説明

燃料電池システム

【課題】燃料電池より発生する直流電力を交流電力に変換する直流交流変換器を、燃料電池の発電装置に組み込んで一体化し、省スペース化、コストダウンを実現する。
【解決手段】パワーコンディショナで構成される直流交流変換器6を、燃料電池の発電装置5に組み込んで燃料電池システムとして一体化する構成としており、高価な通信ケーブル線7を必要とせず、通常の信号リード線を使用することが可能となりコストダウンが図れる、スペース化を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池を用いて発電を行う燃料電池の発電システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
以下に従来の燃料電池システムについて説明する。
【0003】
図2に示すように、従来この種の燃料電池システムは、天然ガスやメタノールなどの原料燃料および水蒸気改質反応に必要な原料水から水素に富んだガスを生成する水素生成器1と、酸化剤ガスとしての空気を供給するためのブロアファンで構成される送風器2と、水素生成器1で得られた生成ガスと送風器2からの酸化剤ガスとを反応させて直流電力を発生する燃料電池3と、起動から直流電力を発電するまでの一連の動作を制御する制御器4とを有しており、燃料電池の発電装置5として構成されている。また燃料電池3より発生する直流電力を交流電力に変換し、電力系統に出力して、逆潮流させるパワーコンディショナで構成される直流交流変換器6は、燃料電池の発電装置5とは分離されており、取り付け台8に固定され、制御器4とRS232Cの通信ケーブル線7により接続され、制御器4より運転動作のON/OFF信号や発電指令データ、異常信号などのデータの入出力を制御し、連系運転を行う。9は燃料電池の発電装置5の交流電源遮断器。10は直流交流変換器6の交流出力遮断器。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記の従来の構成では、燃料電池の発電装置と直流交流変換器が分離されているため、設置スペースを別途必要とし、直流交流変換器を固定するための固定治具が別途必要となるという問題点を有していた。
【0005】
本発明は上記従来の問題点を解決するもので、直流交流変換器を、燃料電池の発電装置に組み込んで一体化し、省スペース化をはかり、コストダウンすることを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、パワーコンディショナで構成される直流交流変換器を、燃料電池の発電装置に組み込んで、燃料電池システムとして一体化する構成としたものである。これにより省スペース化をはかり、コストダウンをはかることが出来る。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、炭化水素系原料燃料と水から水素に富んだガスを生成する水素生成器と、前記水素生成器で得られた生成ガスと酸化剤ガスとを反応させて直流電力を発生する燃料電池と、起動から直流電力を発電するまでの一連の動作を制御する制御器とを備えた燃料電池の発電装置において、前記燃料電池より発生する直流電力を交流電力に変換する直流交流変換器を、前記燃料電池の発電装置に組み込んで一体化する構成としたものであり、パワーコンディショナで構成される直流交流変換器を、燃料電池の発電装置に組み込んで燃料電池システムとして一体化することにより省スペース化をはかり、コストダウンをはかることが出来る。
【0008】
請求項2に記載の発明は、酸化剤ガスを送るための送風器を備え、前記直流交流変換器を前記送風器による送風経路に配置して、前記直流交流変換器の温度上昇を抑制する構成としたものであり、直流交流変換器を構成するパワーコンディショナの回路部品として、パワー系のIC、FET、スイッチング素子、トランス等を使用しているため、大きなヒートシンクを採用するなどの充分な放熱対策を必要とするが、その一つとして送風による冷却対策があり、酸化剤ガスを送るための送風器を兼用すれば専用の送風器が不要となり、コストダウンがはかられ、省スペース化を実現できる。また酸化剤ガスの温度を上昇させ、燃料電池に適した温度にできる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記制御器と前記直流交流変換器とのデータの入出力を通常の信号リード線により行う構成としたものであり、物理的に離れた場所との信号の入出力には、通信の信頼性の問題等で通信ケーブル線が必要とされるが、直流交流変換器を、燃料電池の発電装置に組み込んで燃料電池システムとして一体化するのであえて通信ケーブルを必要とせず、通常の信号リード線を使用することが可能となりコストダウンが図れる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記制御器と前記直流交流変換器とを絶縁やシールド対策により電気的、磁気的に分離して配置する構成としたものであり、一体化することにより心配される電気的、磁気的影響を抑制するために、フォトカプラ等により電源ライン、アースラインを分離したり、入出力部分にEMIフィルタ等のノイズ対策用部品を挿入したり、またアルミケース等によりシールドして、直流交流変換器を収納してしまうことにより、電気的、磁気的に分離してノイズによる影響を最小限度に抑制し、誤動作の原因を防止することが出来る。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記水素生成器および前記燃料電池との間に、空間距離を設け、断熱や送風対策により熱的に分離して配置する構成としたものであり、一体化により、750℃程度まで上昇する水素生成器や80℃程度まで上昇する燃料電池などの温度上昇部品からの熱の影響を防止するために、境界に断熱材で覆ったり、送風器による送風経路を設けて分離したり、空間距離を設けることで熱の影響を抑制することが出来る。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記制御器と前記直流交流変換器の制御用直流電源を共有する構成としたものであり、一体化により直流交流変換器の制御回路に使用する直流電源は、燃料電池の発電装置の制御器にて使用するDC24V、DC12V、DC5Vの電源を共有して使用することが出来、専用の電源が不要となりコストダウン、省スペース化が図れる。
【0013】
請求項7に記載の発明は、前記制御器の交流電源遮断器と前記直流交流変換器の交流出力遮断器とを同一箇所に集中配置する構成としたものであり、外部からの操作を必要とする遮断器類を、一箇所に集中配置することにより、メンテナンス時に集中操作、確認ができ、使い勝手がよく、かつ安全性の向上が図れる。
【0014】
請求項8に記載の発明は、前記燃料電池の発電装置と前記直流交流変換器とを同一フレームに収納、取り付け、固定する構成としたものであり、直流交流変換器専用の取り付け治具は不要となり、コストダウンを実現することが出来る。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図において、図3で示した従来の燃料電池システムと同じ機能を有するものについては同一符号を付与しており、これらの機能の詳細は図3に順ずるものとする。
【0017】
(実施例1)
図1は本発明の第1の実施例における燃料電池システムの構成図である。図1に示すようにパワーコンディショナで構成される直流交流変換器6を、燃料電池の発電装置5に組み込んで燃料電池システムとして一体化する構成としており、高価な通信ケーブル線を必要とせず、通常の信号リード線を使用することが可能となりコストダウンが図れ、省スペース化を実現できる。
【0018】
また図1に示すように直流交流変換器6を送風路2による送風経路に配置する構成としており、直流交流変換器6を構成するパワーコンディショナの回路部品として、パワー系のIC、FET、スイッチング素子、トランス等を使用(図示せず)しているため、大きなヒートシンクを採用するなどの充分な放熱対策を必要とするが、その一つとして送風による冷却対策があり、酸化剤ガスを送るための送風器2を兼用すれば専用の送風器が不要となり、コストダウンがはかられ、省スペース化を図ることが出来る。そして、酸化剤ガスの温度を上昇させ燃料電池に適した温度にできる。なお、図1では送風器2の給気側に直流交流変換器6を配置したが、送風器2の排気側に配置してもよい。
【0019】
また、直流交流変換器6が物理的に離れた場所にあれば、信号の入出力に通信の信頼性の問題等で通信ケーブル線が必要とされるが、直流交流変換器6を、燃料電池の発電装置5に組み込んで燃料電池システムとして一体化することにより、あえて通信ケーブル線を使用する必要がなく、通常の信号リード線を使用することが可能となり、通信ケーブル線用端子も不要となり、制御信号アルゴリズムも簡略化されてソフトへの負担も軽減される。
【0020】
また、直流交流変換器6と燃料電池の発電装置5の制御器4とを、絶縁やシールド対策により電気的、磁気的に分離して配置する構成としており、フォトカプラ等により電源ライン、アースラインを分離したり、信号の入出力部分にEMIフィルタ等のノイズ対策用部品を挿入したり、またアルミケース等によりシールドして、直流交流変換器6を収納してしまうことにより、電気的、磁気的に分離してノイズによる影響を最小限度に抑制し、誤動作の原因を防止する。
【0021】
また、水素生成器1および燃料電池3との間に、空間距離を設け、断熱や送風対策により熱的に分離して配置する構成としており、一体化により、運転中は750℃程度まで上昇する水素生成器1や80℃程度まで上昇する燃料電池3などの温度上昇部品からの熱の影響を防止するために、直流交流変換器6を、燃料電池の発電装置5に組み込む際は、水素生成器1および燃料電池3との間に、空間距離を充分とり、境界に断熱材で覆ったり、送風器2による送風経路を設けて分離したりすることで熱的な影響を抑制することが出来る。なお、送風経路は燃料電池の発電装置5の外装部に給気口等を設け、空気が高温になる水素生成器1や燃料電池3と直流交流変換器6の間を流れるように構成し、最終的に送風器2の給気口へ空気を導くようにする。
【0022】
また、図2のように燃料電池の発電装置5の制御器4と直流交流変換器6の制御用直流電源を共有する構成としており、制御器4に供給している直流電源は、スイッチング電源よりAC100VからDC24V、DC12V、DC5Vの電源を供給しており、DC24Vはアクチュエータとして各種の水、空気用ポンプ、ファン用モータ、電磁弁等の弁開閉用電源に、DC12Vは冷却水混合弁用の電源に、DC5Vはマイコン搭載の制御回路用電源にそれぞれ供給している。
【0023】
その電源を直流交流変換器6の制御回路に使用する直流電源として共有して使用すれば、専用の電源が不要となりコストダウン、省スペース化が図れる。
【0024】
また、燃料電池の発電装置5の制御器4に電源を供給している交流電源遮断器9と直流交流変換器6の交流出力遮断器10とを同一箇所に集中配置する構成としており、外部からの操作を必要とする交流遮断器類を、一箇所に集中配置することにより、メンテナンス時に集中操作、確認ができ、使い勝手の向上が図れ、かつ安全性の向上が図れる。
【0025】
また、燃料電池の発電装置5と直流交流変換器6とを同一フレームに収納、取り付け、固定する構成としており、燃料電池の発電装置5のフレーム構成を直流交流変換器6を取り付け可能な構成として固定することにより、直流交流変換器6専用の取り付け治具は不要となり、コストダウンを実現することが出来る。
【0026】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、直流交流変換器を、燃料電池の発電装置に組み込んで燃料電池システムとして一体化することにより、省スペース化が図れ、コストダウンを実現できる。
【0027】
また直流交流変換器を送風器による送風経路に配置すると、送風による冷却効果が得られ、送風器を兼用すれば専用の送風器が不要となり、コストダウンがはかられ、省スペース化を図ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における燃料電池システムの構成図
【図2】本発明の実施例1における直流電源の共有の構成図
【図3】従来の燃料電池システムの構成図
【符号の説明】
1 水素生成器
2 送風器
3 燃料電池
4 制御器
5 燃料電池の発電装置
6 直流交流変換器
9 交流電源遮断器
10 交流出力遮断器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素系原料燃料と水から水素に富んだガスを生成する水素生成器と、前記水素生成器で得られた生成ガスと酸化剤ガスとを反応させて直流電力を発生する燃料電池と、起動から直流電力を発電するまでの一連の動作を制御する制御器とを備えた燃料電池の発電装置において、前記燃料電池より発生する直流電力を交流電力に変換する直流交流変換器を、前記燃料電池の発電装置に組み込んで一体化することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
酸化剤ガスを送るための送風器を備え、前記直流交流変換器を前記送風器による送風経路に配置して、前記直流交流変換器の温度上昇を抑制することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御器と前記直流交流変換器とのデータの入出力を通常の信号リード線により行うことを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御器と前記直流交流変換器とを絶縁やシールド対策により電気的、磁気的に分離して配置することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記水素生成器および前記燃料電池との間に、空間距離を設け、断熱や送風対策により熱的に分離して配置することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御器と前記直流交流変換器の制御用直流電源を共有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記制御器の交流電源遮断器と前記直流交流変換器の交流出力遮断器とを同一箇所に集中配置することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記燃料電池の発電装置と前記直流交流変換器とを同一フレームに収納、取り付け、固定することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2004−71282(P2004−71282A)
【公開日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−227103(P2002−227103)
【出願日】平成14年8月5日(2002.8.5)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】