説明

燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の接続構造

【課題】燃料電池に設けられるヒーターに電力を供給するための電力配線を容易に取り出す。
【解決手段】燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造として、ヒーターは、燃料電池内に順に配列されるターミナルプレートと、インシュレータプレートと、エンドプレートとのうちのいずれかの間に設けられており、電力配線は、ターミナルプレート、インシュレータプレート、および、エンドプレートの配列方向に平行な側面であって、インシュレータプレートとエンドプレートの少なくとも一方の側面から、取り出されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池に設けられるヒーターに電力を供給するための電力配線の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、低温時において、燃料電池の温度を適切な温度状態とするために、燃料電池(通常、複数の燃料電池セルをスタックした燃料電池スタックが利用される)の燃料電池にヒーターを設置することが行なわれている。
【0003】
ここで、例えば、燃料電池の端部に配列される、ターミナルプレート、インシュレータプレート、エンドプレートのうちのいずれかの間にヒーターを設置した場合に、そのヒーターに電力を供給するための電力配線をどのように外部に取り出すかが問題となる。燃料電池のエンドプレートには、反応ガスや冷媒用の入力配管、出力配管、および、これに付随する補機が取り付けられるため、部品密度が高い。従って、これらの配管等が取り付けられるエンドプレートの面から電力配線を取り出すためのスペースを確保することが難しいという問題がある。また、仮に、取り出すスペースを確保できたとしても、元々組み付け部品密度の高い面に、さらに、電力配線が増加することになるため、組み付け時において、組み付け部品同士の干渉の問題が発生し、組み付け性が悪くなる可能性が高い、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−034381号公報
【特許文献2】特開2005−302661号公報
【特許文献3】特開2007−103031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、燃料電池に設けられるヒーターに電力を供給するための電力配線を容易に取り出すことが可能な電力配線の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の接続構造であって、
前記ヒーターは、前記燃料電池内に順に配列されるターミナルプレートと、インシュレータプレートと、エンドプレートとのうちのいずれかの間に設けられており、
前記電力配線は、前記ターミナルプレート、前記インシュレータプレート、および、前記エンドプレートの配列方向に平行な側面であって、前記インシュレータプレートと前記エンドプレートの少なくとも一方の側面から、取り出されていることを特徴とする
燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の接続構造。
この構造によれば、配管等が組み付けられる部品密度の高いエンドプレートの面ではなく、インシュレータプレートとエンドプレートの少なくとも一方の側面から電力配線を取り出すことができるので、燃料電池に設けられるヒーターに電力を供給するための電力配線を容易に取り出すことが可能なヒーターの電力配線の構造を提供することができる。
【0008】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造、燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の接続構造、これらの構造を用いた燃料電池、燃料電池スタックなどの種々の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施例としての燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造について示す説明図である。
【図2】第1実施例としての燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造の変形例について示す説明図である。
【図3】本発明の第2実施例としての燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造について示す説明図である。
【図4】第3実施例としての燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造について示す説明図である。
【図5】第3実施例としての燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造の変形例について示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.第1実施例:
B.第2実施例:
C.第3実施例:
【0011】
A.第1実施例:
図1は、本発明の第1実施例としての燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造について示す説明図である。図1(A)は、燃料電池スタック100の一方の最終端に配置するエンドプレート40側から見た概略正面図であり、図1(B)は、図1(A)の概略側面図である。また、図1(C)は、図1(A)に示したA−A線に沿って切断し、スタック方向に沿って示した概略断面図である。
【0012】
燃料電池スタック100は、燃料電池セル12を複数個スタックした燃料電池セルスタック10の両端(図1(B),図1(C)は、一方のみを示す)に、内側から順に配列されたターミナルプレート20、インシュレータプレート30、および、エンドプレート40で挟持した構成を有している。そして、インシュレータプレートの30のターミナルプレート20側の内周部(図1(A)の破線に相当する領域)には、溝が設けられており、この溝には、図1(C)に示すように、ヒーター50がターミナルプレート20に接するように設置されている。
【0013】
燃料電池スタック100の外周部、より具体的には、燃料電池スタック100を構成する上記各部材の外周部には、反応ガスの一方である水素入力用マニホールド孔および水素出力用マニホールド孔と、反応ガスの他方であるAir(空気)入力用マニホールド孔およびAir出力用マニホールド孔と、冷媒入力用マニホールド孔および冷媒出力用マニホールド孔とが形成されている。そして、これらの各マニホールド孔により、図1(A)に示すように、水素入力用マニホールド41および水素出力用マニホールド42と、Air入力用マニホールド43およびAir出力用マニホールド44、冷媒入力用マニホールド45および冷媒出力用マニホールド46とが形成されている。
【0014】
また、図1(A)および図1(B)に示すように、インシュレータプレート30およびエンドプレート40の側面から紙面横方向に沿って、インシュレータプレート30の内周部に設けられたヒーター50の図示しない電極の位置まで、電力配線を取り出すための切り欠き60が設けられている。なお、この切り欠き60は、マニホールドのないスペースに設けられる。そして、図示しない電極に接続された1対の電力配線90(ハーネス)が、燃料電池スタック100の側面、厳密には、インシュレータプレート30およびエンドプレート40の側面から取り出される。
【0015】
以上説明した第1実施例としての燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造の場合には、燃料電池スタック100の側面、厳密には、インシュレータプレート30およびエンドプレート40の側面から取り出すことができる。これにより、マニホールドに組み付ける配管やこれに付随する補機等の部品密度が高いエンドプレート40の正面側を避けて、容易にヒーターの電力配線を取り出すことができる。
【0016】
図2は、第1実施例としての燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造の変形例について示す説明図である。第1実施例においては、切り欠き60を、インシュレータプレート30の側面およびエンドプレート40の側面に亘って設けていたのに対して、変形例においては、インシュレータプレート30の側面にのみ切り欠き60Aを設けている。
【0017】
変形例においても、同様に、部品密度が高いエンドプレート40の正面側を避けて、容易にヒーターの電力配線を取り出すことができる。
【0018】
B.第2実施例:
図3は、本発明の第2実施例としての燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造について示す説明図である。図3(A)は、第1実施例の切り欠き部60に対応する部分を拡大して示す説明図であり、図3(B)は、ヒーター50の電極部を拡大して示す説明図である。
【0019】
第1実施例の場合と同様に、燃料電池スタックの内側から、ターミナルプレート20、インシュレータプレート30、エンドプレート40の順で配列されている。ただし、ターミナルプレート20のインシュレータプレート30側の内周部に溝が設けられており、ヒーター50が設置されている。
【0020】
そして、切り欠き60には、図3(B)に示す1対のヒーター電極部52と、一対のヒーター電極部52を囲むヒーター絶縁部54が露出している。
【0021】
また、この切り欠き60には、図3(A)にしめすように、コネクタメイル72が挿入固定されている。コネクタメイル72内には、板ばね状の端子部74aと、板状の端子部74bとを有する1対のターミナルメイル74が設けられており(図は、一方のみを示す)、コネクタメイル72が挿入固定されることにより、1対のヒーター電極部52に接触し、1対のターミナルメイル74が電気的に1対のヒーター電極部52と導通することになる。なお、図3(A)は、説明のコネクタ内部を透かして示している。
【0022】
そして、コネクタメイル72に、コネクタフィーメイル82を挿入することにより、コネクタメイル72の勘合穴76に対して、コネクタフィーメイル82の勘合凸部84が勘合し、コネクタフィーメイル82がコネクタメイル72に固定される。
【0023】
コネクタフィーメイル82には、一対の電力配線90がパッキン96で固定され、一対の電力配線90のそれぞれは、板上の端子部98bと板ばね状の端子部98aとを有する1対のターミナルフィーメイル98と、接続部材99により接続される。なお、図3(A)には、一方のみが示されている。そして、コネクタフィーメイル82内のターミナルフィーメイル98の端子部98bが、コネクタメイル72内のターミナルメイル74の端子部74bと接触することになる。これにより、一対の電力配線90は、ヒーター50のヒーター電極部52と導通することになり、ヒーター50に電力を供給することができる。
【0024】
本実施例では、第1実施例と同様に、インシュレータプレート30およびエンドプレート40の側面から取り出すことができる。これにより、マニホールドに組み付ける配管やこれに付随する補機等の部品密度が高いエンドプレート40の正面側を避けて、容易にヒーターの電力配線を取り出すことができる。また、本実施例では、ヒーター電極部52からの電力配線の取り出しを、切り欠き60に挿入固定されたコネクタメイル72およびコネクタフィーメイル82により実現するものであるため、その取り出し構造をコンパクトにすることが可能である。また、コネクタフィーメイル82の形状をX1あるいはX2の方向に90度折り曲げた形状とすれば、さらにコンパクトな形状とすることが可能である。
【0025】
C.第3実施例:
図4は、第3実施例としての燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造について示す説明図である。図4(A)は、比較例としてのヒーターの電力配線の取り出し構造を示す説明図である。図4(B)は、本実施例のヒーターの電力配線の取り出し構造を示す説明図である。
【0026】
図4(A)に示す比較例の場合には、図示しないヒーター電極部に直接、電力配線を接続した例を示している。この場合には、この電力配線が、例えば、燃料電池組み立て治具に引っかかるなどの作業効率の低下を招く一原因となる。
【0027】
一方、図4(B)に示す本実施例の場合には、ヒーター電極部52が露出するように切り欠き120を設けて、図4(B)に示すように、エンドプレート40にコネクタハウジングメイル210をボルト212で固定し、コネクタフィーメイル220をコネクタハウジングメイル210に挿入する構造としている。このとき、コネクタハウジングメイル210の勘合穴216に対して、コネクタフィーメイル220の勘合凸部226が勘合し、220コネクタフィーメイル220がコネクタハウジングメイル210に固定される。
【0028】
そして、電力配線90はパッキン222によって固定されている。コネクタフィーメイル220がコネクタハウジングメイル210に挿入固定されると、コネクタフィーメイル220中のターミナルフィーメイル224には、コネクタハウジングメイル210から、ヒーター電極部52に突出するように設けられたばね状のターミナルメイル214がヒーター電極部52と接触することになる。これにより、電力配線90とヒーター電極部52とが導通し、ヒーター50に電力配線90から電力を供給することが可能となる。なお、図4(B)は、説明の便宜上コネクタ内部を透かして示している。
【0029】
比較例のように、ヒーター電極部に対して電力配線を直接接続するのではなく、本実施例のように、コネクタハウジングメイル210とコネクタフィーメイル220で構成されるコネクタにより、電力配線による電力をヒーター電極部に供給するようにすれば、比較例で説明したような、ヒータ用の電力配線の存在により、燃料電池組み立て時において作業効率を低下させてしまう、というような不具合を防止することができる。
【0030】
なお、ターミナルメイル214とヒーター電極部52との接触抵抗は、コネクタハウジングメイル210を固定するボルトの締結力を調整することにより実行することができる。
【0031】
図5は、第3実施例としての燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造の変形例について示す説明図である。第3実施例では、エンドプレート40に対して、コネクタハウジングメイル210をボルト212に締結する構造としているため、その構造用にスペースを必要とする。これに対して、図5に示した変形例では、エンドプレート40にコネクタハウジングメイル210を固定させるために、エンドプレート40に勘合用の切り欠き49を儲け、コネクタハウジングメイル210に勘合用の勘合凸部218を設ける構造としたものである。なお、図5は、説明の便宜上コネクタ内部を透かして示している。
【0032】
上記のように、ヒーターの電力配線の構造を変形例の構造とすれば、ボルト締結のための構造を省略することができるので、コンパクト化に有利である。
【0033】
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
10…燃料電池セルスタック
12…燃料電池セル
20…ターミナルプレート
30…インシュレータプレート
40…エンドプレート
41…水素入力用マニホールド
42…水素出力用マニホールド
45…冷媒入力用マニホールド
46…冷媒出力用マニホールド
50…ヒーター
52…ヒーター電極部
54…ヒーター絶縁部
60…切り欠き
72…コネクタメイル
74…ターミナルメイル
74a…板ばね状の端子部
74b…板状の端子部
76…勘合穴
82…コネクタフィーメイル
84…勘合凸部
90…電力配線
96…パッキン
98…ターミナルフィーメイル
98a…板ばね状の端子部
98b…板状の端子部
99…接続部材
100…燃料電池スタック
210…コネクタハウジングメイル
212…ボルト
214…ターミナルメイル
216…勘合穴
220…コネクタフィーメイル
222…パッキン
224…ターミナルフィーメイル
226…勘合凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造であって、
前記ヒーターは、前記燃料電池内に順に配列されるターミナルプレートと、インシュレータプレートと、エンドプレートとのうちのいずれかの間に設けられており、
前記電力配線は、前記ターミナルプレート、前記インシュレータプレート、および、前記エンドプレートの配列方向に平行な側面であって、前記インシュレータプレートと前記エンドプレートの少なくとも一方の側面から、取り出されていることを特徴とする
燃料電池に設けられるヒーターの電力配線の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−262894(P2010−262894A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114411(P2009−114411)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】