方法。
【請求項2】 請求項1記載の燃料集合体のガンマ線測定方法において、前記想定平面を挟んで特性のほぼ等しいガンマ線検出器を鏡面対称に配置することを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定方法。
【請求項3】 請求項1または2記載の燃料集合体のガンマ線測定方法において、前記想定平面は、燃料集合体の側面と直交する平面とすることを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定方法。
【請求項4】 ガンマ線遮蔽体の中に鏡面対称となるごとく少なくとも一対配置した特性のほぼ等しい小型のガンマ線検出器を使用し、それぞれのガンマ線検出器はガンマ線を導くスリットを介して燃料集合体の側面に対向させ、そのスリットを含めたガンマ線検出器の実効感度を一定の比率に設定し、前記対を成すガンマ線検出器の信号を演算合成して一つの信号として処理することを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定方法。
【請求項5】 請求項4記載の燃料集合体のガンマ線測定方法において、スリットを含めたガンマ線検出器の実効感度を等しくし、対を成すガンマ線検出器の信号を加算して処理することを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定方法。
【請求項6】 ガンマ線遮蔽体の中に特性のほぼ等しい小型ガンマ線検出器の対を鏡面対称となるごとく少なくとも一対配置し、それぞれのガンマ線検出器へガンマ線を導くスリットを設け、スリットを含めたガンマ線検出器の実効感度を一定の比率となるごとく構成し、対を成すガンマ線検出器の信号を演算合成して一つの信号として処理する手段を設けたことを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置。
【請求項7】 請求項6記載の燃料集合体のガンマ線測定装置において、スリットを含めたガンマ線検出器の実効感度が等しい、対を成すガンマ線検出器の信号を加算して処理する手段を有することを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置。
【請求項8】 請求項6または7記載の燃料集合体のガンマ線測定装置において、小型ガンマ線検出器はCd−Τe半導体検出器またはCd−Τeに添加物を添加した半導体検出器であることを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置。
【請求項9】 各検出器に共通のガンマ線アブソーバ、水排除体、エアボックス、共通スリットのうちの少なくとも一つのものを、ガンマ線遮蔽体の中に特性のほぼ等しい小型ガンマ線検出器の対を鏡面対称となるごとく少なくとも一対配置し、それぞれのガンマ線検出器へガンマ線を導くスリットを設けて構成された検出器容器に着脱可能に装着し、対を成すガンマ線検出器の実効感度を一定の比率もしくは等しく設定し、対を成すガンマ線検出器の信号を合成して一つの信号として処理する手段を備えたことを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置。
【請求項10】 検出器容器、コリメータ、およびガンマ線アブソーバまたは水排除体を備え、前記検出器容器はガンマ線遮蔽体の中に特性のほぼ等しい小型のガンマ線検出器の対を鏡面対称となるごとく少なくとも一対配置するとともに、その各ガンマ線検出器へガンマ線を導くスリットを設けて構成され、前記コリメータは前記各ガンマ線検出器に共通のものとし、前記コリメータと前記検出器容器との間に前記各ガンマ線検出器に共通のガンマ線アブソーバ、または水排除体を着脱可能に配置し、対をなすガンマ線検出器の実効感度を一定の比率もしくは等しく設定し、かつ前記各ガンマ線検出器の信号を合成して一つの信号として処理する手段を備えたことを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置。
【請求項11】 請求項10の燃料集合体のガンマ線測定装置において、前記コリメータの先端に、エアボックス、アブソーバあるいはスリットを着脱可能に配置したことを特徴とする燃料集合体のガンマ線測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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