説明

燃料電池のユニットボックス用積層ヒンジ

【課題】高い部品精度と連結強度を保有し、しかも、廉価な燃料電池のユニットボックス用積層ヒンジを提供する。
【解決手段】積層ヒンジHは、それぞれ継手ピン45を係合させるピン貫通穴25aをあけたタブ部25とユニットボックスのパネル15に接合する接合部30とを有した同一形状の複数枚の板ヒンジ単体h…からなり、それら板ヒンジ単体h…を、ピン貫通穴25aを揃えて重ね合わせ、相互に固着して一体ヒンジ材として組み立ててなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の単セルの積層体からなるセルスタックを収容する燃料電池の矩形箱状のユニットボックスにおいて、そのユニットボックスを構成するパネルを相互に着脱自在に連結するのに好適な燃料電池のユニットボックス用積層ヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池は、多数の単セルの積層体からなる本体のセルスタックを、矩形箱状のユニットボックス内に収容した構成になっているが、例えば、セルスタックは、経時、単セルの中に所定出力を得られないものがあると、これを抜き出して新しい単セルと交換するなど、メンテナンスの必要があるため、ユニットボックスは、それを箱型に構成するパネル相互の連結にヒンジ材を用い、そのヒンジ材で着脱自在にパネルを連結することによって簡単に分解組立可能に組み付けられている(特許文献1参照)。
【0003】
そこで、従来、この種のユニットボックスに使用されるヒンジ材の中には、たとえば図6に示すように、継手ピンを係合させるピン貫通穴1をあけたタブ部2aをプレスで管状に曲げて成形し、接合板部2bをパネル3の縁部にスポット溶接やボルトで接合するプレス品のヒンジ2があった。
【0004】
しかし、燃料電池のユニットボックスにおいて、特にヒンジ部には、燃料電池の運転に際して、セルスタックが熱膨張を起こしたときに生ずる内圧や、流路を流通する水素ガスなど燃料ガスの強い内圧が作用するため、パネル相互を堅固に連結する強度が必要であると共に、ガスが外部へ漏出しない程度の高い機密性を保有すべく高い部品精度も必要であるところ、従来のプレス品のヒンジ2は、廉価ではあるが、単にタブ部2aをプレスで曲げ加工するため、タブ部2aに設けるピン貫通穴1の真円度が安定して得られないなど、部品精度が低く、その結果、ピン貫通穴1と継手ピンとの係合精度が悪くなって機密性を低下させ、更に、パネル相互を連結する強度も脆弱であるという課題があった。
【0005】
そこで、従来の中には、上記ユニットボックスのヒンジ材として、部品精度と強度を高めるため、たとえば図7に示すように、機械加工の切削加工によってパネル3の縁部にヒンジ4を一体成形したものがある。
【特許文献1】特開2002−298901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来の上記切削品のヒンジ4は、切削加工であるため、加工に多くの手間と時間を費やし、しかも、加工工数が多いために、結果として、製造コストが著しく高くなるという課題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、高い部品精度と連結強度を保有し、しかも、廉価な燃料電池のユニットボックス用積層ヒンジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、多数の単セル10…の積層体からなるセルスタックCを収容する燃料電池Aの矩形箱状のユニットボックスBにおいて、そのユニットボックスBを構成するパネル15・20を相互に着脱自在に連結する燃料電池のユニットボックス用積層ヒンジHであって、それぞれ継手ピン45を係合させるピン貫通穴25aをあけたタブ部25と前記パネル15に接合する接合部30とを有した同一形状の複数枚の板ヒンジ単体h…からなり、それら板ヒンジ単体h…を、前記ピン貫通穴25aを揃えて重ね合わせ、相互に固着して1つの一体ヒンジ材としてなることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記板ヒンジ単体h…がそれぞれ前記接合部30に前記パネル15の縁部を挟んで溶着する凹溝30aを有してなることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、前記接合部30を前記パネル15に板状ブラケット35を介して接合してなることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、たとえば以下に示す図示実施の形態のとおり、多数の単セル…の積層体からなるセルスタックCを、側板パネル15とエンドパネル20からなるパネルをヒンジ材で相互に着脱自在に連結して矩形箱状に組み立てたユニットボックスB内に収容する燃料電池において、前記ヒンジ材が、それぞれ継手ピン45を係合させるピン貫通穴25aをあけたタブ部25と前記パネルに接合する接合部30とを有した同一形状の複数枚の板ヒンジ単体h…からなり、それら板ヒンジ単体h…を、前記ピン貫通穴25aを揃えて重ね合わせ、相互に固着して1つの一体ヒンジ材としてなる、積層ヒンジHであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
従って、本発明によれば、積層ヒンジが、それぞれが継手ピンを係合させるピン貫通穴をあけたタブ部とパネルに接合する接合部を有した同一形状をなす複数枚の板ヒンジ単体を、互いのピン貫通穴を揃えて重ね合わせ、相互に固着して1つの一体ヒンジ材として組み立てた構成であるため、従来のプレス品と比べ、ピン貫通穴の真円度が常に安定して得られるなど部品精度が高くなり、その結果、ピン貫通穴と継手ピンとの係合精度が向上してユニットボックス内の機密性を確実に保有することができと共に、ユニットボックス内から加わる内圧等に耐えてパネル相互を堅固に連結する強度も十分に保持することができる。しかも、切削加工によらず、プレスや溶接など、加工に手間と時間のかからない比較的簡単な加工方法によって組み立てが実現されるため、従来の機械加工の切削品と比べて、著しく廉価に製造することもできる。
【0013】
加えて、本発明では、積層ヒンジを、接合部に有した凹溝にパネルの縁部を挟み込んで溶着する構成であるため、それだけ接合強度が向上し、より確実にパネルに接合させることもできる。
【0014】
更に、本発明では、積層ヒンジが接合部をパネルに対し板状ブラケットを介して接合する構成であるため、ユニットボックスのパネル側を薄型にしたままヒンジの取付けを実現させる一方、ユニットボックス全体の軽量化も実現することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
図4は、本発明の一例である積層ヒンジを備えたユニットボックスを分解して示す燃料電池の概略斜視図である。燃料電池Aは、それぞれユニット化した多数の単セル10…の積層体からなるセルスタックCを、図中横長な矩形箱状のユニットボックスB内に出し入れ可能に収容した構成になっている。なお、単セル10は、公知のため、詳しくは図示省略するが、燃料ガスが供給されるアノード側電極、酸化剤ガスが供給されるカソード側電極およびアノード側電極とカソード側電極との間に介装された電解質を有する接合体と、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給路又は酸化剤ガスを供給するための酸化剤ガス供給路が設けられて接合体を挟持する一対のセパレータとを備えてなる。そこで、ユニットボックスBは、4枚の側板パネル15と2枚のエンドパネル20を用いて矩形箱形の六面体に組み立てる一方、この単セル10の交換などメンテナンスのために、側板パネル15はボルトによって互いに着脱可能に連結して角筒状ケースを形成すると共に、そのケースの両端に、特に本発明の積層ヒンジHを用いてエンドパネル20を着脱自在に連結し、全体を簡便に分解組立可能な構造になっている。
【0017】
さて、かかるユニットボックスBにおいて、側板パネル15とエンドパネル20の連結に適用する積層ヒンジHは、図1に示すように、それぞれ同一形状の金属製板ヒンジ単体h…を複数枚重ね合わせて一体化したヒンジ材からなる。各板ヒンジ単体hは、例えば、厚さ0.2mm〜10.0mm(但し、プレス加工と溶着性から1.0mm〜3.0mmが望ましい)のステンレス鋼等の金属製素材板(ブランク)をプレスで打ち抜き加工し、継手ピンを係合させる真円のピン貫通穴25aをあけたタブ部25と、側板パネル15を挟んで保持する凹溝30aをあけた接合部30を有した同じ板形状に一体成形してなる。凹溝30aは、その溝幅を、側板パネル15の側縁に固着する後述の板状ブラケット35の厚さに合わせて、細長い凹状に切り欠いてなる。なお、上述の図示例では、各板ヒンジ単体hをプレスで打ち抜いてせん断加工する例を示したが、例えばワイヤーカット等、簡単な他のせん断加工方法によって成形してもよい。
【0018】
次いで、積層ヒンジHは、上述の如く同一形状にせん断加工した板ヒンジ単体h…を、互いのピン貫通穴25aを同一軸線上に揃えて重ね合わせ、互いの板面間を、例えばレーザー溶接によって固着し、1つの一体ヒンジ材として組み立ててなる。板ヒンジ単体h…の一体化は、レーザー溶接に限らず、カシメなど他の固着方法によってもよい。
【0019】
さて、図示例の積層ヒンジHは、各側板パネル15の両端縁に、細長い金属製の板状ブラケット35を介して取り付ける。そのとき、積層ヒンジHは、図1(B)・図2に示すように、接合部30の凹溝30aに板状ブラケット35の側縁を差し込んで挟み込み、溶接やロウ付けによって板状ブラケット35に溶着する。こうして積層ヒンジHを組み付けた板状プラケット35は、図3に示すように、側板パネル15の両端縁に溶接などによって固着する。
【0020】
そして、以上のような構成の積層ヒンジHを用い、側板パネル15にエンドパネル20を連結してユニットボックスBを組み立てるときは、積層ヒンジH側のタブ部25と、エンドパネル20の四方側縁に有したタブ部40のピン貫通穴25a・40aに継手ピン45を貫挿させて連結する。従って、反対にユニットボックスBを分解するときは、継手ピン45をピン貫通穴25a・40aから抜き取ることで、ユニットボックスBは簡単に解体される。
【0021】
ところで、上記図示例の積層ヒンジHは、板ヒンジ単体hの接合部30に凹溝30aを設け、凹溝30aに板状ブラケット35を挟み込んで溶着した。しかし、本発明の積層ヒンジHは、たとえば図5(A)に示すように、接合部30の片面に突当て段部30bを凹設し、その突当て段部30bに板状ブラケット35を突当て状態で係合させて溶着する構成にすることもできる。
【0022】
また、本発明の積層ヒンジHは、図5(B)に示すように、接合部30を単純に平板状に一体成形し、その接合部30の片面を板状ブラケット35の側縁上に当接させて溶着する構成にしてもよい。
【0023】
なお、以上の図示例において、積層ヒンジHは、接合部30を側板パネル15に板状ブラケット35を介して溶着したが、側板パネル15が所定強度をもったパネル構造であれば、該側板パネルに接合部30を直接に溶着して接合させて取り付けることも、勿論可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一例である積層ヒンジの構造を示す斜視図である。
【図2】積層ヒンジの図1中線X−X断面図である。
【図3】積層ヒンジを介して側板パネルにエンドパネルを連結する状態を示す斜視図である。
【図4】積層ヒンジを備えたユニットボックスを分解して示す燃料電池の概略斜視図である。
【図5】積層ヒンジの変形例を示す縦断面図である。
【図6】(a)は従来のプレス品のヒンジ構造を示す斜視図、(b)は線Y−Y断面図である。
【図7】(a)は従来の切削品のヒンジ構造を示す斜視図、(b)は線Z−Z断面図である。
【符号の説明】
【0025】
A 燃料電池
B ユニットボックス
C セルスタック
H 積層ヒンジ
h 板ヒンジ単体
10 単セル
15 側板パネル
20 エンドパネル
25 タブ部
25a ピン貫通穴
30 接合部
30a 凹溝
35 板状ブラケット
45 継手ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の単セルの積層体からなるセルスタックを収容する燃料電池の矩形箱状のユニットボックスにおいて、そのユニットボックスを構成するパネルを相互に着脱自在に連結する燃料電池のユニットボックス用積層ヒンジであって、
それぞれ継手ピンを係合させるピン貫通穴をあけたタブ部と前記パネルに接合する接合部とを有した同一形状の複数枚の板ヒンジ単体からなり、それら板ヒンジ単体を、前記ピン貫通穴を揃えて重ね合わせ、相互に固着して1つの一体ヒンジ材としてなることを特徴とする、燃料電池のユニットボックス用積層ヒンジ。
【請求項2】
前記板ヒンジ単体は、それぞれ前記接合部に、前記パネルの縁部を挟んで溶着する凹溝を有してなることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池のユニットボックス用積層ヒンジ。
【請求項3】
前記接合部を前記パネルに板状ブラケットを介して接合してなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃料電池のユニットボックス用積層ヒンジ。
【請求項4】
多数の単セルの積層体からなるセルスタックを、側板パネルとエンドパネルからなるパネルをヒンジ材で相互に着脱自在に連結して矩形箱状に組み立てたユニットボックス内に収容する燃料電池において、
前記ヒンジ材が、それぞれ継手ピンを係合させるピン貫通穴をあけたタブ部と前記パネルに接合する接合部とを有した同一形状の複数枚の板ヒンジ単体からなり、それら板ヒンジ単体を、前記ピン貫通穴を揃えて重ね合わせ、相互に固着して1つの一体ヒンジ材としてなる、積層ヒンジであることを特徴とする、燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−305649(P2008−305649A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−151063(P2007−151063)
【出願日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(306019122)株式会社エイチワン (10)
【Fターム(参考)】